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2020年4月

三月大歌舞伎「梶原平三誉石切」「高坏」「伊賀越道中双六 沼津」期間限定配信

2004_20200425001201  引き続き松竹チャンネルの期間限定配信、三月大歌舞伎夜の部です。まず「梶原平三誉石切」。わりとよくかかる演目で、2015年白鸚さん2017年彦三郎さん2019年吉右衛門さんで見てます。

梶原は白鸚さんですが、初めて見たときよりずっと面白く感じました。大庭兄弟(芝翫、錦之助)と見た目のバランスもいいし、白鸚さん中心にいいチームワークで、白鸚さんも気持ちよく演じている感じ。梶原方大名が松江、亀鶴、廣太郎、虎之介、大庭方大名が高麗五郎、幸右衛門、千次郎、かなめ。大庭方の皆さんが迫力ありました。

 六太夫は錦吾さん、梢は高麗蔵さん。剣菱呑助は橘三郎さん。これまで見た梢は、壱太郎、右近、米吉ときれいな若い娘だったんですが、この高麗蔵さんさすが。若々しいんだけど若妻の落ち着きもあり、父の覚悟によよと嘆くところなどこってりとよかったです。大庭兄弟や大名たちが去って梶原と父娘だけになる場面、長年舞台を共にした高麗屋お三方の息の合い方でした。

2つめは「高坏」。勘九郎が得意としている下駄タップ舞踊という認識でしたが見たことはなかったもの。大名(友右衛門)に酒を飲むため高坏を買って来いと言われた次郎冠者(幸四郎)。高足(下駄)売り(亀鶴)に騙されて高坏の代わりに高足を買ったうえ、酒は二人で飲んでしまい、怒られて高足をはいて踊ります。

抜けた愛嬌者をやらせたら天下一品の幸四郎、表情も豊かに最高に楽しい下駄タップ。その前の亀鶴さんの踊りと掛け合いも達者で、亀鶴さん、いい役だったのに中止は惜しかったなあ。二人の格子の入った衣装もかわいらしくて好きでした。

3つめは「伊賀越道中双六 沼津」です。昨年の秀山祭で、吉右衛門さんの十兵衛を見ましたが、そのときはあらすじの予習が粗々であんまりよくわからなかった芝居(恥)です。あのとき、吉右衛門さんの急病で、開演のたった1時間半前に決まって初役の代役をした幸四郎さんが、今度は本役で務めます。平作は白鸚さん。

今度は段取りも頭に入っているのもありましたが、改めて面白い芝居だと思いました。柔らかい優しい雰囲気の仕事のできる商人で、後半平作とお米の立場と、自分の義理との板挟みって、それは幸四郎のニンにぴったりはまっています。で、白鸚さんの老け役がすごくいい。お年そのままですが、その中に芯というか気骨がにじみ出ていて、年恰好からいっても幸四郎さんとの親子感が自然です。

最後の十兵衛・平作の場面は、息もぴったりですし、親子の愛情が感じられます。何より二人のスケール感が、ギリシャ悲劇とかシェイクスピア作品のような香りがあってですね、でも歌舞伎。白鸚さん、夜の部だけとはいえ、1つめの石切梶原だって相当エネルギーを要する演目なのに、沼津でのこの力演。凄いなあ。インタビューでは、秀山祭で見事に代役を務めた幸四郎に対し、「『一世一代』で親として何かやれないか。幸四郎の心意気に対するささやかなご褒美というかね」 と語っています。

ところで、新薄雪物語で、白鸚・吉右衛門の兵衛・伊賀守ってありえないんですかね。大柄で類まれな存在感のあるお二人のがっつりした共演って、見ることはできないんですかねえ。

三月大歌舞伎「通し狂言 新薄雪物語」「雛祭り」期間限定配信

2004_20200422074101  松竹チャンネルの期間限定配信、いよいよ三月大歌舞伎「通し狂言 新薄雪物語」です。演目名は知っていたけど見たことはなく、しかも仁左衛門さんと吉右衛門さんの共演というので、配信を楽しみにしていました。

