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ミュージカル(シアター)

宝塚月組「夢現無双」「クルンテープ 天使の都」

201905  宝塚月組 吉川英治「宮本武蔵」を原作とする「夢現無双」、和ものです。人気の美弥るりかさんの退団公演ですが、幸運にも見ることができました。娘役トップ美園さくらのお披露目でもあります。

ああ、みやるりちゃん、最初に見たのは、「NOBUNAGA」の秀吉でした。男役ながら小柄、でも女の子じゃなくて中性的で少年ぽい彼女は、ほかの人にない魅力があって、いつも見るのが楽しみでした。全組の座組で見たかったくらい。退団はさみしいな。

 さて、宮本武蔵って、有名ですが、海老蔵の大河ドラマも見ていないし、剣豪ということと厳流島の対決くらいしか知りません。まず何時代の人って感じですよ。

 美作の宮本村で育った新免武蔵(後の宮本武蔵、珠城りょう)は、幼馴染の又八(月城かなと)と関ヶ原の戦いに出て(←戦国から江戸にかけての人だったのかと知る)、お甲(白雪さち花)たちと暮らします。又八とも別れた武蔵は、京の兵法所吉岡一門の吉岡清十郎(暁千星)らと戦ったりして剣の腕を磨きますが、父の仇佐々木小次郎(美弥るりか)と厳流島で対決することに…。武蔵と思い合いながらも一緒になれないお通(美園さくら)、美しい吉野太夫(海乃美月)、自分勝手な又八の母(夏月都)、武蔵を導く台詞の達者な沢庵和尚(光月るう)、文化人本阿弥光悦(千海華蘭)あたりがいいな、と思ったところ。

作品自体は、残念ながらあまり好みではありませんでした。原作が長いからか、場面転換は多いですが、そもそも宮本武蔵が、自分探ししているだけで何もしていない、どころか、吉岡一門惨殺ってところに、たまきちがいくら長身でかっこいいといっても共感できない。普段歌舞伎を見慣れているためか、着物の所作が気になる人もいる。みやるりちゃん小次郎は、クールな美貌でかっこいいんですが、ただ舞台を歩くシーンが多く、もっと笑顔ではじけてるみやるりちゃん見たかったな、と。せっかくの新トップである美園さくらのお通は、役柄も衣装も地味で見せ場もないです。若干猫背で舞台を出たり入ったりしている印象。

まあでも、前述のとおり、キャストは個性的でしっかり演じていましたし、立ち回りも腰が入っていて、迫力があっていい。何よりたまきちさん、剣豪の姿似合ってましたよ!

久しぶりのたっぷりレビューはタイを舞台とした「クルンテープ 天使の都」。タイをイメージした衣装はキンキラキンでまばゆい!こちらでは美園ちゃんもしっかり華やか。月城さんと暁さんの一騎打ちとか、ニューハーフっぽい輝月ゆうまさんの迫力ある歌とか、キンキラのミニのコケティッシュな暁さんのダンスとか、いろいろあって楽しかったです。

→ キャスト名は、ファンの方のブログで知りました。レビューだと、トップコンビのほかはいつも2人くらいしかわからないんですが、ファンの方は、推しがどんなステージを見せてくれるかというのも楽しみなんでしょうね。

そして、みやるりちゃんとたまきちのデュエットのダンスがかっこよくてじんとしたり、ソロで歌ったみやるりちゃんが一旦ハケてから、ふたたび群舞にジョインしたり、ちゃんとみやるりちゃんをフィーチャーしてくれてよかった!泣きそうでした。

音楽劇「ライムライト」@クリエ

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  チャップリンの映画を音楽劇に仕立てた「ライムライト」、2015年に続く再演です。元の映画は、1952年、チャップリンが63才でアメリカを追放されたために、アメリカでの最後の作品となったもので、主題歌はスタンダードとして有名です。映画は確か見たことがあると思うんですが、例によってストーリーの流れは覚えておらず。

 お話は、1914年、ロンドン、若いころは人気があったのに、お酒で身を持ち崩し、すっかり落ちぶれたコメディアン カリヴェロ(石丸幹二)は、足が動かなくなって失意のあまり自殺しようとしたバレリーナ テリー(実咲凛音)を助けます。カリヴェロのおかげで立ち直ったテリーは、バレエ団に職を得て、カリヴェロに愛を告白、結婚してほしいといいますが…。

