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演劇(ストレートプレイ)

「カメラを止めるな!リモート大作戦」「12人の優しい日本人」を読む会

2005映画「カメラを止めるな!リモート大作戦」 】  

ステイホームなGWのプレゼントという感じの、上田慎一郎監督「カメラを止めるな!リモート大作戦」の配信です(YouTubeの配信サイト)。日暮家は、真央ちゃんが独立し、晴美ママは留学していて3人バラバラですが、新型コロナの状況下、日暮監督にリモートで犯罪実録映像を撮ってほしいという依頼が舞い込んで…。

日暮家始めカメ止めのキャストたちは、私たちにとっては、もう実在していると思えるくらいになっているので、彼らがまさに今同じ状況にあってオンラインでしか家族が離せない状況がリアルに感じられます。ヒロインの逢花ちゃんとか細田さんなど特にキャラ立ちしていたキャスト中心に、募集した映像も使ったりして面白く進んでいきます。撮り方は不自由ですが、それをうまく使ってやっぱりすごい。そして、最後の方の真央ちゃんの台詞が刺さって思わず泣けました。その塩梅もちょうどいい。ほんと、「全部したい!」。

しゅはまはるみさんが、意味なく完璧女優メイクできれいだったのと、どんぐりさん、ヨッパライ細田さんがいい味(踊りもキレキレ)、そして秋山ゆずきちゃんやっぱりおもしろい。

というか、こんなに才能あふれる上田監督に、思う存分映画を撮らせてあげたいって思いましたよ。

(追記)

カメ止めは海外でもファンを獲得しましたが、5月15日、このリモ止めの英語字幕付きバージョンがYouTubeにアップされました(字幕付き版)。こなれた字幕だな、と感心。世界にも届け~。

 

【朗読劇「12人の優しい日本人」を読む会】

そしてもう一つ、1990年初演で映画化もされた三谷幸喜さんの「12人の優しい日本人」を読む会。(当時は日本では裁判員制度はありませんでしたが)陪審員のセリフ劇なのでリモートとの親和性は高いとはいうものの、オンライン飲み会で使っているあのzoomそのままで朗読劇…と思ったら、予想のナナメ上をいく完成度で、芝居として引き込まれていきました。YouTubeのアーカイブの前後編で見られますが、元はライブ配信、生中継!

このお芝居、1990年から3年連続で上演され、2005年の再演を経て今回の読む会なんですが、キャストは初期のキャストが男性10人中9人が出演しています。甲本雅裕、相島一之、小林隆、阿南健治、近藤芳正、梶原善、西村まさ彦、野仲イサオ、渡部朋彦、小原雅人、吉田羊、妻鹿ありか、宮地雅子、そして三谷さんも特別出演。この役者陣の豪華なこと。みなさんその後確たる地位を築いたわけですね。初出演の女優さんたちもぴったり、吉田羊さんも地味な役なんですが、ご本人に華があるので、ちょっと面白い感じになっています。

三谷さんの陪審員ドラマなので(元ネタの映画「十二人の怒れる男」はずっと以前に見たことがあるような気がします)、有罪・無罪をめぐって様々な意見に結論が行ったり来たりするのが醍醐味。映画版も見ていなかったので、どうなるんだろうとわくわくしました。

そして、一際目立つのが相島さん。どんな作品でも強烈な印象を残す名優、30年前の当時は「お若いのに」というセリフがぴったりの若者だったんだと思いますが、今は今の味があります。最後の熱は、画面の12分の1から感情がほとばしるようで、まさに芝居、演劇でした。役者さんってすごいな。

生の芝居ではないけれど、お芝居への気持ちをかきたててくれるような、すばらしい企画でした。ありがとうございました。

 

 

 

2019年私的ミュージカル&演劇・歌舞伎ベスト10!

201912best10  恒例の年間ベスト10です。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎の3つに分けて発表します。

例によって、私が個人的にその舞台で得た感動と、もしもう1回見るならどちらを見るか、といった趣旨のランキングで、作品自体の優劣ではありませんので緩くみてください。日によっても変わるし、見た座席(や周囲の雰囲気)の良し悪しの影響もあります。

タイトルをクリックすると、このブログの記事にとびます。すでに当ブログの記事紹介コンテンツになっててすいません。

 

(前年までのリンク) 

2009年的ミュージカルベスト10!
2010年私的エンタメベスト10!
2011年私的演劇&コンサートベスト10!
2012年私的演劇等ベスト10! 
2013年私的ミュージカル&演劇その他ベスト10!
2014年私的ミュージカル&演劇その他ベスト10!
2015年私的ミュージカル&演劇その他ベスト10!
2016年私的ミュージカル&演劇その他ベスト10!
2017年私的ミュージカル&演劇・歌舞伎ベスト10!
2018年私的ミュージカル&演劇・歌舞伎ベスト10!(その1ミュージカル・その他編) 
(その2歌舞伎その他編) 

【ミュージカル】

今年は、見損なった舞台が多く(主なものだけでも、王様と私、ジーザスクライストスーパースター、ラ・マンチャの男、キンキーブーツ、レミゼ、エリザ、怪人と探偵等)、地味なリスト(ごめんなさい)。私的には、3位以下はほとんど差がありません。

