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テレビドラマ・バラエティ

ドラマ「きのう何食べた?」と「いだてん」第一部完

  201906_20190629140101テレビ東京のドラマ「きのう何食べた?」終わってしまいました。よしながふみの原作コミックは料理好きの友人の間で話題でしたが、読んだことがなく、西島・内野というキャスティングだけで見始めましたが、ほんとに丁寧に作られた、最初から最後まで満足度の高いドラマでした。

弁護士で料理好きのシローさん(西島秀俊)と、美容師のケンジ(内野聖陽)はゲイカップル。シローさんにぞっこんで乙女なケンジと、カミングアウトに抵抗があることもあって、ツンデレなシローさん。このシローさんは宛て書きかというくらい、西島秀俊にはまっているんですが、乙女なケンジに見事になりきっている内野聖陽がすごすぎ。この人の憑依的な演技力を改めて思い知りました。あの家康?竜馬?勘助?というくらい。

もっと絡みが見たかった、もう一組のカップル、小日向さん(山本耕史)と航(磯村勇斗)も、とってもよかった。あくまで外見はかっこいいのに航にメロメロな小日向さんと、客観的にはダサいビジュアルなのに、小悪魔な航。山本耕史ー内野聖陽の場面は、家康と三成@真田丸だ、など。

原作コミックがよいためもあるのでしょうが、リアルなセリフが、一生懸命生きている人たちを尊重する描き方で、どの回もすばらしく、毎回ケンジの気持ちになって泣いちゃってました。梶芽衣子、田中美佐子、マキタスポーツ、奥貫薫ら、共演者も、みんな合っていて、テーマ曲もすごくよかったです。

 

Photo_20190629140101

  さて、低視聴率のニュースにはらはらしながら、「いだてん」いだてん前回の記事)の第一部、勘九郎主演部分が終わりました。毎回ちがう見せ方をしながら、近代日本においてスポーツと女性がどういう歴史を辿ってきたかを見事に描いた傑作でした。

丹念に歴史のエピソードをを拾ってきたり、セットや衣装に凝ったNHKスタッフも立派ですが、とにかくこの、誰も描いたことのない時代を、こんなに魅力的に描いて、なお押しつけがましくなく、スポーツや女性の自由のすばらしさを感じさせてくれるクドカンの脚本。何回にもわたる伏線が心憎いばかりで、何度も前の回を見たくなります。

第一部最後の回、シマちゃん(杉崎花)の死は悲しすぎる、と思ってみていると、鮮やかな人見絹江(菅原小春)の登場で、関東大震災で焼けてしまった東京の町に、明るい希望の灯が点る展開にはうなりました。熊本の幾江さん(大竹しのぶ)をはじめ、第一部の主要人物が生きてる人は総出で、でもただの顔見世になっていないところもうまい。さらに美川くんは出さずにかえって見る側に思い出させるところも愛を感じます。

第2部も楽しみです。

 

 

 

NODA・MAP「表に出ろい!」・ドキュメント「超・演劇人 野田秀樹 密着555日」

201904_3     NODA・MAP番外公演「表に出ろい!」を映像で見ました。2001年からの野田版の歌舞伎が好評を博した後、2010年に勘三郎・野田秀樹の最初で最後の共演となった現代劇です。

 能楽師の父(勘三郎)は、東京ディスティニーランドが大好きで、友人とパレードを見に行くつもりですが、その日は母(野田秀樹)が、ジャパニーズのライブに行く日。愛犬のお産のために、留守番を押し付けあう夫婦。娘(黒木華)が帰宅しますが、友達と限定グッズの列に並ぶために出ていくといいます…。

実は、NODA・MAPは家で見るにしても、一人でゆっくり余裕のあるときに見たいと思ってしばらく先延ばししていたんですが、登場人物は3人だけ、家のリビングでの軽快なやりとりで、構えずにみられる芝居でした。

舞台装置(堀尾幸雄)は、写真の衣装と同じ色調(ひびのこづえ)のカラフルなもの。このお二人、ずっと野田作品を支えていますが、毎回多彩で美しい。

新鮮だったのは、最初の夫婦の、どちらが出かけるか、いつどちらが連絡したのか、のやりとりのリアルさ。これ、そのまま子どものいる夫婦の会話ですよ。こんなに生々しい、でも面白い台詞、書こうと思ったらすぐ書けちゃうんですね。

もちろん勘三郎さんの勘のよさとか天性の愛嬌とか、こういうお芝居でもすごい役者だと思いますが(ちょっと汗かきすぎなんだけど)、野田秀樹の母役がすごい!

