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ケラリーノ・サンドロヴィッチ

KERA・MAP「キネマと恋人」@世田谷パブリックシアター

201906_2   2016年の初演時は、シアタートラムでの上演で、チケットが取れなかったKERA・MAPの「キネマと恋人」の再演です。今回は世田谷パブリックシアター。「百年の秘密」修道女たち」とはまたちがった傑作でした。

ストーリーはウディ・アレンの傑作映画「カイロの紫のバラ」です。ミア・ファロー演じる妻は横暴な夫と暮らしていますが、日々の唯一の楽しみは映画を見ること。ある日画面からハンサムな男優が飛び出してきて、彼女とデートしますが…というもの。

さて、このお芝居の舞台は、1930年代の日本のとある島。唯一の映画館に、ハルコ(緒川たまき)が通っています。彼女が好きなのは、マルクス兄弟などのコメディと、時代劇「月之輔半次郎捕物帳」シリーズの間坂寅蔵役の高木高助(妻夫木聡)。ある日寅蔵がフィルムから飛び出してきます…。

島では長崎地方を彷彿させる創作方言が使われていて、「ごめんちゃい」などと言う、ちょっと猫背(ミア・ファローと同じ!)の緒川たまきがかわいくて魅力的でもう大好き。これまでも夫であるケラさんの芝居には出ていますが、この作品ではほぼ出ずっぱりの主演で、ケラさんとの関係はティム・バートンとヘレン・ボナム・カーターみたい!なんて思ったりして。

妻夫木君も、俳優である高助と映画の寅蔵を見事に演じ分けていてすごいです。時代劇の所作がきまっているのは、大河ドラマ主演しているんですもんね。この前は野田秀樹の桜の森の耳男だし、すっかり実力派俳優。

ハルコの妹で男に苦労するミチル(ともさかりえ)、先日「LIFE LIFE LIFE!」でも好演していたばかりで、まったくちがう役ですがどちらもすばらしい。どの役も印象的で舞台を引き締めていた村岡希美(この方、猫背椿さんに似てる)、横暴で単純な夫の演技がうますぎて、キライになっちゃうハルコの夫三上市朗(そういえばウディの映画でもこの役の人大キライだった)など、もうみんなよかったです!

私的には、生活のつらさを忘れさせてくれる映画というものの意味、大好きな役者に、あそこのあれは…と話して「君はわかっている」と言ってもらえた喜びなど、演劇ファンである自分にも刺さる場面やセリフがちりばめられていて、ジーンとする瞬間が何度もありました。

ああ、でも、ラストはやっぱりカイロと同じだったかー。いや、この素材を選んだ時点で、ちがうラストはありえないんでしょうが、やっぱりせつなくて悲しかったです。

映画部分の上映をはじめ、いつもながら上田大樹さんの映像が、高度で美しくてでも温かみがあって素晴らしい。また、1幕、2幕がそれぞれ95分もあって、場面割も細かいんですが、転換がダンスと一体になっていて、それ自体楽しめるんですよ。この振付が小野寺修二さん。シンプルながら機能美で役者の動きを引き立てる舞台美術が二村周作さん。美しい照明が関口裕二さん、と、もうケラさんの作品世界を支えるスタッフも盤石でした。

 

「LIFE LIFE LIFE ~ 人生の3つのバージョン」@シアターコクーン

201904lll  ケラリーノ・サンドロヴィッチの翻訳劇、「LIFE LIFE LIFE ~ 人生の3つのバージョン」です。もとはフランスの劇作家ヤスミナ・レザの「Trois Versions de la vie」。副題が原題なんですが、そのままだとちょっと理屈っぽいか。フランスといっても、ソ連から移住したペルシャ系の父とハンガリー移民の母というユダヤ人夫妻の下に生まれたとありますので、豊かな文化的背景をお持ちの方なんですね。写真をみるとすごい美人。

 もともと「ヴァージニア・ウルフなんてこわくない」を上演するはずが、事情でこの作品となり、ケラさんは苦労していたようですが、出来上がってみると、すばらしい舞台で、さすがケラさんという認識を新たにしました。

