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演劇(ストレートプレイ)

「6週間のダンスレッスン」@よみうり大手町ホール

2018106       大好きな草笛光子さんがライフワークとおっしゃる「6週間のダンスレッスン」です。今年1月の日経「私の履歴書」 でも、映画全盛期の人気女優ながら、舞台を大事にされている生き方に感銘を受けていましたが、「グレイ・ガーデンズ」以来のお芝居を拝見できるとは。

この作品は、2001年初演のリチャード・アルフィエリの二人芝居「Six Dance Lessons In Six Weeks」。草笛さんは、2006年以来、7回演じています。マイケル役は今村ねずみ、太川陽介、齋藤直樹、星智也、と変わって、今回は松岡昌宏。演出は鈴木勝秀。タイトルに「新」がついています。

アメリカ南部の高層マンションに住む68才のリリー・ハリソン(草笛光子)は、6週間の個人ダンスレッスンを申し込み、マイケルがやってきます。ウソつきでちょっとひねくれたマイケルに最初は拒否反応を示すリリーですが、毎週6回のレッスンを受けるうちにお互いを理解していき…。

草笛さん、実年齢は84才!しかしピンと伸びた背筋、明瞭な台詞、軽やかなステップ。そして艶のあるお肌とぱっちりした目がお美しい。本当に女王のような気品と美しさ。それも、役と関係なくただきれいにしているというのではなくて、ちょっと弱った場面ではそういう演技。

そして松岡昌宏、過去のマイケルと比べることはできませんが、ちょっとめんどくさい、ナイーブな、でも心優しい、素敵なマイケル。しかも、ドラマーなのにダンスのキレもあるし、(ネタバレですみませんが)、ドラマーだから(と思い出させる)見事なパーカッションソロを見せてくれたりして。

よくある展開なんですけどね、脚本がよくて、引き込まれていきます。古い作品なのかと思っていたので、見ていくうちに新しいなと思ったんですが、前述のとおり2001年初演だったということで、ゲイやAIDSといったセリフも出てきます。と書くと、またかという感じがしますが、このお芝居ではやはりキーになる部分です。

二人は場面毎に衣装を変え、(リリーのドレスがまたすごくお似合いで素敵)、その間を歌とギター・ピアノの生演奏(大嶋吾郎、栗山梢)でつなぎ、で、笑ったり泣いたり(もうスープの時点でかなりきちゃっていました)、2幕2時間15分があっという間でした。

今日はたまたま本作品の200回公演記念ということで、大きな百合の花束が、リリーである草笛さんに贈られました。素敵な時間をありがとう。

「華氏451度」@KAAT

201810451_2     チケットが手に入る限り行く、の白井晃演出のKAATの舞台「華氏451度」です。まったく予備知識なく、行きの電車で(そうはいっても平日のKAATはきつい)チラシを見て、レイ・ブラッドベリ原作、長塚圭史上演脚本、主演吉沢悠というのを知りました。SFは読まないので、萩尾望都センセの漫画になってなければ知らないお話。

未来社会では、本を読んで隣人が得ていない知識を得ることは悪とされ、ファイヤマンがとんできて、華氏451度(232℃)で本を焼きます。主人公ガイ・モンターグ(吉沢悠)はファイヤマンでしたが、ある日隣に住む少女クラリス(美波)に会い、現場から拾った本を読み始めます。バーチャル映像にのめりこんでいる妻ミリー(美波)は夫を止めます。彼の行動は上司ビーティ(吹越満)の知るところとなり、現状に疑問を持ちながら行動に起こせなかった大学教授フェイバー(堀部圭亮)はガイに協力し…。

前4列をつぶしたグレーの舞台の周りを巨大な本棚が取り巻き(「美女と野獣」のお城の図書室みたいな)、照明と映像、さらに音響が効果的に使われたスタイリッシュな空間で、寓話的な未来社会が描かれます。膨大な台詞は言葉としては明瞭ですが浅薄ではなく、観客は意味を追いながら、ガイの運命を見つめることになります。

吉沢悠といえば、ドラマ「動物のお医者さん」の公輝、「仁」の歌舞伎役者も印象的でしたが、舞台では初見。精悍な顔が小さくて、特殊部隊風の衣装が似合って超かっこいいんですよ。美波も不思議な雰囲気。吹越満、堀部圭亮のお二人はさすが。本を愛する品のある老女草村礼子を含め、キャストが皆さん明瞭な台詞と隙のない動きで、見事でした。妥協のないキャスティングっていいなあ。

さらに、終演後、長塚さんと白井さんのトークショーがあったんですよ。白井さんが本作の企画を話していた場にいあわせて、やらせてほしいと言ったという長塚さんは、以前この作品の上演を検討していたことがあったんだそうです。白井さんが演出ということで、あえてト書きをあまり書き込まず、彼に委ねたという長塚さん。白井さんも悩みながら、意地でも長塚さんにあまり細かく聞かなかったそうです。

