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2019年4月

四代目市川猿之助出演記録

201902yodaime_nenpyou

  四代目猿之助丈の、初舞台からの出演記録表(猿之助年表pdf) を作ってしまいました(恐縮ですが、個人でご覧になる以外のご利用はご遠慮くださいませ)。

   歌舞伎を見始めたのが2012年で猿之助襲名の年、それからさらに数年たって、好きな歌舞伎役者さんがたくさんできた中でも、四代目がとくに好きだなあと思い始めたのがつい最近(2017年春頃)なので、web情報や本でこれまでの軌跡をたどってきたのですが、生来の記録ヘキから、まとめたくなって。

歌舞伎公演データベースから公演をチェックし、ドラマ等は「僕は、亀治郎でした。」やwikipedia等を参考にしています。

単発の舞踊会等は、ネットで調べようとすると、告知は多いのですが、過去の公演の一覧等は意外とないので、けっこうたいへんでした。TVのバラエティで入れておきたいものもまだありそうです。間違いなど、お気づきの点があればお知らせくださいませ。

ここまでまとめると、いろいろな発見がありました。

子どもの頃は、三代目の興行で、子役で出ています。初御目見は4才で碇知盛の安徳帝、その後、「実盛物語」の太郎吉「牡丹景清」の娘人丸(阿古屋の娘ですね)、「加賀見山再岩藤」又助弟志賀市など子役の大役を務めていますし、10才で奴道成寺も踊っています(段之さんの歌舞伎座ギャラリートークで映像を見ましたがすごかった!)。亀治郎襲名は7才、「御目見太閤記」の禿たより

舞踊が得意な人ですので、数々の舞踊発表会に出ています。NHKで「供奴」が放送されたりしていますね。ご本人も、ほめられるのでうれしくて舞踊が好きになった、と語っています。10代後半は、「子守」や、先代との「連獅子」での仔獅子、右近さん忠信の鳥居前での静御前などがありますが、大学時代は学業優先で殆ど本興行での出演はなく、舞踊会等ばかりです。歌舞伎役者は大学からは本格的に本興行に出演する人が多く、ここまで学業優先は、澤瀉屋ならではかも。

そして大学4年以降、それまでを取り戻すかのように、スーパー歌舞伎、本興行とがんばっていきます。22才で名題昇進。年4,5か月のスーパー歌舞伎(お稽古も長い)と普通の興行。そういう中で、三代目の勧めから、自分自身でプロデュースする力と自分のために協力してくれるスタッフを得るために、2002年(26才)の夏に第1回亀治郎の会を開催します。

そして翌年の2003年7月の歌舞伎座を最後に、父段四郎とともに、三代目の元を離れます。知ってはいたけれど、当時大人気だった猿之助劇団を離れるというのは、ものすごい決断だったと思います。段四郎さんが一緒に、というのは、やはりお弟子さんは皆段四郎さんのお弟子さんたちであり、亀治郎一人で独立させることができなかった親の情なのでしょうか。ここまで兄を支えてきた段四郎さんは、息子の才能を早くから認めて、期待してきたのでしょう。

幸いにも1999年からはじまった新春浅草歌舞伎での大役への挑戦は続いていましたし、菊五郎劇団や海老蔵襲名公演への出演、そして亀治郎の会での努力もあって、独立の2年後2005年には、「NINAGAWA十二夜」で麻亜役を演じ、高い評価を得ます。2006年3月には、三谷幸喜のPARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」で染五郎・勘九郎とともに主要人物を演じ、コミカルな役柄に開眼しました。

2007年には、初めての映像作品にして大河ドラマ「風林火山」の武田信玄という準主役。3月の團十郎さんのパリ公演にも帯同し、「勧進帳」の義経、「紅葉狩」の山神を好演するとともに、暁星仕込みのフランス語の口上で沸かせました。2008年になると、地方公演では、かなりいい役もつくようになってきます。

2009年は、まず、テレビ東京のお正月ワイド時代劇「おんな太閤記」の秀吉役を務めました。「NINAGAWA十二夜」がロンドンで再演、またその凱旋公演が演舞場、松竹座と2か月ありました。3代目との交流が復活し、2010年新春浅草歌舞伎に向けた「悪太郎」のお稽古もみてもらいます。

2010年は浅草に続き、博多座、南座、こんぴら歌舞伎と、澤瀉屋の猿之助四十八選に奮闘します。秋には蜷川幸雄演出の「じゃじゃ馬馴らし」で主演。この辺りで、猿之助襲名が確実になってきたといえましょう。

2011年新春浅草歌舞伎公演中に、三代目から襲名を告げられ、5月に「四の切」初演、9月に猿翁、猿之助、中車、團子のスーパー襲名が発表されます。36才でした。

ここ辺りでやっと私の四代目認識とつながるんですね(初めて四代目を舞台で見たのは襲名直後、2012年11月です)。

どんな世界も、一人を追いかけることで、その世界がより深く理解できるような気がします(アダム・パスカルを追いかけることで、ブロードウェイの作品の作り方やテコ入れ、当たらなかったときの非情なクローズをみることができました)。四代目の軌跡は、人気役者の一門の御曹司の成長の過程をみるという意味でも興味深かったです。

さて、これからはリアルタイムで見ていくことができるのは幸せといえましょう。

NODA・MAP「表に出ろい!」・ドキュメント「超・演劇人 野田秀樹 密着555日」

201904_3     NODA・MAP番外公演「表に出ろい!」を映像で見ました。2001年からの野田版の歌舞伎が好評を博した後、2010年に勘三郎・野田秀樹の最初で最後の共演となった現代劇です。

 能楽師の父(勘三郎)は、東京ディスティニーランドが大好きで、友人とパレードを見に行くつもりですが、その日は母(野田秀樹)が、ジャパニーズのライブに行く日。愛犬のお産のために、留守番を押し付けあう夫婦。娘(黒木華)が帰宅しますが、友達と限定グッズの列に並ぶために出ていくといいます…。

実は、NODA・MAPは家で見るにしても、一人でゆっくり余裕のあるときに見たいと思ってしばらく先延ばししていたんですが、登場人物は3人だけ、家のリビングでの軽快なやりとりで、構えずにみられる芝居でした。

舞台装置(堀尾幸雄)は、写真の衣装と同じ色調(ひびのこづえ)のカラフルなもの。このお二人、ずっと野田作品を支えていますが、毎回多彩で美しい。

新鮮だったのは、最初の夫婦の、どちらが出かけるか、いつどちらが連絡したのか、のやりとりのリアルさ。これ、そのまま子どものいる夫婦の会話ですよ。こんなに生々しい、でも面白い台詞、書こうと思ったらすぐ書けちゃうんですね。

もちろん勘三郎さんの勘のよさとか天性の愛嬌とか、こういうお芝居でもすごい役者だと思いますが(ちょっと汗かきすぎなんだけど)、野田秀樹の母役がすごい!

