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演劇(ストレートプレイ)

「人形の家 Part2」とイプセン「人形の家」

  201909イプセンの「人形の家」で、最後に家を出て行ったノラが15年後に家に帰ってきたらどうなるか、という続編「人形の家 Part2」です。作者はアメリカのルーカス・ナス、演出は栗山民也。栗山さんらしい、緻密な台詞劇です。

ノラ(永作博美)がプセンの「人形の家」で、最後に家を出て行ったノラが15年後に家に帰ってきたらどうなるか、という続編「人形の家 Part2」です。作者はアメリカのルーカス・ナス、演出は栗山民也。休憩なし、1時間40分の濃密な芝居でした。

ノラ(永作博美)が15年ぶりに家族の家に帰ってきて、女中のアンヌ・マリー(梅沢昌代)に迎えられます。家を出た後、「女性は結婚に縛られるべきでない」という自伝的な本を書いて成功したノラですが、夫トルヴェル(山崎一)との離婚が成立していないことが判明し、そのことによって窮地に陥ったノラは、改めて離婚してもらうために帰ってきたのです。ノラはアンヌ・マリー、トルヴェル、そして殆ど母のことを覚えていない娘エミー(那須凛)と対峙していきます。そして…。

すべての場が、ノラと3人のいずれかの二人芝居。ノラが今どんな状況か、15年間家族がどう生きてきたか、登場人物同士も、観客にもわからないわけですから、それが解き明かされ、状況と感情が台詞で積み重ねられていく、栗山さんらしい、緻密な台詞劇です。

永作博美、さすがですよ。小柄で童顔、どうかすると普通の人なんですが、細身のスタイルと透明感のある美貌、明瞭な台詞、普通の女性から非凡な輝きがあふれているような人。梅沢昌代の自然な老いの表現とノラへの複雑な感情、山崎一の立派な老紳士の風貌と苦悩、舞台人としてのキャリアを感じさせる力量があますことなく示されていました。

那須凛、しっかり育った利発な娘エミー、彼女の登場で舞台の色がさっと変わったかのように感じさせます。深みのあるよい声で、エミーの気持ちを的確に伝えていて、いい女優だと思いました。

というわけで、シンプルな舞台に、力のこもった芝居は堪能したのですが、お話は…。家庭劇であるだけに、ノラに共感できるかどうかで、この舞台の評価が左右されてしまうのですが、ノラが幼い3人の子どもを置いて出て行った、ということがわかってから(つまり最初の場から)どうにも共感できなくて参りました。たしか「人形の家」では、最後の場面で突然ノラが「この結婚はまちがっている」と自覚して家を出るんですよね。「子どもは母親が育てるべき」というのは固定観念だという風潮にはなっていますけど、どうしても心情的に、子どもが母親から置いて行かれるというのは悲しいんです。

そういう気持ちで見ていると、エミーの言うことの方がうなずけるし、トルヴェルはノラが望む方向で変わったのに、もうノラには伝わらなくて、なんだかトルヴェルがかわいそうに見えてしまいました。やっぱり元の「人形の家」のいきさつが知りたくなりました。

戯曲イプセン「人形の家」(坂口玲子訳)

201909_20190913074101  その後、「人形の家」を読んでみました。ノラは、夫トルヴェルから人形のように愛されていますが、実はトルヴェルの転地療養費用を夫に内緒でクログスタから借りていて、家計を浮かせたり、密かに清書の内職をしたりして返済しています。不祥事でトルヴェルに解雇されそうになったクログスタは、ノラに借金の際の父の署名の偽造のことを暴露すると脅し、トルヴェルに解雇をやめさせるようとりなすことを求めます。

いろいろあって、結局クログスタは借用書を返送してくるのですが、真実を知って怒り、その後借金(というか書名偽造)問題が片付いてもとに戻ろうとするトルヴェルに対し、ノラは、「これまで真面目に話したことはなかった」―自分は一人前の人間として扱われていなかった―「もう愛していない」と言って家を出るのです。

ああ、やっぱり共感できないなあ。愛と信頼がなくなった夫婦でも、子どものために別れるべきではない、とは思わないけれど、自分のプライドをすべてに優先させるのは大人じゃないと思えて。もちろん、これは戯曲なので、途中の議論は省略したうえで結論としてノラが出ていくことを描いたところに新しさがあるってことかもしれませんが。

 

 

シアターオリンピックス 宮城聰「天守物語」

201908_20190829225001  シアターオリンピックスの上演作品、2本目は宮城總さんの「天守物語」です。宮城さんといえば、あの「マハーバーラタ戦記」歌舞伎の演出家、音楽の使い方も印象的でした。今回の演目は歌舞伎でも玉三郎、右近、海老蔵でやって面白かった「天守物語」とあって楽しみにしていました。

野外劇場は、YKKのゲストハウス前沢ガーデンの敷地内にあります。昼間は美しい芝生に囲まれた左の写真のようなところですが、夜なのでわずかな照明を頼りに進みます。400人近く入る劇場はぎっしり。

