2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

最近のトラックバック

演劇(ストレートプレイ)

BD「じゃじゃ馬馴らし」

Photo    猿之助の亀治郎時代の軌跡を追ってきて、どうしても見たくなった蜷川幸雄の「じゃじゃ馬馴らし」(2010年10月)。これまで蜷川シェイクスピアシリーズのBOXしかなかったんですが、単品のブルーレイがオンデマンド(注文生産)で売られるようになったので、入手しましたですよ(「ベニスの商人」といっしょに!)オールメールシリーズです。

美人でしとやかな妹のビアンカ(月川悠貴)と比べて、じゃじゃ馬のカタリーナ(ケイト、亀治郎)には求婚者はいませんが、父親のミノーラ(磯部勉)は、カタリーナの結婚が決まらなければ、ビアンカは誰にもやらないと言います。お金目当てのペトル―チオ(筧利夫)は、ケイトに求婚し、彼女を眠らせない、食べさせないといろんな手段で手なづけ、従順な妻にします。ビアンカの家庭教師に扮したルーセンシオ(山本裕典)はビアンカの愛を得ますが、ビアンカは実はさほど従順な妻ではなく…。

蜷川さんのシェイクスピアですから、キャスト隅々に至るまで、きっちり世界観を共有しているというか、日本でやるシェイクスピアに必要なバタ臭さ(特に冒頭の、貴族になったと騙されるスライとか)を備えて演じているんですが、亀治郎だけは別次元。「歌舞伎役者の自分が呼ばれたからにはそういうものを見せねば」という信念よろしく、見得は切るわ奇声は発するわ、やりたい放題です。側転からのパンチには驚きました。

しかし、亀治郎の登場場面を見ていくと、実はきめ細かにカタリーナの心情を演じているのに気づきます。そもそも、この芝居、じゃじゃ馬のカタリーナがペトル―チオにやや乱暴に押さえつけられて、ラストに女は従順が美徳という演説をぶつのが、女性蔑視で不快という感想を持つ方も多いようです。

でも亀治郎のカタリーナ、じゃじゃ馬ぶりは、妹ばかりが周囲から愛される状況への反発のように見えるし、ペトル―チオに触れられて心が動かされるんですよ。たしかにラストの演説は文字で書けばあまりに男尊女卑にもみえますが、ぎすぎすしないで夫婦仲良く、というだけのような気もするし、このまま堂々たるカタリーナがただ従順なだけで終わるようにも見えません。そこは、亀治郎の工夫なのか(この方、女性の生き方に興味があるようには見えないので)、蜷川演出の妙なのか。

カーテンコール、ドレスに沈み込むお辞儀をしたりして、亀治郎ファンには必見の舞台だったと思います。

カタリーナに比べると、ほかの人物は深みがなくて類型的、ペトル―チオの筧利夫は達者で熱演でしたが、もうちょっと愛嬌や優しさがないと、ただの暴君でカタリーナがかわいそうな印象。山本裕典は、先日事務所をクビになってしまいましたが、こんな大舞台でいい役をもらっていたのに残念ですね。この山本ルーセンシオの従者がなかなかいいなと思ってみていたらば、この人も数年前に寝過ごして主演舞台をキャンセルし、活動自粛していた田島優成だったようです。

ところで姉妹の父ミノーラの磯部勉さんって、昔NHKの「風神の門」というドラマでいいなと思った方ですよ。舞台でずっと活躍されてたんだな、と懐かしく思いました。

劇団民藝「『仕事クラブ』の女優たち」@三越劇場

Photo  劇団民藝といえば、宇野重吉さんらの、新劇界の老舗劇団ですが、先日三越でこの素敵なポスターを見かけて、行ってみました。主演の奈良岡朋子さん、子どもの頃からドラマでキビキビした女医さんや作家を演じている姿が大好きで、まさか88歳の今、お元気な姿を舞台で見られるとは。

「『仕事クラブ』の女優たち」は、青木笙子さんのドキュメンタリーを原作とした長田育恵さん脚本の芝居で、1930年代のプロレタリア劇団の女優たちを主役にした作品です。

