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歌舞伎

図夢歌舞伎「忠臣蔵」第4回(七段目)、第5回(九段目、十一段目)、写真絵本「仮名手本忠臣蔵 由良之助とおかる勘平」

2007zumukabuki_20200721212201 図夢歌舞伎4.5回の完結編です。第1回(大序~三段目)・第2回(四段目)第3回(五、六段目)もご覧ください。 

 図夢歌舞伎「忠臣蔵」第4回七段目「祇園一力茶屋の場」

幸四郎の平右衛門は初見です。由良之助と兼ねるわけにはいかないので、前半の放蕩や三人侍や九太夫とのあれこれはカット。事前にTwitterでみたてを募集していましたが、どうやってと思ったら、平右衛門と猿弥人形で。3題披露されましたが、思った以上に「うまい!」という内容で、感心しました。

この忠臣蔵でいろいろな役をやっている幸四郎さんですが、平右衛門はなかなかいいです。身分は低く、あまり賢くなさそうだけどまっすぐで優しい平右衛門。ここまできたら、前回の勘平も(猿之助がやってくれたのはもちろんうれしいんだけど)見たかったかも。運命に翻弄される悲劇の幸さんて好きなんですよね。

さて、おかるは雀右衛門さん。ひいたアングルはおきれいです。何より台詞回しが、ああ、歌舞伎ってこうだった、今歌舞伎を見ている、という満足感を味わわせてくれました。図夢歌舞伎に出てくださってありがとうございます。インスタライブなどもなさったりして、若々しくていらっしゃる。

平右衛門とおかるの仲の良い兄妹が、どこかのんびりしたくどいやりとりをする面白さは、花道を使っての二人の距離の遠近がないだけ、本来よりはだいぶダイジェストなんですが、二人の関係性などは伝わってきたと思います。

そして、映像だからこそ可能となった、初代白鸚(八代目幸四郎)の由良之助の登場。お顔といい、迫力ある台詞といい、堂々たる立ち姿は、まごうかたなき現白鸚、吉右衛門さんの父。初代吉右衛門さんの娘さんがお稽古に通ってきた八代目とどうしても結婚したい、男の子を二人産んで一人は吉右衛門を継がせます、と言ったという話を思い出すのですが、さもあらん、なんて思ってしまいます。この方の、七段目前半の酔態見たかったなあ。

舞台映像なので、「高麗屋!」「八代目!」と、盛んに大向こうがかかります。歌舞伎の幸せな時代だったな、と悲しくなりますよね。

第5回(最終回)九段目、十一段目

さて、とうとう最終回です。まず九段目、山科閑居の場。山科の大星家に、戸無瀬(猿之助)が娘小浪を連れて、力弥への嫁入りを願います。お石は出ず、由良之助(幸四郎)が拒絶。しかし小浪(葵太夫さんの語り)はあきらめられず、戸無瀬はいっそ娘を殺して自分も死のうとします。そこに小浪の父本蔵(幸四郎)が虚無僧姿でやってきて…

雪の中傘をさしてやってくる戸無瀬、凛としてちょっと若さもあって美しい!思いつめたような目、ゆったりとした台詞回し、太棹と義太夫。そんならいっそと小浪に向けて刀を抜く、赤い着物姿の所作の見事さ。(死ぬ覚悟の小浪に)「でかしゃった」が、わー政岡じゃなくてもこんな風に言うんだ、と感動。この戸無瀬も、藤十郎さんそっくりだそうですが、たしかに感じることができました。

(2014年12月には南座で戸無瀬藤十郎、小浪壱太郎、お石 秀太郎、本蔵 現白鸚、由良之助梅玉、力弥扇雀という座組での上演があったそうです。うわー見たい)

本蔵が三方を踏みつけて力弥(染五郎)に自分を討たせ、師直に賂を贈ったことで矛先が判官にいってしまったこと、松の廊下で判官を止めたことで、一命を救ったつもりが無念の死となったことを述懐し、師直邸の地図を引出物として渡します。力弥の雨戸倒しの工夫も見事に見せてくれました。

後半は、由良之助と本蔵の早替わりで幸さん汗だくの熱演!渾身の演技が、吉右衛門さんに似てました。鬘、着物のほか、本蔵は白髪交じりの眉毛が長く、早替わりはなかなかたいへんだったと思いますが、幕間の猿弥人形が、「今日はあーちゃんと私の二人だけ、あーちゃんは殆ど生です」とのことで驚きました。

猿弥人形の出番もこれが最後、明るくわかりやすく、その場でのチャットの読み上げもうまくて、猿弥さんがいなかったら、成り立たなかったといっても過言でない大活躍でした。猿弥さん、弁天娘とかチャップリンとか、幸四郎さんとのがっつり共演けっこうあるんですよね。ほんとすばらしい!

さて、十一段目、大詰です。討ち入りの由良之助の太鼓の後、雪景色の中、一画面一人ずつでの立ち回り。やゑ亮、右田六、喜楽、松悟、やゑ六、笑猿と、いろんなお家のイキのよい若手で、楽しい場面になりました。泉水の立ち回りでは右田六くん活躍で、いい顔してましたです。

そして師直の首をとった由良之助、殿の位牌の前に備えます。勝鬨の後の独白!この時代のつらさにあって、皆で頑張るという覚悟、そして「必ず明日は日本晴れ」…目に浮かべた涙が、清らかに美しかったですよ!

