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図夢歌舞伎「忠臣蔵」第4回(七段目)、第5回(九段目、十一段目)、写真絵本「仮名手本忠臣蔵 由良之助とおかる勘平」

2007zumukabuki_20200721212201 図夢歌舞伎4.5回の完結編です。第1回(大序~三段目)・第2回(四段目)第3回(五、六段目)もご覧ください。 

 図夢歌舞伎「忠臣蔵」第4回七段目「祇園一力茶屋の場」

幸四郎の平右衛門は初見です。由良之助と兼ねるわけにはいかないので、前半の放蕩や三人侍や九太夫とのあれこれはカット。事前にTwitterでみたてを募集していましたが、どうやってと思ったら、平右衛門と猿弥人形で。3題披露されましたが、思った以上に「うまい!」という内容で、感心しました。

この忠臣蔵でいろいろな役をやっている幸四郎さんですが、平右衛門はなかなかいいです。身分は低く、あまり賢くなさそうだけどまっすぐで優しい平右衛門。ここまできたら、前回の勘平も(猿之助がやってくれたのはもちろんうれしいんだけど)見たかったかも。運命に翻弄される悲劇の幸さんて好きなんですよね。

さて、おかるは雀右衛門さん。ひいたアングルはおきれいです。何より台詞回しが、ああ、歌舞伎ってこうだった、今歌舞伎を見ている、という満足感を味わわせてくれました。図夢歌舞伎に出てくださってありがとうございます。インスタライブなどもなさったりして、若々しくていらっしゃる。

平右衛門とおかるの仲の良い兄妹が、どこかのんびりしたくどいやりとりをする面白さは、花道を使っての二人の距離の遠近がないだけ、本来よりはだいぶダイジェストなんですが、二人の関係性などは伝わってきたと思います。

そして、映像だからこそ可能となった、初代白鸚(八代目幸四郎)の由良之助の登場。お顔といい、迫力ある台詞といい、堂々たる立ち姿は、まごうかたなき現白鸚、吉右衛門さんの父。初代吉右衛門さんの娘さんがお稽古に通ってきた八代目とどうしても結婚したい、男の子を二人産んで一人は吉右衛門を継がせます、と言ったという話を思い出すのですが、さもあらん、なんて思ってしまいます。この方の、七段目前半の酔態見たかったなあ。

舞台映像なので、「高麗屋!」「八代目!」と、盛んに大向こうがかかります。歌舞伎の幸せな時代だったな、と悲しくなりますよね。

第5回(最終回)九段目、十一段目

さて、とうとう最終回です。まず九段目、山科閑居の場。山科の大星家に、戸無瀬(猿之助)が娘小浪を連れて、力弥への嫁入りを願います。お石は出ず、由良之助(幸四郎)が拒絶。しかし小浪(葵太夫さんの語り)はあきらめられず、戸無瀬はいっそ娘を殺して自分も死のうとします。そこに小浪の父本蔵(幸四郎)が虚無僧姿でやってきて…

雪の中傘をさしてやってくる戸無瀬、凛としてちょっと若さもあって美しい!思いつめたような目、ゆったりとした台詞回し、太棹と義太夫。そんならいっそと小浪に向けて刀を抜く、赤い着物姿の所作の見事さ。(死ぬ覚悟の小浪に)「でかしゃった」が、わー政岡じゃなくてもこんな風に言うんだ、と感動。この戸無瀬も、藤十郎さんそっくりだそうですが、たしかに感じることができました。

(2014年12月には南座で戸無瀬藤十郎、小浪壱太郎、お石 秀太郎、本蔵 現白鸚、由良之助梅玉、力弥扇雀という座組での上演があったそうです。うわー見たい)

本蔵が三方を踏みつけて力弥(染五郎)に自分を討たせ、師直に賂を贈ったことで矛先が判官にいってしまったこと、松の廊下で判官を止めたことで、一命を救ったつもりが無念の死となったことを述懐し、師直邸の地図を引出物として渡します。力弥の雨戸倒しの工夫も見事に見せてくれました。

後半は、由良之助と本蔵の早替わりで幸さん汗だくの熱演!渾身の演技が、吉右衛門さんに似てました。鬘、着物のほか、本蔵は白髪交じりの眉毛が長く、早替わりはなかなかたいへんだったと思いますが、幕間の猿弥人形が、「今日はあーちゃんと私の二人だけ、あーちゃんは殆ど生です」とのことで驚きました。

猿弥人形の出番もこれが最後、明るくわかりやすく、その場でのチャットの読み上げもうまくて、猿弥さんがいなかったら、成り立たなかったといっても過言でない大活躍でした。猿弥さん、弁天娘とかチャップリンとか、幸四郎さんとのがっつり共演けっこうあるんですよね。ほんとすばらしい!

さて、十一段目、大詰です。討ち入りの由良之助の太鼓の後、雪景色の中、一画面一人ずつでの立ち回り。やゑ亮、右田六、喜楽、松悟、やゑ六、笑猿と、いろんなお家のイキのよい若手で、楽しい場面になりました。泉水の立ち回りでは右田六くん活躍で、いい顔してましたです。

そして師直の首をとった由良之助、殿の位牌の前に備えます。勝鬨の後の独白!この時代のつらさにあって、皆で頑張るという覚悟、そして「必ず明日は日本晴れ」…目に浮かべた涙が、清らかに美しかったですよ!

最後は化粧を落としてさっぱりとした浴衣姿の幸四郎さんと戸部さんのアフタートーク。久しぶりに大道具さん、衣装さんたちと会ったときのことを思い出して声を詰まらせる幸さん。世の中の40代後半ってもっとおじさんだと思うんですが、夢を追いかけているためか、若いんですよね。

この図夢歌舞伎は、歌舞伎を知らない人にその素晴らしさを伝えるにはやや未熟でしたけど、通してみるとやっぱり見てよかったと思います。松竹の有志の会の皆さん、出演者、スタッフの皆さん、お疲れさまでした。これから、歌舞伎にもっと気軽に触れたい人のきっかけになるようなわかりやすいコンテンツを作って行ったらいいのに、と思いますね。

(おまけ)

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 「仮名手本忠臣蔵 由良之助とおかる勘平」という写真絵本をみつけました。昭和61年(1986)二月花形歌舞伎での仮名手本忠臣蔵通しのうち、五、六、七段目を豊富な写真と宇野信夫氏の浄瑠璃台本を元にした平易な文章(まるで少年文学のようです)で綴ったものです。

由良之助と斧定九郎を十二代目團十郎、勘平を仁左衛門、おかる玉三郎、それぞれ40才、42才、36才という正に花形な年代ですが、人気もあってこんな本まで出したんですね。

ニザ玉さまがこのうえなく美しいのは当然として、團十郎さんもいい表情ですよ。冒頭のあらすじ部分の血をなめる表情とか、あまり上背があった感じはしないのに定九郎もかっこいい!ほかに高師直 富十郎、塩谷判官 先代芝翫、顔世御前 時蔵、鷺坂伴内 又五郎なんて配役です。

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  文章が丸々1ページのところもありますが、写真の間に文があるところもあって、歌舞伎好きには楽しい絵本です。図書館などにはあるのではないでしょうか。

 

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