2019082 半円の座席の下方の舞台は芝生。舞台の外も草原です。周りに人造物がないので、照明効果は抜群。風や匂い、虫の鳴き声の中の舞台です。正面に女性が表れて太鼓をたたき、その後ろの御簾みたいな中で演奏するインド風の音楽(音楽はマハーバーラタと同じ棚川寛子)が流れます。舞台の後ろの草原から2列で現れる役者たち。最初からこの劇場の特色をを十分使った舞台です。

前半は姫路城の天守に住む富姫が、かわいがっている猪苗代湖の亀姫を迎え、亀姫のお土産の生首に喜ぶというグロテスクなお話。後半は、迷い込んできた図書之助に初めての恋をする富姫。図書之助、すらっとしたかっこいい人でした。

台詞は役者ではなく、役者と反対の性のスピーカーによって語られ、役者は演技と人形振りをミックスしたような動きをします。とにかく富姫(美加理)が美しくて異形の姫の存在感があって、動きも美しくて素晴らしい(富姫のスピーカーも最高)!亀姫ちゃんも妹分としての愛らしさ、残酷さが素敵、図書之助はすらりとかっこよく、侍女役の方の生き生きとした演技にも惹かれました。

台詞の語り手と演技者が異なることに驚くほど違和感がなかったのは、やっぱり文楽や義太夫狂言を見ているからかな。若干うるさいことを言うと、このスピーカーの力量にやや差があって、聞きづらい方もいたのが惜しい。

衣装が、鯉のぼりをモチーフにしていて、軽やかながら美しい色彩でこれもよかったです(この舞台の写真の入ったチラシはないんですが、劇団SPACのページをご覧ください)。

天守物語、美しいイメージの膨らむ、面白い話で、宮城さんの自由な演出にびくともしない骨格のある物語だなという感も強くしました。貴重な演劇体験の夜でした。

 

シアター・オリンピックス 鈴木忠志の「リア王」

201908_20190825215501  早稲田小劇場から富山県利賀村に本拠地を移して長年活動してきた鈴木忠志さんの劇団SCOTについては知ってはいたのですが、初めて見ることができました。代表作の「リア王」です。そして、今回の上演は、ロシアのサンクトペテルブルクと、富山県で開催されているシアターオリンピックスという名の演劇祭の演目の一つ。シアターオリンピックスは今年第9回とのことですが、そんな催しがあるとは初めて知りました。

富山駅から利賀村まで直行バスが運行されたんですが、直行で2時間!高速を降りてから、山道をどんどん入っていった先に、利賀芸術村がありますが、リア王Dsc01794 の上演された「利賀大山房」は、そのもっと手前、普段は体育館らしく、外見はそっけない感じ。すぐ向かいは川で、向こう岸にキャンプ地と、壁のないバーやフードコートがありました。

さて、本題の「リア王」です。前述のとおり体育館かあ、ほんとの利賀山房で見たかったな、などと思ってすみません。靴を脱いで入った劇場は、十分な傾斜に長椅子が並べられた立派な劇場で、照明も完璧でした。開演前、長身の鈴木さんが自由席の座席の心配をなさっているのを見て、あのレジェンドが、と感動してしまいました。

実は鈴木さんの芝居に予備知識はなかったんですが、格子戸の並んだ舞台の後ろから車いすのリア王(精神病院にいる設定)が登場した照明(丹羽誠)と衣装(満田年水、岡本孝子)を見た瞬間、ああ大丈夫、と思ってしまいました。

俳優は、母国語でセリフを言い、日本語は英語字幕、英語は日本語字幕、他の言語(韓国語、中国語、ロシア語?)は英語と日本語字幕が表示されますが、シンプルなので一瞥しながら舞台に集中できます。多彩な出演者と、国籍不明風な凝った衣装が、リア王の世界を、シェイクスピアのブリテンから、普遍的なものに変換している感じがしました、

リア王の竹森陽一さんは、劇団SCOTの主要な役者で、渾身のリア王。ゴネリル(エレン・ローレン)、その夫オールバニ(カメロン・スティール)は明瞭なセリフ回し、グロスター(イ・ソンウォン)、エドガー(田冲)、エドマンド(平垣温人)は眼光鋭く、ビジュアルから何から迫力があって、とっても好きでした。

さまざまな国籍の俳優に統一感があるのが、その動き。皆腰が定まっていて、平行に歩けるのは、能や歌舞伎のよう。と思ったのは偶然ではなく、「スズキ・トレーニング・メソッド」というのは、「下半身の感覚と足の動かし方である。特に世界各地の舞台作品における俳優の下半身の動きを観察し、その基本的な身体感覚を習得することが目指される」(現代美術用語辞典サイトによる)とのことなんですが、要は体幹で、舞踊の基本じゃないですか。歌舞伎を見ていると、その体幹の安定感と台詞の明瞭さにいつの間にか慣れているんだな、と思いました。