最後は化粧を落としてさっぱりとした浴衣姿の幸四郎さんと戸部さんのアフタートーク。久しぶりに大道具さん、衣装さんたちと会ったときのことを思い出して声を詰まらせる幸さん。世の中の40代後半ってもっとおじさんだと思うんですが、夢を追いかけているためか、若いんですよね。

この図夢歌舞伎は、歌舞伎を知らない人にその素晴らしさを伝えるにはやや未熟でしたけど、通してみるとやっぱり見てよかったと思います。松竹の有志の会の皆さん、出演者、スタッフの皆さん、お疲れさまでした。これから、歌舞伎にもっと気軽に触れたい人のきっかけになるようなわかりやすいコンテンツを作って行ったらいいのに、と思いますね。

(おまけ)

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 「仮名手本忠臣蔵 由良之助とおかる勘平」という写真絵本をみつけました。昭和61年(1986)二月花形歌舞伎での仮名手本忠臣蔵通しのうち、五、六、七段目を豊富な写真と宇野信夫氏の浄瑠璃台本を元にした平易な文章(まるで少年文学のようです)で綴ったものです。

由良之助と斧定九郎を十二代目團十郎、勘平を仁左衛門、おかる玉三郎、それぞれ40才、42才、36才という正に花形な年代ですが、人気もあってこんな本まで出したんですね。

ニザ玉さまがこのうえなく美しいのは当然として、團十郎さんもいい表情ですよ。冒頭のあらすじ部分の血をなめる表情とか、あまり上背があった感じはしないのに定九郎もかっこいい!ほかに高師直 富十郎、塩谷判官 先代芝翫、顔世御前 時蔵、鷺坂伴内 又五郎なんて配役です。

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  文章が丸々1ページのところもありますが、写真の間に文があるところもあって、歌舞伎好きには楽しい絵本です。図書館などにはあるのではないでしょうか。

 

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歌舞伎の本まとめ

Arasujikabuki  カテゴリ内に「歌舞伎の本」はありますが、もっと手っ取り早くということで、タイトルだけまとめてみることにしました。クリックするとこのブログの記事に飛びます。カテゴリ(【歌舞伎入門・歴史・知識、】、【歌舞伎役者・演者の著書】、【歌舞伎役者についての本】、【歌舞伎演目】、【歌舞伎批評】、【歌舞伎を題材とした小説】)毎に、最近読んだ順に並んでいます。随時追加していく予定です。

【歌舞伎入門・歴史・知識】

八坂堅二郎「音で観る歌舞伎―舞台裏からのぞいた伝統芸能」
中村義裕「歌舞伎と日本人」
早稲田大学演劇博物館編「芝居絵に見る江戸・明治の歌舞伎
大西匡輔「歌舞伎のいま どの芝居をどの役者でみるか」
丸山伸彦監修「演目別 歌舞伎の衣装ー鑑賞入門」 
小山観翁「歌舞伎通になる本」
戸板康二「歌舞伎ちょっといい話」
中條嘉明「歌舞伎大向 細見」
双葉社スーパームック「歌舞伎がわかる本」

【歌舞伎役者・演者の著書】

中村雀右衛門「私事」
中村勘三郎「襲名十八代」
澤村田之助「澤村田之助むかし語り~回想の昭和歌舞伎」
坂田藤十郎「坂田藤十郎―歌舞伎の真髄を生きる」
田中佐太郎「鼓に生きる」
三代目市川猿之助「猿之助の歌舞伎講座」
三代目市川猿之助「スーパー歌舞伎」
中村勘九郎「勘九郎日記『か』の字」
坂東三津五郎「踊りの愉しみ」
市川亀治郎著「カメ流」
市川染五郎「染五郎の超訳的歌舞伎」
市川染五郎「人生いろいろ染模様」
四代目猿之助「僕は、亀治郎でした。」
香川照之「市川中車―46歳の新参者」
坂東三津五郎「歌舞伎の愉しみ」
市川團十郎「團十郎の歌舞伎案内」

【歌舞伎役者についての本】

演劇界「歌舞伎俳優から皆様へ― このひと役」
織田紘二「芸と人―戦後歌舞伎の名優たち」
長谷部浩「菊五郎の色気」
山川静夫「私の出会えた名優たち」
中村達史「若手歌舞伎」
鈴木英一「十代目松本幸四郎への軌跡」
喜熨斗勝「歌舞伎 芸と血筋の熱い裏側」
上村以和於「新世紀の歌舞伎俳優たち」
別冊カドカワ「総力特集 新世代歌舞伎~新春浅草歌舞伎~」
上村以和於「21世紀の歌舞伎俳優たち」
小松成美「仁左衛門恋し」
長谷部浩「菊之助の礼儀」
中川右介「海老蔵を見る、歌舞伎を見る」
小玉祥子「二代目聞き書き中村吉右衛門」
齋藤芳弘 写真集「亀治郎の肖像」
葛西聖司「僕らの歌舞伎」
関容子「海老蔵そして團十郎」
長塚誠志「四代目市川猿之助」写真集
関容子「勘三郎伝説」
長谷部浩「天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎」
中川右介「歌舞伎 家と血と藝」
渡辺保「名女形 雀右衛門」

【歌舞伎演目】

伊藤比呂美「新訳 説教節 小栗判官・しんとく丸・山椒大夫」
木谷真紀子「三島由紀夫と歌舞伎」
関容子「芸づくし忠臣蔵」
藤田洋「歌舞伎の事典ー演目ガイド181選」
四代目市川猿之助監修「スーパー歌舞伎IIワンピース偉大なる世界」
酒井順子「女を観る歌舞伎」
鎌倉恵子監修「一冊でわかる歌舞伎名作ガイド50選」
赤坂治績『しらざあ言って聞かせやしょう」
利根川裕「あらすじで読む名作歌舞伎50」

【歌舞伎批評】

渡辺保「歌舞伎の見方」
山川静夫「歌舞伎の愉しみ」
山川静夫「歌舞伎は恋」

【歌舞伎を題材とした小説】

吉田修一「国宝」
近藤史恵 「ねむりねずみ」「散りしかたみに」「桜姫」「二人道成寺」「胡蝶殺し」

 

「半沢直樹」第1回など

  2007 ようやく「半沢直樹」が始まりました。延期されていた放送が決まってから、TBS煽る煽る。後述の制作発表でも第1回からすごいと言ってましたからね。

全シリーズの最終回で証券会社に出向になった半沢直樹(堺雅人)は、ITベンチャーの買収案件をめぐって東京中央銀行の伊佐山証券部長(猿之助)と対立します。うわ、四代目、予告編で覚悟してたけど、予想を超える嫌な奴、人を小馬鹿にした表情とかもったいつけた言い方とかやりすぎ。一番の敵役なんだから思い切りやらなきゃって思ってるんだろうな。ちょっとふっくら丸々としたお顔がまた憎らしいですよ。ああ、歌舞伎見ない人の印象が…。本当はこんなに真摯に歌舞伎に向き合ってる人なんですよ(八月歌舞伎座の制作発表 1:30くらいからです)。

松也のIT社長が、長めの髪といいラフな服といいワガママな感じがはまってていいです。賀来賢人も重要な役どころ。ほかに副頭取古田新太を始め、井上芳雄、池田成志、今井朋彦、土田英生、加藤啓、山崎銀之丞と、濃い舞台人大勢。舞台がなくなってしまった役者を集めて、舞台が見られなくなった私たちに見せてくれるってこと?