俳優としても活躍するお二人、たたずまいもかっこいいし、言葉も明瞭で、お互いをリスペクトしていて素敵。しかも話題が見たばかりの意欲作ってもう至福でした。

とにかく舞台が見やすくて、どうだKAATだ、という感じ。舞台美術 木津潤平、照明 大石真一郎、音響 徳久礼子、映像 宮永亮、栗山聡之、とメモしておこうっと。

(追記)

Twitterで知ったんですが、この作品では、客席の勾配をきつくして2階につなげるということをしていたみたいです。確かに3階なかったもん。

花道作ったり、舞台スペース広げたり(「マハゴニー市の興亡」はそのパターンですね)、すごい劇場。そしてよくぞ白井晃を芸術監督に連れてきた。えらい。

白石加代子百物語アンコール「牡丹灯籠」@シアター1010

201807     白石加代子さんの朗読劇「百物語」が2014年に完結したとき(百物語の常として99話で終わった)、見られなかったことを大変残念に思っていたのですが、要望に応えて2016年からアンコールシリーズが始まりました。今回は第2弾、円朝の名作「牡丹灯籠」です。

怪談の名作というと、四谷怪談、番町皿屋敷、牡丹灯篭とあって、あらすじは知っているつもりでしたが、始まってみると知らないことがわかりました。しかし、美女との恋、幽霊、仇討、不義密通、身勝手な殺人と、舞台や登場人物の設定は歌舞伎で見慣れたもの。多数の登場人物がどう絡んでいくのか、わくわくしながらお話に引き込まれていきました。

白石加代子さんは言わずと知れたカリスマ的な舞台の名女優ですが、テレビドラマでも、「なくな、はらちゃん」を見た子どもが「なんかこのお母さん妙に迫力がある」と言うので、何も知らなくてもわかるんだ、と思ったもんです。

その白石さん、振袖で登場。短い前振りがあって、台本を朗読していきますが、きちんとした舞台装置もあって、黒衣が舞台転換や小道具を扱い、かなり体を動かしての演技もあって、むしろ立派な一人芝居。名女優による女性の演じ分け、感情表現は、男性落語家とはまたちがった魅力があり、芸の円熟を感じさせつつ、かわいらしくて、ほんとうに魅力的でした。

年齢のことを言うのも失礼ですが、菊五郎さんや仁左衛門さんの世代の白石さん、ますます艶のある芸を見せてくれて、ありがとうございました。

カーテンコールでは、塩撒きもありました。災いもなくなれ、と。

(追記)

手許の渡辺保「歌舞伎手帖」に、この「牡丹灯籠」の項がありました。それによると、この演目の見どころは、伴蔵とお峰夫婦が家で百両と引き換えにお札をはがす相談をするところと、逃げてから酌婦となったお国といい仲になった伴蔵にお峰が嫉妬する場面。どちらも、白石さんの舞台を見ながら、うまいなあとうなっていた場面だったので、この長い物語の芯をとらえているんだなあと感心したことでした。

「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」@紀伊国屋サザンシアター

201807wbs     尾上右近の初の現代劇、「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」です。初の紀伊国屋サザンシアター、本家の紀伊国屋ホールとよく似た作りで、見やすい素敵な劇場。

脚本は、2012年のピューリッツアー賞受賞作で、キアラ・アレグリア・ヒュディスQuiara Alegría Hudes)、1977年生まれといいますから、受賞したときは35歳の若さ。さらにその前には、あのトニー賞ミュージカル「In the Heights」(2008)の脚本も書いています。ユダヤ系の父とプエルトリコ人の母との間に生まれ、アメリカのラティーノを描く書き手としてますます活躍する人でしょう。演出は、NARUTO歌舞伎を控えるG2。

エリオット(右近)は、イラク戦争で足を負傷して帰り、サブウェイで働きながら俳優を目指しており、音楽教師のいとこヤズミン(南沢奈央)と仲良し。エリオットの母オデッサ(篠井英介)は、コカイン中毒者のチャットを主催していますが、そこの住人たち(鈴木壮麻、村川絵梨、葛山慎吾)は薬を抜こうと葛藤しています…。

無機質な雰囲気の中に、シンプルな家具のセット。チャットのログイン、ログアウトの音や照明が効果的で、感じがよく出ています。そういえば、最近ヒットしたミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」も、SNSを題材にしていました。

フィラデルフィアという町がどんなところか全く知らないのと、イラク戦争の退役者であるプエルトリカンというのが、ややぴんとこないので小ネタがつかみきれないところはあるんですが、問題を抱えるがゆえにドラッグに逃げてしまい、それ故に大事なものを失い、でも何とか這い上がろうとする切なさは伝わります。現代の英米文学世界の一角を占める作品でしょう。作者はきっと、優しい人なんだなと思うラストでした。