築地小劇場の雑然とした楽屋で、演出補の橋本(平松敬綱)と、合同公演をすることになった左翼劇団の五十嵐(神敏将)が、警察に上演許可をもらいにいった池田(天津民生)を待っています。女優達、雪枝(桜井明美)、えつ子(吉田陽子)、たまみ(藤巻るも)、淳子(中地美佐子)が、やってきて忙しく準備をします。上演許可は下りましたが、台本は無残にも半分以下に削除されてしまいました。通りすがりの縁で、賄いなどを手伝うことになった老女のぶさん(奈良岡朋子)。当初は冷ややかに見得ましたが、さりげない優しさが彼女たちの心を癒します。演劇だけではやっていけない彼女たちは、アルバイトを受け付ける「仕事クラブ」を立ち上げ、マネキンや筆耕や印刷、裁縫等得意な仕事で演劇を続けようとしますが、特高の締め付けが厳しくなってきます…。

日本橋三越6階の高級宝飾や絵画の売り場を抜けるとそこはレトロな三越劇場(なんと90周年だそうです)。シャンデリアや劇場天井のステンドグラスがステキです。ホワイエには栄太郎の和菓子を売ってたりします(ちなみに、デパートの中の劇場らしく、16日間の上演期間のうち、ソワレは2日のみ)。

そういう劇場に忽然と現れた戦中のプロレタリア劇団。丁寧につくられたリアルなセットと、俳優さんたちが皆さん、ちょっと古風な、裕福ではないけれど昭和の折り目正しさを備えた大人たちをしっかり演じていて、まるでタイムスリップしたように、この世界に引き込まれてしまい、休憩込の3時間弱、女優達と一緒に泣き笑いしました。日本の俳優さんの層は厚いんだなあ。

とくにこのお芝居、主たる女優さんたちが魅力的です。繊細な美人女優の雰囲気の雪枝、仕事がデキてサバサバしている淳子、元気のいいたまみ、人気俳優の夫に苦労するえつ子。そこに、お年は召して小さくなりはしたものの、目の輝きや肌のハリはとてもお年に見えない奈良岡さん。抜け目なく見張りをし、劇団員の世話をこまごまと焼き、セリフもはっきりしていて、ああ、奈良岡さんだ、と感動でした。

時代の匂いがするのは男性たちも同じで、純粋な元帝大生の平松さんなど、とっても雰囲気が出ています。一生懸命ではあるけれど、理想ばかり語って、現実味や生活力のない男たち、セリフでしか出てこない、看板役者のえつ子の夫、投獄されたままの淳子の夫など、女優たちが頼れる力強い男はいません。

ときに仲たがいしながらも、友情で結ばれた女たち、つらくても、自分の選んだ道だと堂々としている彼女たちと見守る奈良岡さん、たまにはこういうお芝居もいいな、と温かな気持ちで劇場を出ました。

ナイロン100℃「ちょっと、まってください」@本多劇場

Photo  ケラリーノ・サンドロヴィッチのナイロン100℃公演、「ちょっと、まってください」です。本多劇場、久しぶりに行ったら椅子が座りやすくなってました。2015年に椅子を更新したそうで、ロビーに33年間使っていたという以前の椅子がおいてありました。これはありがたい。

(以下、ストーリーにはさほど触れませんがちょっとネタバレ含みます)

さて、「グッド・バイ」のようなウエルメイド、「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない~」のようなナンセンス、「ワーニャ伯父さん」のような古典と、最近ケラを見始めた私でも驚く幅広い作品を生み出している鬼才ケラさん、今回はどんな芝居だろうと思っていましたが、なんと不条理喜劇。

見始めてすぐ、いかにも「演劇」というリビングのセットと言葉の意味のずれで展開していく流れで、あれ、別役実みたいだなあと思っていたら、劇場でもらったチラシ(文章だけ!)にケラさん自身が、「劇団で初めてで『不条理喜劇』を目指したもの」であり、「御名前を挙げ、深い謝意を称せねばならぬのは、他ならぬ、劇作家の別役実さんであります。」と書いてあって、幕間に読んで感動しました。

そうはいっても、電信柱以外の(多数ちりばめてあった)オマージュはわからなかったんですが、とにかく作品世界は別役さんの不条理劇の世界ながら、それがちゃんと今の、ケラさんとケラさんの信頼するキャストたちの表現になっていて、また一つ、ケラさんの才能に感嘆いたしました。

たとえば、セットは廻り舞台で2パターンなんですが、高度なプロジェクション・マッピングや照明が効果的に使われています。いつもケラさんの舞台映像は高度なのに使い方のほどがよくてすごいなと思うのですが、ワンピース歌舞伎の本「ワンピース偉大なる世界」で、映像の上田大樹さん、ケラさんの舞台を手掛けていると知って、感動しました。いや、素晴らしいですよ。