若い頃の遊民社の彼は、走り回り、ボケとツッコミを一人で叫び、一座をひっぱるというか引きずり回す感じで、とくに20代でもおばさん役が大好きでした。ここ数年再見するようになった野田秀樹は、いい役者に主役を譲り、芝居のスパイス的な役回りで、もう年だし仕方がないな(失礼)なんて思ってたんですよ。

しかしこの芝居は3人だけなので、往年以上の野田秀樹成分の濃さ!信頼する勘三郎さんとがっぷり四つに組んで、緻密な脚本を即興的な雰囲気で(きっちり演出されているのかもしれませんが)演じる楽しそうな野田秀樹。相変わらずの柔らかな身体、しかもおばさん役。

そして黒木華!京都造形芸術大在学中にオーディションで、この作品の前のNODA・MAP「ザ・キャラクター」のアンサンブルでデビューした直後ダブルキャストでの娘役。声、台詞、自分の信念を両親に主張する迫力、軽い動きと、この二人を前にして一歩も引かない熱演で、もう完全に出来上がってます。

この作品、最後まで笑いながらも、前作「ザ・キャラクター」の狂信集団を見た人は、設定がより深く理解できるということで、「人それぞれが信じるもの」というテーマをしっかり描いていてさすが。野田秀樹の3,4人くらいのこの規模の芝居、ぜひまた。今度は生で見たいものです。

 

追記・ドキュメント「超・演劇人 野田秀樹 密着555日」

このすぐ後に、WOWOWの野田秀樹の密着ドキュメントを見ました。さすが演劇に力を入れているWOWOWさん、超・演劇人とはよく言った。

まず2017年の歌舞伎座での「野田版・桜の森の満開の下」のリハーサルに始まり、松たか子も参加したワークショップ、前述の「表に出ろい!」の英語版の上演ドキュメント、2018年の「贋作 桜の森の満開の下」の舞台作りとパリでの上演と、最近見たものばかりで興味深かったのと、舞台裏、野田秀樹のインタビューがたっぷりで、ものすごく面白かったです。

野田版桜の森では、映画版パンフレットに載っていた、「高いところが平気な夜長姫七之助と、怖がる耳男勘九郎」が実際に見られましたし、「表に出ろい!」は前述の2010年版と同じところと、イギリス人俳優(キャサリン・ハンター、グリーン・プリチャード、しかもこの二人が父と娘を、男女逆転で演じるというしかけまで。ちなみに父の職業は能楽師ではなくてシェイクスピア俳優!)ならではの違うところが明確に見えました。ルーマニアの演劇祭で上演したのですが、この演劇祭自体がとてもきれいで面白そう。

贋作桜の森は、紙やゴムバンドを使った演出ができあがってくるところ、そしてパリでの上演の苦労。

野田秀樹自身の精力的な仕事ぶり、密度の濃いことば遊びの綴られる芝居を英語で上演する、しかも主役の一人は自分というのは本当にすごい。とくに舞台装置のしかけや字幕の段取りなどの苦労は、以前読んだ「野田秀樹」のムックにも率直に語られていましたっけ。

演出家らしく、自分の仕事を無駄のない詞で的確に説明する姿もかっこいい。ついでにファッションも遊び心があって凝りすぎなくて好みでした。

「LIFE LIFE LIFE ~ 人生の3つのバージョン」@シアターコクーン

201904lll  ケラリーノ・サンドロヴィッチの翻訳劇、「LIFE LIFE LIFE ~ 人生の3つのバージョン」です。もとはフランスの劇作家ヤスミナ・レザの「Trois Versions de la vie」。副題が原題なんですが、そのままだとちょっと理屈っぽいか。フランスといっても、ソ連から移住したペルシャ系の父とハンガリー移民の母というユダヤ人夫妻の下に生まれたとありますので、豊かな文化的背景をお持ちの方なんですね。写真をみるとすごい美人。

 もともと「ヴァージニア・ウルフなんてこわくない」を上演するはずが、事情でこの作品となり、ケラさんは苦労していたようですが、出来上がってみると、すばらしい舞台で、さすがケラさんという認識を新たにしました。

(以下、ネタバレありです)

ソニア(ともさかりえ)とアンリ(稲垣吾郎)の若い夫婦が、別室の息子アルノーに、ビスケットをやるかどうかで言い争っています。ソニアは元弁護士のエリート、アンリは天文学の研究者ですがいまいち。そこへアンリの上司で有力な学者ユベール(段田安則)とイネス(大竹しのぶ)夫妻がディナーにやってきます。しかしアンリたちは、招待は明日だと思っていて何も用意がなく、ワインとお菓子、チーズでもてなすことに…。

題名通り、同じシチュエーションで、少しずつ異なるバージョンが演じられます。思い切りネタバレすると、最初は気の強いソニアにうまく対処できないアンリ、妻を小ばかにしているユベール、やっと完成したアンリの研究にはライバルに先を越された可能性が出現し…という、なんともやるせない展開。しかし、2つめ、3つめと少しずつ変えるだけで、印象がガラリと変わっていきます。

このバリエーションが絶妙で、力のある脚本に、ケラさんの生きた台詞。人生なんて、ほんの少しの気の持ち方や関係性で、幸福感も大きく変わるんだよ、ということが見事に描き出されていきます。

