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歌舞伎

團菊祭五月大歌舞伎「寿曽我対面」「勧進帳」「め組の喧嘩」

201905_2  團菊祭昼の部です。

 一つ目は「寿曽我対面」。令和の御代の始まりの最初の演目ということで、おめでたい曽我物をもってきたわけですね。昔は新春に必ず上演されたそうですが、私は最初に見たのが今年新春の歌舞伎座(「雪の対面」といういわばバリエーション)、新春浅草歌舞伎 、しかし今年はすでに3回目。

 若い座組で、曽我十郎(梅枝)、五郎(萬太郎)、小林朝比奈(歌昇)、大磯の虎(右近)、化粧坂少将(米吉)、八幡三郎・秦野四郎は鷹之資・玉太郎のSUGATAコンビ。そして工藤祐経が松緑。たしかにこの中だとちょっと年上で座頭格ですね。

二人の女方が美しくかわいくて、舞台が華やかです。朝比奈の歌昇は、最初誰だかわからなかったんですが、又五郎さんに台詞廻しが似ていて、立派な朝比奈でした。こういうお役もしっかりできるんだな。萬太郎の五郎は熱演ですが、やっぱり先輩たちはただ普通にやっているように見えて、たいへんな役なんですね。がんばれ。最後に新左衛門の坂東亀蔵出番ちょっとでもったいない。

二つ目は「勧進帳」海老蔵弁慶を見るのは初めて。聞いてはいたけれど、なんと表情豊かで、動きも美しい弁慶。独特の台詞回しも今回はさほど気にならず、ん?と思うところは少なくて、やはり若い頃から上演を重ねているだけあるなあ、と思いました。一行への合図などもはっきり見せたりして、観客にわかりやすい形に工夫しているようにも見えました。ただ、富樫の問答に答えたり、舞を舞ったりいろいろするのが得意気で、海老蔵ショーを見ているような気持ち。義経に対する敬意や思慕の念が足りないようにも思いました。

菊之助の義経は絶賛されてますが、美しく品のある義経。この一行にあっては、大事にお守りしたい存在です。松緑の富樫も立ち姿が美しく、海老蔵弁慶を見守るようで、私が思っていたよりもずっとよかった。四天王は右團次、九團次、廣松、市蔵と海老蔵公演を支える役者たちですが、右團次さんはもちろん、廣松の声がいいのに驚き。

正面の長唄、囃子方が並び、音楽がまっすぐ届き、その前の役者の美しい衣装、何度か見てきて、勧進帳の演目のすばらしさを感じられるようになってきた気がします。勘九郎がやってくれないかなあ。

三つめは、「め組の喧嘩」2015年の團菊祭でも見ていますが、菊五郎劇団でもベスト3に入る好きな演目。前回から4年たっていますが、菊五郎おやじさまがダイエットで少しほっそりされたので、むしろ若々しいくらいで、貫禄と男気のある誠に立派な辰五郎。しかも、この間、彦三郎・亀蔵兄弟や、松也、右近、萬太郎たちの役者ぶりが大きくなって、ますます充実して見ごたえのある、逆にぜいたくな一幕となりました。ほかにもいっぱい出ているんですが、(チラシの名前の数がすごい!)、萬次郎さんの次男光くんも久々の出演でした(それにしても去年の松竹座のめ組とずいぶん印象がちがう)

お仲(時蔵)になぜ喧嘩をしない、となじられながらふて寝した振りをして水杯を交わす、辰五郎の家の場が大好きなんですが、今月は倅又八に、亀三郎ちゃんが出ていて、生意気でお父さんが大好きな又八を熱演。これまで達者な子役ちゃんたちが、一人前の座り方をして笑いをとるのを見てきましたが、かめさぶちゃんは、浮かず7に芝居の中に溶け込んでいて、とっても上手でした。夜の部で丑之助が菊ちゃんに肩車されますが、かめさぶちゃんも彦兄に肩車されてました。

喧嘩の場面は工夫されていて見て楽しいのですが、3階から、回り舞台の向こう側まで見えるのは、なかなか新鮮でした。揃いの粋な法被の、宝塚かというような大勢のめ組、相撲取りたち。盛り上がったところに、甚三郎(歌六)が留め男として出てきます。ひーかっこいい。歌六さん、これから左團次さんのやってきたようなお役もやっていくんだろうな。

ということで、歌舞伎を代表する演目が並んだ昼の部で大満足でした。それにしても、菊之助ってば、勧進帳は台詞は少しですが、ずーっと舞台で形を作っている役、め組はいなせな若い衆、夜の部は、出演者皆に気を遣う息子の襲名披露、そして1時間を超える大曲娘道成寺、と、大大活躍。へんなドラマに出ている暇はないですね(すいません)。

團菊祭五月大歌舞伎「鶴寿千載」「絵本牛若丸」「京鹿子娘道成寺」「曽我綉俠御所染 御所五郎蔵」

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  じゅふたんの丑之助襲名で話題の團菊祭五月大歌舞伎夜の部です。前方中央付近の席で、堪能しました。盛りだくさんだったので長いですよ。

ひとつ目は、「鶴寿千載」。昭和天皇即位の大礼を記念して作られた、筝曲の舞踊を令和への寿ぎとして、時蔵、松緑の大臣と女御を中心に、梅枝、歌昇、萬太郎、左近で華やかにおめでたく。珍しかったのは、筝も唄も、女性の方がほとんどだったこと(ただ声が少々小さかったような)。

2つめは、「絵本牛若丸」。牛若丸(丑之助)の陸奥への旅立ちのお話ですが、菊五郎劇団に、吉右衛門、時蔵、雀右衛門、松緑、海老蔵と出演者が濃すぎます。囃子方も、巳太郎さんの三味線、葵太夫さん、傳左衛門に、巳津也さんも!すでに評判になっていますが、吉右衛門さんが終始微笑み顔。丑之助が片足を上げる形が決まった後、さらににこやかになったりして、キッチ―見ているだけで楽しいです。

(先週の「ぴったんこカンカン」で、じゅふたんと菊之助を中心に、菊五郎ひーま、キッチーがゲスト、キッチ―は、自分が養父に連れてきてもらっていたという<かわいがられていましたね>東京會舘のドーバーの舌平目をじゅふたんに食べさせ、爺バカ<本人談>をからかわれていました。唯一の男の子の孫で、お顔も音羽屋より播磨屋似ですもんね)。

