2019年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

演劇(ストレートプレイ)

劇団かもめんたる「宇宙人はクラゲが嫌い」@赤坂レッドシアター

201905_1  お笑いコンビかもめんたるの演劇ユニット劇団かもめんたる第7回公演「宇宙人はクラゲが嫌い」です。「愛のレキシアター」に続き、八嶋智人さんのTwitterで「まだチケットがある!」と知って連休中に取ってみたら、4列目センターとすごいいい席。行ってみたらぎっしり満員でした。

かもめんたるって、2011年に「爆笑バトルライブツアー」という相模大野のお笑いライブで初めて見たんですよ。その時は何だか方向性に迷いがある感じだけど、声もいいしいいなと思ってたら、2013年には「キングオブコント」優勝。作り込んだコントは好みなんですが、その後テレビで売れてないと言ってるのを見たこともありました。というわけで期待は高かったわけですよ。でもそれ以上に面白かった!いってよかった!

 海辺のクラゲが名物の町でうどん屋をやるヒデさん(八嶋智人)の店に集まってくる人々と、海にいる弟テツゾウ(岩崎う大)の場面が交互に出て、だんだん二人の関係がわかってくる話。なんて、雑なあらすじですが、面白い短い場がつながってテツゾウとヒデさんのことがわかっていくのが面白いところなので、あまり書かずにおきます。

八嶋さんはさておき、脚本・演出かつほとんど主演のう大くんがいいんですよ(このお名前、本名は宇内で、やはり「うだい」と読むんですね)。きゃしゃな体に、豊かな表情をたたえた大きめの顔がなんともペーソスを秘めたおかしみがあって、いるだけで面白い。見ているうちに、私こんなにう大くん好きだったっけと思ったくらい。

コンビの槙尾ユウスケくんもよかったし、出てくる人(10人くらい)みんな強烈でうざくって、でもわかる~な人たち、彼らを生かして少しずつ話が動いていく今現在ならではの脚本、う大くん天才だったんだ。

ほかの出演者は、劇団かもめんたる団員が、テツゾウの相方 小椋大輔、絵本作家 森桃子、坊主 土屋翔、ピンクのモフモフ 船越真美子。そしてクラゲ佐久間麻由、筋肉 四柳智雄(ピーチ)<この人自分でも演劇やっていて面白そうな人>、パート森田光(虚構の劇団)、ナイロン100℃の長田奈麻(まりやの母)。―― ネタバレ避けたので、後で思い出すための単語をつけておきました。私はわかる(笑)

八嶋さん、この劇団の芝居を観て、出演させて、と言って、別格なのにちゃんと溶け込んでいい芝居していて、カーテンコール盛り上げて、お客さん呼んで、なんていい人。3月山本耕史と愛のレキシアターやって、6月は猿之助、幸四郎たちと歌舞伎座に出てって、もういっそ八嶋智人になりたいです!

赤坂レッドシアターは、赤坂見附すぐ、赤坂グランベルホテルの地下の小さな劇場ですが、このホテルやこの通り、オープンテラスのいい感じのバーが多くて、外人さんも多くてここは日本?ってなってます。

「ピカソとアインシュタイン」@よみうり大手町ホール

 20190508 「ピカソとアインシュタイン」、川平慈英、岡本健一のこのチラシを見て、てっきりミュージカルだと思っていたんですが、スティーブ・マーティン(映画「リトルショップ・オブ・ホラーズ」にサド歯医者役で出ていた、サタデー・ナイト・ライブのコメディアン)の脚本によるストレートプレイでした。主役2人がダブルキャストですが、私が見たのは若手の方のブルー。

 舞台はモンマルトルのカフェ「ラパン・アジル」、常連ギャストン(松澤一之 )が店主フレディ(間宮啓行 )と話していると、アインシュタイン(村井良大が女性を待つのだとやってきます。シュザンヌ(水上京香 )は恋の相手ピカソ(三浦翔平)を待ちます。アインシュタインとピカソはお互いの専門の話を戦わせます。シュメンディマン(川平慈英)、メンフィスからやってきた派手な男(岡本健一)も現れて…ほかにフレディの恋人(香寿たつき)、画商サゴ(吉見一豊)。

スティーブ・マーティンは、ピカソほかのアートのコレクターでもあるそうで、絵に関するちょっとした台詞やスケッチの扱い方がうまく、創作活動や作品の評価に関する見識も感じられたほか、もちろん、アインシュタインの理論のエッセンスもうまく使われていて、とても知的な脚本だと思いました。

