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歌舞伎

十二月大歌舞伎第三部「瞼の母」「楊貴妃」

201712_2   第三部1つめは長谷川伸作の新歌舞伎「瞼の母」

渡世人番場の忠太郎(中車)は、幼い頃別れた母に会いたいと願っています。敵に追われて実家に逃げてきた半次郎(彦三郎)を助けた忠太郎は、半次郎の母(萬次郎)に母恋しさを訴えます。

実母を探して江戸に来た忠太郎は、老いた夜鷹おとら(歌女之丞)を助けたことで、大店の料理茶屋の女主人おはま(玉三郎)が母の可能性があることを知り、と押しかけます。忠太郎を部屋に通したおはまは、娘お登勢(梅枝)との幸せな暮らしを壊されまいと、忠太郎の母であることを否定するのでした…。

中車は、八月納涼歌舞伎の「刺青奇偶」の半太郎で見せた、優しい気持ちのまっすぐな博徒。着物の着方や襟の直し方も様になっています。母を知らないからこその母への思慕で、冒頭からしんみりさせます。

おとらとの場面も、歌女之丞さんのうまさもあって、庶民の切なさを描く長谷川伸らしいいい場面でした。歌女之丞さんいいなあ。

そしておはまとの邂逅。息子であることを否定されて、長年の母恋しさを語る忠太郎。どうしたって、幼い頃生き別れた父猿之助に、25歳で会いに行って、すげなく帰された香川照之の逸話を思い出します。博徒ではあるけれど、お金はしっかりためて、母が貧しかったら助けようと思っていた、と切々と言う中車。俳優として名を成し、歌舞伎役者としても着実に成長している今とはいえ、その時を思い出さずにいられましょうか。どんな気持ちで、と思うと、体が熱くなるような気がしました。しかし、このような、そのまんまの芝居を彼にさせて、それをメインの出し物にする興業の世界。それでもそれを売りにするとかしないとかを超えた演技を堂々と見せる中車。凄い、と思いました。

さて、対する玉三郎、世話物での彼は器用な役者とはいえないと思うんですが、その不器用なセリフが、かえって技巧を凝らすよりも感動を呼ぶというか、とにかくすすり泣きの声以外は聞こえない、歌舞伎座全体が舞台に集中する素晴らしい一瞬でした。

おはまの愛娘お登勢が忠太郎とすれ違って、「ねえ、あの母さんとそっくりな人は?」と言うんですが、もちろん、玉様と中車は似てません。でも、先代猿之助と中車は誰が見ても親子とわかるくらい似ているので、それも思い出されました。

おはまは忠太郎が出て行って後悔します。お登勢にも言われて(お登勢がまた優しいいい子なんです)、忠太郎を探すおはまとお登勢。しかし忠太郎は、もうおはまに会いたいとは思うまい、瞼を閉じれば優しい母の姿が目に浮かぶから、と言って去ります。

切ないけれど、おはまが忠太郎を追うところでほっとしました。単なるハッピーエンドにはしないのが、長谷川伸なんでしょうね。

2つめは、夢枕獏作の舞踊劇「楊貴妃」。黄泉の国に楊貴妃を訪ねる方士(中車)と、楊貴妃(玉三郎)の物語です。舞台があくと、上手に囃方がいます。お琴の調べがそれはそれは美しく、夢のよう。

まず登場する方士の中車、9月に「藤娘」を舞踊の会で踊ったとのことですが(技術はともかく、娘のかわいらしさが出ていて感動的だったとか)、その勇気や努力が、ここに生きていたというか、いくらいい俳優でも、ゆったりした舞踊の舞台で、おかしくなく歩くだけでもたいへんなことだと思います。彼の努力をして、玉様が相手役として十分と判断なさったんでしょう。ほんとに、堂々とした方士で、作品世界を作り上げていました。

その玉三郎さま、能でいう引廻しから出てきますが、まあ、この世のものとは思われぬ美しさ、この拵えが一番お似合いな気がします。ほんとにほんとに素敵な玉様と、玉様の美意識が横溢した舞台でございました。

おまけ。

12月6日に、1月、2月の高麗屋三代襲名披露の配役変更が発表になり、猿之助が演じるはずだった「箱根霊験誓仇討」の主役勝五郎、「角力場」の与五郎、「一條大蔵譚」のお京をそれぞれ勘九郎、愛之助、孝太郎が代役することとなり、出演は「寺子屋」の涎くり与太郎だけどなりました。1月の歌舞伎座で復帰することはワンピース千穐楽のときに報道されていたので、復帰はするんだろうなと思っていましたが、千穐楽の様子を見てまだ回復からは程遠い感じでしたので、無理しないこととなってかえってほっとしました。そもそも開放骨折といえば、普通全治6カ月ということですので、ゆっくり養生してほしいというのが、ファンの願いだったわけで。松竹ゴールド会員の発売日を前に、はっきりさせてくれてよかったです。ワンピースの降板もあって、猿之助ファンは手ぐすね引いてましたから、後から代役が発表されたりしたら、せっかくの襲名公演のチケットがおかしなことになりそうですもんね。

