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オペラ・バレエ

「ソフィア・コッポラの椿姫」

Photo_3     映画監督ソフィア・コッポラがオペラを初演出したヴェルディ作「椿姫(La Traviata)」(2016年5月、ローマ歌劇場)の映画化です。オペラは数回しか見たことのない私、この有名な作品も見ていないので、よい機会とみてきました。特別料金3000円なりです(ついもう1000円出せば歌舞伎座3階Bだとか思ってしまう)。

コッポラにオファーしたのはヴァレンティノ・ガラヴァーニだそうで、衣装はもちろんヴァレンティノのメゾン、イタリア人キャストをフィーチャーしてローマで上演というもの。このチラシの真っ赤なドレスがとても素敵でした。演出については、初めて見るので、普通とどうちがうのか、はよくわかりません。 公演情報http://www.operaroma.it/en/shows/opera-traviata-2016/

舞台はパリの社交界。高級娼婦のヴィオレッタ(フランチェスカ・トッド)は、パーティでアルフレード(アントニオ・ポーリ)と出会い、恋に落ちます(ちょっと意識が飛びました)。二人で住む田舎の別荘に、アルフレードの父ジェルマン(ロベルト・フロンターリ)がやってきて、ヴィオレッタに息子を返せと迫ります。ヴィオレッタはパトロンの男爵の元に戻ったふりをして別れますが、パリのパーティで再会します。ヴィオレッタは結核が悪化し、死の床にアルフレード親子が駆け付け、ヴィオレッタは生きたいと願いながら息を引き取るのでした…。

オペラというと、長くて大掛かりで登場人物もたくさん、というイメージなんですが、このオペラ、大勢が出てくるところとそうでないところがとても極端で対照的。最初のパーティでは、舞台にぎっしりキャストがひしめきあい、聞き覚えのある「乾杯の歌」に感動。ヒロインのフランチェスカ、まだ27歳ということですが、まあ貫禄があってすごい迫力。彼女の歌がとても多くて、こんなに歌って大丈夫かというくらい、驚異的な音域で歌いまくります。

対するアルフレード。ああ、小太りであまりに庶民的な風貌。数多の恋で社交界を生き抜いてきたヴィオレッタが真実の愛に目覚める純粋な青年というには…最後まで、残念な気持ちがぬぐえませんでした。

一方父ジェルマン。もちろんお年でおぐしもないんですが、フランチェスカとのやりとりに味があって、この方、非情なだけではない慈愛が感じられてよかったです。ただ、純愛物語なのに二人のシーンが長すぎて、劇自体の面白みは削いでますね。

パリで再会するヴィオレッタとアルフレード。バレエが素敵で、特に女性、男性の中心ダンサーはとても個性的で好きでした。アルフレードはヴィオレッタに、金を返す、とお札を投げつけるのですが、ここでもぎっしり舞台にいる人々から、一斉に、「女性を侮辱するなんて!」とアルフレードにツッコミが入ります。ヴィオレッタは娼婦でアルフレードはお坊ちゃんなのに、この一斉の非難が気持ちよかったです。ここでヴィオレッタが着ているのが、チラシの、たっぷりした真っ赤なドレス!

ここからいきなり瀕死のヴィオレッタの場面となります。そう、アルフレードとヴィオレッタの愛憎の描写が薄いんですよね。ヴィオレッタをやる一流のソプラノはどう見ても結核なんかになりそうもない体格だし。この3幕のヴィオレッタとアルフレードの二重唱「パリを離れて」も有名で美しい曲なんですが。

ってことで、やっぱりオペラはオペラ歌手を聞くもの、お芝居に歌がつくミュージカルとはちがうんですよねえ。時々こうやって触れるぐらいでいいかな、と思った次第でした。

「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」

Photo  見た人がみんな衝撃を受けた、感動したというドキュメンタリー映画、「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン」を見ました。

  セルゲイは1989年、ウクライナ生まれ。生まれたときから体が柔らかく筋力があり、体操を経てバレエですぐ才覚を現します(最近の人だけに、映像がたくさん残っていて天才児振りがうかがえます)。