鬼一法眼三略巻(一条大蔵譚)」を知っていると、鬼次郎、お京、鬼一法眼、鳴瀬が出てきて、おおーと思います。お京と鳴瀬は、大蔵卿の命で、牛若丸の旅立ちを常盤御前に報告するために来たのだそうです。弁慶の菊之助、隈取が意外に似合っていてステキ。

丑之助、なかなか堂々としていて、立ち回りも見得もがんばって、かわいらしいです。最後に花道でくたびれた、と菊ちゃんパパに肩車してもらうのもご愛敬。満員のお客さんも大喜びでした。

3つめは、いよいよお目当ての菊之助「京鹿子娘道成寺」。シネマ歌舞伎で「五人娘道成寺」を見たことはありますが、舞台で見るのは初めて。今もっともこの演目を歌舞伎座でやるのにふさわしい、菊ちゃんの道成寺を楽しみにしていました。所化に、権十郎、歌昇、右近、米吉、廣松、男寅、鷹之資、玉太郎、左近

白拍子花子の花道の出の七三、上手の鐘を見る一瞬、執着の表情に凄みがあります。本舞台に出てからは、終始目の前で華やかな踊り。とにかく今の菊之助の美しさ、華やかさ、丁寧な舞踊、次々と変わる衣装、が目の前で繰り広げられて、目と心が鷲掴みされるようでした。今を盛りの歌舞伎役者の舞踊、すごい。

最後の白い衣装で、あ、今、と思った人に非ざる表情、そして鐘に上ります。ああ、あの顔をこの席から見られてよかった!

最初の方の、花子の拵えの時間稼ぎに、右近、米吉、歌昇たちが日替わりでことば遊びをしているようで、私が見た日は米吉の「まい」尽くしでした。時間は拵えの状況によって変わるようで、考えながらいうセリフもかわいらしかったです。

「ぴったんこカンカン」で、菊ちゃん、じゅふたん、安住さんが書いた茶色の自分の名前を使った松もはっきり見えました。

最後は、「曽我綉俠御所染 御所五郎蔵」2017年6月に仁左衛門の五郎蔵、左團次の土右衛門、雀右衛門の皐月、逢州 米吉で見ています。今回は、五郎蔵 松也、土右衛門 彦三郎、皐月 梅枝、逢州 右近、花形屋悟助 橘太郎。

この若い座組、よかった!松也と彦兄は声がよく、並ぶとそれぞれの個性が際立っていましたし(といっても最初の出の割台詞や対立はやや長い、両花道じゃなくて、土右衛門側は上手側の舞台に並ぶスタイル)、梅枝の述懐の長台詞もすーっと入ってくるのがさすが。右近もきれい。そして借金取り立てにくる橘太郎が達者で動きが面白く、また2幕では、土右衛門の手下たち、新十郎、左升、荒五郎、吉兵衛の4人が、台詞のキレがよく、4人そろっての雰囲気が面白くて、すごくよかったです。荒五郎さんは團蔵さんのお弟子。

この演目、後半はけっこうむちゃくちゃなストーリーながら、皐月と五郎蔵の、一種のすれ違いが切なく、五郎蔵の怒りもわかるような描き方がいいんですよね。團菊祭なんだから、海老蔵が五郎蔵で出るというのもありだったような気もしますが、松也がかっこよかったからいいや!

四代目市川猿之助出演記録

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  四代目猿之助丈の、初舞台からの出演記録表(猿之助年表pdf) を作ってしまいました(恐縮ですが、個人でご覧になる以外のご利用はご遠慮くださいませ)。

   歌舞伎を見始めたのが2012年で猿之助襲名の年、それからさらに数年たって、好きな歌舞伎役者さんがたくさんできた中でも、四代目がとくに好きだなあと思い始めたのがつい最近(2017年春頃)なので、web情報や本でこれまでの軌跡をたどってきたのですが、生来の記録ヘキから、まとめたくなって。

歌舞伎公演データベースから公演をチェックし、ドラマ等は「僕は、亀治郎でした。」やwikipedia等を参考にしています。

単発の舞踊会等は、ネットで調べようとすると、告知は多いのですが、過去の公演の一覧等は意外とないので、けっこうたいへんでした。TVのバラエティで入れておきたいものもまだありそうです。間違いなど、お気づきの点があればお知らせくださいませ。

ここまでまとめると、いろいろな発見がありました。

子どもの頃は、三代目の興行で、子役で出ています。初御目見は4才で碇知盛の安徳帝、その後、「実盛物語」の太郎吉や「牡丹景清」の娘人丸(阿古屋の娘ですね)、「加賀見山再岩藤」又助弟志賀市など子役の大役を務めていますし、10才で奴道成寺も踊っています(段之さんの歌舞伎座ギャラリートークで映像を見ましたがすごかった!)。亀治郎襲名は7才、「御目見太閤記」の禿たより。

舞踊が得意な人ですので、数々の舞踊発表会に出ています。NHKで「供奴」が放送されたりしていますね。ご本人も、ほめられるのでうれしくて舞踊が好きになった、と語っています。10代後半は、「子守」や、先代との「連獅子」での仔獅子、右近さんの鳥居前での静御前などがありますが、大学に入ってからは、学業優先で殆ど本興行での出演はなく、舞踊会等ばかりです。歌舞伎役者は大学からは本格的に本興行に出演する人が多く、ここまで学業優先は、澤瀉屋ならではかも。

そして大学4年以降、それまでを取り戻すかのように、スーパー歌舞伎、本興行とがんばっていきます。22才で名題昇進。年4,5か月のスーパー歌舞伎(お稽古も長い)と普通の興行。そういう中で、三代目の勧めから、自分自身でプロデュースする力と自分のために協力してくれるスタッフを得るために、2002年(26才)の夏に第1回亀治郎の会を開催します。

そして翌年の2003年7月の歌舞伎座を最後に、父段四郎とともに、三代目の元を離れます。知ってはいたけれど、当時大人気だった猿之助劇団を離れるというのは、ものすごい決断だったと思います。段四郎さんが一緒に、というのは、やはりお弟子さんは皆段四郎さんのお弟子さんたちであり、亀治郎一人で独立させることができなかった親の情なのでしょうか。ここまで兄を支えてきた段四郎さんは、息子の才能を早くから認めて、期待してきたのでしょう。

幸いにも1999年からはじまった新春浅草歌舞伎での大役への挑戦は続いていましたし、菊五郎劇団や海老蔵襲名公演への出演、そして亀治郎の会での努力もあって、独立の2年後には、「NINAGAWA十二夜」で麻亜役を演じ、高い評価を得ます。2006年3月には、三谷幸喜のPARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」で染五郎・勘九郎とともに主要人物を演じ、コミカルな役柄に開眼しました。