リア王を(道化がいなかったりしてややダイジェスト版ですが)を芝居で見るのは実は初めてで、人間関係の複雑さなど、さすが訓練された俳優で見るのは面白い、と2時間堪能したのですが、個人的には残念なのが音楽。冒頭のリア王の領土分割のときにずっと流れているのはノイズだし、クライマックスでかかるのも陳腐な感じ。ここまで緊張感のある舞台なんですから、オリジナルの音楽で(できれば生演奏で)やってほしかったし、看護婦の歌も意味不明でした。

もっというと、劇団SCOTの代表作がシェイクスピアやギリシャの古典や三島由紀夫で、方法論がさまざまな国出身の俳優でやるということだとすると、演劇を生業とする人が、何十年もかけてやることなのか、よくわからないと思いました。公演毎にアイディアの限りを尽くす東京の芝居の現場と比較すると、演劇そのものを追求するところから、一歩引いて、別の形で演劇界を盛り上げてくれている方なんだなと思いました。一回こっきりで何言ってるんだってことかもしれませんが 。

「笑う門には福来たる―女興行師吉本せい」

Photo_20190728002801  藤山直美が吉本興業の創業者吉本せいを演じる「笑う門には服来たる」です。

吉本せい(藤山直美)は、船場の老舗に嫁ぎますが、夫の泰三(田村亮)は寄席や芸人が大好きで、商売は傾きます。どうせなら夫の好きなことを、と二人で寄席を始めることにしますが、初めはなかなか人気の芸人には出てもらえず、せいは冷やし飴をよそより冷たくする工夫をして売るなど苦労しながらがんばりますが、泰三は娘義太夫の波津江(鶴田さやか)と一緒にいるときに急死してしまいます…。

前に見た藤山直美の舞台は、漫才師ミス・ワカナを演じた「おもろい女」。シアター・クリエのこぢんまりとした洒落た空間より、彼女には演舞場や松竹座が似合うと思いました。広い舞台で、大正から戦後にかけて、興業師として、通天閣を見ながらがんばっていく吉本せいと、生き生きとした庶民を演じる一座の人々。休憩込み4時間の舞台で、丁寧に、ストーリーには関係のないちょっとしたやりとりを重ねながら、こちらものんびりと吉本せいの一生に付き合うという感じ。

藤山直美、肚に信念を持ちながら、かわいらしい女の部分もあって、台詞に説得力があるのは見事。深刻な場面の後でちょっと見せる軽快な動きやコミカルな表情、品のある所作、ほんとに素晴らしい方です。

田村亮さんがお年を感じさせない洒脱な泰三、春団治の林与一さんも貫禄です。せいと心が通じ合う真一の松村雄基が、坊ちゃんらしい二枚目でよかったですし、女優陣も実のある演技で舞台を盛り上げていました。そして、せいの末息子穎右(西川忠志)は、ややマザコンの優しい青年を力演していて、ちょっとご本人の坊ちゃんぶりと重なってよかったです。せいの弟正之助の喜多村緑郎は重要な役なんですが、若干長身を持て余してヒョロヒョロしているように見えました。

冒頭の、お馴染みの吉本の芸人さんたちの写真、ラスト近くの、ミヤコ蝶々(吉本所属)の弟子、ミヤ蝶子・蝶美(松竹芸能所属!)の漫才で、吉本のお笑いをしっかりアピールします。

さて、まさに今吉本興業の物語を見るとは、という話になるわけですが、当初は、せいが芸人を我が子のように扱い、「笑いは生きる力や!」という吉本。春団治に出演してほしさに、「師匠の死に水をとる」とまで言うせい。戦後、徴兵された芸人たちにせいが再開する場面は、泣けました。

 

KERA・MAP「キネマと恋人」@世田谷パブリックシアター

201906_2   2016年の初演時は、シアタートラムでの上演で、チケットが取れなかったKERA・MAPの「キネマと恋人」の再演です。今回は世田谷パブリックシアター。「百年の秘密」修道女たち」とはまたちがった傑作でした。

ストーリーはウディ・アレンの傑作映画「カイロの紫のバラ」です。ミア・ファロー演じる妻は横暴な夫と暮らしていますが、日々の唯一の楽しみは映画を見ること。ある日画面からハンサムな男優が飛び出してきて、彼女とデートしますが…というもの。

さて、このお芝居の舞台は、1930年代の日本のとある島。唯一の映画館に、ハルコ(緒川たまき)が通っています。彼女が好きなのは、マルクス兄弟などのコメディと、時代劇「月之輔半次郎捕物帳」シリーズの間坂寅蔵役の高木高助(妻夫木聡)。ある日寅蔵がフィルムから飛び出してきます…。

島では長崎地方を彷彿させる創作方言が使われていて、「ごめんちゃい」などと言う、ちょっと猫背(ミア・ファローと同じ!)の緒川たまきがかわいくて魅力的でもう大好き。これまでも夫であるケラさんの芝居には出ていますが、この作品ではほぼ出ずっぱりの主演で、ケラさんとの関係はティム・バートンとヘレン・ボナム・カーターみたい!なんて思ったりして。

