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「カメラを止めるな!リモート大作戦」「12人の優しい日本人」を読む会

2005映画「カメラを止めるな!リモート大作戦」 】  

ステイホームなGWのプレゼントという感じの、上田慎一郎監督「カメラを止めるな!リモート大作戦」の配信です(YouTubeの配信サイト)。日暮家は、真央ちゃんが独立し、晴美ママは留学していて3人バラバラですが、新型コロナの状況下、日暮監督にリモートで犯罪実録映像を撮ってほしいという依頼が舞い込んで…。

日暮家始めカメ止めのキャストたちは、私たちにとっては、もう実在していると思えるくらいになっているので、彼らがまさに今同じ状況にあってオンラインでしか家族が離せない状況がリアルに感じられます。ヒロインの逢花ちゃんとか細田さんなど特にキャラ立ちしていたキャスト中心に、募集した映像も使ったりして面白く進んでいきます。撮り方は不自由ですが、それをうまく使ってやっぱりすごい。そして、最後の方の真央ちゃんの台詞が刺さって思わず泣けました。その塩梅もちょうどいい。ほんと、「全部したい!」。

しゅはまはるみさんが、意味なく完璧女優メイクできれいだったのと、どんぐりさん、ヨッパライ細田さんがいい味(踊りもキレキレ)、そして秋山ゆずきちゃんやっぱりおもしろい。

というか、こんなに才能あふれる上田監督に、思う存分映画を撮らせてあげたいって思いましたよ。

(追記)

カメ止めは海外でもファンを獲得しましたが、5月15日、このリモ止めの英語字幕付きバージョンがYouTubeにアップされました(字幕付き版)。こなれた字幕だな、と感心。世界にも届け~。

 

【朗読劇「12人の優しい日本人」を読む会】

そしてもう一つ、1990年初演で映画化もされた三谷幸喜さんの「12人の優しい日本人」を読む会。(当時は日本では裁判員制度はありませんでしたが)陪審員のセリフ劇なのでリモートとの親和性は高いとはいうものの、オンライン飲み会で使っているあのzoomそのままで朗読劇…と思ったら、予想のナナメ上をいく完成度で、芝居として引き込まれていきました。YouTubeのアーカイブの前後編で見られますが、元はライブ配信、生中継!

このお芝居、1990年から3年連続で上演され、2005年の再演を経て今回の読む会なんですが、キャストは初期のキャストが男性10人中9人が出演しています。甲本雅裕、相島一之、小林隆、阿南健治、近藤芳正、梶原善、西村まさ彦、野仲イサオ、渡部朋彦、小原雅人、吉田羊、妻鹿ありか、宮地雅子、そして三谷さんも特別出演。この役者陣の豪華なこと。みなさんその後確たる地位を築いたわけですね。初出演の女優さんたちもぴったり、吉田羊さんも地味な役なんですが、ご本人に華があるので、ちょっと面白い感じになっています。

三谷さんの陪審員ドラマなので(元ネタの映画「十二人の怒れる男」はずっと以前に見たことがあるような気がします)、有罪・無罪をめぐって様々な意見に結論が行ったり来たりするのが醍醐味。映画版も見ていなかったので、どうなるんだろうとわくわくしました。

そして、一際目立つのが相島さん。どんな作品でも強烈な印象を残す名優、30年前の当時は「お若いのに」というセリフがぴったりの若者だったんだと思いますが、今は今の味があります。最後の熱は、画面の12分の1から感情がほとばしるようで、まさに芝居、演劇でした。役者さんってすごいな。

生の芝居ではないけれど、お芝居への気持ちをかきたててくれるような、すばらしい企画でした。ありがとうございました。

 

 

 

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」後編 ディレイビューイング

 2002_20200229171501ナウシカ歌舞伎、ディレイビューイングの後編です(前編の感想)。まず、複雑な物語の設定と前編のあらすじを語ってくれるのが道化(種之助)。原作コミックではヴ王とともにシェイクスピアな感じで出てきますが、後編冒頭に登場するのはナイスアイディア。そして日本には幇間という伝統もありますしね。小柄な種ちゃんの腰のキマった動作、道化の語り口、キラキラの衣装で、種ちゃんいい役者になったなあと感動します。

