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ミュージカル(シアター)

「タイタニック」@青年館ホール

201810        ミュージカル「タイタニック」です。トム・サザーランドの新演出版としては2015年に続く再演。これ、2009年に見た「タイタニック」 とちがうプロダクションなのかどうか気にしていたんですが、ピーター・ストーン脚本、モーリーウェストン詞・曲は同じでした。初演は1997年、その年のトニー賞脚本賞、作品賞、作曲賞、編曲賞等を受賞しています。しかし主演、助演は誰もノミネートもされていません。それだけ最初から群像劇としてよくできた作品だったということでしょう。

今回の舞台と、2009年版とを比較すると(といっても例によってよく覚えていないんですが)、タイタニックのデッキを模した大きな高い台のセットが舞台を占めて、時に前後するという舞台装置、これと動く階段で船内をうまく見せ、乗客と船員たちが軽快に動く点や、美しいメロディと力強いハーモニーの名曲揃いなのは同じですが、キャスト・演出が違うとだいぶ舞台の印象が違いました。

タイタニックの処女航海、設計士アンドリュー(加藤和樹)、船主イスメイ(石川禅)、船長(鈴木壮麻)。1等から3等まで、イギリスから新天地アメリカを目指す乗客たちが乗ってきます。

この3人が、2009年は松岡充、大澄賢也、宝田明だったんですよ。松岡くんが設計士というにはかわいい感じなのはともかく、石川禅のアクの強さと歌のうまさ(←贔屓ですしね)。この役、歌えない大澄賢也でどうやってたんでしょう。鈴木壮麻も何やってもうまい人ですが、低音ボイスが船長に合ってて、イスメイとの緊張関係がよかったです。加藤和樹は一応主演なんでしょうが、このカンパニー、歌のうまい人が多いので、目立たなかったしお芝居としても物足りなかったです。今年加藤和樹バブルが来てますけど今後どうかなあ。

男性キャスト、皆よかったんですが、藤岡正明の機関士、衣装も汗も豪華客船の一番下を支える、愛すべき青年で、のびやかな高音の歌も好きでした。ほかに戸井勝海、相葉裕樹、上口耕平、栗原英雄、津田英佑、小野田龍之介、佐山陽規と男性陣はみんなよくて、全員が前を向いて並んで歌う声が劇場に響き渡って最高でした。

(ところで栗原英雄さんは2015年の上演でも同じ役を演じていて、「真田丸」の叔父上のキャストを探していた三谷幸喜がシルビア・グラブを見に来ていて惚れこみ、ドラマ初出演となったんだそうです。この重厚かつ軽快で演技は老練な栗原さんを見出したとき、三谷さん嬉しかっただろうな)

女性キャストは少なめ。二等客ながら一等客を観察してのし上がろうとするアリス(霧矢大夢)。演技はエネルギッシュでよかったんですが、歌はアップテンポの難曲が多く、ちょっとつらそうでした。ほかに菊地美香、安寿ミラ

豪華客船の夢の夜が沈没という悪夢に変わるまで、さまざまな人間ドラマが描かれるこの作品。曲のよさもあって、見応えがありました。トム版の演出は、群像の動きが軽快で無駄がなく、またキャストの魅力も引き出していてよかったんですが、最後の情緒的な呼びかけみたいなシーンはあまり好みじゃなかったです。観客はだいたい映画の「タイタニック」でもっとリアルな悲劇を見てますしね。

2回目の青年館ホール、前回よりいい席でしたが、やっぱり真っ暗な感じでロビーも味気なくて残念な印象はぬぐい切れず。

「マイ・フェア・レディ」@シアターオーブ

201809           古典の名作ミュージカル、「マイ・フェア・レディ」です。初演は1956年、ジュリー・アンドリュース主演、1964年にはオードリー・ ヘップバーンで映画化され大ヒットしました。原作はアイルランド出身の作家バーナード・ショーの「ピグマリオン」。