1.愛のレキシアター ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ

圧倒的1位。山本耕史はじめキャストもレキシの曲もコメディとしての楽しさも観客のノリ具合もサイコーでした。

2.ペテン師と詐欺師

山田孝之、石丸幹二と女優たちの、楽しい福田雄一ミュージカル。アンサンブル、ダンスもよかった。

3.ラブ・ネバー・ダイ

ストーリー以外は秀逸。平原綾香の歌を堪能。

4.宝塚花組 カサノヴァ

これで宝塚の明日海りおの見納め。作品ごとに違う顔を見せてくれて、大好きでした。柚香光もすごくよかった。

5.ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812

いろんな面で力作でキャストもそろっていたんですがね…ちょっと惜しかった。

6.ライムライト

キャストもよく、ハートウォーミングな佳作。

7.虹のかけら~もうひとりのジュディ

戸田恵子さんに宛てた三谷さんのしゃれた一人芝居ミュージカル。

8.宝塚雪組 ファントム

望海風斗が歌い切った切ないファントム。

9.パリのアメリカ人

バレエなダンスを堪能。

10.銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠

宝塚宙組 追憶のバルセロナ・NICE GUY
笑う男
宝塚月組 夢限夢想・クルンテープ 天使の都
世界は一人

【ストレートプレイ】

初の野外劇場体験を始め、心に残る作品が多い年でした。

1.キネマと恋人

今年もケラリーノ・サンドロヴィッチさんが1位でした。映像と芝居の絶妙なコンビネーション、はまりすぎている役者の演技とほろ苦くも温かなストーリー、感服しました。

2.LIFELIFELIFE~人生の3つのバージョン

ケラさんにしては短い90分でぎゅっとつまったトリッキーな翻訳もの。稲垣吾郎ちゃんも好演。

3.Q~A Night of theKabuki

クィーンの「オペラ座の夜」をモチーフに、といいつつ、完全にいつものNODAワールド。上川隆也がかっこよかった。

4.海辺のカフカ

蜷川さんの遺作として知られる村上春樹原作の芝居。寺島しのぶ、木場勝巳が名演。

5.天守物語

初めての野外劇場での、芝居の外延が自然にとけあった、神話の世界の実現のような、宮城總の名作体験でした。

6.プラトーノフ

森新太郎演出、藤原竜也(初見)主演の、緻密なチェーホフ。

7.劇団かもめんたる 宇宙人はクラゲが嫌い

岩崎う大の脚本、演技がとてもよかった。

8.笑う門には福来たる ~女興行師吉本せい~

藤山直美の女性一代記もの。

9.詩楽劇すめらみことの物語~宙舞飾夢幻

見る前から「謎舞台」と言われていた各ジャンルからのコラボ舞台。お正月から四代目を間近で見られてよかった。

10.リア王

演劇界のレジェンド鈴木忠志氏の名作。

暗くなるまで待って

鳳希かなめが熱演。

ピカソとアインシュタイン
人形の家 Part2
下町ダニーローズ  不幸の正義の味方
木ノ下歌舞伎摂州合邦辻

【歌舞伎】

今年も歌舞伎は一番たくさん行きました。既に猿之助沼にどっぷり浸かっていますので、順位については、大目に見てください。今年は完全復活と思うほど大活躍してくれたのがうれしい! 例によって、個別の演目というよりも、その日の満足度という観点で選んでいます。上位ではないですが、初めて初春浅草歌舞伎に行って楽しかったです。ナウシカ見たかったな。

1.四月大歌舞伎「実盛物語」「黒塚」「二人夕霧」

黒塚、猿之助が大怪我からこの演目ができるまでに回復したというにとどまらず、場面毎の見せ場が変化に富み何度見ても素晴らしかったし、地方の皆さんも94歳の中島靖子さんが何日か筝を演奏なさるなど、特別な演目。そして仁左衛門、歌六、まほろんの実盛物語。

2.六月大歌舞伎「月光露針路日本 風雲児たち」

幸四郎を中心に出演者全てが生き生きと三谷歌舞伎の世界を作り出していた作品。幸四郎、猿之助、愛之助のがっちり共演だけでもうれしかったです。

3.スーパー歌舞伎Ⅱ「新版 オグリ」猿之助

スーパー歌舞伎Ⅱとしては第3作のリメイクもの。ビジュアルも凝っていて、久しぶりにオーラ全開の猿之助を見ました。ナウシカと比べて…な座組を実力ある現代劇役者で補ってがんばった!

4.三月大歌舞伎「盛綱陣屋」「雷船頭」「弁天娘女男白浪」猿之助

音羽屋と比べたらまだまだかもしれないけど、猿之助ー幸四郎の弁天力丸ワクワクしました。仁左衛門さん、秀太郎さんほか役者がそろって勘太郎・真秀も出ていた盛綱陣屋、wキャストどちらも楽しかった雷船頭と充実。

5.「盛綱陣屋」「蝙蝠の安さん」

チャップリン「街の灯」を完全歌舞伎化した幸四郎さんに拍手!盛綱陣屋も白鸚さん、吉弥さん、幸一郎くんとよかったです。

6.團菊祭五月大歌舞伎「鶴寿千載」「絵本牛若丸」「京鹿子娘道成寺」「曽我綉俠御所染 御所五郎蔵」

菊之助の娘道成寺、舞台から美がこぼれ出るようで堪能しました。丑之助襲名の牛若丸も贅沢な配役で楽しかったし、御所五郎蔵もよかったです。

7.三月大歌舞伎「女鳴神」「傀儡師」「傾城反魂香」

白鸚さん吃又と猿之助おとくの傾城反魂香、三代猿之助四十八選の「高島館」「竹藪」がついていたのも面白かった。

8.「積恋雪関扉」(国立劇場アフター7)