妻夫木君も、俳優である高助と映画の寅蔵を見事に演じ分けていてすごいです。時代劇の所作がきまっているのは、大河ドラマ主演しているんですもんね。この前は野田秀樹の桜の森の耳男だし、すっかり実力派俳優。

ハルコの妹で男に苦労するミチル(ともさかりえ)、先日「LIFE LIFE LIFE!」でも好演していたばかりで、まったくちがう役ですがどちらもすばらしい。どの役も印象的で舞台を引き締めていた村岡希美(この方、猫背椿さんに似てる)、横暴で単純な夫の演技がうますぎて、キライになっちゃうハルコの夫三上市朗(そういえばウディの映画でもこの役の人大キライだった)など、もうみんなよかったです!

私的には、生活のつらさを忘れさせてくれる映画というものの意味、大好きな役者に、あそこのあれは…と話して「君はわかっている」と言ってもらえた喜びなど、演劇ファンである自分にも刺さる場面やセリフがちりばめられていて、ジーンとする瞬間が何度もありました。

ああ、でも、ラストはやっぱりカイロと同じだったかー。いや、この素材を選んだ時点で、ちがうラストはありえないんでしょうが、やっぱりせつなくて悲しかったです。

映画部分の上映をはじめ、いつもながら上田大樹さんの映像が、高度で美しくてでも温かみがあって素晴らしい。また、1幕、2幕がそれぞれ95分もあって、場面割も細かいんですが、転換がダンスと一体になっていて、それ自体楽しめるんですよ。この振付が小野寺修二さん。シンプルながら機能美で役者の動きを引き立てる舞台美術が二村周作さん。美しい照明が関口裕二さん、と、もうケラさんの作品世界を支えるスタッフも盤石でした。

 

六月大歌舞伎「月光露針路日本 風雲児たち」

201906_1   三谷幸喜さんがPARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」以来、13年ぶりに歌舞伎の脚本を書いたことで話題の、六月歌舞伎座夜の部「月光露針路日本 風雲児たち」です。 高田馬場は何度もDVDで見ていましたので、歌舞伎座での観劇をとっても楽しみにしておりました。5月はお稽古で休演の幸四郎・猿之助は、余裕があったのか、バラエティに出まくってくれるし。

以下、ネタバレは控えめで。

 まず松也(眼鏡にスーツで教授風)の口上というか、前説。ある意味もったいないくらいの使い方で、声の良さに感激。しっかりお客を温めます。今日はzeroに出るのか。  

さてお話は、江戸後期、1782年に伊勢を出港し、遭難した神昌丸、17人の乗組員。初めて認識したのが(すみません)、二枚目の松十郎さん、幸蔵さん。さすがにこんなにいると、最初舞台がごちゃっとしているんですが、猿之助、愛之助は最初からそこだけピンスポットが当たっているようなオーラで際立っています。そして徐々に乗組員それぞれのキャラクターが立ってくるのは、群像劇が得意な三谷さんならでは。

一行は、オホーツク、ヤクーツク、イルクーツクとロシアを西進していき、とうとう光太夫は、ロシアの西端に近いサンペテルブルクまで達してエカテリーナ女王に帰国を嘆願し、認められます。17人の乗組員のうち、帰国できたのはたった2人でした…。

幸四郎の光太夫、最初のうちは自分のリーダーシップに迷いながら成長し、日本に帰るために皆を引っ張る役柄はぴったり。彼のキャラクターが一貫して造形されていることもあり、見る方もクルーと一緒に旅をしている気持ちになります。

四代目は、紅長的な、チャラチャラした役がおいしくて、公開稽古の取材では、「早く帰りたがる」なんて言われていたとは思えない、終始何かやっている力の入りよう。ラブリンはまたちょっと黒い役ですが、すっきりとかっこよくて。とにかく幸四郎とこの二人が舞台で何かやっているだけでもう私的にはうれしくて、ずっと幸せでした。

脚本は(常になく)早く上がっていたそうですが、やはりお稽古で当て書きの部分があるのか、どの役者さんについても、三谷さんの役者の使い方は最高にうまいです。高麗蔵さん、宗之助さんの高田馬場組はもちろん、彌十郎さん、男女蔵さんの使い方わかってる。彌十郎さん、野田版といい、こういう新作でほんとにいい味出すなあ。千次郎さん、鶴松くん、弘太郎さんも、稽古で膨らんでいったんだろうな。新悟ちゃんもかわいくて、新悟ちゃんでなければ成り立たない役。

染五郎くんが、三幕通して大活躍ですが、すごいお芝居上手になってて、美貌とか、ヒョロヒョロした雰囲気なども生かされていて、とてもよかった。白鸚さんとの絡みも、ドキュメンタリーで見た白鸚さんの厳しい指導を思い出します。

