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2019年6月

ドラマ「きのう何食べた?」と「いだてん」第一部完

  201906_20190629140101テレビ東京のドラマ「きのう何食べた?」終わってしまいました。よしながふみの原作コミックは料理好きの友人の間で話題でしたが、読んだことがなく、西島・内野というキャスティングだけで見始めましたが、ほんとに丁寧に作られた、最初から最後まで満足度の高いドラマでした。

弁護士で料理好きのシローさん(西島秀俊)と、美容師のケンジ(内野聖陽)はゲイカップル。シローさんにぞっこんで乙女なケンジと、カミングアウトに抵抗があることもあって、ツンデレなシローさん。このシローさんは宛て書きかというくらい、西島秀俊にはまっているんですが、乙女なケンジに見事になりきっている内野聖陽がすごすぎ。この人の憑依的な演技力を改めて思い知りました。あの家康?竜馬?勘助?というくらい。

もっと絡みが見たかった、もう一組のカップル、小日向さん(山本耕史)と航(磯村勇斗)も、とってもよかった。あくまで外見はかっこいいのに航にメロメロな小日向さんと、客観的にはダサいビジュアルなのに、小悪魔な航。山本耕史ー内野聖陽の場面は、家康と三成@真田丸だ、など。

原作コミックがよいためもあるのでしょうが、リアルなセリフが、一生懸命生きている人たちを尊重する描き方で、どの回もすばらしく、毎回ケンジの気持ちになって泣いちゃってました。梶芽衣子、田中美佐子、マキタスポーツ、奥貫薫ら、共演者も、みんな合っていて、テーマ曲もすごくよかったです。

 

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  さて、低視聴率のニュースにはらはらしながら、「いだてん」いだてん前回の記事)の第一部、勘九郎主演部分が終わりました。毎回ちがう見せ方をしながら、近代日本においてスポーツと女性がどういう歴史を辿ってきたかを見事に描いた傑作でした。

丹念に歴史のエピソードをを拾ってきたり、セットや衣装に凝ったNHKスタッフも立派ですが、とにかくこの、誰も描いたことのない時代を、こんなに魅力的に描いて、なお押しつけがましくなく、スポーツや女性の自由のすばらしさを感じさせてくれるクドカンの脚本。何回にもわたる伏線が心憎いばかりで、何度も前の回を見たくなります。

第一部最後の回、シマちゃん(杉崎花)の死は悲しすぎる、と思ってみていると、鮮やかな人見絹江(菅原小春)の登場で、関東大震災で焼けてしまった東京の町に、明るい希望の灯が点る展開にはうなりました。熊本の幾江さん(大竹しのぶ)をはじめ、第一部の主要人物が生きてる人は総出で、でもただの顔見世になっていないところもうまい。さらに美川くんは出さずにかえって見る側に思い出させるところも愛を感じます。

第2部も楽しみです。

 

 

 

映画「アラジン」

201906_20190626205001  映画「アラジン」です。原作は「アラビアン・ナイト」の「アラジンと魔法のランプ」ですが(これも子どもの頃読んでかなり面白かった)、1992年のディズニー・アニメの実写版のかなり忠実な映画化。

 このアニメ版は、とにかくロビン・ウィリアムズ(吹替は山寺宏一)のランプの魔人ジニーの動きがスピーディで、表情豊か。初めて見たときは、ディズニーなのに、日本のアニメの影響が強いなあと思いました。アラン・メンケンの曲もよくて、オリジナル(ジャスミンはレア・サロンガ!)、吹替(アラジンは石井一孝、ジャスミンは麻生かほ里)ともに歌でも楽しめました。普及版のビデオが出始めた頃で、どれだけ繰り返し見たことか。

 ミュージカル版も成功していたので、評判のよいこの映画、とても楽しみにしていましたが、期待を上回る出来。アラジン(メナ・マスード)も王女ジャスミン(ナオミ・スコット)も、埃っぽいが活気のあるアグラバーの街に負けない濃い存在感で、画面に登場した時からぴったり。

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 ジャスミンは、アニメのときから、気が強くて頼もしい王女ですが、この映画ではさらに王位を継ぐために勉強し、堂々とした女性に描かれているのが今風です(の割には、冒頭、お金でモノを買うことを知らないのは、元のアニメでの動かせない設定なんでしょう)。二人が心を通わせていくエピソードが丁寧に描かれていているのもいいです。

