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2019年5月

オフシアター歌舞伎「女殺油地獄」@新宿FACE

   20190526 オフシアター歌舞伎「女殺油地獄」です。今月まず1週間天王洲の寺田倉庫、そして1週間新宿のライブハウス・格闘技会場の新宿FACEで上演という、まさにオフシアターの特別公演。当初、3Aよりチケット高いし、油地獄は何度か見ているし、と思ったんですが、寺田倉庫での評判もよく、歌舞伎座に行ったら右のかっこいい巨大ポスターがかっこよく、考えたら貴重な機会と思って慌ててチケットを取りました。

  会場は格闘技仕様。正方形の舞台がすり鉢の底のようになっていて、東西南北の座席が取り囲みます。東が正面席のようですが、南北に向かっての芝居も多いです。あちら側に向かって今どんな表情しているんだろうと思うときもありましたが、段差のある5列目からは、役者さんの声も演技も近くて、お芝居を堪能することができました。

芝居自体は、台詞がちょっと現代的、笑える場面を追加しただけで、歌舞伎からそんなに離れていません。照明もシンプルながらすばらしく、義太夫(司太夫)は平易な言葉でわかりやすく、三味線も変化に富んだ緊張感のある音楽で、とてもよかったです。

 最初の場面で、河内屋の息子与兵衛が新地の芸者小菊に入れあげていて借金で首が回らないことが説明されます。この場面(酒場)は初めて見ますが、その後の展開がわかりやすいと思いました。脚本・演出の赤堀雅秋さんの借金取りの浪人小兵衛も合ってます。与兵衛の噂をする町人たちが、殺風景な正方形な舞台の上でも江戸の町人に見えるのはさすが。

 この後は、いつもの野崎参りの場。与兵衛の獅童、いつも舞台に立つだけで華があると思うのですが、自分勝手で見栄っ張りな演技はお手の物。そして27才というお吉の実年齢に近い壱太郎の若々しさ、しっかり者のいい女房ぶりがその後の悲劇を思うと悲しいです。娘のおみつちゃん(浅沼みう)が利発そうで、壱太郎そっくりなのがほほえましい。

 河内屋の場面、与兵衛の両親おさわは吉弥、徳兵衛は橘三郎、何度も演じているお二人のこれ以上はないという芝居。おかち(吉太朗)の仮病の場面は、白稲荷法印(荒川良々)の面白さもあるんですが、おかちが憑依されたときの吉太朗の台詞の迫力!吉太朗くんって、まだ18才の吉弥さんのお弟子さんで、ニザ玉の「土手のお六」でこの子面白い、と思ってから注目していますが、すごいです。この若さで抜擢続きなのもうなづけます。

そしていよいよの豊島屋の場。几帳面な七左衛門(荒川良々)が、お吉と娘を見て、しみじみ「幸せやな」と言い、それを受けてうれしそうに微笑むお吉の表情。この後の展開を思って泣けてしまいました。

七左衛門が仕事に出かけた後、おしゃれな息子のために節句の衣装代を工面してやろうと、勘当したのに金をお吉に託す徳兵衛おさわ夫婦。チラシによると、徳兵衛夫婦が持ってきたのは二人合わせても数万円相当で、与兵衛の方は32万円の借金が、今夜中に返さなければ10倍になるという状況。

徳兵衛たちが帰った後、豊島屋に上がり込む与兵衛は、お吉に借金を頼みますが、どうしても七左衛門の留守に自分の一存では貸せないというお吉を、与兵衛は惨殺します。いつもの油ドロドロはないですが、暗闇にリアルな殺し場。

最後はめったに出ない逮夜。字面から、勝手に「逮捕される夜なんだろうな」と思っていましたが、本来の意味は忌日の前夜のことで、この場によって、与兵衛が首尾よく逃げおおせて金の工面もつき、再び遊び歩いているということがわかり、しかし証拠が出てきて、鮮やかに召し取られます。逮夜なしの上演から、与兵衛は豊島屋から逃げた後すぐ捕まるのかと思っていたので、この場面は意外でした。この場では、 叔父上 山本森右衛門(猿三郎)が印象的。

この形での歌舞伎、もっと見たいと思いました。あと、普通のチラシを3つに折りたたんだパンフレット(すべての配役付き)もありがたかったです。

 

三代目市川猿之助「猿之助の歌舞伎講座」「スーパー歌舞伎」

201905kabukikouza  当代猿之助が好きすぎて、彼のアイドルである三代目猿之助さん(現猿翁)の書いた本ということで読んでみました。四代目が、先月の黒塚についても、三代目がいろいろ本に書いていると言っていたのもきっかけです。