セリフが本当におもしろい。膨大なセリフをやつる役者さんたちの声と滑舌のよさ、不思議なキャラクター、小さなどんでん返しの繰り返し。ゾンビのようなメイクが、歌舞伎で化粧がその役を現すのを連想させます。

よく見る方としては、何といっても三宅弘城(父親)、犬山イヌ子(母親)、峯村リエ(ラーラ)、大倉孝二(乞食の兄)、水野美紀(エミリー)、マギー(使用人)、みのすけ(乞食の父親―歌がうまかった!)。ほかに遠藤雄弥(ピンカートン)、村岡希美(乞食の母親)、藤田秀世(乞食の祖母)、小園茉奈(ユードラ)。皆さんのチームワークというか、コンビネーションがとってもよかったです。

(大倉孝二さんって、長身でとってもかっこいいんですね。「新選組!」の勘定方や面白い役が多くて気づきませんでした、ごめんなさい)

15分の休憩をはさんで3時間15分。まったく長いとは思いませんでした。ああ、この舞台、見られてよかった。

「オーランドー」@KAAT

Photo    KAATの芸術監督、白井晃さん演出の「オーランドー」です。
イギリスの作家バージニア・ウルフの小説をアメリカの気鋭の脚本家サラ・ルールが2003年舞台化したものですが、この方、当時30歳前、なんと才能のある人なのか、その後トニー賞にもノミネートされています。という作品の背景は全く知らなかったんですが、このチラシと白井さん演出ということで、期待していました。白井さん、先日歌舞伎座の「桜の森の満開の下」の幕間で至近距離でお見掛けしたんですが、すらりとした目の鋭いお洒落な方で素敵でした!

オーランドー(多部未華子)は、16世紀、エリザベス1世(小日向文世)に寵愛された青年貴族、ロシアから来た美女(小芝風花)と恋仲になり、そしてコンスタンチノーブルに公使として赴任します。ある日、目覚めたオーランドーは女性になっていることに気づき…。

シンプルで映像をうまく使った舞台装置(松井るみ)、オーランドー以外のキャストは、語り手であり、次々に役割を変えて、長い年月を越えて生きるオーランドーの生涯を描いていきます。小日向さんの持ち味もあって、舞台は寓話的で面白いんですが、妙に深いというか、男と女の境目って何だろうと、ぐぐっと考えさせられる芝居です。手練れの演出家が、いい俳優を使って挑戦的な素材を扱うとこうなるんだなあと思いました。

多部未華子って、テレビドラマでも好きな女優さん。こういう舞台だと、若い女優はドラマより叫んでしまうのはしょうがないと思いますが、それはそれとして、彼女のバランスの取れた美しさが魅力的で、光っていました。とくに女性になるシーンは見もの。

小日向さんは前述のとおり、どこにいても面白くてすごすぎます。年齢も不詳な若さ。「神奈川芸術プレス」の小日向さんのインタビューによれば、前から一緒に仕事をしたいと言っていた白井さんと、偶然新幹線で会い、その場で白井さんがパソコンを開いて温めている企画を見せ、小日向さんがその中から「オーランド―」を選んだそうです。ああ、想像するとわくわくするような光景ですね。

語り手たちは戸次重幸、池田鉄洋、野間口徹と、いずれも活舌よくて心地よい3人。ロシアの美女と語り手で活躍の小芝風花(「あさが来た」であさの娘でした)も新鮮で、よかったです。

そして、ピアノ、管楽器、パーカッションの3人の生演奏が効果的でした。白井さん、次回作も楽しみにしています。

幸四郎の「アマデウス」@サンシャイン劇場

Amadeus    再演されたら、とにかく絶対に見ようと思っていた幸四郎さんの「アマデウス」です。

ピーター・シェーファー原作、ロンドン初演1979年、ブロードウェイ1981年(トニー賞受賞―「モーツァルト」の記事の下の方をご覧ください)、映画1984年大ヒット、という歴史を持つこの作品、本当によくできた、過不足のない人間ドラマです。

日本では早くも1982年に幸四郎さん主演で上演されています。このときのモーツァルトは38歳の江守徹さん、名優で舞台自体も好評だったようですが、ちょっとおじさん過ぎる感じ。映画のトム・ハルスの怪演を思い浮かべると、この後1995年から2004年までに3回演じた染五郎(95年は22歳!)の方がぴったりきます。つか、この役ほんとに染ちゃんに合ってたはず!