  あらすじも全く知らずに見始めたんですが、面白かった!ひとつの要因は、国立劇場の「義経千本桜」の映像に比べて、画面が明るくて要所要所のアップがうまいので、自然に芝居に引き込まれる感じがしたことです。さすがシネマ歌舞伎をたくさん撮っているだけあります。もちろん、配役が豪華で(翌4月は歌舞伎座改修でお休みでしたからね)お話もよくできていて、この演目は保存版だと思いました。

まず「花見」。桜が満開の清水寺に、薄雪姫(孝太郎)が腰元籬(扇雀)たちを引き連れて参詣にやってきます。清水寺に影の太刀を奉納に来た園部左衛門(幸四郎)にひとめぼれした薄雪姫は、籬と左衛門の奴妻平(芝翫)のとりもちで、次の逢瀬の約束にこぎつけ、手紙を渡します。ところが、団九郎(又五郎)が 大悪人秋月大膳(歌六)の命により、左衛門が奉納した刀に国家調伏のやすり目を入れます。一方妻平は、水奴たちと大立ち回り…。

幸四郎はいつもの二枚目で最高なんですが、ほかの役者さんみんなに見せ場がたっぷりあって、とても生き生きとしているんですよ。籬の扇雀さんの、きれいでテキパキしていてちょっと色っぽい感じとか、芝翫の大柄な存在感のあるお気楽な色奴とか、又五郎さんの小細工の細かな演技と大悪人歌六さんとのやりとり、花道の引っ込みとか、タカタロさんのどこまでもかわいい姫とか。大幹部と、幸四郎以下の文字通り花形役者に挟まれて歌舞伎座ではあまり大きな役に恵まれない感のある(失礼!)この世代の方々の実力がいかんなく発揮されているなあと思いました。

最後の、妻平と赤い衣装の水奴たち(この衣装・鬘初めて見た)との立ち回りは10分ほどの長い場面で、とても面白かった!芝翫さんも水奴も、どんなにお稽古なさったことか、ああそれなのに…。ほんとに口惜しいです。

続いて「詮議」。左衛門と薄雪姫が、姫の屋敷である坂崎邸(襖に花、屏風に御所車が描かれていたりしてきれいなお屋敷です)で密会をしようとすると、母松ヶ枝(雀右衛門)にみつかります。親の許しを得ていないのにとうろたえる二人に、松ヶ枝は反対などしないといいます。このお話の両親はほんとに子ども思いの優しい親。そこに、左衛門が影の太刀で国家調伏を企んだ疑いを、葛城民部(梅玉)が詮議にやってきます。大膳、薄雪姫父坂崎伊賀守(吉右衛門)、左衛門の父園部兵衛(仁左衛門)がそろいます。薄雪姫の手紙も文言を捻じ曲げられて証拠とされ疑いは晴れず、民部は大膳の企みに気づきながらも、伊賀守と兵衛が、互いに子を預かりあい、詮議をするという案を受け入れます。

裁き役、梅玉さんの第一声から素敵なこと!吉右衛門、仁左衛門と揃った舞台が重厚で見ごたえあること!二人が花道で密かに善後策を相談するところの、お互いにがっつりぶつかり合う横綱相撲。疑いの晴れない幸四郎の苦悩(大好き)。あああーなぜこれ一等の前の方で見られなかったの私(中止だから!)。ところでニザさまと幸たまが親子というのは珍しいですが(初めて見たような)、二枚目の系譜としてはとてもよい親子。

そして「広間・合腹」。あらすじ見ていなかったのですが、後から知れば、合腹って何というタイトル!山水画や書が描かれた渋い園部のお屋敷。初めて左衛門の母梅の方(魁春)が出てきます。左衛門は母にいい歌の色紙を見せたいとか、ちょいちょいマザコン気味な面が出てきます。さて、薄雪姫をかわいがる梅の方と兵衛は、妻平をつけて姫を落ちのびさせることにします。それでは兵衛たちに迷惑になるという薄雪を一喝する兵衛(←この方、何かと妻や嫁を一喝するのがいつものニザさまよりコワモテ)。