菊之助と梅枝の関扉のみを仕事帰りに割安で見られたアフター7.小劇場に美しい二人の歌舞伎の精。また見たいと切に思う演目でした。

9.八月納涼歌舞伎「東海道中膝栗毛」

早変わりが楽しかった若手役者勢揃いの夏祭り。コンプリートBOX出してくれないかな。

10.壽初春大歌舞伎「舌出三番叟」「吉例寿曽我」「廓文章吉田屋」「一条大蔵卿」

お正月らしく盛沢山、幸四郎、七之助の吉田屋が、秀太郎さんまでついててとても楽しかった。白鸚さんの大蔵卿もまたちがった味わいで、豪華配役もよかったです。

11.四月大歌舞伎「平成代名残絵巻」「新版歌祭文 座摩社 野崎村」「寿栄藤末廣 鶴亀」「御存鈴ヶ森」

初めて見た念願の野崎村と御存鈴ヶ森。猿之助きれいな次期女帝風だった鶴亀。

12.松竹大歌舞伎巡業「口上」「引窓」「かさね」

念願の幸四郎・猿之助のかさね。

13.壽初春大歌舞伎「絵本太功記」「勢獅子」「松竹梅湯島掛額」

吉右衛門さんと東蔵さんの絵本太功記、猿之助紅長、七之助のお七の人形振りもすごくよかった。

14.十一月吉例顔見世大歌舞伎「研辰の討たれ」「関三奴」「髪結新三」

幸四郎、彦亀兄弟のオリジナル研辰、菊五郎劇団の髪結新三。

15.秀山祭九月大歌舞伎「極付幡随院長兵衛」「お祭り」「伊賀越道中双六 沼津」

幸四郎長兵衛、吉右衛門・歌六・雀右衛門の沼津。

16.二月大歌舞伎「すし屋」「暗闇の丑松」「団子売」

松緑のすし屋、ちょっと悲しい話だけど舞台装置と橘太郎さん大活躍の暗闇の丑松。

17.新春浅草歌舞伎第1部「戻駕色相肩」「義賢最期」「芋掘長者」

松也と隼人の美しかった義賢最期。後に莟玉襲名披露でも演じた梅丸の戻駕。

18.二月大歌舞伎「熊谷陣屋」「當年祝春駒」「名月八幡祭」

吉右衛門さんと役者の揃った熊谷陣屋。ニザ玉に挑んだ松緑新助の名月八幡祭。

19.團菊祭五月大歌舞伎「寿曽我対面」「勧進帳」「め組の喧嘩」

これぞ團菊祭、な海老蔵勧進帳と菊五郎劇団のめ組。亀三郎がよかった。

20.オフシアター歌舞伎「女殺油地獄」

プロレスのリングを見るようなオフシアターでの獅童、壱太郎の油地獄。

新春浅草歌舞伎第2部「寿曽我対面」「番町皿屋敷」「乗合船恵方萬歳」
六月大歌舞伎「寿式三番叟」「女車引」「梶原平三誉石切」「恋飛脚大和往来 封印切」
国立劇場「通し狂言 姫路城音菊礎石」
八月納涼歌舞伎「伽羅先代萩」「闇梅百物語」
七月大歌舞伎「通し狂言 星合世十三團 成田千本桜』
八月納涼歌舞伎「新版 雪之丞変化」

【映画、ドラマその他】

上記以外では、落語・講談で松之丞3回、志の輔1回! 文楽は1回でしたが、「阿古屋」には演奏と人形に、歌舞伎と違った感動がありました。

映画は、けっこうバラエティに富んだ力作を見られたと思います。舞台は見られなかったケン・ワタナベの「the King and I」、見られてよかったなあ。作品としては、「ロケットマン」「ジョーカー」、そして「アナと雪の女王2」ではまたイディナの歌を聞けました。シネマ歌舞伎「桜の森の満開の下」、「女殺油地獄」松竹ブロードウェイシネマ「She Loves Meもよかったです。

ドラマは、何といっても1年を通して「いだてん」を真剣に見てました。テーマも役者もストーリーも映像もみんなよかった。ほんとにオリンピックについて考えさせてもらったです。あとは、「きのう何食べた?」「凪のお暇」「怪談 牡丹燈籠」「抱かれたい12人の女たち」。最後「グランメゾン東京」も楽しく見てました。

【ブログアクセス年間ランキング】

現時点の年間アクセスランキングです。劇場データベースはよく使っていただいていますね。なぜか「プライド」も安定した人気です。「ラ・マンチャの男」、「ビッグ・フィッシュ」は前の記事なんですが、再演されたからですね。

1.劇場データベース!(座席表付き)
2.カテゴリ:四代目市川猿之助
3.カテゴリ:歌舞伎
4.一条ゆかり「プライド」-(付)名セリフ集
5.「ラ・マンチャの男」@帝国劇場
6.六月大歌舞伎「月光露針路日本 風雲児たち」
7.四月大歌舞伎「黒塚」「二人夕霧」幕見(追記あり)
8.シネマ歌舞伎「野田版 研辰の討たれ」
9.「笑う男」@日生劇場
10.スーパー歌舞伎Ⅱ「新版 オグリ」(隼人オグリ)
11.劇団四季「パリのアメリカ人」@シアターオーブ
12.2018年私的ミュージカル・演劇&歌舞伎ベスト10!(その1・ミュージカル・ストレートプレイ編)
13.カテゴリ:劇場データベース
14.八月納涼歌舞伎「東海道中膝栗毛」
15.七月大歌舞伎「通し狂言 星合世十三團 成田千本桜」
16.三月大歌舞伎「弁天娘女男白浪」幕見<2回目追記あり>
17.カテゴリ:ミュージカル
18.十二月大歌舞伎「壇浦兜軍記 阿古屋」「あんまと泥棒」「傾城雪吉原」
19.八月納涼歌舞伎「新版 雪之丞変化」
20.四代目市川猿之助出演記録
21.佐々木倫子「Heaven?―ご苦楽レストラン」
22「暗くなるまで待って」@サンシャイン劇場
23.壽初春大歌舞伎「絵本太功記」「勢獅子」「松竹梅湯島掛額」
24.近藤史恵 歌舞伎シリーズ「ねむりねずみ」「散りしかたみに」「桜姫」「二人道成寺」「胡蝶殺し」
25.大河ドラマ「新選組!」@2004と「土方歳三最期の一日」
26.Chess in Concert(その2)― あらすじとキャスト
27.四月大歌舞伎「実盛物語」「黒塚」
28.ミュージカル「ビッグ・フィッシュ」@日生劇場
29.四月大歌舞伎「平成代名残絵巻」「新版歌祭文 座摩社 野崎村」「寿栄藤末廣」「御存鈴ヶ森」
30.三月大歌舞伎「女鳴神」「傀儡師」「傾城反魂香」<2回目追記あり>

 

 

 




 

 

 

 

 

 

 

 

NODA・MAP「Q ~ A Night At The Kabuki」

201911q     NODA・MAPの新作、東京凱旋公演の「Q」です。QはなんとQueenのQ。クィーンサイドから、「ボヘミアン・ラプソディ」を含むアルバム「オペラ座の夜」の演劇性を演劇化できないか、という話があったとのこと。わあ、なにそれ。で、凱旋公演とったら前方センター。