三谷さんのアイドル白鸚さんの、一幕の「黄金の日々」みと、三幕のポチョムキンの洋装のはまり具合と安定感と美しい台詞回し。CMなんてめじゃないくらい、若々しくて素敵。白鸚さんと幸四郎の場面では、二人が演じた「アマデウス」、なんで私見てないのかな、と思ってしまいました。

四代目のエカテリーナ、ポスター以上でしたよ!毛皮もあしらったゴージャスなドレス(さすが前田文子さんの衣装)、王冠、美しいデコルテ、前にすっと出てきたときの輝き、ポチョムキンの台詞への細かい反応。変身の時間があれと思うくらい短くて(顔色違うからたいへんだと思うんですが)、さすが早替わりの超上級者。

前後しますが、この宮廷のドレスの女性たちの美しいこと。猿紫ちゃん、りき彌くんが目を惹きました。竹三郎さんもかわいかった。

おっと、単身歌舞伎座に乗り込んだ八嶋智人、きっちり役割を果たしていました。見得の形もきれいなのは、ほんとに器用な人ですね。3月からこっち、ミュージカル「愛のレキシアター」、劇団かもめんたる「宇宙人はクラゲが嫌い」ときてこの歌舞伎座。観客数はそれぞれ1324、176、1808ですよ。それぞれ印象に残る好演で、事前から終わるまで面白いツイートでしっかり宣伝してくれて、なんて人。この役は松也でもよかったかもしれませんが、クルーとは異質な人間という意味で、はまっていました。

そして、3人の別れの場面。「なぜあそこで笑うのか」とおっしゃる向きもありますが、笑ってもいいんですよ。それだけたっぷりあるし、笑ったり感動したりしていく間に、盛り上がっていきます。ずっとシリアスだとそれに照れちゃうのが三谷さんだし、そこがわかっている、三谷さんの芝居をよく知っている3人。あのほどの良さが品がよくて素敵でした。ある種の俊寛。

実話だけど壮大なストーリーなだけに、歌舞伎とかミュージカルじゃないとショボくなってしまいそうで、歌舞伎座でこの座組で見られてよかったです。カーテンコール2回、何度もやらない歌舞伎座だけに、1回目から立ち始め、2回目はオールスタンディングでした。

【3幕目のみ幕見追記】

3幕目のみ、幕見に行ってきました。イルクーツクの場、エカテリーナの宮殿、そしてイルクーツクの別れ。エカテリーナ宮殿での愛之助にほろり(ここでのマリアンナのいい味)、そして豪華な謁見の場。

ドレスの貴婦人たちはもちろん、衛兵さんたちもみんな彫の深い顔にメイクしてて、立ち姿がすうっとしてかっこいい!一人一人もっとゆっくり顔を確認したくて時間が足りない!その間もポチョムキンと光太夫のやりとりに細かく反応するエカテリーナも見なくちゃいけないんですもん。

今回、やっとエカテリーナの背後に立つ小姓のくん確認。つか、あんなにすぐそばに立っていて、小姓役と知っていたのに目に入らなかったのは、猿さんエカテリーナ様があまりに神々しく光り輝いていたからなんですね。

イルクーツクの別れの場は、やはり2度目なのでじっくり見ることができて、3人の熱演と緩急にぐっときました。帰りたかったよなあ二人。間も数日前とは微妙に変わって、より効果的になっていたように思います。千穐楽まで、どんなふうに進化するんでしょう。

ところで、先日の一階前方席では気づかなかったんですが、愛之助と猿之助がマイクをつけているのがはっきりわかりました。全員がわかったわけではなかったんですが、いつも4階までちゃんと声が届くので、ちょっと驚き。三谷さんの細かい台詞を聞き取りやすくするためだったんでしょうか。そのうちに明らかになりますかね。

(おまけ・池田理代子「女帝エカテリーナ」)

201906_20190626234901 ところで、このお芝居、池田理代子先生の名作「女帝エカテリーナ」を知っているとより面白いです。タイトル通り、ドイツの貴族の少女だったエカテリーナが、ロシアの女王として君臨する一代記なのですが、国王始めダメ男しか知らなかった彼女が初めて恋した強い男がポチョムキン。二人が愛を確かめ合うとき、エカテリーナは、「もうこの広大なロシアを一人で治めなくていいんだ」と言うんですが、そのシーンが最高です。二人はそういう仲なのですよ。

 アンリ・トロワイヤの小説が原作なんですが、原作も面白いですがさすが池田先生という優れたコミック化でして、婦人公論だったかの連載なので表現も大人向けです。ポチョムキンは、エカテリーナとの恋が終わると、美形の若い男を女帝に与え、統治は続けるのですよね。その頃の話かな、などと思ってみておりました。

 