2007年には、初めての映像作品にして大河ドラマ「風林火山」の武田信玄という準主役。3月の團十郎さんのパリ公演にも帯同し、「勧進帳」の義経、「紅葉狩」の山神を好演するとともに、暁星仕込みのフランス語の口上で沸かせました。2008年になると、地方公演では、かなりいい役もつくようになってきます。

2009年は、まず、テレビ東京のお正月ワイド時代劇「おんな太閤記」の秀吉役を務めました。「NINAGAWA十二夜」がロンドンで再演、またその凱旋公演が演舞場、松竹座と2か月ありました。3代目との交流が復活し、2010年新春浅草歌舞伎に向けた「悪太郎」のお稽古もみてもらいます。

2010年は浅草に続き、博多座、南座、こんぴら歌舞伎と、澤瀉屋の猿之助四十八選に奮闘します。秋には蜷川幸雄演出の「じゃじゃ馬馴らし」で主演。この辺りで、猿之助襲名が確実になってきたといえましょう。

2011年新春浅草歌舞伎公演中に、三代目から襲名を告げられ、5月に「四の切」初演、9月に猿翁、猿之助、中車、團子のスーパー襲名が発表されます。36才でした。

ここ辺りでやっと私の四代目認識とつながるんですね。

どんな世界も、一人を追いかけることで、その世界がより広く理解できるような気がします(アダム・パスカルを追いかけることで、ブロードウェイの作品の作り方やテコ入れ、当たらなかったときの非情なクローズをみることができました)。四代目の軌跡は、人気役者の一門の御曹司の成長の過程をみるという意味でも興味深かったです。

さて、これからはリアルタイムで見ていくことができるのは幸せといえましょう。

喜熨斗勝「歌舞伎 芸と血筋の熱い裏側」

201904_2  歌舞伎評論家としてときどきコメントを目にする、喜熨斗勝氏の「歌舞伎 芸と血筋の熱い裏側」。著者は初代猿之助の四男小太夫の息子とのことで、四代目からみると曽祖父初代猿翁の甥、仲良しの貞子さんの従兄に当たります。

タイトルは、中川右介「歌舞伎 家と血と藝」によく似ていますが、出版社も講談社で同じなのか。

内容は、とりとめのない歌舞伎関連エッセイという感じなのですが、面白かったのは、歌舞伎の小道具をやっていたことがある舞台制作の手塚優子さん、関洋子さんとの対談。と、最後の父小太夫さんとのことを書いたあたり。

手塚さんとの対談では、梅丸の小さいころや、福助さんのいい話が出ていましたし、先代の歌舞伎座で洗い場が外にあってたいへんだったことや、浅草歌舞伎で男女蔵さんにお弟子さんがついていなかった(左團次さんの方に行っちゃってた)ので手塚さんがサポートしたが、亀治郎にはたくさんお弟子さんがついていたこと(この頃は先代の下を離れているころですから段四郎さんが後ろ盾でよかったですね)など。関さんとの対談では、歌右衛門さんと福助さんのこと、海老蔵のこと、勘三郎さんの思い出や、平成中村座でのお弟子さんたちの公演の思い出などが興味深かったです。

最後の著者と父であり初代猿翁の弟である小太夫さんとのことは、その時代に苦労した一歌舞伎役者の記録として貴重でした。

残念な点もけっこうあります。例えば、直侍のそばを食べるくだりが違うとか、海老蔵と獅童への思い入れ強すぎるとか、勘九郎・七之助への評が辛めなんですが、その内容が、たとえば、七之助はか弱い女性しかできない(菊之助の方が男を手玉に取る女性もできる)とか、昨年12月に出たばかりの本なのに、ここ数年の七之助の舞台を見ていないのか?って感じです。

ということで、歌舞伎に興味のない方が読んでも、興味がわくわけではないし、歌舞伎をよく見ている人は違和感のあるところが多いし、だれがターゲットなんだという感じの本でした。

 

 

四月大歌舞伎「実盛物語」「黒塚」

2019043  歌舞伎座夜の部、1階前方センターでの観劇です。

 最初は、評判高い仁左衛門さまの「実盛物語」2017年に愛之助の実盛で見ています。そのとき、愛之助がニザ様に似ていると思ったのですが、本家ニザ様ですよ。さすが、この美しい衣装がお似合いの美しいニザ様。

葵御前の生んだのが腕だという小よしの言葉を、うまいこと言って瀬尾十郎(歌六)に信じさせてしまうところから、小万の腕を切り取る次第の目に見えるような語り口、義太夫への乗り方、太郎吉への情け、馬に乗ったときの姿の美しさ、と、たいそう立派な実盛。長台詞も、ニザ様が語るとすんなり入ってくるのはどうしてなんでしょう。

また、この一座の配役が見事で、九郎助夫婦が松之助、斎入、この二人は、もう最高の九郎助夫婦じゃないでしょうか。松之助さんは、うまいというあざとさなく、本当にその芝居に生きる人物を見せてくれて、大好きです。小万が孝太郎、葵御前の米吉が、かわいさを抑えて、気品のある葵御前を健気に演じていました。。

歌六さんの瀬尾は、表情豊かで、意外に黒目が大きくてかわいい瀬尾。ずっしりとした貫禄があって、情愛があって、まあ、何やっても歌六さんはまちがいありませんよ。

太郎吉の寺嶋真秀、まほろんがずっと出ずっぱりなんですが、台詞も多いし、見得だの瀬尾を斬るだの、本当に重要なお役。そして、瀬尾の述懐や、実盛の馬乗りなどをじっと見る顔が、まあ小学校入りたての坊ちゃんとは思えない落ち着き。先日「サワコの朝」に、しのぶさんと一緒に出ていましたが、天性の明るさ、豊かな表情、芝居好きと見える様子、たぶん大柄な美丈夫になりそう、既に日仏英のトリリンガルと、本当に期待膨らむ坊やですよ。直系のじゅふたんは来月丑之助という立派な名をもらいますが、まほろんも早く何か名前もらってあげて!