ボヘミアン・ラプソディというと、ナイーブな少年が不条理な殺人を犯すって感じなんですが、この芝居はロミオとジュリエットがテーマ。時代を平家のローミオ(志尊淳)と源氏のジュリエ(広瀬すず)にしたうえで、死ななかった二人の30年後(上川隆也松たか子)と重ねながら描いていきます。

そのBGMとして、「オペラ座の夜」(曲名後述)の曲が、大音量で流れます。フルコーラスではありませんが、なかなか効果的。やっぱりクィーンの曲はドラマチック。しかしあくまで野田秀樹の芝居。

ほかの登場人物は、ジュリエとローミオの母(羽野晶紀)、ジュリエの保護者の源氏方の武将と、毒薬を与える法皇(橋本さとし)、ローミオの父清盛(竹中直人)、巴(伊勢佳世)、ローミオの親族(小松和重)、そしてジュリエのウバ(野田秀樹)。

松たか子以外はNODA・MAPで見るのは初めての役者さんばかり、これまでより普段の活動がバラエティに富んだキャストだなと思っていましたが、さすが野田秀樹のきっちりした演出と、これが凱旋公演なだけあって公演回数を重ねていることで、うまく個性とのバランスがとれていて見事だと思いました。

竹中直人が普通の芝居に入ったらああ竹中直人だって思うだろうなあと思っていたんですが、橋本さとしや羽野晶紀もすごいので、浮くこともなかったのが驚き。そう、橋本さとしはある意味当然として(かっこいいのに出落ち的な!)、羽野晶紀は、新感線で活躍していたとはきいていましたが、動きのキレといい、華やかさといい、いい女優なんだなと思いました。

前後しますが、広瀬すず、やっぱり光を放つようなかわいさ。スピード感、エネルギーは抜群で、彼女を見ているだけで、パワーチャージしてもらったような気がしました。伊藤蘭から続く野田作品のヒロインの系譜。その相手役としての志尊淳も、何度もある壁のぼりのスピード感、整った美形。

しかし上川隆也もすごかったです。まったく変わらないかわいさのある顔、バランスの取れた肢体!この人、街を歩いていても俳優になりませんかっていう感じ。一人商業演劇の座頭みたいな貫禄があって、そういえば「燃えよ剣」とかの主演もしていましたっけ。松たか子とのバランスもよくて、二人の関係はドキドキしちゃいました。

もちろん、NODA・MAP名物の実力あるハイレベルなアンサンブルも最高。映像効果と見まがうようなスローモーションや躍動感溢れる動き、布プレイ。

前半は、ロミオとジュリエットにけっこう忠実で、台詞もかなりとっています。役の早替わりと、法皇の拵えの鬘に境目がくっきりなところ、舞台上ですが宙乗りがあるところが歌舞伎を感じたところです。早替わりは、野田作品でもやりますが、今回は多かったです。

そして後半は、とても野田秀樹的な展開で持っていきます。ああ、こういう風に「ロミオ様、あなたの名前を捨てて」が生きてくるのか。企画ものなんですが、あくまで野田秀樹で、いつもよりわかりやすく笑いも多めで、楽しかったです。

「オペラ座の夜」クィーン

デス・オン・トゥー・レッグス
うつろな日曜日
アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー
マイ・ベスト・フレンド
39
スウィート・レディ
シーサイド・ランデヴー
預言者の唄
ラヴ・オブ・マイ・ライフ
グッド・カンパニー
ボヘミアン・ラプソディ
ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン

おまけ

野田秀樹と糸井重里の、とても充実した対談「演劇ひとすじ。」が「ほぼ日」にアップされてます。面白い!

「虹のかけら~もうひとりのジュディ」

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  戸田恵子さんの60周年を祝って三谷幸喜さんが書いた一人芝居「虹のかけら~もうひとりのジュディ」です。ジュディとは、1922年生まれ、「オズの魔法使い」、「イースター・パレード」、「スタア誕生」といった映画に主演し、コンサートでトニー賞特別賞、ライブアルバムのヒットでグラミー賞も得ている大スター、ジュディ・ガーランド。

お話は、ジュディと同い年で、「オズの魔法使い」のオーディションに落ちたジュディ・シルバーマンが、スターであるジュディの一方的な友情に辟易しながらも彼女の人生に寄り添って…というもの。

戸田さんは、語り手と、シルバーマンの日記の読み手として物語をすすめながら、ジュディのヒット曲を11曲歌い踊ります。戸田さんというと、とにかく芝居も歌もうまくて、モノのわかった大人の女性というイメージなんですが、語り手の素のような部分と、娘らしいシルバーマンとの演じ分けも見事で、何よりかわいらしいというか、舞台での輝きが素晴らしくて、戸田さんにやられた1時間20分でした。

こういった朗読+歌という感じのパフォーマンス(ミュージカルといえなくもないけどミュージカルではないのかも)は、アメリカではよくあるそうですが、演者の実力がないと悲惨ですし、脚本の面白さや曲のよさも必要ですが、戸田恵子、三谷幸喜、そしてピアノ(荻野さん自身)、ウッドベース、ドラムというシンプルな編成(3人とも女性)のセンスある音楽の荻野清子と、三拍子そろった作品で、素晴らしかったです。

(以下ネタバレです)

 

 

前述の設定は、なんと三谷さんのフィクションで、シルバーマンは架空の人。なあんだ。しかし、ジュディ・ガーランドが10代の頃からMGMに酷使されて、覚せい剤と睡眠薬漬けになった挙句ボロボロになって早死にしたのは実話だそうで、まあ、見ながら大竹しのぶの「ピアフ」を思い出してゾっとしていたんですが、作劇的にはとても成功していたと思います。三谷さんの声での語りが、戸田恵子という才能豊かな女優へのリスペクトにあふれていて、演劇人の温かな友情を感じたことでした。

 