染さんの襲名披露の口上には澤瀉屋を代表して連なるのは、うれしいにちがいありません。舞台で見るのを楽しみにしています。

十二月大歌舞伎第二部「らくだ」「蘭平物狂」

201712_2   十二月の歌舞伎座第二部の1つめは「らくだ」。愛之助と中車のコンビの、関西弁のらくだ。

ふぐに当たって急死した「らくだの宇之助」(片岡亀蔵)の友人熊五郎(愛之助)は、やってきた屑物屋の久六(中車)と組んで、大家に酒肴を出させようと、死体の宇之助にカンカンノウを踊らせます。せしめた酒に酔った久六は、小心者が豹変し…。
シネマ歌舞伎で見た三津五郎と勘三郎、片岡亀蔵の「らくだ」(2008年)は抱腹絶倒、昨年秀山祭で松緑、染五郎、亀寿もそれなりに面白かったんですが(こう並べると二枚目3人!)、今回の上方バージョン、すっごく面白かったです。
 
愛之助の熊五郎がすっきりとかっこいいのに対し(のびのびと関西弁でまくしたてる愛之助も初めてですが、とてもよかった!)、怒鳴られていいなりになる小心者の中車。そして、シネマ歌舞伎で驚嘆した、死体の不気味さと可愛さが殿堂入りの亀蔵さん!背負わされた中車にほほをつけるところなど、やはり冷たさが伝わってくるようでおかしくて。
そして、最初は遠慮していた酒に酔っていく中車もとても愉快で、とにかく愛之助とのバランスがよくて(「半沢直樹」コンビですね)、また見たいと思いました。大家夫婦が橘太郎、松之助もよく、冒頭の長屋の婆さんが誰かと思ったらいつもかわいい笑野でなかなか達者でした。
201712 2つめは今月のハイライト「蘭平物狂」。このために、1等席奮発ですよ。
黒い着物の奴姿で登場したときから、奴蘭平の松緑、気合が入っています。在原行平(愛之助)の屋敷、捕らえていた曲者を、行平は蘭平の息子繁蔵(左近)に追わせると、蘭平は心配して待っています。

左近ちゃん11歳、名子役と評判で、所作も美しい。手の動きや腰の入り方など、普段しっかり舞踊のお稽古をしているんだろうなと思います。松緑は何かにつけては、祖父や父の芸を息子に伝えるのが役目と言っていることもあり、そういう目で見ると父親の心情に溢れていて、ちょっと感動します。
松緑の舞踊の場面もなかなか楽しいのですが(お席がセンターだったのでで松緑さんと目が合った気がしたりして)、見どころは後半の立ち回り!

松緑さんを中心に、大勢の屋敷の者たちとのハシゴを使っての立ち回り。30分近くさまざまな形で続きます。圧巻は花道を使ってのもの!(このために後半に入る前に花道の上の台を片づけるんですが、その移動のスピードが笑えるくらい早かった!)大向さんも盛り上がって、「きおいちょ!」「四代目!」の声もかかってました。

普通、このような展開だと、たいてい悲劇で終わるような気がしますが、このお話、なんと最後はハッピーエンドで蘭平も死にません。繁蔵も立派な隈取をしてきて、可愛い!
愛之助の行平さまが立派でいいし、奥方(児太郎)、おりく(新悟)、与茂作(坂東亀蔵)と、バランスのいい座組みでほんとに楽しかったです。

自身のブログでは自虐的な言い方や深酒が心配になっちゃう松緑さんですが、恵まれた容姿と身体能力、舞踊の実力に加えて、腹の座ったときのオーラはすごいなと思いました。素顔も二代目とますます似てきているような気がします。

 

十二月大歌舞伎第一部「源平布引滝 実盛物語」「土蜘」

201712   十二月の歌舞伎座は三部制、第一部は愛之助の「実盛物語」です。私の持っている歌舞伎の主な演目のあらすじの本では、海老蔵と故富十郎のこの角度の写真が載っていて、骨太の義太夫ものと楽しみにしておりました。「物語」というのは、実盛さんのお話、というわけではなくて、実盛が小万の腕を切るところを物語るところがみどころだからなんですね。

   この演目、「源平布引滝」の三段目で、二段目は、「義賢最期」です。「義賢最期」の最後に、源氏つの白旗を持って去った小万と、義賢の遺児(のちの木曽義仲)を宿して落ちのびた葵御前がまた出てきます。

百姓九郎助(松之助)小よし(吉弥)夫婦のところにかくまわれている葵御前(笑三郎)。九郎助は、娘小万の息子太郎助と、源氏の白旗を握った女の腕を川で拾って帰ってきます。平家方の詮議の実盛(愛之助)と瀬尾十郎(片岡亀蔵)がやってきて、葵御前の子が息子なら殺すといいます。しかし、実は実盛は源氏に心を寄せる武将でした…。

