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四代目市川猿之助

「歌舞伎夜話 段之さん・徳松さん」

201902danshitokumatsu_2         歌舞伎座ギャラリーでの歌舞伎役者のトークショー、楽しそうだなと思っていましたが、猿之助丈、松也丈を支える段之さん、徳松さんの回に行ってまいりました。前回も軽妙なトークで沸かせたそうです。

早替わりや地方公演での「引っ越し」の苦労、建替え前の歌舞伎座の楽屋やお風呂の話、徳松さんが神主の資格があって、ハワイで神主をされていたことなどなど、トークもとっても楽しかったのですが。

書いておきたいのは、段之さんが見せてくれた、亀治郎10歳のときの若手歌舞伎鑑賞会「奴道成寺」の一部映像です。歌舞伎の本公演の前の朝の時間に、同じ演目を子どもがやるというもの(勘三郎さんが子ども白浪五人男をやったのもこれかしら)。

記録にはありましたが、まさかね、と半信半疑だったのですが、ほんとに35分間一人で踊り分ける奴道成寺をフルで踊ったんですよ!あの、私が決定的に四代目ファンになった最後のダメ押しの2017年4月歌舞伎座の「奴道成寺」

小さな立派な衣装を誂え、同じ演目を踊った三代目の指導を受けて、鮮やかに踊って見せます。扇子の扱いや手の動き、3つの面での踊り分け等、涼しい顔で、一人前の表情。インタビューでも、すごいことをしたというより、自分は役者だから、みたいな雰囲気なんですよ!

段之さんてば、すでに後見されてて、引き抜きのときまだと言っているのに待てなくて自分から脱ぐ坊ちゃんほほえましい。(←後見は寿猿さんだったそうです。とにかく段之さんがまだよ、と言ってた)

しかし、いくら天才子役だからといって、本公演と同じ長唄、囃子方、所化が40分近く付き合うのですから、すごいことです。三代目が人気役者で(この月は、昼に奴道成寺、ぢいさんばあさん、夜に慙紅葉汗顔見勢、伊達の七役の主役ってバケモノなの三代目)、彼がやらせると言い、本人がきちんと踊りきることができて、そして、その場限りではなく、将来も歌舞伎を背負って立つ子なのだと皆が納得しなければ、こんなことできないですよね。

松也の子役時代の映像も。10歳のときの「加賀見山再岩藤」の志賀市、猿翁さんと濃い芝居してますし、7歳のときのこんぴら歌舞伎「重の井子別れ」の三吉。このときの重の井の時蔵さんが、はっとするほど美しかったです。松也は、子役の有名な役はほぼすべてやっているんですね。

徳松さんも、いろいろ苦労されたと思うのですが、今や花形の松也が、喝采を受けた今年の初春浅草歌舞伎の「義賢最期」、私だってハラハラしてみてたんですから、ましてや徳松さんから見たら、さぞご心配だったことでしょう。話には出ませんでしたが、「メタルマクベス」だって、バイクでこけたりしていましたよね。

若いから、やりたいことはやらせてあげたい、でも歌舞伎はやらせますから、という徳松さん、これまでも松也のドキュメンタリーで見てましたが、なんか好きになっちゃいましたよ(段之さんはもとから好き)。

壽初春大歌舞伎「絵本太功記」「勢獅子」「松竹梅湯島掛額」

201901kabukiza     今年初歌舞伎は、歌舞伎座夜の部です。お席がよかったこともあって、大大満足でした。

1つめは、「絵本太功記 尼ヶ崎閑居の場」。深い月代にくるくるヘアの他にない光秀の写真はよく見るのですが(團十郎さんのことが多い)、初見です。前半は討死を覚悟した光秀の息子十次郎(幸四郎)と許嫁初菊(米吉)のやりとり。前髪の幸四郎さんがお人形のように美しく、米吉も可憐で惹きつけられます。

この演目では、光秀の母皐月(東蔵)と妻操(雀右衛門)は、主君春長を光秀が討ったことを批判しており、皐月は久吉(歌六)に代わって光秀に斬られます。それでも信念を揺るがせない光秀(吉右衛門)。吉右衛門さん、台詞も力強く、舞台を支配するオーラがやはり素晴らしかったです。今月この一役の正清の又五郎さんもよくて、浅草の歌種兄弟を除き播磨屋総出の充実した演目。もちろん義太夫は葵太夫さん。

十次郎の出番は、予想外に多く、出陣して一人重傷で帰ってくる幸さん。私、とにかく幸さんが苦しんだり嘆いたり悩んだりするのが、なぜかとても好きなので、ああ~苦しんでる、と堪能してしまいました。

東蔵さんがインフルエンザで休演の間秀太郎さんが代役だったんですよね。皐月はしどころの多いお役で(三婆には入っていないけど)、いきなりの代役はたいへんだったでしょうね。東蔵さんも秀太郎さんも好きなので、秀太郎さんも見たかったような。

2つめは「勢獅子(きおいじし)」。いなせな鳶と芸者が曽我兄弟の物語や獅子舞を演じます。梅玉さんの手締めを観客もやったりして、お正月らしい、賑やかな演目。梅玉、芝翫、魁春、雀右衛門と、鷹之資、玉太郎、福之助、歌之助芝翫さんが振りにちょっと茶目っ気を足すのも楽しいし、鷹之資・福之助の獅子舞は見事で、終始楽しく拝見しました。鷹之資、先月南座で見られませんでしたが、とにかく見ていて楽しい、ずっと見ていたいと思わせます。玉ちゃんもSUGATA以来、応援してますからね!