「人形の家 Part2」とイプセン「人形の家」

  201909イプセンの「人形の家」で、最後に家を出て行ったノラが15年後に家に帰ってきたらどうなるか、という続編「人形の家 Part2」です。作者はアメリカのルーカス・ナス、演出は栗山民也。栗山さんらしい、緻密な台詞劇です。

ノラ(永作博美)がプセンの「人形の家」で、最後に家を出て行ったノラが15年後に家に帰ってきたらどうなるか、という続編「人形の家 Part2」です。作者はアメリカのルーカス・ナス、演出は栗山民也。休憩なし、1時間40分の濃密な芝居でした。

ノラ(永作博美)が15年ぶりに家族の家に帰ってきて、女中のアンヌ・マリー(梅沢昌代)に迎えられます。家を出た後、「女性は結婚に縛られるべきでない」という自伝的な本を書いて成功したノラですが、夫トルヴェル(山崎一)との離婚が成立していないことが判明し、そのことによって窮地に陥ったノラは、改めて離婚してもらうために帰ってきたのです。ノラはアンヌ・マリー、トルヴェル、そして殆ど母のことを覚えていない娘エミー(那須凛)と対峙していきます。そして…。

すべての場が、ノラと3人のいずれかの二人芝居。ノラが今どんな状況か、15年間家族がどう生きてきたか、登場人物同士も、観客にもわからないわけですから、それが解き明かされ、状況と感情が台詞で積み重ねられていく、栗山さんらしい、緻密な台詞劇です。

永作博美、さすがですよ。小柄で童顔、どうかすると普通の人なんですが、細身のスタイルと透明感のある美貌、明瞭な台詞、普通の女性から非凡な輝きがあふれているような人。梅沢昌代の自然な老いの表現とノラへの複雑な感情、山崎一の立派な老紳士の風貌と苦悩、舞台人としてのキャリアを感じさせる力量があますことなく示されていました。

那須凛、しっかり育った利発な娘エミー、彼女の登場で舞台の色がさっと変わったかのように感じさせます。深みのあるよい声で、エミーの気持ちを的確に伝えていて、いい女優だと思いました。

というわけで、シンプルな舞台に、力のこもった芝居は堪能したのですが、お話は…。家庭劇であるだけに、ノラに共感できるかどうかで、この舞台の評価が左右されてしまうのですが、ノラが幼い3人の子どもを置いて出て行った、ということがわかってから(つまり最初の場から)どうにも共感できなくて参りました。たしか「人形の家」では、最後の場面で突然ノラが「この結婚はまちがっている」と自覚して家を出るんですよね。「子どもは母親が育てるべき」というのは固定観念だという風潮にはなっていますけど、どうしても心情的に、子どもが母親から置いて行かれるというのは悲しいんです。

そういう気持ちで見ていると、エミーの言うことの方がうなずけるし、トルヴェルはノラが望む方向で変わったのに、もうノラには伝わらなくて、なんだかトルヴェルがかわいそうに見えてしまいました。やっぱり元の「人形の家」のいきさつが知りたくなりました。

戯曲イプセン「人形の家」(坂口玲子訳)

201909_20190913074101  その後、「人形の家」を読んでみました。ノラは、夫トルヴェルから人形のように愛されていますが、実はトルヴェルの転地療養費用を夫に内緒でクログスタから借りていて、家計を浮かせたり、密かに清書の内職をしたりして返済しています。不祥事でトルヴェルに解雇されそうになったクログスタは、ノラに借金の際の父の署名の偽造のことを暴露すると脅し、トルヴェルに解雇をやめさせるようとりなすことを求めます。

いろいろあって、結局クログスタは借用書を返送してくるのですが、真実を知って怒り、その後借金(というか書名偽造)問題が片付いてもとに戻ろうとするトルヴェルに対し、ノラは、「これまで真面目に話したことはなかった」―自分は一人前の人間として扱われていなかった―「もう愛していない」と言って家を出るのです。

ああ、やっぱり共感できないなあ。愛と信頼がなくなった夫婦でも、子どものために別れるべきではない、とは思わないけれど、自分のプライドをすべてに優先させるのは大人じゃないと思えて。もちろん、これは戯曲なので、途中の議論は省略したうえで結論としてノラが出ていくことを描いたところに新しさがあるってことかもしれませんが。

 

 

シアターオリンピックス 宮城聰「天守物語」

201908_20190829225001  シアターオリンピックスの上演作品、2本目は宮城總さんの「天守物語」です。宮城さんといえば、あの「マハーバーラタ戦記」歌舞伎の演出家、音楽の使い方も印象的でした。今回の演目は歌舞伎でも玉三郎、右近、海老蔵でやって面白かった「天守物語」とあって楽しみにしていました。

野外劇場は、YKKのゲストハウス前沢ガーデンの敷地内にあります。昼間は美しい芝生に囲まれた左の写真のようなところですが、夜なのでわずかな照明を頼りに進みます。400人近く入る劇場はぎっしり。

2019082 半円の座席の下方の舞台は芝生。舞台の外も草原です。周りに人造物がないので、照明効果は抜群。風や匂い、虫の鳴き声の中の舞台です。正面に女性が表れて太鼓をたたき、その後ろの御簾みたいな中で演奏するインド風の音楽(音楽はマハーバーラタと同じ棚川寛子)が流れます。舞台の後ろの草原から2列で現れる役者たち。最初からこの劇場の特色をを十分使った舞台です。

前半は姫路城の天守に住む富姫が、かわいがっている猪苗代湖の亀姫を迎え、亀姫のお土産の生首に喜ぶというグロテスクなお話。後半は、迷い込んできた図書之助に初めての恋をする富姫。図書之助、すらっとしたかっこいい人でした。

台詞は役者ではなく、役者と反対の性のスピーカーによって語られ、役者は演技と人形振りをミックスしたような動きをします。とにかく富姫(美加理)が美しくて異形の姫の存在感があって、動きも美しくて素晴らしい(富姫のスピーカーも最高)!亀姫ちゃんも妹分としての愛らしさ、残酷さが素敵、図書之助はすらりとかっこよく、侍女役の方の生き生きとした演技にも惹かれました。