真ん中の一番低いところにアンリの家のリビングがあり、四方を客席が囲む形。役者は自然な形でリビングにいるので、人の家をのぞいているような感じも新鮮でした。3つの芝居の区切りの音楽も、不協和音がちょっと不思議な感じで合ってました。

キャストがはまってます! 大竹しのぶと段田安則の自在な雰囲気、テンポのメリハリは、さすが。大竹しのぶはこういう四方から見る舞台なためか、前からしか見られない舞台よりもさらにほっそりとして、とってもきれいでした。ともさかりえは、最近はドラマでは落ち着いた役が多くなってきたようですが、この役は、仕事と家のことに追われながらも美しい若い妻で、とてもリアル、台詞や動きにもキレがあって、こんなにいい女優だったんだ、と思いました。

そして、吾郎ちゃんですよ! 初めての生SMAP、こんなに近くで見てもいいの、ほんとに人間なんだ (←失礼)と思いながら、私の中のミーハーが、さほど遠くないのにアップを見たくてオペラグラスでガン見。眼鏡が邪魔ですが(!)、やっぱりとーってもきれいなお顔でした。役も、吾郎ちゃんへのあて書きなのかと思うほど、ナイーブな、ちょっと不器用な愛すべきキャラクターでよかったです。

休憩なしの90分。中身が濃かったので物足りなさはなく、90分でここまでできるんだ、と思いました。

 

 

音楽劇「ライムライト」@クリエ

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  チャップリンの映画を音楽劇に仕立てた「ライムライト」、2015年に続く再演です。元の映画は、1952年、チャップリンが63才でアメリカを追放されたために、アメリカでの最後の作品となったもので、主題歌はスタンダードとして有名です。映画は確か見たことがあると思うんですが、例によってストーリーの流れは覚えておらず。

 お話は、1914年、ロンドン、若いころは人気があったのに、お酒で身を持ち崩し、すっかり落ちぶれたコメディアン カリヴェロ(石丸幹二)は、足が動かなくなって失意のあまり自殺しようとしたバレリーナ テリー(実咲凛音)を助けます。カリヴェロのおかげで立ち直ったテリーは、バレエ団に職を得て、カリヴェロに愛を告白、結婚してほしいといいますが…。

(関係ないんですが、足が動かなくなって自殺するテリー、やっぱり四代目の事故のことを思い出し、あんなに踊りが好きで上手な人が、ほんとはどんな気持ちでいたんだろう、ネガティブな気持ちを一切出さない人ですが、きっといろいろな思いが…と思ったとたんに、ひそかに座席の中で固まってました私)

 音楽劇といいつつ、歌で話が進行していくので、私のくくりでは普通のミュージカル(音楽劇は、普通のお芝居の途中に独立した歌が入るイメージ)。アコースティックな楽隊がとても美しくて、クリエの小さくて濃密な空間(超満席だった)に、音楽が満ちていきます。チャップリンの曲、ほんとうにきれい。と思ったら、音楽は三谷幸喜作品でおなじみの荻野清子さんで、ピアノも自ら弾いていました(どおりで)。バイオリンは岸倫仔さん。

比較するのは申し訳ないんですが、銀河鉄道999は、キーボード主体のうえ2階サイドだったので、よけい音楽も歌も台詞も届くような気がしました。このノスタルジックで美しい音楽にふさわしい、シンプルながら温かみを感じるセットと照明、衣装がすてきでした。

石丸幹二はこの世代では一番売れていて、すらりとかっこよく品がよい方、もともと振り切った派手な役は得意ではなく、(キャバレーのMCとか)はっきり言ってこの役は合ってません。売れていた頃の勢いとかオーラとかが足りないし、落ちぶれたときの落差も不十分。ていうか、何やってても普通にハンサムでかっこいいんですよ(このチラシ見てください)。誰ならよかったかと思うと、今なら市村正親さんかな。ストレートプレイなら、西田敏行とかの役どころですよね。とはいえ、水準以上の方ではあるので、チャップリンを思い出さなければ、作品世界としては成り立っています。

テリーの実咲凛音、宝塚では「エリザベート」「双頭の鷲」と、いずれも気品ある王妃で見ていますが、こうみると普通の娘さん。バレエのシーンが多く、さすがにジャンプの高さはさほどながら、すばらしいバレエで、宝塚だってずっとバレエばかり踊っているのではないでしょうに、このスタイルと技術の維持は、すごい!演技力のある方なので、透明感のある雰囲気と歌もとてもよかったです。

さらにほかのキャストもとってもよくって、テリーに引かれる作曲家ネヴィルに誠実な雰囲気と美声の矢崎広、バレエ団のポスタントに毎度一癖あって楽しい吉野圭吾、飛び道具感いっぱいの植本純米、達者でかわいらしい保坂知寿。魅力的なダンスシーン見せてくれた佐藤洋介、舞城のどか。吉野、純米、保坂の3人は面白すぎて、ああ、石丸さんが一番マジメだよう、と思ってしまいました。

哀しいラストなんですが、映画のあらすじ読んだら、ちょっとした設定のちがいがありました。若干情緒的で冗長な感もあり、映画のラストの方がよかったかも。

 

「銀河鉄道999 さよならメーテル~僕の永遠」@明治座

201904_9992018_1  昨年、「銀河鉄道999」の音楽劇を、中川晃教と凰稀かなめでやるときいて、「うぉー合ってる!」と見たかったんですが見そびれてしまい、今年早くも再演ということで見てきました。

 はい、いろいろまちがっています。凰稀かなめ、メーテルにぴったり!と思ったらメーテルではなくて、クイーン・エメラルダス役、再演じゃなくて続編でした。しかし哲郎がアッキーなのはまちがいなく、この歌と演技で外見が(年齢に関係なく)哲郎って、アッキーしかいないでしょ。

 アニメや漫画で知っている999(スリーナイン←子供の頃見ていた)のお話は、金持ちは機械の体となって永遠の命を得、生身の貧乏人を迫害している未来、機械伯爵に美しい母を殺された哲郎は、謎の美女メーテルと、銀河鉄道999に乗って、機械の体をタダでもらえる星を目指す過程で、さまざまな人々に出会う、という、キャラデザインと設定だけでも良くできたコンテンツ。