夜中に電話1本でメール全消ししちゃうくらいデフォルメしすぎなドラマなので、気楽に見ればいいんですけど、かわいい女性枠的な今田美桜ってちょっと若すぎるのは残念で、この役はもっとキャリアな感じにしてほしかったな。

【制作発表】

7月11日に、10人のキャストが揃った制作発表がライブ配信されました(アーカイブあり)。うち猿之助、愛之助、中車、松也と4人が歌舞伎役者。4人は地方巡業かというくらい、めちゃくちゃおしゃべりしていたそう。

四代目は初回から圧巻の芝居、と言われて、「たいしたことない役者ですけど、半沢直樹の皆さんがいい包装紙でくるんでくれて、ラッピングでよく見せてくれた」「後から入るのはたいへんだが、香川さんが保護者のように付き添ってくれていた」なーんつってましたね。ニュースにもなっていましたが、中車さんは「前回土下座をくらっているので、いとこまで土下座をくらうわけにはいかない、一族をかけた戦い」と。脳内で「四代目まで土下座させるわけにはいかない、澤瀉屋をかけた戦い」って変換しちゃいました。

【ぴったんこカンカン】

番宣でいろいろな番組に出てくれてましたが、これは中車と二人で出演。上目黒の小料理屋ふじで初めて会ったエピソードなどが出ますが、途中お皿を片付けたり、高齢のお店のおかみさんに優しい四代目。團子くんが「カマキリがなんか言ってる」というなんてちょっぴり反抗期なんだなという話も。その後も浅草の鰻店小柳でも気を抜いたりお土産の鰻を勝手に頼んだりやりたい放題の四代目。普段は自由な中車が、フォローします。知らない人が見たら、中車の方が10歳年上なのに猿之助失礼なやつって思うかもしれないですが、やっぱり中車からしたら澤瀉屋の頭領として立てなきゃいけないですもんね。暁星の教会で同じく卒業生の北大路欣也、賀来賢人といっしょにフランス国歌を歌うサービスも。

【櫻井・有吉THE夜会】

四代目の紹介するグルメをかけて破天荒クイズ。寿猿さんが登場して(「生きてたんだ」とつぶやいてましたよヒドイ)、四代目にカンペをとられたというイタズラを紹介。四代目「困らせるつもりなのに、寿猿さんは、長年やってるから切り返しの引き出しが多くて何とかしてしまう」。まだ死なないはずなのに殺しちゃうなんてのもありましたもんね。一番困ったイタズラは、というのが問題で、置いてあった入れ歯をおもちゃの入れ歯に変えちゃったとか。寿猿さんの入れ歯話いっぱいあって面白かったです。寿猿さん、90歳にはとても見えないお元気さでお顔もつやつや。八代目中車の弟子で、芸歴87年澤瀉屋、そのうちこの40年くらいは四代目に翻弄される人生。でも当代の才気と遊び心を愛しているのが伝わってきますね。

【A-Studio+】

半沢直樹放送後の金曜日のA-Studio+。鶴瓶さんのバラエティには何度か出ているし面白いはず、と思っていたらやはり充実してました。一般の人が見たらどうだったかな。

半沢直樹の芝居は、歌舞伎になっちゃうので中車に全部やってもらって完コピと。世間が似てるというはずですね。私的には、香川照之歌舞伎に入る→演技がどんどん濃くなっていく→特によく出ている日曜劇場では「中車劇場」になる→もともとテンション高い四代目ここまでやっていいのか、と真似する→監督煽る、な感じですが。だからあんなヤクザな銀行員いないとか言うのは意味ないですよ。典型的な悪役やってるんだから。

ゲストは幸四郎さん、ゆずの北川悠仁さんと暁星・慶応の同級生。骨折の話も、テレビでは一番詳しくやったかもです。中車さんが号泣しながらやってきて、医療チームを編成してくれた話、感動ですね。同級生の皆さんから、学生時代のトンデモ話もっと聞きたかったかも。

【なんでも鑑定団】

テレ東だから番宣ではないのですが、「なんでも鑑定団」ですごいことやってくれました。だいたい、芸能人って冒頭になんとかひねり出したお宝もってくるんじゃないんでしたっけ。いちばん大物が出てくるトリですよ。

安土桃山時代にわずかに作られ、焼き物で2つしかない国宝もあるという美濃の「志野焼」。素人がみると、いかにも高そうな感じがするが実はニセモノ、みたいな、わざと崩してあるのが怪しいという雰囲気があるお茶碗ですが、なんと。6000万円という評価!

これを手持ちの骨董を売り払って購入するとは、そんなに価値のある骨董集めてたのか、信用できる骨董屋とおつきあいしているんだな、そして、手に取ってみて価値がわかるほど審美眼があるんださすが、という感想です。

自己評価が1000万円ですから、購入価格もそれに近かったんでしょうが、普段お茶飲むのに使ってるって、さらにさすが四代目ですよ。

人間国宝荒川豊蔵氏の箱書きがあるのですが、中島誠之助さんが「近いうちに三重箱を作り、四代目猿之助の箱書きを与えて銘をつけてほしい(→さらに価値が出る)」とおっしゃるのが、わあそれかっこいい、としびれましたです。

ART歌舞伎

2007art  壱太郎・右近の「ART歌舞伎」です。配信されてからすごい、と評判なのでアーカイブで購入してみました。

ART歌舞伎を銘打つだけあって、新作歌舞伎というより、歌舞伎と音楽、衣装、照明、映像などの才能ある者たちが集まって作り上げた一つの新しい芸能ジャンルという感じ。なのでART歌舞伎の後にタイトルがつくのかなと思ったら、今回はついていないですね。いや、今回限りではもったいない感じですよ。