台詞の語り手と演技者が異なることに驚くほど違和感がなかったのは、やっぱり文楽や義太夫狂言を見ているからかな。若干うるさいことを言うと、このスピーカーの力量にやや差があって、聞きづらい方もいたのが惜しい。

衣装が、鯉のぼりをモチーフにしていて、軽やかながら美しい色彩でこれもよかったです(この舞台の写真の入ったチラシはないんですが、劇団SPACのページをご覧ください)。

天守物語、美しいイメージの膨らむ、面白い話で、宮城さんの自由な演出にびくともしない骨格のある物語だなという感も強くしました。貴重な演劇体験の夜でした。

 

シアター・オリンピックス 鈴木忠志の「リア王」

201908_20190825215501  早稲田小劇場から富山県利賀村に本拠地を移して長年活動してきた鈴木忠志さんの劇団SCOTについては知ってはいたのですが、初めて見ることができました。代表作の「リア王」です。そして、今回の上演は、ロシアのサンクトペテルブルクと、富山県で開催されているシアターオリンピックスという名の演劇祭の演目の一つ。シアターオリンピックスは今年第9回とのことですが、そんな催しがあるとは初めて知りました。

富山駅から利賀村まで直行バスが運行されたんですが、直行で2時間!高速を降りてから、山道をどんどん入っていった先に、利賀芸術村がありますが、リア王Dsc01794 の上演された「利賀大山房」は、そのもっと手前、普段は体育館らしく、外見はそっけない感じ。すぐ向かいは川で、向こう岸にキャンプ地と、壁のないバーやフードコートがありました。

さて、本題の「リア王」です。前述のとおり体育館かあ、ほんとの利賀山房で見たかったな、などと思ってすみません。靴を脱いで入った劇場は、十分な傾斜に長椅子が並べられた立派な劇場で、照明も完璧でした。開演前、長身の鈴木さんが自由席の座席の心配をなさっているのを見て、あのレジェンドが、と感動してしまいました。

実は鈴木さんの芝居に予備知識はなかったんですが、格子戸の並んだ舞台の後ろから車いすのリア王(精神病院にいる設定)が登場した照明(丹羽誠)と衣装(満田年水、岡本孝子)を見た瞬間、ああ大丈夫、と思ってしまいました。

俳優は、母国語でセリフを言い、日本語は英語字幕、英語は日本語字幕、他の言語(韓国語、中国語、ロシア語?)は英語と日本語字幕が表示されますが、シンプルなので一瞥しながら舞台に集中できます。多彩な出演者と、国籍不明風な凝った衣装が、リア王の世界を、シェイクスピアのブリテンから、普遍的なものに変換している感じがしました、

リア王の竹森陽一さんは、劇団SCOTの主要な役者で、渾身のリア王。ゴネリル(エレン・ローレン)、その夫オールバニ(カメロン・スティール)は明瞭なセリフ回し、グロスター(イ・ソンウォン)、エドガー(田冲)、エドマンド(平垣温人)は眼光鋭く、ビジュアルから何から迫力があって、とっても好きでした。

さまざまな国籍の俳優に統一感があるのが、その動き。皆腰が定まっていて、平行に歩けるのは、能や歌舞伎のよう。と思ったのは偶然ではなく、「スズキ・トレーニング・メソッド」というのは、「下半身の感覚と足の動かし方である。特に世界各地の舞台作品における俳優の下半身の動きを観察し、その基本的な身体感覚を習得することが目指される」(現代美術用語辞典サイトによる)とのことなんですが、要は体幹で、舞踊の基本じゃないですか。歌舞伎を見ていると、その体幹の安定感と台詞の明瞭さにいつの間にか慣れているんだな、と思いました。

リア王を(道化がいなかったりしてややダイジェスト版ですが)を芝居で見るのは実は初めてで、人間関係の複雑さなど、さすが訓練された俳優で見るのは面白い、と2時間堪能したのですが、個人的には残念なのが音楽。冒頭のリア王の領土分割のときにずっと流れているのはノイズだし、クライマックスでかかるのも陳腐な感じ。ここまで緊張感のある舞台なんですから、オリジナルの音楽で(できれば生演奏で)やってほしかったし、看護婦の歌も意味不明でした。

もっというと、劇団SCOTの代表作がシェイクスピアやギリシャの古典や三島由紀夫で、方法論がさまざまな国出身の俳優でやるということだとすると、演劇を生業とする人が、何十年もかけてやることなのか、よくわからないと思いました。公演毎にアイディアの限りを尽くす東京の芝居の現場と比較すると、演劇そのものを追求するところから、一歩引いて、別の形で演劇界を盛り上げてくれている方なんだなと思いました。一回こっきりで何言ってるんだってことかもしれませんが 。

「笑う門には福来たる―女興行師吉本せい」

Photo_20190728002801  藤山直美が吉本興業の創業者吉本せいを演じる「笑う門には服来たる」です。

吉本せい(藤山直美)は、船場の老舗に嫁ぎますが、夫の泰三(田村亮)は寄席や芸人が大好きで、商売は傾きます。どうせなら夫の好きなことを、と二人で寄席を始めることにしますが、初めはなかなか人気の芸人には出てもらえず、せいは冷やし飴をよそより冷たくする工夫をして売るなど苦労しながらがんばりますが、泰三は娘義太夫の波津江(鶴田さやか)と一緒にいるときに急死してしまいます…。

前に見た藤山直美の舞台は、漫才師ミス・ワカナを演じた「おもろい女」。シアター・クリエのこぢんまりとした洒落た空間より、彼女には演舞場や松竹座が似合うと思いました。広い舞台で、大正から戦後にかけて、興業師として、通天閣を見ながらがんばっていく吉本せいと、生き生きとした庶民を演じる一座の人々。休憩込み4時間の舞台で、丁寧に、ストーリーには関係のないちょっとしたやりとりを重ねながら、こちらものんびりと吉本せいの一生に付き合うという感じ。

藤山直美、肚に信念を持ちながら、かわいらしい女の部分もあって、台詞に説得力があるのは見事。深刻な場面の後でちょっと見せる軽快な動きやコミカルな表情、品のある所作、ほんとに素晴らしい方です。