キエフの国立バレエ学校に入学したセルゲイの学費を稼ぐため、父や祖母は国外に出稼ぎに。そして母の判断で、英国のロイヤルバレエ学校のオーディションを受けて入学を許され(「ビリー・エリオット」みたい!)、ここでも圧倒的な実力を示します。家族のためにがんばってきたのに、両親の離婚に傷ついたセルゲイ。史上最年少の20歳ででロイヤル・バレエ団のプリンシパルとなりますが、タトゥー、ドラッグ、鬱とBAD BOYと言われたセルゲイは、2年後に突然退団してしまいます。

ロシアに行き、テレビのバレエコンテストから人気者になったセルゲイ、イーゴリ・ゼレンスキ―の指導のもと、しばらく活躍しますが、ここでも行き詰まりを感じ、最後にホージアの「Take me to Church」のMVを、ロイヤル・バレエ学校の親友Jade Hale-Christphi (この方もかっこいいんですよ。もう一人の学校のお友だちも!)の振付で踊って引退しようとしますが、それがYoutubeで大人気となり、復活を遂げます。

セルゲイ、ロシア系らしい彫りの深い美形で、180センチ超、手足も長く、完璧な形のお尻、まるで生きたミケランジェロの彫刻、しかしリアルな人の顔まである全身のタトゥが異様。そしてそのバレエは、驚異的な身体能力と表現力。見ているうちに、あ、この人、「オペラ座の怪人25周年ロンドン公演」で踊っていた印象深いダンサーだということを思い出しました。2011年ですから、短いプリンシパル時代だったんですね。とにかくこの若さに似合わない迫力と哀しみのこもった表情で、ドラマチックな人生、映画にしようと思った人、えらい!

バレエダンサーの過酷さもみられます。美しいバレエの陰に、疲労、痛み。殺伐とした楽屋で水と薬を飲むセルゲイ。猿之助の襲名時のドキュメンタリーでも、体中つって息も絶え絶えになっていましたが、代々使う化粧台と花、何より常にサポートに徹するお弟子さんのいる居心地の良さそうな楽屋との違い。プリンシパルのメンタルは歌舞伎役者よりずっと強くないとやっていけないのでしょう。

そしてセルゲイのために人生を捧げた両親、とくにお父さんは息子を深く愛しているのに、孤独感が滲んでいて(インタビューの背景もちょっと荒んでいます)、幸せになってほしいと思いました。

勅使河原三郎演出オペラ「魔笛」@神奈川県民ホール

Photo  日本でもっとも上演機会の多いオペラという「魔笛」、内容も楽しそうだし(「のだめカンタービレ」の番外編でやってました)、横浜だしそんなにチケット高くないし、というので行ってきました。

  演出の勅使河原三郎さんは、自らのダンスカンパニーKARASを主宰するダンサー・振付家なんですね(詳しく知らなかった)。この魔笛では、演出のほか、装置、衣装、照明を担当していますし、クレジットはないですがバレエも彼のカンパニーですから、ビジュアル部分はすべて勅使河原ワールド。アンコールで出てきた勅使河原さんはですね、小柄ながら一流の芸術家の持つオーラをまとっていて、強烈な印象でした。

舞台装置は大小の輪が移動するだけの抽象的なもの、この輪が立派なので、貧相な感じではないです。衣装がまた、主人公はシンプル、ザラストロと夜の女王、侍女は豪華、その他は被り物(!!)。モノスタストスや童子の方、とてもお顔は素敵なんですが、とんでもない恰好です。この計算された全体のビジュアルがなければお笑いか、なんですけど、ギリギリのところで踏みとどまっているというか。強いて言うと、タミーノの衣装はね、なんか嵐の私服みたいで、あまり好きではありませんでしたが。

KARASの佐藤利穂子さんが、歌以外の地の部分をナレーションでつないでいくという手法で、お話は効率よく進んでいきます。この方、ちょっと宮沢りえに似た声が心地よく、女優さんかなと思うくらい素敵なナレーションでした。歌はドイツ語字幕なんですが、ナレーションが日本語なので、入ってきやすくて、初心者にもとてもわかりやすかったです。

一方、流れが歌部分とナレーションに分断されてしまうので、演技の部分が奪われて、見ている方としてはキャストへの思い入れが減殺されてしまうというマイナス部分でもあるんですよね。そういう点からすると、パパゲーノ(宮本益光)は有利というか、それでも明るさ、かわいらしさが発揮できていて、宮本さんの個性もあるのでしょうが、とっても楽しいパパゲーノで(しかも、出てきたとき、この方ほんとにオペラ歌手?と思うようなイケメンですよ)、アンコールの拍手も一際大きかったです。