 1冊目は、「猿之助の歌舞伎講座」1984年初版、1989年5刷。新書より一回り大きい正方形の本で、 四の切、新装鏡山再岩藤、當世流小栗判官、黒塚、海外での歌舞伎ゼミナール、などを、豊富なカラー写真で解説していきます。

 三代目の舞台にかける情熱、いかに観客を楽しませるかの工夫や苦労を惜しみなく書いてくれています。これが出版されたころは、40代で一番気力体力があって活躍している頃でしょうに、ここまで読者に親切な本まで出すとは驚きです。

海外での歌舞伎ゼミナールも本格的です。4都市で1か月。人気役者がていねいに海外で歌舞伎を指導し、その過程で歌舞伎の在り方について考える三代目。

第六講に、「女方・デフォルメの美意識」と題し、女方の修行のことが書かれています。澤瀉屋は立ち役の家系ですが、二代目が、「役者には最終的に色気がなきゃだめだ、團子(三代目)だけは女方のできる役者にしたい」と言って、藤間勘十郎(二代目)さんのところに三代目を預けたとあります(当時の二代目の妻が紫さん!)。三代目曰く、若い頃はやせ型で美しかったが、成長後首は短くずんぐりになったものの、勘十郎さんに六代目菊五郎に似ているといわれ、体型が不利だからこそ女方を美しく見せるための努力をしたと。

最後のページに梅原猛さんの「猿之助賛」があります。演劇に対する猿之助の情熱を称賛しつつ、「彼のような新しい歌舞伎の創造者には、真に新しい、歌舞伎の脚本が必要なのである」――これがきっかけで、梅原さんが「ヤマトタケル」を書くんですね。

 

201905_4 2冊目は、「スーパー歌舞伎 ― ものづくりノート」(2003年)です。集英社新書、300ページとたっぷり。題名通り、第1作の「ヤマトタケル」から、「新・三国志 Ⅱ」までについて、制作の過程を克明に記載しています。

 いや、すさまじい。「ヤマトタケル」の初演は1986年2月、それから2003年の「新・三国志Ⅲ」まで、9作を制作しています。脚本家は別にいるといっても、第1稿にダメ出しして脚本を練り上げ、美術、衣装のイメージを指定し、音楽を決めていくのはまさに猿之助。新作で出演者も多いので、稽古もたいへんです。

 驚くべきなのは、当時人気役者である三代目が、復活通し狂言や、連獅子などで毎月のように舞台に立ちながら(しかも七月は今の海老蔵のような猿之助奮闘公演!)、これらの大作を作り上げていったことです。そして、関係するスタッフが国際的なこと!京劇の学院長さんや、ドイツの宙乗りの第一人者の力を借りて、どこまでも自分の理想を追求する三代目。

フランスでのオペラ「コックドール」、バイエルンのオペラ「影のない女」の演出の経緯もあります。日本と違って、休み時間をきっちりとるキャストに、身をもって演じながら教える苦労。

1995年から2000年にかけて、春秋座で苦手な役に挑戦する自主公演も行っていますし、澤瀉屋の御曹司ではない役者さんを集めて二十一世紀歌舞伎組を作って公演をしたり、とその意欲はとどまるところをしりません。

記述も極めて明確で、ご自身の考えがしっかりあるところにも感心します。演技も踊りはもちろん、演出家としても決断は早く、役者の育て方もうまい四代目、すごいと思っていましたが、三代目の仕事ぶりをみると、新作の制作頻度、国際的な活動、他の分野の一流の方々との交流、歌舞伎座での奮闘公演、二十一世紀歌舞伎組の育成等、四代目にしてまだまだ三代目には及ばないといえましょう。

(しかしながら、四代目が三代目よりすごいところもあって、まずきれい<←ひいき!>、女方も含めると役柄が広い、同世代の人気役者との共演は歌舞伎ファンを喜ばせている、大幹部と若手の間の世代として若手を育て機会を与えている、現代劇でも名演を残している、バラエティ番組をさらりとこなして、若い層にもアピールしている…)

歌舞伎というだけでなく、真摯にものづくりを行う天才の克明な記録という点で、すばらしい本なのですが、前述のようにこの本の出版は2003年2月、三代目は、この年の11月の博多座「西太后」(藤間紫主演)公演中に病に倒れ、2012年の澤瀉屋4人同時襲名公演まで歌舞伎の舞台に立つことができませんでした。結果的に、この本は、三代目が病に倒れるまでのほぼ全記録という形となりました。

このときまだ64才、体力頼みのお役はともかく、歌舞伎役者としてはこれからが楽しみというお年です。映像でちらりと見た筆屋幸兵衛や加賀鳶の迫力、古典でもファンの方はもっと見たかったことでしょう。今の大幹部との共演だって、みられたはずです。