この実盛が、立派で情愛もある武将、くっきりとした化粧が愛之助に似合います。義太夫に乗った人形振りの場面も、身体にばねがしかけてあるような気持ちのよい動き。実は愛之助が古典歌舞伎をやるのを見るのは初めてでしたが、魅力的な役者だなあと改めて思いました(あ、ニザ様に似てる、と思った瞬間がありました)。

笑三郎さんの品のある奥方、門之助さん(小万)のほどのよい情愛の表現、瀬尾の郎党の猿三郎さんもいて、この2カ月四代目の事故もあって、ワンピース歌舞伎関係のブログなどけっこう見ていたので、何となく澤瀉屋の皆さんがたった1週間でこういう演目でいいお芝居しているのに感動しました。

実盛の相方の瀬尾が悪役と見えて…のまさかの太郎助の祖父。亀蔵さんの人間味にじんときます。最後の「平馬返り」、やや平べったいながら、見事に返りました。この瀬尾の平馬返りって有名なんですね。亀蔵のお兄さん市蔵など、いろんな方がやっているようです。

吉弥・松之助夫婦も文句ないし、子役も大活躍、人情味と義太夫と話の流れもよくて、いい演目だなと思いました。史実では、実盛は後に光盛に討たれますが、その時老人とみられないように若作りの化粧をしていたそうです。その理由が、この実盛物語で語られる「年をとっても見違えないようにしてそなたに討たれよう」というのだという、よくできた話です。

最後は、馬で実盛退場。そういえば、歌舞伎座ギャラリーで見た、「歌舞伎の馬」という感じの映像で、この演目が「馬大活躍」の演目として紹介されていましたっけ。ギャラリーでは馬に乗ってみることができたのですが、意外と高くて、細い花道を走っていくのはちょっと怖いのではと思いますが、なかなか楽しい演出です。

さらにですよ、猿三郎さんのブログによると、太郎吉後の手塚光盛は実在の人物で、手塚治虫の祖先なんだそうです!びっくり!。

2つめは「新古演劇十種のうち土蜘(つちぐも)」です。昨年8月に歌舞伎座で芝翫(当時橋之助)、七之助、獅童らで見ていますが、その時は1階の前方やや端だったので、全体が見える3階のセンターからはどうかなと思ってました。

土蜘(松緑)、頼光(彦三郎)、平井保政(團蔵)、胡蝶(梅枝)、巫女(新悟)、に、太刀持ち(左近)、石神(亀三郎ちゃん)。前回はこのお子達が團子ちゃんと哲之ちゃん(現長三郎ちゃん)でした。番卒が権十郎、片岡亀蔵、坂東亀蔵。前回は猿之助、勘九郎、巳之助だったので、もうちょっとお客へのアピールが強かった(オレがオレが的な)ような気がしますが、この演目で番卒がでてくるところが一番好き。

舞踊が多い演目ですがそれぞれ面白く、上記のようにお子達も出てきて飽きないです。左近君、うまいと人気の坊ちゃんですが、長い裾できびきび歩いて立派。亀三郎ちゃんもかわいくて眼福でした。

最後は土蜘と平井、四天王ほかの立ち回り。若干地味です。せっかくここまでいろいろやってきたのにという気はしますが、ま、全体的には楽しませてもらったので、二部を期待しますよ、松緑さん、ってことで。

齋藤芳弘「亀治郎の肖像」

Photo   齋藤芳弘さんが、2008年から2012年までの、四代目猿之助の亀治郎時代の舞台を、撮った写真集です。大部なので躊躇してましたが、とうとう入手しました。これで四代目関係の本は、神仏と比叡山と器以外は揃いました(笑)

時期的には、長塚誠志さんの写真集「四代目市川猿之助」の後半部分と重なっていますが、長塚さんの写真は、本番舞台の際に黒いバックの臨時スタジオで撮っているのに対し、こちらは舞台写真。アートディレクターでもあって、パンフレットやポスターを手掛けてきた齋藤さんらしく、1つの画面に複数の写真の亀治郎を合成したりして、舞台の雰囲気をうまく伝えようとしています。何より分厚くて、1つの芝居での早替わりや違う場面での表情をたくさん見せてくれて、構図もさまざまで面白いです。

猿之助が、歌舞伎の特徴はと聞かれて答えることのひとつに、「すべての所作が美しいことだ」というのがありますが、本当にどの写真も役の人柄、心情があふれていてすばらしい。

たとえば、「男の花道」(素の歌右衛門、劇中劇のお七がきれい)、「悪太郎」、「浮世風呂」と続きます。この役柄の広さ。そして、様々な化粧の巧みさ。四代目は化粧もとりわけ早いんだそうです。

この齋藤さんって、お茶の水のブックカフェ、「エスパス・ビブリオ」のオーナーなんですね。それで四代目の写真展や猿三郎さんの個展をやったりしていたのかー。2008年の「亀治郎の会」のパンフレットに、まだ華奢な亀さんが渋谷のブックカフェにいる写真が多数使われていましたが、そこから移転したのがエスパス・ビブリオだったんですね。斎藤さん、さまざまな舞台を務めながら、それを記録にも残したい四代目を支える方であって、彼の魅力に憑かれた方なんだなあと思いました。

