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四月大歌舞伎「黒塚」「二人夕霧」幕見(追記あり)

  201904kabukiza   今月の歌舞伎座夜の部、初日の評判に待ちきれなくて(←いや、最初からわかってたか)、黒塚」の幕見です。先月の弁天娘よりも1時間開演が早いのでどうかと思いましたが、開演10分前到着でも座れました。桜満開の時期とあって外国人の方が多くてほぼ満席。

 ああ黒塚!私が猿之助丈のファンになったのは、2014年11月の明治座の女團七と2015年1月の歌舞伎座の黒塚がきっかけといえるんですが、その黒塚です。2017年1月の新橋演舞場の黒塚以来3回目ですが、今回は奥田雅楽之一さんや杵屋佐喜さんのTwitterで黒塚についてつぶやいているのを拝見したりして、囃子方の方々にも特別な演目なのだなと思いました。雅楽之一さんは、黒塚についての記事も紹介してくださっています。猿之助さんの、舞台を作り上げる全ての人たちとのいいコミュニケーションが感じられました。

安達ケ原に住む岩手(猿之助)のところに、阿闍梨(錦之助)一行が宿を求めます。錦之助さん、もう少し口跡がよければと思わないではないですが、やはり美しいたたずまい。種之助、鷹之資は、気合が入っていてとてもよかったです。鷹之資は、先月の浜松屋の宗之助よりずっと合っている感じ。

2景。一面のススキの原の前で、岩手が初めは静かに、そして阿闍梨に妄執を取り除いてくれる嬉しさに、楽しそうに踊ります。4階から、木と自分の影と戯れる姿がはっきり見えました。なめらかな手の動き、神様ありがとう、とまた泣きたくなりました。2景のみの筝の演奏も見事。

そして、岩手に禁止されていたのに、寝屋をのぞいてしまった強力太郎吾(猿弥)と出くわした岩手。岩手のままのしつらえながら、鬼女の本性を現し、凄い高さのジャンプ、強力につめよる動き、バク転での引っ込み。腰の抜けた強力の猿弥さん、さすが踊りの名手です。

3景は鬼女と阿闍梨一行との激しい戦い。長袴の衣装がきれいなんですよ。言葉のいらない迫力に、幕見席全体が引き込まれました。やはり、すばらしい作品でした。

さて、続けて「二人夕霧」。あの廓文章 吉田屋の夕霧は病で亡くなり、伊左衛門(雁治郎)は、同じ夕霧という名の傾城(孝太郎)と所帯を持ち、傾城買指南を商売にしています。教えを乞いに、彌十郎、萬太郎、千之助がやってきます。このあたりコミカルなやりとりなんですが、彌十郎さんというより、市蔵さんや亀蔵さんあたりが面白かったかも。萬太郎はかわいい目を細くして、この舞台の雰囲気を盛り上げようと好演でした。千之助もがんばってた!

後半は、幽霊の夕霧(魁春)が登場して、伊左衛門と踊り、おきさ(東蔵)も加わって、最後は伊左衛門に大金が転がり込んでめでたしです。

うーん、役者さんも常磐津も、誰も悪くないんですけどね、雁治郎・孝太郎は先月女鳴神コンビだし、最近孝太郎さんいいし。しかし、夕霧二人と二股ってなんだよってことですよ。吉田屋の伊左衛門は、どうしようもないボンボンだけど、夕霧に惚れぬいているところだけがいいところなのに。のっぺりした赤い壁のセット、笑っていいのか微妙な芝居、そしてどこに行こうとしてるのかわからない舞踊。小判を降らせるのも、ちょっと下品に感じました。

これ、弁慶上使や熊谷陣屋や碇知盛のような重い演目のあとならまだよかったと思うんです。しかし、上記のような、完成形をさらにつきつめたような舞台づくり(歌舞伎座でもここまで美意識を貫くのは稀では)のうえで、踊りの名手が、代表作の一つとして、大怪我から復帰して命がけで踊った演目の後でのゆるいお芝居と踊りですか…。観客もどう見ていいのかわからない雰囲気でした。これからお客の入り大丈夫かな。ただでさえ、黒塚だけ繰り返し見たい猿之助ファンって多そうなのに。

「オペラ座の怪人」の続編、なんでこんなの作っちゃったの感が強い「ラブ・ネバー・ダイ」みたいなものでしょうか。私は吉田屋好きなので、ニザ玉、幸七で見た吉田屋の感動返して。

うーん、やっぱり黒塚、夜の部のキリの演目ですよね。ざんねん。

(幕見2回目)

1週間ほど後、黒塚2度目の幕見です。見るたびに、衣装やセット、照明を含めた美しさ、現代の時間感覚にギリギリ斬り込んでくるような静の場面(=長すぎない)、常よりもずっと存在感があって、芝居の重要な要素となっている、演奏会のような鳴り物、囃子方、意外にわかりやすい詞、に感心します。

仕立ては能に見えますが、立派に今に生きる作品。「熊谷陣屋」のような芝居はもしかしたら廃れてしまうかもしれませんが、これは猿翁十種といいながら、もっと残るような気がします。

再演とちがって、短い間をおいての観劇ですと、流れを覚えていてじっくり見られます。大詰の花道では、鬼女の荒い息やうなり声が聞こえて、苦しみが4階まで伝わってきました。あの両手をブンブンするのは煽っているようにも見えます。大胆な隈取の向こうに、猿之助のキラキラした目が見えて何だか感動でした。

やっぱりキリの演目だなあ。

(幕見3回目)

2景では、筝が加わるのですが、何日かは、正派の家元(今月家元を譲られて宗家となられるそうですが)、93歳の中島靖子さんが出演されるときき、その日に行ってきました。筝は、靖子さんのソロ(特別ですか?いつもよく見ていないので気づかなかった)の部分が結構長くあり、丸く美しい音色が聞けました。昭和20年から出演されているそうで、74年ですよ!わずかな出番のために、それだけ高名な方が出てくださるのは、それだけこの澤瀉屋の演目を大事に思ってくださり、四代目のこの演目への思い入れやその成果を認めてくださっているからでは、と思います。

(しかし藤十郎さん、竹三郎さん、寿猿さん、紅長のときの玉之助さんと、80代後半以上の方々と仲良しな四代目)。

毎回どこがちがうかとはっきり言えないのですが、2景の踊りがより楽し気で、メリハリが際立っているように思いました。さあ、もうすぐ真近で見られます。

(1階席での感想+前楽幕見)

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