ジニーのウィル・スミスの軽快さはさすが。アニメのジニーの魅力に、ダンスも加わって最強。「Friend Like Me」とか、王子の行進の決まり具合の心地よさが、アニメを思い出します。

一番ちがうのはジャファー。ディズニーアニメのヴィランの中でも、最強に近いと思うんですが、映画のジャファーのマーワン・ケンザリは、くりくりした目の美しいイケメンなんですよ。この人これから売れますね。アニメ版タイプのジャファーに未練はありますが、これはこれでいいかも。

(ところで、洞窟を出たところで、あると思っていたランプがないときのジャファーの Noooooo!って、いまだにうちの家族はみんな使うんですよ。吹き替え版はなーーいーー!って言ってました)

KERA・MAP「キネマと恋人」@世田谷パブリックシアター

201906_2   2016年の初演時は、シアタートラムでの上演で、チケットが取れなかったKERA・MAPの「キネマと恋人」の再演です。今回は世田谷パブリックシアター。「百年の秘密」修道女たち」とはまたちがった傑作でした。

ストーリーはウディ・アレンの傑作映画「カイロの紫のバラ」です。ミア・ファロー演じる妻は横暴な夫と暮らしていますが、日々の唯一の楽しみは映画を見ること。ある日画面からハンサムな男優が飛び出してきて、彼女とデートしますが…というもの。

さて、このお芝居の舞台は、1930年代の日本のとある島。唯一の映画館に、ハルコ(緒川たまき)が通っています。彼女が好きなのは、マルクス兄弟などのコメディと、時代劇「月之輔半次郎捕物帳」シリーズの間坂寅蔵役の高木高助(妻夫木聡)。ある日寅蔵がフィルムから飛び出してきます…。

島では長崎地方を彷彿させる創作方言が使われていて、「ごめんちゃい」などと言う、ちょっと猫背(ミア・ファローと同じ!)の緒川たまきがかわいくて魅力的でもう大好き。これまでも夫であるケラさんの芝居には出ていますが、この作品ではほぼ出ずっぱりの主演で、ケラさんとの関係はティム・バートンとヘレン・ボナム・カーターみたい!なんて思ったりして。

妻夫木君も、俳優である高助と映画の寅蔵を見事に演じ分けていてすごいです。時代劇の所作がきまっているのは、大河ドラマ主演しているんですもんね。この前は野田秀樹の桜の森の耳男だし、すっかり実力派俳優。

ハルコの妹で男に苦労するミチル(ともさかりえ)、先日「LIFE LIFE LIFE!」でも好演していたばかりで、まったくちがう役ですがどちらもすばらしい。どの役も印象的で舞台を引き締めていた村岡希美(この方、猫背椿さんに似てる)、横暴で単純な夫の演技がうますぎて、キライになっちゃうハルコの夫三上市朗(そういえばウディの映画でもこの役の人大キライだった)など、もうみんなよかったです!

私的には、生活のつらさを忘れさせてくれる映画というものの意味、大好きな役者に、あそこのあれは…と話して「君はわかっている」と言ってもらえた喜びなど、演劇ファンである自分にも刺さる場面やセリフがちりばめられていて、ジーンとする瞬間が何度もありました。

ああ、でも、ラストはやっぱりカイロと同じだったかー。いや、この素材を選んだ時点で、ちがうラストはありえないんでしょうが、やっぱりせつなくて悲しかったです。

映画部分の上映をはじめ、いつもながら上田大樹さんの映像が、高度で美しくてでも温かみがあって素晴らしい。また、1幕、2幕がそれぞれ95分もあって、場面割も細かいんですが、転換がダンスと一体になっていて、それ自体楽しめるんですよ。この振付が小野寺修二さん。シンプルながら機能美で役者の動きを引き立てる舞台美術が二村周作さん。美しい照明が関口裕二さん、と、もうケラさんの作品世界を支えるスタッフも盤石でした。

 

鈴木英一「十代目松本幸四郎への軌跡」

201906kousirou  十代目幸四郎襲名直後の4月出版の「十代目松本幸四郎への軌跡」という本です。著者鈴木英一氏は、歌舞伎研究者で、数々の染五郎の新作舞台や舞踊の制作に補綴や作詞で関わり、さらに常磐津和英太夫として山台にも座るという、いわば業界の方。