舞台に額縁があって、丸テーブルとカウンターのあるノスタルジックなカフェを囲っているのが効果的。キャストの容貌が個性的で、とくにおじさんたちがみんな渋くていいです。松澤一之は夢の遊民社での若い頃を見ていますが、期待以上の食えないじいさんになっていて(ほめてる)、最高でした。

と、見た目はいかにも面白そうなお芝居になっていて、誰がどう悪い(強いていうなら水上京香は悪くはないんですが、この役には若すぎてちょっと荷が重く、長台詞が単調になってた)わけではないんですけど、構造やストーリーはあまりなく、前述のような知的なセリフの間で、雰囲気とかちょっとした間で笑わせるというこの芝居のスタイルと日本語との相性なのか、あまり笑えず、ああ、このお芝居どこにいくのという感じになってしまいました。もっとアドリブきかせて即興感のある感じでやったらよかったのに。

ローズ版ではアインシュタインを演じている川平慈英は、ブルー版での出番の短いシュメンディマンではけっこう自由にやっていて、その時は観客が楽しんでいるのが伝わってきました。岡本健一も好きな俳優さんですが、この役もクセがあってよかったです。

残念な点のひとつは、セクシーなセリフや場面も多いのに、このお芝居のキャスト、ちょっと色気が足りないんですよね(「She Loves Me」がそのあたり徹底していてうまかったから尚更そう感じたのかも)。ピカソは女好きという設定なんですが、三浦翔平のすくすくと育った健康な雰囲気が、全然そう見えない。名前だけは聞いたことがあるなあと思ったら、桐谷美玲ちゃんと結婚したばかりの好青年じゃないですか。今の彼にはそれは美点なので、全然悪いことじゃないような気もします。

ちょっと感動したのが、ラスト。セットに最後にはちょっとびっくりする変化があって、そしてとても美しかったです。これから見る方お楽しみに。美術 伊東雅子さん、照明 日下靖順 さんでした。

 

NODA・MAP「表に出ろい!」・ドキュメント「超・演劇人 野田秀樹 密着555日」

201904_3     NODA・MAP番外公演「表に出ろい!」を映像で見ました。2001年からの野田版の歌舞伎が好評を博した後、2010年に勘三郎・野田秀樹の最初で最後の共演となった現代劇です。

 能楽師の父(勘三郎)は、東京ディスティニーランドが大好きで、友人とパレードを見に行くつもりですが、その日は母(野田秀樹)が、ジャパニーズのライブに行く日。愛犬のお産のために、留守番を押し付けあう夫婦。娘(黒木華)が帰宅しますが、友達と限定グッズの列に並ぶために出ていくといいます…。

実は、NODA・MAPは家で見るにしても、一人でゆっくり余裕のあるときに見たいと思ってしばらく先延ばししていたんですが、登場人物は3人だけ、家のリビングでの軽快なやりとりで、構えずにみられる芝居でした。

舞台装置(堀尾幸雄)は、写真の衣装と同じ色調(ひびのこづえ)のカラフルなもの。このお二人、ずっと野田作品を支えていますが、毎回多彩で美しい。

新鮮だったのは、最初の夫婦の、どちらが出かけるか、いつどちらが連絡したのか、のやりとりのリアルさ。これ、そのまま子どものいる夫婦の会話ですよ。こんなに生々しい、でも面白い台詞、書こうと思ったらすぐ書けちゃうんですね。

もちろん勘三郎さんの勘のよさとか天性の愛嬌とか、こういうお芝居でもすごい役者だと思いますが(ちょっと汗かきすぎなんだけど)、野田秀樹の母役がすごい!

若い頃の遊民社の彼は、走り回り、ボケとツッコミを一人で叫び、一座をひっぱるというか引きずり回す感じで、とくに20代でもおばさん役が大好きでした。ここ数年再見するようになった野田秀樹は、いい役者に主役を譲り、芝居のスパイス的な役回りで、もう年だし仕方がないな(失礼)なんて思ってたんですよ。

しかしこの芝居は3人だけなので、往年以上の野田秀樹成分の濃さ!信頼する勘三郎さんとがっぷり四つに組んで、緻密な脚本を即興的な雰囲気で(きっちり演出されているのかもしれませんが)演じる楽しそうな野田秀樹。相変わらずの柔らかな身体、しかもおばさん役。