出演者は、ほとんどほかの作品でも見たことのある実力派ばかりですが、ビジュアルも、素に近いメイクがかえって役者さんの美しさを際立たせているようで、皆さん素敵でした。南沢奈央すっごくかわいいし、村川絵梨は「ネクストトゥノーマル」以来ですが、もっと色っぽくて素敵。二人ともただ細いだけじゃないスタイルの良さ。篠井さんも美しかった!唯一初見?の陰山泰さん、彫りの深いお顔立ちを生かした好演。

そして、右近ですよ!まだ現代劇の普通の会話、しかも翻訳ものということもあり、ぎこちなさがないわけではないですが、ふだん白塗りと豪華な着物に隠されている、しなやかな細い筋肉のついた身体と、生き生きとした青年の美しいお顔!ふだんよりずっと近い舞台の上で輝く右近!黒目勝ちの目線をもらったときには、これは右近ファンはたまらないだろうなと思ってしまいました。

花形新派公演「黒蜥蜴」@三越劇場

201806      歌舞伎から新派にうつった喜多村禄郎河合雪之丞中心の「黒蜥蜴」、昨年見損ねて残念に思っていたら、今年早くも再演ということで、唯一の夜公演を見てまいりました。2度目の三越劇場です。御大の水谷八重子と波乃久里子が出ないので花形っていうんですかね。

黒蜥蜴というコンテンツが好きなんですよね。子どもの頃読んだ明智小五郎シリーズでもいちばんいい出来だと思っていましたし、記憶はさだかではないですが、ドラマで見た気もするし。で、数年前に伝説の美輪明宏さんの「黒蜥蜴」をようやくみて、三島由紀夫の脚本と美輪さんはいいけど芝居としてはなんだかな、と感じていたものですから、雪之丞の黒蜥蜴、楽しみにしていました。

レトロな三越劇場に、戦前のレトロモダンな世界が広がります。幕開けから今井清隆の警部の美声の歌。あれ、三島由紀夫脚本のじゃないんだ、とちょっと驚きました(新派の齋藤雅文さんの脚本)。しかし、宝石と美を求める黒蜥蜴と明智小五郎の関係、若く美しい早苗の誘拐、黒蜥蜴のコレクション、といったあらすじは、原作に沿っているので同じです。

とにかく雪之丞がゴージャス。着物でも洋装でも、堂々としたたたずまい、目の配り、ちょっとした動きと、全身黒蜥蜴そのもの。女方のからっとした色気がまたよくて、これまで数少ないがながら見てきた雪之丞最高の当たり役に見えました。これをやれただけで、新派に行ってよかったですよ。この方、もともと自分の美しさに酔ってる風があって、歌舞伎の女方にしてはちょっと濃すぎる感じがしてたんですよね。

喜多村禄郎の明智小五郎、長身、軽い身のこなしと台詞回し、派手なアクション、と大活躍。見得もあったりして、「緑屋!という謎の大向こうまでかかっていました。

今井警部は外見も声もよく、コミカルな味もあって、とてもよかったし、劇団EXILEの秋山真太郎も、顔の小ささが今風の青年でよかったです。令嬢早苗役は松也の妹春本由香。古風なルックスや台詞回しが、華やかな着物に似合ってて、。声もいいし、この道でがんばってほしいな、と思いました。

その他の脇の方、手堅くうまいし、立ち回りシーンもたっぷりあって飽きさせないように工夫しています。しかし徐々に明智と黒蜥蜴の恋が深まるところもうまく描いていて、最後まで面白く見ました。意外なラストシーンの背景、おお、こうきたか、と、見事にはまっていた演者の方々に拍手。この場は、独特の三越劇場の壁をうまく舞台に取り入れていて、秀逸でした。

アンコール後は、通路を役者さんがはけていって、全員が出口でお客様をお見送り。三越の6階特選売り場の美術品を背景にした黒蜥蜴、似合ってました。

「ヘッダ・ガブラー」@シアターコクーン

1804    イプセン作、栗山民也演出の「ヘッダ・ガブラー」です。ずっと以前に、俳優座だったと思うんですが、ヒロインの名がタイトルとなっているこの作品のポスターを見て、かっこいいなあと思った記憶がよみがえり、とうとう見ることになったということで。

栗山さんの古典作品の演出といえば、大竹しのぶのラシーヌ作「フェードル」。同じ劇場で、美術二村周作さん、衣装前田文子さんも同じなので、雰囲気はよく似ています。

ヘッダ(寺島しのぶ)はガブラー将軍の誇り高い娘、学者のイェルゲン・テスマン(小日向文世)との新婚旅行から帰ってきたばかり、イェルゲンを溺愛している親代わりの叔母ユリア(佐藤直子)、テスマン家から派遣されたメイドのベルテ(福井裕子)。そこへヘッダの学校の後輩エルヴステート夫人テア(水野美紀)が、子どもの家庭教師だったエイレルト・レーヴボルク(池田成志)を追ってやってきます。夫人の助けで荒れていたエイレルトは再び学問に熱を入れ始めていたのです。そしてエイレルトはヘッダの昔の恋人、そしてヘッダに下心のあるイェルゲンの友人ブラック判事(段田安則)…。