下町ダニーローズ「不幸の正義の味方」@サンモールスタジオ

 201906 志らくさんが定期公演をやっている下町ダニーローズの芝居、「不幸の正義の味方」です。弟子が稽古を見に来ないと激怒して二つ目を前座に降格させたことでTwitterで話題になり、そのハードルの上げっぷりが気になってチケットをとってみました。モロ師岡さんとかキム兄とかも出てるし!劇場は座席数100ほどのサンモールスタジオ。

自由席なんですが、ギリギリで行ったら最前列、舞台の真ん前の20センチくらいの高さのベンチ(座布団付き)の席。足を折り曲げてほぼ体育座りですが、足先は舞台の端についてます。舞台上の座席の経験もありますが、いや、近かった!キャストが前に出てくると、1mくらいですよ。

最初に志らくさんの前説というか最近の話。そして予告通り、芝浜のさわり。この近さでですよ。ほぼ大みそかの女房の告白だけで10分もなかったと思いますが、毒舌シニカルなおじさんが、純な女房の切々たる語り、目がかわいくて泣きそうになっちゃいました。

お芝居はとある箱根の旅館の一夜の話。ネタバレは避けますが、大人の大真面目な遊び心という感じで、こういうのをやりたい気持ちはわかります。志らくさんの中では全部繋がってるんだろうけど、落語やりたくて弟子やってる人達が、この芝居に積極的に関わろうとしないのもわかるような気がしました。でもそこが弟子だろうっていう志らくさんの気持ちももっとも、そりゃ会社のパワハラとはちがいますよね。

出てる役者さん、みなさんとっても個性的でした。知ってる人ばかりのような気がして、帰りにパンフレットで調べたらそうでもなかったっていうくらい、面白いところのある人ばかり。

主役は志らくさん、親友並河にモロ師岡(もともと好きな役者さん。顔大きいの生かしてました)、時の人木村祐一、昔から知ってる二丁拳銃の小堀裕之、動きが面白くて一番大変そうだったぜんじろう、吉本新喜劇に通じるようなコテコテ感のあった原武昭彦、すっきりといい男で美声の幸田友見、長身で迫力のあったコロンボデンゾ―、台詞のしっかりした声のいい奥村香里、小柄なかわいいアイドル小池美由。で、みんな思い出したんですが、消去法であの人が水島裕?全然面影がなかったんですが(熱演でしたけども!)…。

脚本としては、とくに前半、もうちょっとスピード感があればとか、もっと笑いをぶっこんでもとは思いましたが、でもこれだけの役者をそろえて、何かが起きるかもしれない、と期待して通うファンもいるだろうな、という舞台でした。

休演日、過去作品のビデオ鑑賞とサイン会とトークショーで、チケット持ってる人500円っていいサービスだなあ。行けない日で残念。

もひとつおまけ。前説で志らくさんが、蛍光テープの目印のこと、暗転のときのよすがだから、物置いたりして隠さないでね(←それくらい客席が近い)って言ってたんですが、真っ暗な暗転でもほんとに見えるんですよ。これかあと。そして、真ん前なのに、役者さんが位置変えて揃って座ったりする動きって見えないんですよね。暗転ってすごいなと思った次第でした。

 

劇団かもめんたる「宇宙人はクラゲが嫌い」@赤坂レッドシアター

201905_1  お笑いコンビかもめんたるの演劇ユニット劇団かもめんたる第7回公演「宇宙人はクラゲが嫌い」です。「愛のレキシアター」に続き、八嶋智人さんのTwitterで「まだチケットがある!」と知って連休中に取ってみたら、4列目センターとすごいいい席。行ってみたらぎっしり満員でした。

かもめんたるって、2011年に「爆笑バトルライブツアー」という相模大野のお笑いライブで初めて見たんですよ。その時は何だか方向性に迷いがある感じだけど、声もいいしいいなと思ってたら、2013年には「キングオブコント」優勝。作り込んだコントは好みなんですが、その後テレビで売れてないと言ってるのを見たこともありました。というわけで期待は高かったわけですよ。でもそれ以上に面白かった!いってよかった!

 海辺のクラゲが名物の町でうどん屋をやるヒデさん(八嶋智人)の店に集まってくる人々と、海にいる弟テツゾウ(岩崎う大)の場面が交互に出て、だんだん二人の関係がわかってくる話。なんて、雑なあらすじですが、面白い短い場がつながってテツゾウとヒデさんのことがわかっていくのが面白いところなので、あまり書かずにおきます。

八嶋さんはさておき、脚本・演出かつほとんど主演のう大くんがいいんですよ(このお名前、本名は宇内で、やはり「うだい」と読むんですね)。きゃしゃな体に、豊かな表情をたたえた大きめの顔がなんともペーソスを秘めたおかしみがあって、いるだけで面白い。見ているうちに、私こんなにう大くん好きだったっけと思ったくらい。

コンビの槙尾ユウスケくんもよかったし、出てくる人(10人くらい)みんな強烈でうざくって、でもわかる~な人たち、彼らを生かして少しずつ話が動いていく今現在ならではの脚本、う大くん天才だったんだ。