(以下、ネタバレありです)

ソニア(ともさかりえ)とアンリ(稲垣吾郎)の若い夫婦が、別室の息子アルノーに、ビスケットをやるかどうかで言い争っています。ソニアは元弁護士のエリート、アンリは天文学の研究者ですがいまいち。そこへアンリの上司で有力な学者ユベール(段田安則)とイネス(大竹しのぶ)夫妻がディナーにやってきます。しかしアンリたちは、招待は明日だと思っていて何も用意がなく、ワインとお菓子、チーズでもてなすことに…。

題名通り、同じシチュエーションで、少しずつ異なるバージョンが演じられます。思い切りネタバレすると、最初は気の強いソニアにうまく対処できないアンリ、妻を小ばかにしているユベール、やっと完成したアンリの研究にはライバルに先を越された可能性が出現し…という、なんともやるせない展開。しかし、2つめ、3つめと少しずつ変えるだけで、印象がガラリと変わっていきます。

このバリエーションが絶妙で、力のある脚本に、ケラさんの生きた台詞。人生なんて、ほんの少しの気の持ち方や関係性で、幸福感も大きく変わるんだよ、ということが見事に描き出されていきます。

真ん中の一番低いところにアンリの家のリビングがあり、四方を客席が囲む形。役者は自然な形でリビングにいるので、人の家をのぞいているような感じも新鮮でした。3つの芝居の区切りの音楽も、不協和音がちょっと不思議な感じで合ってました。

キャストがはまってます! 大竹しのぶと段田安則の自在な雰囲気、テンポのメリハリは、さすが。大竹しのぶはこういう四方から見る舞台なためか、前からしか見られない舞台よりもさらにほっそりとして、とってもきれいでした。ともさかりえは、最近はドラマでは落ち着いた役が多くなってきたようですが、この役は、仕事と家のことに追われながらも美しい若い妻で、とてもリアル、台詞や動きにもキレがあって、こんなにいい女優だったんだ、と思いました。

そして、吾郎ちゃんですよ! 初めての生SMAP、こんなに近くで見てもいいの、ほんとに人間なんだ (←失礼)と思いながら、私の中のミーハーが、さほど遠くないのにアップを見たくてオペラグラスでガン見。眼鏡が邪魔ですが(!)、やっぱりとーってもきれいなお顔でした。役も、吾郎ちゃんへのあて書きなのかと思うほど、ナイーブな、ちょっと不器用な愛すべきキャラクターでよかったです。

休憩なしの90分。中身が濃かったので物足りなさはなく、90分でここまでできるんだ、と思いました。

 

 

「修道女たち」@本多劇場

201810     KERAMAP #08 「修道女たち」です。例によって題名とか素材にはさほど惹かれるものはなく、女性ばかりの芝居ってどうなんだろうと思ってたのですが、ケラさんのツィートで、、脚本に苦労したり、稽古に入って手ごたえを感じたりというのを見て、期待が高まっておりました。チラシも文字だけのしか持ってなかったですし(劇場で初めて左のビジュアル見ました)。

最初の舞台は修道院。院長になりたてらしきシスター・マーロウ(伊勢志摩)に、テキパキしたシスター・ノイ(犬山イヌコ)、シスター・アニドーラ(松永玲子)、シスター・ニンニ(緒川たまき)に、新入りらしきシスター・ダル(高橋ひとみ)その娘シスター・ソラーニ(伊藤梨沙子)が、巡礼に出かける支度をしています。

毎年巡礼で滞在するのは聖女の祠を改造した山荘。修道女たちの訪れを楽しみにしている娘オーネジー(鈴木杏)、その友人のテオ(鈴木浩介)、複数の役でスパイスをきかせるみのすけ