手古舞も、よく見る皆さんの達者な舞踊。京妙さんと幸右衛門さんがペアなのがうれしかったり、11月の国立で大活躍だった梅蔵さんや京蔵さん、千壽さんもチェックしてました。

さて、いよいよ「松竹梅湯島掛額」。八百屋お七を題材とした、前半はコメディ、後半はお七の人形振りという演目です。

家が火事となって吉祥院に滞在している八百屋お七(七之助)一家。お七は武士の家から小姓となっている吉三郎(幸四郎)に恋をしており、お七をかわいがっている紅屋の長兵衛、通称紅長(猿之助)は、応援しています。お七を側室にしようとする範頼の家来六郎(松江)。あれこれあって、人にかけるとグニャグニャになるというお土砂を使って紅長は好き勝手。

猿之助がすっきりとした風情の愛嬌のある町人。お七(おひちと言ってます)をかわいがってはいるものの、恋を応援したりして、その紅長を応援する私たち。出ている間、細かい反応をしているので目が離せません。お七、吉三、紅長の3人の場は、3人の仲の良さ、役者としてのバランスの良さが出て、紅長が吉三をからかうのもほほえましくみられます。

松江さんが時事ネタぶっこみ満載で、もともとこの方、武張ったお顔もよく通る声も面白い方なので、楽しめました。猿之助も松江さんがこういうのやったら面白いだろうとけしかけたんでしょうね。

次の四ツ木戸火の見櫓の場では、どうしても吉三郎に会いたいお七は、木戸を開けるため、火の見櫓の太鼓をたたきます。その前が義太夫に乗っての人形振り。お七以外は下女のお杉(竹三郎)だけで、見どころはEテレでも放送された、七之助の人形振りです。

七之助の硬質な美貌は、人形のようで人の生の感情が込められていて、見得の美しさも秀逸。人形振りって、完全に人形になるだけではただのものまねで、人形にはできないその先を見せるからいいのだなと、(先月の玉三郎岩永を思いだしながら)思いました。

女中お杉の竹三郎さん、先月南座を休演されたので心配でしたが、出番やセリフも多い重要なお役、元気に勤めていらしてよかったです。一度、立ち上がる時に自然に紅長がサポートしているのが二人を思うとほっこり。しかし86歳とは思えないかわいらしさ。

猿之助丈の中では、11月の法界坊とセットで、このジャンルを試してみた演目なのかな、と思いました。いずれも、回数は少ないですが、吉右衛門さん(初代も当代も)演じている役で、共演はないものの吉右衛門さんが出演している月です。お二人に会話があったのか、知りたいなあ。芸質は違いますが、没交渉ではないのではと。

今年も猿之助丈から目が離せません。

(2回目幕見追記)

竹三郎さん、私が見たすぐ後に休演されてしまい、梅花さんが代役となりました。梅花さんといえば、先代芝翫のお弟子さんで、平成中村座のドキュメンタリーでは、長三郎ちゃんを辛抱強く教える姿が印象的でしたので、梅花さんのお杉も見たいと、幕見に行ってきましたよ。予想通り、テキパキした梅花さんのお杉。七之助のお七とはいいコンビでした。

そしてお七の人形振り。はるか幕見席からあえてオペラグラスを使わずに見ると、整った七之助の顔も含めてまあ、お人形!黒衣も背景に溶け込んで、お人形ですよ!

そして花道で人間に返るお七。櫓に上る一つ一つの動作に緊迫感があり、そして花道の見得の美しいこと!席が違えばまた違った魅力があるのが歌舞伎ですね。

詩楽劇「すめらみことの物語~宙舞飾夢幻」@国際フォーラム

201901            あけましておめでとうございます。今年もたくさんの舞台を楽しんでいけたらな、と思っています。よろしくお願いいたします。

さっそく新年最初の芝居は、詩楽劇「すめらみことの物語~宙舞飾夢幻(そらにまうかざりのゆめ)」です。1月2日・3日の3回公演のみ、猿之助のほか、尾上菊之丞、愛加あゆ、バイオリニスト川井郁子、和楽器奏者吉井盛悟の5人がメインで、音楽と舞踊を入れた物語。J・CULTURE FESTと題したイベントの一部です。脚本は横内謙介、演出・振り付けは菊之丞。

といっても事前にはすめらみこと、というのみで内容はよくわからず、左のチラシのビジュアルでは、背後で一番大きく映っている猿之助丈がラスボスのような、などと思っておりました。

入場の前に、国際フォーラムのガラス棟に行ってみたら、「即位・儀式の美/平安王朝文化絵巻」という展示をやっていました。源氏物語を題材に、平安の衣装や牛車の再現や、人形による明石の姫君の裳着の儀式や布を砧で打つといった家事の様子など。「源氏物語」は好きで現代語訳はいろいろ読んでいるので、そうそう、秋好中宮が腰紐を結ぶ役だったなどと思い出しました。が、この展示の眼目は即位の礼の再現場面のようでした(そういえばこの施設東京都が過半の大株主で…)。