「スーパー歌舞伎IIワンピース “偉大なる世界」とワンピース歌舞伎2回目(追記・猿之助ワンピース写真展)

Photo   ワンピース歌舞伎の写真集・メイキングの2冊組の本、「スーパー歌舞伎IIワンピース “偉大なる世界(グランド・ライブ)」が、発売されました。四代目猿之助さんとしては、もともとのファンが一巡した2カ月連続公演の2か月目に、写真とスタッフのインタビュー満載の本を出版する、ということだったんでしょうが、ご存知の通り、開演わずか4日目の事故で、猿之助自身は出演できない事態に。

猿之助、右近を両方見ようと何回もチケットを取っていた人の中にはリセールに出す人もいて、そうした中、タンバリン交換や猿之助のカーテンコール登場等、話題には事欠かないワンピース歌舞伎再演となりました。

しかし、右近ルフィ、若くて純粋で元々ルフィのキャラに合っているうえに、女方は絶品。3時間奮闘した後でもツヤツヤのお肌のハンコックは美形女形です。そうなると、芝居自体の骨格の確かさやエンタテインメント性が、否応なく四代目の演出の凄さを感じさせる舞台になっているわけで、このメイキングブックが、面白くないわけはありません。

お芝居というものが好きな私にとっては、脚本、衣装、舞台装置、照明、音楽…、のプロの仕事を語るインタビューは本当に興味深く読ませていただきました。一流のプロである彼らの力を最大限に引き出す歌舞伎役者猿之助。出るか出ないかなんて、この作品の価値には関係ないとさえ思えます。

そして、猿之助と尾田栄一郎、北川悠仁の対談がたっぷり載っているんですが、猿之助の歌舞伎以外の人に歌舞伎の表現や特徴をわかりやすく理路整然と説明する能力には感心します。例えば、歌舞伎と普通の演劇の違いはときかれて、「すべての所作が美しいことです」と言うんですよ。そういえば、「LIFE」のときも、コントの後のトークがとても面白かったですね。

かと思うと、竹三郎さんが、以前公演中に体調不良で倒れたときの、猿之助の親身になっての優しさのエピソードを語り、「四代目さんのなさることなら何でも力になってさしあげたい」なんておっしゃるんですよ。お二人の共演は大好きなんですが、そういう絆があったんですね。

そしてこの本を読んだ直後に、再演2回目の観劇日がやってきました。代役もほぼ1カ月、すっかりルフィを自分のものにしている右近。初演よりはるかに存在感と安定感を増している巳之助、隼人、そしてナミとサンダーソニアとサディちゃんを楽し気に演じて輝いている新悟。

今日は休日マチネとあって、小学生くらいのお子さんも多く。コミックを知っていればこそのセリフでたくさん笑いが起きていました。

元は、猿之助の歌舞伎シャンクスが見たくてとった「麦わらの挑戦」チケット、猿之助さん自身がいなくても、とっても満足でした。2回目の大手術を終えた猿之助さん、どうか、順調に完治されますように。

(追記)

Photoその後、お茶の水のエスパス・ビブリオというブックカフェで開催されている、「市川猿之助ワンピース写真展」に行ってまいりました。

広いカフェ(壁はぎっしりと本!ゆっくり来たいものです)の壁に、引き伸ばした猿之助のルフィ、ハンコックの写真!生き生きとしたルフィの表情、目力、そのシーンを思い起こさせる迫力。実はルフィは若く初々しい右近の方が合ってると思っていた私ですが、これを見ると、演舞場初演時よりさらにこの役の真髄をつかんだような猿之助ルフィを見たいと思わずにはいられませんでした。

奥の落ち着いたコーナーでは、立派なアルバムに、応援寄せ書きが。私も書かせていただきました。

そして、たくさんのポストカードを、1枚162円で売っています。舞台写真よりサイズは小さいですが、美しい写真ばかりで、狐忠信、勘平、シャイロック等買いました。

さらにはですよ、第8回亀治郎の会のパンフレットが積まれていました。パンフレットといっても、ハードカバーの本で、厚い紙にたくさん写真が載っているので、これはいい、と買ってきました。

持っていないファンの方。これはもう貴重なものですよ!発行日は2010年8月、この年の浅草新春歌舞伎から始まった猿之助襲名へのカウントダウンが始まっているのが、よくわかります。演目は四の切初演ですし、2代目、3代目と同じ役の写真が見開きで並んでいたりします。なぜ外部の俳優(福士誠治等)と新作歌舞伎「上州土産百両首」なんかやるんだ、と言われたようですが、3代目ほか名優たちが演じた作品。

3代目やスタッフ、蔵之介さんや浅野和之さんのコメントもあり、何より4代目自身の短いながら彼らしいエッセイが多数載っていて、買えてよかった!(しかも540円)と思いました。

吉例顔見世大歌舞伎「鯉つかみ」「奥州安達原」「雪暮夜谷畦道 直侍」

2017112   顔見世大歌舞伎昼の部1つめは、「鯉つかみ」です。あの、ラスベガスで染五郎と米吉がやった演目で、とにかく水かぶるやつでしょ、などと思っててすいません。