そのほかのキャストは、タミーノ鈴木准、パミーナ嘉目真木子、夜の女王 安井陽子、ザラストロ大塚博章、モノスタストス青柳素晴のみなさん。タミーノ、パミーナは若い美男美女で、現代風のこのオペラに合ったビジュアル(スカラ座などみるととても王子には見えませんからね)。最初に書いた4人は2日間の公演で日替わりなんです。ミュージカル公演と比べると驚き。練習して、たった一日なんて。

バレエダンスも、群舞とソロがちょうどいいバランスで入ってきます。衣装もちょっとコロスのような雰囲気で、目で見る楽しみを加えてくれていました。ここでも利穂子さんがキレのいい動きを見せていて、大活躍でした。

モーツァルトの親しみやすいながら、意外に精神的な深さを感じるパートもあって素晴らしい音楽、普段ミュージカルしか聞いていないのでレベルの違うオーケストラ(ごめんなさい)、楽しいオペラでした。

オペラ「ハムレット」

7301_1ここ数年、夏休みにクラシックコンサートに行ってる私、今年は首都オペラ(Japan Metropolitan Operaっていうんですよ)、神奈川フィルハーモニー交響楽団のアンブロワーズ・トマ作のフランスオペラ「ハムレット」の公演に行ってきました。フランス語上演、字幕つきです。

2日間の公演ですが、主要4キャストは日替わり。今日は、ハムレット:月野進、オフィーリア:盛田麻央、クローディアス:佐藤泰弘、ガートルード:佐伯葉子のみなさんです。

もちろん、シェイクスピアのハムレットのストーリーなんですが、だいぶシンプルになっています。ボローニアスの死や、決闘のくだりなどはありません。

フランス語のオペラですからね、人物の葛藤とか関係性等の微妙なところはわかりにくいです。ハムレットだって朗々と歌っちゃうわけです。でも、原作が有名なだけに、ハムレットはいろいろ苦悩しているんだろうな、とか、オフィーリアが突然のハムレットの変貌にショックだろうなとか、母王妃もあんなに責められて、みたいな雰囲気は感じられます。

やっぱり主要4キャストは、見た目も含めて、感動させてくれます。とくにオフィーリアが亡くなる前の長いアリア。超絶な高音には、観客も惜しみない拍手でした。ハムレットの月野さんも端正な美しいバリトンで、この方にChessのアナトリーをやっていただきたい、と思いましたよ。クローディアスの佐藤さんも渋いかっこいいクローディアスでした。

舞台美術もシンプルですが、白黒を基調とした衣装ともあって、スタイリッシュで素敵でした。合唱団が出てくるシーンが演劇的で、とてもよかったです。唯一、1幕のオフィーリアがOLみたいな衣装で、冒頭、この世界に入り込むところだけにやや違和感がありました。

(以下ネタバレです)

さて、よくいわれているこのオペラの驚愕のラストシーン。みんながオフィーリアの死を嘆いている葬送の場面に、父王の亡霊が出てきて(ハムレットとクローディアスだけに見えるらしい。母王妃はこのシーン影が薄かったので見えてたかよくわかりませんでした)、「やっちまえ!」って言うんですよ。で、ハムレットはそのへんの棒(木か墓標)でぐさっとクローディアスを刺し、父王の亡霊の命により国王になるのですよ。ええーっ。じゃああの長いアリアを歌って亡くなったオフィーリアがかわいそうでは、などと野暮は言わないのがオペラなんですね。

県民ホールって、よくいくKAATのすぐ裏にある立派なホールで、オペラやバレエを上演しているようです。ロビーから見える緑と港がとても美しいのですが、3階まで上がる階段がたいへんでした。

ネオ・オペラ「マダムバタフライX」@KAAT

ButterflyKAATの宮本亜門演出の「マダムバタフライX」を見てきました。

(以下、ネタバレです)

