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テレビドラマ・バラエティ

ドラマ「トットちゃん」と「わろてんか」

Photo  10月から始まったテレ朝昼ドラの「トットちゃん」、山本耕史が出るので見てますが、ドラマとしてもとっても面白いです。原作の「窓際のトットちゃん」も読んだし、最近の「トットてれび」も見たし、題材としては目新しさはないと思ってましたが、そんなことありませんでした。

山本耕史はトットちゃんのパパのバイオリン演奏家。演奏時の立ち姿が美しく、コンサートマスターとしてあいさつするシーンがかっこいい!いきなりの結婚と、妻を閉じ込めるという展開にはびっくりでしたが、すぐに生活も安定して、浮世離れした雰囲気はそのままに、家族を愛する素敵な人です。わずかな登場場面でも、画面の中でぱあっと光ってます。出征の兵隊姿の丸刈りも新鮮でした(カツラでしたけどね)。

トットちゃん(豊嶋花)がうまい!子どもらしさの中に、後の黒柳徹子を思わせる仕草が出ていて、またかなりダンスのセンスがあるような動きも魅力的。マイペースなのに、育ちのよさを感じさせるセリフもすてき。ちょっとこれまでの日本の子役になかったうまさです。そのトットちゃんを押さえつける普通の学校からトモエ学園に転校してのびのびしているのがほほえましく、また、そんな学校あるかしら、というのを竹中尚人の校長先生がちょっとおとぎ話みたいで浮世離れしているのがまたいいんですよね。

乃木坂上倶楽部の小澤征悦、高岡早紀、凰稀かなめ、新納慎也とクセのある人たち。高岡早紀いい女優になったなー。凰稀かなめもかわいすぎる。

そして、舞台は疎開先の青森へ。何と中村メイコのおばあちゃん、いしのようこのお嫁さん、青森弁がきっつくてそれもまた。

脚本は大石静、さすがです。もうひとつ、彼女の代表作になるんじゃないでしょうか。

( 前作の「やすらぎの郷」も面白く見てたんですよね。途中失速する回もありましたが、八千草薫、朝丘ルリ子、加賀まりこが素敵だったし、富士真奈美もいいところを見せてくれました。野際陽子の遺作になりましたが、、彼女はちょっと現役感のある演技でした。)

Photo_2  一方朝ドラ「わろてんか」。吉本興業の創始者吉本せいがモデルとあって、お笑い好きの私、たいへん期待して見てたんですが、今のところぱっとしません。

松阪桃李、高橋一生、濱田岳、遠藤憲一、鈴木保奈美鈴木京香と、脇はすごいんですが、主人公がただかわいらしいだけ。子役時代もあったのに、笑いが好きってだけで、デキル子っぽい描写がなかったので、米問屋での行動が唐突感があるんですよねえ。とにかくどこかで見たような描写の連続。

脚本の吉田智子さん、恋愛ものが得意な東京出身の人。大阪のお笑い、というより笑いのセンスが皆無だなあと思います。せっかくの素材と出演者なのになあ。

山本耕史の「植木等とのぼせもん」

Photo    実際にどのくらい見られているかわからないけど、けっこう評判のNHK土曜ドラマ「植木等とのぼせもん」。クレージーキャッツの植木等(山本耕史)とその新米付き人、後の小松政夫(志尊淳)の物語。以前の「トットてれび」同様、当時の番組の再現度がなかなかです。クレージーキャッツ、人気のピーク時はさすがに知りませんが、上品なコメディセンスあるメンバー個々はお馴染みでしたし、一時期はベスト盤をよく聞いていました。青島幸雄の突き抜けた歌詞、植木等の歌が好きでした。

私はもちろん山本耕史目当てで見ているんですが、彼の植木等の歌のうまさ、単なるモノマネに止まっていない、真面目な人柄を表現する演技がとてもいいです。「スリル」の続編や映画化が、小出恵介の件で望みが絶たれたのを埋め合わせてくれています。もちろん、父の伊東四朗、ハナ肇の山内圭哉、谷啓の浜野謙太といい味出してますし、志尊淳が健気でかわいく、植木等を敬愛する気持ちにあふれてて気持ちがいいです。

このドラマで、山本耕史という俳優の実力がまたちょっと広まった感があってうれしいなあと思っていたところ、ちょっと古い2013年のものですが、ファンにはおお、という記事を見つけました。長い大特集です。

朝日新聞GLOBE 突破する力 山本耕史

この最後のページが、演出家ジョン・ケアードさんインタビュー なんですが、レ・ミゼラブルのガブローシュのオーディションの話をしています。この役は生意気で荒っぽい少年なんですが、イギリスではすぐ見つかるが、日本の子はおとなしい、しかし、耕史は「まだ小さいのに自信に満ちていた。演じることが好きで好きでたまらないという様子で、すでに一人前のちいさな役者だった。自分をどんどん外に出して表現することを、当時すでに自然にやっていました。」。

←この感じ、猿之助と同じ!

そして、ケアードさんが日本で初演出した1980年代には、日本では古いミュージカルの歌い方、大きなビブラートが主流だったのに対し、「耕史は、ビブラートの幅を小さく抑え、ぶれずに力強く発声する歌唱法を身につけた最初の役者の一人だったと思います。しかも単に身につけるだけでなく、この歌い方を本当の意味で理解し、非常にうまく歌う先駆け的な役者になった。」

さらに、「彼には他の人にはない、特別な素養がある。一つは、お芝居をしている時に、非常にリラックスしていること。これは演技への自信からくるものでしょう。舞台で自然体でいられるということは、役者としてもっとも重要なことです。」

くー、さすが、名演出家、通り一遍の誉め言葉でない、耕史の特質を具体的かつ的確に語っていて、まさにその通りだと思います。ケアードさんは、その後も耕史と折に触れ会ったり、舞台を見たりしているそうです。ご自身の目の確かさを確認したことでしょう。

この記事では、ほかにも演出家、舞台美術家などが山本耕史をほめています。身体能力やキレのある時代劇の立ち回り、驚異的なセリフ覚えと、もともとの資質に加えて、影での努力、それを感じさせない現場での明るさ、共演者への気配り。このドラマでも、すごい綱渡りまで見せてくれました。

一緒に仕事をした人々から深い愛情を受けている彼、「植木等とのぼせもん」のスタッフにも愛されている雰囲気が感じられて、うれしいです。ネットでは、「どうしてもNHKは山本耕史を脱がせ、立ち回りをさせたいらしい」なんて言われてますね。

10月期はテレ朝の昼ドラ「トットちゃん」でもトットちゃんのお父さん役だし、12月にはメンフィス再演ですし、楽しみ!

猿之助@「伝統芸能の若き獅子たち(2010)」「ごごナマ」「スジナシ」

猿之助フィーチャーのこれら3本のテレビ番組、すべて9月12日の放映ということで(きゃあ、猿之助まつり!)、録画して見ました。

まず「伝統芸能の若き獅子たち 市川亀治郎」。2010年放送の番組の再放送です。猿之助襲名の2012年に出た「僕は、亀治郎でした。」という本では、この頃の話が詳しく出ていてゆかしく思っていたので、映像で見られて感激でした。

両者を合わせてみると、2009年から始まった亀治郎と3代目猿之助さんの新たな師弟関係、2010年初春からの澤瀉屋の演目の(しかも大作の)復活上演、そして四代目襲名へ、という流れがよくわかります。

2009年末、浅草新春歌舞伎の出し物として、二代目猿之助(初代猿翁)の「悪太郎」に取り組む亀治郎、化粧や振付に苦労していただけに、3代目が稽古を見に来た日、「今日『猿翁さんに似てる』って言われた」と、うれしさを隠せないようにぽろっと言うところがあります。しかし上記の「僕は、亀治郎でした。」によると、このとき、本当は三代目に「猿翁さんに似てるね。…猿之助、継いでね」と何気なく言われた、とあるんですよ!うわあ、それについて、猿之助がどう思ったのか、映像ははっきり語っています。それが見られるなんて。