2つめは、いよいよ「黒塚」2015年1月歌舞伎座は幕見。2017年1月新橋演舞場は2階右、今月もこれまでは幕見だったので、1階で見るのは初めてでしたが、もう、四代目に圧倒されるというか、四代目の世界に引き込まれて終始 掌の上でもてあそばれているような気持ちになりました。

1景、阿闍梨祐慶(錦之助)一行と岩手(猿之助)のやりとり。岩手の豊かな表情に、一瞬も目が離せません。衣装もきれい。祐慶、もっと口跡がよければ、と思いはしたものの、尊い美しさに、ありがたい気持ちになります。種之助、鷹之資は、当初と比べると、驚くほど力強くなっていて、踊りのうまい二人だけに、どの場面も美しかったです。特に鷹之資は、ちょっとぼっとしたお役の先月とくらべて、メリハリのきいていること、化粧もきれい。

2景。筝と三味線、尺八の力のこもった演奏に、たっぷりの岩手の舞踊。だんだん救われる喜びにあふれていくのが、切なく、でも楽しく、耳も目も喜びます。自分の影と戯れるのは見えないのですが、あの大きな月と重なって見える岩手、前方ならではの迫力。舞台写真だと月の下に岩手がいますが、岩手の後ろに月が見えるのは、新鮮でした。強力太郎吾(猿弥)とのくだりも見事、高さのあるジャンプ、背面宙返りの退場。猿弥さんの体型からは驚くようなキレのある動き。

そして、いよいよ第3景。阿闍梨一行の容赦ない調伏に、だんだん弱る鬼女。花道での仏倒れ、ものすごく素早く体勢を整えていました。きっちりと計算された展開に、もっていかれます。最後は小さくなってしまいます。

能を題材に、古風ではありますが、要領よい説明や素早い場面展開、次から次へと見せ場が続くこの作品、全く古くありません。囃子方、唄の思い入れ、音楽と舞踊が一体となった充実感、四代目、猿弥さんの身体能力を惜しげもなく見せてくれるありがたさ。

惜しむらくは、劇評の先生方、「黒塚は素晴らしい」前提なのか、照明を変えたとかなんとか小さいことについて書いているんですが、見ていない人に、まったく良さが伝わってないですよ。歌舞伎には、歌舞伎が好きな人だけが受け入れられるものと、歌舞伎のみならず舞台芸術が好きな人に十分アピールできるものとがあると思うんですが、まちがいなく、黒塚は後者だと思います。

そして、こんなにも激しい演目を本興行でやれるまでに快復してくれた四代目、本当にありがとう。

(最後の幕見)

目の前で見て、ああ、もう満足と思ってはいたものの、楽日近くに幕見に行ってしまいました。こんなにリピートできるのも、歌舞伎座のありがたいところ。立ち見の番号でしたが、下手で座ることができました。

この日はイヤホンガイドをを借りてみました。衣装の説明は柄のことまでは細かくて覚えていられないし(水衣と能鉢巻だけ覚えてます)、役者名はわかるし、台詞の説明も黒塚は新歌舞伎で台詞がわかりやすいのでさほどいらないのですが、やはり舞踊は、長唄の歌詞と合わせての動きの意味を細かく教えてもらって、初めてわかることもたくさんありました。こんなにリピートするなら、早いうちに借りておけばよかったかも。でも1,2回見るだけなら、音楽をめいっぱい聞きたいですけどね。

解説をききながらじっくり見る2景は、岩手の心の高揚が胸に迫って、感動でした。

そして、3景は、イヤホンガイドも少なめ、台詞はほとんどないので、もっと話しても大丈夫なんですが、この熱演の前では、説明など不要ということをわかってくれてよかった。

ますます阿闍梨一行のチームワークというか動きが気持ちよく、鬼女とのアンサンブルが素晴らしい。そして、仏倒れの一瞬前に、戯れていた木の影が舞台中央に蘇ります。そのあと、驚異の後ろ向きジャンプをピークに、力尽きていく鬼女、終盤に向けて、ときどき岩手が顔を出すのがはっきりとわかります。鬼なのにかわいらしさがあって、切なくなります。ああ、これが最後の黒塚。

最近の素顔の猿之助さん、ちょっとあごのあたりがすっきりして、黒塚のハードな舞台のためなのか、でも充実感があふれていて、これからますます楽しみです。

 

シネマ歌舞伎「桜の森の満開の下」

201904_1   2017年の納涼歌舞伎「野田版 桜の森の満開の下」のシネマ歌舞伎版です。1回だけ見たのですが(その時の感想、野田秀樹の世界観とメッセージが、歌舞伎役者の魅力と衣装、美術、音楽とが見事に合体して、とても満足な舞台でした。そのときは、舞台全体と個々の役者を見るのに忙しすぎたので、ゆったり集中できるシネマ歌舞伎を楽しみにしていました。その後NODA・MAPでの「贋作 桜の森の満開の下」も見たので、比較して見たかったし。

 感想は、生の舞台のときと同じなんですが、2回目なので物語がよりすんなり入ってくるのと、じっくり見てもやっぱり勘九郎の耳男と七之助の夜長姫すばらしい。ひとつひとつの台詞が本当にさまざまなバリエーションで的確に発せられているし、とくに耳男の動きがおそろしく面白いのと、早回しかというくらいの素早さ。

歌舞伎美人の野田秀樹インタビューは大変興味深い内容ですが、女方である七之助が夜長姫を演じることで、サディストぶりがより際立っているといっています。もう魅力的な悪女をやらせたら七之助の右に出るものがあろうか。

オオアマ(染五郎<当時>)、マナコ(猿弥)、赤名人(亀蔵)、ヒダの王(扇雀)は記憶通りよかったですが、映像で見て意外に重要な役割をしているのがアナマロ(新悟)とマネマロ(梅花)。エンマ(彌十郎)、ハンニャ(巳之助)、青名人(吉之丞)、もよかったですし、そしてやっぱりエナコ(芝のぶ)がすごいんですよ。そのまま現代劇で歴史に残る役がやれそうな弾むような女。

早寝姫(梅枝)もいいんですが、先月のあの小町姫墨染を見た後では、この1年半で、彼がいかにめざましく役者ぶりを上げているかを感じました。アンサンブルの人数が多いのも、歌舞伎ならではの贅沢。

野田秀樹は好きで、いつ見てもテーマと表現とエンタテインメント性のバランスのとれたきっちりした芝居を見せてくれると思うんですが、やっぱり歌舞伎は何かひとつその上を行く力があって、(納涼で見たとき、「いつもの野田秀樹の芝居は役者がパーツに見えるけれど、歌舞伎では役者の光が強い」と感じました)、少なくともこの作品に関しては、歌舞伎の方が好きだなと思いました。

