2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
フォト

四代目市川猿之助

図夢歌舞伎「忠臣蔵」第4回(七段目)、第5回(九段目、十一段目)、写真絵本「仮名手本忠臣蔵 由良之助とおかる勘平」

2007zumukabuki_20200721212201 図夢歌舞伎4.5回の完結編です。第1回(大序~三段目)・第2回(四段目)第3回(五、六段目)もご覧ください。 

 図夢歌舞伎「忠臣蔵」第4回七段目「祇園一力茶屋の場」

幸四郎の平右衛門は初見です。由良之助と兼ねるわけにはいかないので、前半の放蕩や三人侍や九太夫とのあれこれはカット。事前にTwitterでみたてを募集していましたが、どうやってと思ったら、平右衛門と猿弥人形で。3題披露されましたが、思った以上に「うまい!」という内容で、感心しました。

この忠臣蔵でいろいろな役をやっている幸四郎さんですが、平右衛門はなかなかいいです。身分は低く、あまり賢くなさそうだけどまっすぐで優しい平右衛門。ここまできたら、前回の勘平も(猿之助がやってくれたのはもちろんうれしいんだけど)見たかったかも。運命に翻弄される悲劇の幸さんて好きなんですよね。

さて、おかるは雀右衛門さん。ひいたアングルはおきれいです。何より台詞回しが、ああ、歌舞伎ってこうだった、今歌舞伎を見ている、という満足感を味わわせてくれました。図夢歌舞伎に出てくださってありがとうございます。インスタライブなどもなさったりして、若々しくていらっしゃる。

平右衛門とおかるの仲の良い兄妹が、どこかのんびりしたくどいやりとりをする面白さは、花道を使っての二人の距離の遠近がないだけ、本来よりはだいぶダイジェストなんですが、二人の関係性などは伝わってきたと思います。

そして、映像だからこそ可能となった、初代白鸚(八代目幸四郎)の由良之助の登場。お顔といい、迫力ある台詞といい、堂々たる立ち姿は、まごうかたなき現白鸚、吉右衛門さんの父。初代吉右衛門さんの娘さんがお稽古に通ってきた八代目とどうしても結婚したい、男の子を二人産んで一人は吉右衛門を継がせます、と言ったという話を思い出すのですが、さもあらん、なんて思ってしまいます。この方の、七段目前半の酔態見たかったなあ。

舞台映像なので、「高麗屋!」「八代目!」と、盛んに大向こうがかかります。歌舞伎の幸せな時代だったな、と悲しくなりますよね。

第5回(最終回)九段目、十一段目

さて、とうとう最終回です。まず九段目、山科閑居の場。山科の大星家に、戸無瀬(猿之助)が娘小浪を連れて、力弥への嫁入りを願います。お石は出ず、由良之助(幸四郎)が拒絶。しかし小浪(葵太夫さんの語り)はあきらめられず、戸無瀬はいっそ娘を殺して自分も死のうとします。そこに小浪の父本蔵(幸四郎)が虚無僧姿でやってきて…

雪の中傘をさしてやってくる戸無瀬、凛としてちょっと若さもあって美しい!思いつめたような目、ゆったりとした台詞回し、太棹と義太夫。そんならいっそと小浪に向けて刀を抜く、赤い着物姿の所作の見事さ。(死ぬ覚悟の小浪に)「でかしゃった」が、わー政岡じゃなくてもこんな風に言うんだ、と感動。この戸無瀬も、藤十郎さんそっくりだそうですが、たしかに感じることができました。

(2014年12月には南座で戸無瀬藤十郎、小浪壱太郎、お石 秀太郎、本蔵 現白鸚、由良之助梅玉、力弥扇雀という座組での上演があったそうです。うわー見たい)

本蔵が三方を踏みつけて力弥(染五郎)に自分を討たせ、師直に賂を贈ったことで矛先が判官にいってしまったこと、松の廊下で判官を止めたことで、一命を救ったつもりが無念の死となったことを述懐し、師直邸の地図を引出物として渡します。力弥の雨戸倒しの工夫も見事に見せてくれました。

後半は、由良之助と本蔵の早替わりで幸さん汗だくの熱演!渾身の演技が、吉右衛門さんに似てました。鬘、着物のほか、本蔵は白髪交じりの眉毛が長く、早替わりはなかなかたいへんだったと思いますが、幕間の猿弥人形が、「今日はあーちゃんと私の二人だけ、あーちゃんは殆ど生です」とのことで驚きました。

猿弥人形の出番もこれが最後、明るくわかりやすく、その場でのチャットの読み上げもうまくて、猿弥さんがいなかったら、成り立たなかったといっても過言でない大活躍でした。猿弥さん、弁天娘とかチャップリンとか、幸四郎さんとのがっつり共演けっこうあるんですよね。ほんとすばらしい!

さて、十一段目、大詰です。討ち入りの由良之助の太鼓の後、雪景色の中、一画面一人ずつでの立ち回り。やゑ亮、右田六、喜楽、松悟、やゑ六、笑猿と、いろんなお家のイキのよい若手で、楽しい場面になりました。泉水の立ち回りでは右田六くん活躍で、いい顔してましたです。

そして師直の首をとった由良之助、殿の位牌の前に備えます。勝鬨の後の独白!この時代のつらさにあって、皆で頑張るという覚悟、そして「必ず明日は日本晴れ」…目に浮かべた涙が、清らかに美しかったですよ!