そこに、伊賀守から、左衛門の首を切ったので、そちらも薄雪の首をとれという使い(錦之助)が、首を落とした刀を持ってやってきます。刀を見ていた兵衛は伊賀守の真意を理解し、用意をしてくると下がります。そこへヨロヨロとやってきた伊賀守。首を切る代わりに、左衛門を逃がし、自分の首を差し出そうと腹を切ってきたのでした。同じく腹を切った兵衛は、梅の方にこれでほっとした、笑えといいます――この幕の別名「三人笑い」ですよ…このタイトルもすごすぎる。

まず兵衛が刀を見て気づく緻密な芝居。盛綱陣屋を思いだします。そして、ここでも吉右衛門さんと仁左衛門さんの演技合戦の迫力!筋の通った、情愛の深い、しかも持ち味の違う二人。うわあああ。そして、魁春さんがとってもよかったんですよ。もちろん、カッチリとした武家の妻というのはいつもいいんですけど、この毅然とした、情愛のある梅の方。左衛門を斬った恨みの気持ちを抑えるよう言われて不服そうに伊賀守を迎える表情、そして三人笑い。最近魁春さんも出番が短くてもったいないと思っていたんですが、今まで見た中で最高の魁春さんのような気がしました。ちょっとだけ母に暇ごいに来る幸四郎さんも、七段目の力弥のような感じで、美しかった。

ということで、豪華配役の新薄雪物語、大満足でございました。

順序は逆ですが、昼の部最初は「雛祭り」。お雛様がお酒を飲んで踊るという趣向ですが、その設定自体が楽しくて、踊りも動きが激しくてとても面白かったです。内裏雛に芝翫・福助、左大臣東蔵、右大臣彌十郎、三人官女が梅花、京妙、芝のぶ(この二人早く幹部にしてー)、五人囃子が歌昇、種之助、吉之丞、廣太郎、虎之介。長身のやじゅさんと小柄な東蔵さんの軽妙な掛け合い、とりわけ激しい五人囃子(どうしてもうたたね兄弟に目が行く)。衣装も鮮やかでよかったです。これはまた来年3月に、(できれば鷹之資も入れて)再演してほしいです。

「通し狂言 義経千本桜」@国立劇場 期間限定配信

  2004_202004101906013月の国立劇場小劇場で上演するはずだった、菊之助「義経千本桜」の通しを、期間限定(4月末まで)で国立劇場さんが配信してくれました。

  義経千本桜の通しといえば、猿翁さんが1日でやったことがあったそうです。そして、2019年7月、海老蔵が夜の部で「星合世十三團 成田千本桜」として13役を早替わりで務めたのが記憶に新しいところです。

この菊之助の通しは、3つに分けて、1日2つずつ上演するというもので、それぞれはフルバージョン。菊之助らしく、どの役も丁寧に演じています。どの役も大変な役で、きっちりとやる分、1日でとにかく通すよりも、実際に上演したらたいへんな1か月だったに違いありません。座組の皆さんもがんばっていて、これを小劇場でというのは面白かったと思うのですが、Covid-19はいかんともしがたく。

さて、配信ということで(本当にありがたいのですが)、なかなか画面だけに集中しがたいというか、こういう感じか、という雑な感想になってしまうんですけど、前述の通り意欲的な試みなので記録しておきます。「新版オグリ」の配信を見たばかりだったので、国立劇場という場の雰囲気もあって、ああ、古典歌舞伎~という感じがしました。南座、歌舞伎座の配信と比べて一番長いのですが、ほかの2つが1週間なので、リピートして見る時間がなかなかないです。

<Aプロ> 

鳥居前 

義経(鴈治郎)一行は、追ってきた静御前(米吉)に初音の鼓を渡し、佐藤忠信(菊之助)に着長を授けて供をさせることにします。この場は成田千本桜でしか見たことがなかった場ですが、米吉きれいだし、弁慶の亀蔵は、貴重な大役で、なかなか面白かったです。この鳥居前から渡海屋につながるというのが初めてわかりました。