記事等によると、各演目名は、「四神降臨」、「五穀豊穣」、「祈望祭事」←三番叟、創作舞踊物語「花のこゝろ」舞台は靖国神社の能舞台。

演者は、踊り得意の壱太郎、右近のほか、日本舞踊家の花柳源九郎、藤間涼太朗。音楽は、中井智弥(箏・二十五絃箏)、浅野祥(津軽三味線)、藤舎推峰(笛)、山部泰嗣(太鼓)、友吉鶴心(琵琶)。冨沢ノボル(ヘアメイク)、里山拓斗(衣装)、edenworks(ヘッドピース)。

皆さん、壱くんが声をかけたそうで、壱太郎さんのプロデュース能力とか人脈とかリーダーシップとかすごいですね。そういえば「僕らの歌舞伎」だったか、壱くんのプロデュースへの意欲を読んで頼もしいと思ってたんだった。事前の宣伝もできる限りのことをした、という感じで、メディアをうまく使っていました。生配信の日は、11時から図夢歌舞伎のおかる、夜がこのART歌舞伎で、本公演ばりの忙しさ。

さて、最初から、PCにも拘わらず音の響きの良さも含め音楽がとてもいいのに驚きます。中井さんの二十五絃筝の豊かな音。津軽三味線も笛も太鼓も琵琶も、邦楽なんだけど親しみやすく、とにかくすばらしい。浅野さんの歌も三味線に劣らずまっすぐなよいお声。鼓童を使った玉三郎さまの舞踊の例もありますから、歌舞伎座の本公演にも出ていただきたいと思いました。

源九郎さん、涼太朗さん(元歌舞伎役者尾上松男)、いい目をした粋のよい踊り手です。全部で1時間20分もある中で、歌舞伎の二人といっしょに盛り上げます。衣装も斬新です。

後半の「花のこゝろ」。まず壱太郎くんの顔に赤い丸を描き、とんでもないまつ毛をつけたメイクが、すごい初めて見た気がする斬新さなんですが、とても美しい壱太郎になっています。表情もせつなく美しい。

夫と子供を失った女が美しい男(右近)と出会い、運命に翻弄され、というのを琵琶と歌で友吉さんが語っていく大作。ただ、若干語りの文言が直接的すぎるのと、語りにはメロディがないのが残念なんですが、終盤に向けての笛と筝のメロディが美しいです。ちょっとオグリのテーマを思い出します。

ということで、どの演者もすばらしいパフォーマンス、照明も映像も凝っててとてもすごかったんですが、見始めてすぐ、ああ私こういう踊りで語る出し物苦手だった、と思い出しました。生で見ればいやおうなく演者の迫力に引き込まれたと思うんですけど、1時間20分は、配信では長かったな。

そして、この3か月、演者の距離をとったテレビや図夢歌舞伎をずっと見ていたので、踊り手近くない?って。セリフはしゃべっていませんが、激しい踊りですもんね。

図夢歌舞伎「忠臣蔵」第3回(五、六段目)、歌舞伎家話 猿之助・團子

2007zumukabuki 図夢歌舞伎第3回は、五、六段目、勘平の物語です(図夢歌舞伎第1回、第2回)。歌舞伎家話で幸四郎さんに「遠くから応援しています」と言っていた四代目がなんと演出・勘平ですよ。2012年、亀治郎最後の公演で、藤十郎さんに習って演じた上方の型です。おかる壱太郎、おかや吉弥という上方縁の役者さんの共演。そして葵太夫さんのTwitterで出演依頼があったと知り、おお、と楽しみにしていました。この段は国立の菊五郎さんの勘平しか見たことありません。

脚本の戸部さんが、記録の趣旨もあってか図夢歌舞伎の制作についてつぶやいているTwitter(どこでも歌舞伎)によれば、第二回から音響スタッフを増強したうえ、第三回は、「藤森圭太郎監督、西山理彦映像演出にて撮影配信チーム一新。」そして、映像の経験豊富な四代目演出ということで、アップ中心の映像ならではの作品になりました。

まずは五段目 鉄砲渡し・二つ玉の段。与市兵衛(高麗五郎)を斬って50両を奪う斧定九郎(幸四郎)。ほんとに色悪の美しい幸四郎丈!講談や落語の「中村仲蔵」を知ってから初めて見る定九郎は、やっぱりかっこいい!

そして四代目の勘平登場です。2012年亀治郎最後の舞台で演じた勘平の舞台写真はなかなか美しく、この自粛期間中でちょっとふっくらした四代目どうだろうなんて思っていたんですが、失礼!大丈夫でした。

暗闇の中で定九郎の死骸をまさぐる勘平、最初からテンション高い!与市兵衛の骸からどうしてもほしい金を拝借して立ち去るそのおぼつかない足取りのアップ。

ここでちょっと休憩、猿弥人形のチャット読み上げです。リアルタイムではチャットできるんですが、せっかくの生配信に集中したくて、全画面で見ているので、チャットは見ていません。「猪は誰ですか」という質問に、「あーちゃん(幸四郎)です。やりたがりなんです」と答える猿弥人形。

後半はいよいよ六段目、勘平が帰宅し、おかる(壱太郎)が駕籠で売られていくところから始まります。駕籠でと指さす手が画面に入るようにしていたという四代目。

前述のとおり、上方の型の六段目で、勘平が着替えるのは浅葱の紋付ではなく木綿の普段着、不破数右衛門(幸四郎、声と姿だけ)の来訪時に初めて武士として刀を差します。勘平の腹切りは数右衛門が余市兵衛の骸を改めているさなかに後ろを向いて。「色にふけったばっかりに」の述懐はなく「魂魄この世に留まりても仇討ちにお供せで置くべきか」という気魄。舅殺しの疑いが晴れて、おかやがこと切れる勘平に黒紋付を着せかけます。

家に帰ったところから、すでに金をとったことで落ち着かない勘平が、財布の布でハッとして後悔し、おかやに責められ…切腹、血判まで、きめ細かな表情の変化、必死の形相と、感動的な勘平でした。四代目推しとしては、本当に見逃さなくてよかったというこの配信。