最後は化粧を落としてさっぱりとした浴衣姿の幸四郎さんと戸部さんのアフタートーク。久しぶりに大道具さん、衣装さんたちと会ったときのことを思い出して声を詰まらせる幸さん。世の中の40代後半ってもっとおじさんだと思うんですが、夢を追いかけているためか、若いんですよね。

この図夢歌舞伎は、歌舞伎を知らない人にその素晴らしさを伝えるにはやや未熟でしたけど、通してみるとやっぱり見てよかったと思います。松竹の有志の会の皆さん、出演者、スタッフの皆さん、お疲れさまでした。これから、歌舞伎にもっと気軽に触れたい人のきっかけになるようなわかりやすいコンテンツを作って行ったらいいのに、と思いますね。

(おまけ)

2007okaru

 「仮名手本忠臣蔵 由良之助とおかる勘平」という写真絵本をみつけました。昭和61年(1986)二月花形歌舞伎での仮名手本忠臣蔵通しのうち、五、六、七段目を豊富な写真と宇野信夫氏の浄瑠璃台本を元にした平易な文章(まるで少年文学のようです)で綴ったものです。

由良之助と斧定九郎を十二代目團十郎、勘平を仁左衛門、おかる玉三郎、それぞれ40才、42才、36才という正に花形な年代ですが、人気もあってこんな本まで出したんですね。

ニザ玉さまがこのうえなく美しいのは当然として、團十郎さんもいい表情ですよ。冒頭のあらすじ部分の血をなめる表情とか、あまり上背があった感じはしないのに定九郎もかっこいい!ほかに高師直 富十郎、塩谷判官 先代芝翫、顔世御前 時蔵、鷺坂伴内 又五郎なんて配役です。

2007okaru2

  文章が丸々1ページのところもありますが、写真の間に文があるところもあって、歌舞伎好きには楽しい絵本です。図書館などにはあるのではないでしょうか。

 

2007okaru3

「半沢直樹」第1回など

  2007 ようやく「半沢直樹」が始まりました。延期されていた放送が決まってから、TBS煽る煽る。後述の制作発表でも第1回からすごいと言ってましたからね。

全シリーズの最終回で証券会社に出向になった半沢直樹(堺雅人)は、ITベンチャーの買収案件をめぐって東京中央銀行の伊佐山証券部長(猿之助)と対立します。うわ、四代目、予告編で覚悟してたけど、予想を超える嫌な奴、人を小馬鹿にした表情とかもったいつけた言い方とかやりすぎ。一番の敵役なんだから思い切りやらなきゃって思ってるんだろうな。ちょっとふっくら丸々としたお顔がまた憎らしいですよ。ああ、歌舞伎見ない人の印象が…。本当はこんなに真摯に歌舞伎に向き合ってる人なんですよ(八月歌舞伎座の制作発表 1:30くらいからです)。

松也のIT社長が、長めの髪といいラフな服といいワガママな感じがはまってていいです。賀来賢人も重要な役どころ。ほかに副頭取古田新太を始め、井上芳雄、池田成志、今井朋彦、土田英生、加藤啓、山崎銀之丞と、濃い舞台人大勢。舞台がなくなってしまった役者を集めて、舞台が見られなくなった私たちに見せてくれるってこと?

夜中に電話1本でメール全消ししちゃうくらいデフォルメしすぎなドラマなので、気楽に見ればいいんですけど、かわいい女性枠的な今田美桜ってちょっと若すぎるのは残念で、この役はもっとキャリアな感じにしてほしかったな。

【制作発表】

7月11日に、10人のキャストが揃った制作発表がライブ配信されました(アーカイブあり)。うち猿之助、愛之助、中車、松也と4人が歌舞伎役者。4人は地方巡業かというくらい、めちゃくちゃおしゃべりしていたそう。

四代目は初回から圧巻の芝居、と言われて、「たいしたことない役者ですけど、半沢直樹の皆さんがいい包装紙でくるんでくれて、ラッピングでよく見せてくれた」「後から入るのはたいへんだが、香川さんが保護者のように付き添ってくれていた」なーんつってましたね。ニュースにもなっていましたが、中車さんは「前回土下座をくらっているので、いとこまで土下座をくらうわけにはいかない、一族をかけた戦い」と。脳内で「四代目まで土下座させるわけにはいかない、澤瀉屋をかけた戦い」って変換しちゃいました。

【ぴったんこカンカン】

番宣でいろいろな番組に出てくれてましたが、これは中車と二人で出演。上目黒の小料理屋ふじで初めて会ったエピソードなどが出ますが、途中お皿を片付けたり、高齢のお店のおかみさんに優しい四代目。團子くんが「カマキリがなんか言ってる」というなんてちょっぴり反抗期なんだなという話も。その後も浅草の鰻店小柳でも気を抜いたりお土産の鰻を勝手に頼んだりやりたい放題の四代目。普段は自由な中車が、フォローします。知らない人が見たら、中車の方が10歳年上なのに猿之助失礼なやつって思うかもしれないですが、やっぱり中車からしたら澤瀉屋の頭領として立てなきゃいけないですもんね。暁星の教会で同じく卒業生の北大路欣也、賀来賢人といっしょにフランス国歌を歌うサービスも。

【櫻井・有吉THE夜会】

四代目の紹介するグルメをかけて破天荒クイズ。寿猿さんが登場して(「生きてたんだ」とつぶやいてましたよヒドイ)、四代目にカンペをとられたというイタズラを紹介。四代目「困らせるつもりなのに、寿猿さんは、長年やってるから切り返しの引き出しが多くて何とかしてしまう」。まだ死なないはずなのに殺しちゃうなんてのもありましたもんね。一番困ったイタズラは、というのが問題で、置いてあった入れ歯をおもちゃの入れ歯に変えちゃったとか。寿猿さんの入れ歯話いっぱいあって面白かったです。寿猿さん、90歳にはとても見えないお元気さでお顔もつやつや。八代目中車の弟子で、芸歴87年澤瀉屋、そのうちこの40年くらいは四代目に翻弄される人生。でも当代の才気と遊び心を愛しているのが伝わってきますね。

【A-Studio+】

半沢直樹放送後の金曜日のA-Studio+。鶴瓶さんのバラエティには何度か出ているし面白いはず、と思っていたらやはり充実してました。一般の人が見たらどうだったかな。

半沢直樹の芝居は、歌舞伎になっちゃうので中車に全部やってもらって完コピと。世間が似てるというはずですね。私的には、香川照之歌舞伎に入る→演技がどんどん濃くなっていく→特によく出ている日曜劇場では「中車劇場」になる→もともとテンション高い四代目ここまでやっていいのか、と真似する→監督煽る、な感じですが。だからあんなヤクザな銀行員いないとか言うのは意味ないですよ。典型的な悪役やってるんだから。

ゲストは幸四郎さん、ゆずの北川悠仁さんと暁星・慶応の同級生。骨折の話も、テレビでは一番詳しくやったかもです。中車さんが号泣しながらやってきて、医療チームを編成してくれた話、感動ですね。同級生の皆さんから、学生時代のトンデモ話もっと聞きたかったかも。

【なんでも鑑定団】

テレ東だから番宣ではないのですが、「なんでも鑑定団」ですごいことやってくれました。だいたい、芸能人って冒頭になんとかひねり出したお宝もってくるんじゃないんでしたっけ。いちばん大物が出てくるトリですよ。

安土桃山時代にわずかに作られ、焼き物で2つしかない国宝もあるという美濃の「志野焼」。素人がみると、いかにも高そうな感じがするが実はニセモノ、みたいな、わざと崩してあるのが怪しいという雰囲気があるお茶碗ですが、なんと。6000万円という評価!