若い頃の遊民社の彼は、走り回り、ボケとツッコミを一人で叫び、一座をひっぱるというか引きずり回す感じで、とくに20代でもおばさん役が大好きでした。ここ数年再見するようになった野田秀樹は、いい役者に主役を譲り、芝居のスパイス的な役回りで、もう年だし仕方がないな(失礼)なんて思ってたんですよ。

しかしこの芝居は3人だけなので、往年以上の野田秀樹成分の濃さ!信頼する勘三郎さんとがっぷり四つに組んで、緻密な脚本を即興的な雰囲気で(きっちり演出されているのかもしれませんが)演じる楽しそうな野田秀樹。相変わらずの柔らかな身体、しかもおばさん役。

そして黒木華!京都造形芸術大在学中にオーディションで、この作品の前のNODA・MAP「ザ・キャラクター」のアンサンブルでデビューした直後ダブルキャストでの娘役。声、台詞、自分の信念を両親に主張する迫力、軽い動きと、この二人を前にして一歩も引かない熱演で、もう完全に出来上がってます。

この作品、最後まで笑いながらも、前作「ザ・キャラクター」の狂信集団を見た人は、設定がより深く理解できるということで、「人それぞれが信じるもの」というテーマをしっかり描いていてさすが。野田秀樹の3,4人くらいのこの規模の芝居、ぜひまた。今度は生で見たいものです。

 

追記・ドキュメント「超・演劇人 野田秀樹 密着555日」

このすぐ後に、WOWOWの野田秀樹の密着ドキュメントを見ました。さすが演劇に力を入れているWOWOWさん、超・演劇人とはよく言った。

まず2017年の歌舞伎座での「野田版・桜の森の満開の下」のリハーサルに始まり、松たか子も参加したワークショップ、前述の「表に出ろい!」の英語版の上演ドキュメント、2018年の「贋作 桜の森の満開の下」の舞台作りとパリでの上演と、最近見たものばかりで興味深かったのと、舞台裏、野田秀樹のインタビューがたっぷりで、ものすごく面白かったです。

野田版桜の森では、映画版パンフレットに載っていた、「高いところが平気な夜長姫七之助と、怖がる耳男勘九郎」が実際に見られましたし、「表に出ろい!」は前述の2010年版と同じところと、イギリス人俳優(キャサリン・ハンター、グリーン・プリチャード、しかもこの二人が父と娘を、男女逆転で演じるというしかけまで。ちなみに父の職業は能楽師ではなくてシェイクスピア俳優!)ならではの違うところが明確に見えました。ルーマニアの演劇祭で上演したのですが、この演劇祭自体がとてもきれいで面白そう。

贋作桜の森は、紙やゴムバンドを使った演出ができあがってくるところ、そしてパリでの上演の苦労。

野田秀樹自身の精力的な仕事ぶり、密度の濃いことば遊びの綴られる芝居を英語で上演する、しかも主役の一人は自分というのは本当にすごい。とくに舞台装置のしかけや字幕の段取りなどの苦労は、以前読んだ「野田秀樹」のムックにも率直に語られていましたっけ。

演出家らしく、自分の仕事を無駄のない詞で的確に説明する姿もかっこいい。ついでにファッションも遊び心があって凝りすぎなくて好みでした。

大河ドラマ「いだてん」と「まんぷく」

201903_2   今年の大河ドラマ「いだてん」。クドカンがいよいよ大河の脚本を書くのはうれしいけど、まさかの明治以後、東京オリンピック前年にオリンピックモノとはあざとい、なんて思っていましたが、いやいや、最高です。無駄のない台詞に加え、構成力にますます磨きがかかったクドカンの脚本を、NHKが惚れきって映像化しているだけあって、とにかく映像もキャスティングもそれにこたえる役者さんの演技もすばらしい。

オープニングも凝っていて、絵はあの山口晃の、当時と現代が同居する洛中洛外図風の生き生きとした絵、映像は、ワンピース歌舞伎やケラ舞台の上田大樹、音楽は「あまちゃん」の大友良英。何度見ても飽きないオープニングです。

ドラマの始まりは明治の末、日本が初めてオリンピックに参加を決めるところから。日露戦争の勝利後、第一次世界大戦の前です。初のオリンピック代表の一人三島弥彦(生田斗真)はスポーツを楽しむ東大生で、その父は池田屋事件に関与した薩摩藩士ながら、維新後は県令や警視総監を歴任し、三島家は名家として洋風のお屋敷に暮らす、という、スポーツ界ではなく(というよりスポーツ界自体がまだ存在せず、一部の知識人の道楽という時代)、近代日本そのものが描かれています。

日本のオリンピック史に重要な役割を果たす東京高等師範学校校長の嘉納治五郎(役所広司)は、柔道の父として有名ですが、リベラルで国際感覚を持った紳士で(辛亥革命が起きたとき、清国からの留学生の学費を借金して肩代わりして、勉強を続けさせたりしてます)、こういう人が日本のスポーツの歴史の初期にいたとは。さすが役所広司、場面に重厚さを与えながらも、「乗れなかったよ」で笑わせてくれました。

主人公の金栗四三、全く知らなかったですが、熊本出身で素朴な外見ながら、勉学優秀で東京高等師範に進学しただけあって、冷静な自己分析の日記を残しているんですね。この四三を、われらが勘九郎丈が熱演。歌舞伎をやりながら、走り、体を絞り、顔つきまで変わって完璧な(たぶん)熊本弁。前から好きだけどもっと好きになりましたよ。