さて、「すめらみことの物語」。四角い舞台の外側三方に客席。両側がパイプ椅子、正面が傾斜のついた座席になっています。殆ど埋まっているように見えました。

最初は、三方のスクリーンで、仁徳、持統、霊元、東山天皇が紹介されます。そのうちの一人、江戸時代に220年振りに大嘗祭を復活させ、子に譲位した零元天皇が猿之助。愛加あゆは故事を調べる女官という設定ですが、その間に川井さんのバイオリン、愛加あゆさんの歌、吉井盛悟さんは大太鼓、太鼓、笛、胡弓?とさまざまな楽器をかき鳴らします。演者が少ないので一部が録音らしいのがやや残念ですが、曲も川井さんのオリジナルが多く、バラエティに富んでいて面白かったです。

それぞれの道でキャリアを積んでいる自信にあふれた皆さん、それぞれに美しいというかかっこいいというか、普通の劇場よりずっと近く見られて、お正月から眼福でした。菊之丞さんの、女性お二人との舞も素敵でした。

お芝居部分に戻ると、最初の大嘗祭復活を目指すという設定の説明があって、姉小路さすがという女官に扮した猿之助が「金がかかるから無理」といじわるを言います。これがなかなか、ちょっと秀太郎さんの言い回しが入ってて、次は何だろうと食い入るように見ていた観客をほぐすような場面。アドリブらしく愛加さんに今日何食べた、と尋ねた後、「これで6食冷たい弁当」というのは何とも気の毒。

若い女官姿で、愛加さんといっしょの舞もあって、猿之助としては一番の見せ場。しかし歌舞伎に女性が立たないのは、女方という虚構が壊されるから、というのを読んだことがありますが、なるほど、ほんとうにきれいな愛加さんと一緒ではとても、と思いつつも、同じように立っていながら、回りに空間が広がるような、堂々とした舞姿に、そういうことは超越した感がありました。

最後は大嘗祭が実現し、東山天皇(愛加あゆ-この装束もかわいい)に譲位が実現します。最後の霊山帝の息子に対する言葉、「伝統を受け継ぐのは宿命だがそこに何ができるかが大事だ」と、まあご自分のことをと思うような台詞を力強く放って終演。この方、仏教に造詣は深いけれど、バランス感覚のある方なので、この芝居のメッセージ性を中和したように思いました。

お稽古日は数日だったようですし、いろいろな意味で謎は残りましたが、それでも各人の魅力は十分引き出されていた舞台だったといえましょう。集客的にも、愛加さんももちろんですが、猿之助さんが出るときけばよくわからなくても行くファンがいる分成功したのではと。

しかし猿之助丈、この舞台初日は歌舞伎座の初日でもあり、夜は松竹梅湯島掛額。初役で舞台を回す役どころなのに、そして、先月手術をしたばかりのようなのに、新年初めから全開で、今年は忙しくなりそうです。

(追記)

歌舞伎座夜の部「松竹梅湯島掛額」を見ました。前半小一時間、全体に絡む役どころで、遊び心たっぷりに楽しい芝居をしています。昼夜ちがう演目に出るのは当たり前な歌舞伎役者ですが、お正月休みを挟んでいきなり、やっぱりすごいです。

藤田洋「歌舞伎の事典ー演目ガイド181選」・Eテレ「にっぽんの芸能・山川静夫と振り返る平成の歌舞伎30年」

201212       国立劇場でみかけて買ってみた「歌舞伎の事典ー演目ガイド181選」です。著者は、「演劇界」の編集長を務めた藤田洋さん。

「あらすじで読む名作歌舞伎50」等と比べて、181とは多い!第1章 純歌舞伎・義太夫狂言・新歌舞伎で137作、第2章 歌舞伎舞踊が44作。著者は、今ある400作のうち半分ほどなので、差し当たって必要とされる演目は含まれている、と書いています。チェックしてみたら、第1章で半分、歌舞伎舞踊は三分の一ほど(シネマ歌舞伎も含めて)見ていました。歌舞伎歴6年ちょっとで、ややはまっている私としては、まあまあと言えましょう。

ただし第1章は、「義経千本桜」や「仮名手本忠臣蔵」でも1作と数えていて、見開き2ページに写真2枚なので、説明ではあらすじはよくわかりません。「妹背山婦女庭訓」なんて、右のページに鱶七、左のページに雛鳥と定高の写真ですよ。

この本の使い方は、こんな演目もあるんだ、と舞台写真を眺めることといえましょう。2011年発行なので、だいたい2000年代のものだと思いますが、もちろん多いのは藤十郎、團十郎、吉右衛門、菊五郎、先代幸四郎、仁左衛門、勘三郎、玉三郎と、歌舞伎の本によく出てくる皆さんながらも、演目が多いのでほかにもたくさん。三津五郎が多かったのもうれしかったです。

2012121     富十郎、先代芝翫の、芝居味の濃いこと、先代雀右衛門のきれいなこと。この「毛谷村」の子役は鷹之資かな、と思って調べたら、ほんとに3歳の鷹之資くんでしたよ。お父さんと共演したことがあったんですね。

2012122     この二人は、東蔵、三代目猿之助ですよ。私、三代目はスーパー歌舞伎をやる人という印象だったので、先日の「にっぽんの芸能」で筆屋幸兵衛を少し見て、勘三郎さんのような人情味あふれる演技に驚いたんですが、この加賀鳶のよくわからないけど(見てないので)強烈さ。国姓爺合戦の和藤内も迫力でした。復活狂言や古典でも八面六臂の活躍だったんですね。