これを手持ちの骨董を売り払って購入するとは、そんなに価値のある骨董集めてたのか、信用できる骨董屋とおつきあいしているんだな、そして、手に取ってみて価値がわかるほど審美眼があるんださすが、という感想です。

自己評価が1000万円ですから、購入価格もそれに近かったんでしょうが、普段お茶飲むのに使ってるって、さらにさすが四代目ですよ。

人間国宝荒川豊蔵氏の箱書きがあるのですが、中島誠之助さんが「近いうちに三重箱を作り、四代目猿之助の箱書きを与えて銘をつけてほしい(→さらに価値が出る)」とおっしゃるのが、わあそれかっこいい、としびれましたです。

図夢歌舞伎「忠臣蔵」第3回(五、六段目)、歌舞伎家話 猿之助・團子

2007zumukabuki 図夢歌舞伎第3回は、五、六段目、勘平の物語です(図夢歌舞伎第1回、第2回)。歌舞伎家話で幸四郎さんに「遠くから応援しています」と言っていた四代目がなんと演出・勘平ですよ。2012年、亀治郎最後の公演で、藤十郎さんに習って演じた上方の型です。おかる壱太郎、おかや吉弥という上方縁の役者さんの共演。そして葵太夫さんのTwitterで出演依頼があったと知り、おお、と楽しみにしていました。この段は国立の菊五郎さんの勘平しか見たことありません。

脚本の戸部さんが、記録の趣旨もあってか図夢歌舞伎の制作についてつぶやいているTwitter(どこでも歌舞伎)によれば、第二回から音響スタッフを増強したうえ、第三回は、「藤森圭太郎監督、西山理彦映像演出にて撮影配信チーム一新。」そして、映像の経験豊富な四代目演出ということで、アップ中心の映像ならではの作品になりました。

まずは五段目 鉄砲渡し・二つ玉の段。与市兵衛(高麗五郎)を斬って50両を奪う斧定九郎(幸四郎)。ほんとに色悪の美しい幸四郎丈!講談や落語の「中村仲蔵」を知ってから初めて見る定九郎は、やっぱりかっこいい!

そして四代目の勘平登場です。2012年亀治郎最後の舞台で演じた勘平の舞台写真はなかなか美しく、この自粛期間中でちょっとふっくらした四代目どうだろうなんて思っていたんですが、失礼!大丈夫でした。

暗闇の中で定九郎の死骸をまさぐる勘平、最初からテンション高い!与市兵衛の骸からどうしてもほしい金を拝借して立ち去るそのおぼつかない足取りのアップ。

ここでちょっと休憩、猿弥人形のチャット読み上げです。リアルタイムではチャットできるんですが、せっかくの生配信に集中したくて、全画面で見ているので、チャットは見ていません。「猪は誰ですか」という質問に、「あーちゃん(幸四郎)です。やりたがりなんです」と答える猿弥人形。

後半はいよいよ六段目、勘平が帰宅し、おかる(壱太郎)が駕籠で売られていくところから始まります。駕籠でと指さす手が画面に入るようにしていたという四代目。

前述のとおり、上方の型の六段目で、勘平が着替えるのは浅葱の紋付ではなく木綿の普段着、不破数右衛門(幸四郎、声と姿だけ)の来訪時に初めて武士として刀を差します。勘平の腹切りは数右衛門が余市兵衛の骸を改めているさなかに後ろを向いて。「色にふけったばっかりに」の述懐はなく「魂魄この世に留まりても仇討ちにお供せで置くべきか」という気魄。舅殺しの疑いが晴れて、おかやがこと切れる勘平に黒紋付を着せかけます。

家に帰ったところから、すでに金をとったことで落ち着かない勘平が、財布の布でハッとして後悔し、おかやに責められ…切腹、血判まで、きめ細かな表情の変化、必死の形相と、感動的な勘平でした。四代目推しとしては、本当に見逃さなくてよかったというこの配信。

おかやと一文字屋お才(顔は出ず)は吉弥さん、上方の型でやる六段目に最もふさわしい方で、勘平とのやりとりの緊張感は、お芝居をみたという満足感を盛り上げます。おかるの壱太郎、きっちり演じているんですが、若干物足りない。

竹本はなんと人間国宝葵太夫さん、三味線は豊澤淳一郎さんで、お二人の好演が満足度を高めていました。休養十分の葵太夫さんの声も絶好調。

11日(土)の生配信に引き続き、「こだわり編集」版が、15日17:00から配信されました。おかやと勘平おかるの2画面、おかや、勘平、おかるの3画面が追加されたり、竹本の音量が調整されたりして、完成度が高まっていました。

【歌舞伎家話第六回】

13日(月)の夜、配信の「歌舞伎家話第六回」として、團子・猿之助のトークがありました。團子が仕切りということになったらしく、彼が質問するのですが、高校生の團子くん相手だと、照れたりはぐらかしたりしないでまっすぐに答える四代目。内容は、四代目をフォローしているファンにはいつもブレないなというものなんですが、ちゃんと團子くんに届くように語られてたのに感動しました。

次代の澤瀉屋を背負って立つ團子くん。K-POPや映像に興味があり、歌舞伎を映像で表現することに興味がありそう。四代目は、その分野は若い世代に譲るつもりといいながら、そういうことをほんとうに表現するためには、その分野でのプロフェッショナルのブレーンが必要と実践的なアドバイスまで。