(関係ないんですが、足が動かなくなって自殺するテリー、やっぱり四代目の事故のことを思い出し、あんなに踊りが好きで上手な人が、ほんとはどんな気持ちでいたんだろう、ネガティブな気持ちを一切出さない人ですが、きっといろいろな思いが…と思ったとたんに、ひそかに座席の中で固まってました私)

 音楽劇といいつつ、歌で話が進行していくので、私のくくりでは普通のミュージカル(音楽劇は、普通のお芝居の途中に独立した歌が入るイメージ)。アコースティックな楽隊がとても美しくて、クリエの小さくて濃密な空間(超満席だった)に、音楽が満ちていきます。チャップリンの曲、ほんとうにきれい。と思ったら、音楽は三谷幸喜作品でおなじみの荻野清子さんで、ピアノも自ら弾いていました(どおりで)。バイオリンは岸倫仔さん。

比較するのは申し訳ないんですが、銀河鉄道999は、キーボード主体のうえ2階サイドだったので、よけい音楽も歌も台詞も届くような気がしました。このノスタルジックで美しい音楽にふさわしい、シンプルながら温かみを感じるセットと照明、衣装がすてきでした。

石丸幹二はこの世代では一番売れていて、すらりとかっこよく品がよい方、もともと振り切った派手な役は得意ではなく、(キャバレーのMCとか)はっきり言ってこの役は合ってません。売れていた頃の勢いとかオーラとかが足りないし、落ちぶれたときの落差も不十分。ていうか、何やってても普通にハンサムでかっこいいんですよ(このチラシ見てください)。誰ならよかったかと思うと、今なら市村正親さんかな。ストレートプレイなら、西田敏行とかの役どころですよね。とはいえ、水準以上の方ではあるので、チャップリンを思い出さなければ、作品世界としては成り立っています。

テリーの実咲凛音、宝塚では「エリザベート」「双頭の鷲」と、いずれも気品ある王妃で見ていますが、こうみると普通の娘さん。バレエのシーンが多く、さすがにジャンプの高さはさほどながら、すばらしいバレエで、宝塚だってずっとバレエばかり踊っているのではないでしょうに、このスタイルと技術の維持は、すごい!演技力のある方なので、透明感のある雰囲気と歌もとてもよかったです。

さらにほかのキャストもとってもよくって、テリーに引かれる作曲家ネヴィルに誠実な雰囲気と美声の矢崎広、バレエ団のポスタントに毎度一癖あって楽しい吉野圭吾、飛び道具感いっぱいの植本純米、達者でかわいらしい保坂知寿。魅力的なダンスシーン見せてくれた佐藤洋介、舞城のどか。吉野、純米、保坂の3人は面白すぎて、ああ、石丸さんが一番マジメだよう、と思ってしまいました。

哀しいラストなんですが、映画のあらすじ読んだら、ちょっとした設定のちがいがありました。若干情緒的で冗長な感もあり、映画のラストの方がよかったかも。

 

「銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠」@明治座

201904_9992018_1  昨年、「銀河鉄道999」の音楽劇を、中川晃教と凰稀かなめでやるときいて、「うぉー合ってる!」と見たかったんですが見そびれてしまい、今年早くも再演ということで見てきました。

 はい、いろいろまちがっています。凰稀かなめ、メーテルにぴったり!と思ったらメーテルではなくて、クイーン・エメラルダス役、再演じゃなくて続編でした。しかし哲郎がアッキーなのはまちがいなく、この歌と演技で外見が(年齢に関係なく)哲郎って、アッキーしかいないでしょ。

 アニメや漫画で知っている999(スリーナイン←子供の頃見ていた)のお話は、金持ちは機械の体となって永遠の命を得、生身の貧乏人を迫害している未来、機械伯爵に美しい母を殺された哲郎は、謎の美女メーテルと、銀河鉄道999に乗って、機械の体をタダでもらえる星を目指す過程で、さまざまな人々に出会う、という、キャラデザインと設定だけでも良くできたコンテンツ。