その後に書かれた日経「私の履歴書」(2014年)の記述の確かさはこの本と同様ですし、四代目へのアドバイスなども的確で驚きますが、その考えをそのまま言葉で伝えることが難しくなったことも、どんなにもどかしい思いをされただろうと、悲しくせつないです。

できうれば、このすぐれた見識を、本という形ででももっと残していただけたらな、と思いました。

「海辺のカフカ」@赤坂ACTシアター

201905_3  村上春樹作品の舞台化、蜷川幸雄演出の「海辺のカフカ」です。2008年、フランク・ギャラティによる英語版の初演の後、その翻訳台本で蜷川さんが演出したのが2012年初演、その後2014年、2015年(海外4都市でも公演)、今年2月のフランス公演のを経て、今月からの凱旋公演です。蜷川さんの死後、この作品をフィーチャーしたドキュメンタリーを見て、見たいかもと思っていたので、楽しみにしていました。

 村上春樹は海外でも人気ですが、英語版で最初に舞台化されるとは。実は「ノルウェイの森」以来小説は読んでいないので、ストーリーに関してはほとんど知らずに行きました。

(以下、舞台のあらすじは小説と同じなので、ネタバレありですすいません)

カフカ(古畑新之)は、父と折り合いが悪く、家出して、高松の私立図書館に住み着き、高速バスで一緒になったさくら(木南晴夏)、司書の大塚(岡本健一)、館長の佐伯(寺嶋しのぶ)と触れ合います。一方、幼い頃の事件で、読み書きのできないナカタ(木場勝巳)は、猫と話すことができ、人に頼まれて猫を探すうちに、猫殺しのジョニーウォーカーを殺してしまいます。運転手星野(高橋務)の車で高松にやってきたナカタは…。

カフカとナカタを軸に、過去と現在を行き来しながら、エピソードが積み上げられていきます。1幕ではジョニーウォーカーのあたりがけっこう残酷でショッキング、こういう話だとは知らなかったので、客席も、(原作で知っている方もたくさんいたと思いますが)静まり返りました。思ったより長い(休憩込み3時間20分!)のもあって、幕間には、ちょっとつらい…なんて思ってしまいました。

しかし、2幕に入ると、カフカとナカタのエピソードがつながっていき、カフカの恋や、星野の優しさにせつない気持ちになっていきます。そして希望を感じさせるラスト。原作の文学的な香りを伝える、よくできた脚本だと思います。

カフカの古畑新之、ほんとに少年に見えます。やや不器用に感じる台詞が少年ぽくて、なるほど。2012年の初演は柳楽優弥ですが、最近はがっちり堂々とした雰囲気なので、想像がつきにくい。

しかし何といっても、この舞台の切り札は、ナカタの木場勝巳さんです。軍隊調の生真面目な台詞回しに哀感があって、愛すべきナカタさん。星野がなぜか親身になってしまう気持ちにも共感できます。「メタルマクベスDisc2」の王だった方ですね。そして、岡本健一が、この芝居でのこの役の立ち位置を的確に表現していて、台詞も耳に心地よく、素敵でした。

寺嶋しのぶも、舞台での存在感、品もありながら母だけど女という色気があふれているよう(先月は、真秀くん出演の歌舞伎座で美しいお着物姿でした)。さくらの木南晴夏、どうってことのない明るい女の子の役なんですが、すごく台詞がよくて、この人確か見たと思ったら、「シティ・オブ・エンジェルス」に出て印象的だった人ですね。ほかのキャストも皆さんよかったです。

水槽のような、前だけが開いている大小の透明の枠に、さまざまな舞台セットが入っていてスムーズに入れ替えて舞台が展開します。映像では見ていましたが、上演中ずっと巧みに動いているのを見て感動。とくに、木々は一瞬にして森を現出します。こういうものの劇的効果を、蜷川さんはよくわかっていたんだよなあと思い出します。3回目のカーテンコールにこの水槽セットを動かしていた大道具さんたちがずらりと並び、8割方スタオベしていた観客も、惜しみない拍手を送りました。

スタッフは演出補 井上尊晶、美術 中越司、照明 服部基、衣装 前田文子(全体にシンプルで「笑う男」とは大違いで驚き)と、さすがの皆さんでした。

 

 

團菊祭五月大歌舞伎「寿曽我対面」「勧進帳」「め組の喧嘩」

201905_2  團菊祭昼の部です。

 一つ目は「寿曽我対面」。令和の御代の始まりの最初の演目ということで、おめでたい曽我物をもってきたわけですね。昔は新春に必ず上演されたそうですが、私は最初に見たのが今年新春の歌舞伎座(「雪の対面」といういわばバリエーション)、新春浅草歌舞伎 、しかし今年はすでに3回目。