渡海屋 碇知盛

菊之助の銀平・知盛は、2016年の歌舞伎鑑賞教室で見ましたが、あのときはこの演目が初めてで、美しい菊之助の知盛の凄みに感動しました。今回は少し落ち着いた感じですが、やはり最高に熱演。吉右衛門さんの教えを感じます。

やはりその鑑賞教室でも演じていたお柳・典侍の梅枝が、映像ながらとてもよくて、ここ数年の梅枝くんの進化をみるようで最高。ただ、たしか義経一行に、銀平の海の天候を読む技量をのろけ気味に語る場面がなかったような。ここ、あれ、典侍なのに立場忘れてるのかなって感じがして好きな場面なんですが、カットされてるのかもしれません。

安徳帝(丑之助)は子役でも熱量が必要な役で、丑之助は大変そうでした。亀蔵さんの弁慶は、鳥居前よりさらに線が細い感。やはり義経の鴈治郎さんがいいな。

<Bプロ>

下市村椎の木・小金吾討死

木の実の場ですね。すし屋でもここから出すと、事情がよくわかってよいのですが、権太(菊之助)が中の人の持ち味なのか、どうにも悪いやつに見えないのが残念。おせんの方、うまいのですが、菊之助が若いので恋女房ぽく見えない(比較がニザさま秀太郎さんなのですいません)。

小金吾(萬太郎)は真っ直ぐな若者がとても合ってました。

すし屋

維盛(梅枝)、お里(米吉)のコンビはとってもよかったです。米吉のお里は2017年11月の巡業で見ていますが、もっとこってりとした味が出てきた感。橘太郎さんのおくらはいつもちょっと笑ってしまう。團蔵さんの弥左衛門はぴったりです。権太は、戻りが芝居がかっているようで、権太への同情とかいとしさが沸いてこなかったうらみがありました。ほんとはいちばんちゃんとやらないといけない役なのでは。

<Cプロ>

道行初音旅

吉野山ですね。この場にだけ出てくる静御前の時蔵さんが若々しくてたっぷりしていてさすが。狐忠信(菊之助)もきれいです。

川面法源館

四の切です。海老蔵の成田千本桜は、澤瀉屋のケレンのタイプだったので、音羽屋というか普通の四の切は初めて。ちがうんですが、芝居としていいたいことは一緒なんだなというか、なるほどと思いました。

スーパー歌舞伎Ⅱ「新版オグリ」@南座 期間限定配信 (追記 歓喜の舞!)

2004oguri   3月の南座での「新版オグリ」、行きたかったんですよ。「ワンピース」も地方公演でブラッシュアップしてたから期待できたし、四代目オグリは2階でしか見ていなかったし、鷹之資も出るし!

延期が繰り返されたうえで全公演中止が決まり(それ自体はやむをえませんが)、最後に猿之助・隼人の2バージョンを気合を入れて無観客で上演したらしいのはインスタなどでわかってましたが、まさかの1週間限定無料配信(4月13日から19日まで)!もうありがたい限りです(詳細な配役)。

猿之助オグリ2019年11月の感想)は、フルバージョンです。休憩を飛ばして、アンコール込みで3幕3時間10分!新橋演舞場の初演は3時間25分なので、15分ちょっとの短縮ですが、だいぶ刈り込んだ気がしました。

演舞場の初演をあまり細かく覚えているわけではないんですが、気が付いたのは、照手姫の横山家のドロドロや高倉さま(嘉島典俊)の悪さが少しアッサリになってる。鬼鹿毛乗りこなす場面のフラッグがみんなカッコイイ、鷹之資の踊りがどれもキレッキレでみてて楽しい(セリフもいい)。一部不評だった二幕のSNSはなし。猿三郎さんひとみばあさん、女郎屋の最初の方の場面はなく、照手が操を立てるところもなし、遊行上人短く、金坊登場せず、福之助の山賊は鉄拳。遊行上人とのダブル宙乗りなし。なぜ高橋くんと宙乗り?寿猿さんとあかねちゃん(玉太郎)登場で二人ともよかった。

刈り込んではいますが、1幕は前述の鬼鹿毛、2幕は地獄の立ち回り、3幕は餓鬼病みオグリと歓喜の踊り、と見せ場がそれぞれより際立つようになっていて、面白さは増幅されたと思います。2幕は、オグリ衆大活躍で、鷹之資の鮮やかな飛び六法や、玉太郎の蘭平ばりのハシゴ、そしてオグリと全員の本水!