2012123     これは梅玉、魁春のお二人。「菅原伝授手習鑑」の桜丸と妻八重です。若々しく美しい。今ももちろん好きですが、この頃から見たかったな。菊五郎さんもほんとに美しい写真ばかりでしたし、少しですが、秀太郎さんも色っぽい写真がありました。

この手の本にしては、海老蔵が少ない(團十郎がたくさん出ている)のですが、なんと、弁天娘が海老蔵でしたよ。どんな役でも、美しい海老蔵ですが、さすがに弁天娘は味が薄くて残念。菊五郎はたくさんあるのになぜこれを使ったのか。なお、海老蔵・菊之助の鳥辺山心中はほれぼれするほどです。

さて、先日、NHKEテレで「にっぽんの芸能」で「山川静夫と振り返る平成の歌舞伎30年」を、たったの1時間でやっていました。当然駆け足で、亡くなった名優を振り返るといった形だったのですが、比較的長く映ったのが、勘三郎の「法界坊」、三代目猿之助のスーパー歌舞伎「八犬伝」、團十郎・玉三郎の「助六」。

それぞれ面白かったですが、この八犬伝は、デジタル・リマスターとかで、鮮やかな映像。衣装もすごいです。そして、亀治郎のスーパー歌舞伎デビューとなったのがこの作品です。18才くらいですが、やっぱりたいしたものです。もちろん三代目のこってりした味、縦横無尽の活躍もすばらしい。

しかしこのタイトルなら、2時間でも3時間でも、たっぷり時間をとって、山川さんにいろいろ教えていただきたかったなあ、と思います。

「通し狂言 増補双級巴 石川五右衛門」@国立劇場 

          12201812goemon 月の国立劇場は、「通し狂言 増補双級巴(ぞうほふたつどもえ)」です。吉右衛門丈が石川五右衛門、といえば先月の歌舞伎座でもやった人気の「楼門五三桐」なんですが、その前後としてこれまで演じられてきた台本を国立劇場で補綴したもの。

画期的なのは、歌舞伎座×国立劇場 コラボとして、11月の歌舞伎座夜の部のチケットを見せると、吉右衛門さんの石川五右衛門のサイン入りブロマイドをもらえるという特典。そのチケットなら全席種ある(笑)、ってことでありがたくいただいたらば、2Lサイズのチラシのポーズを含めた3枚の写真と、期待以上、すばらしい。

大名大内義弘の種を宿した奥女中(京妙)が、次左衛門(歌六)と行き会い、はずみで殺されてしまいますが、臨月だったため赤ん坊は助かり、次左衛門はわが子として育てます。この息子(のちの五右衛門、吉右衛門)、手癖が悪いため修行に出していましたが、妹小冬(米吉)が廓に売られる日に帰ってきて、ぽんと金を出します。盗賊になってしまった息子を嘆き、盲目になっていた次左衛門は自害しようとして誤って小冬を死なせてしまいます(小冬、けなげでかわいそう)。

二幕、呉羽中納言(桂三)の行列を襲って装束や書面を奪った五右衛門は、呉羽になりすまして将軍足利義輝(錦之助)の館に乗り込みます(この前に、御台(東蔵)と愛妾(雀右衛門)のやりとりがあってちょっと面白い)。まんまとだましたと思った五右衛門の前に、此下藤吉郎久吉(菊之助)が現れ、五右衛門放浪時代に同輩だった二人は旧交を温め、久吉から買った葛籠をしょって五右衛門は宙乗りで去ります。大薩摩の後、「楼門五三桐」の簡素版(金門五三桐)の場面。

大詰は、五右衛門の家。息子五郎市(醍醐陽)は継母おたき(雀右衛門)に折檻されています。間男と誤っておたきを刺してしまった五郎市に、おたきは、盗賊稼業でいつ捕縛されるかわからないこの家を離れてほしくて、つらくあたったと述懐します。そして、五右衛門は派手な大立ち回りの末、久吉によって五郎市とともに捕えられます。

まず、吉右衛門さんの宙乗りが見られるとは!ですよね。2階花道寄りのお席だったので、大きな葛籠を背負った吉右衛門さんが間近に見られて感激でした。この演目を選ぶというだけあって、お年を感じさせない若々しさ、充実感を感じられて、私は吉右衛門さんには間に合ったんだなあという感慨。

また、二幕の菊之助との並びが、まあ二人ながら美しく、華があって、「なぜこの二人の舞台写真がなーいー」ってなりましたよ。実は義輝館に五右衛門呉羽が来てから、ちょっと意識が飛んだんですが、ぴきーん、ってなりましたもん。菊之助、「阿古屋」の畠山重忠のよう。金門五三桐も、いつも菊五郎さんや、写真では先代芝翫さんなどを見ているわけですが、菊之助だとこんなにしゅっとかっこいいのか。

その前の場面ですが、桂三さんかわいげのある麿だし、錦之助さんも美々しい殿ぶりでした。

三幕は、五郎市がかわいくて達者で、そのためにこの場がしまってよかったです。雀右衛門さんはやっぱりいい人なんだな(女方ってほんとの意地の悪い役やらないんですもんね)。

いやーしかし、五右衛門という希代のキャラクターを4時間で描ききったという満足感は得られなかったのが残念。配役はどこといって不満はないし、場面毎にみると悪くはないんですが、五右衛門のキャラクターも何だか一貫性がない(三幕はなんか後妻に遠慮するちっちゃい男)し、二幕はあまりに話が中途半端。意識がとんだせいか話がわからなくなったので(おい)、筋書き見ましたが合点がいかず。