そして、2月、博多座での猿之助18番の一つ「金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり) 」制作の克明なドキュメンタリー。猿之助ファンなら、彼が新作の苦心を惜しみなく見せるのは当たり前のように思いますが、ほかの役者ではなかなかありません。染五郎、獅童の姿、綿密に打ち合わせる囃方に傅次郎さん、そして不自由な体をおして通し稽古にダメ出しする三代目、そばに寄り添う笑三郎さん。三代目は、自分が半生をかけて作ってきたものが引き継がれるのを見て、そりゃ四代目を彼にするしかない、と思われたことでしょう。

衣装を着けないシルエットで、「金幣猿島郡」の最後の舞踊を少し踊っているシーンも素敵です。当時の華奢な(女形中心だったこともあるのでしょうか)亀治郎の動きの滑らかで美しいこと。白拍子の踊りではずっと膝を内側に曲げたまま、回転のときに少しも体の軸がブレないのがよくわかります。被り物が揺れないのが口伝だとか(「あ、言っちゃった」って、なかなか誰にでもはできないでしょう。

化粧の筆が絵筆であることを説明してくれるお弟子の澤五郎さん、いかにも古風な番頭さんという雰囲気の方ですが、「隈取をするときは坊ちゃんも(猿之助さんと)同じようにやって…」の坊ちゃん呼び!あの大人数のキャストとスタッフをまとめ上げて細かい指示を出しているヒゲの濃い大人なのに。

NHKの午後のバラエティ「ごごナマ」は、ワンピース歌舞伎再演を前に、猿之助と尾上右近がゲスト。紹介に黒塚や四の切(狐忠信の回転は、先月のみっくんに比べてやはり格段の美しさ!)、二人が共演した連獅子の映像があったり、二人のほほえましい関係をうかがわせるエピソード満載で、さすがNHK、たっぷりでした。

質問コーナーで、「相手よりいい男だ」にYESと答えた猿之助、理由を問われて、「実際には彼の方が若くてかっこいいかもしれないけど、自分がいい男だ、と思って出なければ、お金を払っていただくお客様に失礼」。――ああ、なんていい言葉。どんな役でも常にドヤ顔の、究極のドヤ役者、ですもんね。

最後はTBSで深夜に放送された「スジナシ」。鶴瓶がゲストと台本なしの即興で観客の前で芝居をし、あとから録画を見ながら振り返りを行う、というシリーズ。

今まで見たことがなかったので、ほかの俳優と比較してどうかはわかりませんが、とある理事長室を舞台に、理事長カモイケ(猿之助)が政治スキャンダルで逮捕の危機、信者をどうする、と傀儡教祖(鶴瓶)と話し合うという設定を猿之助が強引に作り、関西弁を封じられた鶴瓶がタジタジとなるという展開。でも本人がいうほど何もできなかったわけではなく、ちょいちょい繰り出すジャブもあって、なかなか面白かったです。「カリスマに足りないものがない」なんて、へんなセリフもありましたが、力でねじ伏せた感じ。

振り返りで話す内容がやはり論理的で、ファン的にはそちらも見どころ。実名をちょっと変えて、政治批判だと言われないようにしてきた歌舞伎の技を使ったとか、スーパー歌舞伎の「大いなる詐欺師」のセリフを使ってみたかった、とか。

というわけで、いろいろな猿之助をみられた、たいへん充実した1日でありました。

亀治郎/猿之助関係のコンテンツを検索していたら、こういうのもありました。玉木正之さんの亀治郎インタビュー初出は2001年です。亀治郎の言っていることが、驚くほどその後と同じなんですが、それより注目は、2000年頃のスーパー歌舞伎「新・三国志」で本水の立ち回りをした直後の亀治郎の顔についての、玉木さんの以下の記述。

「花道に立っていた役者の横顔がよかった。見事だった。まるで客席を睥睨するかのように、顎を突きあげていた。その姿は傲岸不遜のようでありながら、若き花形役者ならではの心意気と美臭が匂い立っていた。 観客に媚びず、しかし、観客を侮らず、「何なら、もう少し、お水をおかけしましょうか……」とでもいいたげな若者…」、

これですよ、これ。それから20年近くたっても、変わらない彼の魅力です。

そしてもう一つ、首都大学東京の高本教之助教の「三代目から四代目へ…「市川猿之助」覚書」 。分析的でありながら、ファン感情満載の面白い論文です。その一節に、2002年の第1回亀治郎の会のときの、三代目の評があります。「非常に才能があるし、努力家で頭もいい。ただ一点足りないのは、華が足りない。それから器量があんまりよくない…(それは自分で克服すべきという趣旨)…」。それに対して筆者は、今では四代目の器量が悪いというのは少数派のようであり、それは顔の造作云々というよりも「華」があるから美しく見えるいという種類のものであるからである。だから、彼の器量の良さは四代目が十年の歳月をかけて自身でえたものり、亀治郎が自ら獲得したもの、と書いています。亀治郎愛にあふれた記述ですよねえ。

このほか、天才子役時代のお話や、三代目が天才子役と評したのは富十郎、十八代勘三郎、亀治郎とか、興味深い記述が続きます。この論文、歌舞伎のもっと大きな話もしているのですが、今日はファン目線の記事なので、割愛します、すみません。

四月大歌舞伎「傾城反魂香」「桂川連理柵 帯屋」「奴道成寺」2回目追記あり

2017   四月歌舞伎座、夜の部です。

(このときもじゅうぶん堪能したのですが、その後「奴道成寺」の幕見を見ようとして結局通しで見てしまいましたので適宜追記してます)

一本目は「傾城反魂香」。2012年11月に2度目の歌舞伎として澤瀉屋さん(おとく笑也、又平右近)で見ています。今回は又平 吉右衛門、おとく菊之助、土佐将監歌六、修理之助錦之助

  修理之助は、絵から抜け出た虎を見事筆の力で消したことで、師匠土佐将監から土佐の苗字を許されますが、兄弟子のどもりの又平は願っても許されません(そりゃそうだ、何もしてないし)。妻おとくと嘆く又平。又平何か言ってますが、ドモリすぎてて聞き取れません(すいません)。

さらにいろいろあって、又平とおとくは絶望的になり、死のうとしますが(それもね、何も死なないでも。師匠だってそれなりに見てくれているわけだし)、最後にと手水鉢に描いた又平の自画像がその裏に移るという不思議なことがあり、又平は見事、と土佐の苗字を許されます。節があればどもらないという又平の舞。

又平の吉右衛門、修理之助の苗字の話を聞いてがっかりするところ、師匠に嘆願する必死さ、そして死ぬしかないと決めた時のうつろな目、と、実直な男の哀しさを表現して余りある名演でした。

将監の歌六も立派で、威厳と情愛があいまって目を引きます。 錦之助、才気走った、又平目線でみるとちょっとイヤなやつ(言い過ぎかも)、でもこういう役で錦之助さんが出てくると、私、ちょっと得した気持ちになります。又五郎の御注進 雅樂之助も、かくあるべしという御注進でした。

おとくの菊之助、しっとりと美しく気品がありすぎて、世話女房というのは、この人の役ではないかもと思いました。将監の妻東蔵さんも、これまでに見た心優しい庶民の老妻役が印象深すぎて、将監の奥方としては若干バランスが悪いように見えました。

(2回目) とにかく吉右衛門さんを見よう、と集中してみてみました。又平の絶望と悲しみ、死を覚悟して筆をとったときの渾身の表情、土佐の姓を許された歓喜、豊かな声の口上と、男の感情というものをこんなにもさまざまに見せてくれるのか、と感動しました(ちょっと泣けちゃいました)。そして、毎日の舞台の積み重ねの賜物か、菊之助のおとくと握り合う手にほんとうに通い合う情愛がじんときました。