哲郎はもちろん、メーテル(木下晴香)、エメラルダス、キャプテン・ハーロック(平方元基)、車掌(お宮の松)は、アニメから抜け出たような雰囲気、ぴっとした佇まいでかっこいいです。コスプレになっていないのは、実力派のキャストと、元の作品にきちんとドラマがあるからなんでしょう。

実はちょっと遅刻してしまい(痛恨)、若干話に入りづらく、時々出てくるエスメラルダとハーロックと哲郎の関係があれ何だっけになってしまったんですが(ハーロックってそもそも別の話で、999にはちょっと出てくるだけだったはずだし)、その中でも、もうひとつの999に乗っていたハミル(前山剛久)との友情と歌のシーンはちょっとぐっときました。

さて、2幕はお話が動いていきます。メーテルとエメラルダスは姉妹で(そうだっけ)、彼女たちの故郷の星に到着した哲郎は、そこで驚くべき事実を知り…。

宇宙ものらしく、何度も客席を照らす美しい照明。上から見た方が、舞台の上に映る映像がよく見えます(映像演出 ムーチョ村松、照明柏倉淳一)。セットがシンプルでも、雰囲気が出ます。一方、車掌の無重力はアナログな宙乗り。

音楽劇というより、もう少しミュージカルよりに作ってくれた方が、躍動感があったと思うんですが、(音楽劇というと、キャストが立ち止まって持ち歌を歌い上げる、みたいになってしまうので)、それにしても歌うまなキャストばかりなので、どの歌も聞きごたえがありました。アッキーはもっと歌ってくれてもよかった!

終わりにアフタートークショーがありました。かわいかったクレアの美山加恋ちゃんの司会で、木下晴香、前山くん。初々しい感じで進んでいったんですが、お宮の松さんが乱入して盛り上げてくれました。お宮さん、達者だしアニメのまんまの雰囲気の車掌さんで、なかなかよかったです。

明治座の2階の左右はけっこう見やすくてお得、とメモしておこうっと。

「笑う男」@日生劇場

201904warauotoko   ミュージカル「笑う男 ―永遠の愛」です。原作はビクトル・ユゴーの小説、過去に映画化もされているようです。ミュージカルとしては、2018年7月に韓国で初演されたもの。ロバート・ヨハンソン脚本、フランク・ワイルドホーン作曲、「ビューティフル」や「オン・ユア・フィート」の上田一豪演出です。

(以下、けっこうネタバレありです)

時は17世紀クロムウェルの後王政復古したイングランド。誘拐され、慰み者にされるために、笑った顔のように口を裂かれたグウィンプレン(豊島青空、大きくなって浦井健治)は、拾った盲目の赤ちゃんデア(大きくなって衛藤美彩)とともに、ウルシュス(山口祐一郎)助けられます。長じてウルシュスの見世物小屋(フリークスがいっぱい)で見世物となるグウィン。しかし、アン女王(内田智子)の異母妹ジョシアナ公爵(朝夏まなと)に興味を持たれたグウィンプレンは、フェドロ(石川禅)によって、クランチャーリー卿の跡継ぎだったということがわかり、屋敷に連れてこられます。女王は、ジョシアナにグウィンプレンと結婚するようにいいますが…。

ユゴー原作らしく、物語は階層社会や人間の残酷さを描き出している感があり、フランク・ワイルドホーンの曲も、すごくいいです。印象的なテーマ曲のリフレイン、特に終幕近くのグウィンプレンとジョシアナのソロは名曲。演奏も美しかったです。

舞台装置はシンプルですが、映像もうまく使って雰囲気を出しています。しかし特筆すべきは衣装!前田文子さんが、この舞台の衣装の工夫や苦心をTwitterで見せていてくださったので、期待していたんですが、素晴らしかった!布地の存在感と、形の凝っていること。女王とジョシアナがいちばんですが、ウルシュス一座も凝っているし、グウィンプレンの白い衣装、ガウンも素敵でした。