やっぱり歌舞伎も脚本は大事ですね。早く木ノ下裕一さんが参画して、4時間を思う存分使った補綴をお願いします。

(おまけ)

「楼門五三桐」以外のこの演目の情報はあまりないのですが、2006年5月の新橋演舞場での吉右衛門さんが宙乗りもやった「増補 双級巴」についての感想ブログ をみつけました。この月、最後は「松竹梅湯島掛額」だったそうで、来月歌舞伎座でかかります。紅長は吉右衛門丈(来月は猿之助)、お七は亀治郎(同 七之助)。とても面白そうです。

このときの亀治郎お七の人形振りはあちこちで絶賛されているのですが、この方、「ここまでは恋する可愛らしい乙女の風情だったのが、人形振りの段になると『はいっ、やりますっ!!』という感じで気合の入った表情になってしまったのが、亀治郎のかわいい所ですね。」とお書きになっていて、うわあ、その気合が入った顔を見てみたかった、と思います。要するに来月超楽しみです。しかし、法界坊、紅長と、四代目は吉右衛門さんの当たり役を立て続けにやるってことですね。

吉例顔見世大歌舞伎「法界坊」3回目

201811      今月最後の歌舞伎座夜の部です。一番いい席で堪能させていただきました。

吉右衛門さん、菊五郎さんの「楼門五三桐」も、近くで見るとこれぞ決定版、とかっこいいこと。歌昇・種之助の右忠太・左忠太も若々しくて素敵でした。見てすぐ五右衛門の舞台写真買いに行きましたよ。

さて、お目当ての「法界坊」。 前2回も十分面白かったですが、やはりお芝居全体のグレードが上がっていて、例えば鸚鵡の面白さはこうだったのか、と思えるくらいになっていました。そして、猿之助の法界坊が完成形になっていて、メリハリがよりきいて、聞かせるところ、見せるところ、役者の背後でちょっかい出すところのバランスがさらによくなっていました。お客の反応を見ながらよりブラッシュアップしたというか。舞台に出てくるたびに、黒くて汚いんですけど、ぴかーっとオーラを感じます。

近くで見て思ったのは、猿之助自身の現代劇での経験が、この演目に生きているということでした。3階や後方からみても、見得や軽やかな動きはじゅうぶん楽しいのですが、前方で見ると、細かい呼吸に、ストレートプレイの趣があってさらに面白く、さすが1等席(すいません、めったに1等でみないので)。

そして大喜利の舞踊の、法界坊・野分の踊り分けをじっくり。ほんとに今まで何を見ていたのかと思うくらいでした。

私は三代目の復活狂言を見ておらず、黒塚や奴道成寺等の舞踊を除くと、万野も相模も典侍局もお吉もいわば相手役、芝居で本当の猿之助の主役のものは、スーパー歌舞伎しか見ていないんです。

法界坊、ちょっと汚いけど、猿之助のユーモアのセンス、歌舞伎の技術、他の役者の魅力も引き出す演出の才能、舞踊の技量と、今の彼の実力を余すところなく見せてくれた演目でした。

舞台写真に、大喜利でおくみに襲い掛かる法界坊の霊のものがありましたが、表情と言い、左手の形といい、あの大怪我からこんなにも完璧に復活してくれて、とじーんとしました。

そうだ、やっと茶店の笑猿さん、大七の女中の段之さん、澤路さん、お蕎麦屋の澤五郎さんを確認。葛籠しょってたかっこいい人は、と思ったら吉兵衛さんでしたね(播磨屋はさすがお弟子さんたちもうまい)。そして京由さん、京純さんと、京屋は美形。

【追記】

実は、千穐楽も幕見に行ってしまいました。法界坊は途中、甚三登場くらいから。恋文のくだりや花道の引っ込み(←一番好きかも)、提灯、だんまり、おそば、小判、野分おくみの要助取り合い、落とし穴、立ち回り、傘の見得、宙乗り亡霊…ああ、こう見ると見せ場ばっかりじゃありませんか。観客の反応もよく、声もよく通り、大盛り上がり。

そして大喜利、四代目の自在な舞踊に笑ったり感動の拍手したり、舞台の四人、清元、義太夫、後見と皆の息が合って、恨みを残した亡霊なのに、明るい楽しい打ち出しに、この1カ月楽しかったなあ(忙しかったけど)。

ひとつ無理を承知で言えば、劇評がせいぜい5日目までの芝居で出てしまうのは仕方がないけど、今回の「法界坊」は中日過ぎた当たりのもので評価してほしい。皆初役で演出も初で、普通の演劇なら3週間稽古するような呼吸の必要なお芝居。そして、四代目は初めからキャラクターはできていたけれど、やはりお客の反応をみながらわかりやすくしたりのメリハリはどんどんよくなってきていました。これだけのもの、安易に吉右衛門や勘三郎と比べると…、なんて言ってほしくない、と思ってしまいました(←まあこれは贔屓のたわごとですが)。

吉例顔見世大歌舞伎「楼門五三桐」「文売り」「隅田川続俤 法界坊」(2回目追記あり)「二代目吉右衛門写真展」

201811      歌舞伎座今月の夜の部は、猿之助の法界坊です。今日は予定していなかったんですが、3階の良席が出てたのでつい。

1つめは吉右衛門さん、菊五郎さんの「楼門五三桐」。やっぱり吉右衛門さんの五右衛門かっこいい!この歌舞伎座夜の部と来月の国立の吉右衛門さんの五右衛門を見ると、サイン入りブロマイドのプレゼントがもらえるそうですよ!楽しみ。菊五郎さんもシュッとして素敵でした。

