2018年10月
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歌舞伎

「通し狂言 平家女護島」@国立劇場

201810s      23年ぶりという、「平家女護島」の通し狂言です。鬼界ヶ島の俊寛の段はたびたび上演されていますが(先月歌舞伎座の秀山祭で吉右衛門さんのを見たばかり)、その前後に平清盛が出る段があります。俊寛と平清盛を芝翫が演じる成駒屋興行。

序幕は六波羅清盛館の場。流罪にした俊寛の妻東屋(あずまや、孝太郎)に我が物になれと迫る清盛(芝翫)。二人の会話に常盤御前が出てきて、東屋が自分は常盤と違う、というのが、一條大蔵卿の常盤を思い出してちょっと切ないです。

清盛の甥教経(橋之助)は、俊寛への操と清盛への恭順ともにたてよ言い(そんなこと言ってたんだ)、東屋は自害します。俊寛の郎党有王丸(福之助)がやってきて、教経に東屋の首をもらって帰ります。

今見られる中で、吉右衛門さんの俊寛以上のものがあろうはずがないので、通し狂言としてどうなんだろうと思っていたのですが、1幕目はまあ手堅くといった感じ。孝太郎さんはさすがうまいな、ここでいなくなっちゃうのがもったいないと思ってみてました。腰元の梅花さん、京妙さんも、短い場面ながら盛り上げてくれます。橋福兄弟はいい役もらってるな。

二幕はお馴染みの鬼界ヶ島の場、俊寛(芝翫)、成経(松江)、康頼(橋吾)、千鳥(新悟)、瀬尾(亀鶴)、丹左衛門(橋之助)。

秀山祭のときには、あの俊寛の悲劇と思ってみたら、とくに前半は、意外な軽さを感じたんですが、こちらはさして軽さは感じませんでした。亀鶴の瀬尾は、いい声のきっちりした瀬尾。千鳥は、雀右衛門さんもうまかったんですけど、やっぱり私は可憐な若い娘の方がいいなあと、新悟熱演でした。橋吾さんとってもよくて目を引かれました。

俊寛見せ場の去る船を追いかける場面、叫びに熱がこもり、いったん諦めたかと思ったらまた叫ぶ。自分で決めたことながら、どうにもならない悲しみが伝わってきました。

さて三幕は、厳島に赴くな船の清盛、後白河法皇(東蔵)。法皇を亡き者にしようと海に突き落とす清盛、そこを千鳥が救います(←海女だから泳ぎは得意)。有王丸に法皇を託した千鳥は、清盛の船で殺されてしまいます。清盛の前に、東屋と千鳥の亡霊が出て清盛は苦しめられますが…。

海を背景に船というのはうまい場面設定。この東蔵さんの法皇に気品と可愛げがあって最高でした。今回花外だったので、福之助の派手な立ち回りもよく見えました。千鳥の意外な大活躍で見事な海老ぞり。最後は清盛の派手な見得で終わって、何だかわかりませんがすかっとしました。

【伝統演芸館・黙阿弥の明治】

201810      終演後,、伝統演劇館で、明治150年記念として、幕末から明治にかけて活躍した歌舞伎作者河竹黙阿弥に関する展示を見ました。ちょうど戸田康二さんの本で黙阿弥に関する一説を読んだところだったので興味深く。

展示品は錦絵(まだ時代が浅いので色鮮やか)や舞台写真が中心なんですが、白浪ものだけでなく、明治以降歌舞伎が政府の要人や上流階級の趣味になりうるよう奮闘した九代目團十郎とのかかわり、活歴、松羽目もの等、要領よい解説で、彼の功績がよくわかりました。

というか、河内山、髪結新三や魚屋宗五郎、幡随院長兵衛、紅葉狩、船弁慶等、今でもよく上演される面白い作品ばっかりじゃありませんか。こういう人がときどき現れてその世界を大きくするんですね。

芸術祭十月大歌舞伎「三人吉三巴白浪」「大江山酒呑童子」「佐倉義民伝」

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       十月の歌舞伎座は勘三郎さんの七回忌追善興行です。昼の部の1つめは、「三人吉三巴白浪」。お嬢吉三が七之助、お坊吉三が巳之助、和尚吉三が獅童

おとせは鶴松。コクーン歌舞伎の「切られの与三」といい、これといい、最近鶴松の女方が不安定に思えて残念。納涼の弥次喜多の時はそう思わなかったんですが、中村屋の芝居の大事な人だけに、がんばってほしいです。