ドラマ全体がいいので、役者さんを挙げるときりがないですが、生田斗真、白石加代子の三島家、優しい兄がはまっている獅童、語り手でもある心地よいしゃべりの森山未来、こういう綾瀬はるかが一番好き、な綾瀬はるか。日本のドラマに慣れていて生き生きとしているシャーロット・ケイト・フォックス竹ノ内豊

視聴率は悪いそうですが、機会があれば人に勧めずにはいられない(←うざくてすいません)、いいドラマで、これからも楽しみです。視聴率なんかいくら悪くたって、そこそこ大河ドラマ見ている私には、もっともっとクォリティの低いドラマはいくらでもあったし。三谷幸喜の大河ドラマは、「新選組!」も「真田丸」も、本当に楽しませてもらっただけに、それに並ぶおもしろい「いだてん」、このままの調子で、最後まで行ってほしいです。

 

201903manpuku

  そしてもうすぐ終わる朝ドラ「まんぷく」。朝ドラは、主人公の職場の描き方が雑、そんなに甘いはずがない、という意見をよく見ますが(選んでみているのであまり比較はできない)。このドラマはそこを気にしたのか、発明するのがマッド・サイエンテストな長谷川博己だったせいか、とても丁寧に商品が生まれるまでを描いていて、面白かったです。チキンラーメンとオリジナルカップヌードル、けっこう食べちゃいました。

ただ夫が好きという普通の主婦を演じる安藤サクラのうまさ、だんだん仕草や発声が、大阪のおばちゃんに見えてきたのはさすが。主人公があまり強烈でないだけに、周りが個性的で楽しく、とくにコメディエンヌに徹して、古い価値観を主張しながらも愛すべき存在となったブシムス鈴さんの松坂慶子が秀逸で、「真田丸」の長澤まさみのきりちゃんと双璧なうざかわいいキャラでした。桐谷健太、牧瀬里穂、加藤雅也(こういう人だったんだ!若いころはワイルドだったのに)、要潤もよかった。いつも裏がありそうなイケメンのように見えた大谷亮介が、誠実な真一さんを演じきったのも、新機軸でしょう。

私が好きだったシーンは、まだホテルに勤めていたころ、ハナちゃんたちに「私ってべっぴん?」ときいて、「福ちゃん、そんなこと気にするの?」「私たちの学校、お嬢さん学校だったけど、福ちゃん貧乏だったでしょ?」「うん、びんぼうやった」「でも気にしてなかったでしょ」「うん、気にしてなかった」(回想「福ちゃんいつもお弁当おじゃこね」「うん、おかげで骨は丈夫やの」)「私たちはそんな福ちゃんが大好きだったのよ」というやりとり。福ちゃんの境遇に関係のない、持って生まれた明るさや善きものが表れていて、毎日、気持ちよくみられた半年でした。

 

ドラマ「元禄落語心中」「下町ロケット」「獣になれない私たち」

201812     今季のドラマ、NHK「元禄落語心中」です。原作コミックは未読。

名人八雲(岡田将生)に弟子入りしたもとやくざの鉄砲玉与太郎(竜星涼)。八雲の家には、八雲を父助六の仇と憎んでいる小夏(成海璃子)がいます。八雲と助六(山崎育三郎)は、子供の頃先代八雲(平田満)に入門した兄弟弟子でしたが、破天荒ながら天性の愛嬌のある助六に劣等感を持つ優等生タイプの八雲(当時菊比古)。二人はよきライバルに育っていきますが、みよ吉(大政絢)をめぐって二人には…。

戦前からの古い寄席を舞台に、落語と小夏の父母の死の謎を描いていくミステリー要素があって、面白かったです。最後、やっぱり小夏の子の父親は八雲だったんじゃないかなあ。

ミュージカルの人である山育と、竜星涼の落語が生き生きとしていてうまくて感心しました(前座クラスよりはうまいと思った!)。ただ、岡田くん、年寄りだからってあんなにゆっくり話さないし、あまりに端正な顔で老け役は難しいと思いましたよ。大政絢がみずみずしい美貌、篠井英輔さんの家人がとてもよかったです。

201812_2      菊之助が出演するというので「下町ロケット」も見ました。前回のシリーズは見ていません。

(以下、ワルクチですのでお好きだった方ごめんなさい)

前回は下町の中小企業がロケットに使われる技術を作り出すということだったそうなので、実際にありうると思うんですが、続編は、無人トラクター。しかし、関係者は担い手が高齢化した日本の農業を救うにはこれしかない、と思ってるらしいんですよ。しかもその動機が、元経理部長(立川談春)が親の跡継ぎをしている田んぼで田植えを手伝ったら素晴らしかったって。日本の農業の様々な問題って、トラクターだったのか、って言いたくなるじゃないですか。

で、菊之助の役どころは、前半は主人公佃社長(阿部寛)と最初は協力し、後に敵対するギアゴースト社の社長。元帝国重工の優秀なエンジニアで、的場(神田正輝)のやり方に疑問を感じ同僚の島津(イモトアヤコ」)と起業したという設定です。