そして前編の主な登場人物が、物語の振り返りを兼ねて自己紹介で見得。歌舞伎の便利なところですね。

巳之助はミラルパからナムリスへ。クシャナ(七之助)が出てくると物語が盛り上がります。もう、すべての瞬間がかっこいい!武装を解いた白い衣装も、殿下によくお似合いで素敵でした。眉の角度、目の大きさ、完璧(感涙)。クロトワ(亀蔵)との関係もより強固に。

ユパの松也が後編でもかっこよい剣士。義賢最期をちょっと思わせる階段落ちもありました。ドルクの女の徳松さんがユパを狙う場面もあったりして、この徳松さん、「ああうちの坊っちゃんかっこいいな」って思ってただろうななんて、思っちゃいました。ユパの最期は、階段落ちでちょっと仏壇倒れ。

後編独自の見どころというと、まず大海簫の菊之助の舞踊。娘道成寺のようなこれぞ女方の最高峰の舞踊を、菊ちゃんが思い入れたっぷりに丁寧に踊るんですから、それだけで素晴らしい。しかも膝から下がスパッツで見えているのがたいへん珍しく、きめ細かないわばステップに見入ってしまいました。三味線に巳太郎さんとか、長唄に巳津也さんとかいるし!

噂には聞いていましたが、庭の主で母の芝のぶ!作品世界を一段深いものにするその豊かな声と中性的な美貌。いつも好きだけど、新作だといいお役がついて(桜の森のエナコとか)、深い解釈がさらに生きる気がします。

そして、セルムも素敵だったけど墓の主の精 歌昇とオーマの精 右近の獅子姿。右近の化粧はオーマなんですよ!若くはつらつとした二人ががっぷりと、振り付けも面白くて、小さい獅子の毛をつけた手下の精たちもいて、最後は毛振り。ここだけ見取でやってもいいくらい。

これも評判だった、ヴ王の歌六さん、そして声だけで場の空気を換えた吉右衛門さん、その憑依を見事に見せた種之助。歌舞伎役者の、セリフを伝える力がものすごい。本当に世界をどうするのか、こちらに訴えかけてきます。

改めて、あの長い原作を見事に昼夜通しの歌舞伎にやりぬいたと思いました。そして、チケットが高いにもかかわらず、初めて歌舞伎を見るというナウシカファンが、この歌舞伎の魅力を私たちと同じように感じてくれているようであるのもうれしいです。

浅草で力をつけた役者とベテラン、そしてお弟子さんたちも含め、これだけの役者そろえての(だからオグリと比べてずるい)公演、2か月やってもよかったのでは。

 

新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」前編 ディレイビューイング

2002

見そびれていたナウシカ歌舞伎前編ディレイビューイングに行ってまいりました。なんと当日券4300円也ですよ!宝塚やミュージカルでよくある千穐楽とかのライブビューイングも4000円前後ですが、あくまでライブで1回だけですもんね。ディレイって、1週間もやっているなら、せいぜい2500円くらいでよくないですかね。歌舞伎初心者もすごく楽しめるし!でも、舞台を見られなかった私としては、3Bより高いと思いながら行ったのでした。

ちなみに、原作コミックは最近ようやく4巻まで読んだのみ、映画は冒頭しか見てない、ナウシカ初心者です。

冒頭、右近が口上の形でナウシカの物語を簡単に話してくれるんですが、この右近が、あら、立ち役久しぶりだけど立派になったなという説得力。早々にユパで松也が出てきます。目力強くてかっこいいよ。原作コミックではもっと年配のようでしたが、剣豪のイメージの方を強調していて帽子もすてきなので松也に合ってる!

右近はアスベルとして出てきますが、松也との本水の立ち回り、たっぷりな花道のくだりは華やかで、形も美しく、これだけでも見る価値がありました。

菊之助のナウシカ、あくまでまっすぐで強く優しいキャラですが、あまりにまっすぐ過ぎて、芝居として見るとやや物足りなく(ワンピースのルフィ初見のときも思った)、原作のナウシカは素肌の美しさなんだけど菊之助女盛りの美女だしと思ってしまうんですが、それを補う見せ場がケガのために減ってしまっているのは仕方ないですね。しかし腕の亀裂骨折を固定しているようには見えない所作で、いきなりの変更はたいへんだったでしょうに、心中を思うと気の毒でした。