哲郎はもちろん、メーテル(木下晴香)、エメラルダス、キャプテン・ハーロック(平方元基)、車掌(お宮の松)は、アニメから抜け出たような雰囲気、ぴっとした佇まいでかっこいいです。コスプレになっていないのは、実力派のキャストと、元の作品にきちんとドラマがあるからなんでしょう。

実はちょっと遅刻してしまい(痛恨)、若干話に入りづらく、時々出てくるエスメラルダとハーロックと哲郎の関係があれ何だっけになってしまったんですが(ハーロックってそもそも別の話で、999にはちょっと出てくるだけだったはずだし)、その中でも、もうひとつの999に乗っていたハミル(前山剛久)との友情と歌のシーンはちょっとぐっときました。

さて、2幕はお話が動いていきます。メーテルとエメラルダスは姉妹で(そうだっけ)、彼女たちの故郷の星に到着した哲郎は、そこで驚くべき事実を知り…。

宇宙ものらしく、何度も客席を照らす美しい照明。上から見た方が、舞台の上に映る映像がよく見えます(映像演出 ムーチョ村松、照明柏倉淳一)。セットがシンプルでも、雰囲気が出ます。一方、車掌の無重力はアナログな宙乗り。

音楽劇というより、もう少しミュージカルよりに作ってくれた方が、躍動感があったと思うんですが、(音楽劇というと、キャストが立ち止まって持ち歌を歌い上げる、みたいになってしまうので)、それにしても歌うまなキャストばかりなので、どの歌も聞きごたえがありました。アッキーはもっと歌ってくれてもよかった!

終わりにアフタートークショーがありました。かわいかったクレアの美山加恋ちゃんの司会で、木下晴香、前山くん。初々しい感じで進んでいったんですが、お宮の松さんが乱入して盛り上げてくれました。お宮さん、達者だしアニメのまんまの雰囲気の車掌さんで、なかなかよかったです。

明治座の2階の左右はけっこう見やすくてお得、とメモしておこうっと。

喜熨斗勝「歌舞伎 芸と血筋の熱い裏側」

201904_2  歌舞伎評論家としてときどきコメントを目にする、喜熨斗勝氏の「歌舞伎 芸と血筋の熱い裏側」。著者は初代猿之助の四男小太夫の息子とのことで、四代目からみると曽祖父初代猿翁の甥、仲良しの貞子さんの従兄に当たります。

タイトルは、中川右介「歌舞伎 家と血と藝」によく似ていますが、出版社も講談社で同じなのか。

内容は、とりとめのない歌舞伎関連エッセイという感じなのですが、面白かったのは、歌舞伎の小道具をやっていたことがある舞台制作の手塚優子さん、関洋子さんとの対談。と、最後の父小太夫さんとのことを書いたあたり。

手塚さんとの対談では、梅丸の小さいころや、福助さんのいい話が出ていましたし、先代の歌舞伎座で洗い場が外にあってたいへんだったことや、浅草歌舞伎で男女蔵さんにお弟子さんがついていなかった(左團次さんの方に行っちゃってた)ので手塚さんがサポートしたが、亀治郎にはたくさんお弟子さんがついていたこと(この頃は先代の下を離れているころですから段四郎さんが後ろ盾でよかったですね)など。関さんとの対談では、歌右衛門さんと福助さんのこと、海老蔵のこと、勘三郎さんの思い出や、平成中村座でのお弟子さんたちの公演の思い出などが興味深かったです。

最後の著者と父であり初代猿翁の弟である小太夫さんとのことは、その時代に苦労した一歌舞伎役者の記録として貴重でした。

残念な点もけっこうあります。例えば、直侍のそばを食べるくだりが違うとか、海老蔵と獅童への思い入れ強すぎるとか、勘九郎・七之助への評が辛めなんですが、その内容が、たとえば、七之助はか弱い女性しかできない(菊之助の方が男を手玉に取る女性もできる)とか、昨年12月に出たばかりの本なのに、ここ数年の七之助の舞台を見ていないのか?って感じです。

ということで、歌舞伎に興味のない方が読んでも、興味がわくわけではないし、歌舞伎をよく見ている人は違和感のあるところが多いし、だれがターゲットなんだという感じの本でした。

 

 

四月大歌舞伎「実盛物語」「黒塚」

2019043  歌舞伎座夜の部、1階前方センターでの観劇です。

 最初は、評判高い仁左衛門さまの「実盛物語」2017年に愛之助の実盛で見ています。そのとき、愛之助がニザ様に似ていると思ったのですが、本家ニザ様ですよ。さすが、この美しい衣装がお似合いの美しいニザ様。

葵御前の生んだのが腕だという小よしの言葉を、うまいこと言って瀬尾十郎(歌六)に信じさせてしまうところから、小万の腕を切り取る次第の目に見えるような語り口、義太夫への乗り方、太郎吉への情け、馬に乗ったときの姿の美しさ、と、たいそう立派な実盛。長台詞も、ニザ様が語るとすんなり入ってくるのはどうしてなんでしょう。

また、この一座の配役が見事で、九郎助夫婦が松之助、斎入、この二人は、もう最高の九郎助夫婦じゃないでしょうか。松之助さんは、うまいというあざとさなく、本当にその芝居に生きる人物を見せてくれて、大好きです。小万が孝太郎、葵御前の米吉が、かわいさを抑えて、気品のある葵御前を健気に演じていました。。

歌六さんの瀬尾は、表情豊かで、意外に黒目が大きくてかわいい瀬尾。ずっしりとした貫禄があって、情愛があって、まあ、何やっても歌六さんはまちがいありませんよ。

太郎吉の寺嶋真秀、まほろんがずっと出ずっぱりなんですが、台詞も多いし、見得だの瀬尾を斬るだの、本当に重要なお役。そして、瀬尾の述懐や、実盛の馬乗りなどをじっと見る顔が、まあ小学校入りたての坊ちゃんとは思えない落ち着き。先日「サワコの朝」に、しのぶさんと一緒に出ていましたが、天性の明るさ、豊かな表情、芝居好きと見える様子、たぶん大柄な美丈夫になりそう、既に日仏英のトリリンガルと、本当に期待膨らむ坊やですよ。直系のじゅふたんは来月丑之助という立派な名をもらいますが、まほろんも早く何か名前もらってあげて!