いやー、せっかくの本格的な連ドラなのに、ナニコレな役ですよ。前半は特許侵害で訴えられただオロオロ、後半は古館伊知郎にたきつけられて佃製作所を裏切り、帝国重工に復讐をはかります。いつも着ている作業着の襟は立ち、眉毛はきれいに整えられているし。エリート技術者にあの眉毛はないわー。色っぽすぎる目を覆い隠す眼鏡も役に立っていません。生真面目な、ちょっと浮いてるお人柄が(だから舞台ではいいのよ)裏目に出た感じ。番宣にもたくさん駆り出されていたけど、イタイ感じでしたよね。

また、イモトさんはどちらかといえば好感を持ってみてる方ですけど、われらが菊ちゃんと「伊丹くん」「島ちゃん」という関係なのにはすごい違和感。この役吉田羊みたいなキャスティングはできなかったのかなあ。

あーあ、ドラマとしてはともかく、「西郷どん」は、役どころとしてはとても魅力的な美僧月照でしたが、これは何しに出たの、と毎回怒りに燃えてました。「ブラック・ペアン」の猿之助も悪役だったけどまだ頭でっかちの嫌味な役(素のように合ってた)をけっこう楽しそうに演じてましたからね(しかしワンピース歌舞伎2か月公演の合間にどうやって撮っていたのか)。

それから、ミュージカルの古川雄大も農業法人のイヤミな若者で出てました。これがまた救いようのないやなやつ。「モーツァルト!」とか「ロミオとジュリエット」で主演するような若きスターに何してくれる!

同じく舞台の実力者、谷田歩も出てましたが、こちらはあまり台詞もなく、でもあの鋭い目が画面でピカッと目がいく人。「西郷どん」では愛加奈の島のいい役人でいい味出してました。

しかし、このドラマ、有名人がたくさん出ている割には、善悪がはっきりしすぎていて、毎回パターンが同じ、しかも佃製作所の全員会議やら菊ちゃん陣営の飲み会やら突っ込みどころが多く、これが「仁」や「とんび」の枠か、とがっかり。試走シーンのロケなどは大掛かりですが、この枠、予算があると変な風に使っちゃう癖があるんですかね。

201812kemonare    「獣になれない私たち」も、録画を一気にみました。ITベンチャーのワンマン社長(山内圭哉)の下、あらゆる面倒ごとを引き受けて働く晶(新垣結衣)と恋人(田中圭)、ビール・バー5Tap の常連恒星(松田龍平)、元恋人呉羽(菊地凛子)、朱里(黒木華)の物語。野木亜紀子のオリジナル脚本。

ガッキー、仕事ができて引き受けて、ニコニコしている、職場でよくいるタイプ。いろいろ重い設定もあって、もどかしいところもあるので、視聴率はさほどでなかったようですが、各シーンが丁寧に描かれて、役者さんの演技もきめ細かく、とても完成度の高いドラマだと思いました。さすが野木亜紀子に外れなし。

しかし、見始めて数話で、公式サイト見たらこの写真。田中圭との関係がどうなるのかとはらはらしてたのに、このガッキーの表情、ネタバレですよ。このドラマの企画は「おっさんずラブ」大ヒットの前で、田中圭さん、重要人物だけど脇役だったんだー。どちらかといえば田中派ですよ私。

菊地凛子、キャストとしてはいい味出しているんですが、セリフがふにゃふにゃしてて、この中うまい人たちの中ではちょっと残念な感じ。同僚の伊藤沙莉、犬飼貴丈がとってもよかったです。

社長山内圭哉、大阪弁でがなりたてるのがひくほど(この人が無理という視聴者多かったと思う)、しかしいい白シャツが似合ってて、私は感心していました。「セールスマンの死」と同時期だったんですよね。あのナイーブな青年と、この社長、すごい俳優さん。かっこいいし。

藤田洋「歌舞伎の事典ー演目ガイド181選」・Eテレ「にっぽんの芸能・山川静夫と振り返る平成の歌舞伎30年」

201212       国立劇場でみかけて買ってみた「歌舞伎の事典ー演目ガイド181選」です。著者は、「演劇界」の編集長を務めた藤田洋さん。

「あらすじで読む名作歌舞伎50」等と比べて、181とは多い!第1章 純歌舞伎・義太夫狂言・新歌舞伎で137作、第2章 歌舞伎舞踊が44作。著者は、今ある400作のうち半分ほどなので、差し当たって必要とされる演目は含まれている、と書いています。チェックしてみたら、第1章で半分、歌舞伎舞踊は三分の一ほど(シネマ歌舞伎も含めて)見ていました。歌舞伎歴6年ちょっとで、ややはまっている私としては、まあまあと言えましょう。

ただし第1章は、「義経千本桜」や「仮名手本忠臣蔵」でも1作と数えていて、見開き2ページに写真2枚なので、説明ではあらすじはよくわかりません。「妹背山婦女庭訓」なんて、右のページに鱶七、左のページに雛鳥と定高の写真ですよ。