で、その後の悪くなかったであろう武田真治の後、今回のモーツァルトは、ジャニーズWESTの桐山照史。「あさが来た」での、おっとりした跡取り榮三郎を、くっきりと演じていた彼なので、ある程度期待していました。

さて、舞台は老いたサリエリ(幸四郎)の独白、そして回想で始まります。老人から壮年への切り替わりが鮮やか。音楽と神に身を捧げながら、才能は与えられなかったサリエリ。俗物というか平凡な人間であるサリエリを、幸四郎らしい、多彩な声で、ときに軽妙に、深刻に演じます。ときどき交じるイタリア語も一番流暢(意味はわからないんですけど)。堂々たる容姿もあって、改めて、現代劇の俳優としての凄さを感じました。歌舞伎をやっていなかったら、演目の選択のセンスも含めて、本当に劇界の巨頭となっていたことでしょう。

「ヴェニスの商人」の猿之助のような、歌舞伎そのものを感じる場面は少ないんですが、目の動きはやはり歌舞伎のものですし、驚いたのは、「仏倒れ」!長身の幸四郎さん(御年75歳!)が 突然バタッと見事に倒れたのは大迫力でした。幕間で、年配のご夫婦が、「やっぱり幸四郎は歌舞伎よりこっちよね、楽しそうに演じてる」とおっしゃっていたのが、その通り、と密かにうなづいておりました。しかし、先日見たばかりの「幡随院長兵衛」の吉右衛門さんを思い出すと、容姿と実力を備え、70代の今でもこれだけのものを見せてくれるご兄弟、すばらしいです。

そして、桐山くんもさすが力演。1幕の能天気なモーツァルトのセリフも動きもキレキレでしたし、2幕の困窮しながらも自分の才能を信じている切なさをしっかり演じていました。演出も幸四郎さんですから、その熱演をみながら、半端なことはできないと思ったことでしょう。コンスタンツェの大和田美帆も、はっきりしたきれいな顔立ちで力演でした。

見る前は、なんとなく3人芝居なのかと思っていたんですが、皇帝や楽師、サリエリの愛人や観客など、出演者はけっこう多数。立川三貴さんはじめ、隙のないみなさんでしたが、配役は出ていませんね。皇帝の方、成田三喜男さん的な妙な気品があってすてきでした。

観客は、意外に桐山くんファン多数。でも、「あー、なんか本物を見た、って感じ」と口々に言うのを聞いて、(そうだよね)とうなずく帰り道でした。

(いつも載せているチラシ画像、ほんとは桐山君と大和田美帆の3人なんですが…松竹サイトでもこれなんですね…)

(追記)

10月15日の情熱大陸は、アマデウス上演前後の幸四郎さんでした。稽古時の幸四郎さんの緻密さ、やはり隅々まできめ細かい演出をなさっていて、これでは桐山くんも大和田美帆さんも、アンサンブルも隙のない演技を見せてくれるはずです。

今でもダンディな幸四郎さん、さすがに1日の稽古や終演後にはお年を感じさせるところもあるんですが、実際に見た舞台でのエネルギーはすごいものがありまして、本当にいい舞台を見せてもらった、と改めて思いました。

「百鬼オペラ羅生門」@シアターコクーン

Photo   主演は柄本佑と満島ひかり、羅生門ほか芥川龍之介原作、イスラエルの鬼才インバル・ビント&アブシャロム・ポラック演出・振付・美術・衣装という、かなり異色の舞台、「百鬼オペラ 羅生門」でございます。

ビント&ポラックさん、かなり美術的な感覚の優れた方たちのようで、舞台の枠に描かれたイラストがすてき。グッズも、マスキングテープ、ハンカチ、タイツ、豆皿と、そのままおしゃれ雑貨屋に並んでいそうないいモノでした。もちろん、舞台背景、不思議な植物なども効果的。

お話は、芥川の羅生門、藪の中、鼻、蜘蛛の糸をモチーフに、羅生門の男&山賊多襄丸(柄本佑)、女(満島ひかり)、夫(吉沢亮)、羅生門で死人の髪を集める女&男の母(銀粉蝶)、鼻の内供(田口浩正)、内供の弟子(小松和重)ら主要キャストと、鳥や死人やいろんなものに扮するアンサンブルのダンスで進んでいきます。