残念ながら、メインキャストはあんまり合っていないと思いました。浦沢くんは、好青年過ぎて、「笑う男」となった悲劇性とか屈折とかが感じられなくてただの好青年。歌も彼の声質では弱い感じがしました。この人ほんとにメタルマクベスやったのかな。衛藤美彩は、雰囲気は可憐だし演技も悪くないんですが、肝心の歌が最初の場面からあまり歌えてなくて、すてきなデュエットもいまいち。乃木坂を卒業したばかりの人だそうですが、夢咲ねねとWキャストとは。

朝夏まなとはきれいで、女公爵としての貫禄、孤独感、グウィンを誘惑するときの下品にならない色っぽさ、でよかったんですが、歌は彼女にもちょっと難しかったかも。

ウルシュスは、最初の無頼な雰囲気はいい感じだったんですが、うさんくさすぎるし、グウィンプレンたちを見世物にしてるし、愛情をもって親代わりをやっていたということがあまりしっくりきませんでした。あのくせのある過ぎる台詞のせいか。むしろ計略みえみえの石川禅(歌もよかった)と役が反対の方がよかったかも。

アンサンブルはうまくて、グウィンの母とか、美声の女王とか。この女王の眉なしのメイクはなかなか迫力で、長台詞はちょっと苦しそうでしたが、歌はよかったです。

結局、韓国製作ミュージカルは、もっとバリバリに歌主体でキャスティングしてくれ、でした。

宝塚花組「カサノヴァ」

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   宝塚花組「カサノヴァ」です。トップ娘役の仙名彩世はこの公演で、トップの明日海りおもこの秋には退団ということで、あの「ポーの一族」の二人、とくに明日海りおは、私の少ない宝塚観劇の中でもけっこう長くみているし、ルックスがもう一番好みの男役ということで、あんなに美少年だったのに、貫禄まで出てきちゃって、と感慨深いものがありました。

 お話は、有名なカサノヴァものなんですが、実は数多の女性と浮名を流したということくらいしか知らず、直前に調べたら、18世紀後半のベネチアの人物で、多才で頭の回転が速く、投獄されたが脱獄した経験があり、薬の知識があったということがわかりましたが、その部分は脚本に生かされていました。

作曲は「1789」のドーヴ・アチア氏で、ラップ調とか、アイドル調とか、いろいろなタイプの曲があって、それも楽しかったです。

その投獄場面からカサノヴァが登場します。自信家のカサノヴァ、さすが役ごとになりきるみりお、完璧です。といっても宝塚らしく、千人斬りのカサノヴァは、脱獄後、ベアトリーチェ(仙名彩世)と出会い、真実の愛を感じ、またベネチア提督の養女として政略結婚させられそうな彼女を救うのです。

ベアトリーチェの心理がきめ細かく描かれていて、退団公演らしいなと思うとともに、カサノヴァを捕えようとする審問官コンデュルメル(柚香光)がかっこいいヒール、そのこじれている妻(鳳月杏―男役なのに女性の歌うま!)、ベアトリーチェの求婚者コンスタンティーノ(瀬戸かずや)。牢獄で知り合ってずっとついていくバルビ(水海舞斗)がかわいくてうまく、ジャニーズの少年のようでした。ベアトリーチェの侍女ダニエラ(桜咲彩花)はきれいだった!

と、個々のキャラクターをうまく生かした明るい作品で、楽しかったです。退団間際のトップ二人ということは、次が十分育っているということでもあり、柚香光の振り切った演技が主役に迫っていて、でもやっぱりみりおはすごくって。金髪に全身赤の衣装って、カズレーザーだ!とつい気づいちゃったんですが、いや、ここまでちがいますか。

2幕のたっぷりしたお芝居で、最後はいったん別れるという設定が、一足先に退団するってそういうことかしら、とちょっと胸に迫るものがありました。短いレビュー、階段の前の、みりおが娘役の中一人真ん中で踊る衣装が華やかでほんとに素敵でした。

ちょこっとしか知らない私でさえ、こんな風に思うんだから、ずっと追いかけてきたファンの方々の気持ちはいかばかりか、と思う夜でした。

 

 

 

