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壽初春大歌舞伎「義経腰越状 五斗三番叟」「連獅子」「鰯売戀曳網」

   2001_20200114223502お正月の歌舞伎座で澤瀉屋の連獅子!ということで、前方センターで見てまいりました夜の部です。

一つ目は「義経腰越状 五斗三番叟」。やる気をなくして遊興にふけっている義経(芝翫)を、亀井六郎(猿之助)が諫めます。えー連獅子目当てだったのに、芝居の冒頭、いきなり隈取の奴みたいな拵え(荒事の若者ってことですね)で立ち回りですよ。化粧が鮮やかで、若々しくて光り輝いててもう手を合わせたいありがたさ。「足の親指に注目」というTwitterがあったので見ていたのですが、ほんとに歩く時以外は親指がピン、と立ってるんですよ。

世話もののひねった役だといい味の芝翫ですが、ストレートにやってほしい義経としての声が残念。どうしても、手前で控えながら細かい表情をしている四代目を見ちゃいます。

さて、泉三郎(歌六)によって軍師として呼ばれた五斗兵衛(白鸚)。義経の遊興をそそのかしている太郎(錦吾)、次郎(男女蔵)は、御目見えまで酒を飲まないという五斗兵衛に酒を勧めます。断っていたくせにどんどん大きな杯を求めて飲む五斗兵衛。端正な武士の白鸚さんが酔っていく過程の演技がさすが緻密です。

そして竹田奴登場。これまで阿古屋でしか見たことなかったですが、この演目での竹田奴はけっこうしゃべるし、立ち回り、アクロバットと忙しいです。そして最後は三番叟に。おめでたくて楽しい演目でした。

いよいよ澤瀉屋の「連獅子」です。もう三味線の最初から、(立三味線は稀音家祐介さん)盛り上がっていきます。すぐに狂言師左近(猿之助)と右近(團子)が出てきます。

見てませんが、「ノンストップ」の密着で「感想は?」という質問に対し、「なにもない。当たり前だから」と答えた四代目。そう、彼が團子の名をもらったときから、澤瀉屋を継いでいく者として、この連獅子は必須のものであり、いつかはやるのが当たり前の演目だったということでしょう。しかし、それが初春の歌舞伎座であるというのは、これまでの四代目の活躍があってこその晴れ舞台です。

もう公演も半ばとあって、四代目は余裕さえ感じられる自在な舞踊、團子は若々しく、きっちりとついていきます。後見は、四代目が鬘でとてもお年に見えない若さの寿猿さん、團子が段之さん。澤瀉屋なので、振りが派手で見てて面白いです。

崖から突き落とし、水面に映る親獅子を見て仔獅子が登ってくるくだりもとてもわかりやすく、心配し、子が登ってくるのを待つ親の気持ちがストレートに伝わってきました。私が連獅子を初めて見たのはシネマ歌舞伎の中村屋でしたが、その時は前シテの意味があまりよくわからず、その後国立劇場の鑑賞教室も経て、今回は直前にアシェットのDVD(22年4月の中村屋の連獅子)で予習していったので、さらによくわかりました。間狂言は男女蔵と福之助。愛嬌は男女蔵さんですが、福之助も体幹の強さというか、舞踊のうまさで見せます。

そして後シテです。激しい動きの連続で、一瞬も目を離せません。ここまでくると、四代目もオーラ全開。隈取の奥のドヤ顔が美しく、観客の心を鷲掴みです。初日のNHK中継のときよりも化粧がうまくなった気のする團子。お囃子もいやがうえにも盛り上がり、観客もテンションMAX、最後は、正面の私が二人の視界に入っていると信じて最大限の拍手を送りました。

舞踊では、芝居以上にオーラ全開の四代目、劇場全体を掌握するような圧、ああ、素晴らしいです。そして誰よりもそれを感じたであろう團子君、ますますがんばってほしいです。

3演目めは、三島由紀夫作の「鰯売戀曳網」。中村屋ファンからは「鰯売はもういいからもっと古典を」という声がありましたが、事前に「三島由紀夫と歌舞伎」という本を読んだら、三島の新作歌舞伎5本の中でも、御伽草子を題材に、歌舞伎の伝統をうまく入れた傑作で、初演は三島の愛した六代目歌右衛門と十七代目勘三郎、十八代目勘三郎と玉三郎でも上演されているという中村屋ゆかりの演目だったんですね。

鰯売の猿源氏(勘九郎)は、見染めた傾城の蛍火(七之助)に会うため大名を装いますが、蛍火は、もと武家の姫でしたが、鰯売の声に引かれて城を出奔したときに騙されて傾城となったのです。結局、姫を助けに来た次郎太のおかげで身請けのうえ、蛍火は猿源氏と結ばれます。

猿源氏の純で愛らしい人柄、応援する父海老名(東蔵)、馬喰(男女蔵)も楽しいうえに、蛍火の朋輩の女性たち(笑也、笑三郎、鶴松)らも賑やかで、しかもハッピーエンドという、お正月にふさわしい演目。あの三島がこんな芝居を書くなんてと思います。禿で勘太郎も出てましたが、ちょっとした動作の勘がよくて、かわいかった。

三島が歌右衛門の崇拝者だったということを思うと、蛍火が後半、次郎太その他を一喝する威厳のある場面など、ただの恋する女でない蛍火の描き方が、今の目から見ても好感が持てますし、またそれをきっちり演じる七之助。勘九郎の愛嬌と身体能力等、中村兄弟の魅力をたっぷり堪能できる、いい演目だと思いました。

もちろん、勘九郎と七之助には、もっともっといろいろな役をやってほしいですが。

(追記―連獅子幕見)

日毎に成長しているという團子くん。何日もたっていないのに、躍動感と自信が増したような気がしました。ちょっとドヤ顔も入って、オレを見ろ的な澤瀉屋の雰囲気も感じられました。振りも派手で、芝居心たっぷりの前シテ、そしてやはり盛り上がる後シテでは、立ち見も出ている幕見席から1階まで劇場全体に拍手と感動が広がっていく四代目ワールド連獅子!行ってよかった!

(ところで、下村青さんが観劇後楽屋にいらしたら、ビデオを見ながら四代目が團子を指導していたんだそうです。毎日ダメ出ししてるんだ…)

ところで、ふと、猿翁さんと亀治郎の連獅子初演ってどうだったんだろうって思いました。「團子がこんなに踊れるとは」と言われている團子とちがって、亀治郎は小さい頃から「この子は踊りがうまい」って澤瀉屋ファンには期待されてたと思いますし、猿翁さんの人気もすごかったですからね。

データベースで調べたら、亀治郎初演はなんと11歳、南座で段四郎さんと。間狂言は先代猿之助・宗十郎という豪華版です。歌舞伎座では14歳のとき、先代と、間狂言は段四郎、歌六。すごかっただろうなあ。

(追記―連獅子幕見その2)

千穐楽近くになって、また見られました。連日札止めの盛況で、発売時間前でも立ち見。團子くん、振りがしっかり身について動きが生き生きと滑らか。四代目との連れ舞感もますます高まっていて、ほんとに素晴らしいです。途中で四代目がポン、って團子くんの肩をたたくのがまたぐっときます。

地方の皆さんの盛り上がり(長唄 今藤尚之さん、巳津也さん、杵屋佐喜さん、そして傳左衛門、傅次郎兄弟の気合の入った掛け声!)、クライマックスに向けての観客の興奮と拍手、ああ、歌舞伎ってすばらしい。

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