おかやと一文字屋お才(顔は出ず)は吉弥さん、上方の型でやる六段目に最もふさわしい方で、勘平とのやりとりの緊張感は、お芝居をみたという満足感を盛り上げます。おかるの壱太郎、きっちり演じているんですが、若干物足りない。

竹本はなんと人間国宝葵太夫さん、三味線は豊澤淳一郎さんで、お二人の好演が満足度を高めていました。休養十分の葵太夫さんの声も絶好調。

11日(土)の生配信に引き続き、「こだわり編集」版が、15日17:00から配信されました。おかやと勘平おかるの2画面、おかや、勘平、おかるの3画面が追加されたり、竹本の音量が調整されたりして、完成度が高まっていました。

【歌舞伎家話第六回】

13日(月)の夜、配信の「歌舞伎家話第六回」として、團子・猿之助のトークがありました。團子が仕切りということになったらしく、彼が質問するのですが、高校生の團子くん相手だと、照れたりはぐらかしたりしないでまっすぐに答える四代目。内容は、四代目をフォローしているファンにはいつもブレないなというものなんですが、ちゃんと團子くんに届くように語られてたのに感動しました。

次代の澤瀉屋を背負って立つ團子くん。K-POPや映像に興味があり、歌舞伎を映像で表現することに興味がありそう。四代目は、その分野は若い世代に譲るつもりといいながら、そういうことをほんとうに表現するためには、その分野でのプロフェッショナルのブレーンが必要と実践的なアドバイスまで。

團子くんも、四代目へのリスペクトが感じられて、そして聡明な少年であることは間違いなく、澤瀉屋も安泰だなと思った次第。

ドラマ「美食探偵 明智五郎」BS時代劇再放送「妻はくノ一」

 Ogp 中村倫也の「美食探偵 明智五郎」、新型コロナで4月期のドラマが放送延期で再放送ばかりの中、ひとり気を吐くといった感じでやっぱり今のドラマっていいなあと思わせてくれた傑作でした。

ハズレなし、と言われる東村アキコのコミックが原作ですが、題名と華麗なオープニングとは裏腹に、内容はとってもダーク。事件はけっこう凄惨だし、最初の犯人だったマリア(小池栄子)が回を追うごとにどんどんモンスターになっていきます。映像も凝っていて、毎回どうなるのかワクワクしました。

期間限定で公開されていたコミック1巻を読んだら、コミックならではの濃いキャラクターが、ちょうどいい塩梅に映像化されている感じ。赤いスーツにループタイというスタイルが似合う、クールだけど優しい明智五郎の中村倫也が声もよくてステキ。悪女マリアが、狂気に満ちていて、でもどこかサバサバとした雰囲気がある小池栄子にはとても合っていて、ほかの人は考えられないです。

小芝風花は、「あさが来た」のときは、期待されてる若手だけどその後友人役だった吉岡里帆の方がバーンと売れた感じでしたが、すごくうまい。この役がガチャガチャうるさいだけだったらこんなにこのドラマよくなかったと思うんですが、元気なんだけど憂いの表情も豊かでキュンとしました。

脇もすごくて、れいぞうこちゃんの仲里依紗とシェフ武田真彦(最近再ブレイクしてる)の場面はスプラッタで二人がボロボロになってる感じもすごいし、志田未来の素朴なりんごちゃんもよかった。二号の富田望生、「なつぞら」で、ステレオタイプなおでぶちゃん枠な感じが物議をかもしてましたが、「チアダン!」でもそうだったけど、いい味でほんとにうまい女優なんですね。変な土佐弁の北村有起哉、母の財前直見もさすが安定。ココちゃんなど、そのほかのゲストもみんなよかったです。

途中でコロナのために中断しましたが、その後、その影響を感じさせなかったのもすごかったです。

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 NHKBSの「妻はくノ一」、こちらは2013年の放送の再放送。当時は歌舞伎をあまり見たこともなく、染五郎(今の幸四郎)も幸四郎の息子で現代劇でもけっこう活躍してる人くらいの認識だったので見たことがありませんでした。

長い原作(風野真知雄)のようで、結局これ何だったんだけみたいなエピソードもあり、暗くてお話の進展もあまりないんですが、独特の雰囲気があって、なかなか面白かったです。

開明的で幕府に目をつけられている平戸藩に潜入した織江(瀧本美織)は、天文や科学にしか興味がない変人の藩士彦馬(染五郎)に嫁入りしますが、役目を終えて姿を消します。隠居して妻を探しに来た彦馬は、西海屋(堀部圭亮)の世話になりながら前藩主の静山(田中泯)に可愛がられますが、船を建造しようを考えている静山はやはり幕府に監視され、隠密の織江、母の雅江(若村麻由美)は役目に振り回されます…。

彦馬が想像よりずっと文の人で、立派な武士というより心優しい変り者。それなりに幸四郎に合ってはいるんですが、毎回これでもかって襲われては織江や静山に助けられます。稽古の場面など、体幹が安定しているのが伺えて、それだけにちょっとモヤモヤ。ま、こういう優しい人に、くノ一にしては純な感じの織江が惹かれるのも無理はない。毎回織江かわいそうなんです。

このドラマ、とにかく御前と呼ばれる静山の田中泯さんがかっこいいんですよ。何もかも見抜いたようなセリフの声がいいこと、剣豪という設定で強いし。それから、年上なのに彦馬の家を継ぐため彦馬の養子になって「父上」と呼ぶ梶原善さんも後半盛り上げてました。そして近年ますます迫力の増した若村麻由美のいいこと。

そして、なんと1回だけ、金太郎(現染五郎)が、子役として出てたんですよ!染くんに似てる美形だなとは思ったんですが、貧しいながら父を助ける芯の強い少年、その回の主役みたいな活躍で、うまい子役だろうと思い込んでました。女の子のお化粧もすーっと似合っててまあ。セリフが達者というより、雰囲気がしっかり役を掴んでいたのはよかったです。

最後が大立ち回りですごいんですが、なんと未完のまま終わるんですよ。えー、最終章の再放送は?