そして黒木華!京都造形芸術大在学中にオーディションで、この作品の前のNODA・MAP「ザ・キャラクター」のアンサンブルでデビューした直後ダブルキャストでの娘役。声、台詞、自分の信念を両親に主張する迫力、軽い動きと、この二人を前にして一歩も引かない熱演で、もう完全に出来上がってます。

この作品、最後まで笑いながらも、前作「ザ・キャラクター」の狂信集団を見た人は、設定がより深く理解できるということで、「人それぞれが信じるもの」というテーマをしっかり描いていてさすが。野田秀樹の3,4人くらいのこの規模の芝居、ぜひまた。今度は生で見たいものです。

 

追記・ドキュメント「超・演劇人 野田秀樹 密着555日」

このすぐ後に、WOWOWの野田秀樹の密着ドキュメントを見ました。さすが演劇に力を入れているWOWOWさん、超・演劇人とはよく言った。

まず2017年の歌舞伎座での「野田版・桜の森の満開の下」のリハーサルに始まり、松たか子も参加したワークショップ、前述の「表に出ろい!」の英語版の上演ドキュメント、2018年の「贋作 桜の森の満開の下」の舞台作りとパリでの上演と、最近見たものばかりで興味深かったのと、舞台裏、野田秀樹のインタビューがたっぷりで、ものすごく面白かったです。

野田版桜の森では、映画版パンフレットに載っていた、「高いところが平気な夜長姫七之助と、怖がる耳男勘九郎」が実際に見られましたし、「表に出ろい!」は前述の2010年版と同じところと、イギリス人俳優(キャサリン・ハンター、グリーン・プリチャード、しかもこの二人が父と娘を、男女逆転で演じるというしかけまで。ちなみに父の職業は能楽師ではなくてシェイクスピア俳優!)ならではの違うところが明確に見えました。ルーマニアの演劇祭で上演したのですが、この演劇祭自体がとてもきれいで面白そう。

贋作桜の森は、紙やゴムバンドを使った演出ができあがってくるところ、そしてパリでの上演の苦労。

野田秀樹自身の精力的な仕事ぶり、密度の濃いことば遊びの綴られる芝居を英語で上演する、しかも主役の一人は自分というのは本当にすごい。とくに舞台装置のしかけや字幕の段取りなどの苦労は、以前読んだ「野田秀樹」のムックにも率直に語られていましたっけ。

演出家らしく、自分の仕事を無駄のない詞で的確に説明する姿もかっこいい。ついでにファッションも遊び心があって凝りすぎなくて好みでした。

「LIFE LIFE LIFE ~ 人生の3つのバージョン」@シアターコクーン

201904lll  ケラリーノ・サンドロヴィッチの翻訳劇、「LIFE LIFE LIFE ~ 人生の3つのバージョン」です。もとはフランスの劇作家ヤスミナ・レザの「Trois Versions de la vie」。副題が原題なんですが、そのままだとちょっと理屈っぽいか。フランスといっても、ソ連から移住したペルシャ系の父とハンガリー移民の母というユダヤ人夫妻の下に生まれたとありますので、豊かな文化的背景をお持ちの方なんですね。写真をみるとすごい美人。

 もともと「ヴァージニア・ウルフなんてこわくない」を上演するはずが、事情でこの作品となり、ケラさんは苦労していたようですが、出来上がってみると、すばらしい舞台で、さすがケラさんという認識を新たにしました。

(以下、ネタバレありです)

ソニア(ともさかりえ)とアンリ(稲垣吾郎)の若い夫婦が、別室の息子アルノーに、ビスケットをやるかどうかで言い争っています。ソニアは元弁護士のエリート、アンリは天文学の研究者ですがいまいち。そこへアンリの上司で有力な学者ユベール(段田安則)とイネス(大竹しのぶ)夫妻がディナーにやってきます。しかしアンリたちは、招待は明日だと思っていて何も用意がなく、ワインとお菓子、チーズでもてなすことに…。

題名通り、同じシチュエーションで、少しずつ異なるバージョンが演じられます。思い切りネタバレすると、最初は気の強いソニアにうまく対処できないアンリ、妻を小ばかにしているユベール、やっと完成したアンリの研究にはライバルに先を越された可能性が出現し…という、なんともやるせない展開。しかし、2つめ、3つめと少しずつ変えるだけで、印象がガラリと変わっていきます。

このバリエーションが絶妙で、力のある脚本に、ケラさんの生きた台詞。人生なんて、ほんの少しの気の持ち方や関係性で、幸福感も大きく変わるんだよ、ということが見事に描き出されていきます。