「七代目染五郎物語」という副題のとおり、染五郎としての八面六臂の活躍の記録です。タイトルとこの表紙からは、主な役を写真とともに綴るのかなと思っていたんですが(役柄の幅の広い人なのでいろいろ見られて楽しみ)、もっと幸四郎その人の舞台芸術にかかる姿勢とか、新作制作の経緯などを、300ページに書いた力作。

子役時代から踊りも芝居もよく、歌舞伎でも現代劇でも役にも恵まれてきたうえに、ほぼブランクなしで四十代半ばまで活躍している方なので、普通の歌舞伎の大役での好演の話を省いたうえでも、中味が濃いです。関西松竹の書庫で上方歌舞伎の資料を調べたり、「阿弖流為」や江戸川乱歩を歌舞伎でもやったり、復活狂言「敷島譚」や「三国一夜物語」、「鯉つかみ」に取り組んだり。

日本舞踊松本流の家元松本錦升としての活動も多彩です。松鸚會、傾奇おどり、渋谷金王丸伝説。歌舞伎座で単独で舞踊の演目出す人なのに、どこまで舞踊にも貪欲なのか。

しかし歌舞伎に出ているときは、とにかく朝から晩までいろいろな重い役。古典も新作も二枚目も弁慶も。女方もかわいらしくてゴツゴツしていない。みたに歌舞伎のような芝居でのはまり方。とにかくやりたいこと全部やりすぎて、体壊さないでほしいです。

小野幸恵さんによる、12本のコラムでは、普通に歌舞伎役者としての幸四郎の魅力を書いてくれていて、ちょっとほっとします。

六月大歌舞伎「月光露針路日本 風雲児たち」

201906_1   三谷幸喜さんがPARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」以来、13年ぶりに歌舞伎の脚本を書いたことで話題の、六月歌舞伎座夜の部「月光露針路日本 風雲児たち」です。 高田馬場は何度もDVDで見ていましたので、歌舞伎座での観劇をとっても楽しみにしておりました。5月はお稽古で休演の幸四郎・猿之助は、余裕があったのか、バラエティに出まくってくれるし。

以下、ネタバレは控えめで。

 まず松也(眼鏡にスーツで教授風)の口上というか、前説。ある意味もったいないくらいの使い方で、声の良さに感激。しっかりお客を温めます。今日はzeroに出るのか。  

さてお話は、江戸後期、1782年に伊勢を出港し、遭難した神昌丸、17人の乗組員。初めて認識したのが(すみません)、二枚目の松十郎さん、幸蔵さん。さすがにこんなにいると、最初舞台がごちゃっとしているんですが、猿之助、愛之助は最初からそこだけピンスポットが当たっているようなオーラで際立っています。そして徐々に乗組員それぞれのキャラクターが立ってくるのは、群像劇が得意な三谷さんならでは。

一行は、オホーツク、ヤクーツク、イルクーツクとロシアを西進していき、とうとう光太夫は、ロシアの西端に近いサンペテルブルクまで達してエカテリーナ女王に帰国を嘆願し、認められます。17人の乗組員のうち、帰国できたのはたった2人でした…。

幸四郎の光太夫、最初のうちは自分のリーダーシップに迷いながら成長し、日本に帰るために皆を引っ張る役柄はぴったり。彼のキャラクターが一貫して造形されていることもあり、見る方もクルーと一緒に旅をしている気持ちになります。

四代目は、紅長的な、チャラチャラした役がおいしくて、公開稽古の取材では、「早く帰りたがる」なんて言われていたとは思えない、終始何かやっている力の入りよう。ラブリンはまたちょっと黒い役ですが、すっきりとかっこよくて。とにかく幸四郎とこの二人が舞台で何かやっているだけでもう私的にはうれしくて、ずっと幸せでした。

脚本は(常になく)早く上がっていたそうですが、やはりお稽古で当て書きの部分があるのか、どの役者さんについても、三谷さんの役者の使い方は最高にうまいです。高麗蔵さん、宗之助さんの高田馬場組はもちろん、彌十郎さん、男女蔵さんの使い方わかってる。彌十郎さん、野田版といい、こういう新作でほんとにいい味出すなあ。千次郎さん、鶴松くん、弘太郎さんも、稽古で膨らんでいったんだろうな。新悟ちゃんもかわいくて、新悟ちゃんでなければ成り立たない役。