「愛のレキシアター ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」@赤坂ACTシアター

201903_2山本耕史の主演ミュージカル「愛のレキシアター ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」です。よくわからないタイトル、日本の歴史をテーマにしたバンド「レキシ」の曲を愛するたいらのまさピコ(河原雅彦)さんが脚本・演出ということですが、最近の音楽方面は疎くてレキシも知らなかったので、だいぶ異色のミュージカルだろうとだけ思っていました。いざ公演が始まると、山本耕史への絶賛の嵐で高まる期待。

 お話は、ニートで引きこもっている織田こきん(山本耕史)は、歴史アイドルのカオリコ(松岡茉優)が大好きで、ヨシツネのハンドルで、自分を美化した画像(佐藤流司)を送ってしまいます。こきん、カオリコ、こきんの母胡蝶(高田聖子)、引きこもりサポートセンターの明智(藤井隆)は、ウォルト・レキシー(八嶋智人)歴史のテーマパーク、レキシランドに招待され、さまざまな時代を体験していきます←すいません、ちょっとネタバレしすぎかも 。

冒頭にレキシさんの紹介の映像もあったり、八嶋智人が盛り上げてくれたりして、この楽しい世界観に無理なくなじませてくれます。というか、すでにリピーターも多いのか、客席がみっしり熱い感じ。 

河原さんは、レキシが大好きすぎて、使いたい曲が多く、場面もキャストの早替わりも多く、台本自体とても厚かったそうです。結果、休憩20分込みで3時間10分の大作に。長いですが、歴史というテーマでの統一感もあり、衣装(高田阿友子)の、重すぎず安っぽくない絶妙さもあって、楽しんでいたらあっという間でした。 

こう感じたのも、レキシの曲がよくて、キャストも皆さん歌がうまく、それぞれ個性的半分素のようなやりとりも間がよかったというのもあると思います。美術松井るみ、映像上田大樹、ヘアメイク宮内宏明と、売れっ子のスタッフ、梅棒の躍動感ある振付、レキシの曲のクォリティを維持しつつミュージカルに仕上げた音楽監督の山口寛雄と、きっと皆さん、河原さんの熱意に引っ張られて、いいチームワークだったのかなと思います。 

2019032事前に左の写真が公開されていたのですが、これはレキシさんのアフロを真似してるだけで、山本耕史のこきんは、もっとぼさぼさの長髪で、スーパーで売っていそうな冴えないジャージ姿でへんな走り方してます。しかしいったん歌となったら、レキシの曲とまっすぐ伸びる彼の声がとても相性がよく、歌詞もよく届いて、どの曲もとても素敵。ダンスもただうまいのではなくて、キャラクターがしっかり立っていて魅力的。身体能力の高い役者はどんな動き方をしてもかっこいいんですね。パーカッションやギターも本気でうまい。

 高田聖子、藤井隆、浦井りんこが歌もうまくて面白いのはわかってたんですが(それにしても高田さん歌うまっ)、松岡茉優もすごいですよ。かわいい女の子なんだけどちょっとめんどくさい、という役を自然体で演じながら、昔のアイドルの歌を、私たちはこんな風に楽しんでいたな、という姿を見せてくれたのがとてもよかったです。松岡茉優は「江戸は燃えているか」でも好演してましたし、どんな変わった芝居でも魅力を発揮するすごい子です。

ほかに美形の佐藤流司、乃木坂の井上小百合、前田悟、出るたびに雰囲気の変わる山本亨。アンサンブルの皆さんも、曲と場面が多いだけ、たいへんな大活躍。舞台装置も直すし!

 最後は客席の前の筒に差されてあった稲穂(繰り返し使用)を振って大フィナーレ。山本耕史の舞台は、必ずカーテンコールで一言あるのがうれしいです。やーこれは楽しいエンタテインメントで、しかもファンは知っている山本耕史の魅力爆発の、必見の舞台でございました。

 そうだ、珍しくパンフレット買ったんですよ。写真も記事も充実してて、レキシや梅棒さんのこともよくわかったんですが、折り返しには、レキシランドのイラスト地図!買ってよかったー、でした。

木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」@KAAT

201903         木ノ下裕一さん歌舞伎演目の再構成による演劇、木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」です。木ノ下さんと児玉竜一先生の座談会 ですっかり天才木ノ下さんのファンになって、直後にチケットをとっていたのでした。