この映画は見ているのですが、ミュージカル版も見たいなーと、ずっと思っていました。大地真央さんのイメージが強いイライザですが(20年も演じていたそうです)、最近霧矢大夢などでも上演されていたところ、今回は神田沙也加・朝夏まなとのWキャスト。演出はG2。今年だけでウォーター・バイ・ザ・スプーンフル、NARUTO歌舞伎とG2さんの演出3本めですよ。しかも幅広い仕事ぶり。

東京千穐楽の今日は、イライザ(神田沙也加)、ヒギンズ教授(別所哲也)、ほかはピッカリング大佐(相島一之)、ヒギンズ夫人(前田美波里)、ドゥリトル氏(今井清隆)、ピアス夫人(春風ひとみ)、フレディ(平方元基)。

25分の休憩込3時間15分は、最近のミュージカルと比べて長いんですが、その分は軽めのコメディのお芝居がしっかりあって、花売り娘イライザがヒギンズ教授の家で話し方とふるまいの教育を受け、見事に成功してから自立心を見せるまでをきちんと見せていきます。歌も大部分知っている名曲揃いで、アンサンブルがよかったのもあって楽しめました。

沙也加のイライザはやっぱりイキがよくて、かわいくてよかったです。ファルセットがちょっと弱くて、踊り明かそう(I Could Have Danced All Night)のラストの盛り上がりに欠けたのは残念でしたが、ヒギンズに切々と訴えるところ、健気でほろっときちゃいました。

相島一之もさすが、お芝居部分がキリっとしていたのは、この方と、春風ひとみの好演によるところが大きいでしょう。前田美波里もほんとに若々しくて、ゴージャスなマダム、この舞台の中でもとくに素敵な衣装が似合っていました。イライザの父今井清隆も演技も歌も楽しくて、2幕の「時間通りに教会へ 」(Get Me to the Church on Time)は最高に盛り上がりました。平方元基、いろいろ見ていますがさわやかで聞かせてくれるナンバーもありました。

ヒギンズ教授の別所哲也はですね、知的ですらりとしていて柄にも合っているし、ミュージカルの経験も豊富な方ですが、うーん、なんとなく英国紳士のあのシニカルなユーモアが不足気味で、何となく最後までしっくりきませんでした。すいません。

さて、アンコール、ここ数年は主役級で出ている神田沙也加ですけど、やっぱりこの大劇場で、本当に最後に、全キャストに迎えられて出てくるのは初めて見る気がして、何てことのない娘役の頃から見ていた彼女がよくここまで、と泣けちゃいました。本日のマチネは東京千穐楽だったわけですが、別所さんのあいさつの後、沙也加の実感こもった言葉がありました。それを見守る別所さんの笑顔が本当に優しくて、いや、舞台上でもふっとそういう表情を見せるとかしてくれるとよかったのにと思ったくらいでした。

(バーナード・ショーは、ヒギンズ教授とイライザは結ばれないとつとして思っていたようで、だから甘いシーンは作らなかったのかもしれませんが)

そうだ、衣装のことも!チラシのイライザのドレスもいいですが、アスコットの馬場のシーン、アンサンブルの衣装がそれぞれ凝っていてクラシカルかつ新鮮でとってもステキでした。前述のようにヒギンズ夫人の衣装が2つ、色もデザインも大好きでした。十川ヒロコさんです。

「メタルマクベスdisc2」@ステージアラウンド

201809_2          メタルマクベスの連続上演、一番新感線らしいプロダクションで濱めぐさんが出るdisc1のみでいいかなと思っていたんですが、やっぱり松也のも見たい!とdisc2です。

髑髏城は花しか見ていませんが、噂では内容がだいぶちがうようでしたので、メタマクもちがうのかな、と思っていたら、台本、セット、映像は一緒。衣装も3魔女以外は、俳優に合わせた微調整の範囲のようで、同じ演目をキャスト替わりで見るのに近いようでした。2度目なので、バンドのグダグダのくだりはさほど面白いと感じられなかったんですが、disc1をもう1回みたいと思っていたくらいなので、音楽も含め、ほんとに楽しめました。