團子くんも、四代目へのリスペクトが感じられて、そして聡明な少年であることは間違いなく、澤瀉屋も安泰だなと思った次第。

ブルーレイ「シネマ歌舞伎 東海道中膝栗毛」と「歌舞伎家話 幸四郎・猿之助」

2006yajikita

 4年連続で八月の歌舞伎座納涼歌舞伎でやっていた幸四郎・猿之助の「東海道中膝栗毛」の1,2作のシネマ歌舞伎がブルーレイになりました。

1作めの「東海道中膝栗毛」は、シネマ歌舞伎でしか見ていないんですが、改めてみると、第1作なのに染猿以外の出演者も真剣にドタバタやっているのはさすが。新派に行った春猿さんが、こういうのになると存在感といい、吹っ切れ方といい、貴重な存在だったなと思います。笑三郎さんのアラブ王の妻が、オグリの閻魔大王の妻を思い出させる美しさ!獅童のデイビッドも最高でした。金團コンビが、ほんとちょうどいい少年コンビ(4年前でかわいらしい)で、染猿とこんな風に組み合わせたの天才。

2作目の「東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖」 その直前の6月に猿之助ファンになったので2回見たんですよね。隼人、巳之助、児太郎が生き生きとしているのが納涼らしくてやっぱりいいです。3年前なわけですが、その下世代とはちょっと差があるなと感じてしまします。

このときは2部のやじきたが先に決まっていて、後から第3部の「贋作 桜の森の満開の下」に、野田秀樹の希望で幸四郎がキャスティングされたのでやじきたコンビの出番が軽くなったそうですが、改めてみると、短い出番でも地味な拵えの二人が出てくるとその場をさらっていく感じがします。この四代目、軽快でいいんですよね。

特典映像は染五郎・團子のトークショーの抜粋と、第4作の映像ちょっと。話の内容というより、4年間の成長ぶりにジーンときますね。

さて、6月14日の「歌舞伎家話第3弾」が幸四郎・猿之助だったのでチケット買ってみました。歌舞伎座ギャラリーでやる夜話とちがって司会の戸部さんがいないので、話が歌舞伎の演目や役の話にはなかなかいかず(幸四郎さんは二人の共演を振り返ろうとしたり、秘蔵写真を出してくれたりしたんですけどね)、とても素のままな感じで、二人のファン以外の歌舞伎ファンにはどうなの(←そういう人が見るのかわかりませんが)、有料だしと思ってたんですが、2回見たら、意外と深いことも言ってました。素顔のテンション低い幸四郎さんもかっこいいです。

ネタバレ禁止ですが、歌舞伎のテーマパークがあったら楽しいと思うな。オンデマンドで好きな映像見られたり、宙乗りをVRで体験できたり。好きな相手役を選んで1場面演じてみるのなんてどうですか。ささっとバーチャルメイクして。「八幡祭」で新助に愛想尽かしする美代吉とか、「籠釣瓶花街酔醒」で身請けヤダと次郎左衛門に恥かかす八ッ橋とかやってみたい~。

で、思うんですが、舞台の四代目を知らない人がスピリチュアルな話するところだけを見たら、近づいちゃいけない人だと思うんだろうな。舞台写真の人とは別の人。年を経てますます舞台への情熱を、素直ではなく照れ隠しする感じが、たまらないんですけどね。ほんとは今月勘九郎さんと三番叟やって伝説作るはずだったのに、なんて思ってしまいますね。

スーパー歌舞伎Ⅱ「新版オグリ」@南座 期間限定配信 (追記 歓喜の舞!)

2004oguri   3月の南座での「新版オグリ」、行きたかったんですよ。「ワンピース」も地方公演でブラッシュアップしてたから期待できたし、四代目オグリは2階でしか見ていなかったし、鷹之資も出るし!

延期が繰り返されたうえで全公演中止が決まり(それ自体はやむをえませんが)、最後に猿之助・隼人の2バージョンを気合を入れて無観客で上演したらしいのはインスタなどでわかってましたが、まさかの1週間限定無料配信(4月13日から19日まで)!もうありがたい限りです(詳細な配役)。

猿之助オグリ2019年11月の感想)は、フルバージョンです。休憩を飛ばして、アンコール込みで3幕3時間10分!新橋演舞場の初演は3時間25分なので、15分ちょっとの短縮ですが、だいぶ刈り込んだ気がしました。

演舞場の初演をあまり細かく覚えているわけではないんですが、気が付いたのは、照手姫の横山家のドロドロや高倉さま(嘉島典俊)の悪さが少しアッサリになってる。鬼鹿毛乗りこなす場面のフラッグがみんなカッコイイ、鷹之資の踊りがどれもキレッキレでみてて楽しい(セリフもいい)。一部不評だった二幕のSNSはなし。猿三郎さんひとみばあさん、女郎屋の最初の方の場面はなく、照手が操を立てるところもなし、遊行上人短く、金坊登場せず、福之助の山賊は鉄拳。遊行上人とのダブル宙乗りなし。なぜ高橋くんと宙乗り?寿猿さんとあかねちゃん(玉太郎)登場で二人ともよかった。

刈り込んではいますが、1幕は前述の鬼鹿毛、2幕は地獄の立ち回り、3幕は餓鬼病みオグリと歓喜の踊り、と見せ場がそれぞれより際立つようになっていて、面白さは増幅されたと思います。2幕は、オグリ衆大活躍で、鷹之資の鮮やかな飛び六法や、玉太郎の蘭平ばりのハシゴ、そしてオグリと全員の本水!

福之助がどうしちゃったのというくらい台詞が進歩していて、新悟ちゃんの照手ももはや安定感。新悟は10、11月がオグリ、12月チャップリン歌舞伎、1月浅草、2月博多座オグリ。これだけ芯になる役を続けていたら、千本ノックばりにうまくなりますよねー。声が強いのも凄いと思いました。

さて四代目ですよ。3月、京都でずっと開演を待っていたためなのか、あれ、顔がまんまるに、全体にむっくりしてません?もともとストレートな二枚目って、(唯一の)ウィークポイントではという感じもあって、1幕はうーむと思ってたんですが、やっぱり3幕の餓鬼病み!この多彩な声、苦しみ、後悔、純粋な照手への思い、役者としての力量を感じさせてくれます。熊野の滝に上るところ、ああ、左手だけでぶら下がっちゃって~。「思い知ることができましたぁー」で、思わず画面の前で両手を握っていっしょにガッツポーズしてしまいます(映像でよかった!)