木ノ下歌舞伎は、私の理解では、歌舞伎台本の原典に立ち返り、物語として再構成したうえで、現代劇として上演することで、歌舞伎の演劇としての骨格を再認識するというもの。木ノ下さんの細かい読み込みと分析によりよりくっきりと演劇的構成が浮かび上がるということだと思います。

この「摂州合邦辻」は、高安通俊の後妻玉手御前(内田慈―ダンスも歌もよい女優)が、継子である俊徳丸(田川隼嗣)に毒酒を飲ませ、盲目・らい病にしますが、それは彼の腹違いの兄次郎丸からから守るためのもので、彼を元に戻すため、命を犠牲にするという壮絶な物語。歌舞伎では残念ながらまだ見たことはありません。

KAATの大スタジオ、11列目までしかなくてほんとに小さい、しかし舞台は十分な大きさのよい空間。無機質なインテリアは、実験的な作品にもぴったりです。

しかし、開始直後、全員での歌に驚き!黒い背景に大きな四角い木材が何本かあるだけの舞台に、キャスト全員が登場してイージーリスニング的なメロディの、現代の生活はたいへんだとかいう感じの歌詞の歌を延々と歌うんですよ。ミュージカルだったんだ!しかしいつ終わる?

オープニングでビッグナンバーを歌うミュージカルはけっこうありますが、最初から心を奪われる曲ですよね、RENTとかミス・サイゴンのような。中途半端な歌唱で歌われる歌に多少イライラしました。

そして、芝居が始まっても、ずっと音楽が鳴っているのに閉口。芝居としては、ヴァイルとか、ソンドハイムみたいな曲に合いそうなのに、フォークロックみたいなやや古い曲が、けっこうなボリュームで流れているのは本当にストレスでした。だっていい芝居ってBGMはいらないでしょう?後半、しばらく消えたと思ったら、最後にはまた鳴ったりして、BGMを流すかどうかの基準は見えず。

また、途中でもしばしば歌があります。最後も玉手の母おとくの歌。ミュージカルをこよなく愛する者として、こんなぬるい歌ばかりのミュージカルはそれ自体残念。歌を入れるなら、より感動を盛り上げるものでなければ意味がないんです。

男性はスーツ、女性は玉手は黒いレースのドレスですが他の女性は普段着。しかし前述のような意図のある芝居なので、脳内変換していきます。なるほど、この悲劇の背景にはそういう父娘関係があるのかということもわかっていきます。

木ノ下歌舞伎は、歌舞伎の映像を見て、台詞をすっかりなぞる稽古をびっちりやるそうで、元の台本通りの台詞の言い回しは、現代風となっていても、違和感は感じません。そういうところも含めて、お稽古は十分やれている感じ。俊徳丸以外は、活舌もはっきりしていて聞きやすく、その点からもお芝居が理解しやすいです。中でも羽曳野の伊藤沙保がクールでメリハリのきいたセリフがかっこいい。

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しかし、プロダクションの意図はともかく、エンタテインメントとしては、やっぱり歌舞伎役者の歌舞伎で見たい!ということでした。ついでに第1回亀治郎の会の玉手御前のチラシ。この役、とても猿之助に合ってると思うので。歌舞伎座でやってくれないかしら。

「世界は一人」@プレイハウス

201903       Twitterで追加販売を知って、キャストがいいので取った「世界は一人」、作・演出の岩井秀人さんは最近注目の方だそうで、ミュージシャン前野健太さんが演奏する音楽劇、劇場はプレイハウス、とばっちり。しかもお席はサイドながら通路より前ですよ!