染五郎くんが、三幕通して大活躍ですが、すごいお芝居上手になってて、美貌とか、ヒョロヒョロした雰囲気なども生かされていて、とてもよかった。白鸚さんとの絡みも、ドキュメンタリーで見た白鸚さんの厳しい指導を思い出します。

三谷さんのアイドル白鸚さんの、一幕の「黄金の日々」みと、三幕のポチョムキンの洋装のはまり具合と安定感と美しい台詞回し。CMなんてめじゃないくらい、若々しくて素敵。白鸚さんと幸四郎の場面では、二人が演じた「アマデウス」、なんで私見てないのかな、と思ってしまいました。

四代目のエカテリーナ、ポスター以上でしたよ!毛皮もあしらったゴージャスなドレス(さすが前田文子さんの衣装)、王冠、美しいデコルテ、前にすっと出てきたときの輝き、ポチョムキンの台詞への細かい反応。変身の時間があれと思うくらい短くて(顔色違うからたいへんだと思うんですが)、さすが早替わりの超上級者。

前後しますが、この宮廷のドレスの女性たちの美しいこと。猿紫ちゃん、りき彌くんが目を惹きました。竹三郎さんもかわいかった。

おっと、単身歌舞伎座に乗り込んだ八嶋智人、きっちり役割を果たしていました。見得の形もきれいなのは、ほんとに器用な人ですね。3月からこっち、ミュージカル「愛のレキシアター」、劇団かもめんたる「宇宙人はクラゲが嫌い」ときてこの歌舞伎座。観客数はそれぞれ1324、176、1808ですよ。それぞれ印象に残る好演で、事前から終わるまで面白いツイートでしっかり宣伝してくれて、なんて人。この役は松也でもよかったかもしれませんが、クルーとは異質な人間という意味で、はまっていました。

そして、3人の別れの場面。「なぜあそこで笑うのか」とおっしゃる向きもありますが、笑ってもいいんですよ。それだけたっぷりあるし、笑ったり感動したりしていく間に、盛り上がっていきます。ずっとシリアスだとそれに照れちゃうのが三谷さんだし、そこがわかっている、三谷さんの芝居をよく知っている3人。あのほどの良さが品がよくて素敵でした。ある種の俊寛。

実話だけど壮大なストーリーなだけに、歌舞伎とかミュージカルじゃないとショボくなってしまいそうで、歌舞伎座でこの座組で見られてよかったです。カーテンコール2回、何度もやらない歌舞伎座だけに、1回目から立ち始め、2回目はオールスタンディングでした。

【3幕目のみ幕見追記】

3幕目のみ、幕見に行ってきました。イルクーツクの場、エカテリーナの宮殿、そしてイルクーツクの別れ。エカテリーナ宮殿での愛之助にほろり(ここでのマリアンナのいい味)、そして豪華な謁見の場。

ドレスの貴婦人たちはもちろん、衛兵さんたちもみんな彫の深い顔にメイクしてて、立ち姿がすうっとしてかっこいい!一人一人もっとゆっくり顔を確認したくて時間が足りない!その間もポチョムキンと光太夫のやりとりに細かく反応するエカテリーナも見なくちゃいけないんですもん。

今回、やっとエカテリーナの背後に立つ小姓のくん確認。つか、あんなにすぐそばに立っていて、小姓役と知っていたのに目に入らなかったのは、猿さんエカテリーナ様があまりに神々しく光り輝いていたからなんですね。

イルクーツクの別れの場は、やはり2度目なのでじっくり見ることができて、3人の熱演と緩急にぐっときました。帰りたかったよなあ二人。間も数日前とは微妙に変わって、より効果的になっていたように思います。千穐楽まで、どんなふうに進化するんでしょう。

ところで、先日の一階前方席では気づかなかったんですが、愛之助と猿之助がマイクをつけているのがはっきりわかりました。全員がわかったわけではなかったんですが、いつも4階までちゃんと声が届くので、ちょっと驚き。三谷さんの細かい台詞を聞き取りやすくするためだったんでしょうか。そのうちに明らかになりますかね。

(おまけ・池田理代子「女帝エカテリーナ」)