真ん中の一番低いところにアンリの家のリビングがあり、四方を客席が囲む形。役者は自然な形でリビングにいるので、人の家をのぞいているような感じも新鮮でした。3つの芝居の区切りの音楽も、不協和音がちょっと不思議な感じで合ってました。

キャストがはまってます! 大竹しのぶと段田安則の自在な雰囲気、テンポのメリハリは、さすが。大竹しのぶはこういう四方から見る舞台なためか、前からしか見られない舞台よりもさらにほっそりとして、とってもきれいでした。ともさかりえは、最近はドラマでは落ち着いた役が多くなってきたようですが、この役は、仕事と家のことに追われながらも美しい若い妻で、とてもリアル、台詞や動きにもキレがあって、こんなにいい女優だったんだ、と思いました。

そして、吾郎ちゃんですよ! 初めての生SMAP、こんなに近くで見てもいいの、ほんとに人間なんだ (←失礼)と思いながら、私の中のミーハーが、さほど遠くないのにアップを見たくてオペラグラスでガン見。眼鏡が邪魔ですが(!)、やっぱりとーってもきれいなお顔でした。役も、吾郎ちゃんへのあて書きなのかと思うほど、ナイーブな、ちょっと不器用な愛すべきキャラクターでよかったです。

休憩なしの90分。中身が濃かったので物足りなさはなく、90分でここまでできるんだ、と思いました。

 

 

シネマ歌舞伎「桜の森の満開の下」

201904_1   2017年の納涼歌舞伎「野田版 桜の森の満開の下」のシネマ歌舞伎版です。1回だけ見たのですが(その時の感想、野田秀樹の世界観とメッセージが、歌舞伎役者の魅力と衣装、美術、音楽とが見事に合体して、とても満足な舞台でした。そのときは、舞台全体と個々の役者を見るのに忙しすぎたので、ゆったり集中できるシネマ歌舞伎を楽しみにしていました。その後NODA・MAPでの「贋作 桜の森の満開の下」も見たので、比較して見たかったし。

 感想は、生の舞台のときと同じなんですが、2回目なので物語がよりすんなり入ってくるのと、じっくり見てもやっぱり勘九郎の耳男と七之助の夜長姫すばらしい。ひとつひとつの台詞が本当にさまざまなバリエーションで的確に発せられているし、とくに耳男の動きがおそろしく面白いのと、早回しかというくらいの素早さ。

歌舞伎美人の野田秀樹インタビューは大変興味深い内容ですが、女方である七之助が夜長姫を演じることで、サディストぶりがより際立っているといっています。もう魅力的な悪女をやらせたら七之助の右に出るものがあろうか。

オオアマ(染五郎<当時>)、マナコ(猿弥)、赤名人(亀蔵)、ヒダの王(扇雀)は記憶通りよかったですが、映像で見て意外に重要な役割をしているのがアナマロ(新悟)とマネマロ(梅花)。エンマ(彌十郎)、ハンニャ(巳之助)、青名人(吉之丞)、もよかったですし、そしてやっぱりエナコ(芝のぶ)がすごいんですよ。そのまま現代劇で歴史に残る役がやれそうな弾むような女。

早寝姫(梅枝)もいいんですが、先月のあの小町姫墨染を見た後では、この1年半で、彼がいかにめざましく役者ぶりを上げているかを感じました。アンサンブルの人数が多いのも、歌舞伎ならではの贅沢。

野田秀樹は好きで、いつ見てもテーマと表現とエンタテインメント性のバランスのとれたきっちりした芝居を見せてくれると思うんですが、やっぱり歌舞伎は何かひとつその上を行く力があって、(納涼で見たとき、「いつもの野田秀樹の芝居は役者がパーツに見えるけれど、歌舞伎では役者の光が強い」と感じました)、少なくともこの作品に関しては、歌舞伎の方が好きだなと思いました。

映画用の小ぶりのパンフレットがいいです。扮装の写真もいいし、上演後ならではの、野田秀樹と美術堀尾幸男、衣装ひびのこづえ、美粧柘植伊佐夫、作調伝左衛門の記事が読めます。配役にもスタッフにも妥協のないプロダクションっていいですねえ。もっとチケットとればよかったと思わずにはいられません(でもこの月、1部は猿之助勘九郎の団子売があったし、2部は弥次喜多だし、日数は短めだったんですよね)。

 

 

 