七之助のお嬢はいうことありません。美しさ、タンカのキレ、男との入れ替わり。一人で舞台にいるときに、役者が大きくて舞台が小さく感じるようでした。

巳之助の古典は久しぶりですが、主役をやった後だけに、華があって役者ぶりが大きくなった気がしました。台詞も心地よくて、ああ、みっくんファンは待望の古典、そして勘三郎さんの盟友だった三津五郎さんにもいい供養になったとも思いました。

兄貴分の獅童は二人とのバランスもよく、大川端庚申塚の場だけの短い芝居でしたが楽しかったです。

2つめはお目当ての「大江山酒呑童子」。去年12月に京都で演じて評判だった勘九郎の酒呑童子です。松羽目の舞台に囃子方が黄色の裃で華やか。酒呑童子に相対する源頼光(扇雀)、平井保昌(錦之助)、四天王は歌昇、隼人、いてう、鶴松。みなさん、ビシッと決まっております。隼人が珍しい赤い顔。先月も思いましたが、とにかく舞台でずっと気が入っていて、大きな体がより大きく見えます。

そして童子姿の勘九郎がすっぽんから。なめらかな所作にうっとり。童子のくせに酒が好き、頼光に勧められて、飲む表情が豊か。そして笑った顔が、面もないのに般若のお顔。童子が酔って作り物の家に入った後、酒呑童子にとらえられていた姫(高麗蔵)、濯ぎ女(児太郎、種之助)が舞います。

いよいよ酒呑童子と頼光らの戦い。童子と打って変わった酒呑童子、四天王との立ち回りと、皆々美しく、楽しい一幕でした。

最後は「佐倉義民伝」。江戸初期に、将軍に直訴して息子もろとも処刑された千葉の佐倉の豪農をモデルにした佐倉義民伝ものというのが講談等にあったのを、幕末に中村座で歌舞伎として初演された、中村屋ゆかりの演目だそうです。

主人公の宗吾(白鸚)が、不作と重税に苦しむ農民を救おうと、江戸の領主の屋敷に訴えた帰り、旧知の渡し守甚兵衛(歌六)に、夜間の渡しの禁止を破って船を出してもらいます。旧主の覚悟に命懸けで助力する歌六さん、いい場面。ここも、次の宗吾の家の場面も、地面に積もった雪の表現がリアルで、冷たさを感じさせて感心しました。

宗吾の留守宅では、四人の子どもをかかえて、妻おさん(七之助)がしっかり家を守り、村民のおかみたちを助けて、寒そうな者には惜しげもなく着物を与えます。帰宅した宗吾に喜ぶ家族、しかし宗吾は死を覚悟して将軍に直訴するために再び旅だつのでした…。

場面は変わって寛永寺で紅葉を愛でる将軍(勘九郎)。並びの家臣が豪華。無謀にも直訴に及ぶ宗吾はむなしく捉えられ…。

そう、お縄にかかったんですよ。それでどうなるか、と観客が固唾を飲んだところで提灯が付き、終幕。初見のお客はポカンとこれで帰るの?って顔してましたですね、私も含めて。

前述の処刑された、というのも後から調べた話で、そうならそうと言ってくださいよ(←いや、予習しろ私)。道理で家族との別れでぐすぐす泣いている声が聞こえたんですね。

(まあ、でも、役者さんはみんなよかったんですが、ちょっと暗すぎるのと動きがなくてあまり好きな芝居ではなかったです)。

 

秀山祭九月大歌舞伎「金閣寺」「鬼揃紅葉狩」「河内山」

201809kabukiza09kouchiyama     秀山祭昼の部です。1つめは「金閣寺」。国崩しの大悪人大膳(松緑)が、慶寿院(福助)を人質にとって金閣寺に立てこもっています。画家でもある雪姫(児太郎)をわがものにしようとしていますが、家臣になると宿敵の家臣である東吉(梅玉)がやってきて…。

2015年1月にも、大膳染五郎、雪姫七之助、東吉勘九郎という座組で見ていますが、なんといっても今回は、福助さんの5年ぶりの舞台復帰ということで話題です。終盤の短い場面ですが、とても張のある美しい声、凛とした容姿。舞台では一度しか拝見したことがなく、シネマ歌舞伎や歌舞伎本での福助さんの方が印象深いので、ああ、本当に福助さんだ、と思いました。女方としてあれほど活躍されていた役者が、歌舞伎界最高の名跡の一つを襲名することが決まっていながら、どんな思いで5年間リハビリに打ち込んできたことか。この舞台と拍手がご本人にもさらに励みになることでしょう。

