2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

最近のトラックバック

映画

映画「ドリーム」

Photo    騒がれた大作というわけではないですが、感動したという人が多いので、「ドリーム」見てきました。1960年代、まだ黒人差別や女性蔑視のはびこるNASAで宇宙ロケット開発に活躍した黒人女性3人を描いたものです。

当初、「ドリーム わたしたちのアポロ計画」という邦題でしたが、アポロじゃなくてマーキュリー計画だったので、炎上したんですね。そりゃそうだ、宇宙開発だからって、それをごっちゃにしちゃダメでしょ。マーキュリー計画は、コロリョフという一人の天才率いるソ連に先んじられていたアメリカがなんとか追いつき追い越したいと焦っていた時期、アポロはその後、ソ連より先に月に先に人類を送ることに成功したプロジェクトですからね。所得倍増計画と日本列島改造計画を一緒くたにするようなもんですかね(古い)。

原題は「Hidden Figures」。長らく日の当たらなかった陰の功労者たちといった意味なんでしょうが、主人公が数学の天才なので、数字(Figures)にかけてるんですね、うまい。

数学の天才キャサリン(タラジ・P・ヘンソン)、技術者の才能のあるメアリー(ジャネール・モネイ-この方歌手だそうで、かわいい!ミュージカルで見たい)、計算室で黒人女性を束ねているドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は、NASAで働いていますが、まだ州はSegrigationをしていて、露骨な黒人差別をしています。キャサリンは、アル・ハリソン(ケヴィン・コスナー)率いる開発の中枢に抜擢されますが、そこは白人男性ばかり、献身的に働きながら、colord専用のトイレを使うために離れた建物にいかなければなりません。メアリーは、学位がありながら、技術者育成コースに志願するために白人の学校でしかとれない資格を要求されます。ドロシーは実質的に管理者なのに、昇進させてもらえません。

前半はけっこううるうる、トイレ!はもう完全に泣けましたですよ。

実際には、この時期よりも数年早く物理的な差別施設は撤廃されていたという話もあるのですが、いずれにしても、彼女たちがやりたいことをやるには、組織の中でうまく才能をアピールすることが必要で、めげずに壁に立ち向かっていくところは本当に痛快でした。全員結婚していて子どもがいるのもいい感じ(またいいお母さんで、子どもたちもいい子たち過ぎる)。キャサリンとメアリーの衣装が鮮やかで、二人に似合ってて素敵です(ドロシーは…すいません)。ピンヒールも歩きにくそうだけどかっこいい。

途中からうまく行き過ぎるし、黒板に書く手計算でそんなに複雑な計算ができるのか、とは思いましたが、まあそれも映画ってことで。

久しぶりに見るケビン・コスナー(ご本人はずっと映画に出続けていますが)が、いい役でかっこよく、うれしかったです。意地悪役のキルスティン・ダンストがハマりすぎていてちょっときらいになっちゃいました(笑)。

そして、いいところで出てくる宇宙飛行士ジョン・グレン(グレン・パウエル)が、ほんとにいい人なんですよ。ジョン・グレンって、どんな宇宙開発映画でも一番華があって、いい人で、アメリカのヒーローなんだな、この人を宇宙に送って死なせたら、国民からどんなに非難されるか、と思わせるような雰囲気があったんだろうなと思わせます。

  • 映画「ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ」

    Hedwig   先日のジョン・キャメロン・ミッチェルの特別公演の後、映画のDVDを見てみました。というか、名作なんだし、せっかく生ジョン様見るんだから、見とけよってことですよね。

    ああ、ほんとに、映画見ておくべきでした。さまざまなメイクとカツラとファッションのジョン様が名曲の数々を歌うだけでもすばらしいんですが、ドキュメンタリーっぽい映像に、架空ながらリアルなヘドウィグの人生が描かれていて感動的。オーブに集まったファンたちは、1曲1曲にこの映像を重ねながら、ジョン様の歌を聞いたんでしょうね。それは熱狂するわー。

    「ロッキー・ホラー・ショー」と似てるなんて言われているようですが、似てるのはフランクフルター博士とヘドウィグのビジュアルの雰囲気くらいで、ずっとリアルで深い。そして、メイクなどはかなり強烈なんですが、ジョン様の小さな顔やスリムな体があまり肉感的でなくて、ある種さわやかさがあるのがいいです。