木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」@KAAT

201903         木ノ下裕一さん歌舞伎演目の再構成による演劇、木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」です。木ノ下さんと児玉竜一先生の座談会 ですっかり天才木ノ下さんのファンになって、直後にチケットをとっていたのでした。

木ノ下歌舞伎は、私の理解では、歌舞伎台本の原典に立ち返り、物語として再構成したうえで、現代劇として上演することで、歌舞伎の演劇としての骨格を再認識するというもの。木ノ下さんの細かい読み込みと分析によりよりくっきりと演劇的構成が浮かび上がるということだと思います。

この「摂州合邦辻」は、高安通俊の後妻玉手御前(内田慈―ダンスも歌もよい女優)が、継子である俊徳丸(田川隼嗣)に毒酒を飲ませ、盲目・らい病にしますが、それは彼の腹違いの兄次郎丸からから守るためのもので、彼を元に戻すため、命を犠牲にするという壮絶な物語。歌舞伎では残念ながらまだ見たことはありません。

KAATの大スタジオ、11列目までしかなくてほんとに小さい、しかし舞台は十分な大きさのよい空間。無機質なインテリアは、実験的な作品にもぴったりです。

しかし、開始直後、全員での歌に驚き!黒い背景に大きな四角い木材が何本かあるだけの舞台に、キャスト全員が登場してイージーリスニング的なメロディの、現代の生活はたいへんだとかいう感じの歌詞の歌を延々と歌うんですよ。ミュージカルだったんだ!しかしいつ終わる?

オープニングでビッグナンバーを歌うミュージカルはけっこうありますが、最初から心を奪われる曲ですよね、RENTとかミス・サイゴンのような。中途半端な歌唱で歌われる歌に多少イライラしました。

そして、芝居が始まっても、ずっと音楽が鳴っているのに閉口。芝居としては、ヴァイルとか、ソンドハイムみたいな曲に合いそうなのに、フォークロックみたいなやや古い曲が、けっこうなボリュームで流れているのは本当にストレスでした。だっていい芝居ってBGMはいらないでしょう?後半、しばらく消えたと思ったら、最後にはまた鳴ったりして、BGMを流すかどうかの基準は見えず。

また、途中でもしばしば歌があります。最後も玉手の母おとくの歌。ミュージカルをこよなく愛する者として、こんなぬるい歌ばかりのミュージカルはそれ自体残念。歌を入れるなら、より感動を盛り上げるものでなければ意味がないんです。

男性はスーツ、女性は玉手は黒いレースのドレスですが他の女性は普段着。しかし前述のような意図のある芝居なので、脳内変換していきます。なるほど、この悲劇の背景にはそういう父娘関係があるのかということもわかっていきます。

木ノ下歌舞伎は、歌舞伎の映像を見て、台詞をすっかりなぞる稽古をびっちりやるそうで、元の台本通りの台詞の言い回しは、現代風となっていても、違和感は感じません。そういうところも含めて、お稽古は十分やれている感じ。俊徳丸以外は、活舌もはっきりしていて聞きやすく、その点からもお芝居が理解しやすいです。中でも羽曳野の伊藤沙保がクールでメリハリのきいたセリフがかっこいい。

201903_2

しかし、プロダクションの意図はともかく、エンタテインメントとしては、やっぱり歌舞伎役者の歌舞伎で見たい!ということでした。ついでに第1回亀治郎の会の玉手御前のチラシ。この役、とても猿之助に合ってると思うので。歌舞伎座でやってくれないかしら。

「世界は一人」@プレイハウス

201903       Twitterで追加販売を知って、キャストがいいので取った「世界は一人」、作・演出の岩井秀人さんは最近注目の方だそうで、ミュージシャン前野健太さんが演奏する音楽劇、劇場はプレイハウス、とばっちり。しかもお席はサイドながら通路より前ですよ!

前野健太のバンドが舞台上手にいます。この方、CM等にも出ているそうですが知らなくて、迫力ある、ソウルフルな歌声に感動。すっごくかっこよかったです。

お話は、松尾スズキ、松たか子、瑛太の同級生(!)の、小学生の高学年から中年くらいまでのいろいろを歌とともに描いていくというもの。スズキくんはやや冴えない子ども時代からからやり手のビジネスマンになり、金持ちの娘松たか子は5階から飛び降り、君臨していた瑛太は引きこもり…その先もいろいろあります。