その父をみて、児太郎の意気込みはいかばかりか、立派な雪姫。松緑の大膳も、ニンに合っているというか、文楽の「大団七」のかしらみたいなきれいな顔の拵え、今まで見た松緑さんで一番いいなあなどと思いました。なかよしの坂東亀蔵さんが弟の鬼藤太。

もちろん梅玉さんの東吉は舞台に重みを与え、見応えあるものにしていました。愛太夫、谷太夫お二人の義太夫も久しぶりでうっとり。

2つめは「鬼揃紅葉狩」。猿之助もやっていますが、その猿之助四十八選版とは別物ですね。「紅葉狩」とのちがいは、更科姫だけでなく侍女たちも鬼になるのと、維茂を起こす山神が女神と山神の姿で出てくること、紅葉の木がない(能舞台で囃子方しか舞台にいない)ことでしょうか。鬼はいっぱいでてくるのですが、「紅葉狩」よりも舞踊に近い、様式的な感じがしました。

幸四郎さんの更科姫は、現代的な美人。優雅に舞います。維茂(錦之助)の従者、廣太郎と隼人が立派です。隼人は、控えていても気合が入った顔をしているのが好感(河内山も)。

男山八幡の末柱が、東蔵・玉太郎の祖父・孫コンビなんですが、玉太郎、かわいい!というか、私紅葉狩のこの役、見た人全部(虎之介・金太郎・亀治郎)かわいい!好き!となっちゃうのは、よほどこの役柄とか雰囲気とかが好きなんですかね。玉ちゃんも指先まで気合を入れてきれいに踊っていました。舞台写真も多かったのが、人気を示してますね。

(ところでこの演目のこと調べていて、21年(2009年)11月の花形歌舞伎 の演目なんてのを見つけてしまいました。なんて素敵な座組)

さて最後は「河内山」。これまで2回は白鸚さんで見ていて、吉右衛門さんは初めてです。見た感じ、堂々と押し出しがよく、発声がきれいなのはお二方ともなんですが、吉右衛門さんの方がこってりと、宗俊のアクの強さを強調した感じ(この特別ポスターの愛嬌をみよ)。

いつも正しい、しかし苦渋の選択をするといったお役の多いきっちーさんが、本当に楽しそうで、もっと世話もお好きなのではと思わせるうまさ。「ひじきやあぶらげの惣菜ばかり食べて」とか「みじこうお仕えするこのどーかい」といったセリフの繰り返しが面白く耳に入ってきます。しかも、吉右衛門さんの座頭芝居らしく、役者が揃ってはまっているのが気持ちがよく、楽しい河内山でした。

始めの上州屋の場面、番頭に怒られる子どもの絡んだ宗俊の登場に始まって、宗俊の無茶な質入れを断る番頭(吉三郎―とてもよかった)、宗俊の申し出に縋って娘を助け出そうと決意する後家おまき(魁春)、親類の和泉屋(歌六)。

松江邸では、いかにも浪路に無理をいいそうなわがままさを見せる出雲守(幸四郎)、爽やかな数馬(歌昇)、実直な高木(又五郎)に、宗俊と相対する北村大膳(吉之丞)。幸四郎さん、出過ぎでお疲れという声も聞きますが、この出雲守はとてもよくて、宗俊と相対する場面でも大名としての大きさも感じさせて、これは襲名後の貫禄だなあと思いました。

最期、北村に見現されて逆襲する河内山は爽快。楽しいお芝居でした。

秀山祭九月大歌舞伎「操三番叟」「俊寛」「幽玄」

201809kabukiza09_shunkan       九月の歌舞伎座は秀山祭。夜の部1つめは、幸四郎「操三番叟」。 2016年にも見ているので、得意の舞踊なんでしょうね。ない糸に操られる軽快な人形の動き、体重が床にかかっていないように見え、表情もお人形で、何度見ても感心します。後見は吉之丞さんで、さすが。

次はいよいよ吉右衛門さんの「俊寛」です。歌舞伎の名作ということは、部外者でも知っているくらい有名な演目ですが、初めて。上の方から見る波の背景が、広がりを感じさせてまず感心しました(もちろんこちらが先ですが、ミュージカルの「Big Fish」みたいな)。