芥川は大好きだったので、これらの短編がどう分解されても大丈夫、自在な表現自体を楽しむという舞台で、特にアンサンブルは、モダンバレエというか、昔体育でやった創作ダンスが高度になるとこうなるのかという豊かな表現で、ほんとに素晴らしかったです。

柄本佑、ちゃんと見たのは「あさが来た」だけですが、この方、背が高くて、顔が小さくてとってもステキ。いやー、この舞台第一の収穫でした。満島ひかり、舞台では初めてですが独特の雰囲気、華奢ながら力強い演技、若干絶叫するとセリフが聞きづらいところはありましたが、惹き付けられるものがありました。銀粉蝶さん、見るたびにまったくちがう雰囲気はさすが。

満員の客席、立ち見も多数で、評判もよいのでしょうが、今の私としてはですよ、心を動かされるまでには至らなかったというか、それは、やはり演奏はともかく(楽器も凝っていていい音が鳴っていました)、歌が弱いんですよ。ただ歌っているだけで歌う意味が感じられない使い方なんですよね。ああ残念。

そして、キャストの無国籍な衣装が、凝った舞台や照明と比較するとやや底が浅い感じがしました。前述のとおり、芥川の作品世界がわかっていれば理解はできますが、羅生門の死と生が隣り合わせであるという状況は、やっぱりちょっと歴史的な背景があってこそなので、時と場所がなくなると、説得力に欠けるんですよね。もちろん、モチーフとして使ったうえで表現したいものをしたいように実現した舞台なんだと思いますが、感心はしますが感動はしなかった、ということかな。

「百鬼オペラ」というタイトルから、ミュージカル的なものを期待しすぎたのかもしれませんね。笑いもほとんどなかったしね。

KERA meets CHEKHOV 「ワーニャ伯父さん」@新国立劇場小劇場

Photo    ケラリーノ・サンドロヴィッチがチェーホフ作品を演出するシリーズの第3弾ということで見てまいりました。新国立の小劇場、小ぶりで見やすい劇場ですが、舞台が客席に向かってでっぱっているというか、袖の前の方が解放されていて、舞台と客席の一体感があります。下手にギター演奏の伏見蛍さん。うん、生演奏はやっぱりいいです。

さて、「かもめ・ワーニャ伯父さん」という文庫本、チェーホフ好きだったし絶対読んでいるはず、と思ったんですが、まったくストーリーは記憶にありませんでした。

ワーニャ伯父さん(段田安則)と姪のソーニャ(黒木華)が切り盛りするロシアの田舎の農園に、退官した大学教授のセレブリャーコフ(山崎一)と、若く美しい後妻エレーナ(宮沢りえ)がやってきて、静かな暮らしを乱します。ワーニャと友人の医師アーストロフ(横田栄司)は、エレーナに惹かれますが、地味なソーニャは、アーストロフに恋していたのでした…。

このほか、小野武彦さんや母の立石涼子さん、ばあやの水野あやさんと、見た目でも雰囲気のある実力派揃い。シンプルなセットと小さな空間、そして照明(関口裕二)が秀逸でしたですよ。ろうそくと部屋の明かり、窓の外の表現や、女優を美しく照らず下からのライト。宮沢りえが光り輝いてました。

さて、お話はですね、淡々としてまして、時々くすっと笑わされるんですが、そちらを特に狙っているわけではなく、特に1幕は、セレブリャーコフが何者?そしてワーニャ伯父さんは何してる人?伯父さんって誰からみた伯父さん?ソーニャはなんで父(セレブリャーコフ)じゃなくて伯父さんとここで働いているのか、などと疑問が次々に浮かびます。

それはともかく、宮沢りえの美しいこと!彼女としてはとても普通の女性の役柄ですが、その分、彼女の確たる実力を改めてしる思い。そして黒木華、やっぱりいいなあ。生き生きと愛らしいんだけど「私は美人ではない」というセリフが無理でもない感じ。

2幕はちょっとお話が動いていきます。エレーナたちは去っていきますが、やっぱり何でワーニャ伯父さんとうら若い(失恋もした)ソーニャが農園で働いてセレブリャーコフたちに仕送りしなきゃいけないのかも、今の感覚からはちょっと納得いかなくて、すっきりしない。