 若い座組で、曽我十郎(梅枝)、五郎(萬太郎)、小林朝比奈(歌昇)、大磯の虎(右近)、化粧坂少将(米吉)、八幡三郎・秦野四郎は鷹之資・玉太郎のSUGATAコンビ。そして工藤祐経が松緑。たしかにこの中だとちょっと年上で座頭格ですね。

二人の女方が美しくかわいくて、舞台が華やかです。朝比奈の歌昇は、最初誰だかわからなかったんですが、又五郎さんに台詞廻しが似ていて、立派な朝比奈でした。こういうお役もしっかりできるんだな。萬太郎の五郎は熱演ですが、やっぱり先輩たちはただ普通にやっているように見えて、たいへんな役なんですね。がんばれ。最後に新左衛門の坂東亀蔵出番ちょっとでもったいない。

二つ目は「勧進帳」海老蔵弁慶を見るのは初めて。聞いてはいたけれど、なんと表情豊かで、動きも美しい弁慶。独特の台詞回しも今回はさほど気にならず、ん?と思うところは少なくて、やはり若い頃から上演を重ねているだけあるなあ、と思いました。一行への合図などもはっきり見せたりして、観客にわかりやすい形に工夫しているようにも見えました。ただ、富樫の問答に答えたり、舞を舞ったりいろいろするのが得意気で、海老蔵ショーを見ているような気持ち。義経に対する敬意や思慕の念が足りないようにも思いました。

菊之助の義経は絶賛されてますが、美しく品のある義経。この一行にあっては、大事にお守りしたい存在です。松緑の富樫も立ち姿が美しく、海老蔵弁慶を見守るようで、私が思っていたよりもずっとよかった。四天王は右團次、九團次、廣松、市蔵と海老蔵公演を支える役者たちですが、右團次さんはもちろん、廣松の声がいいのに驚き。

正面の長唄、囃子方が並び、音楽がまっすぐ届き、その前の役者の美しい衣装、何度か見てきて、勧進帳の演目のすばらしさを感じられるようになってきた気がします。勘九郎がやってくれないかなあ。

三つめは、「め組の喧嘩」2015年の團菊祭でも見ていますが、菊五郎劇団でもベスト3に入る好きな演目。前回から4年たっていますが、菊五郎おやじさまがダイエットで少しほっそりされたので、むしろ若々しいくらいで、貫禄と男気のある誠に立派な辰五郎。しかも、この間、彦三郎・亀蔵兄弟や、松也、右近、萬太郎たちの役者ぶりが大きくなって、ますます充実して見ごたえのある、逆にぜいたくな一幕となりました。ほかにもいっぱい出ているんですが、(チラシの名前の数がすごい!)、萬次郎さんの次男光くんも久々の出演でした(それにしても去年の松竹座のめ組とずいぶん印象がちがう)

お仲(時蔵)になぜ喧嘩をしない、となじられながらふて寝した振りをして水杯を交わす、辰五郎の家の場が大好きなんですが、今月は倅又八に、亀三郎ちゃんが出ていて、生意気でお父さんが大好きな又八を熱演。これまで達者な子役ちゃんたちが、一人前の座り方をして笑いをとるのを見てきましたが、かめさぶちゃんは、浮かず7に芝居の中に溶け込んでいて、とっても上手でした。夜の部で丑之助が菊ちゃんに肩車されますが、かめさぶちゃんも彦兄に肩車されてました。

喧嘩の場面は工夫されていて見て楽しいのですが、3階から、回り舞台の向こう側まで見えるのは、なかなか新鮮でした。揃いの粋な法被の、宝塚かというような大勢のめ組、相撲取りたち。盛り上がったところに、甚三郎(歌六)が留め男として出てきます。ひーかっこいい。歌六さん、これから左團次さんのやってきたようなお役もやっていくんだろうな。

ということで、歌舞伎を代表する演目が並んだ昼の部で大満足でした。それにしても、菊之助ってば、勧進帳は台詞は少しですが、ずーっと舞台で形を作っている役、め組はいなせな若い衆、夜の部は、出演者皆に気を遣う息子の襲名披露、そして1時間を超える大曲娘道成寺、と、大大活躍。へんなドラマに出ている暇はないですね(すいません)。

劇団かもめんたる「宇宙人はクラゲが嫌い」@赤坂レッドシアター

201905_1  お笑いコンビかもめんたるの演劇ユニット劇団かもめんたる第7回公演「宇宙人はクラゲが嫌い」です。「愛のレキシアター」に続き、八嶋智人さんのTwitterで「まだチケットがある!」と知って連休中に取ってみたら、4列目センターとすごいいい席。行ってみたらぎっしり満員でした。

かもめんたるって、2011年に「爆笑バトルライブツアー」という相模大野のお笑いライブで初めて見たんですよ。その時は何だか方向性に迷いがある感じだけど、声もいいしいいなと思ってたら、2013年には「キングオブコント」優勝。作り込んだコントは好みなんですが、その後テレビで売れてないと言ってるのを見たこともありました。というわけで期待は高かったわけですよ。でもそれ以上に面白かった!いってよかった!