2本目は「桂川連理柵 帯屋」。帯屋の養子の主人長右衛門(藤十郎)を、金のことで苛める義母おとせ(吉弥)と長右衛門の弟儀兵衛(染五郎)。このおとせは、後妻なので長右衛門を育てたわけではなく、だから連れ子の儀兵衛と店を乗っ取ろうとして長右衛門をいじめているというのは後から知り、納得がいきました。

長右衛門が旅先でつい過ちを犯したお半からの手紙をネタに責める儀兵衛、「長さま」とあるのを信濃屋の丁稚長吉だとごまかす長右衛門の女房お絹(扇雀―キレイ!)、長吉(壱太郎)が呼ばれて、その手紙は自分宛だと言います。夜半、一人寝る長右衛門のところに忍んで来るお半(壱太郎)。お半は身ごもっており、実は死ぬ覚悟。察した長右衛門はお半を追いかけます。

前半はお登勢と儀兵衛のワルっぷりが痛快。吉弥さん、いつもキレイなのに。染ちゃんは昼は伊勢音頭のはずですが、夜はこの成駒屋興行の客演で、鴈治郎さん襲名の「河庄」同様、楽し気に毒づいていました。二人が父寿治郎さんに怒られて、かしわのすきやきで一杯やろうと出ていくところなどおかしくて。

長吉はちょっと足りない坊やなんですが、セリフが面白く、楽しめました。この長吉から後半のかわいいお半への切り替わりが見もの。壱太郎くん、見るたびに生き生きと、輝きが感じられて、今、何をやっても楽しいんだろうなあと思います。女形のときに、頭カクカク振りすぎなのはやめた方がいいと思うんですけど。

長右衛門の藤十郎さん、前半はいじめに耐えるだけなんですが、お半とのシーンはしっとりと、実際の年齢の差もあって、せつないです。お絹はいい女房だけれど、何もかも捨てて、お半とのことにけりをつける、その気持ちが伝わってきました。立ち上がる足許はおぼつかないながら、お半を追う足はしっかり。

(2回目) 2回目はお絹と長右衛門に注目。お絹のやさしさ、事情を知りつつ添い遂げたいという思いがせつなかったです。藤十郎さん、舞台写真で見たらすごく生々しい男の表情だったので、そういう目で見ていると、お半から身を引こうとしながらも、つい抱きしめるところは濃厚なラブシーンで、祖父と孫息子だってわかっていながらもドキドキしてしまいました。

最後は「奴道成寺」。猿之助の舞踊です。猿之助の体を自在に操る動き、「どうだ俺を見ろ!」という声が聞こえるようなキメ顔、立ち上る色気、所化(右近、種之助、米吉、隼人、男寅)たちとの楽し気な絡み、3つの面を早替えしながらの(後見さんもたいへんですがお見事!)超絶技巧、45分ほどなんですが、舞台いっぱいの桜と合わせて堪能しました。

大谷桂三さんの息子 龍生くんの初舞台でもあって、一人だけ小さい所化が元気にセリフをいう場面は盛り上がりましたよ。

(2回目) 展開がわかっているので落ち着いてみることができ、構成の妙にも感心。緩急とりまぜた変化が絶妙です。3つの面の場面の後見さんの動きもチェック。そして何より、評判をきいてリピートしたり幕見に駆け付けた観客たちの喜びが歌舞伎座を揺らす最高のクライマックスで、再見して本当によかったと思いました。黒塚と違って、少々のおしゃべりは許せますしね(笑)

売られている舞台写真は、ドヤ顔が足りないと思いましたが(昼の部参照)、舞台写真入りの筋書きはけっこうドヤっていましたので買いましたよ。編集の方、とってもたくさん奴道成寺入れてくださってありがとうございます。あ、「醍醐の花見」の松也のアップもほしかったです。

(おまけ)

帰宅してから、録画してあった、「美の巨人たち ―― 平櫛田中『鏡獅子』彫刻家の信念と覚悟~5代目尾上菊之助の思い」を見ました。あの、国立劇場の鏡獅子です。リアルな彩色がほどこされているので、木彫りとして傑作だとかあまり認識しないで普段横を通っていました(ちょっと場所が奥すぎて、席に着く直前に通る場所ですよね)。

田中(でんちゅう)さんは、1871年生まれ、108歳まで生きた彫刻家で、丁稚から高村光雲に師事した後、大成した方だったんですね。この大作ができるまで、6代目菊五郎とのエピソードが、映像や試作品で綴られて、感動でした。6代目、お腹はふっくらしているんですが、それ以外は美しい筋肉(ふんどし1丁で1時間もポーズをとったとか)。

まじめな菊ちゃんがゆかりの場所を辿るんですが、最後、鏡獅子のポーズをするんです。スーツなのに(スーツ姿だと、かえって一般の方と比較しての筋肉が感じられます)、くっと、歌舞伎役者のキメの姿勢がかっこよくて、惚れ惚れしました。こんなにキレイなお顔で、肉体にも恵まれて、まじめで、しじゅう人間国宝に教えられて、存在そのものが歌舞伎の財産ですよ、菊之助さん。

「スリル―赤の章、黒の章」

Photo  今クール、面白いドラマが多いんですが、さらにNHKで始まりましたよ、「スリル」。総合(赤の章)では小松奈菜主演、BS(黒の章)では山本耕史主演の連動ドラマ、というので、同じ話を視点を変えるのかな、と思っていたら、それぞれ別の話を、レギュラーは同じで全4話やるということでした(そりゃそうですね)。

  小松奈菜は、警視庁会計課庶務係で、詐欺師の娘。頭が切れて、刑事の小出恵介木下ほうかが扱う事件に首を突っ込んで見事な推理を見せます。山本耕史は、うまく立ち回ろうとして犯人に翻弄される弁護士。

事件は毎回のゲストが犯人なのですが(←ヒドイネタバレ)、ちょっとした推理と、キャラの面白さで気楽に見られます。黒の第1話は、忍成修吾くん、相変わらずかっこよかった!

小松奈菜もかわいいんですが、私としては、やっぱり山本耕史。貧乏弁護士っぽいんですが、どちらかというと間抜けで、ピンチにオタオタする表情がたまりません。でも黒の章ではしっかりアクションもあって、軽快な動きを見せてくれるし、何よりちょっとメッシュにしたヘアもファッションもかっこいいです。どうしてヤマコーがBSなの、ちぇ、と思いますが、まあこういうライトなドラマに主演してくれるのはうれしいです。

ゲスト次第でいくらでも派手になりそうなので、映画化しないかな。

(追記)

黒の章、最終回は大学時代のマドンナ(雛形あきこ)との絡みでしたね。アクションは少なかったけど、白井弁護士、冴えた推理を見せたり、切ない表情とかもあったりして、面白かったです。これで終わらないで、シリーズ化、映画化してほしい!