2つめは、いよいよ「黒塚」2015年1月歌舞伎座は幕見。2017年1月新橋演舞場は2階右、今月もこれまでは幕見だったので、1階で見るのは初めてでしたが、もう、四代目に圧倒されるというか、四代目の世界に引き込まれて終始 掌の上でもてあそばれているような気持ちになりました。

1景、阿闍梨祐慶(錦之助)一行と岩手(猿之助)のやりとり。岩手の豊かな表情に、一瞬も目が離せません。衣装もきれい。祐慶、もっと口跡がよければ、と思いはしたものの、尊い美しさに、ありがたい気持ちになります。種之助、鷹之資は、当初と比べると、驚くほど力強くなっていて、踊りのうまい二人だけに、どの場面も美しかったです。特に鷹之資は、ちょっとぼっとしたお役の先月とくらべて、メリハリのきいていること、化粧もきれい。

2景。筝と三味線、尺八の力のこもった演奏に、たっぷりの岩手の舞踊。だんだん救われる喜びにあふれていくのが、切なく、でも楽しく、耳も目も喜びます。自分の影と戯れるのは見えないのですが、あの大きな月と重なって見える岩手、前方ならではの迫力。舞台写真だと月の下に岩手がいますが、岩手の後ろに月が見えるのは、新鮮でした。強力太郎吾(猿弥)とのくだりも見事、高さのあるジャンプ、背面宙返りの退場。猿弥さんの体型からは驚くようなキレのある動き。

そして、いよいよ第3景。阿闍梨一行の容赦ない調伏に、だんだん弱る鬼女。花道での仏倒れ、ものすごく素早く体勢を整えていました。きっちりと計算された展開に、もっていかれます。最後は小さくなってしまいます。

能を題材に、古風ではありますが、要領よい説明や素早い場面展開、次から次へと見せ場が続くこの作品、全く古くありません。囃子方、唄の思い入れ、音楽と舞踊が一体となった充実感、四代目、猿弥さんの身体能力を惜しげもなく見せてくれるありがたさ。

惜しむらくは、劇評の先生方、「黒塚は素晴らしい」前提なのか、照明を変えたとかなんとか小さいことについて書いているんですが、見ていない人に、まったく良さが伝わってないですよ。歌舞伎には、歌舞伎が好きな人だけが受け入れられるものと、歌舞伎のみならず舞台芸術が好きな人に十分アピールできるものとがあると思うんですが、まちがいなく、黒塚は後者だと思います。

そして、こんなにも激しい演目を本興行でやれるまでに快復してくれた四代目、本当にありがとう。

(最後の幕見)

目の前で見て、ああ、もう満足と思ってはいたものの、楽日近くに幕見に行ってしまいました。こんなにリピートできるのも、歌舞伎座のありがたいところ。立ち見の番号でしたが、下手で座ることができました。

この日はイヤホンガイドをを借りてみました。衣装の説明は柄のことまでは細かくて覚えていられないし(水衣と能鉢巻だけ覚えてます)、役者名はわかるし、台詞の説明も黒塚は新歌舞伎で台詞がわかりやすいのでさほどいらないのですが、やはり舞踊は、長唄の歌詞と合わせての動きの意味を細かく教えてもらって、初めてわかることもたくさんありました。こんなにリピートするなら、早いうちに借りておけばよかったかも。でも1,2回見るだけなら、音楽をめいっぱい聞きたいですけどね。

解説をききながらじっくり見る2景は、岩手の心の高揚が胸に迫って、感動でした。

そして、3景は、イヤホンガイドも少なめ、台詞はほとんどないので、もっと話しても大丈夫なんですが、この熱演の前では、説明など不要ということをわかってくれてよかった。

ますます阿闍梨一行のチームワークというか動きが気持ちよく、鬼女とのアンサンブルが素晴らしい。そして、仏倒れの一瞬前に、戯れていた木の影が舞台中央に蘇ります。そのあと、驚異の後ろ向きジャンプをピークに、力尽きていく鬼女、終盤に向けて、ときどき岩手が顔を出すのがはっきりとわかります。鬼なのにかわいらしさがあって、切なくなります。ああ、これが最後の黒塚。

最近の素顔の猿之助さん、ちょっとあごのあたりがすっきりして、黒塚のハードな舞台のためなのか、でも充実感があふれていて、これからますます楽しみです。

 

「笑う男」@日生劇場

201904warauotoko   ミュージカル「笑う男 ―永遠の愛」です。原作はビクトル・ユゴーの小説、過去に映画化もされているようです。ミュージカルとしては、2018年7月に韓国で初演されたもの。ロバート・ヨハンソン脚本、フランク・ワイルドホーン作曲、「ビューティフル」や「オン・ユア・フィート」の上田一豪演出です。

(以下、けっこうネタバレありです)

時は17世紀クロムウェルの後王政復古したイングランド。誘拐され、慰み者にされるために、笑った顔のように口を裂かれたグウィンプレン(豊島青空、大きくなって浦井健治)は、拾った盲目の赤ちゃんデア(大きくなって衛藤美彩)とともに、ウルシュス(山口祐一郎)助けられます。長じてウルシュスの見世物小屋(フリークスがいっぱい)で見世物となるグウィン。しかし、アン女王(内田智子)の異母妹ジョシアナ公爵(朝夏まなと)に興味を持たれたグウィンプレンは、フェドロ(石川禅)によって、クランチャーリー卿の跡継ぎだったということがわかり、屋敷に連れてこられます。女王は、ジョシアナにグウィンプレンと結婚するようにいいますが…。

ユゴー原作らしく、物語は階層社会や人間の残酷さを描き出している感があり、フランク・ワイルドホーンの曲も、すごくいいです。印象的なテーマ曲のリフレイン、特に終幕近くのグウィンプレンとジョシアナのソロは名曲。演奏も美しかったです。