映画用の小ぶりのパンフレットがいいです。扮装の写真もいいし、上演後ならではの、野田秀樹と美術堀尾幸男、衣装ひびのこづえ、美粧柘植伊佐夫、作調伝左衛門の記事が読めます。配役にもスタッフにも妥協のないプロダクションっていいですねえ。もっとチケットとればよかったと思わずにはいられません(でもこの月、1部は猿之助勘九郎の団子売があったし、2部は弥次喜多だし、日数は短めだったんですよね)。

 

 

 

四月大歌舞伎「平成代名残絵巻」「新版歌祭文 座摩社 野崎村」「寿栄藤末廣」「御存鈴ヶ森」

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 4月の歌舞伎座、昼の部です。バラエティに富んだ演目が並び、のべ5時間(!)でした。

 1つめは、「平成代名残絵巻(おさまるみよのなごりえまき)」。平清盛の屋敷、徳子(壱太郎)の入内を前に、叔母の淑子(笑也)、時子(笑三郎)、宗盛(男女蔵)、藤原基房(権十郎)らが集まっています。徳子と知盛(巳之助)が舞います。

 次の場では、遮那王(=義経、児太郎)が、鎌田正近(市蔵)とともに、母の常盤御前(福助)と対面します。打倒平家を誓う遮那王。福助さん、声に張りがあり、お元気そうでした。そして遮那王と知盛との対決、宗清(彌十郎)の仲裁。巳之助と児太郎の両花道の引っ込みが力がこもっていて、よかったです。

2つめは、「新版歌祭文」。野崎村は、まだ見ていない有名演目の一つでしたので、楽しみにしていました。めったに出ない「座摩社」からです。

大店油屋の丁稚久松(錦之助)は、手代小助(又五郎)に騙されて、商い先から受け取った金をとられてしまいます。久松は油屋の娘お染(雀右衛門)といい仲。そのお染に岡惚れしている佐四郎(門之助)に調子よいことを言って金を巻き上げる小助と法印(松之助)。

久松の人柄と状況を説明してくれる場なんですが、主役は又五郎さん。生き生きと小悪党を演じています。松之助さんの味のあること、門之助さんのおっとりとしたカモの若旦那。

そしていよいよ野崎村。久松が育ての親の久作(歌六)の家に、小助とともに帰ってきます。久松がだまし取られた金を、小助にたたき返す久作。小助が帰った後、久作に久松と祝言するよう告げられて喜ぶ久作の娘お光(時蔵)。そこへ久松を追ってお染がやってきます。

お光ちゃんが最初に出たところから、素直で率直ないい娘なんですよ。祝言の御馳走のなますのために大根を刻む(時蔵さん手つきがうまい)ときの弾んだ気持ち、お染への嫉妬。お染も跡取り娘ながら、久松に惚れぬいているかわいい女。二人が取り合うのも無理もない、優男の久松。酸いも甘いもかみ分けたわれらがお父さん、歌六。

ストーリーは知っていたんですが、実際に見ると、意外に明るい面白いやりとり。役者さんがきっちり役に合っていて、それぞれの気持ちがよくわかります。身を引くお光のせつなさ。そして留め男(男じゃないけど)の役割で出てくるお染の母お常(秀太郎)。別れて帰るがけじめ、というのがまた胸にしみました。

両花道で、花道からはお常・お染親子が舟で、仮花道から久松が駕籠で帰ります。残されるお光と久作。駕籠かきの着物を脱ぐコミカルなひとくさりの後で、皆を見送ったお光の慟哭がかわいそうでほろりとしました。

上記の通り、時蔵・錦之助、歌六・又五郎がそれぞれ好演なんですが、この2兄弟はいとこ同士、そして今年は彼らの曽祖父の3代目歌六の没後100年なんだそうです。今の歌舞伎になくてはならない個性的な役者さん、この演目は、何よりの追善になったことでしょう。

2019044_1 3つめは、「寿栄藤末廣 鶴亀」藤十郎さんの米寿記念の舞踊です。1月の松竹座では藤十郎さんと、雁治郎・壱太郎、扇雀・虎之介でしたが、今回は、雁治郎・猿之助・亀鶴・壱太郎で登場。亀鶴さんは初代雁治郎さんの曾孫で、雁治郎さんたちのまたいとこにあたるんですね。

それで、今月の「演劇界」のロングインタビューで、猿之助が「一門の皆様に入れていただいてありがたい」って言ってたのか。その通りで、5人がせりあがってくるのを見ると、「何でいるの」感。しかし、ちんまりしている藤十郎さんの隣で、薄黄緑の衣装が似合って、ここ最近では一番きれい、もうオーラで輝いているように、そして次期女王は私、みたいに見えました。藤十郎さんと四代目の芸風はかなりちがうように思えるのに、このインタビューでは、いくつも役を教わったと言っていますし、別のところでは、「何をきいても論理的に答えてくれる」とも語っていて、本当に藤十郎さんのことを敬愛しているんだなと思います。高齢の方となぜか仲いい四代目。

さらに歌昇・種之助、児太郎、米吉と若手が花を添えて。壱太郎は、上の5人でいるときには妹分に見えるんですが、衣装を変えて児太郎・米吉と並ぶとお姉さんに見えて楽しかったです。

歌舞伎美人ニュースの記念写真 →勢揃いの華やかなお写真!これほしかったです。

さて最後は「御存 鈴ヶ森」。これも見たかった演目です。ここでも又五郎の飛脚が、鈴ヶ森に集まっているならず者たちに身ぐるみはがされる場面から。そこへ国元を出奔してきた白井権八(菊五郎)が駕籠から降ろされ、賞金目当ての雲助たちが襲い掛かるのをバッタバッタと斬ります。立ち合いながらユーモラス。

2019042_1 そして、幡随院長兵衛(吉右衛門)がやってきて、「おわけぇの、おまちなせぇ」に始まる名台詞の場面。ひーかっこいいよ吉右衛門さん。吉右衛門さんの役の中でも、長兵衛はかなり上位に入るので、また見られて感動でした。

 余談ですが、左近くんがネットで「左近センパイ」と言われるようになったのは、俳優祭で金太郎権八とやった鈴ヶ森の長兵衛が大ウケで、そのあと松緑が長兵衛をやったからなんですよね。これだったのかあ(「左近襲名披露のニュース」に出てました)。

ということで、盛りだくさんの昼の部でした。

 

 

四月大歌舞伎「黒塚」「二人夕霧」幕見(追記あり)