2つめは雀右衛門さんの「文売り」。台詞と清元のかけあいが、台詞のいい雀右衛門さんに合っている、かわいい舞踊でした。

さて、6時前なのに30分の休憩でお弁当の後は、「隅田川続俤 法界坊」。ポスターのビジュアルだけでかなり期待してましたが、実際の猿之助法界坊はもっと髭で小汚く、せこくてでもかわいげのある坊主です。

シネマ歌舞伎で見た勘三郎さんの法界坊は、汗だくで走り回り、みんなをいじりまくり、亀蔵さんや笹野高史さんもはじけまくってて爆笑でしたが、猿之助はこずるいながらも飄々と身軽で、力の緩急がある感じ。他の役者は真面目にお家の重宝(鯉魚の一軸)を取り戻して吉田家再興とかやっているのに、ひとり観客を巻き込もうとするセリフで、観客が湧きました。紐を縛ったりモノをとったりする動作がほんとに滑らかで、よかったなあと思ったりして。

この人の芝居らしく、役者がみんなぴたりと好演。一軸と引き換えにおくみ(右近)を手に入れようとする源右衛門(團蔵)、要助を守る甚蔵(歌六)が重みを加えてくれてます。とくに歌六さんとの絡み、立ち回りはお互いに楽しそうでした。「播磨屋、いい形だねえ」なんて言って。「さあさあ」っていうのも、この二人だと濃いなあ、と。

おくみの母おらく(門之助)、番頭長九郎(弘太郎―今月も猿弥さんの不在を埋める活躍!)の安定さ、出番が多かったくんの活躍もさることながら、隼人の要助が、もともといい男でつっころばしにぴったり、台詞もよかったです(しかし、先月松竹座の雙生隅田川の松若なんですよね。正気に戻った班女御前に育てられたのに、なんでこんなに軟弱に育っちゃったんでしょう?! だいたい、2度も鯉魚の一軸無くすなんて―つか、1回目は梅若が鯉に目を入れて逃げられたんですから紛失ではないですが)。

いったんお話の結末がついた後、「双面水澤瀉」。隅田川の渡しまで来たおくみ要助の前に、もうひとりのおくみ(猿之助)が現れて、ほんものかをめぐって舞います。実は殺された野分姫と法界坊の霊が乗り移っていて…。

渡し守の雀右衛門さんも含めて、猿之助、右近と3人のきれいな女舞。猿之助はちょいちょい法界坊が現れます。右近の海老ぞりきれい。前場から一転明るく楽しく、最後は怨霊になって打ち出し。歌舞伎座で猿之助の舞踊での打ち出し、久しぶりで楽しい気分で帰途に就きました。

<2回目追記>

1週間後に2回めの夜の部、1階後方からです。「楼門五三桐」もじっくり、その前に見た吉右衛門さんの写真展を思い出しながら、やっぱり演じている吉右衛門さん素敵。前回わかってなかった歌昇、種之助も確認。「文売り」も、花道の出から、じっくり見られてよかったです

さて「法界坊」。全体に芝居がまとまって、息が合ってきた感じがして、より面白かったです。登場するだけで大拍手、ギャグにも笑いが起きます。最高の花道の引っ込み。細部を微妙に変えてて、隼人いじりもちょっとずつ変えてるのがサービス。

そして、大喜利の舞踊も展開がわかっている分堪能です。ああ楽しかった!

<二代目吉右衛門写真展@ミキモトホール>

歌舞伎座の前に、吉右衛門さんの写真集出版を記念した写真展に行ってみました。鍋島徳恭氏の写真を、等身大以上の大きさの手すきの伊勢和紙にプリントしたものが裏表で上から暗い空間にひらひらしているというもの。あの迫力あるきっちーだらけの部屋ですよ。

逆櫓、河内山、熊谷陣屋、寺子屋、碇知盛と、私でも見ている(吉右衛門さんでなくとも)作品ばかりですが、珍しい女方!と思ったのが、「法界坊」の双面のおくみでした。法界坊はド迫力で、この人が大きい声出したら怖そう。

無料ですし、ミキモトビル自体がステキなのでおススメです。「吉右衛門がやった役は、どれも吉右衛門のが最高になっちゃうからなー」とつぶやく声が聞こえましたが、たしかに、と思った私。

「寧々~おんな太閤記(2009)」再放送

201810_2     2009年のテレビ東京の新春ワイド時代劇「寧々~おんな太閤記」です。1981年のNHK大河ドラマのリメイクで、本放送時はのべ12時間の放送だったそうですが、今回は2週間にわたり、BSテレビ東京で毎日1時間放送。

大河では佐久間良子の寧々に「おかかー!」と叫ぶ西田敏行の秀吉が人気でしたが、この秀吉が亀治郎時代の猿之助。寧々体当たりの求婚、信長の下での出世、天下取り、晩年の老耄と、教科書通りの秀吉の生涯を演じます。