清盛への謀反の罪で鬼界ヶ島に流された俊寛(吉右衛門)、成経(菊之助)、康頼(錦之助)は、助け合いながら、恩赦を待っています。成経は島の娘千鳥(雀右衛門)と恋仲になっています。そこへ恩赦の船が。瀬尾(又五郎)は、成経と康頼のみを連れ帰ると言いますが、丹左衛門基康(歌六)は重盛の配慮で俊寛も救うと言います。しかし千鳥は数に入っていません。俊寛は瀬尾を殺し、新たな罪のために残ると言い、千鳥を連れて行かせます。都に残した愛妻の死を知って、自ら犠牲になる決意をしたものの、いざ船が出ると俊寛は船を追って叫ぶのです…。

だいたいのあらすじは知っていましたが、千鳥が島の娘(西郷隆盛が流されたときの愛可奈みたいな)ではなく、歌舞伎の普通の町娘だったので、これなら連れ帰っても大丈夫そう、なんて思ったりして。成経は女方もやる役者さんが演じることも多い優男、菊之助の出番は少しですがやはりきれい(私の好みでは、やっぱり菊ちゃんの相手役としてはもうちょっと…)。

瀬尾はよくある悪役ですが、又五郎さんは愛嬌があって弾むようで、見ていて楽しく、意外に前半は軽い味わいのあるこの芝居を盛り上げていました。俊寛に心寄せる歌六さんはまあまちがいなしです。

前半、嘆きながらころころ転がっていた吉右衛門さん、見せ場はやはり愛妻の死を知って帰京の望みを失ってしまい、瀬尾を長めの立ち回りで殺した後ですよ。船が去れば孤独な俊寛は叫びます。舞台は廻り、海が広がります。今や取り繕うこともない俊寛、そして最後、叫んでもどうにもならない自分の運命を知る表情が、さすが人間国宝。またしてもよいものを見せていただきました。

201809kabukiza09_yugen     さて、最後は新作歌舞伎舞踊と題した「幽玄」。玉三郎さんが鼓童というパーカッショングループとコラボしているというのは知っていましたが、内容は想像もできず、舞踊は苦手なのでそんなに長い舞踊、寝ないか心配でしたが、意識がとんだのはちょっとだけで、面白かったです。

鼓童のパーカッションはさすが。けっこうな人数で様々な太鼓や鐘で、メロディまで感じさせるパフォーマンス、見事でした。

最初は「羽衣」。漁師らしき歌昇、種之助、萬太郎、弘太郎、鶴松ほかの青年たち。松の枝に残された羽衣を手にしますが、天女(玉三郎)が返してくれとやってきます。歌昇はリーダー格ですが、先月も思いましたけど、華があってお顔もきれいで素敵。

玉三郎さんの動きはまさに能。能だと、美女の面の脇からはみだすほおの輪郭が、実はどうかと思っているんですが、玉様の化粧したお顔は、並べたらちがうかもしれませんが、今舞台の上では美女面。そして歌昇たちの団体行動のような一糸乱れぬフォーメーション、びくともしない立ち姿。いくら舞踊が得意な役者たちとはいえ、まだ若いのに、この身体能力は、いかに普段鍛えられているのか、と感心しました。

2つめは「石橋」、5人が獅子ででてきます。EXILEのような一直線になったり、きれいに半円に並んだり、コロコロしてかわいい獅子たち。歌舞伎に縁のない若い子が見ても楽しいよなあと思い、また、太鼓のリズムがあるので、毛振りがそろっていてよかったです。

最後は「道成寺」。かわいらしい娘の玉様が踊らないのは残念でしたが、キャンドルをたくさん使ったりして、舞台効果に凝った作品。最後の蛇体の玉様も迫力でした。

歌舞伎としてどうか、とか秀山祭の歌舞伎座でやるのか、といった話は別として、立派なパフォーマンス。この内容の単独公演って5000円はとれるな(玉様ほか歌舞伎役者さんは除いても)、じゃあ今日の3A6000円は、1000円で吉右衛門さんの至芸を見て、まだ操三番叟をただで見たということ、なんて計算したりして。

言葉もいらないし、芸術性はあるし、東京オリンピックの開会式のパフォーマンスの一部として組み込んだらよいのではと思いました!