「カルテット」「おんな城主直虎」「東京タラレバ娘」「バイプレーヤーズ」「A LIFE」「スーパーサラリーマン左江内氏」

Photo_2   今クール、ドラマが面白くていっぱい録画してます。見きれなくて追いついていないし、評判がいいのを面白いって書いても当たり前なんですけど、いちおう書いちゃいますね。

【カルテット】

 まずは「カルテット」。 逃げ恥」の後のこのドラマの予告編を見たときは、サスペンスとか推理とか、めんどくさいので(!)見るつもりなかったんですが、第1話を見たらはまってしまいましたよ。

とにかく主演の4人がすばらしい。ありふれた人物ではないのに、リアルでかっこいい。満島ひかりの繊細な表情、高橋一生の絶妙なバランス、松田龍平、松たか子ももちろんいいです。毎回のゲストもひねってるし、吉岡里帆がここでも存在感。

そしてまるで舞台を見ているような、ち密なセリフの積み重ね。第6回は、クドカンが出てきて夫婦の出会いから破たんまでを見事に描いて絶賛されました。この俳優クドカン、今まで舞台も含めて見た中で一番素晴らしかったです。あんなに豊かな表情だなんて。今まで「自作と大人計画以外は出たりしないで脚本書いてて」と思っていたのが、ごめんなさい、です。

このドラマの脚本家坂元裕二って、すごい才能だと思うんですが、「東京ラブストーリー」は原作コミックの方がいいなと思いながら見ていた記憶はあるものの、最近のドラマは、「MOHER」とか重そうで、見ていませんでした。もったいなかったー。

(追記)

最終回の1回前での真紀さんの驚くべき過去が明らかにされ、カルテット崩壊か、となりながら4人は家族でもない、居心地のいい関係を続けることになった最終回でした。母親に捨てられそうになった子どものようなすずめちゃんの表情がよかったなあ。リアルタイムで見られて本当に良かったと思うドラマでした。ドーナツホールのレパートリーでは、ドラクエと「Music For A Found Harmonium」が楽し気で好きでした。

あ、大倉孝二の刑事さんが「富山県警から来ました」という設定なのは、どこでもいいんだけど「熱海殺人事件」へのオマージュなんだろうな。

おんな城主直虎

Photo_2   「真田丸」の後で不利なスタートとなった「おんな城主直虎」。家康や秀吉が大活躍していた真田丸に比べると、時代もあまり変わらず、登場人物も無名なので不利だと思うんですが、史実を見ると、小粒ではあるものの、かなりドラマチック。ここでも高橋一生が、大ブレイクか、という活躍で(ほんとは優し気な二枚目で、若い頃は人気でも30代後半になったら難しくなるタイプに見えるのに)、第三舞台の芝居で目を付けた私、さすが。一方、最近活躍でかっこいい三浦春馬がまさかの「爽やかクズ」と命名されてそれなりに盛り上がってます。

【東京タラレバ娘】  

Photo 「東京タラレバ娘」、最近コミックを一気読みして非常に面白かったんですが、見る前は、キャストに大不満だったんですよ。コミックは3人娘は33歳という設定なのに、ドラマの吉高由里子、榮倉奈々、大島優子は30歳という設定で実際28歳。一番きれいな時で、33歳の焦り感からは程遠いじゃないですか。じゃあ誰ならって、33,4歳の女優を調べたら(←そこまでやるか)、水川あさみ、深田恭子、真木よう子、ミムラ、栗山千明とかですよ。うーむ、ちょっと重いかなあ。

それから、KEYが坂口健太郎っていうのも、納得いかなかったんですよ。整ってはいるけど、キラキラしたイケメン感とか、吉高に対する年下感がない(実際3歳しかちがいません。コミックだと9歳くらい下という設定なのに)。意外と長身で童顔の松阪桃李くんならよかった!鈴木亮平の早坂だって、背が高すぎてサエナイ感がなさすぎです。

でもですよ、始まったら、けっこう丁寧にコミックのエピソードや人間関係を追っていて、好感が持ててます。坂口くんってさすが売れてるだけあって、繊細な雰囲気がちゃんとKEYっぽいし、なんか表情がせつない。榮倉奈々も大島優子も合ってます。大島優子が、店で通りすがりにてきぱきとグラス片づける手つきなんかいいなと思ったりして。丸井の田中圭も、映画バーのうざい男(あれは無理じゃない?髪型変えろってしつこく言うシーンも入れてほしかった。)もこみちもかなりイメージに合ってるし(もこみちさんごめんなさい)、わりと楽しみに見てます。

(追記)

リンコがもこみちと別れて落ち込んでいるときに、地域おこしのミニドラマ一生懸命やって仕事に目覚めるエピソード、コミックでも好きなんですが、ドラマで丁寧に描いてくれてすごいよかった!ミニドラマ自体もほろっとしたりして、吉高ちゃんうまかったし、坂口君の表情もさらにいい感じです。しかし、KEYと並んだ時、早坂さんにはちょっとずんぐりしてほしかった(←まだ言ってる)。このドラマのキャスティングの人、背の高い男性がよほど好きなんですね。きっと。

さらに第9話、ラストで泣くKEYを綸子が抱きしめるシーン、泣けましたねえ。セリフもよくて説得力があったし、坂口君の演技、吉高の表情。よかったー。

早坂さんと結ばれるべき、という声も多かったようですが、やっぱりKEYでよかったな。

【バイプレーヤーズ】

Photo  こちらも評判の「バイプレーヤーズ」。遠藤憲一、松重豊、「不毛地帯」で悪役ぶりを見ていたときには、あんなにいい人が板につくようになるとは思わなかったなあ(二人とも大河ドラマ「真田丸」や「八重の桜」でも活躍!)と思いながら、楽しく見ています。光石研も好きなドラマの常連で、大杉連は知った時にはすでに悪役は脱していたので、第5話で若者を一蹴するシーンはみものでした。寺島進も今油が乗っていて光ってるし、そこにトモロウのひょうひょうとした雰囲気がアクセント。

実名ものなのにぐだぐだにせず、しっかりお話を作っていて楽しめるところが素晴らしい。こういうドラマってなかったなあ。ジャスミンちゃんの話し方もかわいくって好き。

第4話は、清水富美加がヒーロー物映画の主演という設定でゲスト。あー、かわいくて生き生きとしていて、演技もいいのに、もうこういう姿を素直に見ることはないのではと思うと残念。第5話でも、初めて見る野村周佐藤日向ちゃんに好感でした。

(追記)

ようやく最終回を見ました。脚本、演出で活躍する岩松了さんが重要な役どころ。もうストーリーなんてどうでもよくて、6人のおじさんたちが生き生きと映画やドラマを愛する姿がとても楽しくて、いいドラマでした。

主題歌もよかったですね。オープニングの10-FEETの「ヒトリセカイ」、エンディングの竹原ピストルの「Forever Young」(ダサいタイトル)とも、私の好きなハスキーボイスで、甘さの少ないところがこのドラマに合ってて、よかったです。4

A LIFE ~愛しき人

「A LIFE ~愛しき人」。キムタク主演の医療ドラマで、この枠で「とんび」などいいドラマを作ってきたスタッフ、キャストも豪華ということで、一応見てます。キムタク自身は立派な天才外科医で面白みはないんですが、松山ケンイチが、これまでに見たことのないほど天然のボンボン医者だけど嫌味がないという役どころがはまっていて、見ていて楽しいです。浅野忠信も笑っちゃうほど屈折しすぎていて面白い。木村文乃もかわいい。

しかしほんとはキムタクでは往年の田村正和の「ニューヨーク恋物語」とか「パパはニュースキャスター」的なコメディを見たいんだけどな。

(最終回追記)

やっぱり松ケンと浅野忠信でつくってたドラマでした。TBSの日曜午後のキムタク役作りすごい番組にはちょっとひいてしまいましたが、ストーリーの回収は一番違和感のない形になってよかったです。お坊ちゃん松ケン、新しい魅力でした。すごい俳優さんですね。当初浅野忠信ってこんなに演技下手だっけ、とまで言われていた浅野さん、最後全部かっさらっていきました。手術シーンの話し方も、よく見る天才ドクタードキュメントの手術シーンを彷彿させて、リアルでした。乱れたヘアも、飲んだくれてる姿もかっこよかったし、美冬の手を握るシーンも感動でしたね。

スーパーサラリーマン左江内氏

Photo  舞台では大好きな(そのうちカテゴリつくるかも)鬼才福田雄一脚本・演出の、「スーパーサラリーマン左江内氏」テレビドラマは初めて見ますが、回を追うごとに、ここまでやるのかと自由な雰囲気。福田さん、脚本だけでなく、演出もなんて、先日「ナイスガイ・イン・ニューヨーク」を見たばかりのような気がするのに、すごい仕事量。