201906_20190626234901 ところで、このお芝居、池田理代子先生の名作「女帝エカテリーナ」を知っているとより面白いです。タイトル通り、ドイツの貴族の少女だったエカテリーナが、ロシアの女王として君臨する一代記なのですが、国王始めダメ男しか知らなかった彼女が初めて恋した強い男がポチョムキン。二人が愛を確かめ合うとき、エカテリーナは、「もうこの広大なロシアを一人で治めなくていいんだ」と言うんですが、そのシーンが最高です。二人はそういう仲なのですよ。

 アンリ・トロワイヤの小説が原作なんですが、原作も面白いですがさすが池田先生という優れたコミック化でして、婦人公論だったかの連載なので表現も大人向けです。ポチョムキンは、エカテリーナとの恋が終わると、美形の若い男を女帝に与え、統治は続けるのですよね。その頃の話かな、などと思ってみておりました。

 

下町ダニーローズ「不幸の正義の味方」@サンモールスタジオ

 201906 志らくさんが定期公演をやっている下町ダニーローズの芝居、「不幸の正義の味方」です。弟子が稽古を見に来ないと激怒して二つ目を前座に降格させたことでTwitterで話題になり、そのハードルの上げっぷりが気になってチケットをとってみました。モロ師岡さんとかキム兄とかも出てるし!劇場は座席数100ほどのサンモールスタジオ。

自由席なんですが、ギリギリで行ったら最前列、舞台の真ん前の20センチくらいの高さのベンチ(座布団付き)の席。足を折り曲げてほぼ体育座りですが、足先は舞台の端についてます。舞台上の座席の経験もありますが、いや、近かった!キャストが前に出てくると、1mくらいですよ。

最初に志らくさんの前説というか最近の話。そして予告通り、芝浜のさわり。この近さでですよ。ほぼ大みそかの女房の告白だけで10分もなかったと思いますが、毒舌シニカルなおじさんが、純な女房の切々たる語り、目がかわいくて泣きそうになっちゃいました。

お芝居はとある箱根の旅館の一夜の話。ネタバレは避けますが、大人の大真面目な遊び心という感じで、こういうのをやりたい気持ちはわかります。志らくさんの中では全部繋がってるんだろうけど、落語やりたくて弟子やってる人達が、この芝居に積極的に関わろうとしないのもわかるような気がしました。でもそこが弟子だろうっていう志らくさんの気持ちももっとも、そりゃ会社のパワハラとはちがいますよね。

出てる役者さん、みなさんとっても個性的でした。知ってる人ばかりのような気がして、帰りにパンフレットで調べたらそうでもなかったっていうくらい、面白いところのある人ばかり。

主役は志らくさん、親友並河にモロ師岡(もともと好きな役者さん。顔大きいの生かしてました)、時の人木村祐一、昔から知ってる二丁拳銃の小堀裕之、動きが面白くて一番大変そうだったぜんじろう、吉本新喜劇に通じるようなコテコテ感のあった原武昭彦、すっきりといい男で美声の幸田友見、長身で迫力のあったコロンボデンゾ―、台詞のしっかりした声のいい奥村香里、小柄なかわいいアイドル小池美由。で、みんな思い出したんですが、消去法であの人が水島裕?全然面影がなかったんですが(熱演でしたけども!)…。

脚本としては、とくに前半、もうちょっとスピード感があればとか、もっと笑いをぶっこんでもとは思いましたが、でもこれだけの役者をそろえて、何かが起きるかもしれない、と期待して通うファンもいるだろうな、という舞台でした。

休演日、過去作品のビデオ鑑賞とサイン会とトークショーで、チケット持ってる人500円っていいサービスだなあ。行けない日で残念。

もひとつおまけ。前説で志らくさんが、蛍光テープの目印のこと、暗転のときのよすがだから、物置いたりして隠さないでね(←それくらい客席が近い)って言ってたんですが、真っ暗な暗転でもほんとに見えるんですよ。これかあと。そして、真ん前なのに、役者さんが位置変えて揃って座ったりする動きって見えないんですよね。暗転ってすごいなと思った次第でした。

 

六月大歌舞伎「寿式三番叟」「女車引」「梶原平三誉石切」「恋飛脚大和往来 封印切」

  201906kabukiza六月大歌舞伎 昼の部です。夜は話題の三谷さんの新作通しですが、昼は歌舞伎らしい古典が並びました。夜主要キャストで活躍の幸四郎、愛之助は昼も活躍(いったいいつお稽古?)。