この本の使い方は、こんな演目もあるんだ、と舞台写真を眺めることといえましょう。2011年発行なので、だいたい2000年代のものだと思いますが、もちろん多いのは藤十郎、團十郎、吉右衛門、菊五郎、先代幸四郎、仁左衛門、勘三郎、玉三郎と、歌舞伎の本によく出てくる皆さんながらも、演目が多いのでほかにもたくさん。三津五郎が多かったのもうれしかったです。

2012121     富十郎、先代芝翫の、芝居味の濃いこと、先代雀右衛門のきれいなこと。この「毛谷村」の子役は鷹之資かな、と思って調べたら、ほんとに3歳の鷹之資くんでしたよ。お父さんと共演したことがあったんですね。

2012122     この二人は、東蔵、三代目猿之助ですよ。私、三代目はスーパー歌舞伎をやる人という印象だったので、先日の「にっぽんの芸能」で筆屋幸兵衛を少し見て、勘三郎さんのような人情味あふれる演技に驚いたんですが、この加賀鳶のよくわからないけど(見てないので)強烈さ。国姓爺合戦の和藤内も迫力でした。復活狂言や古典でも八面六臂の活躍だったんですね。

2012123     これは梅玉、魁春のお二人。「菅原伝授手習鑑」の桜丸と妻八重です。若々しく美しい。今ももちろん好きですが、この頃から見たかったな。菊五郎さんもほんとに美しい写真ばかりでしたし、少しですが、秀太郎さんも色っぽい写真がありました。

この手の本にしては、海老蔵が少ない(團十郎がたくさん出ている)のですが、なんと、弁天娘が海老蔵でしたよ。どんな役でも、美しい海老蔵ですが、さすがに弁天娘は味が薄くて残念。菊五郎はたくさんあるのになぜこれを使ったのか。なお、海老蔵・菊之助の鳥辺山心中はほれぼれするほどです。

さて、先日、NHKEテレで「にっぽんの芸能」で「山川静夫と振り返る平成の歌舞伎30年」を、たったの1時間でやっていました。当然駆け足で、亡くなった名優を振り返るといった形だったのですが、比較的長く映ったのが、勘三郎の「法界坊」、三代目猿之助のスーパー歌舞伎「八犬伝」、團十郎・玉三郎の「助六」。

それぞれ面白かったですが、この八犬伝は、デジタル・リマスターとかで、鮮やかな映像。衣装もすごいです。そして、亀治郎のスーパー歌舞伎デビューとなったのがこの作品です。18才くらいですが、やっぱりたいしたものです。もちろん三代目のこってりした味、縦横無尽の活躍もすばらしい。

しかしこのタイトルなら、2時間でも3時間でも、たっぷり時間をとって、山川さんにいろいろ教えていただきたかったなあ、と思います。

「寧々~おんな太閤記(2009)」再放送

201810_2     2009年のテレビ東京の新春ワイド時代劇「寧々~おんな太閤記」です。1981年のNHK大河ドラマのリメイクで、本放送時はのべ12時間の放送だったそうですが、今回は2週間にわたり、BSテレビ東京で毎日1時間放送。

大河では佐久間良子の寧々に「おかかー!」と叫ぶ西田敏行の秀吉が人気でしたが、この秀吉が亀治郎時代の猿之助。寧々体当たりの求婚、信長の下での出世、天下取り、晩年の老耄と、教科書通りの秀吉の生涯を演じます。

こんなドラマ、今頃再放送してくれるなんて、私のためですか(笑)。ほんとに、見逃さなくて全て録画できてよかったです。

猿之助、若い頃は、華奢な体つきもあって、体重を感じさせない予測できない動きで、猿っぽい。愛嬌がありながらも戦略を口にするときには頭のよさを感じさせます。譜代の家臣がいない秀吉は親族に愛情を注ぎますが、ときにそれを犠牲にする冷徹な計算。関白になってから、家康(高橋英樹)に「形だけ臣下の形をとってくれ」と頼み込みながら、実際の対面では半端ない圧をかけるところは見ものでした。川や温泉シーン、裸足の指のアップとか、演出は亀治郎ファンなの?という見せ場も多数。

「風林火山」では、由布姫とのラブシーンなど、ぎこちなさすぎてみる方が恥ずかしかったんですが、さすが寧々の仲間由紀恵がよいせいか、寧々との愛情も細やかに描かれていましたし(ジンと泣ける場面も多数)、淀(吹石一恵)ほか側室との関係も無理なかったです。

来月歌舞伎座の法界坊、勘三郎さんの法界坊(シネマ歌舞伎で見ただけですが)があまりに自在で面白かったので、クソ坊主とか女好きとか、どうなんだろうと思っていたのですが、このドラマ見たら何だか安心しました(どこから目線ですいません)。

ドラマとしても、どうしてもエピソードをただつなぐだけになりがちなところ、それぞれを丁寧に描いているのと、寧々目線で一本筋が通っていて、面白かったです。最終回は淀と寧々の冗長な会話シーンなど、少し息切れな感がありましたが。衣装や合戦シーン、ロケも贅沢でした。今の大河もこんなに合戦シーンしっかり描いていないかも。