こういう感情盛り盛りの、セリフで劇場空間を(空席ですけどね)支配するお役って、なかなか歌舞伎座でみることはできません。19年6月の「風雲児たち」の別れの場面くらいですかね。熊野の滝に飛び込む前の場面は「俊寛」を思わせますが、ほんとに俊寛やってほしい。

そして隼人オグリ2019年10月の感想)。隼人の出番だけをつなげたハイライトバージョンですが、それでも1時間44分あります。うーん、隼人オグリも完全版でアップすればよかったのに。隼人の良さは若さと美貌(!)なので、オグリ党のあれこれがあって、若いオグリにつながる方が説得力が増すと思うんですよね。隼人の出番だけが隼人のよさじゃない。

隼人オグリ、大きくて美しい~。照手がひとめぼれするのもうなずけます。このキラキラ衣装がほんと似合ってます。表情も台詞も確実に進化してて、座長感も増してます。立ち回りもキレてて、四代目より手数も多くて派手。ただ、歌舞伎の台詞と、見得のキマリ方は、比較してはかわいそうですよね。キャリアが違うし。やはり熊野についての餓鬼病みの述懐は、長いだけに差がはっきり出てました。

四代目の遊行上人は、怪しさ感が若干薄れていました。物語の転換点として、これぐらい強烈なキャラクターじゃないと説得力がないのかもしれません。

そしてどちらのオグリでも、この上なく華やかな、歓喜に満ちた踊りのフィナーレ。ここまで、この緻密な殺陣、踊り、細かく作られた場面を積み上げてきて(セットもあまり変わらないから役者さんがふっと気が抜けたりして一つ間違えばたいへんでしょう)、1か月初日を待っていた彼らが南座のお客に見せられなかったのはどんなに無念だったか。関西のみならず遠方のファンも悲しかった。

でも、今の状況では、こんな作品、無理ですよね。舞台の上でのリスク、役者もスタッフも、感染者が出れば即中止となることを思えば、当面演劇が上演されるとは思えません(号泣)。

まだ配信期間中ですが、オリンピックに合わせてインバウンド客も期待されていたステージアラウンドの「ヤマトタケル」再演の中止が早々に発表されました。稽古にも入れないということで、来年のオリンピックに合わせて準備するそうです。それまで、歌舞伎を演じ、つくるすべての皆さんが健やかでありますように。

【追記・歓喜の舞】

5月12日、四代目の指揮の下、キャストが集結して、エンディングの「歓喜の舞」を踊った映像をつくってくれました!

これが、 よくあるリモートのやつね、と思って気軽に見始めたら、冒頭の四代目のイントロダクションに始まり、下川真矢さん(アクション俳優なんですね)の編集による、5分近くのすばらしい完成度の映像!

隼人、新悟、鷹之資、玉太郎、福之助らフィーチャーされた若手といい、猿弥、笑也、猿三郎、段之等澤瀉屋の皆さんといい、皆お家の普段着なのに動きだけプロでキレキレ。若手坊ちゃんたち、楽しそうに軽やかに踊っててかわいいったら。

四代目は一際ラフなスタイルにねじり鉢巻きでちょこっとだけ。もーうまいくせに。でもそういうところがさっくり皆をまとめてしまう所以かなと思いました。ダイエットする気はなさそうなので、早く本舞台に出て、すっきりときれいな四代目となったところが見たいです。

DVD「博奕十王」

  アシェット2003_20200312221001社の歌舞伎DVDシリーズ、ときどき買っていますが、15巻は、2014年、猿之助の最後の新春浅草歌舞伎、「博奕十王」です。サイコロを持って悪そうな顔をしている猿之助の写真は見ていたので、楽しみにしていました。

舞台の背景は茶色い松、閻魔大王(男女蔵)と獄卒(弘太郎、猿史郎)がいる冥途、六道の辻。地方の皆さんも(そして後見も!)三角布(天冠)をつけています。

そこへやってきた、白装束の博奕打(猿之助)、愛嬌たっぷり。大王からせしめた酒の肴にと、身の上話をはじめます。博奕での喧嘩で死んでしまった博奕打ですが、浄玻璃の鏡で映すと悪行ばかり。地獄に落ちそうになりますが、博奕を知らない大王をサイコロ博奕に誘い、次々と装束を巻き上げ、さらに虎拳(和藤内、母、虎のじゃんけん)で勝った博奕打は極楽への送り状を手に入れ、悠々と引き上げます。

と、他愛ない話なのですが、こずるくて賢しげで軽妙な博奕打って、ものすごく猿之助に合ってるんですよ。衣装も花札柄の着物にサイコロ柄の裁着袴と遊び心のある美しいもので、出ずっぱりでたっぷり舞踊を見せてくれます。話もテンポよく面白いので、目を凝らしてみつめるというより、ああ、楽しいなと思わせてくれます。

嵩高い立派な拵えながらおっとりと間抜けな閻魔大王も、男女蔵さんにぴったり。動きキレキレの弘太朗・猿四郎、後見には段之さん、蔦之助(つーたんは、この後自主公演でこの博奕十王をやっていますね)。地方も長唄今藤尚之さん、巳津也さん、三味線稀音屋祐介さんって、お正月の連獅子と同じ方々が舞台を盛り上げていました。

この若さでの舞踊のDVD化、ありがたいです。ほかの舞踊もぜひぜひDVD化を!

(追 記)

この浅草のすぐ後に、NHK「SWITCHインタビュー」で、野村萬斎さんと四代目が対談しています。「空ヲ刻ム者」と、萬斎さんの「神なき国の騎士」(ドン・キホーテの物語)の稽古場がSWITCH!萬斎さんも狂言で博奕十王を演じているので、ストーリーや小道具の種類は同じなのに、歌舞伎と狂言の表現がいかに違うかということを比較してくれて面白い!狂言の中でも、衣装も道具も派手な演目だと思いますが(萬斎さんのは最後博奕打が宙乗りするバージョンもある)、歌舞伎しかも澤瀉屋ですから、歌舞伎の客向けのサービス精神がよくわかります。

そして、この二人が大好きなNHKさんの、幼い頃からの豊富な映像で、御曹司として生まれた二人の芸への向き合い方の違いが語られていきます。伝統芸能の中でも聡明で言葉で表現するのがうまい二人なので、優れた演出家の対談のようで無駄な言葉がない。年上の萬斎さんが、ややヒネくれててでも自信たっぷりな(この時期って猿之助がある意味得意の絶頂期では)猿之助を面白がっている感じが出てて、私にはたまりません。

歌舞伎と狂言が染み付いた二人なので、現代劇では立ち方や歩き方まで一から学んだとか。そして、演劇としての表現を追求する二人が、舞踊での表現力が素晴らしいのも大好きです。