登場人物はこの7人。濃いですよねえ。演者の出演歴には、野田秀樹、三谷幸喜、ケラ、白井晃、小川絵梨子といった、現代演劇を代表する演出家の芝居が並びます。個性豊かで演技のスタイルもちがうのですが、栗山さんはあえてそれはそのままにしているのかなと思いました。先日のナイロン100℃と対照的。

それが成り立つのは、タイトルロールであるヘッダの存在感が際立っているから。寺島しのぶ、舞台で大きく、美しい女性です。全身引き締まった素晴らしいスタイルで、特にデコルテから背中、腕のラインがとてもきれいです。立ち姿、歩く姿も美しく、松たか子の舞台での美しさを思い出してやっぱり歌舞伎名門の血筋と思ったりして。

舞台は、人のよいユリアと古風なメイドとのシーンで始まり(この二人が演劇集団円のベテランであるだけに、こなれたよい芝居。福井さんは、もう永久保存しておきたいようなメイドですよ)、そして、これが今の小日向さん?と思うほど若々しいかわいいイェルセンが加わって、なんとなくほのぼのとしていると、傲慢なヘッダの登場が強烈です。なんて嫌なヒロイン、この人をずっと見るのか、と思ってしまいます。かわいらしいテアがヘッダを恐れるのもわかります。

ヘッダは、ヘッダに夢中の人のよい夫にもうんざりしていて、人生が思い通りにならないことにずっといらいらしています。昔の恋人エイレルト(池田成志がワイルドですてき)が成功の入り口にきていて、それがテアによることも気に入らない、そして破滅へ。

シリアスな悲劇なんですが、なぜか笑ってしまう間があって(とくに小日向さんに)、休憩込み2時間半の芝居があっという間でした。ストーリーの展開には、違和感があるところもなくはないんですが、役者の力でねじ伏せられたという感じ。この古典を、このキャストでみられてよかったです。

(先日の「リトル・ナイト・ミュージック」のヒロインであるデジレ(大竹しのぶ)は女優なんですが、「『ヘッダ・ガブラー』で地方公演があるから」っていうセリフがあるんですよ。デジレがそういう役を演じる魅力的な女優だという説明にもなっているし、もうすぐ見るんだーとくすっとしました。)

ナイロン100℃「百年の秘密」@本多劇場

201804    ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの、ナイロン100℃公演、2011年初演の再演「百年の秘密」です。

舞台はベイカー家の屋敷の庭。中央に大きな木があります。この家の娘ティルダ(犬山イヌコ)と12才で出会う親友コナー(峯村リエ)の生涯を、ティルダの両親と兄、二人の夫や子、孫等とともに描く、ある種の大河ドラマ。

タイトル通り、百年の時間の流れを、行ったり来たりしながら、緻密に構成された脚本の妙で、少しずついろいろなこと―「秘密」がわかっていきます。人生と秘密と喜び、悲しみは一体なんだと感じさせる芝居を、休憩をはさんで3時間半、ずっと見続け、台詞を逃すまいと聞き続けた観客に提示されるラストシーン。一瞬終わったんだ、と空っぽになり、客席に静けさが満ち、そして大拍手になりました。

一見、何役も掛け持ちしていそうに思えたんですが、当日もらうチラシを見ると、ほとんどのキャストは一役で、意外と大人数(19人!)。しかし芝居に統一感があるのは劇団ならではでしょうか。しかしあくまで個性的で、いそうでいない、なの。笑いながらしみじみと人生ってと感慨をもたらすすごい芝居でした。

中でも犬山イヌコ、この方の個性と演技、このドラマに一本筋を通していてすごい。峯村リエもある意味対照的な女性です。いるだけで面白いのはチャド(みのすけ)、リーザロッテ(村岡希美――とくに冒頭は飛ばしてました)、語り役で役としても面白かったメアリー(長田奈麻)、何ともいえない複雑な味のブラックウッド(山西惇)。そして大倉孝二、萩原聖人

プロジェクション・マッピングは映像はいつも感心する上田大樹ですが、今回もドアの表現など秀逸。

ぎっしりつまった本多劇場の、熱心なお客さんたちと感動を共有した素敵な一夜でした。

 

三谷幸喜「江戸は燃えているか」@新橋演舞場

201803     三谷幸喜が、演舞場史上もっとも笑えるコメディを目指した、という「江戸は燃えているか」です。チラシ見ると西郷さんが出ているとわかるんですが、獅童と松岡くんが出るというのであらすじは知らずに行きました。

舞台は勝海舟(中村獅童)の屋敷。いよいよ薩長との決戦前夜、西郷(藤本隆宏)が面談を申し入れてきますが、海舟は逃げ腰。娘ゆめ(松岡茉優)、海舟の妹順子(妃海風)の夫村上俊五郎(田中圭)は、庭師平次(松岡昌宏)を勝に仕立てて西郷と会わせます…。