舞台はプッチーニのオペラ「蝶々夫人」の上演のため、スポンサーに見せるさわりの映像を撮ろうとしているスタジオという設定で、背景は合成するため、グリーンスクリーンになっています。「蝶々夫人」は古い、耐える日本女性像じゃないかという見方に対し、女性プロデューサーは、なんとか現代的な意味を蝶々夫人に見出そうとしていますが、私生活では離婚協議中で夫に親権を渡そうとしている幼い息子がいて、この子が蝶々さんの子役をやります。この方、夫との電話なんかがすごーくリアル。

劇中劇の「蝶々夫人」。伴奏もピアノとバイオリン、パーカッションだけですが、大げさな演出がなく、曲も絞っている分、ドラマに集中できます。最近、「ミス・サイゴン」をNHKドラマの「蝶々さん」に重ねて見たと書きましたが、この、オペラの蝶々夫人を見ていてもそれがよみがえってきて、健気で一途で清らかな蝶々夫人がよく伝わってきます。最後の自決も、自ら運命を選びとった意志の強さが感じられて、ただ翻弄されるだけの蝶々夫人ではありませんでした。

ラストに行くにつれ、劇中劇の簡素なセットなのに、目が離せなくて、客席もぐーっと引き寄せられていき、蝶々さんの悲劇に泣かされちゃいました。虚構のドラマと音楽の力っていうことなんでしょうか。心地よい感動でした。こういう楽しみ方もあるのか、というか。

現代劇の部分が弱いという感想もあったんですけど、現代の部分がないと、どうしてこんな簡素な舞台でさわりだけを演じるのかの説明ができないし、たとえばコンサート風のダイジェスト版だったら、こんなに感動しなかったのでは、と思いましたね。あくまでオペラが主、という演出家の意志を感じました。現代劇の役者さんもみんなよかったです。

蝶々さん役の嘉目真木子さん、若くて美人(右はパンフで対談している写真)!Yosime_3
キャスト一番の声量も、凛とした蝶々さんのたたずまいも、ちょっとした動きもとても素敵で、すごくよかったです。また見たい、と思わせる華のある方、活躍してほしいです。

子ども役くんがですね、唯一、蝶々夫人と実世界の両方に出てるんですが、とくに実世界の方なんて、リアルでうまくて感心しました。この息子がかわいくて(この年頃の少年ってほんとにかわいい)、女性プロデューサーが最後息子を抱きしめるんですけど、親権渡すの考え直すのかな、という雰囲気でした。私はどうしても母親が子どもを置いていくというのが苦手なので、救われた気持ちでした。そこで何か展開があったら、わざとらしくてどう描いても蛇足っぽくなったのではと思います。

こういう演目には、ほんとにKAATはいい劇場ですね。

新国立劇場「白鳥の湖」

Hakuchouバレエ「白鳥の湖」を、新国立劇場で見ました。

多少敷居が高いところもあって、今までバレエを見たのはこどもの頃の教育的な「白鳥の湖」とクリスマスの「くるみ割り人形」のみ。「白鳥の湖」は、薄暗い森で同じ衣装の白鳥たちが踊るというイメージがありました。

しかし、この白鳥の湖、非常に華やかで、音楽、衣装もすばらしく、バレエの代名詞というのも納得する舞台でした。1幕と3幕は王宮のシーンで、音楽も踊りも衣装もさまざまでとても楽しめました。道化や悪魔ロートバルトも魅力的なキャラクター。4羽の白鳥の場面は音楽も振付も有名ですが、バレエの中ではむしろ異色だから有名なんだろうな、という発見もありました。

それから、コール・ドの人数が意外なくらい多く、一人ひとりがスタイルも美しく、フォーメーション(というのか?)もバリエーションがあり、スピード感があってとってもよかったです。無言ではありますが、音楽自体が美しく、物語に盛り上がりがあって、飽きさせません。一人ひとりの不断の努力があって、こういう舞台ができるのだろうなあと思いました。また機会があったら、是非バレエを見たいと思います。

ちょっと残念だったのが、プログラムのつくり。演劇や音楽のプログラムだと、その作品そのもの解説とともに、そのプロダクションの説明、今回の上演でのみどころ等が書いてあるのですが、「白鳥の湖」の歴史と、キャストの説明だけ。このバレエ団の日本での位置づけとか、演出の特徴とかがあるとよかったのにと思いました。私が見た「白鳥の湖」はどういうものなの?と思ったものですから。