噂には聞いていましたが、さすがこういう新作では無敵の七之助の、誇り高いクシャナ王女!たたずまい、部下やクロトワ、ナウシカに対する態度、キリリとした目、完璧なクシャナです。11月は平成中村座だったのに、ほんとすごい。ミラルパの巳之助も役者が大きくなっていましたし、ケチャ米吉かわいいし、村娘の鶴松もみんなよかった。

ベテランがまたいい芝居をしてくれて、この世界に奥行きを与えています。ミトじいの橘太郎、ジルの権十郎、マニ僧正の又五郎萬次郎さんの城ババ。とくに又五郎さんの苦悩の表現がすごかったです。それからチャルカの錦之助さん。かっこよすぎて、最初チャルカとわからなかったですが、これはこれでいいお役、前述の松也的なアレンジですね。

おっと、上演ずっと前からまちがいなしと言われていたクロトワの亀蔵さん。こんなに亀蔵さんにはまる役はないだろうというくらいのハマり方。後半もますます楽しみです。クロトワが密命をクシャナにばらすところは、弁天小僧でしたね。

それにしても菊五郎劇団+若手人気役者を集め、菊之助の思い入れたっぷりで作品世界を見事に歌舞伎で再構築した、演舞場で1か月ではもったいない出来ではと思いました。というか、お正月の国立+浅草の役者がそろっていて、あの薄い座組でがんばっていたオグリが不憫な気持ちがぬぐえませんでした(歌舞伎客演のみなさんいいお仕事してましたけど)。

後編も見ました。

映画「キャッツ」

2002cats  映画版「キャッツ」です。事前にあまりにも評判が悪くてですね、気持ち悪いとかやっちまったとかホラーとか。ミュージカルファンとして見るつもりでしたが、ミュージカルのキャッツも劇団四季で1度しか見ていないけどよく話がわからなかったし、海賊船の回想シーンダサかったしなあ、なんて思っていたんですよ。ロイド・ウェバ―の音楽がよいのは別として。

いやいや、私的には、ミュージカル映画としてなかなかの傑作で、とても楽しめました。舞台版ではつかめなかったお話もよくわかったし、名前だけは何となく覚えていたキャラクターの個性(公式のキャラクターページのビジュアルを見よ)も際立っていて、魅力的。ロンドンの街や室内のセットと、猫のコスチュームと猫っぽさダンスが合ってました。こういう世界観がきっちり貫かれている作品好き。前述の海賊船もへんな再現シーンではなかったし。

さまざまな姿の猫たちにも、かわいいネズミにも違和感がないのは、歌舞伎でどんなにスゴイ化粧や衣装でもその奥の美や芝居を見るのに慣れてるからでしょうか。狐忠信とか、獅子の精とかもかわいいと思ってみてますから!舞台を1回しか見ていないので、映画で変更されたところに抵抗がなかったせいもあるかもしれません。

役者がいいんですよ!主役的な新入りのヴィクトリアのフランチェスカ・ヘイワードは、ロイヤル・バレエ団のプリンシパル!さすがのバレエなんですが、大きな目が愛らしくて、広瀬すず的なアイドルっぽいかわいさ。ずっとなんてかわいいの、と見惚れてました。ルックスでいうと、兄貴分として世話を焼いてくれるマンカストラップ(ロビー・フェアチャイルド―ニューヨーク・シティ・バレエ団の元プリンシパルで「パリのアメリカ人」でジェリーを演じたそうです)、ミストフェリーズ(ローリー・デヴィッドソン)は、クレジットは小さいですが、新鮮でとってもよかったです。

ベテランでは、デュトロミーのジュディ・デンチが、エリザベス女王のような威厳のある演技。そして往年のスター、ガスがなんとサー・イアン・マッケランで何とも味わい深い演技と歌を披露しています。二人は体がCGでなく、実際の衣装というのもよかった。

後半バーンと出てきて、マキャヴィティを迫力満点で歌うボンバルリーナのティラー・スウィフトももちろん最高でした。

やや不満だったのが、グリザベラが終始泣いていて、前半も、最後の方でも「メモリー」の声が震えていたこと。お芝居としてはいいのかもしれませんが、せっかくミュージカルなんだから、皆がわくわく待っているショーストッピングナンバーは、最後びしっと歌い上げてほしかったな。「ドリーム・ガールズ」でエフィを演じていたジェニファー・ハドソンだったのでほんと残念でした。