キャストも隅々まで妥協なく、ひょうひょうとした堤真一の味わいがいいし、小泉今日子の鬼嫁も痛快だし、「ゆとりですが」でも好演していたぱるるも絶妙。佐藤二朗ムロツヨシはいうまでもないとして、賀来賢人ですよ。イケメンなのに、(「花子とアン」では生真面目な兄ちゃんも合ってたのに)、ケラの「ヒトラー」で開眼したのか、つきぬけたコメディ演技で、最高です。

エンディングのダンスも、キョンキョン、ぱるる、早見あかりの新旧アイドルが本気で踊ってるのが楽しいです。左江内さん以外の家族が来ているジェラート・ピケもかわいい。

さらに、録画だけして見逃してるバカリズムの「住住」やこれから始まる山本耕史の「スリル」も見なくっちゃ。

 

「新選組!」総集編&座談会(主に山本耕史)

Photo   まだ「新選組!」かって感じですみませんが、総集編DVDは多少入手しやすいのと、特典の座談会が見たくて買っちゃいました。

1部が京への出発前、2部が芹沢鴨を斬って新選組がスタートするまで、3部が残りということで、前半に力点が置かれていますが、三谷幸喜が独立して楽しめるように編集したものだそうで、たしかにこれはこれでちゃんと作品になっています。
後半の、山南以外の河合や松村、武田のエピソード(それぞれとてもよくできていた)はカットになってしまったのは惜しいですが、(とくに河合の回は短編として完璧で、とてもよかった)やむをえないですね。ただ、最終回の勝海舟(野田秀樹)のシーンが、全てを納得させる大事なところで、カットされなくてほっとしました。とにかく保存版です。

さて、座談会、試衛館メンバー+三谷幸喜で、楽しく進んでいきます。一番若い藤原竜也は沖田総司そのままの天真爛漫な感じがかわいいです。

印象に残ったのは、山本耕史が、「自分の役どうこうより、香取慎吾が気持ちよく現場にいられるかだけを考えていた」、堺雅人が「僕は(スタッフやキャストみんなに気を使っていた)山本君みたいにはとてもできないと思った」というくだり(今は真田丸を引っ張っていますけど)。

このドラマの撮影中、ずっと山本耕史が、共演者と交流しない主義の香取慎吾を執拗に追い回して携帯番号を知ったというのは、去年の堀北真紀との結婚のとき、さんざん蒸し返され、へんな人っていう印象を世間に与えたと思うんですが。

この「新選組!」が始まった当初、ファンの多い新選組の主要キャストの配役には相当異論があり、香取慎吾じゃ無理とか、山本耕史は「ひとつ屋根の下」(知ってはいますが見てません)のひ弱な少年のイメージしかなく、あの土方ができるのか、と言われていたそうです(その後はもちろんはまり役との認識が生まれたわけですが)。

たしかに、舞台ではいくつも主演しているものの(すでにRENTのマーク役のあと)、ドラマや映画ではそんなにメジャーな作品はまだなかったようで、世間一般には知られていなかったと思うんですが、実力は明らかです。

慎吾ちゃんが、演技は心もとないのに、アイドルとして忙しかったとはいえ、主演としての自覚もないような態度でいたら、普通は2番手の実力派舞台人としては「なめんじゃねー」と反発しそうなものなのに(そういうマンガの読みすぎ?)、このままではドラマ自体がうまくいかないという危機感が、山本耕史にそういう態度をとらせたんでしょうか。このドラマをすべて見た後では、すごい、と思ってしまいます。

じっくり見ても、ミリ単位の目や唇の動きで、豊かな感情を表す耕史くんに対して、時間当たりの表現の豊かさは十分の一くらいの慎吾ちゃん。それでもサポートに徹するって、どれだけプロ意識なんだろうと思います。

そのへん、三谷さんはすごーく理解していた(というか、共演者もわかっていたようです)、その後も、「真田丸」で三成をあてたように、彼をすごくかわいがっているみたいですね。最終回の往年の土方役者栗塚さんの「よくやった」のシーンは、ほんとの涙があふれてていいシーンでした(総集編にはさすがにそこまで入っていませんが)

山本耕史って、赤ちゃんモデルから大成した珍しいケースで、ずっとお母様のマネジメントで個人事務所なんだそうです。好きな仕事、彼自身を必要とする仕事だけを貫いているというのは、大河ドラマから、マイナーな(派手なのも)ミュージカルまで、本当にいろいろな仕事をしているのをみるとわかります。

もう彼の舞台、これからは見逃さないぞ、という決意をした次第。

(追記)

Photo  その後、「土方歳三最期の一日」TVNavi特別編集メイキングムックを入手しました。山本土方はじめ出演者のインタビューや写真がいっぱいなだけでなく、セットの解説、新選組!放映時のTVNaviの山本耕史の連載コラム(ときどきキャストとの対談も。堺雅人とは特に面白かった!)、三谷幸喜との対談、三谷幸喜や吉川邦夫プロデューサーのエッセイ、新選組縁の地まであって、中身が濃い!ほんとに保存版のいいムックでした。

三谷さん、10年後にはすごい豪華キャストだといわれる自信があったそうですね。

大河ドラマ「新選組!」@2004と「土方歳三最期の一日」

Photo   「真田丸」が面白すぎるので、同じ三谷幸喜脚本のこれが気になっていたのと、山本耕史が結婚したとき、香取慎吾の連絡先をストーカーまがいにゲットした話がよく出ていたので見たかった「新選組!」、12年前の作品ですが、DVDで一気に見ました。後半はもうやめられなくて、生活がたいへんなことに(笑)。

放映されていた2004年は、大河ドラマをあまり見ていない時期でしたし、子どもの頃「竜馬がゆく」を読んで以来倒幕派だったので()新選組には全く興味がなかったし、香取慎吾君は嫌いじゃないけど「近藤勇」って無理じゃない?と思っていたんですよね。

しかし、今回、このドラマを通しで見ることができて、本当によかったです。なぜ山本耕史の代表作といわれるのかもわかったし、三谷幸喜という脚本家の凄さも遺憾なく発揮されていることも思い知りました。これがあっての、あの、重厚な手練れの俳優たちを活躍させている今の真田丸があるのか。  

最初は、江戸の天然理心流の道場試衛館と多摩が舞台で、大河ドラマとしてはずいぶんのんびりとしています。多摩の農家に生まれ近藤家の養子になった勇(香取慎吾)と行商をしている土方歳三(山本耕史)は、武士そしてひとかどの者になりたいと思いながら、悶々としています。いろいろな素性の剣士たちが勇を慕って道場の食客になったり、勇と坂本龍馬や桂小五郎がけっこう仲良くしていたり。このへん、ちまちましていて、小日向文世や田中邦衛、野際陽子、岩崎加根子たちがいい味を出してはいますが、従来の大河ファンには地味すぎて面白くなかったところでしょう。しかし、ここで百姓の家に生まれた勇と歳三の武士へのコンプレックスや、のちに新選組の幹部となる食客たちとの関係を丁寧に描くことによって、新選組の本質や、後の彼らの気持ちがよく理解できるのです。
 
勇たちは、幕府の募集に応じて京に行き、壬生浪士組―のちに新選組を結成します。お馴染みの新選組の形になるまでの苦労、池田屋事件での活躍、法度による隊の締め付けと綻び、竜馬や薩長の動きによる時代の激動と新選組の崩壊、近藤勇の死までは少しもだれることなく描いていきます。京に旅立つのが1863年で11話、芹沢鴨(佐藤浩市)に振り回された挙句彼を抹殺して新選組が誕生するのが25話、幕府が崩壊し、新選組の立場がどんどん変わっていくのが45話くらいからで、勇の死が最終回の49話で1968年、京に上ってからたった5年です。新選組と徳川幕府が完全に終わる中、勇の死の意味と仲間の決断が、説得力を持って描かれます。
 