図夢歌舞伎「忠臣蔵」第1回(大序~三段目)、第2回(四段目)

2006_20200628104101 配信用に制作された歌舞伎、図夢歌舞伎「忠臣蔵」を全回見ました。ずーむ歌舞伎とはよく言ったものです。あれだけ年中舞台に出まくっている幸四郎さんが、歌舞伎公演休演中にチャレンジした新しい形式の歌舞伎。しかも仮名手本忠臣蔵の翻案。半分生で、一部録画だそうです。

(かなりダイジェストなので、ご参考に仮名手本忠臣蔵の通しの感想のリンクを置いておきます。「大序~四段目」、「五段目~七段目」、「八段目~十一段目」)

 第1回 大序から三段目

生配信の11時(昼の部の開始時刻というこだわり!)から待機。まずは人形の口上を、猿弥さんがやるはずが、声が聞こえません。まあこの口上はあらすじなので、しばらく見ていくと、若干音量は小さいながら聞こえるようになりました。やっぱり猿弥さんうまいなあ。

最初の場面は兜改め。幸四郎の幸師直、壱太郎の顔世御前。二人の背後の書割は一つですが、実は二人別々に撮影されています。やはり声小さい。壱くん、顔世合ってるのでもっとゆっくり見たいと思いました。

大序は1回しか見たことがなく、高師直は左團次さんで典型的な悪役、と思っていたんですが、その後読んだ関容子さんの「芸づくし忠臣蔵」では、歌右衛門さんが顔世のとき、二代目実川延若さんの高師直が後ろから肩を抱いて「いかがかな」と迫ってくると何だかクラクラしたくらい「立派で色っぽかった」と語っていたそうですので、そういうお役。幸四郎さんの高師直は老人の拵えながらギラギラしたところがあって、なるほどと思いました。

次は、桃井若狭之助の家臣加古川本蔵(これも幸四郎)と師直のやりとり。この図夢歌舞伎だけ見てもわかりにくいと思うんですが、最初は若狭之助の方が師直に怒って師直を斬ろうと息巻くのを、本蔵がわかったといいつつ、陰で師直に大金を渡してとりなすんですよね。

しかし何といっても最後の松の廊下がこの第1回のクライマックス。若狭之助に謝罪した師直は、そのいらだちと顔世の返歌の恨みから、判官を鮒侍と罵ります。判官から見た師直の角度が迫力があり、幸四郎さんの表現が豊かで、素顔はほっそりしているのにアップだと吉右衛門さんや白鸚さんによく似ているなあと驚き。ドラマチックで盛り上げていく演技も吉右衛門さんを思わせて見ごたえがありました。

判官は最後まで顔は出ないので誰かなあと手を見ながら思っていたら、最後に幸四郎さん。もともとこの中では判官が本役でしょうから、もっと前から出てもよかったのに。でも出ないからこそ師直が際立ったと言えますかね。

ここまでで30分ちょっと、残り30分で、幸四郎さん、猿弥さん、壱太郎さんのトークショー。幸四郎さんは早着替えですっきり出てきていましたが、ちょっとぼーっとしていました。

トークショーでこの会が4700円と知った猿弥さんが「高いよ!」。そーですよ、これだけトラブルがあって、壱太郎さんとの共演シーンもわずかなんですから、せめて初回はもっと安くてよかったんじゃないでしょうかね。ほかの芝居やコンサートの配信は、きちんとしたもの出してるのに、歌舞伎家話もけっこうグダグダだし、コアな歌舞伎ファン以外に届けようと思ったらもうちょっとね、なんとか。と思いました。

音声の不具合を直したり、途中で映っちゃった戸部さんを削除する編集に時間がかかったのか、アーカイブの公開は19時から。その代わり1週間視聴可能になりました。音声は聞こえるようになりましたが、やはり音量小さかったです。

第2回 四段目

猿弥さん人形の解説のあと、判官(幸四郎)が白装束で切腹する場面です。三方を盛ってきた染五郎の力弥に、判官は由良之助はまだかと尋ねますが来ません。この二人の目のやりとりがまず見もの。

前述の「芸づくし忠臣蔵」では、力弥が判官に向こうに行けと言われてイヤイヤと首を振るのは、可愛らしさの表現だとあります。また、力弥を演じた勘九郎は、力弥が身分が低いのにイヤイヤしてとどまっているのは、判官に可愛がられていてずっとそこにいたいという気持ちだと語っています(98年の上演時なので、彼がまだ十代の頃ですね)。

そしてようやく由良之助(幸四郎)がかけつけます。白塗り二枚目の判官と砥の粉の由良之助、全然違う!すでに腹を切っている判官が、九寸五分をは汝へかた、み…」と絞り出すように言います。何が言いたいか気づく由良之助。二人の目線は一致しているはずですがどちらの方向を見ているのか、舞台でないのでわかりにくいところはありますが、アップ映像でで迫力。

猿弥さんによるチャットの紹介の間があって、扇ヶ谷表門城明渡しの場面。力弥も出てきますが、由良之助の苦渋の表情が胸を打ちます。涙もこぼれていて、その後仇討までの彼の苦労を思い起こさせます。この場、こんなによかったっけ。

ということで、これからも判官、由良之助のどちらも演じていくと思われる幸四郎さんの力演に、瑞々しい染五郎力弥が花を添えるいい回でした。特にトラブルもなかったですし。この回から第5回まで3700円、セット券で3400円です。まだちょっと高い。

 

ブルーレイ「シネマ歌舞伎 東海道中膝栗毛」と「歌舞伎家話 幸四郎・猿之助」

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 4年連続で八月の歌舞伎座納涼歌舞伎でやっていた幸四郎・猿之助の「東海道中膝栗毛」の1,2作のシネマ歌舞伎がブルーレイになりました。

1作めの「東海道中膝栗毛」は、シネマ歌舞伎でしか見ていないんですが、改めてみると、第1作なのに染猿以外の出演者も真剣にドタバタやっているのはさすが。新派に行った春猿さんが、こういうのになると存在感といい、吹っ切れ方といい、貴重な存在だったなと思います。笑三郎さんのアラブ王の妻が、オグリの閻魔大王の妻を思い出させる美しさ!獅童のデイビッドも最高でした。金團コンビが、ほんとちょうどいい少年コンビ(4年前でかわいらしい)で、染猿とこんな風に組み合わせたの天才。