この映画、「レ・ミゼラブル」と同じトム・フーパー監督なので、ミュージカル映画としての完成度は高いにしても、たぶんサウンドトラック買ったら、やっぱり舞台版のCDの方がよかった、ってなるのではと思います。

映画「スターウォーズ完結編 スカイウォーカーの夜明け」

201912sw  「スターウォーズ」9部作の完結編「スカイウォーカーの夜明け」が公開されました。2016年からの続三部作(「フォースの覚醒」「最後のジェダイ」)と「ローグ・ワン」はこのブログにも書いていますが、最強の冬休み・お正月映画(長いしね)、とうとう終わってしまいました。

前作とあまり間が空いていないので、私でもちゃんとキャラクターを把握できていて、レイをはじめ、フィン、ポー、C-3PO、チューイ、ローズたちの活躍をハラハラしながら見守りました。皆、前作より一回り成長したというか、かっこいいしローズちゃんもかわいくなってました。

レイはストイックなまでに強く美しい。カイロ・レンとの戦いは迫力。私の見た映画史上まちがいなく最強の女性です。と書きつつも、女性なんだけど女性として意識しがたいというか女性性があまり感じられないというか、まっすぐに人として強い、今の時代らしい人。カイロ・レンの拗らせ方と対照的。とにかく、最後の3部作を見事にやりきったと思います。これからどんな女優になるのかな。

このレイとフィンの間が友情に見えるところが、最近のディズニーかもという気がしました。

一番心配だったのは、前作でハン・ソロが死に、レイアが一人総司令官として奮闘するはずだったのに、キャリー・フィッシャーが急死してしまったことでした。本当に残念、世界中のファンのために、全うしていただきたかった。しかし、レイア姫はちゃんといたんですよ。もしや、指輪三部作のように同時に撮影していたのかと思いきや、本作の撮影開始前に亡くなったそうで、遺族の許可を得て、それまでの映像素材でつくったんだそうです。嘘のような、威厳と情愛にあふれたレイアでしたよ。

メカとか背景とかストームトルーパーとか、シリーズ集大成としての映像も堪能しました。スターウォーズを見て育ったスタッフが、スターウォーズの好きなところを詰め込んだみたいな作品ですからね。

パンフレット買いそこなったけど、ムックなどで全作振り返ってみたいかも。

 

(若干いやかなりネタバレな感想)

昔を忘れているのかもしれませんが、ジェダイってあんなに魔法使いじみてましたっけ。ケガも直すし、心によびかけるし。ああでも亡くなっても空中映像で話してたような(オビワン・ケノビとか)。

最後だからか、ルークもハン・ソロもリアルな雰囲気で出過ぎです。霊っぽくもない。

パルパティーンがなぜレイをけしかけたのか、今一つわからず。

帝国軍はすぐ星を爆破するからきらい。

ゾーリ、瞳しか出てないけどすごい美人でキャラもいい。最後ポーにぷいっとしたの残念。

 

(Newsweek 特別編集 「STARWARS」)

201912sw2  書店で見たらキャラの総復習ができそうなので、買っちゃいました。よく見たら12月12日発売で、新作の内容はあまり入ってないことが判明。でも、9での新キャラってD-Oとジャナ(彼女はかわいい写真があった)くらいですからね。これまでのスターウォーズの流れ、キャラ、名シーンを数々の写真でつづったコンパクトなムックで、初めてスターウォーズの本を買う人(←私)にはお勧めです。スターウォーズの最初、見たこともない宇宙人に驚いたものですが、彼らもきっちり押さえてます。

振り返ってみると、やっぱり旬の俳優を使った1~3のアナキンシリーズがよかったなと思うのですが、スターウォーズの新しさや新機軸はやはり最初の4~6なので、7からの流れは必然といえるでしょう。うん、完結してよかった。

 

映画「FROZEN Ⅱ (アナと雪の女王2)」

201912 アナ雪の続編です。前回は、大好きなイディナ・メンゼルの「Let It Go」が大ヒットして、映画「FROZEN(アナと雪の女王)3D」とイディナ・メンゼル でイディナについても熱く語ってました。その後日本でのコンサートもありました。そのイディナとアナ役のクリステン・ベル、オラフ役のジョシュ・ギャッドもそのまま。

アレンデール王国で平和に暮らすエルサ、アナ、オラフ、そしてクリストフ。しかしエルサには不思議な歌が聞こえてきます。その謎を解くべく、森に向かった一行は、亡くなった父母の秘密を知ります。さらに謎を解こうと、一人海へ向かうエルサ、そしてアナは…。