キャストでは、秀吉の母おなか(十朱幸代)がさすがドラマを盛り上ていました。家康の高橋英樹だけは、安定感ありすぎなんですが、このドラマだったらもう少し若くて一癖ありそうなキャスティングもあっただろうと思いました。

他のキャストも、10年前とあって、こんなところに、という方も多数。秀長(福士誠治)を始め、井之上チャル、市瀬秀和といったワンピース歌舞伎の出演者や、秀次(濱田岳)、竹中半兵衛(山崎銀之丞)、和田正人

歌舞伎関係では、小早川秀秋に松也、秀頼に壱太郎。松也は声はいいですが細くて華がなくて、今メタルマクベスの美丈夫となるとは想像しがたい感じ。壱太郎秀頼は家康が対面した後「手を握ったら女のように柔らかい手であれでは大阪城を束ねられまい」と言われちゃうんですが、だって女方だもん、とくすり。

テレビ東京開局記念ドラマ「Aではない君と」「あまんじゃく」「琥珀の夢」

201809a      テレビ東京開局記念55周年記念ドラマ3部作、いずれも力作で、楽しませてもらいました。

1作目は、「Aではない君と」。原作は薬丸岳の同名小説です。中学生の殺人事件の加害者として逮捕されたのが、離婚した妻(戸田菜穂)と暮らす息子(杉田雷麟)と知った佐藤浩市が、息子の心を開き、殺人の動機を解明しようと必死になるという話。 佐藤浩市を助ける弁護士に、WMの天海祐希。 山本耕史が出ているというので見たんですが、彼はこの事件をスキャンダラスに報じる記者のチョイ役で、こういうドラマと予めわかっていたら見なかった重い題材でした。

しかし、少年が犯人の事件を知る度、被害者やその家族の無念はいうまでもないながら、犯人もこの先長い人生、どう生きていくのかと思わずにはいられないでいたので、このドラマで丁寧に描かれた、拘留とか家裁とか逆送等の手続きと、父から見てのそのもどかしさには引き込まれました。キャストも皆好演。できることはすべてやろうとする佐藤浩市の父でさえこうなんですから、現実はもっと厳しいものにちがいありません。なかなか事実に向き合えないでいる母戸田菜穂の姿も彼女を責める気持ちにはなれませんでした。

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        2作目は「あまんじゃく」原作は藤村いずみのミステリ。優秀な外科医だった唐沢寿明は、弁護士の橋爪功と組んで、極秘に依頼を受ける殺し屋です。弟を殺した義父、妊婦を放置して死なせた産婦人科医、禁止された治験薬を使った医者等、法では裁けない者を、自然死に見せかけて殺す唐沢寿明の動きがキレキレ。

別れた恋人木村多江、児童福祉施設を営む伊藤蘭等が絡んで、娯楽アクションドラマとして楽しめました。

201810_3        3作目は伊集院静の、サントリー創業者鳥居信治郎の生涯を描いた同名小説を原作とする「琥珀の夢」。薬問屋の丁稚奉公から、あのサントリーを作り、ワインや缶詰の商いを経て、ついに国産ウィスキーを完成させます。

信治郎を内田聖陽、妻壇れい、父中村梅雀、母原田美枝子、奉公先主人西田敏行、英国でウィスキー造りを学んできた竹鶴政孝(山本耕史)、と豪華キャスト。この竹鶴は、朝ドラの「マッサン」の方ですね。

夜中にワインのブレンドを工夫する店の雰囲気や、洋食や西洋の酒について知る1等での船旅等、丁寧な造りでなかなか映像は見ごたえがありました。信治郎と政孝は、「真田丸」の家康と三成なのになーなどと思ったりして。

ただ、モデルが立派なだけに、勤勉な努力家の成功までのエピソードをつなげただけになってしまって、2時間半の単発ドラマではもったいない感じ。原作を知るだけに、部分的な映像化みたいな感じがしてしまいまいした。

しかし、3作とも雰囲気がちがって、いいキャストをそろえた佳作。山本耕史とか、温水洋などは、別のドラマのチョイ役でちょっと出たりして、そういうのもテレ東ぽくて、よかったです。

ドラマ「ブラックペアン」

201806     TBS日曜劇場「ブラックペアン」は今日最終回でした。ニノのドラマはほとんどハズレがないし、なんたって猿之助がレギュラーで出る、久々に内野聖陽も、ってことで初回からきっちり毎週見ましたよ。

外科医渡海(二宮和也)は露悪的な天才外科医。さすが雰囲気つかむのうまいのと、芝居にメリハリがきいてて、よかったです。

初回、第2回と手術シーンに驚かされて、しかしその後は失敗手術にニノが出てきて鮮やかにフォローして患者を助けるという、ワンパターン(患者や家族のキャスティングがバラエティに富んでいて面白かったですが)。ブラックペアンの秘密解明はなかなか進まないし、佐伯教授(内野聖陽)もさほど出番ないし、むしろ一生懸命な研修医世良くん(竹内涼真)と、意外といい人で、教授たちからあれこれ無理言われて眉間にシワを寄せる高階先生(小泉孝太郎)の方が主役みたい。