納涼歌舞伎第3部「通し狂言 盟三五大切」

201808     納涼歌舞伎第3部、「通し狂言 盟三五大切」です。たしか昨年、松竹座でニザ様が絶賛されていた鶴屋南北の凄惨な物語。

お話はやや複雑ですが、忠臣蔵の仇討ちのために金を工面しようとする源五兵衛(幸四郎)をだまして金を奪う三五郎(獅童)、芸者小万(七之助)の夫婦。怒った源五兵衛が殺しまくり、しかし結局数々の犠牲の下に、不破数右衛門として、討ち入り浪士の列に加わります。

初めて見たので、あらすじは知っていたものの、驚きの連続ですよ。まず、不破数右衛門って、仮名手本忠臣蔵の六段目で、勘平のところに来る立派な武士の人でしょう?そんな人殺しだったなんて。しかも伯父さんの富森助右衛門(錦吾)って、綱豊卿に諭される青年だったはず、と、なんかいろいろ混乱します。

しかも小万夫婦の引っ越し先長屋の大家弥助(中車)が小万の兄だとか、ふらっと現れた僧了心(松之丞)が三五郎の父で、勘当が許されるとか、ストーリーはご都合主義も極まれり、です。

しかし、個々の場面は、歌舞伎の楽しさ満載です。なんたって源五兵衛の幸四郎がもうかっこよく、七之助の小万が綺麗でそれだけでもうありがたい。最初は呑気にじゃらじゃらしているのが、殺し場の迫力、そして源五兵衛が小万の首と一緒に食事する凄惨さ(この首のところ、知らなかったので、ああ七之助の顔はお人形にぴったりのきれいさだな、と思っていてとてもびっくりしました)。

幸四郎はやはり襲名公演を経て一回り大きくなった感じがしますし、七之助のこの盛りの美しさと的確さ。ここに獅童のバランスの良さ。

幸四郎は、この月、一部で田舎の人のいいおやじと激しい舞踊、二部は剽軽な弥次さんときて、三部でこれですよ。しかも先月勧進帳と油殺しやって。もう朝から晩まで大丈夫なんでしょうかと心配になるくらいです。七之助、獅童も1部でこってり芝居を見せて、2部はこれでもかの早替わりを大真面目にやって(猿之助のうれしそうな顔が想像できます)、この重い3部。中車は1日中幽霊か。

脇もしっかりしているんですが、やや驚いたのは八右衛門の橋之助。はっきり言って、これまで今のヘタクソは誰だレベルの芝居も多かったのに、かなり健闘していました。実は先日見た2部でも、3兄弟で一人だけ、役者の顔でお客にしっかり魅せる表情で踊っていて、一人前の役者になったなと思っていました。本気になればここまで成長するんだな、と驚きました。

 

新作歌舞伎「NARUTO」@新橋演舞場

201808naruto      ワンピースに続いて、少年ジャンプの人気コミックの歌舞伎化ということで話題の新作歌舞伎NARUTOです。ワンピースで活躍した巳之助、隼人をナルト、サスケに据え、G2さん脚本・演出、脇は澤瀉屋やワンピース歌舞伎の嘉島・市瀬で固め、ラスボスのマダラは愛之助・猿之助のダブルキャストで集客力アップ、セットにはお金かけすぎずという、採算をきっちり考えたと思われるプロダクション。

NARUTOのコミックは、家にあって途中まで読んだきりでしたが、きちんと説明があるのと、主な人物の関係や九尾の狐の件は記憶にあったので、わかりにくいこともなく見られました。

やっぱり、巳之助、隼人がキラキラしていていいです。巳之助はほんとに主役として安定。化粧も合っててとてもかっこよくて、動きもかわいい。パンフレットの写真はキメているんですが、ほんとは笑顔がナルトらしくて似合ってました。隼人は影のある役なんですが、ほれぼれする美形。こういうのも何ですが、声も多彩になって、うまくなってた感強かったです。二人とも、立ち回りほんとにがんばってましたし、本水場面もちょっと素の感じもよくて見ごたえありました。これを1日2回とは!

猿弥さんの自来也がいいのは当たり前として、意外性が評判な笑三郎さんの大蛇丸が初めて見る中性的な悪役で、前半ほぼ主役ではという大活躍。綱手の笑也もきれいでした。ワンピース組の、嘉島典俊のカカシ先生もよかったし、市瀬秀和のイタチはビジュアルも立ち回りのスピードもかっこよかった!梅丸のサクラもかわいかった。

猿四郎さんの3代目火影、國矢さんのカブト、段之さんのうたたねコハル、安田桃太郎さんの鬼鮫。

そして猿之助マダラ、最初その仮面の人物がマダラだとは思っていなくて(1幕<弥次喜多やってる時間>から出てたので)、仮面をとる動きに入るところでやっとわかって、驚いてしまったんですが、禍々しく、迫力半端なかったです。そのゆっくりとした動作、舞台の空気の持って行き方を知っているなあと感動。