福之助がどうしちゃったのというくらい台詞が進歩していて、新悟ちゃんの照手ももはや安定感。新悟は10、11月がオグリ、12月チャップリン歌舞伎、1月浅草、2月博多座オグリ。これだけ芯になる役を続けていたら、千本ノックばりにうまくなりますよねー。声が強いのも凄いと思いました。

さて四代目ですよ。3月、京都でずっと開演を待っていたためなのか、あれ、顔がまんまるに、全体にむっくりしてません?もともとストレートな二枚目って、(唯一の)ウィークポイントではという感じもあって、1幕はうーむと思ってたんですが、やっぱり3幕の餓鬼病み!この多彩な声、苦しみ、後悔、純粋な照手への思い、役者としての力量を感じさせてくれます。熊野の滝に上るところ、ああ、左手だけでぶら下がっちゃって~。「思い知ることができましたぁー」で、思わず画面の前で両手を握っていっしょにガッツポーズしてしまいます(映像でよかった!)

こういう感情盛り盛りの、セリフで劇場空間を(空席ですけどね)支配するお役って、なかなか歌舞伎座でみることはできません。19年6月の「風雲児たち」の別れの場面くらいですかね。熊野の滝に飛び込む前の場面は「俊寛」を思わせますが、ほんとに俊寛やってほしい。

そして隼人オグリ2019年10月の感想)。隼人の出番だけをつなげたハイライトバージョンですが、それでも1時間44分あります。うーん、隼人オグリも完全版でアップすればよかったのに。隼人の良さは若さと美貌(!)なので、オグリ党のあれこれがあって、若いオグリにつながる方が説得力が増すと思うんですよね。隼人の出番だけが隼人のよさじゃない。

隼人オグリ、大きくて美しい~。照手がひとめぼれするのもうなずけます。このキラキラ衣装がほんと似合ってます。表情も台詞も確実に進化してて、座長感も増してます。立ち回りもキレてて、四代目より手数も多くて派手。ただ、歌舞伎の台詞と、見得のキマリ方は、比較してはかわいそうですよね。キャリアが違うし。やはり熊野についての餓鬼病みの述懐は、長いだけに差がはっきり出てました。

四代目の遊行上人は、怪しさ感が若干薄れていました。物語の転換点として、これぐらい強烈なキャラクターじゃないと説得力がないのかもしれません。

そしてどちらのオグリでも、この上なく華やかな、歓喜に満ちた踊りのフィナーレ。ここまで、この緻密な殺陣、踊り、細かく作られた場面を積み上げてきて(セットもあまり変わらないから役者さんがふっと気が抜けたりして一つ間違えばたいへんでしょう)、1か月初日を待っていた彼らが南座のお客に見せられなかったのはどんなに無念だったか。関西のみならず遠方のファンも悲しかった。

でも、今の状況では、こんな作品、無理ですよね。舞台の上でのリスク、役者もスタッフも、感染者が出れば即中止となることを思えば、当面演劇が上演されるとは思えません(号泣)。

まだ配信期間中ですが、オリンピックに合わせてインバウンド客も期待されていたステージアラウンドの「ヤマトタケル」再演の中止が早々に発表されました。稽古にも入れないということで、来年のオリンピックに合わせて準備するそうです。それまで、歌舞伎を演じ、つくるすべての皆さんが健やかでありますように。

【追記・歓喜の舞】

5月12日、四代目の指揮の下、キャストが集結して、エンディングの「歓喜の舞」を踊った映像をつくってくれました!