ほかの出演者は、劇団かもめんたる団員が、テツゾウの相方 小椋大輔、絵本作家 森桃子、坊主 土屋翔、ピンクのモフモフ 船越真美子。そしてクラゲ佐久間麻由、筋肉 四柳智雄(ピーチ)<この人自分でも演劇やっていて面白そうな人>、パート森田光(虚構の劇団)、ナイロン100℃の長田奈麻(まりやの母)。―― ネタバレ避けたので、後で思い出すための単語をつけておきました。私はわかる(笑)

八嶋さん、この劇団の芝居を観て、出演させて、と言って、別格なのにちゃんと溶け込んでいい芝居していて、カーテンコール盛り上げて、お客さん呼んで、なんていい人。3月山本耕史と愛のレキシアターやって、6月は猿之助、幸四郎たちと歌舞伎座に出てって、もういっそ八嶋智人になりたいです!

赤坂レッドシアターは、赤坂見附すぐ、赤坂グランベルホテルの地下の小さな劇場ですが、このホテルやこの通り、オープンテラスのいい感じのバーが多くて、外人さんも多くてここは日本?ってなってます。

(追記)

その後、う大くんが、八嶋智人に出演してもらうプレッシャーで脚本が書けなくなった時のことを書いたnote「宇宙人はクラゲが嫌いを振り返る」を読みました。この中に「お前しかお前をやれないのになんでお前がお前をないがしろにしてんだよ!」と気づいて開き直ったという部分があるんですが、超名言だと思います。この舞台のことを思い出すと、演者としても「う大くんしかう大をやれないというフレーズが思い浮かびます。あまりに気に入ったので、忘れないために追記しました。

「ピカソとアインシュタイン」@よみうり大手町ホール

 20190508 「ピカソとアインシュタイン」、川平慈英、岡本健一のこのチラシを見て、てっきりミュージカルだと思っていたんですが、スティーブ・マーティン(映画「リトルショップ・オブ・ホラーズ」にサド歯医者役で出ていた、サタデー・ナイト・ライブのコメディアン)の脚本によるストレートプレイでした。主役2人がダブルキャストですが、私が見たのは若手の方のブルー。

 舞台はモンマルトルのカフェ「ラパン・アジル」、常連ギャストン(松澤一之 )が店主フレディ(間宮啓行 )と話していると、アインシュタイン(村井良大が女性を待つのだとやってきます。シュザンヌ(水上京香 )は恋の相手ピカソ(三浦翔平)を待ちます。アインシュタインとピカソはお互いの専門の話を戦わせます。シュメンディマン(川平慈英)、メンフィスからやってきた派手な男(岡本健一)も現れて…ほかにフレディの恋人(香寿たつき)、画商サゴ(吉見一豊)。

スティーブ・マーティンは、ピカソほかのアートのコレクターでもあるそうで、絵に関するちょっとした台詞やスケッチの扱い方がうまく、創作活動や作品の評価に関する見識も感じられたほか、もちろん、アインシュタインの理論のエッセンスもうまく使われていて、とても知的な脚本だと思いました。

舞台に額縁があって、丸テーブルとカウンターのあるノスタルジックなカフェを囲っているのが効果的。キャストの容貌が個性的で、とくにおじさんたちがみんな渋くていいです。松澤一之は夢の遊民社での若い頃を見ていますが、期待以上の食えないじいさんになっていて(ほめてる)、最高でした。

と、見た目はいかにも面白そうなお芝居になっていて、誰がどう悪い(強いていうなら水上京香は悪くはないんですが、この役には若すぎてちょっと荷が重く、長台詞が単調になってた)わけではないんですけど、構造やストーリーはあまりなく、前述のような知的なセリフの間で、雰囲気とかちょっとした間で笑わせるというこの芝居のスタイルと日本語との相性なのか、あまり笑えず、ああ、このお芝居どこにいくのという感じになってしまいました。もっとアドリブきかせて即興感のある感じでやったらよかったのに。

ローズ版ではアインシュタインを演じている川平慈英は、ブルー版での出番の短いシュメンディマンではけっこう自由にやっていて、その時は観客が楽しんでいるのが伝わってきました。岡本健一も好きな俳優さんですが、この役もクセがあってよかったです。

残念な点のひとつは、セクシーなセリフや場面も多いのに、このお芝居のキャスト、ちょっと色気が足りないんですよね(「She Loves Me」がそのあたり徹底していてうまかったから尚更そう感じたのかも)。ピカソは女好きという設定なんですが、三浦翔平のすくすくと育った健康な雰囲気が、全然そう見えない。名前だけは聞いたことがあるなあと思ったら、桐谷美玲ちゃんと結婚したばかりの好青年じゃないですか。今の彼にはそれは美点なので、全然悪いことじゃないような気もします。

ちょっと感動したのが、ラスト。セットに最後にはちょっとびっくりする変化があって、そしてとても美しかったです。これから見る方お楽しみに。美術 伊東雅子さん、照明 日下靖順 さんでした。

