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四月大歌舞伎「実盛物語」「黒塚」

2019043  歌舞伎座夜の部、1階前方センターでの観劇です。

 最初は、評判高い仁左衛門さまの「実盛物語」2017年に愛之助の実盛で見ています。そのとき、愛之助がニザ様に似ていると思ったのですが、本家ニザ様ですよ。さすが、この美しい衣装がお似合いの美しいニザ様。

葵御前の生んだのが腕だという小よしの言葉を、うまいこと言って瀬尾十郎(歌六)に信じさせてしまうところから、小万の腕を切り取る次第の目に見えるような語り口、義太夫への乗り方、太郎吉への情け、馬に乗ったときの姿の美しさ、と、たいそう立派な実盛。長台詞も、ニザ様が語るとすんなり入ってくるのはどうしてなんでしょう。

また、この一座の配役が見事で、九郎助夫婦が松之助、斎入、この二人は、もう最高の九郎助夫婦じゃないでしょうか。松之助さんは、うまいというあざとさなく、本当にその芝居に生きる人物を見せてくれて、大好きです。小万が孝太郎、葵御前の米吉が、かわいさを抑えて、気品のある葵御前を健気に演じていました。。

歌六さんの瀬尾は、表情豊かで、意外に黒目が大きくてかわいい瀬尾。ずっしりとした貫禄があって、情愛があって、まあ、何やっても歌六さんはまちがいありませんよ。

太郎吉の寺嶋真秀、まほろんがずっと出ずっぱりなんですが、台詞も多いし、見得だの瀬尾を斬るだの、本当に重要なお役。そして、瀬尾の述懐や、実盛の馬乗りなどをじっと見る顔が、まあ小学校入りたての坊ちゃんとは思えない落ち着き。先日「サワコの朝」に、しのぶさんと一緒に出ていましたが、天性の明るさ、豊かな表情、芝居好きと見える様子、たぶん大柄な美丈夫になりそう、既に日仏英のトリリンガルと、本当に期待膨らむ坊やですよ。直系のじゅふたんは来月丑之助という立派な名をもらいますが、まほろんも早く何か名前もらってあげて!

2つめは、いよいよ「黒塚」2015年1月歌舞伎座は幕見。2017年1月新橋演舞場は2階右、今月もこれまでは幕見だったので、1階で見るのは初めてでしたが、もう、四代目に圧倒されるというか、四代目の世界に引き込まれて終始 掌の上でもてあそばれているような気持ちになりました。

1景、阿闍梨祐慶(錦之助)一行と岩手(猿之助)のやりとり。岩手の豊かな表情に、一瞬も目が離せません。衣装もきれい。祐慶、もっと口跡がよければ、と思いはしたものの、尊い美しさに、ありがたい気持ちになります。種之助、鷹之資は、当初と比べると、驚くほど力強くなっていて、踊りのうまい二人だけに、どの場面も美しかったです。特に鷹之資は、ちょっとぼっとしたお役の先月とくらべて、メリハリのきいていること、化粧もきれい。

2景。筝と三味線、尺八の力のこもった演奏に、たっぷりの岩手の舞踊。だんだん救われる喜びにあふれていくのが、切なく、でも楽しく、耳も目も喜びます。自分の影と戯れるのは見えないのですが、あの大きな月と重なって見える岩手、前方ならではの迫力。舞台写真だと月の下に岩手がいますが、岩手の後ろに月が見えるのは、新鮮でした。強力太郎吾(猿弥)とのくだりも見事、高さのあるジャンプ、背面宙返りの退場。猿弥さんの体型からは驚くようなキレのある動き。

そして、いよいよ第3景。阿闍梨一行の容赦ない調伏に、だんだん弱る鬼女。花道での仏倒れ、ものすごく素早く体勢を整えていました。きっちりと計算された展開に、もっていかれます。最後は小さくなってしまいます。

能を題材に、古風ではありますが、要領よい説明や素早い場面展開、次から次へと見せ場が続くこの作品、全く古くありません。囃子方、唄の思い入れ、音楽と舞踊が一体となった充実感、四代目、猿弥さんの身体能力を惜しげもなく見せてくれるありがたさ。

惜しむらくは、劇評の先生方、「黒塚は素晴らしい」前提なのか、照明を変えたとかなんとか小さいことについて書いているんですが、見ていない人に、まったく良さが伝わってないですよ。歌舞伎には、歌舞伎が好きな人だけが受け入れられるものと、歌舞伎のみならず舞台芸術が好きな人に十分アピールできるものとがあると思うんですが、まちがいなく、黒塚は後者だと思います。