一応ネタバレ避けますが、姉妹の絆の物語だった前作と比べると、ファンタジー色が強い感じ。物語が進むほど、ああ、「ロードオブザリング」と似ているな、と思いました。話の流れや設定は違うんですけど、雄大な自然の引きの映像(とても凝っていて美しい!)、トロールのような精霊、困難な旅、ドラマチックなBGM。紅葉が、地面に落ちた赤い落ち葉もきれいでした。

一方で、前作同様、ブロードウェイ的な歌がそれぞれよくて、ミュージカルとして楽しめました。特にイディナの、わりと初めの方にある "Into the Unknown"と”Show Yourself”がすばらしく、ちょっと拍手しそうになっちゃいました。クリステンもかわいいんですよね。オラフや、新キャラも表情豊かでほっとします。

クリストフはいいやつですが、あくまで脇役で、大事なときにしばらくいないのもかえってよくて、やっぱりあくまでアナとエルサの物語でした。

 

 

シネマ歌舞伎「女殺油地獄」

Onnagoroshi_koshiro_poster_fixw_234  昨年7月松竹座の高麗屋襲名披露「女殺油地獄」のシネマ歌舞伎です。このチラシ、そしてムビチケのビジュアルが公表されたときには、幸四郎・猿之助ファンから悲鳴があがるカッコよさでしたが、とうとう映画館へ。

舞台とはちがう、シネマ歌舞伎ならではのものを作りたいという幸四郎と井上昌徳監督の意気込みで、凝ったつくりになっています。序幕「徳庵堤茶店の場」は通常の舞台中継風、2幕「河内屋内の場」は、アップも多く家庭内ドラマ、そして3幕は義太夫を使わずに撮影し、スローモーションなどの効果を加えて、義太夫をつけています。むしろ劇場でみるよりも、迫力ある義太夫でした(3幕は谷太夫さん)。

この義太夫なしで撮影とはどんなんだろうと思っていたんですが、芝居自体は松竹座の舞台稽古の後で、3幕だけを義太夫なしに撮影したんだそうです。そういう意味では、本番前のものなので、二人が観客の前で見せる芝居とはちょっとちがうのかもとは思いましたが、再演でもあり、さすがの名コンビ。

201911_20191124095201 襲名披露公演のため、配役が最高です。与兵衛の父歌六、母竹三郎、兄又五郎、妹壱太郎、白稲荷法印 嵐橘三郎の2幕は見ごたえたっぷり。与兵衛かわいさのあまりの河内屋の苦悩。

しかしやはりこの演目は幸四郎の豊かな表情!かわいかったり、シュンとしたり、開き直ったり、そして3幕でのお吉へのくどき、殺意のめばえ、目が少し赤いのも狂気じみていて。ああ、幸四郎さん、かっこいい(←最後はこれか)。

四代目は、役柄としても抑え目のしっかりした若妻で、与兵衛よりも姉さんに見えます。やはりあの大怪我からまだ9か月、顔が丸々していますが、このチラシ・ムビチケは後から撮ったものらしく、もう少しすっきりとしています(オグリ終盤の今はもっと顔が細くなったような)。文楽の人形を思わせるような、白磁の肌と表情。

恋愛関係にはない、お吉は与兵衛に同業の知り合いの青年への親しみしか感じていない、でも運命を変えられたという関係の二人。どうしてこんな表情になったのか、ギリギリのこの顔が、四代目の役者としての凄みを見せているような気がします。

松竹座の番付は買いそびれていたのですが、これらの写真が大きく載っているパンフレット、買ってよかった!

 

映画「ジョーカー」

201910joker  ホアキン・フェニックスの渾身の演技が評判の「ジョーカー」です。「バットマン」の敵役ジョーカーが生まれるまでを描くということで、「ダークサイド」はじめバットマンは全然見たことなかったんですが、バットマンを知らなくても大丈夫というのをきいて。

アーサー(ホアキン)は、サンドイッチマンやピエロをやりながら、母と暮らしています。突然笑いが止まらなくなる神経症状があり、不気味な雰囲気で仕事もうまくいかない、生きづらそうなアーサー。敵役ジョーカーになるという最大のネタバレありき映画なために、このアーサーは幸せになることはないんだ、実際、アーサーがやられているかやっているかのシーンばかりで全編つらいです。