  201904kabukiza   今月の歌舞伎座夜の部、初日の評判に待ちきれなくて(←いや、最初からわかってたか)、黒塚」の幕見です。先月の弁天娘よりも1時間開演が早いのでどうかと思いましたが、開演10分前到着でも座れました。桜満開の時期とあって外国人の方が多くてほぼ満席。

 ああ黒塚!私が猿之助丈のファンになったのは、2014年11月の明治座の女團七と2015年1月の歌舞伎座の黒塚がきっかけといえるんですが、その黒塚です。2017年1月の新橋演舞場の黒塚以来3回目ですが、今回は奥田雅楽之一さんや杵屋佐喜さんのTwitterで黒塚についてつぶやいているのを拝見したりして、囃子方の方々にも特別な演目なのだなと思いました。雅楽之一さんは、黒塚についての記事も紹介してくださっています。猿之助さんの、舞台を作り上げる全ての人たちとのいいコミュニケーションが感じられました。

安達ケ原に住む岩手(猿之助)のところに、阿闍梨(錦之助)一行が宿を求めます。錦之助さん、もう少し口跡がよければと思わないではないですが、やはり美しいたたずまい。種之助、鷹之資は、気合が入っていてとてもよかったです。鷹之資は、先月の浜松屋の宗之助よりずっと合っている感じ。

2景。一面のススキの原の前で、岩手が初めは静かに、そして阿闍梨に妄執を取り除いてくれる嬉しさに、楽しそうに踊ります。4階から、木と自分の影と戯れる姿がはっきり見えました。なめらかな手の動き、神様ありがとう、とまた泣きたくなりました。2景のみの筝の演奏も見事。

そして、岩手に禁止されていたのに、寝屋をのぞいてしまった強力太郎吾(猿弥)と出くわした岩手。岩手のままのしつらえながら、鬼女の本性を現し、凄い高さのジャンプ、強力につめよる動き、バク転での引っ込み。腰の抜けた強力の猿弥さん、さすが踊りの名手です。

3景は鬼女と阿闍梨一行との激しい戦い。長袴の衣装がきれいなんですよ。言葉のいらない迫力に、幕見席全体が引き込まれました。やはり、すばらしい作品でした。

さて、続けて「二人夕霧」。あの廓文章 吉田屋の夕霧は病で亡くなり、伊左衛門(雁治郎)は、同じ夕霧という名の傾城(孝太郎)と所帯を持ち、傾城買指南を商売にしています。教えを乞いに、彌十郎、萬太郎、千之助がやってきます。このあたりコミカルなやりとりなんですが、彌十郎さんというより、市蔵さんや亀蔵さんあたりが面白かったかも。萬太郎はかわいい目を細くして、この舞台の雰囲気を盛り上げようと好演でした。千之助もがんばってた!

後半は、幽霊の夕霧(魁春)が登場して、伊左衛門と踊り、おきさ(東蔵)も加わって、最後は伊左衛門に大金が転がり込んでめでたしです。

うーん、役者さんも常磐津も、誰も悪くないんですけどね、雁治郎・孝太郎は先月女鳴神コンビだし、最近孝太郎さんいいし。しかし、夕霧二人と二股ってなんだよってことですよ。吉田屋の伊左衛門は、どうしようもないボンボンだけど、夕霧に惚れぬいているところだけがいいところなのに。のっぺりした赤い壁のセット、笑っていいのか微妙な芝居、そしてどこに行こうとしてるのかわからない舞踊。小判を降らせるのも、ちょっと下品に感じました。

これ、弁慶上使や熊谷陣屋や碇知盛のような重い演目のあとならまだよかったと思うんです。しかし、上記のような、完成形をさらにつきつめたような舞台づくり(歌舞伎座でもここまで美意識を貫くのは稀では)のうえで、踊りの名手が、代表作の一つとして、大怪我から復帰して命がけで踊った演目の後でのゆるいお芝居と踊りですか…。観客もどう見ていいのかわからない雰囲気でした。これからお客の入り大丈夫かな。ただでさえ、黒塚だけ繰り返し見たい猿之助ファンって多そうなのに。

「オペラ座の怪人」の続編、なんでこんなの作っちゃったの感が強い「ラブ・ネバー・ダイ」みたいなものでしょうか。私は吉田屋好きなので、ニザ玉、幸七で見た吉田屋の感動返して。

うーん、やっぱり黒塚、夜の部のキリの演目ですよね。ざんねん。

(幕見2回目)

1週間ほど後、黒塚2度目の幕見です。見るたびに、衣装やセット、照明を含めた美しさ、現代の時間感覚にギリギリ斬り込んでくるような静の場面(=長すぎない)、常よりもずっと存在感があって、芝居の重要な要素となっている、演奏会のような鳴り物、囃子方、意外にわかりやすい詞、に感心します。

仕立ては能に見えますが、立派に今に生きる作品。「熊谷陣屋」のような芝居はもしかしたら廃れてしまうかもしれませんが、これは猿翁十種といいながら、もっと残るような気がします。

再演とちがって、短い間をおいての観劇ですと、流れを覚えていてじっくり見られます。大詰の花道では、鬼女の荒い息やうなり声が聞こえて、苦しみが4階まで伝わってきました。あの両手をブンブンするのは煽っているようにも見えます。大胆な隈取の向こうに、猿之助のキラキラした目が見えて何だか感動でした。

やっぱりキリの演目だなあ。

(幕見3回目)

2景では、筝が加わるのですが、何日かは、正派の家元(今月家元を譲られて宗家となられるそうですが)、93歳の中島靖子さんが出演されるときき、その日に行ってきました。筝は、靖子さんのソロ(特別ですか?いつもよく見ていないので気づかなかった)の部分が結構長くあり、丸く美しい音色が聞けました。昭和20年から出演されているそうで、74年ですよ!わずかな出番のために、それだけ高名な方が出てくださるのは、それだけこの澤瀉屋の演目を大事に思ってくださり、四代目のこの演目への思い入れやその成果を認めてくださっているからでは、と思います。

(しかし藤十郎さん、竹三郎さん、寿猿さん、紅長のときの玉之助さんと、80代後半以上の方々と仲良しな四代目)。

毎回どこがちがうかとはっきり言えないのですが、2景の踊りがより楽し気で、メリハリが際立っているように思いました。さあ、もうすぐ真近で見られます。

(1階席での感想+前楽幕見)

はじめての歌舞伎観劇ガイド

201212kabukiza  ミュージカルやストレートプレイはたまに行くけど、歌舞伎は全く見たことがない、という方のための観劇ガイドです。舞台を見る方なら、歌舞伎の敷居はずっと低い、ということで、数年前の自分に向けてという感じで書いてみました。