舞台装置はシンプルですが、映像もうまく使って雰囲気を出しています。しかし特筆すべきは衣装!前田文子さんが、この舞台の衣装の工夫や苦心をTwitterで見せていてくださったので、期待していたんですが、素晴らしかった!布地の存在感と、形の凝っていること。女王とジョシアナがいちばんですが、ウルシュス一座も凝っているし、グウィンプレンの白い衣装、ガウンも素敵でした。

残念ながら、メインキャストはあんまり合っていないと思いました。浦沢くんは、好青年過ぎて、「笑う男」となった悲劇性とか屈折とかが感じられなくてただの好青年。歌も彼の声質では弱い感じがしました。この人ほんとにメタルマクベスやったのかな。衛藤美彩は、雰囲気は可憐だし演技も悪くないんですが、肝心の歌が最初の場面からあまり歌えてなくて、すてきなデュエットもいまいち。乃木坂を卒業したばかりの人だそうですが、夢咲ねねとWキャストとは。

朝夏まなとはきれいで、女公爵としての貫禄、孤独感、グウィンを誘惑するときの下品にならない色っぽさ、でよかったんですが、歌は彼女にもちょっと難しかったかも。

ウルシュスは、最初の無頼な雰囲気はいい感じだったんですが、うさんくさすぎるし、グウィンプレンたちを見世物にしてるし、愛情をもって親代わりをやっていたということがあまりしっくりきませんでした。あのくせのある過ぎる台詞のせいか。むしろ計略みえみえの石川禅(歌もよかった)と役が反対の方がよかったかも。

アンサンブルはうまくて、グウィンの母とか、美声の女王とか。この女王の眉なしのメイクはなかなか迫力で、長台詞はちょっと苦しそうでしたが、歌はよかったです。

結局、韓国製作ミュージカルは、もっとバリバリに歌主体でキャスティングしてくれ、でした。

シネマ歌舞伎「桜の森の満開の下」

201904_1   2017年の納涼歌舞伎「野田版 桜の森の満開の下」のシネマ歌舞伎版です。1回だけ見たのですが(その時の感想、野田秀樹の世界観とメッセージが、歌舞伎役者の魅力と衣装、美術、音楽とが見事に合体して、とても満足な舞台でした。そのときは、舞台全体と個々の役者を見るのに忙しすぎたので、ゆったり集中できるシネマ歌舞伎を楽しみにしていました。その後NODA・MAPでの「贋作 桜の森の満開の下」も見たので、比較して見たかったし。

 感想は、生の舞台のときと同じなんですが、2回目なので物語がよりすんなり入ってくるのと、じっくり見てもやっぱり勘九郎の耳男と七之助の夜長姫すばらしい。ひとつひとつの台詞が本当にさまざまなバリエーションで的確に発せられているし、とくに耳男の動きがおそろしく面白いのと、早回しかというくらいの素早さ。

歌舞伎美人の野田秀樹インタビューは大変興味深い内容ですが、女方である七之助が夜長姫を演じることで、サディストぶりがより際立っているといっています。もう魅力的な悪女をやらせたら七之助の右に出るものがあろうか。

オオアマ(染五郎<当時>)、マナコ(猿弥)、赤名人(亀蔵)、ヒダの王(扇雀)は記憶通りよかったですが、映像で見て意外に重要な役割をしているのがアナマロ(新悟)とマネマロ(梅花)。エンマ(彌十郎)、ハンニャ(巳之助)、青名人(吉之丞)、もよかったですし、そしてやっぱりエナコ(芝のぶ)がすごいんですよ。そのまま現代劇で歴史に残る役がやれそうな弾むような女。

早寝姫(梅枝)もいいんですが、先月のあの小町姫墨染を見た後では、この1年半で、彼がいかにめざましく役者ぶりを上げているかを感じました。アンサンブルの人数が多いのも、歌舞伎ならではの贅沢。

野田秀樹は好きで、いつ見てもテーマと表現とエンタテインメント性のバランスのとれたきっちりした芝居を見せてくれると思うんですが、やっぱり歌舞伎は何かひとつその上を行く力があって、(納涼で見たとき、「いつもの野田秀樹の芝居は役者がパーツに見えるけれど、歌舞伎では役者の光が強い」と感じました)、少なくともこの作品に関しては、歌舞伎の方が好きだなと思いました。

映画用の小ぶりのパンフレットがいいです。扮装の写真もいいし、上演後ならではの、野田秀樹と美術堀尾幸男、衣装ひびのこづえ、美粧柘植伊佐夫、作調伝左衛門の記事が読めます。配役にもスタッフにも妥協のないプロダクションっていいですねえ。もっとチケットとればよかったと思わずにはいられません(でもこの月、1部は猿之助勘九郎の団子売があったし、2部は弥次喜多だし、日数は短めだったんですよね)。

 

 

 

四月大歌舞伎「平成代名残絵巻」「新版歌祭文 座摩社 野崎村」「寿栄藤末廣」「御存鈴ヶ森」

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 4月の歌舞伎座、昼の部です。バラエティに富んだ演目が並び、のべ5時間(!)でした。

 1つめは、「平成代名残絵巻(おさまるみよのなごりえまき)」。平清盛の屋敷、徳子(壱太郎)の入内を前に、叔母の淑子(笑也)、時子(笑三郎)、宗盛(男女蔵)、藤原基房(権十郎)らが集まっています。徳子と知盛(巳之助)が舞います。

 次の場では、遮那王(=義経、児太郎)が、鎌田正近(市蔵)とともに、母の常盤御前(福助)と対面します。打倒平家を誓う遮那王。福助さん、声に張りがあり、お元気そうでした。そして遮那王と知盛との対決、宗清(彌十郎)の仲裁。巳之助と児太郎の両花道の引っ込みが力がこもっていて、よかったです。

2つめは、「新版歌祭文」。野崎村は、まだ見ていない有名演目の一つでしたので、楽しみにしていました。めったに出ない「座摩社」からです。

大店油屋の丁稚久松(錦之助)は、手代小助(又五郎)に騙されて、商い先から受け取った金をとられてしまいます。久松は油屋の娘お染(雀右衛門)といい仲。そのお染に岡惚れしている佐四郎(門之助)に調子よいことを言って金を巻き上げる小助と法印(松之助)。