2作目の「東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖」 その直前の6月に猿之助ファンになったので2回見たんですよね。隼人、巳之助、児太郎が生き生きとしているのが納涼らしくてやっぱりいいです。3年前なわけですが、その下世代とはちょっと差があるなと感じてしまします。

このときは2部のやじきたが先に決まっていて、後から第3部の「贋作 桜の森の満開の下」に、野田秀樹の希望で幸四郎がキャスティングされたのでやじきたコンビの出番が軽くなったそうですが、改めてみると、短い出番でも地味な拵えの二人が出てくるとその場をさらっていく感じがします。この四代目、軽快でいいんですよね。

特典映像は染五郎・團子のトークショーの抜粋と、第4作の映像ちょっと。話の内容というより、4年間の成長ぶりにジーンときますね。

さて、6月14日の「歌舞伎家話第3弾」が幸四郎・猿之助だったのでチケット買ってみました。歌舞伎座ギャラリーでやる夜話とちがって司会の戸部さんがいないので、話が歌舞伎の演目や役の話にはなかなかいかず(幸四郎さんは二人の共演を振り返ろうとしたり、秘蔵写真を出してくれたりしたんですけどね)、とても素のままな感じで、二人のファン以外の歌舞伎ファンにはどうなの(←そういう人が見るのかわかりませんが)、有料だしと思ってたんですが、2回見たら、意外と深いことも言ってました。素顔のテンション低い幸四郎さんもかっこいいです。

ネタバレ禁止ですが、歌舞伎のテーマパークがあったら楽しいと思うな。オンデマンドで好きな映像見られたり、宙乗りをVRで体験できたり。好きな相手役を選んで1場面演じてみるのなんてどうですか。ささっとバーチャルメイクして。「八幡祭」で新助に愛想尽かしする美代吉とか、「籠釣瓶花街酔醒」で身請けヤダと次郎左衛門に恥かかす八ッ橋とかやってみたい~。

で、思うんですが、舞台の四代目を知らない人がスピリチュアルな話するところだけを見たら、近づいちゃいけない人だと思うんだろうな。舞台写真の人とは別の人。年を経てますます舞台への情熱を、素直ではなく照れ隠しする感じが、たまらないんですけどね。ほんとは今月勘九郎さんと三番叟やって伝説作るはずだったのに、なんて思ってしまいますね。

演劇界「歌舞伎俳優から皆様へ― このひと役」と私の「このひと役」

 2006enngekikai  3月以来の歌舞伎公演全中止で、役者さんやスタッフさんだけでなく、雑誌「演劇界」さんもさぞ困ったことでしょう。ほんとなら3月は歌舞伎座のほか、明治座の中村屋、国立の菊之助丈義経千本桜通し、南座の新版オグリがあったはずですし、何より5月の團十郎襲名に向けて、いろいろな記事を用意されていたと思います。そんな未曽有の苦境を逆手にとった6・7月合併号の特集企画が、これ。

(なお、児玉竜一先生の「三~五月 劇界の動向」は、歌舞伎のみならず、この間の演劇界全体の苦境を克明に記録した、後世への保存版だと思います)。

117名の役者さんが、「このひと役」を選んで大きなカラー写真に短い一言を添えています。巻頭の海老蔵インタビュー以外のほとんどの誌面を費やした労作で、かえって保存版になってしまって、発売後3日で在庫払底、重版が決まるという人気。本人コメントのついた「かぶき手帖」大判という感じです。

役や写真の選び方がバラエティに富んでいて楽しい!えーっこのお役、と思うと、息子さんと一緒にもう一枚出ていたり、故人の父、祖父、師、大先輩との写真の方もいて。見ているうちに、つい、自分の「このひと役」を選びたくなってしまいました。といっても、2012年から歌舞伎を見始めたニワカなので、ほんとに私の個人的なものです。映像のみで見たものも含めてしまいました。迷う方はブログ内検索で思い出したりして。117名のうち、最近出られていない方など見ていない方、20代前半以下の方は除いています。

新作歌舞伎が多いのは、当て書きだったり、本公演より役が大きくなったりして、印象が強いからかもしれません。これに対して大幹部は、古典の大役のどれにしようか迷いました。

(演劇界での選出と並べていますので、まだご覧になっていなくてネタバレしたくない方はご注意ください)