名刀竜神丸を探すために姿を消した志賀之助(染五郎)と再会できた小桜姫(児太郎)は喜んで踊ります(この二人ステキ)。元々入り婿となるはずだった志賀之助と祝言をあげた小桜姫、しかし、そこへ竜神丸を取り戻した志賀之助がやってきて、二人で小桜姫を取り合うことに。

鯉の妖怪の化けた志賀乃助は、吹き替えを使っての早替わり、最後は本水での立ち回り。この早替わりが、何度もあって、ええっとわからないところもあり、とっても面白かったです。立ち回りの相手方の皆さんも大活躍。毛谷村でキレキレだった音蔵さんも入っていたようでした。朝一番にこの演目とは、染さんお疲れ様。ほかに高麗蔵、友右衛門、廣太郎。廣太郎気合が入っていました。

2つめは「奥州安達原」。猿之助が三味線を持って子役と映っている写真をよく見ていて、どんな演目かな、と思っておりましたが、事前にあらすじをいくら読んでも頭に入ってこない。よくあらすじを読むより、舞台を見る方がわかりやすいものなんですが、これはなぜか見ていても今一つ納得がいかない感じでした。

まず、娘お君を連れて、切腹を前にした父(歌六)のもとに帰ってきた袖萩(雀右衛門)に対して父も母(東蔵)も冷たすぎてかわいそうすぎ。雪の中、寒そうなんです。宗任(又五郎)、義家(錦之助)もいいんだけど唐突でわかりにくい。そしてラストにやっと出てくる貞任(吉右衛門)。立派だし、セリフも歌っててですね、今吉右衛門さん最盛期か、という勢いですが、ちょっと出るのが遅すぎ!そしてやっぱり袖萩捨てたのかわいそうじゃないか、と思うですよ。葵太夫さんの義太夫は聞きものでしたI(袖萩祭文なのに、袖萩は三味線弾くだけで祭文自体は義太夫なんですよ)。

3つ目は「直侍」。これも寒い季節。雪の中、そば屋にやってきた、罪を犯して追われている直侍(菊五郎)、火鉢であったまり、酒とそばを頼みます。常連の按摩丈賀(東蔵)。東蔵さん、前の演目のような老母役が多いですが、この丈賀のよいこと。そば屋夫妻も実直で優しい人たちなんですが、家橘、齋入さんでした。知り合いの丈賀に気取られまいとする直侍の様子。菊五郎さんの所作の一つ一つが絶品です。

表で丈賀に馴染みの花魁三千歳(時蔵)への手紙を託して行き会ったのは昔なじみの悪党、丑松(團蔵)。このやりとりもいいです。そして直侍と会えなくなって気うつになっていた三千歳との再会。二人の呼吸もいつもながら絶妙です。丑松の通報で追手に踏み込まれた直侍、意を決して花道を逃げていきます。ああ、かっこよかった菊五郎さん。

夜の部と合わせ、大幹部による名作ばかりの充実した顔見世大歌舞伎でございました。

吉例顔見世大歌舞伎「仮名手本忠臣蔵五・六段目」「新口村」「大石最後の一日」

201711   大幹部勢ぞろいの吉例顔見世大歌舞伎、夜の部です。1つめは、「仮名手本忠臣蔵五段目(山崎街道鉄砲渡しの場、二つ玉の場)、六段目与市兵衛内勘平腹切の場)。仁左衛門さんが勘平ですので、菊五郎さんの音羽屋型と違う、上方の型なのかな、と思っておりました。

蓑姿の勘平(仁左衛門)が、千崎弥五郎(彦三郎)と出会うところから始まります。ニザさま、すっきりといい男なのは言うまでもありません。自分の身の上を恥じているところも素敵。与市兵衛をさっくり殺してしまう斧定九郎(染五郎)ももちろん眼福。しかしほんとにすぐ死んじゃう役で、もったいないですね。

与市兵衛宅には、母おかや(吉弥)、おかる(孝太郎)がいて、おかるを引き取りに来た一文字屋お才(秀太郎)、源六(松之助)。昨年の国立劇場は魁春、團蔵だったので、たぶんこんなに関西弁の二人ではなかったと思いますが、なんとも言えないいいお才(ちょっとセリフが聞きづらいところがあったのが残念)。

帰宅後、なんだかぼーっとしている勘平。後でわかりますが、せっかく手に入れた金を渡そうとして不破たちに拒絶されて希望を失って帰って来たんですね。しかも財布の模様で与市兵衛を殺したとも思っているし。やってきた不破、千崎の前でとうとう腹を切る勘平。勘平が撃ったのは実は定九郎とわかり、晴れて血判を押して喜ぶ勘平の表情が安らかな笑顔で感動でした。去る千崎の表情にぐっと気持ちがこもっていてよかったです。