最後、「耐えて働いて、そして時が来たら死んでゆっくり休む」という趣旨のソーニャのセリフが有名なんだそうですが、かなり豪華な農園の屋敷に住んでるわけですからね(持ち主はソーニャ。でも切り詰めて仕送りしているらしい)、日本の貧しい庶民のお話とはちがうんですよねえ。

アーストロフが自然派で1000年後のために植林したり、当時の農民の衛生状態を憂えたりしているのは、現代に通じている(初演は1899年ですよ!)、とは思うんですが、肝心のお話がすとんと落ちなかったのは残念でした。

「グローリアス!」@DDD青山クロスシアター

Photo   篠井英介さん、ドラマでは敵ボスの気弱な片腕みたいな役どころが多いですが(失礼)、現代劇の女形を得意としているというのを知り、見てみたい、と思っていたところ、しゃれた3人芝居をやるというので行ってまいりました。DDD青山クロスシアター、200席の小さな劇場で、今はなき渋谷ジァンジァンを思い出すような、舞台と客席が一体となる空間でした。

「グローリアス!」は、英国のピーター・キラー脚本による、実話を基にしたお芝居です。ペンシルベニアの資産家の娘フローレンス・フォスター・ジェンキンズ(篠井英介)は、致命的な音痴ですが、それを認識しておらず、父の死後、遺産を基にコンサート活動をしています。伴奏のため雇われたコズメ(水田航生)は、戸惑いながらも彼女のサポートにやりがいを感じていきます。そして、カーネギーホールでの一世一代のコンサートの機会がやってきますが、そのチケットの売れ行きは…。

篠井さん、美しいんですよ!そして上品。これ、女性がやったら、少し痛々しい雰囲気があると思うんですが、彼が演じることで、安心して見られます。そして、音痴の表現の上手いこと!もちろん、音痴って聞き苦しいのですが、その加減が絶妙で、不愉快までは至らない、一瞬心地よいくらいの歌い方。

水田くんは、テニミュ出身のイケメンで、「ロミオとジュリエット」や「JAM TOWN」でキラキラしたところを見せてくれた人ですが、フローレンスにあきれながらも、だんだんに優しさが滲み出ていく感じがよかったです。

そして彩吹真央は、メキシカンのメイドやフローレンスの友人など各場面で違う役を熱演。この方、ミュージカルコンサートでも、気取らない温かみのあるお人柄だなあと思っていたんですが、その良さが出ていて、とってもよかったです。メイドのスペイン語?は驚愕でした。

生のピアノ演奏に乗って、笑っているうちにコンサート場面。あざとくはないのに、泣いちゃいました。英国の脚本家は、人生のほろ苦さを笑いに乗せて描くのがほんとにうまいなあ。

八月納涼歌舞伎第三部「贋作 桜の森の満開の下」

2017082     納涼歌舞伎第3部は、野田秀樹の「贋作 桜の森の満開の下」です。野田秀樹の歌舞伎は、「研辰の討たれ」や「鼠小僧」と、元の歌舞伎を彼の演出でというものしか見たことがなく、初演が夢の遊眠社であった野田オリジナル脚本を歌舞伎で上演するのは初ということで、楽しみにしておりました。

行く前に、この脚本のモチーフとなった坂口安吾の「桜の森の満開の下」と、「夜長姫と耳男」を読みました。坂口安吾なんて、文学史でしか知らず、初めてです。うわあ、もう日本版青髭というか山姥とか鬼とかのおどろおどろしさ満開。

しかしさすが野田秀樹、2つの小説をうまく融合して、「鬼の女」を中心に据えつつも、国造りと戦いの視点を織り交ぜてスケールを大きくして、言葉遊びもたっぷり。原作の強烈さは若干薄まっていますが、芝居としてのエンタテインメント性はずっと上がったという感じです。

筋書きでは、律義にこの作品の過去の配役を掲載してくれています。主役の耳男(勘九郎)は野田秀樹、堤真一、マナコ(猿弥)は上杉祥三、羽場裕一、古田新太、赤名人(片岡亀蔵)は浅野和之、荒川良々、ヒダの王(扇雀)は松澤一之、野田秀樹と、主要キャストの濃いこと。

しかし、今回の歌舞伎版、改めて歌舞伎役者はすごいと思いました。野田作品って、たいてい野田秀樹が一番面白くて、いい役者が熱演していても、いい役者だとは思うものの、どうしても野田秀樹の芝居を表現するためのパーツという感じがするんですよ。しかし歌舞伎版は、役者が芝居のパーツでありながらやっぱり歌舞伎役者としての光が強烈で魅力的。そこは役者を見る歌舞伎、という気がしました。野田秀樹の分身のような動きをする勘九郎、猿弥、扇雀、染五郎