壽初春大歌舞伎「義経腰越状 五斗三番叟」「連獅子」「鰯売戀曳網」

   2001_20200114223502お正月の歌舞伎座で澤瀉屋の連獅子!ということで、前方センターで見てまいりました夜の部です。

一つ目は「義経腰越状 五斗三番叟」。やる気をなくして遊興にふけっている義経(芝翫)を、亀井六郎(猿之助)が諫めます。えー連獅子目当てだったのに、芝居の冒頭、いきなり隈取の奴みたいな拵え(荒事の若者ってことですね)で立ち回りですよ。化粧が鮮やかで、若々しくて光り輝いててもう手を合わせたいありがたさ。「足の親指に注目」というTwitterがあったので見ていたのですが、ほんとに歩く時以外は親指がピン、と立ってるんですよ。

世話もののひねった役だといい味の芝翫ですが、ストレートにやってほしい義経としての声が残念。どうしても、手前で控えながら細かい表情をしている四代目を見ちゃいます。

さて、泉三郎(歌六)によって軍師として呼ばれた五斗兵衛(白鸚)。義経の遊興をそそのかしている太郎(錦吾)、次郎(男女蔵)は、御目見えまで酒を飲まないという五斗兵衛に酒を勧めます。断っていたくせにどんどん大きな杯を求めて飲む五斗兵衛。端正な武士の白鸚さんが酔っていく過程の演技がさすが緻密です。

そして竹田奴登場。これまで阿古屋でしか見たことなかったですが、この演目での竹田奴はけっこうしゃべるし、立ち回り、アクロバットと忙しいです。そして最後は三番叟に。おめでたくて楽しい演目でした。

いよいよ澤瀉屋の「連獅子」です。もう三味線の最初から、(立三味線は稀音家祐介さん)盛り上がっていきます。すぐに狂言師左近(猿之助)と右近(團子)が出てきます。

見てませんが、「ノンストップ」の密着で「感想は?」という質問に対し、「なにもない。当たり前だから」と答えた四代目。そう、彼が團子の名をもらったときから、澤瀉屋を継いでいく者として、この連獅子は必須のものであり、いつかはやるのが当たり前の演目だったということでしょう。しかし、それが初春の歌舞伎座であるというのは、これまでの四代目の活躍があってこその晴れ舞台です。

もう公演も半ばとあって、四代目は余裕さえ感じられる自在な舞踊、團子は若々しく、きっちりとついていきます。後見は、四代目が鬘でとてもお年に見えない若さの寿猿さん、團子が段之さん。澤瀉屋なので、振りが派手で見てて面白いです。

崖から突き落とし、水面に映る親獅子を見て仔獅子が登ってくるくだりもとてもわかりやすく、心配し、子が登ってくるのを待つ親の気持ちがストレートに伝わってきました。私が連獅子を初めて見たのはシネマ歌舞伎の中村屋でしたが、その時は前シテの意味があまりよくわからず、その後国立劇場の鑑賞教室も経て、今回は直前にアシェットのDVD(22年4月の中村屋の連獅子)で予習していったので、さらによくわかりました。間狂言は男女蔵と福之助。愛嬌は男女蔵さんですが、福之助も体幹の強さというか、舞踊のうまさで見せます。

そして後シテです。激しい動きの連続で、一瞬も目を離せません。ここまでくると、四代目もオーラ全開。隈取の奥のドヤ顔が美しく、観客の心を鷲掴みです。初日のNHK中継のときよりも化粧がうまくなった気のする團子。お囃子もいやがうえにも盛り上がり、観客もテンションMAX、最後は、正面の私が二人の視界に入っていると信じて最大限の拍手を送りました。

舞踊では、芝居以上にオーラ全開の四代目、劇場全体を掌握するような圧、ああ、素晴らしいです。そして誰よりもそれを感じたであろう團子君、ますますがんばってほしいです。

3演目めは、三島由紀夫作の「鰯売戀曳網」。中村屋ファンからは「鰯売はもういいからもっと古典を」という声がありましたが、事前に「三島由紀夫と歌舞伎」という本を読んだら、三島の新作歌舞伎5本の中でも、御伽草子を題材に、歌舞伎の伝統をうまく入れた傑作で、初演は三島の愛した六代目歌右衛門と十七代目勘三郎、十八代目勘三郎と玉三郎でも上演されているという中村屋ゆかりの演目だったんですね。

鰯売の猿源氏(勘九郎)は、見染めた傾城の蛍火(七之助)に会うため大名を装いますが、蛍火は、もと武家の姫でしたが、鰯売の声に引かれて城を出奔したときに騙されて傾城となったのです。結局、姫を助けに来た次郎太のおかげで身請けのうえ、蛍火は猿源氏と結ばれます。

猿源氏の純で愛らしい人柄、応援する父海老名(東蔵)、馬喰(男女蔵)も楽しいうえに、蛍火の朋輩の女性たち(笑也、笑三郎、鶴松)らも賑やかで、しかもハッピーエンドという、お正月にふさわしい演目。あの三島がこんな芝居を書くなんてと思います。禿で勘太郎も出てましたが、ちょっとした動作の勘がよくて、かわいかった。

三島が歌右衛門の崇拝者だったということを思うと、蛍火が後半、次郎太その他を一喝する威厳のある場面など、ただの恋する女でない蛍火の描き方が、今の目から見ても好感が持てますし、またそれをきっちり演じる七之助。勘九郎の愛嬌と身体能力等、中村兄弟の魅力をたっぷり堪能できる、いい演目だと思いました。

もちろん、勘九郎と七之助には、もっともっといろいろな役をやってほしいですが。

(追記―連獅子幕見)

日毎に成長しているという團子くん。何日もたっていないのに、躍動感と自信が増したような気がしました。ちょっとドヤ顔も入って、オレを見ろ的な澤瀉屋の雰囲気も感じられました。振りも派手で、芝居心たっぷりの前シテ、そしてやはり盛り上がる後シテでは、立ち見も出ている幕見席から1階まで劇場全体に拍手と感動が広がっていく四代目ワールド連獅子!行ってよかった!