ニザ様の勘平は、上方の鴈治郎型ともちがう、十三代目の父上直伝なんだそうです(「ようこそ歌舞伎へ」。)しどころが多い役だけに、細かく作り上げているんですね。

2つ目は「恋飛脚大和往来 新口村」。「封印切」で手を付けてはいけない金の封を切ってしまった忠兵衛と梅川のその後です。

雪の中、逃げ落ちていく忠兵衛(藤十郎)と梅川(扇雀)。せつない中にも細やかな愛情が通い合う二人です。扇雀さんきれい~。通りかかる忠兵衛の父孫右衛門(歌六)が転んだところに助けに行く梅川、優しく下駄の鼻緒をすげてくれます。ああ谷太夫さんのいい調子、と思ったら、…(少しうとうとしてしまい)孫右衛門さんが切々と胸の内を語っていました。

最後、木々越しに去っていく忠兵衛・梅川が、照明効果もあって美しかったです。あ、それから雪の中では黒子でなくて白子なんですね。

最後は真山青果の「元禄忠臣蔵 大石最後の一日」。

仇討ちを終えた赤穂浪士たちが、処分を待って預けられている細川家。大石内蔵助(幸四郎)は、心静かに過ごすよう、浪士たちに目配りをしています。若君内記(金太郎)が、話を聞きに来たりします。さて、本題は、男の扮装をして屋敷にやってきたおみの(児太郎)。婚約披露をしながら、結納の日に現れず、そのまま討入りに参加した磯貝十郎左衛門(染五郎)の真意を知りたいと内蔵助に訴えます。処分が決まったとの知らせに、十郎左衛門を呼ぶ内蔵助…。

座敷に浪士たちが集っている幕開けから、芝居が動いていて惹き付けられました。私としては、内蔵助と言えば幸四郎兄弟。青果の理屈っぽいセリフも、幸四郎さんに合っています。染さんも品のある、いい二枚目。金太郎くん、見た目は文句なく美少年ですが、難しい年ごろで、数年先が楽しみです。

内蔵助、おみのの応酬は幸四郎さんはもちろん、児太郎の熱演で見ごたえがありました(芝のぶさんもブログで、うちのぼっちゃんすごいですよって書いてました)。そこでぐっと泣きそうになっているところに、「(婚約披露の時の)琴の爪を持っておろう」と内蔵助に言われて崩れ落ちる十郎左衛門!苦悩する染さん大好きなもんですから、もう涙ですよ。

浪士に切腹を伝え、かつ私的に吉良家断絶を知らせる武士らしいニザ様でスカっとした後で、いよいよ切腹するために花道を歩いていく浪士たち、染さん、幸四郎さん。大向も盛り上がっての打ち出しでございました。

松竹大歌舞伎(巡業)「義経千本桜すし屋」「釣女」@やまと芸術文化ホール

201711  地方でも気軽に歌舞伎を、ということで巡業公演というのがあるわけですが、横浜市のすぐ隣の大和市に、獅童の「すし屋」が来る、というので行ってきました。松竹サイトでは売り切れていたチケットをホールに電話してとったんですが、左の端の方かと思ってたらば、通路から4列目、そう、花道替わりの通路のすぐ後ろで花横気分でございました。

義経千本桜の三段目後半の「すし屋」、通常は前半の「木の実・小金吾討死」というのもやるそうですが、今回はなし。

田舎のすし屋の使用人弥助(萬太郎)は、店の娘お里(米吉)と一緒になることになっており、お里は夫らしくおい女房と呼んでくれ、と弥助に練習させたりしています。お里の兄はならず者のいがみの権太(獅童)です。店の主人弥左衛門(片岡亀蔵)が戻ってきて、弥助実は平維盛である弥助に、梶原景時(亀鶴)の詮議があるので、明日は逃げろといいます。弥左衛門は昔維盛の父重盛の家来で恩があったことから維盛をかくまい、今は身代わりの首を景時に差し出して何とか維盛を救おうとしていますが、維盛を救ったのは弥左衛門でなく権太でした…。

萬太郎、年より若く見えますが整った面立ちが叔父の錦之助さんにも似ていて、口跡もよく、品のある弥助ー維盛。十月歌舞伎座のマハーバーラタとこの巡業の間に結婚式を挙げたんですよね。米吉のお里もかわいらしく(巡業なので、普段歌舞伎をあまり見ないお客さんに、「よねこかわいいでしょ、ねっ」と言いたくなりました)。母の梅花さんも好きなので、前段はほのぼのと楽しく。

いよいよ目の前の通路を通って獅童登場で盛り上がります。すらりとかっこいいんですよね。それでもって、母からお金を巻き上げるワルな権太。

いよいよ夫婦となれるという夜、早く寝ようとかわいらしいお里。そこへ維盛の妻若葉の内侍と若君がやってきます。事情をやっと知ったお里は3人を逃がし、詮議をしに景時(亀鶴)一行がやってきます。亀鶴さん、迫力ある声と姿でこの座組みの中で貫禄。