これが、 よくあるリモートのやつね、と思って気軽に見始めたら、冒頭の四代目のイントロダクションに始まり、下川真矢さん(アクション俳優なんですね)の編集による、5分近くのすばらしい完成度の映像!

隼人、新悟、鷹之資、玉太郎、福之助らフィーチャーされた若手といい、猿弥、笑也、猿三郎、段之等澤瀉屋の皆さんといい、皆お家の普段着なのに動きだけプロでキレキレ。若手坊ちゃんたち、楽しそうに軽やかに踊っててかわいいったら。

四代目は一際ラフなスタイルにねじり鉢巻きでちょこっとだけ。もーうまいくせに。でもそういうところがさっくり皆をまとめてしまう所以かなと思いました。ダイエットする気はなさそうなので、早く本舞台に出て、すっきりときれいな四代目となったところが見たいです。

ドリームマッチ2020

 2004dm  久しぶりだなと思ったら、2014年夏祭り以来の「ドリームマッチ」だそうです。メンバーも今人気の芸人たち。あ、審査員として志村けんは出てないんだ― 収録は2月8日とテロップが出ていましたので、元々出演予定ではなかったのでしょうが、コントへの評価がいつもさすがの視点だったので、さみしい気持ちがしました。

 セットや効果も豪華で、出演者が新しい魅力を見せてくれて、とても見ごたえがありました。出演順に感想。左がボケ、右がツッコミです。

ハライチ澤部×千鳥 大悟

無茶振りを澤部がひたすら拾うというハライチパターンの漫才。しかし私の知ってるハライチより、ずっと設定がぶっ飛んでいて、さすが頭おかしい(←ほめてますよ)大悟。なんか、一転してスケールが大きくなって、とっても面白かったです。

バイきんぐ西村×サンドイッチマン伊達

ネタを考えていない方の二人とあって、苦戦しそうだったんですが、占いのネタで、意外と普通に面白かったです。私西村結構好き。

霜降りせいや×バイきんぐ小峠

ポテンシャル的には期待の二人。せいやの多重人格の表現が力が入っていてすごい。それに対する小峠のツッコミのキレもさすが。

ロバート秋山×千鳥ノブ

ノブの雑誌表紙写真を、秋山のへんなカメラマンが撮るコント。間合いといい、流れといい、唇皮喰うといい、面白かった!最優秀賞をとりました。

ナイツ塙×チョコプラ長田

コンビ選択で最後まで残ってしまった二人。塙はショックそう。しかしセミナ―屋のうさんくささを風刺していて、なかなか面白かったです。

サンド富澤×ナイツ土屋

サンドとナイツをミックスした、凝った構成の漫才。いつもの土屋のキレキレを知っているだけに、もう少し練れたら、ものすごく面白くなるような気がしました。

ハライチ岩井×渡辺直美

衣装とメイクに凝ったコント。岩井ってこんなコントが書けて、あのわけわからない塩役ができる人だったんだ。直美の演技力とか魅力はさすが。ドリームマッチならではの、他では絶対見られない作品でした。

チョコプラ松尾×霜降り粗品

淡々と、松尾のキャラの面白さだけで進むと思いきや、今どきの画像を使って最後に向かって爆笑したネタ。

野生爆弾くっきー×オードリー若林

くーちゃんらしいシュールなネタ。やっぱ野爆というか、くーちゃんすげえ。

オードリー春日× 南キャン 山里

私はこれが優勝かと思いました。春日の強烈なキャラの活かし方が、若林と一味ちがう山里流。まったく新しい漫才を見せてもらって、とってもよかったです。

(前回までのドリームマッチの記事)

 

塙宣之「言い訳― 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」

2004_20200411122801  ナイツの塙宣之が、M-1グランプリと漫才について分析した本「言い訳― 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」です。この本がヒットして、webでも取材記事が上がっていた(東洋経済オンラインなど)ので、読みたいと思ってました。さすが漫才職人の塙、的確で面白く、あっという間に読んじゃいました。お笑い評論としては、ラサール石井「笑いの現場」以来の名作だと思います。