(ところで、下村青さんが観劇後楽屋にいらしたら、ビデオを見ながら四代目が團子を指導していたんだそうです。毎日ダメ出ししてるんだ…)

ところで、ふと、猿翁さんと亀治郎の連獅子初演ってどうだったんだろうって思いました。「團子がこんなに踊れるとは」と言われている團子とちがって、亀治郎は小さい頃から「この子は踊りがうまい」って澤瀉屋ファンには期待されてたと思いますし、猿翁さんの人気もすごかったですからね。

データベースで調べたら、亀治郎初演はなんと11歳、南座で段四郎さんと。間狂言は先代猿之助・宗十郎という豪華版です。歌舞伎座では14歳のとき、先代と、間狂言は段四郎、歌六。すごかっただろうなあ。

(追記―連獅子幕見その2)

千穐楽近くになって、また見られました。連日札止めの盛況で、発売時間前でも立ち見。團子くん、振りがしっかり身について動きが生き生きと滑らか。四代目との連れ舞感もますます高まっていて、ほんとに素晴らしいです。途中で四代目がポン、って團子くんの肩をたたくのがまたぐっときます。

地方の皆さんの盛り上がり(長唄 今藤尚之さん、巳津也さん、杵屋佐喜さん、そして傳左衛門、傅次郎兄弟の気合の入った掛け声!)、クライマックスに向けての観客の興奮と拍手、ああ、歌舞伎ってすばらしい。

シネマ歌舞伎「女殺油地獄」

Onnagoroshi_koshiro_poster_fixw_234  昨年7月松竹座の高麗屋襲名披露「女殺油地獄」のシネマ歌舞伎です。このチラシ、そしてムビチケのビジュアルが公表されたときには、幸四郎・猿之助ファンから悲鳴があがるカッコよさでしたが、とうとう映画館へ。

舞台とはちがう、シネマ歌舞伎ならではのものを作りたいという幸四郎と井上昌徳監督の意気込みで、凝ったつくりになっています。序幕「徳庵堤茶店の場」は通常の舞台中継風、2幕「河内屋内の場」は、アップも多く家庭内ドラマ、そして3幕は義太夫を使わずに撮影し、スローモーションなどの効果を加えて、義太夫をつけています。むしろ劇場でみるよりも、迫力ある義太夫でした(3幕は谷太夫さん)。

この義太夫なしで撮影とはどんなんだろうと思っていたんですが、芝居自体は松竹座の舞台稽古の後で、3幕だけを義太夫なしに撮影したんだそうです。そういう意味では、本番前のものなので、二人が観客の前で見せる芝居とはちょっとちがうのかもとは思いましたが、再演でもあり、さすがの名コンビ。

201911_20191124095201 襲名披露公演のため、配役が最高です。与兵衛の父歌六、母竹三郎、兄又五郎、妹壱太郎、白稲荷法印 嵐橘三郎の2幕は見ごたえたっぷり。与兵衛かわいさのあまりの河内屋の苦悩。

しかしやはりこの演目は幸四郎の豊かな表情!かわいかったり、シュンとしたり、開き直ったり、そして3幕でのお吉へのくどき、殺意のめばえ、目が少し赤いのも狂気じみていて。ああ、幸四郎さん、かっこいい(←最後はこれか)。

四代目は、役柄としても抑え目のしっかりした若妻で、与兵衛よりも姉さんに見えます。やはりあの大怪我からまだ9か月、顔が丸々していますが、このチラシ・ムビチケは後から撮ったものらしく、もう少しすっきりとしています(オグリ終盤の今はもっと顔が細くなったような)。文楽の人形を思わせるような、白磁の肌と表情。

恋愛関係にはない、お吉は与兵衛に同業の知り合いの青年への親しみしか感じていない、でも運命を変えられたという関係の二人。どうしてこんな表情になったのか、ギリギリのこの顔が、四代目の役者としての凄みを見せているような気がします。

松竹座の番付は買いそびれていたのですが、これらの写真が大きく載っているパンフレット、買ってよかった!

 

スーパー歌舞伎Ⅱ「新版 オグリ」猿之助オグリ

201911oguri2   やっと猿之助オグリの「新版 オグリ」です。隼人オグリの回を見てから約1か月、もうすぐ千穐楽ですが、ああ、見られてよかった!

前回、予想の範囲でのエンタテインメント作品でそれなりに満足だったものの、どうなのスーパー歌舞伎Ⅱよ、なんて言ってごめんなさい四代目!四代目のファンなのに。やっぱりスーパー歌舞伎でしか見られない四代目がいるのだということがよくわかりました。

まず登場。隼人が歌舞伎界きってのイケメン故、ビジュアルはとても敵わないなんて思ってたんですが、うわあ、こんなかっこいい、ポスターから抜け出てきたようなオグリ!(少し顔の輪郭がすっきりした?)オグリ衆たちと比べて長身ではないですし、照手の新悟ちゃんよりもちろん小さいですが、なんかピカーっと光るオーラの迫力がすごくて、舞台にいる間、目が離せません。台詞の説得力がすごい。内容が耳にすーっと入ってきます。そしてとにかく歌舞伎。

思えば、今年は、紅長、おとく、弁天小僧、岩手、風雲児たち、かさね、弥次喜多、と、アンサンブルに配慮した役が多く、白塗りの立役で見得たっぷりというのは久しぶり。ああ、オレがオレがのくどい四代目猿之助、こんなにもうれしいものかと、改めて思い知りました。往年の熱狂的な猿之助(現猿翁さん)歌舞伎ファンの気持ちがちょっぴりわかったというか。照手とのロマンスも、四代目らしい愛情が感じられて素敵でした。

1幕は、オグリ衆の若手の成長を確認。男寅もがんばっていましたが、やはり福之助がすごい安定感。踊りはしっかりやっている人なので、立ち回りもよくて見違えました。

2幕、婆たちの場面が好きじゃない人が多いみたいですが、さほど長くないし、今回もそんなに抵抗なかったです。下村青さんも石橋正次さんも好演だと思うんですが、むしろ二人のシーンがやや長い感じ。

さて、今回の注目はなんといっても3幕の四代目の餓鬼病ですよ。前回冗長と感じた照手と餓鬼病の場面が、渾身の四代目の演技で、もうずっと見ていたい!この場面、隼人はどうやっていたかもはや記憶していないくらい。劇的効果としても、オグリの心境の変化を端的に表していて、感動しました。