 海辺のクラゲが名物の町でうどん屋をやるヒデさん(八嶋智人)の店に集まってくる人々と、海にいる弟テツゾウ(岩崎う大)の場面が交互に出て、だんだん二人の関係がわかってくる話。なんて、雑なあらすじですが、面白い短い場がつながってテツゾウとヒデさんのことがわかっていくのが面白いところなので、あまり書かずにおきます。

八嶋さんはさておき、脚本・演出かつほとんど主演のう大くんがいいんですよ(このお名前、本名は宇内で、やはり「うだい」と読むんですね)。きゃしゃな体に、豊かな表情をたたえた大きめの顔がなんともペーソスを秘めたおかしみがあって、いるだけで面白い。見ているうちに、私こんなにう大くん好きだったっけと思ったくらい。

コンビの槙尾ユウスケくんもよかったし、出てくる人(10人くらい)みんな強烈でうざくって、でもわかる~な人たち、彼らを生かして少しずつ話が動いていく今現在ならではの脚本、う大くん天才だったんだ。

ほかの出演者は、劇団かもめんたる団員が、テツゾウの相方 小椋大輔、絵本作家 森桃子、坊主 土屋翔、ピンクのモフモフ 船越真美子。そしてクラゲ佐久間麻由、筋肉 四柳智雄(ピーチ)<この人自分でも演劇やっていて面白そうな人>、パート森田光(虚構の劇団)、ナイロン100℃の長田奈麻(まりやの母)。―― ネタバレ避けたので、後で思い出すための単語をつけておきました。私はわかる(笑)

八嶋さん、この劇団の芝居を観て、出演させて、と言って、別格なのにちゃんと溶け込んでいい芝居していて、カーテンコール盛り上げて、お客さん呼んで、なんていい人。3月山本耕史と愛のレキシアターやって、6月は猿之助、幸四郎たちと歌舞伎座に出てって、もういっそ八嶋智人になりたいです!

赤坂レッドシアターは、赤坂見附すぐ、赤坂グランベルホテルの地下の小さな劇場ですが、このホテルやこの通り、オープンテラスのいい感じのバーが多くて、外人さんも多くてここは日本?ってなってます。

(追記)

その後、う大くんが、八嶋智人に出演してもらうプレッシャーで脚本が書けなくなった時のことを書いたnote「宇宙人はクラゲが嫌いを振り返る」を読みました。この中に「お前しかお前をやれないのになんでお前がお前をないがしろにしてんだよ!」と気づいて開き直ったという部分があるんですが、超名言だと思います。この舞台のことを思い出すと、演者としても「う大くんしかう大をやれないというフレーズが思い浮かびます。あまりに気に入ったので、忘れないために追記しました。

宝塚月組「夢現無双」「クルンテープ 天使の都」

201905  宝塚月組 吉川英治「宮本武蔵」を原作とする「夢現無双」、和ものです。人気の美弥るりかさんの退団公演ですが、幸運にも見ることができました。娘役トップ美園さくらのお披露目でもあります。

ああ、みやるりちゃん、最初に見たのは、「NOBUNAGA」の秀吉でした。男役ながら小柄、でも女の子じゃなくて中性的で少年ぽい彼女は、ほかの人にない魅力があって、いつも見るのが楽しみでした。全組の座組で見たかったくらい。退団はさみしいな。

 さて、宮本武蔵って、有名ですが、海老蔵の大河ドラマも見ていないし、剣豪ということと厳流島の対決くらいしか知りません。まず何時代の人って感じですよ。

 美作の宮本村で育った新免武蔵(後の宮本武蔵、珠城りょう)は、幼馴染の又八(月城かなと)と関ヶ原の戦いに出て(←戦国から江戸にかけての人だったのかと知る)、お甲(白雪さち花)たちと暮らします。又八とも別れた武蔵は、京の兵法所吉岡一門の吉岡清十郎(暁千星)らと戦ったりして剣の腕を磨きますが、父の仇佐々木小次郎(美弥るりか)と厳流島で対決することに…。武蔵と思い合いながらも一緒になれないお通(美園さくら)、美しい吉野太夫(海乃美月)、自分勝手な又八の母(夏月都)、武蔵を導く台詞の達者な沢庵和尚(光月るう)、文化人本阿弥光悦(千海華蘭)あたりがいいな、と思ったところ。