ふとしたことで証券マンを地下鉄で殺してしまったアーサーがピエロのメイクをしていたために、ゴッサムシティ(=荒んでいて治安も最低な頃のニューヨーク)では、ピエロの仮面は下層階級の金持ちへの怒りの象徴になっていきます。そして…。

アーサーの鬱屈と怒りの爆発、個人の憤懣が社会的なうねりになっていくところの描写が本当にうまい。アーサーの母とか、トーマス・ウェインとか、TVショーの名司会者マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)の何ともいえないいやな感じも見事。心に刺さりながらエンタテインメントとしても成立しているすごい映画だと思います。

そうだ、前に「バットマンの名前はブルース・ウェインであることは覚えておいて」というのを読んでいたんですが、見てる間はすっかり忘れてました。覚えていればよかったのに。

アーサーの軽快なダンス(いわゆるダンスシーンというのとは違いますが)、ズン、とくる厳選された音楽もいいです。映画の中と、エンディングに流れる歌、ミュージカルの歌だなと思ってたんですが、最後に思い出しました。ソンドハイムの「リトル・ナイト・ミュージック」の名曲「Send in the Clowns」をシナトラが歌ったものでした。ミュージカルでは女性が歌うんですが(泣ける)、シナトラもすごくよかったです。

(直後の追記)

と、いったんこの記事アップしてから、実は全てがジョーカー監督が作り出したジョーカー誕生物語なのだという記事を目にして、うわああ、そうだったのかも、そうにちがいない、という気がしてきました。映画の中のアーサーが不幸なのは変わりませんが、ほんとうにアーサーがジョーカーなのかは、謎として残されているのだと…。深すぎる。

Tom Kob さんの「ジョーカー 圧倒的ネタバレ考察」

猿渡由紀さんの「「ジョーカー」が投げかける多くの謎。あのストーリーをどう解釈すべきか」

 

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

  20190901onceuponatime レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの二人がバディを組む映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」です。レオが落ち目の俳優、ブラピがスタントマンということで、バックステージものという認識で見たんですが、その認識自体が、映画をよく知らないこと丸出しで、クエンティン・タランティーノの脚本・監督作品らしい(彼の作品は初めて見るんですが)1本でした。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(1984年)は見ていませんが、そのオマージュなんだろうなとも思いました。

時は1969年。テレビの西部劇で人気者だったリック(ディカプリオ)は、人気が落ち、悪役やパイロット版に出る日々。長年スタントマンと運転手やってきたクリフ(ブラピ)は凄腕ですが、彼の仕事も乏しくなっていきます。リックはスターらしい豪邸に住んでいますが、隣はロマン・ポランスキー監督と金髪の若手女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)の夫婦。ポランスキー監督映画は3、4本見たことあります。

映画は、リックがマーヴィン(アル・パチーノ)にマカロニ・ウェスタンに出ないかと説得されたり、プロ意識の高い子役(すっごい美人)に刺激されて悪役の演技をがんばったり、リックの出演作が流れたり、クリフがブルース・リーとケンカしたり、シャロンが自分の出た映画を映画館で見て、ウケているのに気をよくしたり(かわいい)しながら進みます。スタントマンだけどブラピ、ワイルドで超かっこいいと思いながら見ていたんですが…。

(以下、ネタバレです、公開されたばかりですがすいません)

 

 

 

クリフは何度か見かけたヒッピーのプッシーキャット(マーガレット・クアリー、ヒッチハイクのときの表情や動きがとってもかわいい!)を送っていきますが、リックの車をパンクさせた男をボコボコに殴ってしまいます。マカロニ・ウェスタンに出演して金とイタリア女優の妻を得たリックは、アメリカに帰ったらクリフと別れると告げ、二人は最後に痛飲します。

そこへ、ヒッピーがクリフに復讐しにやってきます。しかしただやられるクリフではありません。私史上、最高にバイオレンスな場面が繰り広げられ、顔を手で覆って隙間から見るなんてベタな見方しちゃいましたよ。えええーこういう結末?!