 

NODA・MAP「表に出ろい!」・ドキュメント「超・演劇人 野田秀樹 密着555日」

201904_3     NODA・MAP番外公演「表に出ろい!」を映像で見ました。2001年からの野田版の歌舞伎が好評を博した後、2010年に勘三郎・野田秀樹の最初で最後の共演となった現代劇です。

 能楽師の父(勘三郎)は、東京ディスティニーランドが大好きで、友人とパレードを見に行くつもりですが、その日は母(野田秀樹)が、ジャパニーズのライブに行く日。愛犬のお産のために、留守番を押し付けあう夫婦。娘(黒木華)が帰宅しますが、友達と限定グッズの列に並ぶために出ていくといいます…。

実は、NODA・MAPは家で見るにしても、一人でゆっくり余裕のあるときに見たいと思ってしばらく先延ばししていたんですが、登場人物は3人だけ、家のリビングでの軽快なやりとりで、構えずにみられる芝居でした。

舞台装置(堀尾幸雄)は、写真の衣装と同じ色調(ひびのこづえ)のカラフルなもの。このお二人、ずっと野田作品を支えていますが、毎回多彩で美しい。

新鮮だったのは、最初の夫婦の、どちらが出かけるか、いつどちらが連絡したのか、のやりとりのリアルさ。これ、そのまま子どものいる夫婦の会話ですよ。こんなに生々しい、でも面白い台詞、書こうと思ったらすぐ書けちゃうんですね。

もちろん勘三郎さんの勘のよさとか天性の愛嬌とか、こういうお芝居でもすごい役者だと思いますが(ちょっと汗かきすぎなんだけど)、野田秀樹の母役がすごい!

若い頃の遊民社の彼は、走り回り、ボケとツッコミを一人で叫び、一座をひっぱるというか引きずり回す感じで、とくに20代でもおばさん役が大好きでした。ここ数年再見するようになった野田秀樹は、いい役者に主役を譲り、芝居のスパイス的な役回りで、もう年だし仕方がないな(失礼)なんて思ってたんですよ。

しかしこの芝居は3人だけなので、往年以上の野田秀樹成分の濃さ!信頼する勘三郎さんとがっぷり四つに組んで、緻密な脚本を即興的な雰囲気で(きっちり演出されているのかもしれませんが)演じる楽しそうな野田秀樹。相変わらずの柔らかな身体、しかもおばさん役。

そして黒木華!京都造形芸術大在学中にオーディションで、この作品の前のNODA・MAP「ザ・キャラクター」のアンサンブルでデビューした直後ダブルキャストでの娘役。声、台詞、自分の信念を両親に主張する迫力、軽い動きと、この二人を前にして一歩も引かない熱演で、もう完全に出来上がってます。

この作品、最後まで笑いながらも、前作「ザ・キャラクター」の狂信集団を見た人は、設定がより深く理解できるということで、「人それぞれが信じるもの」というテーマをしっかり描いていてさすが。野田秀樹の3,4人くらいのこの規模の芝居、ぜひまた。今度は生で見たいものです。

 

追記・ドキュメント「超・演劇人 野田秀樹 密着555日」

このすぐ後に、WOWOWの野田秀樹の密着ドキュメントを見ました。さすが演劇に力を入れているWOWOWさん、超・演劇人とはよく言った。

まず2017年の歌舞伎座での「野田版・桜の森の満開の下」のリハーサルに始まり、松たか子も参加したワークショップ、前述の「表に出ろい!」の英語版の上演ドキュメント、2018年の「贋作 桜の森の満開の下」の舞台作りとパリでの上演と、最近見たものばかりで興味深かったのと、舞台裏、野田秀樹のインタビューがたっぷりで、ものすごく面白かったです。

野田版桜の森では、映画版パンフレットに載っていた、「高いところが平気な夜長姫七之助と、怖がる耳男勘九郎」が実際に見られましたし、「表に出ろい!」は前述の2010年版と同じところと、イギリス人俳優(キャサリン・ハンター、グリーン・プリチャード、しかもこの二人が父と娘を、男女逆転で演じるというしかけまで。ちなみに父の職業は能楽師ではなくてシェイクスピア俳優!)ならではの違うところが明確に見えました。ルーマニアの演劇祭で上演したのですが、この演劇祭自体がとてもきれいで面白そう。

贋作桜の森は、紙やゴムバンドを使った演出ができあがってくるところ、そしてパリでの上演の苦労。

野田秀樹自身の精力的な仕事ぶり、密度の濃いことば遊びの綴られる芝居を英語で上演する、しかも主役の一人は自分というのは本当にすごい。とくに舞台装置のしかけや字幕の段取りなどの苦労は、以前読んだ「野田秀樹」のムックにも率直に語られていましたっけ。

演出家らしく、自分の仕事を無駄のない詞で的確に説明する姿もかっこいい。ついでにファッションも遊び心があって凝りすぎなくて好みでした。

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