数多くの登場人物のキャラクターがきっちり確立されていて、考えや行動に必然性があり、単純な悪役はいないところは、真田丸と同じ。また、複雑な幕末の政治的な流れを、要領よく語っているのも同様です。何度か大河で幕末物は見ていますが、この「新選組!」がいちばんわかりやすくて、初めて池田屋事件の意味がわかりました(わかってなさすぎ)。放送当時、史実を無視して近藤勇が桂や竜馬と親しすぎると批判があったようですが、新選組の内情に終始するより、彼らの置かれた時代背景がよくわかって、大河ドラマとして面白くなっていたと思います。
 
出演者が、今見ると本当に豪華で、しかも12年前だけに皆さん若々しく、素敵です。主役の香取慎吾は、慎吾ママの後ですから、人気絶頂の頃(翌年は「西遊記」)とはいうものの、山本耕史、オダギリジョー、堺雅人、藤原竜也、勘太郎(現勘九郎)、谷原章介たちは、当時はそれほどには知名度はなかったのではと思うんですが、彼らの演技力は今とそん色なく、惚れ惚れします。
 
香取慎吾は、まあ、心配が半分は当たったというか。若い頃はまだいいんですけど、後半はさすがにせりふ回しの幼さがちょっと辛い。でも、ひときわ体も顔も大きくて、誠実な目が、勇らしいといえば勇らしく、皆の中でも大きな雰囲気を保っています。少なくともドラマを壊していないのは脚本と演出と本人の努力でしょう。SMAPで活動しながら主演してたんですね。
 
山本耕史の土方歳三、序盤はやりたいことも見えず腐っていたのが、京で近藤勇を盛り立ててのし上がっていくために、汚いことにも手を染め憎まれ役に徹する鬼の副長。新選組の法度は苛烈ですが、それへの苦悩も十分表現され、とても素敵。仲間へのキレのいい突っ込みも最高です。近藤勇への対比を意識してか、並んで座るときはわざと猫背気味に座って小さくなっていたり(後から実際に猫背だったと知りましたが)、着物の前のはだけ方やら、刀のさやの飾りの赤い紐やら、本当に細かい一つ一つで、土方歳三を演じています。たしかに、耕史ファンとしては、マストだったなと実感しました。話題になった香取慎吾へのアプローチですが、後になるほど、新選組での表向きの上下関係の中で、ごく稀に出る「かっちゃん」「トシ」のやりとりが効果的で、意味があったんだなと思います。

三谷さん、この4年前から彼の土方を構想していたそうで、よほど好きなのか、多摩音頭を歌うとか、上半身脱いで鈴木京香と絡ませるとか、田中邦衛のモノマネ許しちゃうとか、秘蔵っ子扱い。しかし、最初の頃はしっかり描かれていた「土方はいい男で女にモテる」設定の描写は、京ではほとんどなくて、そこだけが物足りないと思いました。
 
これが出世作となった堺雅人の山南敬之、当時31歳、知的な雰囲気、上品な笑顔で、もう今と変わらない堺雅人。明里(鈴木砂羽、素晴らしい)とのシーンは感動でした。

オダギリジョーの斉藤一も最高。当時山本耕史と同じ28歳、最高に美形、ニヒルで無口に見えて、人一倍誠実で優しくて義理堅いところがたまりません。

 藤原竜也は当時まだ22歳ですが、すでに蜷川さんの秘蔵っ子として売れていたからか、沖田総司としてクレジットは香取慎吾の次です。目がすごくキレイで、一番の剣豪らしい動きも美しく、人生で一番楽しい時期に、結核に倒れた無念さがこのドラマのもう一つの軸になっています。ベタな役なのに、さすがだと思います。彼が土方の理解者であるのもきいています。

勘九郎(当時勘太郎、藤堂平助役)も23歳、当時テレビでは無名に近かったと思いますし、メイクをほとんど感じない素朴なルックスで、軽い扱いなんですけど(今の勘九郎になる人には見えない)、生真面目な雰囲気で、ときどき歌舞伎の見事なせりふ回し。後半にはなかなかの見せ場がありました。

 政治家になってしまった山本太郎を俳優としてみたのは初めてだったんですが、この人にしかできないような面白くてハンサムな原田左之助を好演。俳優をやめてしまったのがもったいないです。

 最近そんなにみませんが、久坂玄瑞の池田博之。熱っぽい目がきれいで、情熱的な演技、去年の大河の人とは違う~と思ってみてました。当時22歳の吹石一恵も整った美貌と演技力でとっても好感が持てました。

 ほかにも、へえこんな役にこの人が、と思うキャスティングもたくさん。

何といっても、野田秀樹の勝海舟。うわ、この人こんなに普通のテレビのお芝居できるんだ、とびっくり。頭の良さそうな、時代をすべて見据えていそうな、シニカルな雰囲気で、石坂浩二の佐久間象山との場面は最高でしたが、終盤の土方とのシーンは、セリフも表情も切なくて、この悲劇を全て救ってくれました。ここでは山岡鉄舟の羽場裕一がいて、わー遊眠社!と盛り上がっちゃいます。

  そして、演出家として活躍している白井晃(「マハゴニー市」の演出もこの人)の、ひと癖ある清河八郎。この方、お年よりも若々しくて、かっこいいです。

  大阪奉行の敵役内山様はささきいさお。うわーこんなに長くドラマで見たの初めて。はじめささきさんとは知らなくて、ほんとに憎らしかったです。

あ、また橋之助が天皇役だ、と思ったのは、お兄さんの福助でした。歌舞伎からはもう一人、かなり目立っている捨助の獅童。あー、獅童ってこのドラマだったらかなりの役がはまると思うんですが、なぜか捨助。三谷さん、真田丸のきりちゃんといい、ウザいキャラがほんとに好きで、書いていて楽しいんでしょうね。

土佐藩士の望月亀弥太に三宅弘城、「あさが来た」で亀助だったのは、この亀からとったんですかね(あさ来たのスタッフは絶対、新選組!好きですもんね)。橋本左内に番頭はんの山内圭祐やら、河合耆三郎に大倉孝二やら、舞台人がいっぱい。医者の松本良順、知的かつ骨のある雰囲気いいなあと思ったら、田中哲司じゃないですか。岩倉具視の中村有志、ピン芸人で出てきた時からけっこう好きなので、なかなか板についた胡散臭い公家ぶり、よかったです。本願寺の寺侍で、新選組を見つめ、後に回想記を書く西村兼文に本間健一、知的で客観者の雰囲気がいいなあと思っていたら、タップが得意でミュージカルの振付やステージングを多数手がけている人だとか。

龍馬の妻おりょうの麻生久美子。いつもいいなあと思う女優さんですが、新選組!見ていたらもっと早く知っていたんですね。彼女が出ていた「泣くな、はらちゃん」で面白い役を演じていた甲本雅裕も、印象的な役でした。巨漢で土方に忠実な島田魁の照英もとても合っていて好演でしたし、同じ監察方の山崎の桂吉弥もすごくよかったです。


「八重の桜」でも活躍していた佐藤B作は幕臣の永井様。滑舌がよくて骨があって立派でした。軍師武田の八嶋智人、トリビアで売れた後ですね。ちょっとインチキくさすぎて浮いてましたね。


 今真田丸で2度目の小早川秀秋を演じている浅利陽介が、当時17歳で、勇の養子となる周助、おとなしく剣の腕は未熟で、同輩にいじめられたりするんですが、けなげにがんばる姿がいいです。

 きりがないですが、佐藤浩市の芹沢鴨と、鈴木京香のお梅さんも強烈、彼らのいい時にいい役をやっていたなあ、と、特に佐藤浩市以外の芹沢鴨は考えられないくらいでした。破滅的な生活と、信念と、プライドと、凄みがありました。見ていてうんざりするくらいで、それだけに彼を暗殺して本当の新選組誕生がドラマチックでした。