マクベスは松也。歌舞伎役者としては、白鸚さんに次いで(!)ミュージカル経験豊富な人なので、歌はメタルのボーカルではないけれど安定。あの重い衣装で獅子奮迅の大活躍という感じで、今の彼のありったけで、マクベスという役にぶつかっていっているのが気持ちよかったです。、睨み、獅子の毛振りのようなヘッドバンギング(腰で回っているのがよくわかった)、海老ぞりと、さすが、歌舞伎の基礎力は確か。顔も体も大きく、シャドウを入れたアイメイクが似合ってて、いやーかっこよかった。妻に甘える場面はイマイチだったのは、本質的にオラオラ系なヒトので、こういうの苦手なんだな~と思ったりして。

殺陣もキレがありながら、体幹が安定していて、対するマクダフ(浅利陽介)より全然強そうで、負けちゃったのが不思議でした。浅利くんはとてもいい俳優さんで、あの周平(@新選組!)や小早川秀秋がよくぞここまでと感慨深く、最初はこれが浅利くんとはわからなかったくらいなんですが、やはりニンじゃない感じは否めませんでした。つか、もっと強そうな人じゃないとこの松也には弱いよ。

マクベス夫人は大原櫻子。若すぎるかな、と思わないではなかったんですが、「Fun Home」で見せてくれた実力はほんもので、松也と若い迷う夫婦をしっかり演じていました。

disc1では怪優橋本じゅんだったバンクォーが岡本健一。前半はほぼ準主役の活躍で、お父さん世代といじられながら、アラフィフには見えない若さで松也の友人に見えました。

レスポール王は木場勝巳さん。初見ですが、迫力もあって歌もとってもよかったです。その息子レスポールJr.は、ジャニーズの原嘉孝、三浦涼介似のイケメンで、このカンパニーに参加するだけあって、ダンスも歌もよかったです。

おおっと思ったのが、ランダムスターの活躍を歌う徳永君(徳永ゆうき)。disc1では、冠徹弥さんの歌がすばらしくて、しばらく「間違えましたぁ~」が頭をグルグルしていたんですが、この徳永君は、23才の演歌歌手、鉄オタで駅員のアナウンスを入れながら演歌風に熱唱。面白かったです。

実は、門番(逆木圭一郎)との二役だと思っていて、二人が一緒に出てきた時にびっくりしてしまいました。門番さんも大活躍。

さて、歌舞伎役者が出ていれば、何でも取り上げる歌舞伎美人。松也が出ているだけで何の関係もなさそうなメタルマクベスについても、しっかりいい記事を挙げてくれています。ぶれないなあ。https://www.kabuki-bito.jp/news/4948

「ジャージーボーイズ」@シアタークリエ

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          2016年の初演時には、読売演劇大賞(最優秀作品賞等)を始め、高い評価を得た中川晃教主演の「ジャージーボーイズ」です。初演時は、来日カンパニーを見たばかりだったのと、クリエのチケットが取れなくて見ていなかったんですが、再演版は是非見たいと思っていました。アッキー以外の主要3人はWキャストで、見たのはblueです。

お話は、ニュージャージー出身のフォーシーズンズの結成からの軌跡を、彼らのヒット曲で綴るものですが、なんといっても、リードボーカル フランキー・バリ(中川晃教)のハイトーンのファルセットですよ。この役は、必ず特別なトレーニングをするそうですが、さすがアッキー、明るい力強いファルセット。私、ミュージカルでここぞというナンバーには鳥肌が立つんですが、今回彼の歌声にはゾワゾワしっぱなしでした。日本でフランキー・バリを演じることができるのは、彼をおいてほかにいないでしょう。しかも、今回彼はシングルキャスト。週3回のマチソワ2回公演を1カ月近くやった後、地方公演ですよ。すごすぎる。