納涼歌舞伎を見たばかりだけに、さっきまでチャラチャラ喜多さんと花魁の早替わりをやっていたはずなのに、見得の迫力、同じ人とはまったく信じられません。久しぶりに見るカーテンコールでは、上の階まで目線を配り、最後まで役のまま素に戻らないのもいつもの通り。しかしあくまで主役に敬意を払い、必要以上に目立たないのもこの人のあざといまでの賢さ(←好き)。

さて、作品というと、うまくまとめてはいるものの、コミックが長編で設定が複雑になっているナルトとサスケの生い立ちについて、舞台であんなに詳しく説明しなくてもいいのでは、という感じがしました。とくに2幕の説明は冗長で見せ場が少ない。九尾が入っててたいへんだ、というのでいいじゃないかと思うんですよ。役者さんたちを見るほうに忙しくて、ある程度わかっている説明がちっとも頭に入ってこなくて(すみません)。その意味でも、三忍が出ている場面のほうがおもしろかったです。大蝦蟇とかもっと出せばよかったのに。

そしてやっぱり音楽問題。立ち回り時や芝居のところでのバックの音楽がちょっと気になるんですよね。せっかく六太夫さんの語りもよかったし、歌舞伎の下座というのか黒御簾音楽もあるのに、録音エレキギターの音楽が逆に安っぽく感じます。

いろんな意味で、ワンピース歌舞伎の遺産でひとつ作り上げたって感じですかね。でも巳之助、隼人、梅丸はこれで自信をつけて、これからの活躍を見せてほしいと思いました。

(おまけ)

Reserve_2018_08_bento_naruto_ ギリギリに駆け込んだので、お弁当がお寿司しか残ってなくてどうしようと思っていたら、ナルト弁当とサスケ弁当は、予約販売できたんですよ。代金払ってチケットをもらうと、次の幕間で受け取るしくみ。殆ど時間のロスはないうえに、ご飯がほんのりあったかくて出来立て感。ナルト弁当はご飯少なめ、おかず多めでヘルシーで美味でした。

八月納涼歌舞伎第2部「東海道中膝栗毛 再伊勢参?! YJKT」「雨乞其角」

201808     納涼歌舞伎第2部です。弥次喜多第3作、これまでで一番面白い!と評判でしたので、待ち焦がれてました。買い足そうにも、2部は早々に完売していましたから。

幕が上がると、いきなり巨大な喜多さん(猿之助)の葬式写真がバーン、松竹座の女殺油地獄の片づけ中に油で滑って頭を打って喜多さんが死んだことを、皆が悲しんでいます。弥次さん(幸四郎)があまりに泣き続けるので、梵太郎(染五郎)、政之助(團子)は、お伊勢参りをして喜多さんとの思い出を辿るとともに、天照大神さまに復活を願おうといい、3人は再び旅に出ます。まだ成仏できない喜多さん幽霊も3人を追うことに…。

さて、前述のとおり、期待値はかなり上がっていたのですが、それ以上に最高に楽しめました。まず、七之助、獅童、中車の早替りが何度も。タイトルにも「早替り相勤め申し候」とありましたが、こんなにこの3人に無理やらせて、とおかしくて。また、3人の持ち味のバランスがよくて、そろっているだけで面白いんですよね。しかし、3部でも主要なキャストの3人、後半は出番がなくなっていて、配慮してるんだなと思いました。

猿之助の幽霊、最初の場面は待ってました、という感じ。贔屓目ですが、歌舞伎座の広い舞台が、猿之助ひとりに支配されたように見えてゾクゾクしました。いや、ほかの役者ばかりではなくて、ちゃんと自分の見せ場も作ってるじゃありませんか。花道の引っ込みもちょっと長めでうれしかったです。

そして花魁赤尾太夫!貼り眉なんで、アップで見ちゃうとアレですが、やっぱり豪奢な拵えの猿之助の女方を見るとそれだけでありがたい気持ち。幸四郎との絡みは、ああん吉田屋、籠鶴瓶、と夢が膨らみました。花魁で出るのはうわさで知っていましたが、こんなにたっぷり出てくれるとは。さすがに早替わりの本家だけあって、難易度の高そうな花魁・幽霊を驚異の早さで行ったりきたり。

もちろん、野次さんも、あの間抜けな顔とのんきな性格をつらぬいたままながら、軽やかにかっこいい場面もたくさんあって、さすが幸四郎のもともとの華やかさを活かしているなと思いました。