あまりにみんながいいので、江口洋介の竜馬や宇梶剛士の西郷どんも、歴代の二人と比べてもかなりはまっていますが、この豪華キャストの中では比較的普通(失礼)。

それから、かつて土方を演じて当たり役とされた栗塚旭が歳三の兄、沖田を演じた島田順司が沖田の晩年世話をする植木屋平五郎と、リスペクトが感じられる配役です。映画の「マンマ・ミーア」や、「レ・ミゼラブル」に舞台版の主要キャストが脇役で出演しているような感じでかっこいいです。

Hijikata   そしてもちろん、大河初の続編「土方歳三の最期の一日」も(2006年のお正月ドラマ)も見ましたよ。

土方が勇の死後、部下には優しくなって、懸命に生きて、力尽きるまで、洋装の山本耕史がご覧のように超かっこよくて最高でした。

愛之助、このとき見ていれば、もっと早く知っていたのに。治部、刑部の友情はここからだったんですね。そして大鳥圭介の吹越満。今から見ると、あまちゃんでのジオラマ好きはここからだったのか、とちょっとおかしいです。今や人気者の、鉄之助役の池松壮亮くん15歳がかわいかったです。


そして、現在、新選組関係本を読んでおります(←あーあ)

「真田丸」「ゆとりですがなにか」「トットてれび」&「ちかえもん」

Sanadamaru 三谷幸喜の大河ドラマ「真田丸」、毎週とーっても楽しみにしています。

戦国時代は何回も大河でやっているし、家康に敗れてしまう悲劇の武将真田幸村(だから今まで真田ものはほとんど読んだことがなかった)が主人公なんて、とみる前はちょっと危惧していたのですが、歴史オタクの三谷さんが最新の研究成果やら知る人ぞ知る小ネタやらを盛り込んでくれて、まったく新鮮な歴史ドラマになっていると思います。

たった45分の中で、笑いあり、ほのぼのあり、話が進む部分とじっくり描く部分が自在です。同じ状況だが対照的な2つの人間関係を同時に描写するのも得意。そして一番いいと思うのは、毎回演劇的な緊張感があって、役者さんたちの気合の入った演技がみられる長いワンシーンがみられるところ。たとえば、昌幸パッパと源次郎、源三郎親子の真田生き残りをかけた作戦会議、信長との対面、室賀正武の暗殺、家康の上洛、落首事件の決着…。 

主役は今人気の堺雅人大泉洋なんですが、三谷さんの舞台やドラマで活躍してきた実力派、舞台中心の役者さんが隅々まで脇を固め、個性を発揮していて、役者を見るのが楽しいです。愛之助、藤井隆、迫田孝也(三十郎)は「酒と涙とジキルとハイド」に出てたなーとか(愛之助の「儂がやろう」、所作が美しくてかっこよかった!)。超切れ者の信伊は元劇団四季の栗原英雄、出番は1回ですがこの人が生きていれば歴史は変わったのではと思わせた織田信忠の玉置玲央や、強烈な印象だった尾藤道休の横田英治(「ピアフ」でマルセルやってました)、最初に武田勝頼で評判をとった平岳大もどちらかというと舞台の人ですね。

最近妙な人気が出てきたおこうさんは第三舞台の看板女優長野博美だし、出雲阿国で迫力ある姐さんぶりを見せてるのはミュージカルの実力派シルビア・グラブ。大蔵卿の峯村リエはケラのナイロン100℃の創設メンバーだそうです。

これだけの登場人物に見せ場を与えつつ、主要キャストには、さらに複雑な立体感のある人物像を作り込んでいて感心します。最大の敵役なのに、笑えるのに、忠実な譜代の家臣を持ち、人間味があって、もうこの人が最後に天下をとるのは当然だなと思わせる内野聖陽家康。最新の「前兆」ではコンプレックスと残忍さと哀れさを豊かな表情で演じきった小日向文世秀吉。理が勝ちすぎたやなやつと見せておきながら、危機には信繁を黙れと一喝して、命懸けで秀吉をいさめる熱い男山本耕史三成。このときの三成かっこよすぎ(いや、もともと山本耕史さん大好きです)。なんとなく能天気で平凡な女に見えた鈴木京香おねも、名古屋弁で秀吉を叱るシーンはさすがと思いました。うざかった長澤まさみのきりちゃんは、今や出てくるとほっとする役回り。三谷さんが何度も起用する女優なんだなと初めて感心。

こんな状態なので、ツイッターの#真田丸、異様に盛り上がっていて、毎回見終わってから、これを読むのがまた楽しいし、隠れた歴史ネタの勉強にもなります。そしてつい録画をもう1回見たりしちゃうのでした。

と、ちょこっといいですね、と書こうと思っただけなのに、えんえんと語れそうな真田丸、こんな素晴らしい大河は見たことがありません。前作がかわいそうだし次回作のプレッシャーもたいへんでしょうが、まだまだ先が長いことを楽しみに、見ていきますよ。

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さて、同じ日曜日にやっているのがクドカンの「ゆとりですがなにか」。

フィルムドラマなので、昔の青春ドラマを彷彿とするんですが、内容はほんとに、今、のドラマです。クドカンドラマの中では、「木更津キャッツアイ」を、もっと登場人物のシチュエーションを現実っぽくして、構成も緻密にして、という感じ。いろんな意味で大河とは真逆なんですが、クォリティはものすごく高いと思います。出演者が役との対比でも新鮮ではまっています。

岡田将生なんて背が高くて美形なだけじゃん(←それだけでも十分ですけどね)と思ってましたけど、一気に好きになっちゃいましたし、桃李くんも柳楽優弥もいいです。妹役のぱるるもとっても役柄に合っててかわいくてうまいし、あさが来たのノブちゃんがまるで別人の教育実習生。太賀もウザさがうますぎてうわあです。しかし特筆すべきは初めて見る安藤サクラ。スーツのときの仕事のできる女と、普段のホンワカの落差が大きいんですがリアルで、こんな女優初めて見るような気がします。前回の山路に本音をぶちまけるシーンは、せつなくてほろっとしちゃいました。

このドラマにくらべると、「ごめんね青春」はちょっとぐだぐだだったな。これ、クドカMekuruンドラマの中でもかなりの傑作です。

そうそう、最近みつけて、Mekuru創刊号のクドカン特集を入手して読んでみたんです。2013年の舞台「高校中大パニック」の上演の頃の、舞台、映画、ドラマ、俳優の全作品についての本人解説が載っている、ファンなら完全保存版てやつですが、あまりの仕事量の多さにくらくらしました。見ていないドラマ、映画もたくさんあって、これからどうやって追いつこうか、と。

やっぱり天才ですね、クドカンさん。


Photo最後はNHKドラマ「トットてれび」。黒柳徹子さんとテレビの歴史のドラマなんですが、満島ひかり、アクセントも含めイメージそっくり。なんともおっとりしたお嬢さんで、昔のワンピースもとてもかわいいです。

森繁(吉田剛太郎、「ゆとり」にも「真田丸」にも出てるってすごい)や沢村貞子(岸本加代子)、坂本九(錦戸亮)、渥美清(中村獅童)たちが、当時はこんな感じで見られていたんだろうな、という雰囲気で出ているのが楽しいんですが、再現に凝りすぎて、ドラマとしてはさほどおもしろくないのがちょっと残念なのでした。

(追記)

「ゆとりですがなにか」と「トットてれび」が最終回を迎えました。ゆとり、最後まで面白かったです。クドカンさん、きれいにまとめましたね。出ていた俳優さん、みんな今までより好きになってしまう、すごいドラマでした。代表作の一つになりましたね。