1幕の前半の語り手は、トミー・デヴィート(伊礼彼方)。映画のトミーに近い、二枚目でいい加減な人物。後半はバンドの作曲家、ボブ・ゴーディオ(矢崎広)、育ちがよくてきちんとしています。そして平凡で人のいいニック・マッシ(Spi)。フォーシーズンズを世に出すプロデューサーボブ・クルー(太田基博)、フランキーたちを助けるマフィアの親分ジップ(阿部裕)、トミーに金を貸すワックスマン(畠中洋)、ジョー・ペシほかの石川新太くん、何役もこなす女性アンサンブル等、キャストに隙がなく、見事。

ニュージャージーはNYの近郊ですが、彼らは利益や合理性よりも昔からの友人関係を何よりも大事にするイタリア系のメンタリティ(ちょっと任侠な感じ)。バンドとしては最高の成功をおさめながら、犠牲となる私生活、フランキー・ヴァリとボブ・ゴーディオのまぶしいばかりの才能を、フォーシーズンズの多くのヒット曲でつなぐミュージカル。

高さのあるセットを活用した場面構成や、廻り舞台によるステージの表現、モニターや鏡の使い方等、密度の濃い語り口で、クリエにぎっしり満員のお客さんと、空気まで濃いような気のする3時間で、感動でした。

あれ、と思ったのは、(来日版では気づかなかったんですが)、有名な「Can't Take My Eyes Off You」が、クリント・イーストウッド監督の映画版では娘フランシーヌの死を乗り越えた後のヒットだったんですが、ミュージカルでは実際と同じく、死の前の、フランキーの新境地を見せたヒットです。そこは映画的な効果の脚色だったんですね。映画を見たときはなんて悲しい歌なんだと思ったのに。若いお客さんにもこの曲は有名なためか、しばらく拍手が鳴りやまない事態となりました。日本のミュージカルではかなり珍しいと思います。

小ネタとしては、フランキーはバンドに入る前は床屋だったんですが、「トッド!」という台詞があって、にやっとしました。

それから、来日版を見たときは、確か Rock of Fame入の復活コンサートはもっとメドレーで長かったような。今回は、コンサートはあっさりで、その分アンコールがたっぷりありました。私としては、来日版のコンサートシーンはほんとに盛り上がって感動したので、くるぞ、くるぞ、と思っていてちょっと肩透かし、そこだけがちょっぴり残念でした。

「シティ・オブ・エンジェルス」@新国立劇場

      201809cityofangels_3福田雄一演出、山田孝之・柿澤勇人主演とくれば、みるっきゃないと、楽しみにしていた「シティ・オブ・エンジェルス」。ブロードウェイでは1989年12月から1992年1月まで上演され、トニー賞も作品賞、脚本賞等を受賞しているヒット作です。

舞台はハリウッド、私立探偵ストーン(山田孝之)が、老富豪の妻アローラ(瀬奈じゅん)に誘拐事件の解決を頼まれる、という映画の企画。脚本家スタイン(柿澤勇人)は、プロデューサーのバディ(佐藤二朗)に書き直させられて苦悩していますが、なんとか映画は進んでいきます…。

内容を全く知らずに行ったので、そういうことか、とわかってくるのが快感で、わかってみれば確かによくできた二重構造の脚本。スタインとストーン以外の主要キャラは、皆二役なんですが、映画と実生活のキャラクターが微妙に重なっていて面白いです。瀬奈じゅんはすっかり貫禄が出てコメディエンヌ振りも堂にいっていますし、ストーンとスタインの恋人を演じる山田優はさすがスラリときれい。渡辺麻友が娘役で出ていて、肌を思い切り見せたコスチュームも含めてなかなかがんばっていました。若干拍手は辛めでしたが、「三文オペラ」の人よりはずっとよかった。

