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「人形の家 Part2」とイプセン「人形の家」

  201909イプセンの「人形の家」で、最後に家を出て行ったノラが15年後に家に帰ってきたらどうなるか、という続編「人形の家 Part2」です。作者はアメリカのルーカス・ナス、演出は栗山民也。栗山さんらしい、緻密な台詞劇です。

ノラ(永作博美)がプセンの「人形の家」で、最後に家を出て行ったノラが15年後に家に帰ってきたらどうなるか、という続編「人形の家 Part2」です。作者はアメリカのルーカス・ナス、演出は栗山民也。休憩なし、1時間40分の濃密な芝居でした。

ノラ(永作博美)が15年ぶりに家族の家に帰ってきて、女中のアンヌ・マリー(梅沢昌代)に迎えられます。家を出た後、「女性は結婚に縛られるべきでない」という自伝的な本を書いて成功したノラですが、夫トルヴェル(山崎一)との離婚が成立していないことが判明し、そのことによって窮地に陥ったノラは、改めて離婚してもらうために帰ってきたのです。ノラはアンヌ・マリー、トルヴェル、そして殆ど母のことを覚えていない娘エミー(那須凛)と対峙していきます。そして…。

すべての場が、ノラと3人のいずれかの二人芝居。ノラが今どんな状況か、15年間家族がどう生きてきたか、登場人物同士も、観客にもわからないわけですから、それが解き明かされ、状況と感情が台詞で積み重ねられていく、栗山さんらしい、緻密な台詞劇です。

永作博美、さすがですよ。小柄で童顔、どうかすると普通の人なんですが、細身のスタイルと透明感のある美貌、明瞭な台詞、普通の女性から非凡な輝きがあふれているような人。梅沢昌代の自然な老いの表現とノラへの複雑な感情、山崎一の立派な老紳士の風貌と苦悩、舞台人としてのキャリアを感じさせる力量があますことなく示されていました。

那須凛、しっかり育った利発な娘エミー、彼女の登場で舞台の色がさっと変わったかのように感じさせます。深みのあるよい声で、エミーの気持ちを的確に伝えていて、いい女優だと思いました。

というわけで、シンプルな舞台に、力のこもった芝居は堪能したのですが、お話は…。家庭劇であるだけに、ノラに共感できるかどうかで、この舞台の評価が左右されてしまうのですが、ノラが幼い3人の子どもを置いて出て行った、ということがわかってから(つまり最初の場から)どうにも共感できなくて参りました。たしか「人形の家」では、最後の場面で突然ノラが「この結婚はまちがっている」と自覚して家を出るんですよね。「子どもは母親が育てるべき」というのは固定観念だという風潮にはなっていますけど、どうしても心情的に、子どもが母親から置いて行かれるというのは悲しいんです。

そういう気持ちで見ていると、エミーの言うことの方がうなずけるし、トルヴェルはノラが望む方向で変わったのに、もうノラには伝わらなくて、なんだかトルヴェルがかわいそうに見えてしまいました。やっぱり元の「人形の家」のいきさつが知りたくなりました。

戯曲イプセン「人形の家」(坂口玲子訳)

201909_20190913074101  その後、「人形の家」を読んでみました。ノラは、夫トルヴェルから人形のように愛されていますが、実はトルヴェルの転地療養費用を夫に内緒でクログスタから借りていて、家計を浮かせたり、密かに清書の内職をしたりして返済しています。不祥事でトルヴェルに解雇されそうになったクログスタは、ノラに借金の際の父の署名の偽造のことを暴露すると脅し、トルヴェルに解雇をやめさせるようとりなすことを求めます。

いろいろあって、結局クログスタは借用書を返送してくるのですが、真実を知って怒り、その後借金(というか書名偽造)問題が片付いてもとに戻ろうとするトルヴェルに対し、ノラは、「これまで真面目に話したことはなかった」―自分は一人前の人間として扱われていなかった―「もう愛していない」と言って家を出るのです。

ああ、やっぱり共感できないなあ。愛と信頼がなくなった夫婦でも、子どものために別れるべきではない、とは思わないけれど、自分のプライドをすべてに優先させるのは大人じゃないと思えて。もちろん、これは戯曲なので、途中の議論は省略したうえで結論としてノラが出ていくことを描いたところに新しさがあるってことかもしれませんが。

 

 

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