弥左衛門の用意した維盛のニセ首の桶が取り違えられていたことで、観客がハラハラしていると、権太が戻ってきて維盛の首、奥方と若君を差し出します。景時から褒美をもらったものの、弥左衛門は権太を刺してしまいます。しかし苦しい息の下で権太が語ったのは、自分の妻子とニセ首で維盛を守ったことでした…。

ちょっとここまでで満足してしまって、権太のもどりを十分味わったとはいえなかったのが残念(それまで生き生きとしていた舞台の動きが少し止まってしまった感もあり)ですが、いろいろな場面を義太夫とともに楽しめる、面白い芝居でした。

休憩のあと、松羽目ものの「釣女」。

大名(萬太郎)と太郎冠者(亀鶴)は、妻を求めて恵比寿さまにお参りに来ます。夢のお告げがあって、釣りをしたところ、大名は美女(米吉)を釣り上げ、喜びます。太郎冠者が釣をすると、釣れたのは醜女(亀蔵)でした。

2組の対照的なカップルに、踊りも楽しい面白い演目です。萬太郎、米吉がお似合いで、亀鶴が軽快に、そして何といっても怪優亀蔵さんの醜女が、そんなに強烈な化粧じゃないのにおかしみあふれていて、とっても楽しかったです。

11月にのべ22日間、2回公演の日もあったりして、1か所での連続公演よりも役者さんやスタッフの皆さんはたいへんかもしれませんが、好きな役者さんばかりで2つとも面白い演目、義太夫、常磐津もあってチケットもお安く、いいですね。

「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」@新橋演舞場

2    ワンピース歌舞伎再演、2カ月間のちょうど真ん中くらいでと思ってとったチケットでしたが、猿之助の事故で右近ルフィを見ることになりました。2年前の初演時は、見る前は大丈夫かと案じていたものの、予想外のハマり具合に大興奮でした。

まず再演の感想。ストーリーは同じなんですが、いい場面はそのまま残しつつも、お話やセットはすっきりさせてメリハリをきかせ、ダンスや戦闘シーンの迫力が増した、という感じ。印象的だったルフィの早変わり、ボンちゃん・イナズマの本水立ち回り、青雉との氷の戦い、白ひげの最後等はそのまま、アマゾンリリーやニューカマーのダンスはよりレベルアップ、赤犬とエースの戦いの迫力は倍増です。

右近ルフィは、さすがに若くはつらつとしていて、無邪気に思ったままをまっすぐぶつけるセリフが、猿之助より合っているんじゃないか、と思えました。踊りのうまい人でそこも見どころですし、動き全体にキレがあります。ハンコックもきれい。

新悟のナミは春猿よりもサバサバしていてこうみると合ってますし、サディちゃんも長身のスタイルがステキで熱演でした。チョッパーは右近ちゃん。長いセリフをしっかりと。

平岳大エースは文句なしにかっこいいですし、シャンクスも歌舞伎役者の早変わりとちがって長くエースを演じた後だけに難しいと思うんですが、しっかり演じていました。

巳之助のゾロとボン・クレー、スクアード、隼人のサンジ・イナズマそしてマルコは、もはや安定。初演時は、こんなにがんばって大丈夫かと心配になったものですが、今回はむしろ舞台をしっかり支えていて頼もしい感じさえしました。アンコール、この二人と右近、新悟が四人並ぶ場面はジーンとしました。

全体がすっきりしているせいか、ルフィが仲間を信じる気持ちや、イワンコフ(浅野和之)、白ひげ(右團次)、ジンベエ(猿弥)のいいセリフがぐっと迫ってきて感動的でした。出てくるキャラは自由過ぎていても、こういういいセリフがあるから、ワンピースに普遍的な魅力があるんですよね。

そして今回は、猿三郎さんのブログを知り、出演者のエピソードをいろいろ読んでいたので、大病から復活してフランキーやダズを熱演していた石橋直也さんや、ダンスシーンで一際鮮やかに踊っていた穴井豪さんのことがわかったのも楽しめました。ディスコやクロコダイルをやっていた猿三郎さんもしっかり認識できました(ほんとこの方、いい人なんですよね)。

Photo     もちろん、2幕最後のファーファ―タイムは、タンバリン振って楽しみましたが、ここのルフィの宙乗り、初日に猿之助は、客席を見回しながら、一瞬ルフィじゃなくて四代目猿之助の顔になったと、複数のファンがTwitterでつぶやいていました。その、客席の私たちが盛り上がっている様子を見て、満足げにドヤ顔している猿之助がみたかった!