    ヘドウィグ(ジョン・キャメロン・ミッチェル)は東ベルリンに生まれ、ルーサー軍曹と結婚して出国するために、切断手術をうけますが、その失敗で1インチ残っちゃいます(Angry Inchi!)。アメリカでルーサーと別れ、ベビーシッターをしているときに知り合った少年トミーTommy(マイケル・ピット)とたくさん曲を作りますが、トミーはヘドウィグの曲をパクッって大スターに。ヘドウィグと恋人のイツハク(ミリアム・ショア)のバンドはトミーのやる会場の隣のカフェでライブをやりながら、権利を取り戻そうとしますが…。

    このイツハク、小柄で声が高いとはいえ髭も濃く、まさか女優がやっているとはおもえませんでした。中村中って、ミュージカル版でこのイツハクを演じていたんですね!イツハクは、RENTのTシャツを着ていて、RENTのグアム・ツアーのオーディションを受け、エンジェルに決まるんですが、そこが、この映画がつくられた頃のRENTの地位を思うと、ああ、って思います。RENTのゲイはいくつもある愛の形という感じで、とても自然な描かれ方ですからね。

    トミーと再会してからのヘドウィグについては、いろいろな解釈がありうるようです。イツハクとも別れちゃったのかどうかよくわからなかったし。ヘドウィグはこれからどうするんでしょうか。このバンドはやめてしまっても、いつか音楽に帰ってくると信じたいです。

    「ソフィア・コッポラの椿姫」

    Photo_3     映画監督ソフィア・コッポラがオペラを初演出したヴェルディ作「椿姫(La Traviata)」(2016年5月、ローマ歌劇場)の映画化です。オペラは数回しか見たことのない私、この有名な作品も見ていないので、よい機会とみてきました。特別料金3000円なりです(ついもう1000円出せば歌舞伎座3階Bだとか思ってしまう)。

    コッポラにオファーしたのはヴァレンティノ・ガラヴァーニだそうで、衣装はもちろんヴァレンティノのメゾン、イタリア人キャストをフィーチャーしてローマで上演というもの。このチラシの真っ赤なドレスがとても素敵でした。演出については、初めて見るので、普通とどうちがうのか、はよくわかりません。 公演情報http://www.operaroma.it/en/shows/opera-traviata-2016/

    舞台はパリの社交界。高級娼婦のヴィオレッタ(フランチェスカ・トッド)は、パーティでアルフレード(アントニオ・ポーリ)と出会い、恋に落ちます(ちょっと意識が飛びました)。二人で住む田舎の別荘に、アルフレードの父ジェルマン(ロベルト・フロンターリ)がやってきて、ヴィオレッタに息子を返せと迫ります。ヴィオレッタはパトロンの男爵の元に戻ったふりをして別れますが、パリのパーティで再会します。ヴィオレッタは結核が悪化し、死の床にアルフレード親子が駆け付け、ヴィオレッタは生きたいと願いながら息を引き取るのでした…。

    オペラというと、長くて大掛かりで登場人物もたくさん、というイメージなんですが、このオペラ、大勢が出てくるところとそうでないところがとても極端で対照的。最初のパーティでは、舞台にぎっしりキャストがひしめきあい、聞き覚えのある「乾杯の歌」に感動。ヒロインのフランチェスカ、まだ27歳ということですが、まあ貫禄があってすごい迫力。彼女の歌がとても多くて、こんなに歌って大丈夫かというくらい、驚異的な音域で歌いまくります。

    対するアルフレード。ああ、小太りであまりに庶民的な風貌。数多の恋で社交界を生き抜いてきたヴィオレッタが真実の愛に目覚める純粋な青年というには…最後まで、残念な気持ちがぬぐえませんでした。

    一方父ジェルマン。もちろんお年でおぐしもないんですが、フランチェスカとのやりとりに味があって、この方、非情なだけではない慈愛が感じられてよかったです。ただ、純愛物語なのに二人のシーンが長すぎて、劇自体の面白みは削いでますね。

    パリで再会するヴィオレッタとアルフレード。バレエが素敵で、特に女性、男性の中心ダンサーはとても個性的で好きでした。アルフレードはヴィオレッタに、金を返す、とお札を投げつけるのですが、ここでもぎっしり舞台にいる人々から、一斉に、「女性を侮辱するなんて!」とアルフレードにツッコミが入ります。ヴィオレッタは娼婦でアルフレードはお坊ちゃんなのに、この一斉の非難が気持ちよかったです。ここでヴィオレッタが着ているのが、チラシの、たっぷりした真っ赤なドレス!