しかし、これを1日2回はたいへんだと思いました。今回2回公演も必ずオグリは交互、それを考えたら、隼人は十分貢献したと思います。

そして、隼人の遊行上人。清らかで純粋で、四代目のラスプーチン味は皆無。しかしどんな扮装でも隼人は美しい。照手の新悟、2か月の長丁場を一人で務め上げ、動きも台詞も磨きあげられて疲れもみせず、成長を感じました。あ、今回はくんの金坊、右近くん、猿くんにあてたいいお役です。

本編のオグリの台詞が正論的なだけに、それを茶化す浅野和之さんの台詞の数々の効果的なこと。正面から語るオグリとの対比が面白く、今の時代での照れくささを中和するようで、この芝居の中での浅野さんの自在感の意味、と思いました。

あとね、今回、初めの方のスタッフ紹介で、亀井三兄弟のお名前が!お能の囃子方の、あのカーンという力強い大鼓は、広忠さまだったんですね。くー、すごい。

演舞場はこれで最後ですが、南座か博多座は行きたいかも、と思うオグリでした。    

スーパー歌舞伎Ⅱ「新版 オグリ」(隼人オグリ)

  猿之助の201910oguri_20191014220601スーパー歌舞伎Ⅱの新作「新版 オグリ」です。先代のスーパー歌舞伎「オグリ」のリメイクで、先代が技術的・予算的に断念した映像を使った演出を実現したという触れ込みです。オグリは猿之助・隼人のWキャストですが、隼人オグリを先に見ました。

 (その後、猿之助オグリも見ました!)

小栗判官ものは、お正月の菊五郎劇団の「世界花小栗判官」を見たことがありますが、暴れ馬を乗りこなすところと、ヒロインが照手姫で望まぬ結婚から逃れること、ハッピーエンドであることくらいが同じで、その過程はだいぶ印象がちがいます。

都から来た藤原正清、小栗判官(隼人)は、文武に秀で、いろいろ訳ありの若者たちを率いて人気となっています。望まぬ嫁入り道中の照手姫(新悟)をさらってから愛し合うようになった小栗と照手姫ですが、あくまで嫁入りを望む横山家によって、小栗一党は陥れられ、閻魔大王(浅野和之)と奥方(笑三郎)の支配する地獄に落ちます。一方照手姫は、一命を救われ、女郎屋で働くことになります…。地獄から、餓鬼病みの状態でこの世に帰ってきた小栗は…。

歌舞伎役者は澤瀉屋と若手、歌舞伎以外の俳優はワンピース歌舞伎の出演者、そして今回初傘下の舞台の実力派と多彩ですが、そこは四代目猿之助得意の役者の使い方や演出で、お弟子さんたちも含めて、一人一人に見せ場があって輝いていたのはよかったです。

隼人、大きくて美しくてヒーロー感たっぷり。ヒロイン照手の新悟は、もう一人の主役といってもいいくらい物語の芯を務めていて、この抜擢によく応えていたと思います。

猿之助の遊行上人の出番は少しなんですが、待ってましたの存在感。しかし、もう少し前半でオグリとの絡みがないと、人々を救うというより、迫力がありすぎる美坊主で、天下転覆を企んでいそうな雰囲気。何かどんでん返しがあるのではという気がしてなりませんでした。

オグリ党の笑也、竹松、福之助、男寅、猿弥、玉太郎。正直、全体にちょっと台詞が不器用なメンバーなんですが、いやー、うまく使ってましたよ。福之助、1か月も稽古したらうまくなったねー。今まで君が出てくると、お、と気づくくらいだったもん。男寅ってこんなにきれいな顔してたっけ。そして玉太郎!いい役どころで期待に応えてました。SUGATAで鷹之資と一緒に鍛えられてきたただけのことはあります!

歌舞伎外の役者さんも舞台で活躍する方たちなので芝居はしっかり。浅野和之さんは別格として、下村青、石黒英雄はビジュアルも存在感もとっても素敵、元ニナガワカンパニーの高橋洋は1幕を支えていました。嘉島典俊、市瀬秀和はもはや欠かせない存在。

段之さん、猿三郎さん、猿四郎さん、門松さん、欣也さん、笑野・猿紫ちゃんペアといった澤瀉屋の方々が、いい役どころで輝いていたのもよかったし、蔦之助も生き生きとしてたし、右近くんはやっぱり華があって落ち着いててよかったです。

豪華で今風テイストでかつ歌舞伎な衣装、効果的な鏡と映像、音楽も舞台にぴたりとはまり(衣装、美術、映像、音楽はとにかく超一流なスタッフ!)、既にお約束の宙乗りと本水で、いかにもなスーパー歌舞伎。脚本もいろいろ言われていますが、いいたいことはよくわかるし、現代にふさわしいものをという四代目の意図はきちんと伝わってくるものだったと思います。

しかし、スーパー歌舞伎という形については、考えてしまいました。四代目、男女蔵さん以外、先代の育てた澤瀉屋を除けば、浅草あるいは浅草未満な歌舞伎役者のみの座組。今後、四代目ファン以外の、演目を選んでみる歌舞伎ファンはどれだけ見てくれるんでしょうか。3幕は、明らかに隼人新悟の二人では間がもたないなと思いました。

四代目で見たい古典がほんとにたくさんありますし、四代目と大幹部、同世代(幸四郎~松也、梅枝くらいまで)の共演も見たいし、気鋭の作家と組んだ四代目の現代劇やシェイクスピアも見たい私にとっては、スーパー歌舞伎、5年に1回くらいでいい(それでも地方公演があるし)なんて言ったら、先代に怒られちゃいますかね。

ところで、今回の光るリストバンド、きれいでしたよ!また行くときに忘れないようにしなくっちゃ。

パンフレットも、いつもながらよかったです。役者の白シャツ写真と、三谷幸喜、赤川次郎、藤山直美、松任谷正隆、武豊、坂崎幸之助、大泉洋…といった有名人の方のエッセイが組になっていて、意外な縁に驚いたり。

四代目への福山雅治のコメントはとってもよかったですし、高橋洋には、演出家森新太郎が「クレシダ」のときのことを書いていて私的にはにっこり。

(追記)

その後、新型コロナウィルス感染症の影響で2020年3月の南座の全公演中止に伴い、20年4月ゲネプロの期間限定配信がありましたのでその感想。隼人、あくまで美しく、一段と成長を感じました。

より以前の記事一覧