こんなドラマ、今頃再放送してくれるなんて、私のためですか(笑)。ほんとに、見逃さなくて全て録画できてよかったです。

猿之助、若い頃は、華奢な体つきもあって、体重を感じさせない予測できない動きで、猿っぽい。愛嬌がありながらも戦略を口にするときには頭のよさを感じさせます。譜代の家臣がいない秀吉は親族に愛情を注ぎますが、ときにそれを犠牲にする冷徹な計算。関白になってから、家康(高橋英樹)に「形だけ臣下の形をとってくれ」と頼み込みながら、実際の対面では半端ない圧をかけるところは見ものでした。川や温泉シーン、裸足の指のアップとか、演出は亀治郎ファンなの?という見せ場も多数。

「風林火山」では、由布姫とのラブシーンなど、ぎこちなさすぎてみる方が恥ずかしかったんですが、さすが寧々の仲間由紀恵がよいせいか、寧々との愛情も細やかに描かれていましたし(ジンと泣ける場面も多数)、淀(吹石一恵)ほか側室との関係も無理なかったです。

来月歌舞伎座の法界坊、勘三郎さんの法界坊(シネマ歌舞伎で見ただけですが)があまりに自在で面白かったので、クソ坊主とか女好きとか、どうなんだろうと思っていたのですが、このドラマ見たら何だか安心しました(どこから目線ですいません)。

ドラマとしても、どうしてもエピソードをただつなぐだけになりがちなところ、それぞれを丁寧に描いているのと、寧々目線で一本筋が通っていて、面白かったです。最終回は淀と寧々の冗長な会話シーンなど、少し息切れな感がありましたが。衣装や合戦シーン、ロケも贅沢でした。今の大河もこんなに合戦シーンしっかり描いていないかも。

キャストでは、秀吉の母おなか(十朱幸代)がさすがドラマを盛り上ていました。家康の高橋英樹だけは、安定感ありすぎなんですが、このドラマだったらもう少し若くて一癖ありそうなキャスティングもあっただろうと思いました。

他のキャストも、10年前とあって、こんなところに、という方も多数。秀長(福士誠治)を始め、井之上チャル、市瀬秀和といったワンピース歌舞伎の出演者や、秀次(濱田岳)、竹中半兵衛(山崎銀之丞)、和田正人

歌舞伎関係では、小早川秀秋に松也、秀頼に壱太郎。松也は声はいいですが細くて華がなくて、今メタルマクベスの美丈夫となるとは想像しがたい感じ。壱太郎秀頼は家康が対面した後「手を握ったら女のように柔らかい手であれでは大阪城を束ねられまい」と言われちゃうんですが、だって女方だもん、とくすり。

新作歌舞伎「NARUTO」@新橋演舞場

201808naruto      ワンピースに続いて、少年ジャンプの人気コミックの歌舞伎化ということで話題の新作歌舞伎NARUTOです。ワンピースで活躍した巳之助、隼人をナルト、サスケに据え、G2さん脚本・演出、脇は澤瀉屋やワンピース歌舞伎の嘉島・市瀬で固め、ラスボスのマダラは愛之助・猿之助のダブルキャストで集客力アップ、セットにはお金かけすぎずという、採算をきっちり考えたと思われるプロダクション。

NARUTOのコミックは、家にあって途中まで読んだきりでしたが、きちんと説明があるのと、主な人物の関係や九尾の狐の件は記憶にあったので、わかりにくいこともなく見られました。

やっぱり、巳之助、隼人がキラキラしていていいです。巳之助はほんとに主役として安定。化粧も合っててとてもかっこよくて、動きもかわいい。パンフレットの写真はキメているんですが、ほんとは笑顔がナルトらしくて似合ってました。隼人は影のある役なんですが、ほれぼれする美形。こういうのも何ですが、声も多彩になって、うまくなってた感強かったです。二人とも、立ち回りほんとにがんばってましたし、本水場面もちょっと素の感じもよくて見ごたえありました。これを1日2回とは!

猿弥さんの自来也がいいのは当たり前として、意外性が評判な笑三郎さんの大蛇丸が初めて見る中性的な悪役で、前半ほぼ主役ではという大活躍。綱手の笑也もきれいでした。ワンピース組の、嘉島典俊のカカシ先生もよかったし、市瀬秀和のイタチはビジュアルも立ち回りのスピードもかっこよかった!梅丸のサクラもかわいかった。

猿四郎さんの3代目火影、國矢さんのカブト、段之さんのうたたねコハル、安田桃太郎さんの鬼鮫。

そして猿之助マダラ、最初その仮面の人物がマダラだとは思っていなくて(1幕<弥次喜多やってる時間>から出てたので)、仮面をとる動きに入るところでやっとわかって、驚いてしまったんですが、禍々しく、迫力半端なかったです。そのゆっくりとした動作、舞台の空気の持って行き方を知っているなあと感動。

納涼歌舞伎を見たばかりだけに、さっきまでチャラチャラ喜多さんと花魁の早替わりをやっていたはずなのに、見得の迫力、同じ人とはまったく信じられません。久しぶりに見るカーテンコールでは、上の階まで目線を配り、最後まで役のまま素に戻らないのもいつもの通り。しかしあくまで主役に敬意を払い、必要以上に目立たないのもこの人のあざといまでの賢さ(←好き)。

さて、作品というと、うまくまとめてはいるものの、コミックが長編で設定が複雑になっているナルトとサスケの生い立ちについて、舞台であんなに詳しく説明しなくてもいいのでは、という感じがしました。とくに2幕の説明は冗長で見せ場が少ない。九尾が入っててたいへんだ、というのでいいじゃないかと思うんですよ。役者さんたちを見るほうに忙しくて、ある程度わかっている説明がちっとも頭に入ってこなくて(すみません)。その意味でも、三忍が出ている場面のほうがおもしろかったです。大蝦蟇とかもっと出せばよかったのに。