前野健太のバンドが舞台上手にいます。この方、CM等にも出ているそうですが知らなくて、迫力ある、ソウルフルな歌声に感動。すっごくかっこよかったです。

お話は、松尾スズキ、松たか子、瑛太の同級生(!)の、小学生の高学年から中年くらいまでのいろいろを歌とともに描いていくというもの。スズキくんはやや冴えない子ども時代からからやり手のビジネスマンになり、金持ちの娘松たか子は5階から飛び降り、君臨していた瑛太は引きこもり…その先もいろいろあります。

主役の3人がやはりとても魅力的。スズキさん、俳優としても独特の軽みがあって、おじさんなのに少年みたいで大好き。「マンハッタン・ラブ・ストーリー」「ちかえもん」や「いだてん」もいいですもんね。不思議な動きの場面は笑えました。

松たか子、「カルテット」ではちょっと老けたかな、という気もしたんですが、生で見ると、かわいくて、女性としての艶やかさがありながら、女性というより人として魅力的だなという感じがして、歌もうまく身体能力も素晴らしいんですよ。野田秀樹とかこういう作品を好んでいる松さん、どういう方向にいくのか、気になります。

そして瑛太、野田秀樹作品などでおなじみですが、相変わらずバランスの取れた身体、ナイーブな感性、超かっこいいですよ。歌もうまくてですね、若さと成熟のバランスがいちばんいいときというか。若干出番が少なかったのが残念なくらい。

ほかに迫力とユーモアの達者な平田敦子(よしもと所属ですよ)、菅原永二、平原テツ、古川琴音と的確な演技で複数の役を演じる役者さんのキャスティング。

しかしこの作品、3人の人生を描くという割には、ありふれたセリフだけで描こうとする場面が多く、残念な感じがしました。寓話的な描写であっても、部分的なリアリティの積み重ねとか、鋭い表現等が、芝居の実となって観客に訴えかけると思うんですけど、表層的でなんか高校演劇みたい。

音楽、セット(美術秋山光洋)、役者はいいのに、新鮮ないい材料で、料理の仕方を間違えた感。怒鳴るシーンもありましたが、怒鳴ればいいってもんでもないし。

特設サイトをみると、岩井さんは「レ・ミゼラブルやミス・サイゴンのようでない、会話からすっと歌に入るミュージカル」を目指したとのことですが、それって普通にオフ・ブロードウェイ作品でやってるやつじゃないですか。新しくもないし、表現としてはさほど洗練されていない(曲はいいけど)。布団の使い方は生活臭があって好きじゃない。

しかも、「深刻なテーマを内包しながらも、“おばちゃんにもわかる”平易な言葉で」って何です?実は朝この特設サイトのこのフレーズを見て、「おばちゃん」って何だよ!と不愉快だった私。劇場の主要顧客である中高年女性全般を指すなら天に唾する行為ですし、特定の人々を想定するなら差別的だし。言葉知らないのは今どきの若いもんなのに何言っちゃってんの(ガチ切れ)。

瑛太のあまりのかっこよさに、見ている間には、何でこんなに素敵な人がいるのに、あの黒光りしたシニカルなおじさん(←ひどい)のファンなんだろうっていう考えが浮かびましたが、結局、今日は偶数日だったのに歌舞伎座行けばよかったな、なんて思っちゃいました。すいません。

「ラブ・ネバー・ダイ」2019@日生劇場

201902loveneverdies                2回目の「ラブ・ネバー・ダイ」です。前回は2014年(この感想はストーリーのネタバレありです)、とにかくストーリーの衝撃と、不思議な雰囲気のある衣装とセット、そしてロイド・ウェバーの美しい曲が印象的でした。

今回のキャストはファントム石丸幹二、クリスティーヌ平原綾香、ラウル田代万里生、マダム・ジリ 香寿たつき、メグ・ジリ 夢咲ねね、グスタフ 加藤憲史郎

初めから歌を聞く気で行っているわけですが、平原綾香、さすがです。低音からファルセットへの流れがきれいで力強く、この音域の広いウェバーの名曲を自在に歌ってくれて感激!後半の渾身のステージシーンでは、まさにショーストッピングで、拍手が鳴りやみませんでした。ここまで歌だけで盛り上がったのは、初めて見たかもです。当たり役といえましょう。

石丸幹二は、役柄的にはほとんど顔が出ないのですが、すらりとしていて美声、このファントムなら仕方がないかなと思うところが適役。しかし私はやっぱりラウルが好き、しかも久しぶりの万里生くんですよ。高音がきれいに伸びる歌、前回は若かったですが、4年たって渋みも加わって、愛のために苦悩するラウル子爵、素敵でした。