    ここからいきなり瀕死のヴィオレッタの場面となります。そう、アルフレードとヴィオレッタの愛憎の描写が薄いんですよね。ヴィオレッタをやる一流のソプラノはどう見ても結核なんかになりそうもない体格だし。この3幕のヴィオレッタとアルフレードの二重唱「パリを離れて」も有名で美しい曲なんですが。

    ってことで、やっぱりオペラはオペラ歌手を聞くもの、お芝居に歌がつくミュージカルとはちがうんですよねえ。時々こうやって触れるぐらいでいいかな、と思った次第でした。

    映画「ネバーランド」

    Photo   2004年のジョニー・デップ主演の「ネバーランド」です。 

    ジョニデはロンドンの人気劇作家ジェームズ・バリ、今スランプですが、かわいい4人兄弟と知り合い、少年の気持ちを取り戻します。名家の出ながら、夫の死後、実家の母に頼らず孤軍奮闘する兄弟の母シルビア(ケイト・ウィンスレット)。この一家にますます入れ込むジェイムズは、妻と気まずくなっていきますが、少年たちをモチーフにした作品の「ピーター・パン」は、大当たりとなります。しかしシルビアは無理がたたって健康を損ねていました…。

    「ピーター・パン」の初演は1904年、その当時のイギリスの雰囲気が、衣装やインテリアや劇場に現れていてステキです。「ピーター・パン」の劇中劇も、ワイヤー・アクションが飛んでいる感じをうまく出していて、お、宙乗り(←はいはい)と思いました。

    ま、でも、シルビアとジェイムズの心の通い合いがさほど描かれていなくて、ケイトは相変わらずうまいなと思うんですが、なんかあっさりした映画でした。印象に残ったのはむしろシルビアとその母(ジュリー・クリスティ)の関係だったりして。

    兄弟のうち3男のピーターが、父の死により屈折していて、でも創作に意欲を示すということで、とくにジェームズと親しくなるのですが、この瑞々しい少年、イギリスの子役はうまいなあと思ってたら、「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)で招待されるかわいい少年と同一人物(フレディ・ハイモア)でしたよ。フレディくん、こんなメジャーな映画に8歳やそこらで2つもいい役をしていたら、末はどうなるんだろうというところですが、その後ケンブリッジ大学の二つの専攻をダブル・ファーストで卒業し、しっかり俳優の道も進んでいるそうで、よかったですね。

    映画「ウォルト・ディズニーの約束」

    Photo   2013年の映画「ウォルト・ディズニーの約束」です。

    「メアリー・ポピンズ」の作者パメラ・トラヴァース(エマ・トンプソン)は、ディズニーによる映画化のために、イギリスからロサンゼルスにやってきます。ミュージカルも楽天的なメアリー・ポピンズの性格も、バンクス家の設定もディック・ヴァン・ダイク気に入らないことだらけ。銀行家だったのにアルコール依存症で若くして亡くなった父(コリン・ファレル)のことがフラッシュバックします。しかし、金もうけしか頭にないと思っていたウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)の熱意や誠実さに、トラヴァースは徐々に映画を受け入れ、傑作映画が完成します。彼女はこの映画のラストに、父が救われた気持ちになるのでした。

    心にトラウマを抱えたかたくななイギリスの婦人と、ただ愛されるいい映画を作りたいディズニーのスタッフとの対比が鮮やかです。「メリー・ポピンズ」は、子どもたちと繰り返し見て、ジュリー・アンドリュースとディック・ヴァン・ダイクに魅了されましたので、このゴタゴタが、最後には成功につながると、安心して見ていられました。ラスト、プレミアで、控えめに感動を現すエマがほんとに素敵で、いい後味でした。

    たしか公開時には、トム・ハンクスがウォルト・ディズニーにそっくりと話題になっていたと思いますが、イギリスを代表する名女優エマ・トンプソンの演技を味わう映画。そして、ダメ男のコリンファレルがステキ。運転手のポール・ジアマッティとの友情もジンときました。