そしてやっぱり音楽問題。立ち回り時や芝居のところでのバックの音楽がちょっと気になるんですよね。せっかく六太夫さんの語りもよかったし、歌舞伎の下座というのか黒御簾音楽もあるのに、録音エレキギターの音楽が逆に安っぽく感じます。

いろんな意味で、ワンピース歌舞伎の遺産でひとつ作り上げたって感じですかね。でも巳之助、隼人、梅丸はこれで自信をつけて、これからの活躍を見せてほしいと思いました。

(おまけ)

Reserve_2018_08_bento_naruto_ ギリギリに駆け込んだので、お弁当がお寿司しか残ってなくてどうしようと思っていたら、ナルト弁当とサスケ弁当は、予約販売できたんですよ。代金払ってチケットをもらうと、次の幕間で受け取るしくみ。殆ど時間のロスはないうえに、ご飯がほんのりあったかくて出来立て感。ナルト弁当はご飯少なめ、おかず多めでヘルシーで美味でした。

八月納涼歌舞伎第2部「東海道中膝栗毛 再伊勢参?! YJKT」「雨乞其角」

201808     納涼歌舞伎第2部です。弥次喜多第3作、これまでで一番面白い!と評判でしたので、待ち焦がれてました。買い足そうにも、2部は早々に完売していましたから。

幕が上がると、いきなり巨大な喜多さん(猿之助)の葬式写真がバーン、松竹座の女殺油地獄の片づけ中に油で滑って頭を打って喜多さんが死んだことを、皆が悲しんでいます。弥次さん(幸四郎)があまりに泣き続けるので、梵太郎(染五郎)、政之助(團子)は、お伊勢参りをして喜多さんとの思い出を辿るとともに、天照大神さまに復活を願おうといい、3人は再び旅に出ます。まだ成仏できない喜多さん幽霊も3人を追うことに…。

さて、前述のとおり、期待値はかなり上がっていたのですが、それ以上に最高に楽しめました。まず、七之助、獅童、中車の早替りが何度も。タイトルにも「早替り相勤め申し候」とありましたが、こんなにこの3人に無理やらせて、とおかしくて。また、3人の持ち味のバランスがよくて、そろっているだけで面白いんですよね。しかし、3部でも主要なキャストの3人、後半は出番がなくなっていて、配慮してるんだなと思いました。

猿之助の幽霊、最初の場面は待ってました、という感じ。贔屓目ですが、歌舞伎座の広い舞台が、猿之助ひとりに支配されたように見えてゾクゾクしました。いや、ほかの役者ばかりではなくて、ちゃんと自分の見せ場も作ってるじゃありませんか。花道の引っ込みもちょっと長めでうれしかったです。

そして花魁赤尾太夫!貼り眉なんで、アップで見ちゃうとアレですが、やっぱり豪奢な拵えの猿之助の女方を見るとそれだけでありがたい気持ち。幸四郎との絡みは、ああん吉田屋、籠釣瓶…、と夢が膨らみました。花魁で出るのはうわさで知っていましたが、こんなにたっぷり出てくれるとは。さすがに早替わりの本家だけあって、難易度の高そうな花魁・幽霊を驚異の早さで行ったりきたり。

もちろん、野次さんも、あの間抜けな顔とのんきな性格をつらぬいたままながら、軽やかにかっこいい場面もたくさんあって、さすが幸四郎のもともとの華やかさを活かしているなと思いました。

そして若手の舞踊!千之助の藤娘、超かわいいし、鷹之資、玉太郎のSUGATAコンビも「三番叟」を思い出してムネアツだったし、橋之助ほか成駒屋3兄弟も振りがよくて楽しませてもらいました、米吉も最年少花車方か。右近ちゃんがかわいくて、お芝居もしっかり入ってやっているのに感心。右團次さんの親バカぶりも無理ないんですが、それもパロってて最高です(なんで右團次さんが、普通撮れないアングルの写真をブログにアップしているのかがわかりました)。弘太郎・鶴松の犬猫コンビも達者でした。

ハチャメチャではありますが、染團のしっかり坊ちゃんたちがストーリーを押さえてて、あまり脱線しすぎないバランスもよくできているなと思いました。7月は27日まで松竹座だったのに、帰ってきてからお稽古して演出して、と猿之助の頭の中はどうなっているのか(もちろん幸四郎も超人か、ですよね)。

第3部はシネマ歌舞伎にならないそうで、ファンはがっかりしているんですが、これまでのようにシネマ用にがっつり編集しなくていいから、記録映像としてDVD三部作買わせてくださいよ、松竹さん。

さて、2時間弱のやじきたのあとは、「雨乞其角」。其角(扇雀)が雨乞いをする短い舞踊ものです。

ちょっとコテコテした弥次喜多の後で、すっきりとした夏着物の扇雀さんに、船頭 歌昇、とさわやかな夏の風が吹くような舞台。彌十郎が芸者新悟、廣松を船に乗せて行き会います。

最後は若手と其角が踊りますが、評判通り、鷹之資が目を引きます。多数の若手の中からいい役がついて、ファンがつくというのはたいへんなことなんだな、とちょっと思ったりして。

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