女優陣でいちばんよかったのは、ストーンの秘書ウーリーとバディの秘書ダナを演じていた木南晴夏。結婚したことをいじられていたので、そのときはわからなかったんですが、玉木宏と最近結婚したばかりの人でした。あまりドラマをまめに見ていないので知らなかったんですが、明瞭な台詞と明るさが的確で、とてもいい女優さんですよ。すっかり贔屓になりました。

残念というか、物足りなかったのが佐藤二朗。いや、私この方ドラマで出ているときはいつも大好きなんですよ。このミュージカルにおけるコメディ担当の比重が大きかったんですが、ギャグがちょっとこの大劇場むきじゃないというか、空間・時間的にスカスカな感じがして、もっと強烈でもよかったんじゃないかな。開演間もないというほどでもないし、デブキャラでスパイスを聞かせていた勝矢との絡みは面白かったんですが、2階の奥(でもSだよ!)で見ていた私が悪いんですかね。「フル・モンティ」や「スパマ・ロット」の破壊力にはもうひとつでした。

しかしやっぱり山田孝之・カッキーはよかったです。「ミュージカル・ミーツ・シンフォニー」では、あのノーム・ルイス相手でちょっともたついていた「You are Nothing Without Me」が二人のコンビネーションとハーモニーで盛り上がって、感動してしまいました。これだけでこのミュージカルの価値があったというか。こういう一生懸命な青年のカッキーはいいに決まっていますが、山田孝之ってやっぱり面白い。かっこいいのに面白くて、ずっと見ていたい俳優です。

ジャジーな音楽、オケもきれいに鳴ってましたが、振付もしゃれてていいな、と思っていたらば、やっぱり「キス・ミー・ケイト」の上島雪夫でした。この人のアンサンプルの振付センス好きだわあ。

福田雄一への期待が天井に張り付いている私、劇場に行くたびに魅力的な次回作のちらしをもらいますが、次はどうかなあ。

 

来日ミュージカル「オペラ座の怪人ケンヒル版」@シアターオーブ

201809kenhill     6度目の来日公演となる、「オペラ座の怪人 ケン・ヒル版」です。あのアンドリュー・ロイド・ウェバ―のファントムは1986年初演、ケン・ヒル版はそれに先立つ1976年に初演されたもので、原作は同じガストン・ルルーの小説です。今回は、ロイド・ウェバ―のファントムを何度も演じているジョン・オーウェン・ジョーンズ(以下JOJ)がフィーチャーされたカンパニー。

お話は基本的にはロイド・ウェバ―と同じ、というのは、原作が同じだから当然なんですが、より原作に近いんだそうです。違うのは、オペラ座の新支配人リチャードが重要な役で物語を進行していくことと、クリスティーヌの恋人ラウルがこのリチャードの息子であるということと、原作に出てくるペルシャ人が出ることと、メグ・ジリ―らしきダンサーがマダム・ジリ―と関係なさそうなことくらいでしょうか。

名曲揃いのロイド・ウェバ―版に比べると、曲はオペレッタ風で(クラシック音楽に詞をつけたもの)、ミュージカル的に心情に訴えるものが少ないのがやむをえませんが、JOJはもちろん、ヒロインのクリスティーヌ役のヘレン・パワーはさすがのうまさ。

また、このカンパニー(オーブのサイトには、JOJとヘレンしかしかクレジットされていませんが)、リチャード役の方はじめ、皆さん明瞭なイギリス英語のベテラン俳優が多く、芝居が練れていて、コミカルなシーンも面白かったです。オーブの最近の来日ミュージカルがRENTコーラスラインと若い俳優が多いカンパニーだったので、対照的。つか、イギリス人て芝居うまいなあ。

ファントムはたいしてみんなと絡みもなく、ただ次々と殺人しているだけなので、JOJとしてはやりがいなかったかも。途中まで、ペルシャ人と二役かと思ってました。そんな歌舞伎みたいなことはしないのか。