久松の人柄と状況を説明してくれる場なんですが、主役は又五郎さん。生き生きと小悪党を演じています。松之助さんの味のあること、門之助さんのおっとりとしたカモの若旦那。

そしていよいよ野崎村。久松が育ての親の久作(歌六)の家に、小助とともに帰ってきます。久松がだまし取られた金を、小助にたたき返す久作。小助が帰った後、久作に久松と祝言するよう告げられて喜ぶ久作の娘お光(時蔵)。そこへ久松を追ってお染がやってきます。

お光ちゃんが最初に出たところから、素直で率直ないい娘なんですよ。祝言の御馳走のなますのために大根を刻む(時蔵さん手つきがうまい)ときの弾んだ気持ち、お染への嫉妬。お染も跡取り娘ながら、久松に惚れぬいているかわいい女。二人が取り合うのも無理もない、優男の久松。酸いも甘いもかみ分けたわれらがお父さん、歌六。

ストーリーは知っていたんですが、実際に見ると、意外に明るい面白いやりとり。役者さんがきっちり役に合っていて、それぞれの気持ちがよくわかります。身を引くお光のせつなさ。そして留め男(男じゃないけど)の役割で出てくるお染の母お常(秀太郎)。別れて帰るがけじめ、というのがまた胸にしみました。

両花道で、花道からはお常・お染親子が舟で、仮花道から久松が駕籠で帰ります。残されるお光と久作。駕籠かきの着物を脱ぐコミカルなひとくさりの後で、皆を見送ったお光の慟哭がかわいそうでほろりとしました。

上記の通り、時蔵・錦之助、歌六・又五郎がそれぞれ好演なんですが、この2兄弟はいとこ同士、そして今年は彼らの曽祖父の3代目歌六の没後100年なんだそうです。今の歌舞伎になくてはならない個性的な役者さん、この演目は、何よりの追善になったことでしょう。

2019044_1 3つめは、「寿栄藤末廣 鶴亀」藤十郎さんの米寿記念の舞踊です。1月の松竹座では藤十郎さんと、雁治郎・壱太郎、扇雀・虎之介でしたが、今回は、雁治郎・猿之助・亀鶴・壱太郎で登場。亀鶴さんは初代雁治郎さんの曾孫で、雁治郎さんたちのまたいとこにあたるんですね。

それで、今月の「演劇界」のロングインタビューで、猿之助が「一門の皆様に入れていただいてありがたい」って言ってたのか。その通りで、5人がせりあがってくるのを見ると、「何でいるの」感。しかし、ちんまりしている藤十郎さんの隣で、薄黄緑の衣装が似合って、ここ最近では一番きれい、もうオーラで輝いているように、そして次期女王は私、みたいに見えました。藤十郎さんと四代目の芸風はかなりちがうように思えるのに、このインタビューでは、いくつも役を教わったと言っていますし、別のところでは、「何をきいても論理的に答えてくれる」とも語っていて、本当に藤十郎さんのことを敬愛しているんだなと思います。高齢の方となぜか仲いい四代目。

さらに歌昇・種之助、児太郎、米吉と若手が花を添えて。壱太郎は、上の5人でいるときには妹分に見えるんですが、衣装を変えて児太郎・米吉と並ぶとお姉さんに見えて楽しかったです。

歌舞伎美人ニュースの記念写真 →勢揃いの華やかなお写真!これほしかったです。

さて最後は「御存 鈴ヶ森」。これも見たかった演目です。ここでも又五郎の飛脚が、鈴ヶ森に集まっているならず者たちに身ぐるみはがされる場面から。そこへ国元を出奔してきた白井権八(菊五郎)が駕籠から降ろされ、賞金目当ての雲助たちが襲い掛かるのをバッタバッタと斬ります。立ち合いながらユーモラス。

2019042_1 そして、幡随院長兵衛(吉右衛門)がやってきて、「おわけぇの、おまちなせぇ」に始まる名台詞の場面。ひーかっこいいよ吉右衛門さん。吉右衛門さんの役の中でも、長兵衛はかなり上位に入るので、また見られて感動でした。

 余談ですが、左近くんがネットで「左近センパイ」と言われるようになったのは、俳優祭で金太郎権八とやった鈴ヶ森の長兵衛が大ウケで、そのあと松緑が長兵衛をやったからなんですよね。これだったのかあ(「左近襲名披露のニュース」に出てました)。

ということで、盛りだくさんの昼の部でした。

 

 

宝塚花組「カサノヴァ」

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   宝塚花組「カサノヴァ」です。トップ娘役の仙名彩世はこの公演で、トップの明日海りおもこの秋には退団ということで、あの「ポーの一族」の二人、とくに明日海りおは、私の少ない宝塚観劇の中でもけっこう長くみているし、ルックスがもう一番好みの男役ということで、あんなに美少年だったのに、貫禄まで出てきちゃって、と感慨深いものがありました。

 お話は、有名なカサノヴァものなんですが、実は数多の女性と浮名を流したということくらいしか知らず、直前に調べたら、18世紀後半のベネチアの人物で、多才で頭の回転が速く、投獄されたが脱獄した経験があり、薬の知識があったということがわかりましたが、その部分は脚本に生かされていました。

作曲は「1789」のドーヴ・アチア氏で、ラップ調とか、アイドル調とか、いろいろなタイプの曲があって、それも楽しかったです。

その投獄場面からカサノヴァが登場します。自信家のカサノヴァ、さすが役ごとになりきるみりお、完璧です。といっても宝塚らしく、千人斬りのカサノヴァは、脱獄後、ベアトリーチェ(仙名彩世)と出会い、真実の愛を感じ、またベネチア提督の養女として政略結婚させられそうな彼女を救うのです。

ベアトリーチェの心理がきめ細かく描かれていて、退団公演らしいなと思うとともに、カサノヴァを捕えようとする審問官コンデュルメル(柚香光)がかっこいいヒール、そのこじれている妻(鳳月杏―男役なのに女性の歌うま!)、ベアトリーチェの求婚者コンスタンティーノ(瀬戸かずや)。牢獄で知り合ってずっとついていくバルビ(水海舞斗)がかわいくてうまく、ジャニーズの少年のようでした。ベアトリーチェの侍女ダニエラ(桜咲彩花)はきれいだった!