江戸無血開城のエピソードをドタバタで見せるというのは、歴史ラバーな三谷幸喜ならでは。時代物の家と庭を置いてしっくりくるのは、やはり歌舞伎の劇場でしょう。これ、パブリックシアターやプレイハウスや銀河劇場じゃ合わないですよね。

そして、やはり彼の作品らしく、キャストが全てほんっとに合ってます。

半分くらいは、大河ドラマでそのままの役をやってもおかしくない、藤本隆宏の西郷とか、若いのにあまりにもしっかり役割を演じていて貫禄さえ感じさせる松岡茉優とか、海舟の妻八木亜希子とか、田中圭とか。田中圭、ドラマでも結構好きだったんですが、実際にはもっとかわいい顔でかっこよかったです。

山岡鉄太郎にずんの飯尾和樹、そう使ってきたか、大正解。この人のフザケタ雰囲気、好きだったんです。妃海風は、名前見たことがある、と思ったら、初めて見た宝塚「南太平洋」で主演していたんですね。娘役だったのに、宝塚の男役の雰囲気を求められたのか、でもさすが姿勢のよさとか、いい雰囲気でアクセントになっていました。新感線の高田聖子、磯山さやか、吉田ボイス、獅童のお弟子さんの中村蝶紫もがんばってました。

1幕目は松岡くんがメイン、2幕目は獅童が奮闘して、さいごびしっと締めます。(心の中でよろずやーって叫んでました)。まあね、この二人ならこれくらいかっこよくて振り切れててやっくれるってもんですよ。獅童は秋の巡業よりもずっと元気なようで、うれしかったです。「新選組!」の捨助を思い出しました。

演舞場で、休憩35分挟んで3時間10分という長丁場なためか、開演が17時もしくは18時と早いんですよ。数少ない18時でとれたのが4公演目、こういう芝居ってもうちょっと回を重ねてからの方が、ますます面白くなるかな、と思いました。

今回、2等席、2階左の角っこの方。2等なのに花道は見えなくてモニターなんですが、これが見づらく、しかも舞台の左の方も見切れます。三谷さん、花道はほとんど使わなかったので(もったいないよ)よかったですが、それにしても、演舞場は見切れ席多いなあ、気をつけなくちゃ。

(追 記)

3月19日、昼公演後に体調を崩した松岡茉優ちゃんが夜公演は休演となり、三谷幸喜が代役として、黒衣姿で台本持って進行したそうです。そりゃ、出ずっぱりの狂言回し的役どころだから、ちょっとやそっとじゃ代役いませんよ。「宮沢りえならできる」って言ってくれる野田秀樹もいないし(@「おのれナポレオン」)。

しかし三谷さん、舞台の中でキャストの熱演見て、楽しかっただろうな。ほんとに見たかった、という声が多いです。

2017年私的ミュージカル&演劇・歌舞伎ベスト10!

さて恒例の年間ベスト10です。今年は、何といっても私は猿之助が好きなんだと自覚した年で、何だか歌舞伎にはまってしまい、歌舞伎をいっぱい見た年でした。といってもミュージカルいいもいろいろ見ましたし、ストレートプレイもいい作品をたくさん見ました。劇場に行った回数、84回って、もちろん自分としては最高で、これからもないかも。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎の3つに分けて発表します。

例によって、私が個人的にその舞台で得た感動と、もう1回見るならどちら、といった趣旨のランキングで、作品自体の優劣ではないのでご容赦を。見た座席の影響もあります。

タイトルをクリックすると、このブログの記事にとびます。

(前年までのリンク) 

2009年的ミュージカルベスト10!
2010年私的エンタメベスト10!
2011年私的演劇&コンサートベスト10!
2012年私的演劇等ベスト10! 
2013年私的ミュージカル&演劇その他ベスト10!
2014年私的ミュージカル&演劇その他ベスト10!
2015年私的ミュージカル&演劇その他ベスト10!
2016年私的ミュージカル&演劇その他ベスト10!

【ミュージカル】

今年はとくに満足度が高かった作品が多くて、楽しかったです。まあ、このキャストやこの演出がもうちょっとこうだったらなあ惜しいというところはどの作品にもありますが。

1.「メンフィス」

Photo 主演山本耕史のヒューイの演技の繊細さが、やはり他を圧倒していたのと、濱田めぐみの歌、カンパニーと客席が一体となった劇場の盛上がりは素晴らしかった!