しかし、やや強引ながら、最終回、全ての謎を解明してくれて、すっきりしました。「ブラックペアン」ってそういう意味だったのかあ。原作読んでいた人は全てわかっていたんですか?読んでなくてよかったです、面白かった。

それにニノが、最終回にいろいろな表情を見せてくれて、ちゃんと主役としてドラマを引っ張っていたのがよかったです。比べては申し訳ないですが、部屋でうろうろするばかりで、最後は浅野忠信に持っていかれた「A LIFE」よりはずっとよかったですね。

いや、2回見たら、さすが内野聖陽は迫力ありましたね。セリフの重みがちがうし、ちらっとでしたがアフリカのワイルドな佐伯教授もかっこよかったです。こう持ってきたくて、これまで抑えめだったのか。

最後までいいところのなかった黒崎教授の橋本さとし。ほんとにミュージカルで主役やってる人?そしてあのステージアラウンド第2弾のメタルマクベスに出る橋本さとしだよね?(いや、間違えるとしたら橋本じゅんだからちがうし)。変貌ぶりが楽しみです。

ところで、わが西崎教授(猿之助)、わかりやすく傲慢で、「実は」的なところのない敵役。自らカエサルを操作する回では、秀才のプライドとか、頭のいい人が失敗しておろおろする感じがリアルで、客観的にはみっともなくてなかなか見ものでした。しかしなあ、私が歌舞伎をみたことのない「ワンピース」ファンだったら、こんなイヤミなおじさんがやるルフィなんて誰が見るもんか、って思いますね。

ドラマ「黒井戸殺し」「アンナチュラル」

2804kuroido    最近のテレビは面白くなくなったとか、よく言われますが、きちんと作られたドラマは昔のものよりも面白い、と思います。

その思いを新たにしたのが、4月14日に3時間半という長尺の枠で放送されたフジ「黒井戸殺し」三谷幸喜がアガサ・クリスティの「ロジャー・アクロイドの殺人」を原作に、昭和27年の日本の地方を舞台にドラマ化したものです。長時間なのでちょっとたってから見て、結末を知ってまた見ました。

地方の富裕な紳士黒井戸氏(遠藤賢一)が自宅で殺されました。親族(草刈民代、向井理、松岡茉優)、使用人(寺脇康文、藤井隆、余貴美子秋元才加)、客の作家(今井朋彦)がみんな容疑者。黒井戸氏と親交のあった医者柴(大泉洋)は、この村に滞在していた名探偵勝呂氏(野村萬斎)とともに、謎を追いますが…。

癖のあるせりふ回しの萬斎さんに振り回される大泉洋って、それだけで面白く、ほんわかしたおしゃべりの柴の姉斎藤由貴は不倫の件で大河ドラマを降板したんですが、三谷さんのたっての希望でキャスティングされたのが納得の雰囲気。

しかし、ラストでびっくりします。クリスティはけっこう読んでいたはずですが、全然覚えていなかった私は、大泉洋の表情の変化に仰天。語り手かつ探偵の相棒が犯人というのは、クリスティの原作発表当初物議を呼んだそうですが、さもあらん。それにしても、視聴者が一番心を寄せやすく、しかもその時間が長かっただけに、効果的でした。

とくに派手な場面はないものの、日本的な豪邸といい、きれいな自然といい、三谷さんの念入りなキャスティングで、ほんとに見ごたえのあるドラマでした。ほかに吉田羊、浅野和之も。春海四方も僧役で出てましたね。

(秋元才加は、山本耕史と「モーツァルト!」で共演していて、慎吾ちゃんが山本耕史の結婚祝いとして芸能人をいきなり電話して呼ぶという番組にも出ていたのでそこで三谷さんと会ったのかしら)

三谷さん、今年だけでお正月の「風雲児たち」、演舞場の「江戸は燃えているか」に続きこれですよ。その仕事の密度と質の高さ、ほんとにすごいです。


2804_2   さらに今頃ですが、前クールの一番人気ドラマ「アンナチュラル」をまとめて見ました。ほんっとうに面白かった!

遺体の死因を解明する法医学者たちのUDIラボを舞台に、毎回新しい事件が起き、どんでん返ししながら解決されるとともに、登場人物の過去が明らかになっていく見事な展開。

各回の話も予想外の展開にハラハラするし、かわいいのにきりっと信念を貫く主人公ミコトの石原さとみがすかっとしていいし、井浦新はあの繊細で体格のいいところがかっこいいし、市川実日子、窪田正孝、松重豊飯尾、のレギュラー陣はほのぼの、ゲストも隅々まで好演。北村有起哉もサイコーだったし、池田鉄洋は初めて認識しましたがそのうさん臭さ。

脚本は、「逃げ恥」の野木亜希子さん。複雑だけど破綻のないプロット、平易な言葉で新鮮に感じるセリフ、人間性や善悪についての深い洞察、この方天才です。

いや、ためてた録画、見てよかった。好評なドラマはそれだけのことはありますね。

大河ドラマアンコール「風林火山(2007)」

2017    昨年4月から放送されていたBSの大河ドラマアンコール「風林火山」、2007年の作品です。6月、猿之助強化月間((笑)から見始め、途中録画の抜けなどもありましたが、今月の最終回まで見ました!