    原題は「Saving Mr.Banks」。トラヴァースの父に重なる「メリー・ポピンズ」の父Mr.Banksが人間性を取り戻すストーリーと、BankとSaving(貯金)をかけたうまいタイトルなんですが、さすがに日本ではこのストレートな表題の方がわかりやすいでしょう。けなされることの多い邦題の中では、なかなか秀逸だと思います。

    「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」

    Photo  見た人がみんな衝撃を受けた、感動したというドキュメンタリー映画、「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン」を見ました。

      セルゲイは1989年、ウクライナ生まれ。生まれたときから体が柔らかく筋力があり、体操を経てバレエですぐ才覚を現します(最近の人だけに、映像がたくさん残っていて天才児振りがうかがえます)。

    キエフの国立バレエ学校に入学したセルゲイの学費を稼ぐため、父や祖母は国外に出稼ぎに。そして母の判断で、英国のロイヤルバレエ学校のオーディションを受けて入学を許され(「ビリー・エリオット」みたい!)、ここでも圧倒的な実力を示します。家族のためにがんばってきたのに、両親の離婚に傷ついたセルゲイ。史上最年少の20歳ででロイヤル・バレエ団のプリンシパルとなりますが、タトゥー、ドラッグ、鬱とBAD BOYと言われたセルゲイは、2年後に突然退団してしまいます。

    ロシアに行き、テレビのバレエコンテストから人気者になったセルゲイ、イーゴリ・ゼレンスキ―の指導のもと、しばらく活躍しますが、ここでも行き詰まりを感じ、最後にホージアの「Take me to Church」のMVを、ロイヤル・バレエ学校の親友Jade Hale-Christphi (この方もかっこいいんですよ。もう一人の学校のお友だちも!)の振付で踊って引退しようとしますが、それがYoutubeで大人気となり、復活を遂げます。

    セルゲイ、ロシア系らしい彫りの深い美形で、180センチ超、手足も長く、完璧な形のお尻、まるで生きたミケランジェロの彫刻、しかしリアルな人の顔まである全身のタトゥが異様。そしてそのバレエは、驚異的な身体能力と表現力。見ているうちに、あ、この人、「オペラ座の怪人25周年ロンドン公演」で踊っていた印象深いダンサーだということを思い出しました。2011年ですから、短いプリンシパル時代だったんですね。とにかくこの若さに似合わない迫力と哀しみのこもった表情で、ドラマチックな人生、映画にしようと思った人、えらい!

    バレエダンサーの過酷さもみられます。美しいバレエの陰に、疲労、痛み。殺伐とした楽屋で水と薬を飲むセルゲイ。猿之助の襲名時のドキュメンタリーでも、体中つって息も絶え絶えになっていましたが、代々使う化粧台と花、何より常にサポートに徹するお弟子さんのいる居心地の良さそうな楽屋との違い。プリンシパルのメンタルは歌舞伎役者よりずっと強くないとやっていけないのでしょう。

    そしてセルゲイのために人生を捧げた両親、とくにお父さんは息子を深く愛しているのに、孤独感が滲んでいて(インタビューの背景もちょっと荒んでいます)、幸せになってほしいと思いました。

    「ティム・バートンのコープスブライド」

    Photo   2005年のティム・バートン監督のアニメ映画「コープス・ブライド」です。あの名作「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」と似た雰囲気で、そのうち見ようと思っていたら、アマゾン・プライムでやってました。corpse って、死体という意味だったんですね。

    家柄とお金の政略結婚のため結婚式前日に初めて会ったヴィクター(声・ジョニー・デップ)とヴィクトリア(エミリー・ワトソン)は、互いに似たものを感じて惹かれます。しかし結婚式のリハーサルは失敗、夜一人で練習をしていたヴィクターは完璧に言えた途端、死者であるエミリー(ヘレン・ボナム・カーター)と結婚したことになってしまい、死者の世界に連れていかれます。

    ヴィクターとヴィクトリア、エミリーのいわば三角関係なんですけど、3人ともいい子たち。3人の純粋な気持ちが過不足なく描かれています。さらに様々な個性的な死者の世界、悪役との闘いなどもきちんと描きながら、たった76分。おそるべし天才ティム・バートン。