以下は、毎月歌舞伎を上演している歌舞伎座を基本として書いています。

【歌舞伎の公演のしくみ】

歌舞伎の公演は基本的には25日間興行で、月初に開幕し、例外を除き休演日はなく、25日間やると終わります。大阪松竹座や京都南座、博多座の公演や地方を回る巡業もありますので、役者や囃子方、裏方さんが交代するのに、このシステムはよくできているんですね。上演期間がバラバラだと、このローテーションがうまくいきませんから。休演日がないので、いつでも行けるつもりでいると、ときどき貸し切りがあって「しまった」となります。

昼の部は11時から、夜の部は16:30から、3時間半~4時間半くらい、幕間休憩2、3回です。多くは演目が2本立て、3本立てですが、ときに1つの演目で3幕(通し狂言)といった形もあります。8月の納涼歌舞伎、ほかたまに3部制の場合があり、開演時刻が11時、14:30、18:30などとなります。少しだけチケット代が安くなります。

チケットweb松竹 というサイトで無料会員登録して取ります。発売日は松竹歌舞伎会会員(年会費3000円)よりは後になりますが、座席指定して取れるのでお勧めです。発売日は、公演月前月の12日頃、普通のお芝居よりは直前です。発売日カレンダーをサイトで確認しましょう。チケットは、劇場のチケット発券機で受け取ると手数料0です。

最初は、3階A(6000円)またはB(4000円)で、好きな席をとるのがお勧めです。良い席はお早めに。上記のとおり、一般会員よりも、有料会員や、さらにその中から購入実績ポイントで決まるゴールド会員(=熱心な歌舞伎ファン)の発売日の方が先なので、3階は早く売り切れます。サイドは見切れるので、なるべく正面席。正面なら、端の方でも大丈夫です。ただし、オペラグラスは必須です。

歌舞伎は高いというイメージがありますが、4時間くらいやっていますので、3階の価格ならコスパ抜群だと思います。好きになれば、次からよい席を検討すればいいのです。1等席は、一般の発売日より先に押さえている役者の後援会やファンクラブからの「戻り」が公演直前に出てくることがありますので、意外と直前に良い席がとれることがあります。

クレジットカードや、生協、OZmall、その他観劇会等の優待で、1等席(18000円)や2等席(14000円)の割引チケットが取れる場合もあります。座席指定ができないので、本当にお得かどうかは行ってみないとわかりませんが、それも選択肢ではあります。

【事前の予習】

松竹の歌舞伎美人(かぶきびと)というサイトに、その月の「演目」、「みどころ」、「出演者と配役」が掲載されています。ロビーにおいてあるチラシにも同じ情報があります。初日前日には、細かい上演時刻も出ます。

古典の演目ならば、解説サイトがいろいろあるので、検索して読んでいくとよいでしょう。私がよく見るのは「歌舞伎見物のお供」。詳しい解説ですが読みやすいです。

僭越ながら、このブログの「歌舞伎」カテゴリも、最近の歌舞伎座ほかの歌舞伎公演の雰囲気を軽く知るにはよいでしょう。

「筋書」(関西では番付)というパンフレットには、詳しい場毎の解説や、チラシに載っていない、脇役や義太夫、囃子方のお名前、役者のその月のお役への意気込みインタビューもあります。そのほか記事もたくさんで読みごたえもあるのですが、なんと、月の後半には、小さいスナップですが、カラーの舞台写真が入って、同じ値段なのです!また、翌月まで、木挽町広場のチケット売り場で買うこともできます。1か月で複数回行く方は、いつ買うか悩ましいところです。

【劇場での過ごし方・舞台写真】

前述のとおり、4時間もありますので、30分休憩の時に食事をします。歌舞伎座内のレストラン(要予約)、三越または木挽町広場、向かいの弁松等で購入したお弁当(もちろんコンビニのおにぎりやサンドイッチでも)を、2階・3階のソファまたは自席で食べます。近所のレストランや、木挽町広場のおそばやさんで食べることもできます。

3階のめでたい焼きや、葛切りほか和菓子、1階の売店の小豆アイスもなかなど、おやつもいろいろです。

売店では、その月の上演演目にちなんだお菓子やてぬぐい、スヌーピーと歌舞伎コラボグッズ等、いろいろお土産がありますが、月後半には、2Lサイズ(はがきサイズより一回り大きい)の舞台写真が発売されます。これがまた、はまると買ってしまうんですよね。和柄の舞台写真用アルバムも売っています。翌月のみ、歌舞伎座の5階の土産処「楽座」でも販売しています。

ロビーの絵画は、上村松園、鏑木清方、川端龍子等、日本画の巨匠の大きな絵を鑑賞できますし、3階ロビーには、故人の名優の写真があります。3階のハイテーブルの周りもびっくりするような小さな名品が飾ってありますので、1階から3階までくまなく歩きまわってください。

お手洗いは、地下がすいています。

【イヤホンガイド】

歌舞伎は難しいと思っている方は、イヤホンガイド(利用料700円、保証金1000円)があった方がよいと思われるかもしれません。実際、使われる方は初心者に限らず多いです。私は、勉強のためではなく、舞台を楽しむために歌舞伎を見るので、イヤホンガイド不要派です。特に義太夫ものは、集中しないと言葉が聞き取れないので、解説を聞く余裕はないですし、無音の間は、芝居として必要な間であるので、何も聞きたくない。

何より、歌舞伎のせっかくの生の音楽が、片耳ふさいでいてはもったいない。ただ、舞踊は解説があった方が、今何をしているかわかっていいかな、と思うことはあります。

使ったことはありませんが、台詞を表示する字幕ガイドもあります。こちらは英語版もあります。

【演目の選び方】

歌舞伎座をお勧めするのは、重厚な義太夫、舞踊、世話物等、演目のバラエティに富んでいて、平均的に満足感が高いからなのですが、せっかく見るのですから、知っている役者さん(愛之助とか勘九郎等テレビドラマにも出ている役者でいい)が出ているとか、有名な勧進帳や助六や仮名手本忠臣蔵を見てみたいとか、きっかけは何でもいいと思います。まず行ってみれば、いろんなことがわかります。

