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坂田藤十郎「坂田藤十郎―歌舞伎の真髄を生きる」

  201908 坂田藤十郎さんが、鴈治郎から藤十郎を襲名したときに、これまでの役者人生と「坂田藤十郎」という名への思いを書いた「坂田藤十郎― 歌舞伎の真髄を生きる」です。襲名が2005年、この本の出版は2006年、藤十郎さんが74歳のときですね。

版が少し大きめ(A5)で、写真が豊富です。舞台はたぶん多くが襲名公演の写真、旅行時のオフショット、家族写真も鴈治郎さん、扇雀さんの家族も含めた立派なお写真。しかしなんといっても、最初のページのお若い頃のお初の美しさといったら、まさに可憐で恋に思いつめる若い娘!

話は、1953年、まだ21歳の藤十郎(当時扇雀)さんが、近松門左衛門の「曾根崎心中」を宇野信夫脚本で250年ぶりに復活上演させた、そのヒロインお初に抜擢され、人気を博したところから始まります。徳兵衛がお初の素足を押し抱くという官能的なDsc_1084 場面や、花道をお初が徳兵衛の手を引いて走るという斬新な演出も一から藤十郎さんと演出もしていた宇野氏とで作り上げたわけです。

第2章以降は、歌舞伎役者としての修行や、武智歌舞伎とのこと、歌舞伎に対する藤十郎さんの考えがつづられていきます。武智歌舞伎がどんなものだったのか、ぴんときませんが(前から名前だけは知っていましたが、武智鉄二氏が、愛染恭子の「白日夢」の監督だったとは知らなかった!)、若き藤十郎さんは、武智歌舞伎で人気を博し、一流の師に付き、役者として成長していきます。

そして近松門左衛門の作品を専門に上演する「近松座」をつくり、「曾根崎心中」を海外で上演して手ごたえを得、近松がそのために多数の作品を書いた藤十郎襲名と上方歌舞伎の興隆を願って努力を続けます。丸本歌舞伎の洗い直し、演出の見直しと、さすが猿之助が「何を訊いても理論的にきちんと答えてくれる藤十郎おじさま」と尊敬する役者。

藤十郎さん、老け役はやらないと決めているのだそうです(2回だけやったのは、歌右衛門さんと出たときに若いほうをやるのだと思っていたら歌右衛門さんにとられたのだとか。演目は何だったんでしょう)。そういえば、私が見たのは、舞踊を除けば「伽羅先代萩」の政岡、「河庄」の治兵衛、「帯屋」の長右衛門、「新口村」の忠兵衛。確かに老け役はないし、長右衛門は85歳を超えて男盛りの色気がありました。最近は、口上に長老として出ていらっしゃいますが、さすがに細かいしどころのあるお役は難しいかも。お初を見ていないのは残念です。

若手の新作に対しては、「歌舞伎の技術さえ用いれば歌舞伎」といい、自身が東宝や映画に出ていたこともあって、寛容なようにお見受けしますが、技術に対して求めるものはやはり厳しい方だなと思いました。

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