    ジョニデとヘレンはクレジットもされているのでもちろんわかりましたが、風変わりな牧師役がそうかな、と思ったらクリストファー・リーでした。本当に晩年まで、いい仕事されています。

    映画「超高速!参勤交代」

    Photo    評判がよくて、そのうち見ようと思っていた本木克英監督の2014年の映画「超高速!参勤交代」、猿之助が将軍吉宗役で出ているのを知って、見てみました。

    福島いわきの小藩湯長谷藩の藩主内藤政醇(佐々木蔵之介)は、参勤交代で江戸から戻りほっとしていると、藩の金山についての報告について疑義があり申し開きのため、通常8日の道のりを5日以内で江戸に戻れという命を受けます。行列の人数をごまかしたり、忍びの団蔵(伊原剛志)を雇って山道を行ったりと苦労しますが、金山についての疑いは、悪徳老中(陣内孝則)の陰謀で、道中彼の使う隠密によって、数々の危難が待っているのでした…。

    道のりを急ぐだけで、もっとほのぼのとしたストーリーかと思っていたら、意外と派手に戦ったり追手から逃れたりと、じゅうぶん時代劇としてエンタテインメント。金目当ての団蔵が、土にまみれた謝金を見て、藩の実情を悟って戻ってくるなど、見る者のツボを押さえた作りになってて、さすがヒット作です

    なんといっても蔵之介以外考えられない、誠実で優しくて強い殿様がはまっていて秀逸。家臣たちも、西村雅彦の家老をはじめ、寺脇康文、上地雄輔(この人、映画の画面で輝くいい俳優さんになりましたね)、知念侑李、六角精児、柄本時生と個性的。殿様を助ける女郎おさき(深田恭子)が、清潔感のあるかわいさです。伊原剛志もかっこよかった!忍成修吾、どこに出てたっけと思ったら、あの美形の忍びだったとは、「山田太郎ものがたり」以来チェックしてる俳優さんです。

    そして猿之助。将軍というキャスティングは、「武田信玄」のイメージからなんでしょうね。出番は短いですが、大好きな蔵之介をねぎらって酒を酌み交わすところで、楽しかったんだろうな。二人は同じ事務所なので、バーターなのか、猿之助バーターって贅沢な、と想像するのもちょっと面白いです。

     

    映画「花戦さ」

    Photo    華道の池坊の僧専好(野村萬斎)を主人公に、千利休や秀吉とのいきさつを描いた「花戦さ」、豪華キャストで舞台あいさつが話題となりましたが、猿之助強化月間なものですから(笑)、見てまいりました。

    京都の頂法寺(六角堂)の専好は、岐阜の信長(中井貴一)に呼ばれて、登り竜と名する壮大な松の生け花で気に入られます。10年後、秀吉(猿之助)が天下をとった時代、利休(佐藤浩市)と再会し友情を育んだ専好は、次第に横暴さを増していく秀吉に花で戦いを挑み…

    坊主頭の萬斎さんがすばらしい。飄々とした、花のことばかり考えている、心優しい僧を表情豊かに演じます。中井貴一、前田利家の佐々木蔵之介、専好の弟弟子和田正人、姑息な三成の吉田栄作と、この作品世界にしっかりはまっています。専好の師匠や、歌の得意な留吉の河原健二、子役に至るまでみなさん好演。専好の優しさと花の持つ力を表すような森川葵ちゃんも目がきれいで適役でした。

    で、猿之助なんですけど、かわいかった藤吉郎時代から、自分が最高でなければ気のすまない関白まで、まあオレ様全開でよくぞこのキャスティング。利休を踏みつけるシーン、猿之助は、「ほんとうにいやでした、内心ごめんなさいと思って」と言っていましたが、佐藤浩市は、「(狂言や歌舞伎とちがって)僕みたいな路傍の石ころみたいな役者は、圧がないと芝居ができないので、もっと踏んで、と思ってました」(さすが、記事になりそうなことをおっしゃいます。多くの記事では、「路傍の石ころ」という言葉を避けてましたが、せっかく浩市さんがそう言ってたのにねえ)。いや、この猿之助のドSぶりは、ごちそうさまでした。

    ラストの秀吉と専好との対決シーンもみものです。人って自在に青筋立てたり消したりできるんですね(!)。とにかく年齢不詳な、若くて老成している猿之助、豊かな表情と声が見事でした。