田村亮さんがお年を感じさせない洒脱な泰三、春団治の林与一さんも貫禄です。せいと心が通じ合う真一の松村雄基が、坊ちゃんらしい二枚目でよかったですし、女優陣も実のある演技で舞台を盛り上げていました。そして、せいの末息子穎右(西川忠志)は、ややマザコンの優しい青年を力演していて、ちょっとご本人の坊ちゃんぶりと重なってよかったです。せいの弟正之助の喜多村緑郎は重要な役なんですが、若干長身を持て余してヒョロヒョロしているように見えました。

冒頭の、お馴染みの吉本の芸人さんたちの写真、ラスト近くの、ミヤコ蝶々(吉本所属)の弟子、ミヤ蝶子・蝶美(松竹芸能所属!)の漫才で、吉本のお笑いをしっかりアピールします。

さて、まさに今吉本興業の物語を見るとは、という話になるわけですが、当初は、せいが芸人を我が子のように扱い、「笑いは生きる力や!」という吉本。春団治に出演してほしさに、「師匠の死に水をとる」とまで言うせい。戦後、徴兵された芸人たちにせいが再開する場面は、泣けました。

 

KERA・MAP「キネマと恋人」@世田谷パブリックシアター

201906_2   2016年の初演時は、シアタートラムでの上演で、チケットが取れなかったKERA・MAPの「キネマと恋人」の再演です。今回は世田谷パブリックシアター。「百年の秘密」修道女たち」とはまたちがった傑作でした。

ストーリーはウディ・アレンの傑作映画「カイロの紫のバラ」です。ミア・ファロー演じる妻は横暴な夫と暮らしていますが、日々の唯一の楽しみは映画を見ること。ある日画面からハンサムな男優が飛び出してきて、彼女とデートしますが…というもの。

さて、このお芝居の舞台は、1930年代の日本のとある島。唯一の映画館に、ハルコ(緒川たまき)が通っています。彼女が好きなのは、マルクス兄弟などのコメディと、時代劇「月之輔半次郎捕物帳」シリーズの間坂寅蔵役の高木高助(妻夫木聡)。ある日寅蔵がフィルムから飛び出してきます…。

島では長崎地方を彷彿させる創作方言が使われていて、「ごめんちゃい」などと言う、ちょっと猫背(ミア・ファローと同じ!)の緒川たまきがかわいくて魅力的でもう大好き。これまでも夫であるケラさんの芝居には出ていますが、この作品ではほぼ出ずっぱりの主演で、ケラさんとの関係はティム・バートンとヘレン・ボナム・カーターみたい!なんて思ったりして。

妻夫木君も、俳優である高助と映画の寅蔵を見事に演じ分けていてすごいです。時代劇の所作がきまっているのは、大河ドラマ主演しているんですもんね。この前は野田秀樹の桜の森の耳男だし、すっかり実力派俳優。

ハルコの妹で男に苦労するミチル(ともさかりえ)、先日「LIFE LIFE LIFE!」でも好演していたばかりで、まったくちがう役ですがどちらもすばらしい。どの役も印象的で舞台を引き締めていた村岡希美(この方、猫背椿さんに似てる)、横暴で単純な夫の演技がうますぎて、キライになっちゃうハルコの夫三上市朗(そういえばウディの映画でもこの役の人大キライだった)など、もうみんなよかったです!

私的には、生活のつらさを忘れさせてくれる映画というものの意味、大好きな役者に、あそこのあれは…と話して「君はわかっている」と言ってもらえた喜びなど、演劇ファンである自分にも刺さる場面やセリフがちりばめられていて、ジーンとする瞬間が何度もありました。

ああ、でも、ラストはやっぱりカイロと同じだったかー。いや、この素材を選んだ時点で、ちがうラストはありえないんでしょうが、やっぱりせつなくて悲しかったです。

映画部分の上映をはじめ、いつもながら上田大樹さんの映像が、高度で美しくてでも温かみがあって素晴らしい。また、1幕、2幕がそれぞれ95分もあって、場面割も細かいんですが、転換がダンスと一体になっていて、それ自体楽しめるんですよ。この振付が小野寺修二さん。シンプルながら機能美で役者の動きを引き立てる舞台美術が二村周作さん。美しい照明が関口裕二さん、と、もうケラさんの作品世界を支えるスタッフも盤石でした。

 

六月大歌舞伎「月光露針路日本 風雲児たち」

201906_1   三谷幸喜さんがPARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」以来、13年ぶりに歌舞伎の脚本を書いたことで話題の、六月歌舞伎座夜の部「月光露針路日本 風雲児たち」です。 高田馬場は何度もDVDで見ていましたので、歌舞伎座での観劇をとっても楽しみにしておりました。5月はお稽古で休演の幸四郎・猿之助は、余裕があったのか、バラエティに出まくってくれるし。

以下、ネタバレは控えめで。

 まず松也(眼鏡にスーツで教授風)の口上というか、前説。ある意味もったいないくらいの使い方で、声の良さに感激。しっかりお客を温めます。今日はzeroに出るのか。  

さてお話は、江戸後期、1782年に伊勢を出港し、遭難した神昌丸、17人の乗組員。初めて認識したのが(すみません)、二枚目の松十郎さん、幸蔵さん。さすがにこんなにいると、最初舞台がごちゃっとしているんですが、猿之助、愛之助は最初からそこだけピンスポットが当たっているようなオーラで際立っています。そして徐々に乗組員それぞれのキャラクターが立ってくるのは、群像劇が得意な三谷さんならでは。

一行は、オホーツク、ヤクーツク、イルクーツクとロシアを西進していき、とうとう光太夫は、ロシアの西端に近いサンペテルブルクまで達してエカテリーナ女王に帰国を嘆願し、認められます。17人の乗組員のうち、帰国できたのはたった2人でした…。

幸四郎の光太夫、最初のうちは自分のリーダーシップに迷いながら成長し、日本に帰るために皆を引っ張る役柄はぴったり。彼のキャラクターが一貫して造形されていることもあり、見る方もクルーと一緒に旅をしている気持ちになります。