2.「ビリー・エリオット」

家族や友人との関係を細やかに描きながら、ダンスに自分の生きる道を見出していくビリーの成長を描く、感動的な作品で、見る前の期待度をいい意味で裏切られました。

3.「キューティ・ブロンド」

おバカにみられるブロンド美人が、周りを見返していくサクセスストーリー。神田沙也加が明るい歌声と演技でやりきった快作。

4.「ウエストサイドストーリー」

名曲とダンス、若者たちのやるせなさを描き、まったく古びていないミュージカルの古典的名作。

5.「ノートルダムの鐘」

ディズニーアニメよりも原作に沿った深みのあるミュージカル、名曲揃いです。

6.「ヘドウィグ アンド アングリーインチ」

映画未見で行ったのが悔やまれる、ジョン・キャメロン・ミッチェルのヘドウィグ。フル・ミュージカルだったらもちろんもっと上です。

7.「ファインディング・ネバーランド」

これも子どもたちがかわいかった、ハートウォーミングな名作。

8.「紳士のための愛と殺人の手引き」

市村正親のはまり役だったブラックコメディ。

9.「ビューティフル」

平原綾香がキャロル・キングを歌う、彼女の歌の魅力たっぷりの名作。

10.「スカーレット・ピンパーネル」

再演で初見。今一番充実している感のある、石丸幹二、石井一孝、安蘭けいの競演。

「フランケンシュタイン」

フランケンシュタインの悲劇をドラマチックに描く力作。中川晃教、小池遼生、濱田めぐみ。

「ヤングフランケンシュタイン」

福田雄一、ムロツヨシ、賀来賢人と今最高のコメディミュージカルの布陣で楽しかったんですが、期待値高すぎました。

「レ・ミゼラブル」

安定のレミゼ。

「キス・ミー・ケイト」

古い作品を、キレキレのダンスとキャストの妙で魅せた秀作。

宝塚花組「金色の砂漠」「雪華抄」

明日海りおの魅力を活かした上田久美子作品。

「コメディ・トゥナイト」

ソンドハイムと新喜劇を宮本亜門が愛之助で融合。

「ビッグフィッシュ」

ティム・バートンの不思議世界のミュージカル。

「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」

PEANUTSの世界を現出した小ぶりなしゃれたミュージカル。

「レディ・ベス」

期待が高すぎたかも。

「グレート・ギャツビー」

井上ヨッシーはよかったです。

「キャバレー」

ミュージカルとして悪くはなかったんですが、「キャバレー」としてはちょっと期待までいかなかったです。

宝塚月組「All For One-ダルタニアンと太陽王」

キャスト好演でとてもよくできた演目でした。

「パレード」

宝塚星組「スカーレット・ピンパーネル」

「にんじん」

「パジャマゲーム」

「王家の紋章」

 

【ストレートプレイ】

今年はストレートプレイもバラエティに富んだいい作品を見ました。ミュージカルや歌舞伎に比べると、私の中での優先順位は低くなっちゃうんですが、すばらしい作品を見せてもらいました。

 1.「子供の事情」

Photo_2 三谷幸喜が、個性的なキャスト全員を10歳という設定で描いた異色作。見ていない人にうまく面白さが伝えられない魅力がありました。

2.「アマデウス」

九代目幸四郎さんの究極の当たり役。緻密な演技と演出に感動。

3.「足跡姫」

最近のNODAMAPとしてはわかりやすい勘三郎と歌舞伎オマージュの物語。泣きました。

4.「髑髏城の七人 Season花」

360度の舞台の初作品ながら完成度の高いエンタテインメント。小栗旬、山本耕史、古田新太らのかっこよさ。もっといい席で見たかった。

5.「ちょっと、まってください」

ケラリーノ・サンドロヴィッチの不条理喜劇。

6.「欲望という名の電車」

圧巻の大竹しのぶ。

7.「オーランド―」

多部未華子と小日向文世がバージニア・ウルフの魅力的な不思議世界を表現。

8.「グローリアス!」

篠井英介の女形の実力を感じたハートウォーミングな佳作。

9.「フェードル」

栗山民也演出の大竹しのぶ、キムラ緑子の古典の意欲作。

10.「『仕事クラブ』の女優たち」

初の劇団民藝。タイムスリップしたような空間でした。

「百鬼オペラ 羅生門」

「お気に召すまま」

「ワーニャ伯父さん」

「デストラップ」

【歌舞伎】

歌舞伎、数えたら幕見も含めて36回行ってました。一つの芝居ではなく、その日の満足度という観点で選んだものが多いです。初級者で初見の作品が多いので、○○だったらもっといいのにこれを評価するなんてといったご意見もあろうかと思いますがご容赦を。猿之助推しを自覚したので、そういう観点からもちょっと偏ってます。