作品自体は、残念ながらあまり好みではありませんでした。原作が長いからか、場面転換は多いですが、そもそも宮本武蔵が、自分探ししているだけで何もしていない、どころか、吉岡一門惨殺ってところに、たまきちがいくら長身でかっこいいといっても共感できない。普段歌舞伎を見慣れているためか、着物の所作が気になる人もいる。みやるりちゃん小次郎は、クールな美貌でかっこいいんですが、ただ舞台を歩くシーンが多く、もっと笑顔ではじけてるみやるりちゃん見たかったな、と。せっかくの新トップである美園さくらのお通は、役柄も衣装も地味で見せ場もないです。若干猫背で舞台を出たり入ったりしている印象。

まあでも、前述のとおり、キャストは個性的でしっかり演じていましたし、立ち回りも腰が入っていて、迫力があっていい。何よりたまきちさん、剣豪の姿似合ってましたよ!

久しぶりのたっぷりレビューはタイを舞台とした「クルンテープ 天使の都」。タイをイメージした衣装はキンキラキンでまばゆい!こちらでは美園ちゃんもしっかり華やか。月城さんと暁さんの一騎打ちとか、ニューハーフっぽい輝月ゆうまさんの迫力ある歌とか、キンキラのミニのコケティッシュな暁さんのダンスとか、いろいろあって楽しかったです。

→ キャスト名は、ファンの方のブログで知りました。レビューだと、トップコンビのほかはいつも2人くらいしかわからないんですが、ファンの方は、推しがどんなステージを見せてくれるかというのも楽しみなんでしょうね。

そして、みやるりちゃんとたまきちのデュエットのダンスがかっこよくてじんとしたり、ソロで歌ったみやるりちゃんが一旦ハケてから、ふたたび群舞にジョインしたり、ちゃんとみやるりちゃんをフィーチャーしてくれてよかった!泣きそうでした。

團菊祭五月大歌舞伎「鶴寿千載」「絵本牛若丸」「京鹿子娘道成寺」「曽我綉俠御所染 御所五郎蔵」

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  じゅふたんの丑之助襲名で話題の團菊祭五月大歌舞伎夜の部です。前方中央付近の席で、堪能しました。盛りだくさんだったので長いですよ。

ひとつ目は、「鶴寿千載」。昭和天皇即位の大礼を記念して作られた、筝曲の舞踊を令和への寿ぎとして、時蔵、松緑の大臣と女御を中心に、梅枝、歌昇、萬太郎、左近で華やかにおめでたく。珍しかったのは、筝も唄も、女性の方がほとんどだったこと(ただ声が少々小さかったような)。

2つめは、「絵本牛若丸」。牛若丸(丑之助)の陸奥への旅立ちのお話ですが、菊五郎劇団に、吉右衛門、時蔵、雀右衛門、松緑、海老蔵と出演者が濃すぎます。囃子方も、巳太郎さんの三味線、葵太夫さん、傳左衛門に、巳津也さんも!すでに評判になっていますが、吉右衛門さんが終始微笑み顔。丑之助が片足を上げる形が決まった後、さらににこやかになったりして、キッチ―見ているだけで楽しいです。

(先週の「ぴったんこカンカン」で、じゅふたんと菊之助を中心に、菊五郎ひーま、キッチーがゲスト、キッチ―は、自分が養父に連れてきてもらっていたという<かわいがられていましたね>東京會舘のドーバーの舌平目をじゅふたんに食べさせ、爺バカ<本人談>をからかわれていました。唯一の男の子の孫で、お顔も音羽屋より播磨屋似ですもんね)。

鬼一法眼三略巻(一条大蔵譚)」を知っていると、鬼次郎、お京、鬼一法眼、鳴瀬が出てきて、おおーと思います。お京と鳴瀬は、大蔵卿の命で、牛若丸の旅立ちを常盤御前に報告するために来たのだそうです。弁慶の菊之助、隈取が意外に似合っていてステキ。

丑之助、なかなか堂々としていて、立ち回りも見得もがんばって、かわいらしいです。最後に花道でくたびれた、と菊ちゃんパパに肩車してもらうのもご愛敬。満員のお客さんも大喜びでした。

3つめは、いよいよお目当ての菊之助「京鹿子娘道成寺」。シネマ歌舞伎で「五人娘道成寺」を見たことはありますが、舞台で見るのは初めて。今もっともこの演目を歌舞伎座でやるのにふさわしい、菊ちゃんの道成寺を楽しみにしていました。所化に、権十郎、歌昇、右近、米吉、廣松、男寅、鷹之資、玉太郎、左近

白拍子花子の花道の出の七三、上手の鐘を見る一瞬、執着の表情に凄みがあります。本舞台に出てからは、終始目の前で華やかな踊り。とにかく今の菊之助の美しさ、華やかさ、丁寧な舞踊、次々と変わる衣装、が目の前で繰り広げられて、目と心が鷲掴みされるようでした。今を盛りの歌舞伎役者の舞踊、すごい。

最後の白い衣装で、あ、今、と思った人に非ざる表情、そして鐘に上ります。ああ、あの顔をこの席から見られてよかった!