そして若手の舞踊!千之助の藤娘、超かわいいし、鷹之資、玉太郎のSUGATAコンビも「三番叟」を思い出してムネアツだったし、橋之助ほか成駒屋3兄弟も振りがよくて楽しませてもらいました、米吉も最年少花車方か。右近ちゃんがかわいくて、お芝居もしっかり入ってやっているのに感心。右團次さんの親バカぶりも無理ないんですが、それもパロってて最高です(なんで右團次さんが、普通撮れないアングルの写真をブログにアップしているのかがわかりました)。弘太郎・鶴松の犬猫コンビも達者でした。

ハチャメチャではありますが、染團のしっかり坊ちゃんたちがストーリーを押さえてて、あまり脱線しすぎないバランスもよくできているなと思いました。7月は27日まで松竹座だったのに、帰ってきてからお稽古して演出して、と猿之助の頭の中はどうなっているのか(もちろん幸四郎も超人か、ですよね)。

第3部はシネマ歌舞伎にならないそうで、ファンはがっかりしているんですが、これまでのようにシネマ用にがっつり編集しなくていいから、記録映像としてDVD三部作買わせてくださいよ、松竹さん。

さて、2時間弱のやじきたのあとは、「雨乞其角」。其角(扇雀)が雨乞いをする短い舞踊ものです。

ちょっとコテコテした弥次喜多の後で、すっきりとした夏着物の扇雀さんに、船頭 歌昇、とさわやかな夏の風が吹くような舞台。彌十郎が芸者新悟、廣松を船に乗せて行き会います。

最後は若手と其角が踊りますが、評判通り、鷹之資が目を引きます。多数の若手の中からいい役がついて、ファンがつくというのはたいへんなことなんだな、とちょっと思ったりして。

八月納涼歌舞伎第1部「花魁草」「龍虎」「心中月夜星野屋」幕見

201808    八月納涼歌舞伎、1部は幕見通しで見ました。今回ちょっとネタバレ的な感想です。

1つめは「花魁草」。安政大地震から避難する途中で出会った、吉原のお蝶(扇雀)と大部屋役者の幸太郎(獅童)。百姓米之助(幸四郎)に助けられ、栃木で一緒に暮らし始めますが、幸太郎の元の座元勘左衛門(彌十郎)や芝居茶屋のお栄(萬次郎)と再会すると、幸太郎は役者に戻って引き立てられることに…。

扇雀さん、過去があり、幸太郎にまっすぐ飛び込んで行けない(叔母として暮らしています)、切ない年上の女を熱演。幸太郎に近づく若い女に嫉妬するかわいさもあり、泣けました。獅童がまたかわいげのあるまっすぐないい男。ちょっと不器用なせりふ回しが合っています。

座元の彌十郎が、「これからは若い者にもっと役をつけて、新しい芝居をしなくては」ということを熱弁するのですが、納涼歌舞伎に合っていて、ちょっとじーんとしてしまいましたよ。

次は幸四郎・染五郎親子の舞踊「龍虎」。銅鑼の鳴り響く勇壮な舞踊で、染五郎くんは必死についていきますが、二人並ぶと幸四郎の芯のぶれなさ、動きの余裕がわかります。豪華な衣装もとても重いのだそうですが、とにかくこれでもか、と体を使う迫力の一幕でした。

最後は落語をもとにした「心中月夜星野屋」。相場でしくじった星野屋の旦那照蔵(中車)は、妾おたか(七之助)に心中をもちかけますが、おたかの母お熊(獅童)は、死ぬふりだけすればいいとけしかけます。

この3人のかけあいが面白い!中車のがむしゃらな感じ、七之助の「まだ死にたかない」という生命力にあふれたおたか(こういうちゃっかりした女の役、かわいげもあって、ほんとにうまい)、調子のいいお熊、それに口ききの藤助(片岡亀蔵)と、ユーモアのある役者がそろっていて、場内も大笑い。獅童の女方は、長身ですが、鼻筋が通って昔は美人といっても通用しそうでなかなかよかったです。

ただ、見終わった後、旦那とおたかがよりを戻さないのかな、って思っちゃったんですよね。照蔵は正妻を7年前に亡くしていて、おたかを家に入れるつもりは十分あったんです。最初の場面の息の合った様子をみると、いかにもお似合いで、おたかがちょっとくらい不実だったからって、別れる必要ないじゃないって。この後、照蔵は「しょうがねえ女だな」と言って、またおたかの家に行き始めるって、思いたいです。