そして、腕に覚えのあるロイド・ウェバ―が、これを見て、「オレならサラ・ブライトマンを主役にしてもっと感動的なミュージカルにして見せる」とはりきったのも目に浮かぶようです。

さて、終演後は、スペシャルアンコールとして、JOJのレミゼの「Bring Him Home」。サビでは、この曲ってそんなに力込めて歌い上げるんだっけと思うほど、ちょっと欲求不満だったのかしら、JOJ。さんざん大手町ホールのコンサートの宣伝をしていましたが、そのオレ様感はきらいじゃなかったです(←もうオレ様キャラにマヒ)。

「ゴースト」@シアタークリエ

201808     1990年の大ヒット映画「ゴースト」を原作とするミュージカルです。ウエストエンドに続くブロードウェイの初演は2012年4月、残念ながら8月にはクローズしてしまっています。

お話は映画と同じ。銀行員のサム(浦井健治)は、恋人の陶芸家モリ―(咲妃みゆ)と新しい部屋に引っ越して幸せですが、路上で強盗に殺されてゴーストになってしまいます。この世に留まるサムは、霊媒師オダ・メイ(森公美子)の助けにより、モリ―を守ろうとしますが…。映画は見ていますが、だいぶ昔なので、デミ・ムーアがどんなだったかすっかり忘れており、新鮮な気持ちで見ていました。

浦井くん、私が思うに、ミュージカル界でいちばん「普通の彼氏」が似合うかっこいい人なので、この役はぴったり。咲妃みゆは昨年雪組を退団したばかり、ほっそりとかわいくて、演技も的確、二人のラブシーンはとってもほほえましくて(胸キュン的な)、お似合いでした。映画で印象的だった、Unchained Melody もうまく使われていました。

そして、映画ではウーピー・ゴールドバーグが大スターになった、オダ・メイの森公美子。さすが、歌がうまいうえに、アドリブ自在な演技が秀逸で、怪しくて単純でかわいいオダ・メイ。彼女のおかげで、生き生きとした舞台になっていました。

サムの友人カールの平間壮一も好演でしたし、役名はないアンサンブルも力演。とくに強盗ウィリー(松田岳)、ゴースト仲間のひのあらたさん。オダ・メイのアシスタント二人も素敵でした。

最近のプロダクションだけに、シンプルながらスピーディに転換される効果的な舞台装置や、照明、過度でない映像効果(横山翼、石田肇)がなかなかよかったです。

ラストはしみじみとした別れで、大切な人を突然失ったモリ―の悲しみが胸に迫り、観客も泣く人多数。夏にふさわしい、素敵なゴースト物語でした。

来日ミュージカル「コーラスライン」@シアターオーブ

201808       かの有名な「コーラスライン(A Chorus Line)」、1985年の映画版は見ているんですが、オリジナルのミュージカルは見たことがなく、この公演があることを知ってから、楽しみにしていました。オリジナルは1975年から1990年までロングランの大ヒット作、2006年以降、たびたびリバイバルもされています。今回は、1月からアメリカ国内を回った、オリジナル・キャストのバーヨーク・リーによる演出版のツアー(http://achoruslineontour.com/)。

そういえば、3月に、「A Class Act」という、コーラスラインの作詞家エド・クりーバンを描いたミュージカルを見たのでした。今年は縁があるんですね。

お話は、コーラスラインに出演するアンサンブルのオーディション。ダンスの後、演出家ザック(アーロン・パトリック・クレイブン)は、残った候補者に、自分の人生を語らせます。なぜダンスを始めたのか、何を目指しているのか。

という、あらすじは知っていたので、残った候補者の数がけっこう多くて、誰も知らないのにどうなるんだろうと思っていたら、その描き方がうまいです。ただ語るだけで単調になってしまいそうなところ、セリフの長さや歌や数人同時に、と変化があってお芝居として引き込まれるようにできています。セットもときどき鏡が出てくるだけ、衣装もほとんどなく、いかにもオフからきた作品ですが、その分台本がよくできているというか。