ああ、猿之助さん、再演できたこと、初演そのままじゃなくて納得のいくまでブラッシュアップできて満足のいく作品になったこと、若手バージョンさえ実現したこと、あらゆるメディアでときに右近込みで宣伝しまくったこと――とにかく、彼は満を持して10月6日の初日を迎えたと思うんですよ。そしてたった4日後、あの、10月9日は、NHKの「LIFE」で歌舞伎コントをウッチャンとやるということも宣伝されていました。その日の夕方、事故のニュースを知り、しかも「開放骨折」という、聞いたことのない症状が伝えられたんです。

あんなにせっかちで、常に動いていないと落ち着かないような人が(ワンピース直前に新国劇の劇団若獅子でヒロインを演じたり、ワンピース直後に地方を回る舞踊公演を予定していたり)、病室でやきもきしていると思うだけでもつらいです。

しかもその後まもなく、大好きな染五郎の幸四郎襲名をはじめ高麗屋3代同時襲名の来年1,2月歌舞伎座の演目が発表となり、1月は1作で主演、寺子屋の涎くりまで3役ついているじゃありませんか。でも、ほんとに無理をしないで、ゆっくり直して、リハビリも十分時間をとって、完全に治してほしいです。

その「LIFE」、短いコントに歌舞伎の型をふんだんに入れ、しかも面白いという傑作でした。どうか後遺症なく、順調に完治されますように。

(追 記)

と、余韻に浸っていたら、なんと今日、10月公演の千穐楽ということで、夜の部のアンコールに、猿之助がサプライズ登場というニュースが!それもあのすっぽんからですよ!私なんか役者が出入りするたびに怖いなと思ってみていたのに、そんなこと吹き飛ばすようなさわやかな笑顔。やっぱり舞台にいてこそ輝く人なんですね。このスタイルも、シャンクスを思わせるところがにくい!

Twitterでも驚きでにぎわっていますが、即座に歌舞伎美人できちんとレポートされています。http://www.kabuki-bito.jp/news/4371 でもやっぱりちゃんと養生してくださいませ。

芸術祭十月大歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」

2910     歌舞伎座で「マハーバーラタ戦記」をやると聞いたときは本当に驚きました。世界史でその名前だけ「ラーマーヤナ」と一緒に覚えたインドの長大な叙事詩。「NINAGAWA十二夜」という傑作を生んだ菊之助・菊五郎の音羽屋さんとはいえ、大丈夫か、と思いましたが評判がよいので楽しみにしていました。

松竹さんも力が入っていて、特設サイトを開設してますよ。

序幕は黄金の衣装をまとった神々の場面から。神々は、人間界の争いを鎮めるため、神の子を遣わすことになり、太陽神(左團次)は、汲手姫(くんてひめ、梅枝)にカルナを産ませます(マリアみたい)。恋を知らないのに、と汲手姫はカルナを川に流してしまいます。汲手姫は国王の妃となり、5人の王子を産みますが(息子たちが成長してからはくんて姫は時蔵)、3番目のアルジュナ(松也)は、戦いの神帝釈天(鴈治郎)の子でした。国王亡き後、王子たちのいとこヅルヨーダ姫(七之助)と弟(片岡亀蔵)がやってきて、王位争いが始まるのでした…。

チラシに細かく人間関係が書いてあったので少々不安でしたが、お話は明快で、人物の性格もしっかり造形されているので、まったくわかりにくいところはなく、神々と背景以外は普通の歌舞伎。よくあるお家騒動の物語としても見られます。一方で人々の争いとか欲を正面から描いている面もあって、長い物語に一本筋が通っているのがよかったです。

神々の衣装が超豪華。今の宝塚の豪華な衣装(とっくに紅白は超えてます)のさらにナナメ上をいっているのではというレベルです。そしてインド音楽が効果的。ドラマチックでもあるし、音そのものが気持ちよくもあるし。三味線や大太鼓との意外な相性のよさもあって、新作によくある録音の音楽よりずっといいと思いました。

役者さんたちもあて書きのようで皆さんはまっていて熱演。菊之助が、争いを避けるまっすぐな美青年。対立する松也もまた美しく、2人の戦いは両花道を使い大迫力でした。ヅルヨーダは原作では男だそうですが、七之助が貫禄ある美しさ、業の深さ、が最後は切なく、また戦闘シーンが見事。夜の部も大活躍なのにすごかったです。

アルジュナの兄弟たちが、彦三郎、亀蔵、と、双子の萬太郎、種之助。彦三亀蔵兄弟がよく似たよい兄弟なのは言うまでもないですが、双子の設定に大拍手、前からこの二人、小柄で元気がよくて愛嬌のあるところがよく似ているなあと思っていたんですよ。4人にもそれぞれたっぷり見せ場があって、楽しかったです。

スーパー歌舞伎や歌舞伎セカンドじゃなくて、インドが舞台の歌舞伎、って感じでした。うん、見逃さなくてよかったー。

(追記)

「演劇界」(←という名前だけど歌舞伎界、な雑誌)11月号に、菊之助、演出の宮城聰さん、脚本の青木豪さんのインタビューがたっぷり載っていました。菊之助が長谷部浩さんに勧められて宮城さんの演劇「マハーバーラタ」を見てから、今回の上演までに、設定からストーリー、上演台本までの苦労というか努力が窺われてより感動しました。

菊之助のポスター写真は、ほんとにインドで撮ったんですね(きれいすぎて合成に見える)。いや、このように何年もかかるプロジェクトが、適役を得て大成功してほんとによかったです。アルジュナの5兄弟は、皆さんここ数年で華が出てきた方たちですもんね。来月号は、キンキラキンの写真が見られるでしょうか。

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