「新選組!」もそうですが、2000年代は「どうぶつ奇想天外」を家族で楽しんでいたので、この時期の大河はほとんど見ていなかったんですね。内野聖陽も亀治郎も知らなかったし。紅白でGACKTがあの謙信の扮装で出てきたのがかっこいいけど異様だな、と思った記憶があります。

お話は、武田信玄(亀治郎)の隻眼の軍師山本勘助(内野聖陽)の武田家への士官から、川中島の戦いでの死までを描く戦国ものです。全体に男臭いドラマで、信玄の父信虎(仲代達也)、家臣千葉真一、加藤武、高橋和也、高橋一生、竜雷太、田辺誠一、今川家の谷原章介、伊武雅刀、そのほか松井誠、小日向文世、永島敏行等、画面が男くさいこと。

戦国武将とその家来を入れると、登場人物は多く、細かく見ていくとその後売れた人も多くて、昔からNHKはいいキャスティングしているな、と思います。個性的なおじさん役者たちを見るには楽しい大河でした。

しかし、ドラマとしては、中盤の(井上靖の原作小説では中心の)、信玄の側室由布姫(柴本幸)に対する勘助の思慕のくだりが決定的につまらないんですね。ストイックなまでに役作りをしている内野聖陽に対して、当時新人女優の由布姫の拙さ。なんでこんなに熱くかっこいい勘助が由布姫にという感がぬぐえません。そしてよく言われているらしいのが、佐藤隆太の妙な使い方。暗くて彼のよさを殺しているようで、ずっと出てるわりには意味不明でした。

ただし、GACKTが出てきてから、今のゲームやアニメ人気を先取りしたようなメイクとざんばら髪の美形謙信で、それなりに見てて面白かったです。ミスター大河、緒形拳の軍師がまたちょうどいい存在感に抑えていたところがすごいと思いました。

さて、亀治郎。これがドラマというか映像初出演ですよ。プロデューサーが「NINAGAWA十二夜」を見て決めたという話もありますが、そんなまさか。30才そこそこで図々しいけど魅力的な中年女を演じたあの舞台を見て、信玄にキャスティング、というのが信じられません。NHKに「亀治郎の会」の相当コアなファンがいて、何とか彼をメジャーにしたいと画策したのかなと想像しちゃいます。まあ、伝統芸能枠では、和泉元彌や橋之助(現芝翫)、海老蔵等が大河に主演してますが。

当時の亀治郎の評判はかなり悪いといっていいでしょう。大河ファンからは、見たことのない歌舞伎役者が大げさな演技で浮いている、とか、ブサイクだとか、カピバラみたいだとか(ショック!)。

若い頃はちょっと声の出し方もへんに見えるんですよね。何より、当時まだ女方が中心で華奢な亀ちゃんと、大柄で表情の乏しい由布姫の取り合わせが、なんとも。一応英雄色を好む設定で、由布姫も信玄を憎みながらも愛し…っていうのがかなり無理がありました。

しかし、中盤からは、徐々に貫禄が増していき、勘助とのツーカー感も気持ちよく、川中島前に出家した頃には、異様な凄み。「カメ流」には、スタッフと仲良くなって、カメラさんもよく映してくれたと書かれていましたが、そうかもと思えました。そうなる背景には、香川照之が、よろしくとあいさつしてくれたり、こまめにアドバイスくれたりしたそうで、猿之助はたびたび彼への感謝を書いてます。

そして、キャストをよく見ると、その後も共演したり、なかよくしている役者さんがいます。佐々木蔵之介(←この蔵さん、ほんとに合ってていい役です)、高橋一生(このドラマではそんなに目立ってはいないんですが、亀治郎は「カメ流」で、長いキャリアと実力をひけらかさない、難しいことをさらっとやる人、と絶賛しています)、佐藤隆太、池松壮亮、ワンピースの市瀬秀和、嘉島典俊。嘉島演ずる弟との別れは、1年間演じてきた絆を感じる熱いものでした。とにかく、この「風林火山」がなかったら、今のような猿之助の活躍はなかったか、もっと小粒なものになっていたでしょう。

その後の亀治郎=猿之助は、映像でも違和感なくしかし個性を発揮できる俳優となり、(まだ見ていない作品もたくさんありますが)「超高速!参勤交代」の吉宗は気品と包容力のある将軍だし、「花戦さ」は猿で我儘な秀吉だし。驚いたのは最近見た「龍馬伝」の龍馬暗殺下手人今井信郎役。幕末や明治の写真で見る、小柄で淡白な容貌ながら凄みのある日本人そのもので、あの画面からほとばしる異様な殺気、同じくらいの質量感のある従弟香川照之とのにらみあいはゾクゾクしました。

さて、「風林火山」では、父上、段四郎さんも天皇役でちょっとだけ出ているんですが、特筆すべきは関東管領を演じた左團次さん。享楽的で自分勝手な役柄にはまっていて(すいません)、意外に美形で最高でした。

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