最初の方の、花子の拵えの時間稼ぎに、右近、米吉、歌昇たちが日替わりでことば遊びをしているようで、私が見た日は米吉の「まい」尽くしでした。時間は拵えの状況によって変わるようで、考えながらいうセリフもかわいらしかったです。

「ぴったんこカンカン」で、菊ちゃん、じゅふたん、安住さんが書いた茶色の自分の名前を使った松もはっきり見えました。

最後は、「曽我綉俠御所染 御所五郎蔵」2017年6月に仁左衛門の五郎蔵、左團次の土右衛門、雀右衛門の皐月、逢州 米吉で見ています。今回は、五郎蔵 松也、土右衛門 彦三郎、皐月 梅枝、逢州 右近、花形屋悟助 橘太郎。

この若い座組、よかった!松也と彦兄は声がよく、並ぶとそれぞれの個性が際立っていましたし(といっても最初の出の割台詞や対立はやや長い、両花道じゃなくて、土右衛門側は上手側の舞台に並ぶスタイル)、梅枝の述懐の長台詞もすーっと入ってくるのがさすが。右近もきれい。そして借金取り立てにくる橘太郎が達者で動きが面白く、また2幕では、土右衛門の手下たち、新十郎、左升、荒五郎、吉兵衛の4人が、台詞のキレがよく、4人そろっての雰囲気が面白くて、すごくよかったです。荒五郎さんは團蔵さんのお弟子。

この演目、後半はけっこうむちゃくちゃなストーリーながら、皐月と五郎蔵の、一種のすれ違いが切なく、五郎蔵の怒りもわかるような描き方がいいんですよね。團菊祭なんだから、海老蔵が五郎蔵で出るというのもありだったような気もしますが、松也がかっこよかったからいいや!

「ピカソとアインシュタイン」@よみうり大手町ホール

 20190508 「ピカソとアインシュタイン」、川平慈英、岡本健一のこのチラシを見て、てっきりミュージカルだと思っていたんですが、スティーブ・マーティン(映画「リトルショップ・オブ・ホラーズ」にサド歯医者役で出ていた、サタデー・ナイト・ライブのコメディアン)の脚本によるストレートプレイでした。主役2人がダブルキャストですが、私が見たのは若手の方のブルー。

 舞台はモンマルトルのカフェ「ラパン・アジル」、常連ギャストン(松澤一之 )が店主フレディ(間宮啓行 )と話していると、アインシュタイン(村井良大が女性を待つのだとやってきます。シュザンヌ(水上京香 )は恋の相手ピカソ(三浦翔平)を待ちます。アインシュタインとピカソはお互いの専門の話を戦わせます。シュメンディマン(川平慈英)、メンフィスからやってきた派手な男(岡本健一)も現れて…ほかにフレディの恋人(香寿たつき)、画商サゴ(吉見一豊)。

スティーブ・マーティンは、ピカソほかのアートのコレクターでもあるそうで、絵に関するちょっとした台詞やスケッチの扱い方がうまく、創作活動や作品の評価に関する見識も感じられたほか、もちろん、アインシュタインの理論のエッセンスもうまく使われていて、とても知的な脚本だと思いました。

舞台に額縁があって、丸テーブルとカウンターのあるノスタルジックなカフェを囲っているのが効果的。キャストの容貌が個性的で、とくにおじさんたちがみんな渋くていいです。松澤一之は夢の遊民社での若い頃を見ていますが、期待以上の食えないじいさんになっていて(ほめてる)、最高でした。

と、見た目はいかにも面白そうなお芝居になっていて、誰がどう悪い(強いていうなら水上京香は悪くはないんですが、この役には若すぎてちょっと荷が重く、長台詞が単調になってた)わけではないんですけど、構造やストーリーはあまりなく、前述のような知的なセリフの間で、雰囲気とかちょっとした間で笑わせるというこの芝居のスタイルと日本語との相性なのか、あまり笑えず、ああ、このお芝居どこにいくのという感じになってしまいました。もっとアドリブきかせて即興感のある感じでやったらよかったのに。