そして、こんなにも激しい演目を本興行でやれるまでに快復してくれた四代目、本当にありがとう。

(最後の幕見)

目の前で見て、ああ、もう満足と思ってはいたものの、楽日近くに幕見に行ってしまいました。こんなにリピートできるのも、歌舞伎座のありがたいところ。立ち見の番号でしたが、下手で座ることができました。

この日はイヤホンガイドをを借りてみました。衣装の説明は柄のことまでは細かくて覚えていられないし(水衣と能鉢巻だけ覚えてます)、役者名はわかるし、台詞の説明も黒塚は新歌舞伎で台詞がわかりやすいのでさほどいらないのですが、やはり舞踊は、長唄の歌詞と合わせての動きの意味を細かく教えてもらって、初めてわかることもたくさんありました。こんなにリピートするなら、早いうちに借りておけばよかったかも。でも1,2回見るだけなら、音楽をめいっぱい聞きたいですけどね。

解説をききながらじっくり見る2景は、岩手の心の高揚が胸に迫って、感動でした。

そして、3景は、イヤホンガイドも少なめ、台詞はほとんどないので、もっと話しても大丈夫なんですが、この熱演の前では、説明など不要ということをわかってくれてよかった。

ますます阿闍梨一行のチームワークというか動きが気持ちよく、鬼女とのアンサンブルが素晴らしい。そして、仏倒れの一瞬前に、戯れていた木の影が舞台中央に蘇ります。そのあと、驚異の後ろ向きジャンプをピークに、力尽きていく鬼女、終盤に向けて、ときどき岩手が顔を出すのがはっきりとわかります。鬼なのにかわいらしさがあって、切なくなります。ああ、これが最後の黒塚。

最近の素顔の猿之助さん、ちょっとあごのあたりがすっきりして、黒塚のハードな舞台のためなのか、でも充実感があふれていて、これからますます楽しみです。

 

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コメント

星に願いを さん、コメントありがとうございます。

ニザさまも猿之助もよかったですよねー。

黒塚初めてご覧になったのなら、それは驚かれたことでしょう。私は初めて見たとき、何年かぶりで猿之助が歌舞伎座に出た時で、あまりの完成度に、ああ、この人こういう自分の出し物しか出ないんだ、と思ったくらいです。もちろんその後いろんなお役で出ているので、よかったですが。

仏倒れ、「義賢最期」の最後に階段に下向きに倒れるのを、海老蔵、松也で見たことがあります。それから、白鸚さんが、「アマデウス」でやるんですよ。ものすごくきれいな仏倒れです。わかっていても、ハラハラしますよね。

あとーまほろんもキッチ―もトッキーも、歌舞伎好きはみんな言いますってばー。

お久しぶりです。
夜の部は昨日ご覧になったんですか?私は昨日の木曜日に見たのでもしそうだったら同じ舞台を見たことになりますね。

まりるさんをコピペする訳でもなく忖度する訳でもありませんが(笑)同感!同感!と思いつつ読みました。

とにかくニザ様カッコいい!あのキリリとしたお顔に衣裳が映え扇を広げる音にさえ拍手したくなるほど。大向こうも沢山かかってニザ様の魅力で舞台をグイグイ引っ張っていったって感じでした。キッチーに続きまりるさん命名(笑)のまほろん、あの大舞台で台詞も所作もきっちりこなしてさすが役者の濃ーい血が流れているんだなぁと感心しました。それから夕霧に出た千之助君もきっとお祖父様の演技を釘付けで見ていたのではないでしょうか。素晴らしい財産ですよね。お祖父様と言うにはまだまだお若いニザ様ですが、、、。

それから黒塚。こちらは猿之助さんに圧倒されました。初めて見たんですがこんなに難しく激しい舞踊劇だったとは!老婆の腰と膝を折った踊り、私だったら太ももとふくらはぎがパンパンに張ってコリャ筋肉痛だしアスリート並みのメンテナンス必要だわと呆気にとられて観てました。あの仏倒しにもビックリ‼️今猿之助さんの他にあの演目をやれる役者さんがいるのでしょうか?

昼の部も別の日に観ましたが今月は夜の方が良かったですね。昼で印象に残るのは歌祭文でした。時蔵さん、歌六さんそして秀太郎さんの手堅い演技で泣かせてくれました。

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