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伊藤比呂美「新訳 説教節 小栗判官・しんとく丸・山椒大夫」

202002  スーパー歌舞伎Ⅱ「新版オグリ」が、元は説教節だとは聞いていたのですが、その説教節というジャンルが何かを知らないままにいたところ、あの伊藤比呂美さんが現代語訳の本「新訳 説教節 小栗判官・しんとく丸・山椒大夫」を2015年に出していた!ということで読んでみました。

あの、というのは、詩人である伊藤さんの独特のリズム感のある子育てエッセー「良いおっぱい悪いおっぱい」「おなかほっぺおしり」「おなかほっぺおしりふとももそしてふともも」「コドモより親が大事」「伊藤フキゲン製作所」は当時ほんとによく読んだものでして、しばらく空いて、あの熊本生活を一緒にしていたポーランド文学者の夫と離婚していたと知った時はびっくりしたのでした。伊藤さんの真似をして、子どもに「ぐりとぐら」を読むときには、「ぼくらの名前はぐりとぐら~」にメロディをつけて歌っていたのが懐かしい。

さて、説教節とは、1600年頃を最盛期とする、神仏のご利益を物語で語る口承文芸だそうで、題材は能や浄瑠璃に転化したものもあります。この本の3作以外では、「苅萱」「信太妻(葛の葉)」が有名だそうです。ささら芸人によって街角で語られ、物語性が豊かで、庶民的な芸能といえましょう。

この本では、詩人としての言葉への感性を生かして、手紙や道行の地名等にとても詩的な表現をしながら、昔話のように物語が紡がれていきます。

「小栗判官」は、優れているものの不遜な小栗、人喰い馬鬼鹿毛の乗りこなし、流されて売られ、遊女となるのを拒否して懸命に働く照手、休みをもらって餓鬼病の車を引く照手、病気が治って国司として照手を迎えに行く小栗、と、お話はオグリと同じ。よく働く強い女性が描かれていることに惹かれたと伊藤さんがいうように、ほんとに照手が毅然としていてさわやかです。こちらの十人衆は毒殺されたまま復活できないんですね。地獄の十王になるけれど。

「しんとく丸」は、「俊徳丸」すなわち「摂州合邦辻」の元といわれていますが、こちらは父の後妻との禁断の愛という要素はなく、むしろ継母の呪いで病んだしんとく丸と乙姫との純愛物語になっています。病む前のしんとく丸の手紙とそれへの乙姫の返事が、小栗と照手とのやり取りと同じところが面白いです。寺山修司の「身毒丸」にもつながっているんですね。

「山椒大夫」は、森鴎外の小説、子ども向けの昔話「安寿と厨子王」のお話。改めて読むと、山椒大夫のところから弟厨子王を逃がして一人残った安寿が責め殺される場面が残忍です。昔から、若い美しい女性が責めさいなまれる場面はある意味人気があったのでしょうか。

最後に「わたしの説教節」として、伊藤さんと説教節について、わかりやすい説明がありますし、裏表紙には、説教節を語る伊藤さんのイラストがあったりして、面白い本でした。

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