ローズ版ではアインシュタインを演じている川平慈英は、ブルー版での出番の短いシュメンディマンではけっこう自由にやっていて、その時は観客が楽しんでいるのが伝わってきました。岡本健一も好きな俳優さんですが、この役もクセがあってよかったです。

残念な点のひとつは、セクシーなセリフや場面も多いのに、このお芝居のキャスト、ちょっと色気が足りないんですよね(「She Loves Me」がそのあたり徹底していてうまかったから尚更そう感じたのかも)。ピカソは女好きという設定なんですが、三浦翔平のすくすくと育った健康な雰囲気が、全然そう見えない。名前だけは聞いたことがあるなあと思ったら、桐谷美玲ちゃんと結婚したばかりの好青年じゃないですか。今の彼にはそれは美点なので、全然悪いことじゃないような気もします。

ちょっと感動したのが、ラスト。セットに最後にはちょっとびっくりする変化があって、そしてとても美しかったです。これから見る方お楽しみに。美術 伊東雅子さん、照明 日下靖順 さんでした。

 

松竹ブロードウェイシネマ「She Loves Me」

201905shelovesme  ブロードウェイの舞台を映画で見るという松竹ブロードウェイシネマの第1作「She Loves Me (シー・ラブズ・ミー)」です。

  原作は、ハンガリー生まれの作家ミコラス・ラズロの1937年の戯曲「Parfumerie」。1940年、1949年に映画化され、後者はジュディ・ガーランド主演。1998年にはトム・ハンクスの「ユー・ガット・メール」の原作にもなっています。ミュージカルとしては、ハロルド・プリンスの演出で1963年に初演、1993年に再演。

そして今回のシネマは2016年2月から7月まで上演されたリバイバル版。トニー賞のリバイバル賞、主演男優・女優・助演女優賞等8部門にノミネート、舞台装置で受賞しています。また、ストリーミング中継をやった初のブロードウェイ作品なんだそうです。作品名は知っていましたが、ユー・ガット・メールと同じ原作とは知らなかったです。

お話は、街の香水店(というか高級化粧品店)マラチェックスに新しく雇われたアマリア(ローラ・ベナンティ)は、同僚のジョージ・ノバック(ザカリー・リーバイ)とケンカばかりしていますが、実は二人は匿名で文通している間柄。文学や音楽の話で盛り上がる二人は、とうとう会うことにしますが、急な残業を命ぜられ、アマリアはカフェで待ちぼうけ…。

往年のアメリカのテレビ映画のようなセット、衣装。ケンカばかりで仲の悪そうな二人が実は惹かれあっていて、という古典的なシチュエーションの元祖のような物語。キャストの演技がうまくて間がいいので、まばらなお客さんなのに声立てて笑うシーンがいっぱいありました。

主人公の二人も素敵なんですが(アマリアの歌が超絶うまい!)、マラチェックスの店員たちが、社長のほか女たらしのコダーイ(ギャヴィン・クリール)、彼にぞっこんのブロンドのイローナ(ジェーン・クラコウスキー)、元気のいい配達員のアルパッド(ニコラス・パラシュ)、生活のためにプライドは捨てているというシーポスと個性的なキャラクターがうまく描かれていて、それぞれの持ち味を生かした見せ場があって楽しいです。とくにイローナ、かわいくてバイタリティがあってとってもよかった!

カフェの場面は、前半はヘッド・ウェイターのピーター・バートレットとうるさいウェイターが面白く(ダンスもすてき)、後半はアマリアがかわいそうで泣きそうになっちゃいます。そのあとのバニラ・アイスでもアマリアのかわいさに感動し、歌にも鳥肌でした。

ハッピーエンドの終わり方があっさりしていたのは、これ以上何も足さなくていいなと好感が持てました。

キャストの繊細な演技に、やっぱりミュージカルってレビューじゃなくて芝居なんだよね、と思いつつ、字幕で内容もすっきりわかりながら舞台全体と役者のアップを上手に撮影した映像で見せてもらって、見逃さなくてよかった、と思いました(ブロードウェイシネマのことは知ってはいたんですが、このブログのコメントで教えていただいたんです。ありがとうございました。)

ところで、カーテンコールまで映っているんですが、アンサンブルの後プリンシパルが登場する辺りから、観客がばっと立ち始めて、四番手位の時には総立ち。オケに拍手して、最後全員で繋いだ手を上げて挨拶して1回で終わりでした。日本の舞台で盛り上がると、何回もカーテンコールがあって、3回目くらいに立つのがお約束みたいなときがけっこう多いと思うんですが、どうせスタオベするなら、もっと早く立つ方がいいのにな、って思います。

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