よく知られている事実は、妊娠中のシャロン・テートが、夫ポランスキーが欧州で映画を撮影している間に、訪れていた友人らとともに、カルト教団のマンソンたちのグループに襲われ、惨殺されたというものです。この殺人はポランスキー宅の前の住人と間違われたもので、マンソンらしき人物は、前の方で出てきます。

動機や犯人がヒッピーであることは違いますが、、スターの豪邸で襲われるシチュエーションは同じ。シャロン・テート事件の描写にしなかったのは、あくまで主役はリックとクリフで、でも観客の記憶にある事件の恐怖を重ね合わせさせるということかなと思いました。ここまでシャロンは明るくてかわいらしく、残虐な事件の再現なんて見たくなかったのでよかったかも。

映像美や、昔の映画へのオマージュ、タランティーノ監督の美意識のつまった作品でした。

映画「ロケットマン」

201908_20190831205001  エルトン・ジョンの前半生、少年時代から1990年頃(40才すぎ)までを、エルトン・ジョンの曲でつづったミュージカル映画「ロケットマン」です。

そう、監督は「ボヘミアン・ラプソディ」と同じデクスター・フレッチャーで、イギリスのビッグスターの伝記的映画で同じような感じなのかと思いきや、BPがクィーンの曲を発表順に挿入曲として使っているのとはちがっていて、とてもよくできたミュージカル映画なんですよ!

製作総指揮エルトン・ジョン、ということで、すべてを本人の了解のもとで作られたそうですが、プロデューサーには、エルトンのパートナーであるデヴィッド・ファーニッシュも名を連ねています(「プライドと偏見」のプロデューサ―の実績もある人なんだ)。そして脚本が「リトル・ダンサー」のリー・ホール。イギリス社会の雰囲気や、父子の葛藤等を描くのはお手の物です。実はこの脚本ができてから映画化まで10年かかったそうなんですね。

依存症のセラピーに現れた派手な衣装のエルトン(タロン・エガートン)が、両親から温かな愛情を得られなかった少年時代からの人生を語っていきます。1曲目の「The Bitch is Back」で少年が歌い始めて、あ、ミュージカルだったんだ!とうれしくなりました。

エルトンはバンド活動を経て、23歳で作詞のバーニー(ジェイミー・ベル<リトル・ダンサーの主人公の少年だった俳優さん>)と出会ってから、速攻で売れます。あの「Your Song」もこの頃の作品。バーニーの詞を見ると、すぐにピアノでメロディを作れるという天才です。

派手な衣装を作って、奇抜な眼鏡をかけ、ロサンゼルスのトルバドール・クラブでの初ライブで大成功を収めます。「クロコダイル・ロック」を歌うこのシーンがスペクタクルで盛り上がります。

エルトン・ジョンは、当時の好みからはちょっとポップすぎて、アルバムを聴くほどではなかったんですが、「Your Song」、「ピンボールの魔術師」、「Don't Go Breaking My Heart(恋のデュエット)」、「悲しみのバラード」などのヒット曲は大好きで、当時のエルトンのきらびやかな衣装とステージングが見事に再現されていてわくわくしました。

この後お話は、エルトンの成功と恋人との破綻、酒・ドラッグ依存症、バーニーとの一時的な別れがあって、施設に入り、依存症を克服するところまで(入院は1990年だそうです)。そうですよね、その後のエルトンは、ダイアナ妃の追悼曲を歌っていたし、ナイトの称号も与えられているし、ミュージカルだって「ライオン・キング」「アイーダ」「ビリー・エリオット」というヒット作を生んでいるし、結婚もしたし、イギリスきってのセレブとして、元気に活躍していますもんね。しかし酒とドラッグの浴び方は異常で、よく生きていた、と思うくらいです。

エルトン役のタロンの歌は、さすがにエルトンよりはちょっと落ちますがすばらしく、まさにエルトンが憑依したような演技。ほかも、ジェイミー、マネージャーのジョン・リード役のリチャード・マッデン「シンデレラ」の王子だったそうです)、母ブライス・ダラス・ハワード(この方、父はロン・ハワード監督)と主要キャストの、深みのある人物造形で、イギリス映画的な味わいがとてもよかったです。

衣装も必見。エルトンの実際の衣装を今風にリメイクした豪華なコスチューム。そして、パンフレットもプロダクション・ノートがたっぷりつまった読み応えのあるもので、全曲の解説もありますので、ぜひお求めください。

そうだこれ、絶対舞台化されますね。エルトン役の俳優は相当たいへんだろうと思いますが、エルトンの曲がミュージカル向きなのは証明済みなので、きっといいと思います。

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