「トットてれび」も、後半はトットちゃんと友人たちの交友を温かく描く佳作でした。満島ひかり、小気味よかったです。

「真田丸」はますます快調。回を重ねて、登場人物の性格がさらにくっきりしてきているので、わずかな表情の変化でそのシーンの気持ちがよく伝わってきて、さらに場面ごとの情報量が増えて深みが増して楽しいです。耕史ファンの私としては、三成の人気がうなぎ登りなのもうれしい。どうしてこういう人間関係から、関ヶ原の敵味方が決まるのか、まだまだわかりません。

(追記その2)

このクールで評判がよいので途中から録画していた「ちかえもん」、ようやく見ました(後半4回)。いやー面白かったー。近松が傑作「曽根崎心中」を書き上げるまでの、いきさつを描いた「娯楽時代劇」です。

おっさんながら豊かな表情がかわいい近松門左衛門(松尾スズキ)、ピュアなぼんぼん徳兵衛(小池徹平)、ところどころせりふに物足りなさはあるもののキレイで雰囲気のあるお初(早見あかり)、あれ、こっちでは悪役だったのね「あさが来た」のかっこいい親分山崎銀之丞(この方ハンサムです)、ほんわかとした優香、お年を召したなと思うものの所作がきりりとした母上(富司純子)、義太夫がんばった北村悠紀夫。そして感心したのが、能天気でひたすら明るく愛すべき万吉(青木崇高)。甲高い声の特異な役なんですが、のびのびとしていて、ああ、これは優香が好きになっちゃったのも無理はない、と、二人の電撃結婚に、納得してしまいました。面白かったよー。

(追記その3)

「ちかえもん」、脚本の藤本有紀氏が向田邦子賞をとり、10月末に深夜に一挙再放送され、前半も見ることができました。 万吉との出会いや、お初徳兵衛が恋に落ちるところなど、重要なエピソードを含め、完結して満足。1話の中でのバランスがとてもいい、ほんとうによくできたドラマでした。藤本さん、あの松尾スズキをああ使うユーモアのセンス、すばらしい!大河の「平清盛」の世界より、こういう方が合ってるんですね。私もこちらの方が好き。これからも期待です。

(追記その4)

2017年2月、国立劇場で「曽根崎心中」が上演されたので見てまいりました。ちかえもんを思い出しながら、若い二人の純愛、九平次の悪役ぶりを楽しみました。江戸の庶民も、この演劇的にドラマチックな作品を、ほんとに愛したのだろうなあと思うと、楽しかったです。

朝ドラ「あさが来た」-働く女性のユートピア

Asagakita「あまちゃん」「花子とアン」のあと、二つ飛ばしてまた「あさが来た」にはまっています。題材、脚本、キャストとすべてそろったいいドラマですね。

主演の波留って、「ごめんね青春」のときは役柄もあってそんなに好感持てなかったのですが(すみません)、今回は日本髪もよく似合ってて、商売に熱中するあさを熱演。だんだん貫禄が出てきて、頼もしいです。

モデルの白岡浅子さんは、まったく知りませんでしたが、明治の女性実業家の元祖のような方、しかも事業だけでなく、最後は女子教育に貢献したというところが立派です。大阪証券取引所の前に銅像があるほど大阪経済の基礎作りに奔走した元薩摩藩士五代友厚のことも初めて知りました。

キャストはあさの夫新次郎の玉木宏がはまり役、五代さまのディーン・フジオカが新鮮なかっこよさなのはもちろん、脇に至るまでほんとにみなさんいいですね。最近男を上げた亀助の三宅弘城、クドカンの舞台でドラムやバク転で大暴れしていたあの彼、コメディセンスはさすが。陰気な白蛇のはずが愛妻家になった惣兵衛の柄本祐、つかこうへいの「熱海殺人事件」にも出ていた親分山崎銀之丞、台詞まわしはやや不器用?と思いましたが凄みのあったサトシ長塚圭史、あまりに下品で亀助の引き立て役となったふゆの父上杉祥三は元夢の遊民社でシェイクスピア俳優だそうですし、のっぺりしたふゆの求婚者山本浩司は、映画監督でもあるそうで、有名ではなくともきちんと芝居のできる、深みのある役者さんたちをうまく使っています。

その中で最近お気に入りは栄三郎(桐山照史)。ぼんぼんで商売熱心で、雁助を頼りにあさと対立もするけれど、物事に予断なく是々非々で当たるところがいい感じ。まだ若いジャニーズWESTの人だそうですが、どうして、ただモノじゃありませんよ。

もちろん、あさの姉はつの宮崎あおいの細やかな演技もドラマを盛り上げています。こんなにうまい人だったなんて、初めて知りました。

でも、このドラマでいちばん好きなところは、働く女性の気持ちを代弁してくれているところです。

あさ自身は、勉強や新しい知識を増やすこと、数字から状況を分析することが好きで、仕事自体に生きがいを感じ、必死に努力します。よくドラマにあるような運だのみのヒロインではなく、誠心誠意、自分が動いて、仕事のピンチを打開していきます。

時代柄、父母からは女のくせに、というしつけはされましたが、祖父にはその才気を可愛がられ、さらに結婚してからは自らも有能な商人である舅にも認められて仕事をさせてもらえるようになります。あさは謙虚で、失敗や言い過ぎ、勇み足には反省するところも、世間のバリバリ女性のイメージより柔軟ですてき。

ハンサムでかっこいい旦那様は仕事はしませんが、知的で(読書家)人脈もあり、困ったときには励ましたり陰で助けたり、大好きな姉のことまで気配りしてくれます。さらにイケメンのメンター五代さまがいて、新しい世の中の動きを教えてくれ、励ましてくれます。

やがて実父母もあさの働きを理解してくれるようになり、のほほんとした姑も優しく見守ってくれます。九州に行っている間に母乳が止まってしまった(なんてリアルなんだ)とき、乳飲み子がいるのに仕事で離れたからだなどとは言わず、「あんたもつらかったやろな」と言ってくれたよのさん。働く母たちに、なんて優しいことばでしょう。

最愛の娘は、旦那さまや信頼できる女中、姑がかわいがってくれます。娘に「どうしてほかのお母さんとちがうの?」とはきかれても、現代の首都圏で通勤する母たちに比べたら、どれだけ安心なことでしょう。子どもと接する時間も、そんなには少なくないのではないでしょうか。

しかもこれから仕事はさらに成功するようで、本当に理想の世界。でも、朝ドラの中でくらい、夢みたいな世界を味わうのもいいなあと思ってます。

実際には、浅子さんは、女中を夫の妾にして世話をさせ、彼女が生んだ子供たちも育てるようですが、今の感覚ですとそれはつらい。あのかわいらしいふゆちゃんが、世の妻たちから嫌われるような展開になったらどうしようとハラハラしましたが、脚本の大森美香さん、このドラマのファンの気持ちをよくわかっていてくれているんですね。

これからも楽しみにしています。

(追記)

今日4月2日、「あさが来た」は最終回を迎えました。

日本最初の女子大学設立に奔走し、有力者を動かし、実家の援助を得て、とうとう夢を実現したあさ。この女子大が、今でも立派に女子教育を行っているのは、すばらしいことと言えましょう。

新しいキャストの、成澤先生の瀬戸康史は若いながらキラキラと理想を語る好青年でしたし、物静かなしっかりした千代の夫工藤明須加も好演でした。千代は最初、なんてわかってない子なんだと思いましたが、あさがけがをした時の涙には泣かされました。若いのにいい若奥さんを演じて見事でした。のぶちゃんもかわいかった。

このドラマを支えてきた新次郎、栄三郎、はつ、平さん、美和たちも最後まで、年を重ねながら、いきいきと演じてくれました。

「堪忍な」「そうかもわかりまへんな」「そうか」…といった、優しいことばで、お互いの意見を認めながら、しっかりと自分の意見をいうこのドラマの人物たち。

「頭脳と柔らかい心で、社会に貢献する女性」と、夫婦愛というテーマを、楽しく見せてくれたこのドラマ。本当によかったです。

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