最初、シスターたちが同じ格好の目を囲んだメイクで、犬山イヌコ(声でわかる!)と高橋ひとみ以外識別できなかったんですが、物語が進むにつれて個性豊かなシスターたちの秘密がくっきりとしてきます。ちょっとしたセリフの間がいいので、脚本の狙い通りに笑えます。シスターの衣装での動きが、ちょっとかわいくて面白い。個人と集団としての動きのバランスが絶妙で、舞台の実力派キャストが一体となって作る作品世界。休憩15分含め3時間15分の長丁場が少しも長く感じませんでした。

中でも鈴木杏。この役、いろんな意味でギリギリなところで成立しています。またある場面(ネタバレなので書きませんが)がすごい。この人、やっぱり天才だな。もちろん彼女だけでなく、すべてのキャストがよかったです。

終盤には、ちょっと鳥肌が立つようなシーンもあり、満員の(男性も多い)客席がぐわーっと集中していく感じ。理屈っぽくいうと、宗教を素材に人間の怖さをえぐるような感じを受けました。

素朴な味のあるセット(美術BOKETA)に、効果的な映像(新保瑛加、上田大樹)。ケラさんの芝居の映像は、洗練されながら芝居の一部になっていて、いつもうなります。

ナイロン100℃「百年の秘密」@本多劇場

201804      ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの、ナイロン100℃公演、2011年初演の再演「百年の秘密」です。

舞台はベイカー家の屋敷の庭。中央に大きな木があります。この家の娘ティルダ(犬山イヌコ)と12才で出会う親友コナー(峯村リエ)の生涯を、ティルダの両親と兄、二人の夫や子、孫等とともに描く、ある種の大河ドラマ。

タイトル通り、百年の時間の流れを、行ったり来たりしながら、緻密に構成された脚本の妙で、少しずついろいろなこと―「秘密」がわかっていきます。人生と秘密と喜び、悲しみは一体なんだと感じさせる芝居を、休憩をはさんで3時間半、ずっと見続け、台詞を逃すまいと聞き続けた観客に提示されるラストシーン。一瞬終わったんだ、と空っぽになり、客席に静けさが満ち、そして大拍手になりました。

一見、何役も掛け持ちしていそうに思えたんですが、当日もらうチラシを見ると、ほとんどのキャストは一役で、意外と大人数(19人!)。しかし芝居に統一感があるのは劇団ならではでしょうか。しかしあくまで個性的で、いそうでいない、なの。笑いながらしみじみと人生ってと感慨をもたらすすごい芝居でした。

中でも犬山イヌコ、この方の個性と演技、このドラマに一本筋を通していてすごい。峯村リエもある意味対照的な女性です。いるだけで面白いのはチャド(みのすけ)、リーザロッテ(村岡希美――とくに冒頭は飛ばしてました)、語り役で役としても面白かったメアリー(長田奈麻)、何ともいえない複雑な味のブラックウッド(山西惇)。そして大倉孝二、萩原聖人

プロジェクション・マッピングは映像はいつも感心する上田大樹ですが、今回もドアの表現など秀逸。

ぎっしりつまった本多劇場の、熱心なお客さんたちと感動を共有した素敵な一夜でした。

 

ナイロン100℃「ちょっと、まってください」@本多劇場

Photo  ケラリーノ・サンドロヴィッチのナイロン100℃公演、「ちょっと、まってください」です。本多劇場、久しぶりに行ったら椅子が座りやすくなってました。2015年に椅子を更新したそうで、ロビーに33年間使っていたという以前の椅子がおいてありました。これはありがたい。

(以下、ストーリーにはさほど触れませんがちょっとネタバレ含みます)

さて、「グッド・バイ」のようなウエルメイド、「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」のようなナンセンス、「ワーニャ伯父さん」のような古典と、最近ケラを見始めた私でも驚く幅広い作品を生み出している鬼才ケラさん、今回はどんな芝居だろうと思っていましたが、なんと不条理喜劇。