1.四月大歌舞伎「傾城反魂香」「帯屋」「奴道成寺」

吉右衛門ドモ又、藤十郎長右衛門、猿之助の歌舞伎座を揺らす奴道成寺と、大大満足でした。

2.六月大歌舞伎「鎌倉三代記」「曽我綉俠御所染 御所五郎蔵」「一本刀土俵入り」

松也の美しい三浦之助、ニザ様の五郎蔵、猿之助のお蔦。

3.秀山祭九月大歌舞伎「毛谷村」「道行旅路の嫁入」「極付幡随院長兵衛」

染五郎の六助、吉右衛門のまさに極めつけの幡随院長兵衛。

4.スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」

再演ワンピースは演出も役者も進化していました。右近ルフィで満足だったけど、猿之助の歌舞伎シャンクスで見たかった。

5.芸術祭十月大歌舞伎「マハーバーラタ戦記」

まさかのインド歌舞伎、傑作でした。

6.八月納涼歌舞伎「修善寺物語」「東海道中膝栗毛歌舞伎座捕物帳」

猿之助の桂、若手の顔見世のような楽しいやじきた四の切殺人事件。

7.八月納涼歌舞伎「贋作 桜の森の満開の下」

野田ファン×歌舞伎ファンとして至福。

8.秀山祭九月大歌舞伎「逆櫓」「再桜遇清水」

安定の吉右衛門樋口と歌六、軽快な染さん清玄。

9.通し狂言「伊賀越道中双六」

吉右衛門会心の仇討ちもの。

10.四月大歌舞伎「引窓」「けいせい浜真砂」「助六」

やっと生で見た海老蔵の魅力全開の助六。

壽新春大歌舞伎「源平布引滝 義賢最期」「右團次襲名披露 口上」「錣引」「黒塚」

海老蔵の義賢、何度見てもいい猿之助黒塚。

三月大歌舞伎「明君行状記」「義経千本桜 渡海屋 大物浦」「どんつく」

ニザ様の碇知盛、巳之助に華やかな面々のどんつく。

團菊祭五月大歌舞伎「梶原平蔵誉石切」「吉野山」「魚屋宗五郎」

新彦三郎の平蔵、海老菊の眼福の道行、菊五郎の絶品宗五郎。

四月大歌舞伎「醍醐の花見」「伊勢音頭恋寝刃」「熊谷陣屋」

染五郎貢と猿之助万野、幸四郎熊谷。

六月大歌舞伎「名月八幡祭」「浮世風呂」「御所桜堀川夜討弁慶上使」

軽快な浮世風呂!

十二月大歌舞伎「らくだ」「蘭平物狂」

愛之助中車亀蔵の上方らくだに爆笑。松緑渾身の蘭平。

吉例顔見世大歌舞伎「鯉つかみ」「欧州安達原」「雪暮夜谷畦道 直侍」

ここでは申し訳ないような菊五郎の絶品直侍。

吉例顔見世大歌舞伎「仮名手本忠臣蔵五・六段目」「新口村」「大石最後の一日」

ここでは申し訳ないニザさま勘平、幸四郎・染五郎・児太郎の新歌舞伎。

十二月国立劇場「今様三番三」「隅田春妓女容性ー御存梅の由兵衛」

菊之助の美しい女房ぶりと吉右衛門の見事な復活狂言。

十二月大歌舞伎「実盛物語」「土蜘」

十一月国立劇場「通し狂言 霊験亀山鉾」

歌舞伎鑑賞教室「鬼一法眼三略巻 一條大蔵譚」

八月納涼歌舞伎「刺青奇遇」「玉兎・団子売」

十二月大歌舞伎「瞼の母」「楊貴妃」

團菊祭五月大歌舞伎「弥生の花浅草祭」幕見

芸術祭十月大歌舞伎「沓手鳥孤城楽月」「漢人韓文手管始」「秋の色種」

松竹大歌舞伎(巡業))「義経千本桜すし屋」「釣女」

【映画、ドラマその他】

映画館にも例年より多く行きました。「スターウォーズ ローグワン」に始まり、「ラ・ラ・ランド」「美女と野獣」「花戦さ」「NINAGAWA ヴェニスの商人」「セルゲイ・ポルーニン」「ソフィア・コッポラの椿姫」「ドリーム」。シネマ歌舞伎が「阿古屋」「女殺油地獄」「東海道中膝栗毛」。11本見ても、うち5本が舞台を撮った映画ですから、ほんとにわれながら偏ってますね。

ドラマは「カルテット」「おんな城主直虎」「東京タラレバ娘」「バイプレーヤーズ」「A LIFE」「スーパーサラリーマン左江内氏」、「スリル」、「やすらぎの郷」、「植木等とのぼせもん」「トットちゃん、「監獄のお姫様」、「コウノドリ」等、丁寧に作られた面白いドラマがたくさんありました。そうそう、大河ドラマの再放送で「風林火山」、これが亀治郎ドラマ初出演作かあと、今年放映されたのも何かの縁ですね(何の?)