四代目は、紅長的な、チャラチャラした役がおいしくて、公開稽古の取材では、「早く帰りたがる」なんて言われていたとは思えない、終始何かやっている力の入りよう。ラブリンはまたちょっと黒い役ですが、すっきりとかっこよくて。とにかく幸四郎とこの二人が舞台で何かやっているだけでもう私的にはうれしくて、ずっと幸せでした。

脚本は(常になく)早く上がっていたそうですが、やはりお稽古で当て書きの部分があるのか、どの役者さんについても、三谷さんの役者の使い方は最高にうまいです。高麗蔵さん、宗之助さんの高田馬場組はもちろん、彌十郎さん、男女蔵さんの使い方わかってる。彌十郎さん、野田版といい、こういう新作でほんとにいい味出すなあ。千次郎さん、鶴松くん、弘太郎さんも、稽古で膨らんでいったんだろうな。新悟ちゃんもかわいくて、新悟ちゃんでなければ成り立たない役。

染五郎くんが、三幕通して大活躍ですが、すごいお芝居上手になってて、美貌とか、ヒョロヒョロした雰囲気なども生かされていて、とてもよかった。白鸚さんとの絡みも、ドキュメンタリーで見た白鸚さんの厳しい指導を思い出します。

三谷さんのアイドル白鸚さんの、一幕の「黄金の日々」みと、三幕のポチョムキンの洋装のはまり具合と安定感と美しい台詞回し。CMなんてめじゃないくらい、若々しくて素敵。白鸚さんと幸四郎の場面では、二人が演じた「アマデウス」、なんで私見てないのかな、と思ってしまいました。

四代目のエカテリーナ、ポスター以上でしたよ!毛皮もあしらったゴージャスなドレス(さすが前田文子さんの衣装)、王冠、美しいデコルテ、前にすっと出てきたときの輝き、ポチョムキンの台詞への細かい反応。変身の時間があれと思うくらい短くて(顔色違うからたいへんだと思うんですが)、さすが早替わりの超上級者。

前後しますが、この宮廷のドレスの女性たちの美しいこと。猿紫ちゃん、りき彌くんが目を惹きました。竹三郎さんもかわいかった。

おっと、単身歌舞伎座に乗り込んだ八嶋智人、きっちり役割を果たしていました。見得の形もきれいなのは、ほんとに器用な人ですね。3月からこっち、ミュージカル「愛のレキシアター」、劇団かもめんたる「宇宙人はクラゲが嫌い」ときてこの歌舞伎座。観客数はそれぞれ1324、176、1808ですよ。それぞれ印象に残る好演で、事前から終わるまで面白いツイートでしっかり宣伝してくれて、なんて人。この役は松也でもよかったかもしれませんが、クルーとは異質な人間という意味で、はまっていました。

そして、3人の別れの場面。「なぜあそこで笑うのか」とおっしゃる向きもありますが、笑ってもいいんですよ。それだけたっぷりあるし、笑ったり感動したりしていく間に、盛り上がっていきます。ずっとシリアスだとそれに照れちゃうのが三谷さんだし、そこがわかっている、三谷さんの芝居をよく知っている3人。あのほどの良さが品がよくて素敵でした。ある種の俊寛。

実話だけど壮大なストーリーなだけに、歌舞伎とかミュージカルじゃないとショボくなってしまいそうで、歌舞伎座でこの座組で見られてよかったです。カーテンコール2回、何度もやらない歌舞伎座だけに、1回目から立ち始め、2回目はオールスタンディングでした。

【3幕目のみ幕見追記】

3幕目のみ、幕見に行ってきました。イルクーツクの場、エカテリーナの宮殿、そしてイルクーツクの別れ。エカテリーナ宮殿での愛之助にほろり(ここでのマリアンナのいい味)、そして豪華な謁見の場。

ドレスの貴婦人たちはもちろん、衛兵さんたちもみんな彫の深い顔にメイクしてて、立ち姿がすうっとしてかっこいい!一人一人もっとゆっくり顔を確認したくて時間が足りない!その間もポチョムキンと光太夫のやりとりに細かく反応するエカテリーナも見なくちゃいけないんですもん。

今回、やっとエカテリーナの背後に立つ小姓のくん確認。つか、あんなにすぐそばに立っていて、小姓役と知っていたのに目に入らなかったのは、猿さんエカテリーナ様があまりに神々しく光り輝いていたからなんですね。

イルクーツクの別れの場は、やはり2度目なのでじっくり見ることができて、3人の熱演と緩急にぐっときました。帰りたかったよなあ二人。間も数日前とは微妙に変わって、より効果的になっていたように思います。千穐楽まで、どんなふうに進化するんでしょう。

ところで、先日の一階前方席では気づかなかったんですが、愛之助と猿之助がマイクをつけているのがはっきりわかりました。全員がわかったわけではなかったんですが、いつも4階までちゃんと声が届くので、ちょっと驚き。三谷さんの細かい台詞を聞き取りやすくするためだったんでしょうか。そのうちに明らかになりますかね。

(おまけ・池田理代子「女帝エカテリーナ」)

201906_20190626234901 ところで、このお芝居、池田理代子先生の名作「女帝エカテリーナ」を知っているとより面白いです。タイトル通り、ドイツの貴族の少女だったエカテリーナが、ロシアの女王として君臨する一代記なのですが、国王始めダメ男しか知らなかった彼女が初めて恋した強い男がポチョムキン。二人が愛を確かめ合うとき、エカテリーナは、「もうこの広大なロシアを一人で治めなくていいんだ」と言うんですが、そのシーンが最高です。二人はそういう仲なのですよ。

 アンリ・トロワイヤの小説が原作なんですが、原作も面白いですがさすが池田先生という優れたコミック化でして、婦人公論だったかの連載なので表現も大人向けです。ポチョムキンは、エカテリーナとの恋が終わると、美形の若い男を女帝に与え、統治は続けるのですよね。その頃の話かな、などと思ってみておりました。

 

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