見始めてすぐ、いかにも「演劇」というリビングのセットと言葉の意味のずれで展開していく流れで、あれ、別役実みたいだなあと思っていたら、劇場でもらったチラシ(文章だけ!)にケラさん自身が、「劇団で初めてで『不条理喜劇』を目指したもの」であり、「御名前を挙げ、深い謝意を称せねばならぬのは、他ならぬ、劇作家の別役実さんであります。」と書いてあって、幕間に読んで感動しました。

そうはいっても、電信柱以外の(多数ちりばめてあった)オマージュはわからなかったんですが、とにかく作品世界は別役さんの不条理劇の世界ながら、それがちゃんと今の、ケラさんとケラさんの信頼するキャストたちの表現になっていて、また一つ、ケラさんの才能に感嘆いたしました。

たとえば、セットは廻り舞台で2パターンなんですが、高度なプロジェクション・マッピングや照明が効果的に使われています。いつもケラさんの舞台映像は高度なのに使い方のほどがよくてすごいなと思うのですが、ワンピース歌舞伎の本「ワンピース偉大なる世界」で、映像の上田大樹さん、ケラさんの舞台を手掛けていると知って、感動しました。いや、素晴らしいですよ。

セリフが本当におもしろい。膨大なセリフをやつる役者さんたちの声と滑舌のよさ、不思議なキャラクター、小さなどんでん返しの繰り返し。ゾンビのようなメイクが、歌舞伎で化粧がその役を現すのを連想させます。

よく見る方としては、何といっても三宅弘城(父親)、犬山イヌ子(母親)、峯村リエ(ラーラ)、大倉孝二(乞食の兄)、水野美紀(エミリー)、マギー(使用人)、みのすけ(乞食の父親―歌がうまかった!)。ほかに遠藤雄弥(ピンカートン)、村岡希美(乞食の母親)、藤田秀世(乞食の祖母)、小園茉奈(ユードラ)。皆さんのチームワークというか、コンビネーションがとってもよかったです。

(大倉孝二さんって、長身でとってもかっこいいんですね。「新選組!」の勘定方や面白い役が多くて気づきませんでした、ごめんなさい)

15分の休憩をはさんで3時間15分。まったく長いとは思いませんでした。ああ、この舞台、見られてよかった。

 

KERA meets CHEKHOV 「ワーニャ伯父さん」@新国立劇場小劇場

Photo      ケラリーノ・サンドロヴィッチがチェーホフ作品を演出するシリーズの第3弾ということで見てまいりました。新国立の小劇場、小ぶりで見やすい劇場ですが、舞台が客席に向かってでっぱっているというか、袖の前の方が解放されていて、舞台と客席の一体感があります。下手にギター演奏の伏見蛍さん。うん、生演奏はやっぱりいいです。

さて、「かもめ・ワーニャ伯父さん」という文庫本、チェーホフ好きだったし絶対読んでいるはず、と思ったんですが、まったくストーリーは記憶にありませんでした。

ワーニャ伯父さん(段田安則)と姪のソーニャ(黒木華)が切り盛りするロシアの田舎の農園に、退官した大学教授のセレブリャーコフ(山崎一)と、若く美しい後妻エレーナ(宮沢りえ)がやってきて、静かな暮らしを乱します。ワーニャと友人の医師アーストロフ(横田栄司)は、エレーナに惹かれますが、地味なソーニャは、アーストロフに恋していたのでした…。

このほか、小野武彦さんや母の立石涼子さん、ばあやの水野あやさんと、見た目でも雰囲気のある実力派揃い。シンプルなセットと小さな空間、そして照明(関口裕二)が秀逸でしたですよ。ろうそくと部屋の明かり、窓の外の表現や、女優を美しく照らず下からのライト。宮沢りえが光り輝いてました。

さて、お話はですね、淡々としてまして、時々くすっと笑わされるんですが、そちらを特に狙っているわけではなく、特に1幕は、セレブリャーコフが何者?そしてワーニャ伯父さんは何してる人?伯父さんって誰からみた伯父さん?ソーニャはなんで父(セレブリャーコフ)じゃなくて伯父さんとここで働いているのか、などと疑問が次々に浮かびます。