一方で、野田作品をみたことがない歌舞伎の観客にとっては、なぜこんな早口でさほど意味のない(ように見える)言葉遊びをじっと聞いていなければいけないのか、と拒否反応があったと思います。この作品を歌舞伎でやるのは勘三郎さんとの約束だったそうですが、コクーンならまだしも、歌舞伎座でとは、すごい二人。

ということで、野田ファン、歌舞伎ファンの私には、至福のときでした。

野田歌舞伎常連の扇雀さんはもちろん、勘九郎(なんて舞台で魅力的な身体なのかと改めて思いました)、七之助(終始軽やかな夜長姫、ラストの声は必聴)、染五郎(私の好きなかっこいいメイクの染ちゃん、弥次さんと同じ人間とは思えない)、彌十郎、新悟、亀蔵の阿弖流為チームは、こういう作品にフィットしているし、巳之助、吉之丞、梅枝、も大活躍。とくに猿弥の活躍も特筆もので、舞台でゴムマリのように弾む姿は、野田さんが連れていきたいと思うのでは、と思いましたですよ。そうそう、芝のぶも2役を強烈に演じていました。

衣装も鬼の面も歌舞伎ならではの豪華さで、素晴らしかったですし、アンサンブルの人数が多かったのも贅沢。ああ、楽しかった。

ややケチをつけるとすれば、古い作品らしく、ラストが少しだけ冗長感があるのと、やはり録音の歌曲に違和感。せっかくなら、過去の上演とちがっても、今回はここまでやるなら、生の笛か清元がよかったかな、と思いました。

「嵐が丘」@WOWOWライブ

Photo_2     堀北真希のキャサリン、山本耕史のヒースクリフで2015年に日生劇場で上演された「嵐が丘」の再放送です。チラシ見て興味は持ったんですが、ミュージカルじゃないしね、と行かなくてちょっと後悔した舞台でした。

原作の小説を読んだ中学生のときには、なぜお嬢さんのキャサリンがそんなにヒースクリフに惹かれるのかわからず、題名のとおり荒涼とした雰囲気の話だなと思った記憶があります。「ガラスの仮面」の劇中劇は、子役を演じたマヤが激しく魅力的で、大人を食ってしまうという話でした。

堀北真希、このときほんとに美しい(本当はこの放送の前後のインタビューのときの方が透明感があってきれい)、「映像では絶対に私には来ない役柄」と言う通り、柄ではないんでしょうが、技巧でなく体当たりでキャサリンを演じています。

山本耕史はさすが、舞台での美しさ。この舞台、エドガー伊礼彼方やヒンドリー高橋和史も素敵なんですが(ともに的確に好演)、影のある豊かな表情、オーラはひいき目でなくとも凄みがあります。とくにキャサリンが赤いドレスで帰って来た時の表情!キャサリンと同じくらいの歳というのにも無理がない(さらにひいき目)。

堀北真希は、インタビューで、山本耕史と戸田恵子は、最初から役として完成していて、演出の指示に従ってアレンジする程度だったのに驚いたと言っていますが、そういう人なんだと思います。「メンフィス」で耕史と共演している濱田めぐみも、「現場での判断が早くて的確」と語っています(まるで猿之助と言われていることが同じ)。

その戸田恵子、彼女にあて書きしたようなぴったりの役で、出ずっぱりで複雑な物語を語ります。彼女の明るさや強さがなかったら、この物語はずっと荒んだ雰囲気で息がつまったでしょう。ほかに、ソニンのイザベラも熱演でしたし、召使の小林勝也もよかったです。

子役がかわいらしく(ちょっと上品すぎるくらい)、回想シーンは大人がアテレコしたりして、時の流れの描き方がうまくて感心。演出は誰、と思ったら、G2さんという方です。かなりの力量と思われますが、なに、ジーツーって。どんな方なんでしょう。

芝居の後半のキャサリンの死後は、ヒースクリフが荒れているばかりなのでちょっとやりきれないんですが(墓のシーンはリアル)、ラスト近くの瀕死のキャサリンとの回想で盛り上がります。

この大変な舞台で1カ月、なれそめには十分ですね。

より以前の記事一覧