【ブログアクセス年間ランキング】

おまけに、年間アクセスランキング。新聞連載小説「黒書院の六兵衛」、いつも人気です。

1.浅田次郎「黒書院の六兵衛」
2.「髑髏城の七人Season 花」@IHIステージアラウンド東京
3.シネマ歌舞伎「らくだ/連獅子」
4.劇場(座席表)データベース!
5.古田新太の「ロッキーホラーショー」
6.一条ゆかり「プライド」-(付)名セリフ集
7.安部龍太郎「等伯」― 画家小説は面白い
8.シネマ歌舞伎「野田版 研辰の討たれ」
9.「紳士のための愛と殺人の手引き」@日生劇場
10.三月大歌舞伎「明君行状記」「義経千本桜 渡海屋 大物浦」「神楽諷雲井曲毬 どんつく」
11.映画「ジャイアント・ピーチ」-ロアルド・ダール原作の隠れた名作!
12.八月納涼歌舞伎第二部「修善寺物語」「東海道中膝栗毛歌舞伎座捕物帳」
13.2016年私的ミュージカル&演劇その他ベスト10!
14.「ビッグ・フィッシュ」@日生劇場
15.大河ドラマ「新選組!」@2004と「土方歳三最期の一日」.
16.マイケル・ジャクソン30周年コンサート
17.映画「レ・ミゼラブル」
18. 壽新春大歌舞伎夜の部「源平布引滝 義賢最期」「三代目市川右團次襲名披露 口上」「錣引」「黒塚」@新橋演舞場 ...
19.「フランケンシュタイン」@日生劇場
20.映画「ラ・ラ・ランド」IMAX
21.ミュージカル「アダムス ファミリー」@青山劇場
22. キリン「ファイア」CMソングにRENTの「Seasons of Love」!
23.DVD「レ・ミゼラブル25周年コンサートin London」
24.「屋根の上のヴァイオリン弾き」@日生劇場
25.「フェードル」@シアターコクーン
26.芸術祭十月大歌舞伎「沓手鳥孤城落月」「漢人韓文手管始」「秋の色種」.
27.佐々木倫子「Heaven?―ご苦楽レストラン」
28.「通し狂言 霊験亀山鉾」@国立劇場
29.十二月大歌舞伎第三部「瞼の母」「楊貴妃」
30.宮尾登美子「錦」「伽羅の香」「一弦の琴」

「欲望という名の電車」@シアターコクーン

1712yokubou  今年の観劇納めは、大竹しのぶの「欲望という名の電車」。アメリカの劇作家テネシー・ウィリアムスの名作で、初演は1947年、1951年にヴィヴィアン・リー、マーロン・ブランドで映画化されています(このときヴィヴィアンは40少し前と若かったのを今知って驚きました)。

このお芝居、なんと40年近く前に見ているんですよね。ブランチ東恵美子、スタンリー西田敏行、(ステラ今井和子、ミッチ津嘉山正種)テレビではコミカルな役や東北弁の役が多かった西田さんが、正統派の舞台で力強く演じるのを見て驚きました。

さて、今回は演出フィリップ・ブリーン、ブランチ、大竹しのぶ、スタンリー北村一輝、ステラ鈴木杏、ミッチ藤岡正明、スタンリーの友達に少路勇介が出てました(そんなに目立たない)。

お話は、妹ステラのところにたくさんのドレスを持ってやってきた姉ブランチは、ステラの荒れた狭い家と粗野な夫スタンリーに驚きます。ブランチは育った豪邸を一族のための借金で失い、教師の仕事を休んできたと言い、スタンリーの真面目な友人ミッチと近づきますがブランチには秘密があったのでした…。

大竹しのぶは、繊細な、傷ついた心をのべつまくなしの言葉の鎧で覆っているようなブランチ。華奢で、ほんとにきれいです。膨大なセリフがきっちり届き、こんなにおもしろい脚本だったかと思いました。

対照的な、たくましい、今の境遇に不満を持っていないステラを鈴木杏が的確に演じます。無防備な普通の女の顔が美しい、ほんとにうまい女優だなあと思います。そして北村一輝、体形も顔も日本人離れしたバタ臭さがあって、舞台にハマっている感じ。粗野なんですけど、美形で品があるのがいいです。主要キャストの中では、ミッチの藤岡正明がちょっと力不足。この役、大柄で朴訥ないかにもいい人、である必要があると思うんですが、彼の普通さが、この芝居のテンションに追いついてない感じがします。

さて、スタンリーが乱暴なのはこの作品では決まってる話なんですが、今みると、DVとかモラハラとかいう言葉が浮かんで(名前をつけるって人の印象に与える影響は大きいですね)、けっこうつらいです(だから北村一輝の品のよさに少し救われた)。ブランチの過去の不幸のきっかが若い夫の同性愛を知ったことだったとか、見ていて気持ちいいものではないんですが、そう感じさせるということ自体が、この芝居を現代に通じるものにしているということでしょう。

美術(マックス・ジョーンズ)、照明(勝柴次朗)は、実は凝っていると思いました。生活感ありながらも、向こうが透けていたり電気を点けると見えるバスルームがあったりする部屋。照明の立体感が、やはり現代の芝居です。

ネタバレになっちゃいますが、ラスト近くに出てくる死神たち、リアリズムを越えた形の持つ力を取り込みたいのかなと思いました。

そして悲劇のラスト。大竹しのぶは、もう何かが憑依した表情で花道(通路)をはけます。その姿に、「大竹屋!」と心の中で叫んじゃいましたよ。1回目のカーテンコールでは、まだその表情が戻らず、だんだん素の要素が増えていくのが感動的でした。

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