それはともかく、宮沢りえの美しいこと!彼女としてはとても普通の女性の役柄ですが、その分、彼女の確たる実力を改めてしる思い。そして黒木華、やっぱりいいなあ。生き生きと愛らしいんだけど「私は美人ではない」というセリフが無理でもない感じ。

2幕はちょっとお話が動いていきます。エレーナたちは去っていきますが、やっぱり何でワーニャ伯父さんとうら若い(失恋もした)ソーニャが農園で働いてセレブリャーコフたちに仕送りしなきゃいけないのかも、今の感覚からはちょっと納得いかなくて、すっきりしない。

最後、「耐えて働いて、そして時が来たら死んでゆっくり休む」という趣旨のソーニャのセリフが有名なんだそうですが、かなり豪華な農園の屋敷に住んでるわけですからね(持ち主はソーニャ。でも切り詰めて仕送りしているらしい)、日本の貧しい庶民のお話とはちがうんですよねえ。

アーストロフが自然派で1000年後のために植林したり、当時の農民の衛生状態を憂えたりしているのは、現代に通じている(初演は1899年ですよ!)、とは思うんですが、肝心のお話がすとんと落ちなかったのは残念でした。

「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」@本多劇場

Photo       ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出のご覧のようにヒトラーもの、さぞや毒の効いたパロディだろうと思いきや、稽古中のケラさんのツイッターが、「こんなことさせちゃっていいのかな、でも最高」(意訳)という感じだったので、そういう期待をしていったらば、まさにそんな感じ、の、「ほとんど、何もない」という舞台です。タイトルは、「ヒトラー、最期の12日間」という映画(邦題ですけどね)からとったものだとか。

前説からのオープニング、映像の使い方が、やっぱりこの方うまいです。ヒトラー映像ってだけで、インパクトがあります。

しかし天国のヒトラーとユダヤ人が出てきてそれらしかったのは最初の方だけで、あとはかなり自由。へんな設定とか、意味があるのかな、と思っていた伏線のようなものの回収があるわけではなく、連続コントのようなシーンがつながっていきます。例えば、こりゃ差別だよ、と思ったセリフなどは、客が自分で気づけばそれでよし、といったスタンスなんだなと思いました。すいません、予定調和を形にしたようなアラジン見たばっかりなんで。

なーんだ、最初からもっと力抜いてみてればよかったよ。ツッコミが説明しすぎと思うところもけっこうありましたが、かなりしっかり笑えました。「芝居見てきた主婦2人」と、「新国立出てろ」はウケました。新国立中劇場行ってない人にはわからないよねと思いつつ、お客の平均年齢高そうだったので、意外とわかる人多かったかもしれませんが。

キャストはなんといっても古田新太。あんなにメジャーなのに、この小さい劇場でも輝いています。かなりゲスなことしててもどこか下品じゃないというか。成海璃子がかわいい枠でほんとツヤツヤきれいでした。この子、最近ドラマではあまり見ないけどいい女優だな。「真田丸」の板部岡江雪斎を好演していた山西惇が張りのある声を響かせていて、舞台のキャリアを感じさせました。賀来賢人もかっこよくてどんなカッコしててもステキ。

名前くらいしか知らなかった犬山イヌコさん、面白い人でした。後からニャースの声の人だと知って感激(アニメではニャースが一番すきなんです)。大倉孝二、190cm近い長身、何しゃべっても面白くって。あと、入江雅人、八十島勇一と、みんなよかったです。

それにしても、璃子ちゃんにあんなカッコさせて。目を凝らして見ちゃいました。でも楽しかったんだろうな。

(追記)

賀来賢人くん、結婚おめでとう!かっこいいのにこの役を演じている舞台の真っ最中に発表って…絵になる美形のさわやかな二人でいいですね。

KERA・MAP「グッド・バイ」@KAAT、太宰治「グッドバイ」

Photo       ケラといえば有頂天のケラ、そして私にとっては米米クラブを最初に見出した人としてよく聞く人、だったんですが、脚本家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチとして率いるナイロン100℃の芝居は面白いよーと聞いて、いつか見たいと思っていました。ミュージシャンとしてここまで有名で、劇団を主宰するなんて、あんまり聞いたことはありません(クドカンのグループ魂はあくまで劇団の余技のような)。