M-1は、第1期が2001年から2010年まで、中断を経て、第2期が2015年から今までとなっています。ナイツは第1回から参加し、2008年から2010年までは決勝進出、2015年は準決勝敗退。2018年からは、審査員を務めています。2015年に再開したときの審査員は、歴代優勝コンビの「ネタを書いている方」でしたが、2018年からは、松本人志、上沼恵美子、オール巨人などの大御所と、志らく、サンド富澤、中川家礼二と塙。M-1ではあまり活躍できなかったナイツですが、塙の漫才への静かな情熱が審査員の道につながったんでしょう。

関西の漫才と東京のちがい、しゃべくり漫才とコント漫才、相方と観客との三角関係の構築、自虐ネタや下ネタへの考え方、M-1の制限時間と勝敗についてなど、さすがの視点で、歴代王者や人気者になったコンビについて語っていきます。「大阪は漫才界のブラジル」、「練習しすぎると面白くない」など、とか、名言も多いし、野球ファンでなくともわかる野球のたとえも面白い。

ボケよりも、ツッコミについての記述が多いです。アンタッチャブルの柴田やフットボールアワーの後藤、サンドイッチマンの伊達についてはもちろん、南海キャンディーズの山里とか、ミキの昴生への高い評価に共感。しかし、類まれな精度でつっこむ相方の土屋についても触れてほしかったのだけが残念。ネタに価値を置く塙は、自虐や集中してないコンビに厳しいです。

一方で、スリムクラブや霜降り明星、ハライチなど、私はそこまで笑えないコンビの魅力も十分解説してくれました。なるほど。霜降りより和牛の方が好き(2018年M-1)だったけど、全力で笑わせようという勢いという目で改めてみると、面白いんだな霜降り明星。

すごい実力なのに、M-1ではウケた経験がないという塙。審査員となったとき、内海師匠ボケに今田のツッコミでウケたことに満足したとか。玄人ウケしようとする芸人として尖っているのが自分の欠点と分析もしています。太田か誰かに、塙の表情が死んでるって言われたりもしてたけど、やっぱりナイツ好きだよー。

 

御厨貴「知の格闘― 掟破りの政治学講義」

2004  政治史・政治学の学者、御厨貴さんの「知の格闘― 掟破りの政治学講義」というちくま新書です。御厨先生と言えば、政治家等への聞き書き、オーラル・ヒストリーで有名で、テレビの「時事放談」の聞き手を長らく務めていたので、あの、額の広いお顔はお馴染みです。

この本は、御厨さんが2011年に60歳で東大を退職する際に、業績の分野毎に全6回の最終講義を行った際のいわば記録です。各回とも、御厨さん自身による振り返り、気鋭の若手学者(建築は隈研吾さんですが)によるコメント、御厨さんの釈明、質疑応答で3時間半、土曜の午後まるまる使ってという力の入ったもの。新書とはいえ、約300pの力作です。

各分野というのが、オーラル・ヒストリー、公共政策、政治史、建築と政治、書評と時評、メディア(=映像)と政治というもの。読みだすと実に面白いです。政治という生臭いものを対象としながら、御厨氏自身はそれにのめりこまない、冷静なアプローチ、そして対象へのある種の毒舌。

小泉純一郎ではオーラル・ヒストリーが書けない理由や、宮沢喜一と竹下登への感想、後藤田正晴の菅直人評など興味深い。建築と政治というのは、政治家の家や、政治の舞台の建物の位置や構造から権力との関係を解きほぐすといったもの。東日本大震災復興構想会議のためにも尽力し、大変すぎたために同窓会はやりたくないとか。

それだけ自由に発言する御厨氏ですが、若手からは、先生の手法や考え方について、「政策そのものには興味がない」など、遠慮のない批評を受けています。

過去の著作も面白そうで、最終講義ながら、だいぶ遅れての御厨先生の入門編を読んだような気持になりました。

 

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