 1つめは「寿式三番叟」です。おめでたい舞踊として有名ですが、操りとか舌出しのつかない三番叟は初めてのような気がします。はじめは、翁(東蔵)、千載(松江)の厳かな登場、ゆったりした舞(あんなに袖をはらう動作するものですか)。松江さん、白い衣装が似合ってて大きな顔が立派。

 しかしみどころは、三番叟(幸四郎、松也)の激しい舞踊。足を踏み鳴らす「揉みの段」、鈴を鳴らしての「鈴の段」。力強く、スピード感があって、息をつめるように見るしかありません。幸四郎の回転のキレなど、「やっばーい」という語彙力のない感想が浮かんできます。松也も幸さんにくらいついていくようで、大柄な二人のちがった魅力があふれていました。囃子方もよくて、あまり歌舞伎を見慣れていなさそうなお客さんも含めて大盛り上がり。

2つめは、「女車引」。車引の三兄弟の妻たちによる舞踊ですが、車引とはだいぶイメージがちがうたおやかな雰囲気。松王丸の妻千代(魁春)、梅王丸の妻春(雀右衛門)、桜丸の妻(児太郎)。コタちゃんが、大先輩の胸を借りて堂々と舞っていてよかったです。

3つめは、「石切梶原」2015年4月に現白鸚さん2017年5月に彦三郎襲名披露、で見ています。今回は平三(吉右衛門)、六郎太夫(歌六)、梢(米吉)、大庭三郎(又五郎)、俣野五郎(歌昇)、奴萬平(錦之助)、呑助(吉之丞)。米ちゃんが、吉右衛門、歌六でのこの演目で梢をやるのが夢と言っていたのがかなった形ですが、見る方にとっても、今見られるベストな座組みですよ。

吉右衛門さんの梶原が立派で情け深いこと(先月の絵本牛若丸の好々爺とは大違い)、歌六さんの芯のしっかりした老父、米ちゃんの梢も、娘らしさと若妻としての落ち着きがちょうどよくて、とってもよかったです。米ちゃん梢に注目していたせいか、六郎太夫と梢の物語が今までよりぐっと入ってきたような気がしました。

それから歌昇くんの赤っ面俣野!先月朝比奈がぐんぐんよくなっていると評判でしたが、俣野も熱演でしたよう。又五郎さんとはちょっと味わいの違う二枚目だと思うんですが、この役となったら一直線な感じがいいですね。ま、見る方はかしょくんだと思うので憎めないのが難点ですが(片岡亀蔵さんだと心置きなく…なんて)。

最後は一番楽しみにしていた、初めて見る「封印切」。傾城梅川(孝太郎)を身請けするつもりで前金を支払ったものの残金の金策ができない忠兵衛(仁左衛門)。おえん(秀太郎)と治右衛門(彌十郎)は忠兵衛を応援していますが、梅川を身請けしたい八右衛門(愛之助)の挑発に乗った忠兵衛は、実家からもらったと嘘をついた金の封印を切って見せてしまいますが、実は蔵屋敷に届ける公金であり、封印切は重罪。梅川を身請けした忠兵衛は、梅川にそれを打ち明け、おえんたちの祝福を受けながら、死出の旅立ちをするのでした。

松嶋屋の上方狂言、愛之助まで加わっての座組で見るのは初めてのような気がします。柔らかな和事の色男ニザ様、これぞ花車の秀太郎さんの息の合ったやりとり、愛之助の上方言葉の役も大好き。秀太郎さんは後方からだとちょっと聞き取れない部分もあるんですが、ほんとに楽し気でうれしくなるくらいでした。愛之助の八右衛門に、忠兵衛の人気と八右衛門の嫌われ具合をまくしたてるところも、ニザ様と愛之助を比較するみたいで、面白かったです。しかしニザ様が八右衛門をやったこともあるはずですが(テレビでちらっと見ました)、ニザ様が嫌われ者のはずないじゃないですかねえ。

ニザ様の忠兵衛が封印を切るまでの心の動き、覚悟の演技はさすが。まだ始まったばかりなので、これから愛之助との応酬も深まっていくのではと思いました。欲をいうと、どうもニザ様と孝太郎さんって色っぽさが足りない感じ。たかたろさん、うまい人だと思うんですが、恋する傾城を見ているわくわく感がないのは、単に好みです。すみません。

 

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