【幕見

歌舞伎座の幕見は、600円~2000円まで(上演時間に応じて値段が変わる)というお手頃価格で1幕を見られる当日券です。4階席ですが、まともなオペラグラスがあれば、ちゃんと見られます。歌舞伎ファンも、リピートしたいときは通います。歌舞伎というものが見てみたい外国人旅行者と、コアな歌舞伎ファンが一緒に並ぶのが幕見。どんなものか見てみよう、という方にはいいと思います。4階席までマイクなしでちゃんと聞こえるのが歌舞伎役者の声。イヤホンガイドは500円と割安です。

【観劇のマナー・服装】

残念ながら、歌舞伎座のご見物のマナーは、他のジャンルと比べてヒドイです。上演中のおしゃべり、アメを出す袋のカシャカシャ、1階からの大向こう、身を乗り出す、変な手拍子、など。せっかくの1等席のときに、下手のお隣がバッグを背中において、花道見えないよ、ってこともありました。あまりひどければ、幕間に席番とともに係員に伝えると、注意してくれたりします。

服装について。着物をお召しの方も多いですが、全体としては少数派。多少おしゃれな服装という程度で十分です。逆に、どんな盛装をしても浮かないのが、歌舞伎座のいいところだと思います。幕見はもちろん普段着で大丈夫。

【まとめ】

歌舞伎は、2000人キャパで昼夜25日間興行と、よほど話題の新作や海老蔵がお子さんと出る等でない限り、チケットはほかの舞台と比較して取りやすいと思います。ぜひ、歌舞伎の世界に足を踏み入れてくださいませ。

まだまだ書きたいことがありますが、もし聞きたいことがあれば、どうぞコメント欄にご質問くださいませ。

三月大歌舞伎「盛綱陣屋」「雷船頭」「弁天娘女男白浪」(偶数日)<偶数日楽幕見追記あり>

201903benten 歌舞伎座夜の部、偶数日のフル観劇です。待ちきれなくて、猿之助弁天小僧だけ幕見2回してました。奇数日の感想はこちら。

 最初は「盛綱陣屋」。秀太郎さんの微妙がやはりとてもよく、日を追って、小四郎への愛情が高まっているのか、祖母が孫に死を迫るのがどんなにつらいか、秀太郎さんに共感して泣かされました。

義太夫も素晴らしかったんですが、錦之助さんの信楽太郎のところだけ、あまりに目が忙しくて何言ってるか完全に抜けてました。錦之助さん、美しかった!

勘太郎くん、お芝居の間が進歩していて、毎日いろいろ考えながら工夫しているんだなと思いました。真秀くんの小三郎も、長い首実検の場面、武士としての気の入った表情をしていて、感心。

道太夫、葵太夫、谷太夫とちからのこもった義太夫も含め、最高の盛綱陣屋。

2つ目は初見の「雷船頭」幸四郎・鷹之資版です。幸四郎さんのシュッとしてかっこいいことといったら、もう最高。金剛像のようなたくましい足(膝には大きな座りタコ!)。若い鷹之資のつやつやのお面をかぶっているのかと見まがう肌と、軽やかで楽し気な舞踊。こういう楽しい舞踊を華のある役者さんで見るのはいいですね。

そしていよいよ「弁天娘女男白浪」。初めて1階で猿之助弁天小僧を見ます。

すでに1週間前に見たときには、だいぶこなれてきた感じがしましたが、もう猿之助弁天小僧としては、現時点のほぼ完成形です。娘のときのさすがの女方のかわいらしさ、正体を現したときの凄み、南郷への甘え、わがままさ加減、やりたい放題感が最高。

弁天小僧としては、菊五郎おやじさまの域にはまだまだだということは置いといてですよ、弁天・南郷の、この勢いのある花形同士の関係というのは、もう菊五郎・左團次コンビにはないわくわく感。猿之助と幸四郎の関係を思うと、今これ以上の弁天小僧・南郷力丸はないのではないかと思います。これからは、あるとすれば、勘九郎・七之助とか、猿之助・愛之助とかですかね。幸四郎丈が今後猿之助につきあってくれなければ、見られないものとして、とても得難い演目となりました。

そして、浜松屋の手代たちのチームワークもきびきびと、橘三郎さんもテンポよく、とにかく楽しかった!

そして稲瀬川の場。この配役での1階は初めてなので、幸四郎南郷が花道に元気よく突っ込んでくるのを初めて見ました。元気がよくて無頼な感じで、手ぬぐいもラフに巻いててかっこいい!花道から舞台に出るところでは、5人が、ひとりひとり目くばせするんですね。衣装も地が同じで柄が個人に合っていて最高なんです。

ということで、夜の部、充実していました。難をいうと、弁天小僧を奇数日・偶数日両方見すぎて、盛綱陣屋はパス!する方が出てきちゃったことですかね。お隣のおばさまも、「もう3回見たからいいの」と雷船頭からいらしてました。うう、1階なのにもったいない!

(偶数日楽日幕見追記)

いい席で見たし、もういいかなと思っていたんですが、気づいたら朝オペラグラスをバッグに入れ、気づいたら幕見に急いでいました。さすが猿之助弁天小僧楽日、発売20分前に到着した時にはすでにお立ち見。雷船頭からの通しの方が多かったようでした。

花道での弁天、南郷の出からして、拍手が止まらず、弁天の台詞が聞こえません。この熱気にこたえるように、すべてがタップリの猿之助弁天。当初の上演時間は奇数日より8分長かったのを数日後揃えていましたが、楽日は少し戻したんですね。

このタップリさが、音羽屋とちがう、ってことなんでしょうが、緋鹿子を落とすときのワルイ表情(鬼揃い紅葉狩みたい!)、正体を現してから、信頼する相棒の南郷がついていてくれることで、安心しているかのように好き勝手悪態つく弁天小僧のかわいらしさ。番屋に突き出せ、切りやがれ、とミーアキャットのように同じ角度で下手を向く弁天・南郷!

そして花道の引っ込み、分け前を多くとられた後、南郷が「この埋め合わせはするから」というのに、「いつもそうなんだから」という言葉が、さらに色っぽくなってました。ここは、わかりやすく変えたのでしょうが、私は、初日の、さらっという「そうなんだから」の方が、「ちょっと待って、もしかしてそうなの?やだー💛」って感じで好きでした。まあ、メリハリ聞かせてわかりやすく、というのが澤瀉屋なんでしょう。猿之助の台詞は、黙阿弥の台本を今の観客にしっかり聞かせるというようでした。

稲瀬川の勢ぞろいでの生意気そうな表情。ああ、楽しい3月でした。最近妙に悟ったような言動が多かったような気もしていたけど、こういうお役を力いっぱい楽しそうに演じる猿之助丈、ほんとにありがとう。

 

 

 

 

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