    池坊全面バックアップらしいお花がきれいだったのはもちろんなんですが、画面の緑がいまひとつくすんで見えたのが残念だったです。もっと木々の緑ってきれいなものだと思うんですよね。

    重要な役割を果たす猿の絵、等伯が中国の絵を模写したあの猿で、ほんわかしました。

    そして、この後、歌舞伎座行って「浮世風呂」の幕見。またちがう猿之助を堪能しましたです。映画で専好が蓮の描いたなめくじの絵を見て、「なめくじがこんなにかわいいもんやなんて知らなんだ」というようなセリフがあるんですが、きゃー浮世風呂、とひとりにっこり。

     

    蜷川幸雄シアター「ヴェニスの商人」猿之助のシャイロック

    Venis_ninagawa     蜷川さんの一周忌追悼企画で、舞台の映像を4作品、映画館でやってたのを知ったのがつい最近。猿之助がシャイロックを演じた2013年のオールメールシリーズの「ヴェニスの商人」にかけこんできました。蜷川さん、「NINAGAWA 十二夜」で絶賛していましたが、そのあと「じゃじゃ馬ならし」、「ヴェニスの商人」と、すっかり猿之助気に入っちゃったんですね。その後2015年に「元禄港唄」、二人の忙しさを思えば、十二夜の後の3本は驚異的です。

       「ヴェニスの商人」といえば、学生の頃、劇団四季で、先ごろ亡くなった日下武さんがシャイロック、アントーニオを浜畑賢吉、バッサーニオ鹿賀丈史、ランスロット市村正親という、よくできたプロダクションを見ました。日下さんの明瞭なセリフと独特の容貌がヴェニスのユダヤ人という役どころに合っていて、ほかのキャストも生き生きとしていて(ランスロットの市村さんには目を奪われた!)芝居が好きになったきっかけの一つでもある作品です。

    この蜷川版の猿之助シャイロックは、さらに舞台で異彩を放っています。ほかの主要キャストが真っ白な凝った衣装なのに、シャイロックは赤と黒、縁のない帽子、これでもかという老けメイク。歯も虫歯だらけで抜けてるし(手だけは若かった!しかもたぶん常に化粧して落としてるからツヤツヤ。白目もきれいに澄んでいます)。常にまっすぐ立たない、視線も斜め、口から出るのは悪態と恨み言。様々な声で緩急自在なせりふ回し、どうかすると見得は切るわにらむわですが、ちゃんとシェイクスピアの人物になっているのはさすが。クライマックスの裁判シーンでは、舌を赤くしていました。

       Venice 全編あれだとどうかと思いますが、時々出てきてぐぐーっと引き付けて、好きなだけタメたり間をとった芝居をしていく猿之助。それが形だけでなくて、紛れもなく虐げられた異邦人であるシャイロックの悲しみや恨みがあふれています。裁判後の退場も花道のように客席からでした。そして、ラストはこの演出オリジナルで、シャイロックが再登場、改宗させられた十字架のネックレスをねじ切って握りしめ、鮮血が流れます。ほのぼのとした指輪のシーンから、どーんと、シャイロックの悲劇に連れ戻される場面です。

    カーテンコールは役者もちょっと素に戻ったりするものですが、彼はスタオベを経てもシャイロックのままで、そこがまたおかしかったです。。あのドヤぶりがダメなひともいるんでしょうが、現代劇においても天才としかいいようがない。

    上演時のインタビュー動画がありました。お顔ツヤツヤの好青年(一癖あり)です。何なの(「ヴェニスの商人」は明治に二代目左団次が演じた日本初の西洋劇だったということをひいて、歌舞伎でこの作品をやりたいと、これまた猿之助らしいコメント)。

    Photo    これで女形するとここまできれいになれるんですからね(長塚さんの写真集より)。

    ほかのキャストはポーシャ(中村倫也)、アントーニオ(高橋克美)、バッサーニオ(横田栄司)等。とくにポーシャはだんだんかわいく見えてきて、裁判部分も男装の美女に見えます。ランスロットのシーンが今一つだった以外は、皆さんきっちり演じてますが(若干、アントーニオとバッサーニオがなぜそこまで親友なのかわかりにくい)、やや印象が薄いのはまあ猿之助の熱演のためでしょう。

    より以前の記事一覧