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吉田修一「国宝」

201910

  歌舞伎役者を主人公とした大河小説、吉田修一「国宝」上下巻です。主人公の少年時代から人間国宝となるまで、単行本上下700頁の大作で、昨年出版されてから、読まなくちゃと思ってました。

東京オリンピックの年、長崎の極道親分の息子である喜久雄は、新年会で「関の扉」の墨染を踊り、喝采を受けますが、その場での抗争で父はあえなく殺されます。喜久雄は、いろいろあって大阪の歌舞伎役者花井半次郎に預けられ、部屋子として、半次郎の息子俊介と生涯を通じて芸を競っていきます…。

上巻の半分近くまでは、極道の息子らしく肝の据わった喜久雄と、組の若いもんである徳次のバディが中心で、バイオレンス描写も多くてややじりじりしますが(私が歌舞伎めあてなので)、喜久雄と俊介が「二人道成寺」で人気が出てからは、歌舞伎の物語になっていきます。しかし、喜久雄も俊介も才能ある役者なのに、その道は順調ではありません。後ろ盾の半次郎が亡くなってからは、二人には次から次へとたいへんな出来事が降ってきて、歌舞伎を知らない読者も、その波乱万丈のストーリーを楽しむでしょう。

著者の吉田さんは、鴈治郎さんに黒衣を作ってもらって、楽屋や舞台回りの出入り自由な立場で取材をしたそうです。なるほど、役者の楽屋の様子、芝居の前の拵え、化粧に関する間合いや、花道と舞台の距離感等の描写がとてもリアル。いろいろな出来事の引き起こす結果もそうかもしれないと納得がいきます。

201910_20191021235301ただ、後半に進むにつれ、喜久雄は芸に対してストイックになっていくんですが、芝居では芸の素晴らしさの描写が難しいのか、描写されるのが道成寺や藤娘など、舞踊に限られていて、芝居といっても阿古屋だったりするのがちょっと寂しいです。女方の最高峰といえば、歌右衛門さんとか玉三郎さんを思い浮かべるわけですが、政岡や揚巻やおとくがないのはなあ。好きな歌舞伎の話だからそんなことまで思うのかもしれません。

出てくる女性たちが、皆そろって、自分をしっかり持った、つまらないことにこだわらない清々しい女性たちであることが好ましく、読後感を気持ちのよいものにしています。

蛇足ですが、ひとつ残念だったのが、「立女形」に「たておんながた」と振り仮名つけたものが何度もでてきたこと。「たておやま」ですよねえ。なぜ間違っちゃったんだろう。

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