主役の3人がやはりとても魅力的。スズキさん、俳優としても独特の軽みがあって、おじさんなのに少年みたいで大好き。「マンハッタン・ラブ・ストーリー」「ちかえもん」や「いだてん」もいいですもんね。不思議な動きの場面は笑えました。

松たか子、「カルテット」ではちょっと老けたかな、という気もしたんですが、生で見ると、かわいくて、女性としての艶やかさがありながら、女性というより人として魅力的だなという感じがして、歌もうまく身体能力も素晴らしいんですよ。野田秀樹とかこういう作品を好んでいる松さん、どういう方向にいくのか、気になります。

そして瑛太、野田秀樹作品などでおなじみですが、相変わらずバランスの取れた身体、ナイーブな感性、超かっこいいですよ。歌もうまくてですね、若さと成熟のバランスがいちばんいいときというか。若干出番が少なかったのが残念なくらい。

ほかに迫力とユーモアの達者な平田敦子(よしもと所属ですよ)、菅原永二、平原テツ、古川琴音と的確な演技で複数の役を演じる役者さんのキャスティング。

しかしこの作品、3人の人生を描くという割には、ありふれたセリフだけで描こうとする場面が多く、残念な感じがしました。寓話的な描写であっても、部分的なリアリティの積み重ねとか、鋭い表現等が、芝居の実となって観客に訴えかけると思うんですけど、表層的でなんか高校演劇みたい。

音楽、セット(美術秋山光洋)、役者はいいのに、新鮮ないい材料で、料理の仕方を間違えた感。怒鳴るシーンもありましたが、怒鳴ればいいってもんでもないし。

特設サイトをみると、岩井さんは「レ・ミゼラブルやミス・サイゴンのようでない、会話からすっと歌に入るミュージカル」を目指したとのことですが、それって普通にオフ・ブロードウェイ作品でやってるやつじゃないですか。新しくもないし、表現としてはさほど洗練されていない(曲はいいけど)。布団の使い方は生活臭があって好きじゃない。

しかも、「深刻なテーマを内包しながらも、“おばちゃんにもわかる”平易な言葉で」って何です?実は朝この特設サイトのこのフレーズを見て、「おばちゃん」って何だよ!と不愉快だった私。劇場の主要顧客である中高年女性全般を指すなら天に唾する行為ですし、特定の人々を想定するなら差別的だし。言葉知らないのは今どきの若いもんなのに何言っちゃってんの(ガチ切れ)。

瑛太のあまりのかっこよさに、見ている間には、何でこんなに素敵な人がいるのに、あの黒光りしたシニカルなおじさん(←ひどい)のファンなんだろうっていう考えが浮かびましたが、結局、今日は偶数日だったのに歌舞伎座行けばよかったな、なんて思っちゃいました。すいません。

「プラトーノフ」@プレイハウス

201902_2

       実は舞台では見たことがなかった藤原竜也主演、森山新太郎郎演出でチェーホフということで「プラトーノフ」に行ってまいりました。

発売開始からちょっとたっていたのに、通路後ろ中央。プレイハウスでは(もっと前方の経験もあるけど)、視界良好で最良席ですよ。そのためか、今日「ヘンリー五世」のソワレがお休みだった吉田鋼太郎さんと横田栄司さんが同列でご観劇(オーラすごかった!)。反対側には戸田恵梨香さんも。

さて、本作はチェーホフ弱冠21歳の処女作、生前には上演されなかったそうです。「チェーホフの戯曲『父親不在』における家族像」 という論文をみつけましたよ。

お話は、19世紀末、ロシア。小学校の教師ミハエル・プラトーノフ(藤原竜也)は魅力的な自由人。妻サーシャ(前田亜希―勘九郎の奥さんの愛さんの妹ですね)と息子がいながら、将軍の未亡人アンナ(高岡早紀)、学生時代の友人ソフィア(比嘉愛未)、大学生(中別府葵)、から愛され、人生が崩壊していきます。

出演はほかにソフィアの夫セルゲイ(近藤公園ー大人計画の人)、サーシャの弟の医師ニコライ(浅利陽介)、父(西岡徳馬)、アンナの求婚者ボルフィリ(神保悟志)、その息子(尾関陸―いい目をしていて、売れそう)等。ちょっとした役のみなさんも個性的で濃厚、隙の無いキャスティングです。

導入部は、アンナの家に次々と登場人物が出て、いろいろ世間話をしますが、さほど笑えるわけではなく、この人がどんな展開をするのかもわからず、じっと見るしかありません。しばらくしてから登場するプラトーノフが、なんか、藤原竜也だよなあ、と思いながら、もてる様子を見ていく1幕。だんだん、笑ってもいいのかな、という雰囲気が出てきます。