ああ、この3人のキャストで日本最高の「オペラ座の怪人」が見たいな。

そして憲史郎くん。育ちのよさそうなかわいいお顔、歌も演技もすばらしくて、早くガブローシュが見たい!清史郎君も歌うまいのにミュージカルには進まなさそうですが、憲史郎くんはどうかなあ。

ラブネバ名物のフリークス3人組、重松直樹(フリークスというにはかっこいい)、辰巳智秋、知念紗奈が出てくると私的には盛り上がりましたが、知念紗奈って、Hey! Say! JUMPの知念侑李のお姉さんなんだ。小柄ですが、アクロバティックなダンスがキレキレでよかったです。

と、ステージ的には素晴らしいパフォーマンスでしたが、お話は2度見てもキライ。あの素晴らしい「オペラ座の怪人」を愚弄したパラレルワールドの物語と思ってます。

 

劇団四季「パリのアメリカ人」@シアターオーブ

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  劇団四季の新作「パリのアメリカ人」です。四季というと、何か月も前からチケ取りしないとと思ってたら、直前に1階前方が取れてラッキー。

「パリのアメリカ人」というと、子どもの頃、家にレコードがあって、変な題だなあと思っていました。ガーシュインのこのタイトルと交響詩は、1928年発表、曲を使ったミュージカル映画「巴里のアメリカ人」は、1951年、あのジーン・ケリーと、彼に見いだされたバレリーナ レスリー・キャロン主演で大ヒットしています。

ミュージカル版は、意外と最近、2014年、パリでの初演の後、ブロードウェイで2015年4月から2016年10月まで上演され、2015年のトニー賞で主演男優賞、振付賞、編曲賞、舞台装置賞等を受賞しています。

メインキャストは複数ですが、私が見たのはジェリー 酒井大、アダム 俵和也、リズ 石橋杏美、アンリ 加藤迪、マイロ 岡村美南

戦後間もなくのパリに暮らす画家ジェリー、作曲家アダム。金持ちの息子で、親には内緒でミュージカルスターを夢見るアンリは友人ですが、3人ともバレエダンサーの卵リズに恋してしまいます。バレエのパトロンのマイロにより制作されることになったリズの作品は、作曲アダム、舞台装置ジェリー。マイロはジェリーに執心で…。

ダンスはバレエの振付でクラシカルな印象ですが、新しいプロダクションだけに、映像をうまく使った舞台装置、場面転換もスムーズでテンポよく、戦争の爪痕を残したパリで精一杯生きる人々を描いていてよくできた作品でした。ガーシュインの曲もとても美しく、素晴らしい。

キャストの予備知識は全くなかったのですが、バレエダンスシーンが多いということは聞いていたものの、本格的なバレエにびっくり。それもそのはず、ジェリーの酒井大はバレエ団所属のダンサー、石橋杏美もバレエ留学後に四季に所属。まず二人と、アンサンブルのダンスに感動。とくにラストは、ここまで歌い、演じてきた最後に、これだけ長いダンスシーンがあるとはと感激します。バレエ以外も、最近ブロードウェイで流行りなのか椅子を使ったダンスや、タップもしっかり。

演出・振付のクリストファー・ウィールドン氏は、ダンサー出身で、やはりダンスに思い入れがあるようですね。公式サイトのウィールドン氏インタビューでも強調しています。

キャラクターとしては、純な美形の酒井大、飄々とした雰囲気が好みの俵和也(この方、「デス・ノート」で体調不良の石井一孝の代役としてリュークをやったんですね)、堂々としたオーラがよかった岡村美南の演技がよかったです。石橋杏美は、ダンス以外はもうちょっと、がんばってほしいかな。

ということで、たいへんよかったんですが、やっぱり演奏は録音なのが残念。年明けから、ミュージカルコンサートで普段よりちょっといいオケで聞く機会が続いたせいか、せっかくのガーシュインなのに。オーブさんのチラシ、ミュージカル専用劇場なのに、(そしてチケット代は高めだしS席も多め→S席でいいのと思うような後方でもS)なのに、必ずチラシに「生演奏」とか書いてあるんだけど、ミュージカルって基本生演奏なんですから、録音の場合に「録音」って書いてほしいです。

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