   演劇界  私の「このひと役」
海老蔵 (インタビュー掲載のためなし) 助六 助六
嵐橘三郎 新口村 孫右衛門 弁天小僧 浜松屋番頭
右團次 華果西遊記 孫悟空 名高大岡越前裁 天一坊
中車 綱豊卿 富森助右衛門 綱豊卿 富森助右衛門
猿弥 當世流小栗判官 矢橋の橋蔵 ワンピース ジンベエ
笑也 新・三国志 劉備玄徳 空ヲ刻ム者 双葉
笑三郎 四の切 静御前 ナルト 大蛇丸
弘太郎 ヤマトタケル ヘタルベ ヤマトタケル ヘタルベ
寿猿 黒塚 強力太郎吾 黒塚 強力太郎吾
猿之助 ワンピース ルフィ 黒塚 岩手・鬼女
左團次 助六 髭の意休 助六 髭の意休
男女蔵 博奕十王 閻魔大王 月光露針路日本 水主小市
團蔵 髪結新三 弥太五郎源七 髪結新三 弥太五郎源七
門之助 新版オグリ 薬師如来 新版歌祭文 座摩社山家屋佐四郎
友右衛門 綱豊卿 お喜世 不知火検校 岩瀬藤十郎
雀右衛門 二人道成寺 白拍子桜子 伊賀越道中双六岡崎 お谷
菊五郎 魚屋宗五郎 宗五郎 文七元結 長兵衛
菊之助 土蜘 土蜘の精 NINAGAWA十二夜 琵琶姫・獅子丸
尾上右近 弁天娘 弁天小僧菊之助 ワンピース ルフィ
松緑 慶安太平記 丸橋忠弥 名月八幡祭 縮屋新助
松也 御所五郎蔵 義賢最期 義賢
市蔵 切られ与三 蝙蝠の安 らくだ 家主幸兵衛
片岡亀蔵 大江戸りびんぐでっど くさや弟 阿弖流為 蛮甲
吉弥 天守物語 薄 帯屋 おとせ
秀太郎 近頃河原の逢引 遊女お俊 木の実 おせん
愛之助 新八犬伝 網干左母次郎 義賢最期 義賢
仁左衛門 吉田屋 伊左衛門 盛綱陣屋 盛綱
孝太郎 女鳴神 鳴神尼 女鳴神 鳴神尼
松之助 夏姿浪花暦 千草屋番頭幸助 実盛物語 九郎助
藤十郎 曾根崎心中 お初 伽羅先代萩 政岡
鴈治郎 曾根崎心中 徳兵衛 河庄 治兵衛
壱太郎 神霊矢口渡 お舟 GOEMON 出雲阿国
扇雀 艶容女舞衣 酒屋 お園 法界坊 お組
亀鶴 幸助餅 関取雷五 すし屋 梶原景時
宗之助 阿弖流為 無碍隋鏡 決闘!高田馬場 おもん
勘九郎 門出二人桃太郎 桃太郎 桜の森の満開の下 耳男
七之助 門出二人桃太郎 桃太郎 阿弖流為 立烏帽子・鈴鹿
吉右衛門 熊谷陣屋 熊谷直実 幡随院長兵衛 長兵衛
吉之丞 一条大蔵譚 勘解由 滝の白糸 裁判長
歌六 沼津 平作 伊賀越道中双六岡崎 幸兵衛
米吉 祇園一力茶屋 お軽 すし屋 お里
又五郎 鳥羽絵 下男升六 ひらかな盛衰記源太勘當 梶原景高
歌昇 絵本太功記 光秀 雨乞其角 船頭
種之助 祇園一力茶屋 平右衛門 ナウシカ 道化
時蔵 切られお富 お富 絵本合法衢 うんざりお松
梅枝 阿古屋 阿古屋 関の扉 小野小町・墨染
萬太郎 連獅子 仔獅子 義経千本桜 小金吾
錦之助 勧進帳 富樫 霊験亀山鉾 源之丞
隼人  寺子屋 源蔵 ナルト サスケ
獅童 今昔響宴千本桜 忠信 四谷怪談 伊右衛門
梅玉 菊畑 鬼三太 寺子屋 武部源蔵
莟玉 菊畑 虎蔵 文七元結 お七
魁春 新薄雪物語 梅の方 新薄雪物語 梅の方
東蔵 籠釣瓶 おきつ 競伊勢物語 小由
松江 九十九折 養子新造 仮名手本忠臣蔵大序 足利直義
児太郎 金閣寺 雪姫 大石最後の一日 おみの
芝翫 熊谷陣屋 熊谷直実 巷談宵宮雨 龍達
梅花 雷神不動北山櫻 腰元うてな すし屋 母おくら
竹三郎 四谷怪談 お岩 夏姿女団七 おとら
玉三郎 二人道成寺 白拍子花子 籠釣瓶 八ッ橋
巳之助 ナルト ナルト ワンピース ボン・クレー
彌十郎 関の扉 大友黒主 阿弖流為 藤原稀継
新悟 景清 保童丸 新版オグリ 照手姫
彦三郎 明君行状記 青地善左衛門 明君行状記 青地善左衛門
坂東亀蔵 弥生の花浅草祭 獅子の精 弥生の花浅草祭 獅子の精
萬次郎 女暫 巴御前 阿弖流為 御霊御前
橘太郎 曽我対面 清重 暗闇の丑松 湯屋番頭甚太郎
権十郎 角力場 放駒長吉 髪結新三 勝奴
白鸚 勧進帳弁慶 不知火検校 検校
幸四郎 勧進帳弁慶 決闘!高田馬場 堀部安兵衛
高麗蔵 熊谷陣屋 藤の方 石切梶原 梢
錦吾 河内山 北村大膳 決闘!高田馬場 菅野六郎左衛門

 

八坂堅二郎「音で観る歌舞伎―舞台裏からのぞいた伝統芸能」

2005otodemiru  国立劇場で長年伝統芸能全般の音響を担当してきた八坂堅二郎さんの「音で観る歌舞伎―舞台裏からのぞいた伝統芸能」(2009年)です。

 全260pのうち、80pくらいが能楽と文楽の基礎知識として舞台の構造や楽器など(歌舞伎じゃない!)、その後の80pくらいが演技以外の歌舞伎の舞台、大道具・小道具、衣装、かつら等の基礎知識です。知らなかったことが多かったんですが、舞台の高さに4パターンほどあり、1尺4寸高の「常足」は商家や民家の家、2尺8寸の高足は立派な寺院や御殿の高さ、その中間の中足は武士の屋敷などなのだそうです。なるほどそういえば。

そして最後の100pほどが、浄瑠璃(義太夫、常磐津、清元)と長唄などの音楽、効果音などの歌舞伎の音響について。音楽の種類毎に見台や肩衣がちがっているとか、赤子の鳴き声や動物の鳴き声、雨等の効果音をどうやって作っているか等。後者の音作りは、筆者の経験した具体的な苦労も交えて詳しく書かれています。

音楽については、メモしておきますね。

義太夫(竹本)…状況説明や心情の語り。三味線は太棹 見台は黒塗り。出語りあり。
清元…高い調子。三味線は中棹だが常磐津より柔らかい音。黒塗りの一本足の見台。萌葱色の肩衣。
常磐津…清元より語りの要素が強い。三味線は中棹。舞台下手で演奏することが多い。三本足の朱塗りの見台。柿色の肩衣。
長唄…歯切れよく速いテンポの演奏。三味線は細棹。見台は桐で足が交差しているもの。肩衣は演目によって違う。

国立劇場のスタッフの方の著作というと、織田紘二さんの「芸と人―戦後歌舞伎の名優たち」を読みましたが、八坂さんも同年代くらいなので、国立のスタッフなのに、公務員的なイメージと異なり、先輩の厳しい指導、ハードな仕事と必死の工夫の様子が、伝わってきます。そして、やはり歌右衛門さんの言葉の重みが、スタッフ一同に響いていたのだなと感じられます。

歌舞伎の上演が、伝統と多くのスタッフに支えられていることを改めて感じた本でした。

 

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