さて、盛り上がるのは休憩後の2幕。プラトーノフは、サーシャに出ていかれ、ソフィアとずるずるしながら、自堕落に学校(彼は学校が家)に暮らしています。ふろにもはいらず、汚れたオールインワン(赤ちゃんの服ですね)を着ているミハエル。

こんな汚い衣装、見たことありません(しいていえば「海をゆく者」の吉田鋼太郎)。しかし、スリムな肢体を縦横に使って舞台中を転げまわる竜也。

これまで、蜷川さんの秘蔵っ子として、とにかく熱い舞台を部分的に映像で見たことはありましたが、今回はモテル役だしそういうのじゃないだろうと思っていたらば!どんなに転がっても、体重を感じさせない柔軟な身体の動きは、それだけで目が離せません。ストプレでここまでキャラクターや芝居自体より、役者そのものに(歌舞伎のように)注目せずにはいられないというのは、めったにないかも。

ここまでくると、客席も「笑っていいのね」となり、藤原君も、演技なのか素なのか、「水ほしい」と笑ったりして。なぜ笑えるのか聞かれても困るような笑いがこみあげてきます。

その場限りの恋愛をしながら、ほんとはもっとちがう自分になりたかったプラトーノフ。しかしこの芝居は彼の望みは突き放していて、救いなどは考えていないよう。最後は破滅に向かいます。誰か死ななければ収まらない展開でしたが、こうきたか。

高岡早紀、よかったです。どの場面もスタイルが決まっていて、美人だけど品があってくずれすぎなくて。

森さん、この作品を皮切りにこれからチェーホフシリーズを手がけていくようですが。これはなかなか興味深い佳作でした。

「暗くなるまで待って」@サンシャイン劇場

201902

      「暗くなるまで待って」は、舞台作品をオードリー・ヘップバーンで映画化した作品(1967)が有名ですが(題名だけは知っていた)、加藤和樹と凰稀かなめなので、勝手にミュージカル化作品なのかと思っていました。どうもそうでないらしいと思ったのが当日。

写真家サム(松田悟志)の家が舞台。アムステルダムでリサがサムに預けた大量のヘロインを隠している人形を、ロート(加藤和樹)の指示で、監獄帰りの小悪党マイク(高橋光臣)とクローカー(猪塚健太)は、それぞれサムの旧友、刑事になりすまして、サムの妻スージー(凰稀かなめ)に探させようとします。

舞台はサムのアパートだけという、密室サスペンス。スージーは盲目で、ロートは冒頭から殺人を犯している冷血な男。男たちに一人立ち向かうスージーがどんな作戦なのか、息詰まる頭脳戦。最後は、女殺油地獄です(←すごいネタバレ)。照明も効果的でした(笠原俊幸さん)

凰稀かなめ、ドラマ「トットちゃん」の、新納慎也と駆け落ちするお嬢さんの役が魅力的でしたが、自然かつ明瞭なセリフ回し、スラリとしたしなやかな身体、愛くるしい瞳、そして盲目の演技も的確で、とにかく素晴らしい!2場から出ずっぱりなんですが、もう見事にこのヒロインを演じきっていました!

主要5人の中では、ほかにマイクの高橋光臣がよかったです。根は人の好いマイク、スージーに対して優しい気持ちになる過程を丁寧に見せてくれて、最後は悲しくなっちゃいました。猪塚健太も、かわいくって魅力的。はじめスージーに反発しながら、キーマンとなる少女グローリア(黒澤美澪奈)も元気いっぱいの好演。

主演はいちおう加藤和樹ということになってるようですが、うーん、語尾に力が抜ける台詞、かっこいいんだけどやっぱりパワー不足な感が。大役が続いていますが、毎回物足りなさを感じちゃうんですよね。吉原光夫とか、石川禅だったらなー。とにかく、このお芝居、凰稀かなめにつきます。ブラボー!