このカンパニーもRENT同様、さほどキャリアのない若い俳優が多く、いかにもアンサンブルのオーディションという感じがリアル。でも歌はうまいし、ダンスも達者です。振付を覚えていくところ、ずれなど、ただ上手に踊ればいいだけではないのが難しそう。

盛り上がるのは、ザックの元恋人キャシー(マディソン・ティンダー)が、スターのプライドを捨てて、コーラスラインからやり直そうとするところなんですが、この方、元スターという雰囲気がなく、ダンスもそこまで飛び抜けた感がないので、若干物足りない感じがしました(でも、この役ができる日本の女優っているかな、と思うとここまで踊れて歌えて華があるというのは難しいですよね)。

曲は、At the Ballet、What I Did for Love 、One ほか名曲ぞろいで、とくにWhat I Did for Love は感動でした。

来日ミュージカル「RENT」@シアターオーブ

Rent201808    RENTの20周年ワールドツアーによる来日公演です。RENTは5年ぶり、前回はオフブロードウェイの新演出版でしたが、今回のツアーはまたオリジナル演出に戻ったRENTでした。

ほんとのRENTHeadには到底及ばない(というかレベルがちがう)ですが、私としては8回見ている最多ミュージカル、映画版RENTが、ミュージカルにはまった原点の作品ですから(このブログだってRENTアダム・パスカル中心だったですしカテゴリもある)、やっぱりロジャーが登場して、RENTが始まったときは、ここからだーと鳥肌と涙が出そうになりました。

とにかく、映画DVDをこれほど見て、サントラCDをこれほど聞いた作品はないので、曲すべてが愛おしく、時間が過ぎるのがあっという間でした。

20年前の作品ですが、作者のジョナサン・ラーソンが自分や友人たちの姿を映しているので、同性カップルが本当に自然なかたちで描かれていて、さまざまな人々が愛でつながっているというテーマが、今でも普遍的なものとして伝わってきます。オリジナルキャストのジェシーだったか、ブロードウェイでは「黒人役」のような扱いが多いけど、この作品はそういう属性とは関係なく人間として描かれているんだ、と語ってましたっけ。

カンパニーとしては若くて、粗削りなところも多く、何となく学生の演劇部みたいな感じがして、それもRENTの初期みたいで新鮮だなあと思ってみていたんですが、実際に、ミミ(デリアンドラ・タッカー)とエンジェル(ジャボン・キング)は、大学在学中なんだそうです。ほかのキャストもあまり情報がない若い俳優さんばかりという感じでした。

ロジャー(ローガン・ファリン)、今まで見た中で、声が、アダム・パスカルに一番似てて、ロックな高音。本人もファンなのか、ツアー的な要請なのか、歌い方も相当似てました。コリンズ(デヴィンレ・アダムス)もジェシーにかなり似てました。エンジェルのセレモニーの歌はとってもよかった。エンジェル(ジャボン)は、大柄ですが動きのキレがよく、キュート。ジョアン(レンシア・ケベテ)もすっごくうまかった。モリーン(リンディ・モエ)も個性的でなかなかいいモリーン。マーク(ローガン・マークス)は明晰なセリフがよかったです。

やや残念だったのは、ミミが若干力不足で、とくに「Out Tonight」は聞いててつらかったのと、髪があ!ナチス協力のために坊主頭にされたみたいな短髪って…歌詞にもmoonlight out of your hair ってあるじゃないですか。チラシのビジュアルともちがうし~。ベニーもいまいちでしたね。

2幕最初の「Seasons of love」、やっぱりよかったです。ソロも最高でした。歌舞伎だと休憩後の最初はちょっと遅れても大丈夫なような始まりが多いんですが、これは本当に見逃しちゃいけない2幕冒頭です。

(おまけ)

ところで、アダム・パスカルは今どうしているかと思ったら、今年の5月に「Something Rotten」のシェイクスピア役を離れたそうです。2016年11月からですから、1年半もツアーに出ていたということですよね。お疲れ様でした。

今は、ミュージカル指導なども行っているようです。そして、12月には、アンソニー・ラップとのジョイントライブもあるみたいです。二人の「What You Own」は最高ですからね!