「グッドバイ」は、ナイロン100℃ではなく、俳優を集めて上演するKERA・MAP、主演は仲村トオル、小池栄子で、ほかに水野美紀、夏帆、門脇麦、萩原聖人等。

太宰治の未完の小説「グッドバイ」がモチーフです。雑誌の編集長の田島(仲村)が愛人を整理して妻子の元に戻ろうと、担ぎ屋のキヌ子(小池)に妻を装って一緒に愛人に会ってくれ、と頼みます。小説も未読だし、事前にあまり内容をわかっていなかったんですが、次々に愛人に会うという面白いストーリーにすぐ引き込まれました。

シンプルで機動的、照明を生かした舞台装置、ちょうどいい具合に挿入されるちょっとしたダンス風の動き、ぴたっとはまったキャスト、無駄のない台詞と、時代は担ぎ屋が出てくる頃なんですが、ものすごく現代の芝居。今、ストレートプレイにはあまり興味がないと思っていたのが申し訳ないくらいのクォリティを感じました。ケラってこんなにすごかったんだ。

キャストはみんなよかったんですが、なんといっても小池栄子が圧巻。演技の評価が高いのは知っていましたが、バイタリティあふれる、でも女としてかわいいキヌ子で、見ていて楽しかったです。女性キャストはみな個性的で、今話題の門脇麦もすっかりこの舞台にはまっていました。女医大串のいかにもなてきぱきした口調がいいなと思っていたら、ケラさんの奥さんの緒川たまき

仲村トオルは相変わらず鍛えた肉体美。舞台が進むにつれ、セリフ回しの不器用さがちょっと目についたものの、女性たちに翻弄される色男が意外なくらい合っていました。男性でよかったのは、山崎一。舞台やドラマにたくさん出ている方ですね。

さて、芝居は休憩はさんで3時間の長丁場。2幕の前半はちょっと眠かったですが、なかなかのハッピーエンドでした。小説「グッド・バイ」はこれのどこまで書かれていたのか、読んでみたくなりました。

最後、ケラさんが出てきて、「大千秋楽です!」とあいさつ。千秋楽ってめったに行ったことなかったので、感激してしまいました。

ところで今回、KAATは全席指定の一律料金。でも、3階席だったんですよう。2階のサイドとか(たしかA席扱いの公演もあったはず)あいてるのに。確かに効果的な照明や全体の動きはよく見えたけど、3階席まであって一律っていうのはないのでは。ねえ。

(追記)

Photoさっそく太宰の原作本を読んでみました。スカスカの文庫本で35ページの未完の短編、2番目のイラストレーターの女の子が出てくるところで終わってしまいます。

しかし、本当に面白い短編です。女と手を切ろうとする色男田島、怪力で大食漢でがらがら声(だから小池栄子は声をつぶしていたんですね)、だけどときどき飛び切りおしゃれをするとすごい美女になるキヌ子、ケラの脚本は、この短い小説の面白いエピソードをきっちり取り込んでいたんですね。

この短編集では、破滅的な夫に苦労する妻の話が2編あり、そちらはわかっていても腹が立ちます(妻の立場で読んでしまう)が、ダメ男の匂いはするものの、田島は愛すべき男で、ほかの登場人物も生き生きしていて、読んでいて楽しいです。

何故こんなバイタリティのあるキヌ子のようなキャラを造形しながら自死したのか、未完なのが本当に残念でした。

(追記その2)

2015年の読売演劇大賞、この作品は最優秀作品賞と小池栄子の最優秀女優賞を受賞しました。上記のように、未完の古い原作を洗練された演出でよみがえらせたKERAと、見事にキヌ子を造形した小池栄子に拍手です。