(おまけ)

この作品のブロードウェイ・オリジナルでは、トニー賞の主演女優賞にノミネートされていますが、それがリー・レミック。「酒とバラの日々」や「オーメン」にも出演しているそうです。

詩楽劇「すめらみことの物語~宙舞飾夢幻」@国際フォーラム

201901            あけましておめでとうございます。今年もたくさんの舞台を楽しんでいけたらな、と思っています。よろしくお願いいたします。

さっそく新年最初の芝居は、詩楽劇「すめらみことの物語~宙舞飾夢幻(そらにまうかざりのゆめ)」です。1月2日・3日の3回公演のみ、猿之助のほか、尾上菊之丞、愛加あゆ、バイオリニスト川井郁子、和楽器奏者吉井盛悟の5人がメインで、音楽と舞踊を入れた物語。J・CULTURE FESTと題したイベントの一部です。脚本は横内謙介、演出・振り付けは菊之丞。

といっても事前にはすめらみこと、というのみで内容はよくわからず、左のチラシのビジュアルでは、背後で一番大きく映っている猿之助丈がラスボスのような、などと思っておりました。

入場の前に、国際フォーラムのガラス棟に行ってみたら、「即位・儀式の美/平安王朝文化絵巻」という展示をやっていました。源氏物語を題材に、平安の衣装や牛車の再現や、人形による明石の姫君の裳着の儀式や布を砧で打つといった家事の様子など。「源氏物語」は好きで現代語訳はいろいろ読んでいるので、そうそう、秋好中宮が腰紐を結ぶ役だったなどと思い出しました。が、この展示の眼目は即位の礼の再現場面のようでした(そういえばこの施設東京都が過半の大株主で…)。

さて、「すめらみことの物語」。四角い舞台の外側三方に客席。両側がパイプ椅子、正面が傾斜のついた座席になっています。殆ど埋まっているように見えました。

最初は、三方のスクリーンで、仁徳、持統、霊元、東山天皇が紹介されます。そのうちの一人、江戸時代に220年振りに大嘗祭を復活させ、子に譲位した零元天皇が猿之助。愛加あゆは故事を調べる女官という設定ですが、その間に川井さんのバイオリン、愛加あゆさんの歌、吉井盛悟さんは大太鼓、太鼓、笛、胡弓?とさまざまな楽器をかき鳴らします。演者が少ないので一部が録音らしいのがやや残念ですが、曲も川井さんのオリジナルが多く、バラエティに富んでいて面白かったです。

それぞれの道でキャリアを積んでいる自信にあふれた皆さん、それぞれに美しいというかかっこいいというか、普通の劇場よりずっと近く見られて、お正月から眼福でした。菊之丞さんの、女性お二人との舞も素敵でした。

お芝居部分に戻ると、最初の大嘗祭復活を目指すという設定の説明があって、姉小路さすがという女官に扮した猿之助が「金がかかるから無理」といじわるを言います。これがなかなか、ちょっと秀太郎さんの言い回しが入ってて、次は何だろうと食い入るように見ていた観客をほぐすような場面。アドリブらしく愛加さんに今日何食べた、と尋ねた後、「これで6食冷たい弁当」というのは何とも気の毒。

若い女官姿で、愛加さんといっしょの舞もあって、猿之助としては一番の見せ場。しかし歌舞伎に女性が立たないのは、女方という虚構が壊されるから、というのを読んだことがありますが、なるほど、ほんとうにきれいな愛加さんと一緒ではとても、と思いつつも、同じように立っていながら、回りに空間が広がるような、堂々とした舞姿に、そういうことは超越した感がありました。

最後は大嘗祭が実現し、東山天皇(愛加あゆ-この装束もかわいい)に譲位が実現します。最後の霊山帝の息子に対する言葉、「伝統を受け継ぐのは宿命だがそこに何ができるかが大事だ」と、まあご自分のことをと思うような台詞を力強く放って終演。この方、仏教に造詣は深いけれど、バランス感覚のある方なので、この芝居のメッセージ性を中和したように思いました。

お稽古日は数日だったようですし、いろいろな意味で謎は残りましたが、それでも各人の魅力は十分引き出されていた舞台だったといえましょう。集客的にも、愛加さんももちろんですが、猿之助さんが出るときけばよくわからなくても行くファンがいる分成功したのではと。

しかし猿之助丈、この舞台初日は歌舞伎座の初日でもあり、夜は松竹梅湯島掛額。初役で舞台を回す役どころなのに、そして、先月手術をしたばかりのようなのに、新年初めから全開で、今年は忙しくなりそうです。

(追記)

歌舞伎座夜の部「松竹梅湯島掛額」を見ました。前半小一時間、全体に絡む役どころで、遊び心たっぷりに楽しい芝居をしています。昼夜ちがう演目に出るのは当たり前な歌舞伎役者ですが、お正月休みを挟んでいきなり、やっぱりすごいです。

より以前の記事一覧