さて、幕見で全幕通しは初めてでした。9:42頃並んで、40番。10:30発売後すぐに入場して前列中央に席をとってから、お昼を調達してすぐに開演。係員の方は、番号も正確でしたし、列がなるべく日陰になるようにして、定式幕模様のうちわを貸してくれました。1部は全幕立ち見が出る盛況で、役者の皆さんも、やりがいがあったと思います。

丸山伸彦監修「演目別 歌舞伎の衣装ー鑑賞入門」

201808           歌舞伎でイヤホンガイドを使うべきか、という話を友人としていた時に、「ガイドは衣装の説明とかしてくれるけど、そんなの本読んで勉強すればいいんだし」というのを聞いて、そうだ、衣装の本を読んでみよう、と、とりあえず買ってみたのがこの「歌舞伎の衣装」です(イヤホンガイドはやっぱり舞台を楽しむには邪魔になるんですよねえ)。

この本は、題名通り、演目毎の衣装の写真と解説で、歌舞伎十八番、時代物、世話物、所作事、松羽目物と、それぞれ代表的な作品を4、5本ずつ取り上げています。最近の舞台の写真だけでなく、坂東三津江(1809-1907、長命ですね。幕末に、芝居小屋に行けない大奥の女性たち向けに歌舞伎を披露した方です)の使った豪華な衣装がふんだんに掲載されています。また、三越伊勢丹が、貴重な衣装を保存しているそうで、その写真も掲載されていました。

今の歌舞伎の衣装は本当に鮮やかで美しいと思うのですが、(若手役者の自主会でも、松竹さんが立派な衣装を使わせてくれるのはいいですね。小さな公演だから衣装がシャビーということがないです)、この、幕末の三津江さんの衣装も素晴らしい。ずいぶんたくさんのお役を演じていて、どんなにうまい役者だったのだろうと思います。

2014年3月発行の本ですが、舞台写真の時代はいろいろで、17世勘三郎の人を食ったような河内山とか、七世梅幸の春興鏡獅子とか7世芝翫の娘道成寺等、話にはきく名優のくっきりした写真が多く、興味深いです。あとはとにかく玉三郎さんと十二世團十郎さん。吉右衛門濡髪と又五郎長吉の角力場なんてのもあります。

演目は、見たこともあるものも多いので、裾にこんな柄があったのかとか、背中にこんなに大胆なモチーフが描かれていたのかとか、弁慶格子や童子格子の違いなど、眺めていて楽しいです。女方の役割のちがいによる鬘、衣装の違い等も解説されていますし、浮世絵に描かれた、江戸時代の衣装等もたくさん。文様、格子、色(團十郎茶や芝翫茶など)、歌舞伎役者が流行の発信源だった、という解説ページも楽しかったです。

B4サイズ、オールカラーの110pほどの本なんですが、もっとページ数があればいいのに、全ての演目の衣装を解説してほしい、と思ってしまう本でした。

七月大歌舞伎「源氏物語」大詰幕見

2018072      今年も七月の歌舞伎座は海老蔵奮闘公演、夜は「源氏物語」通しです。とにかく人気で、チケットは昼夜完売。せめて幕見、と思ったら、2幕開始前に行ったのに、発売直後に完売したそうで、大詰だけ見ることになりました。1幕1時間20分、2幕50分、大詰30分の、30分のみ。

朱雀帝(坂東亀蔵)が弘徽殿太(魁春)に、光源氏を明石から呼び戻さなければと言っているところからです。亀蔵、彦兄が出てないのに珍しい。魁春さんの降ろし髪は珍しく、ちょっと班女御前みたいで素敵でした。

光源氏(海老蔵ーちょっと面やつれした感じもしますが美しい)が登場し、アンソニー・ロス・コンスタンツォ、ザッカリー・ワイルダーの美しい歌が聞けました。30分しかないから聞けないのかと思ってたのでうれしかった!歌詞がわからないのは、芝居としてはやや残念(←義太夫はともかく竹本はわかって聞いていないくせに)。

源氏が帰ってくることになり、祝いの踊り。鷹之資が一際キレのよい踊りを見せると聞いていましたが、たしかに楽しげで、もっと見ていたいと思わせてくれました。必要以上に高い舞台装置の上に上ってしまって、上からは足しか見えない状態になっちゃいましたが。

代わりに前で踊っていた村娘の右若ちゃんに注目。源内侍役でも活躍だったそうですが、源内侍のエピソード好きなので、残念でした。

カーテンコールには、玄くんも。大きくなったなー。

実は源氏物語は大好きで、ストーリーはよくわかっているので、次に海老蔵がやることがあれば見たいと思ったことでした。

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