「メタルマクベス disc1」@ステージアラウンド

201808    ステージアラウンドでの新感線公演、髑髏城シリーズのあとの「メタルマクベス」disc1です。クドカン、濱田めぐみ、ときたら、やっぱり見るしかありません。花髑髏以来なのは、花髑髏よかったんですけど、ステアラ遠いし長いしもう山本耕史出ないので(笑)、あまり行こうと思わなかったんですよね。今回は16列目と前回(先行なのに30列目だった)よりだいぶよい席です。

ストーリーは基本的には「マクベス」。ちがうのは、舞台が2218年、廃墟と化した世界で鋼鉄の城に住むレスポール王(=ダンカン王、西岡徳馬)の国であることと、マクベスたちは1980年代のメタルバンドを組んでいたという設定がフラッシュバックすること、その関係で原作と異なる名前を持つ登場人物がいることくらいです。それから、ハードロックを中心とするミュージカル(曲は新感線の作曲家 岡崎司)。リプリーズの入れ方もうまくて、曲にすっと入っていきやすかったです。

やはりシェイクスピアの原作の魅力が大きいです。王になりたいという野心を焚きつける妻、裏切られる王、忠臣、友。クドカンの脚本は、マクベスの名セリフを随所に使い、物語の枠組みを守りつつも、挿入したバンドの場面の緩さが、こんなに大仕掛けの舞台なのに本多劇場と同じノリで面白い。しかもラストにはちょっとぐっときました。

思っていたよりもずっとミュージカルで、とにかく橋本さとし、濱田めぐみが(当然ながら)うまいんですよ!橋さとさんは、たぶん「アダムス・ファミリー」以来だと思うんですが、長身に彫りの深いお顔がバタ臭いメイクと衣装に合い、ヘヴィメタからロックまで歌いまくり、バイクも立ち回りもすごい迫力。あの「ブラック・ペアン」で佐伯教授の腰巾着として、あくまでカッコ悪く、黒メガネでルックスまで封印していたのが本領発揮。

濱めぐさんもですね、これまでの豊富な舞台経験を注ぎ込んだような快演ぶり。細くてきれいなのに迫力満点で歌も最高という、女優として一段あがったような感じさえしました。「メアリー・ポピンズ」でも思ったんですが、動きがさらにキレキレになって、いいトレーニングをされているのでは。

ほかにもエクスプローラー(バンコー、もしかして阿弖流為の蛮甲はここからとっている?)の橋本じゅん、グレコ(マクダフ、山口馬木也)、グレコ夫人と魔女(猫背椿)、レスポール王の息子(松下優也)、パール王(粟根まこと)、門番(村木仁)、バンコーの息子マーシャル(富川一人)、伝令ヤマハ(吉田メタル)、魔女二人(山本カナコ、植本純米)と皆さんきっちり役割を果たしてます。役としては大きくはないですが、ソロが3曲、素晴らしい歌声を聞かせてくれたのは、冠徹弥ですね。

ステージアラウンドという客席が回転する劇場の使い方も、ずいぶんこなれてきたような気がしました。回転の際に使われる幕に映じたプロジェクションマッピングの質感と動きがよくて、左右だけでなく上下の動きも体感できます。そして、広い舞台を走り回るバイク。スピード感が快感でした。

舞台美術は堀尾幸男、照明は原田保、映像は上田大樹、ヘアメイクは宮内宏明って、ワンピース歌舞伎と同じですよ(宮内さんはワンピはヘアデザインのみ)。これだけ長くお金のかかった大作で、芝居を生かしながら少しも遠慮なく力を発揮するプロのみなさん(ワンピース歌舞伎本でいろいろ語っているのでよけい親しみがわきます)。すごいものだと思いました。

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