と、個々のキャラクターをうまく生かした明るい作品で、楽しかったです。退団間際のトップ二人ということは、次が十分育っているということでもあり、柚香光の振り切った演技が主役に迫っていて、でもやっぱりみりおはすごくって。金髪に全身赤の衣装って、カズレーザーだ!とつい気づいちゃったんですが、いや、ここまでちがいますか。

2幕のたっぷりしたお芝居で、最後はいったん別れるという設定が、一足先に退団するってそういうことかしら、とちょっと胸に迫るものがありました。短いレビュー、階段の前の、みりおが娘役の中一人真ん中で踊る衣装が華やかでほんとに素敵でした。

ちょこっとしか知らない私でさえ、こんな風に思うんだから、ずっと追いかけてきたファンの方々の気持ちはいかばかりか、と思う夜でした。

 

 

 

四月大歌舞伎「黒塚」「二人夕霧」幕見(追記あり)

  201904kabukiza   今月の歌舞伎座夜の部、初日の評判に待ちきれなくて(←いや、最初からわかってたか)、黒塚」の幕見です。先月の弁天娘よりも1時間開演が早いのでどうかと思いましたが、開演10分前到着でも座れました。桜満開の時期とあって外国人の方が多くてほぼ満席。

 ああ黒塚!私が猿之助丈のファンになったのは、2014年11月の明治座の女團七と2015年1月の歌舞伎座の黒塚がきっかけといえるんですが、その黒塚です。2017年1月の新橋演舞場の黒塚以来3回目ですが、今回は奥田雅楽之一さんや杵屋佐喜さんのTwitterで黒塚についてつぶやいているのを拝見したりして、囃子方の方々にも特別な演目なのだなと思いました。雅楽之一さんは、黒塚についての記事も紹介してくださっています。猿之助さんの、舞台を作り上げる全ての人たちとのいいコミュニケーションが感じられました。

安達ケ原に住む岩手(猿之助)のところに、阿闍梨(錦之助)一行が宿を求めます。錦之助さん、もう少し口跡がよければと思わないではないですが、やはり美しいたたずまい。種之助、鷹之資は、気合が入っていてとてもよかったです。鷹之資は、先月の浜松屋の宗之助よりずっと合っている感じ。

2景。一面のススキの原の前で、岩手が初めは静かに、そして阿闍梨に妄執を取り除いてくれる嬉しさに、楽しそうに踊ります。4階から、木と自分の影と戯れる姿がはっきり見えました。なめらかな手の動き、神様ありがとう、とまた泣きたくなりました。2景のみの筝の演奏も見事。

そして、岩手に禁止されていたのに、寝屋をのぞいてしまった強力太郎吾(猿弥)と出くわした岩手。岩手のままのしつらえながら、鬼女の本性を現し、凄い高さのジャンプ、強力につめよる動き、バク転での引っ込み。腰の抜けた強力の猿弥さん、さすが踊りの名手です。

3景は鬼女と阿闍梨一行との激しい戦い。長袴の衣装がきれいなんですよ。言葉のいらない迫力に、幕見席全体が引き込まれました。やはり、すばらしい作品でした。

さて、続けて「二人夕霧」。あの廓文章 吉田屋の夕霧は病で亡くなり、伊左衛門(雁治郎)は、同じ夕霧という名の傾城(孝太郎)と所帯を持ち、傾城買指南を商売にしています。教えを乞いに、彌十郎、萬太郎、千之助がやってきます。このあたりコミカルなやりとりなんですが、彌十郎さんというより、市蔵さんや亀蔵さんあたりが面白かったかも。萬太郎はかわいい目を細くして、この舞台の雰囲気を盛り上げようと好演でした。千之助もがんばってた!

後半は、幽霊の夕霧(魁春)が登場して、伊左衛門と踊り、おきさ(東蔵)も加わって、最後は伊左衛門に大金が転がり込んでめでたしです。

うーん、役者さんも常磐津も、誰も悪くないんですけどね、雁治郎・孝太郎は先月女鳴神コンビだし、最近孝太郎さんいいし。しかし、夕霧二人と二股ってなんだよってことですよ。吉田屋の伊左衛門は、どうしようもないボンボンだけど、夕霧に惚れぬいているところだけがいいところなのに。のっぺりした赤い壁のセット、笑っていいのか微妙な芝居、そしてどこに行こうとしてるのかわからない舞踊。小判を降らせるのも、ちょっと下品に感じました。

これ、弁慶上使や熊谷陣屋や碇知盛のような重い演目のあとならまだよかったと思うんです。しかし、上記のような、完成形をさらにつきつめたような舞台づくり(歌舞伎座でもここまで美意識を貫くのは稀では)のうえで、踊りの名手が、代表作の一つとして、大怪我から復帰して命がけで踊った演目の後でのゆるいお芝居と踊りですか…。観客もどう見ていいのかわからない雰囲気でした。これからお客の入り大丈夫かな。ただでさえ、黒塚だけ繰り返し見たい猿之助ファンって多そうなのに。

「オペラ座の怪人」の続編、なんでこんなの作っちゃったの感が強い「ラブ・ネバー・ダイ」みたいなものでしょうか。私は吉田屋好きなので、ニザ玉、幸七で見た吉田屋の感動返して。

うーん、やっぱり黒塚、夜の部のキリの演目ですよね。ざんねん。

(幕見2回目)

1週間ほど後、黒塚2度目の幕見です。見るたびに、衣装やセット、照明を含めた美しさ、現代の時間感覚にギリギリ斬り込んでくるような静の場面(=長すぎない)、常よりもずっと存在感があって、芝居の重要な要素となっている、演奏会のような鳴り物、囃子方、意外にわかりやすい詞、に感心します。

仕立ては能に見えますが、立派に今に生きる作品。「熊谷陣屋」のような芝居はもしかしたら廃れてしまうかもしれませんが、これは猿翁十種といいながら、もっと残るような気がします。

再演とちがって、短い間をおいての観劇ですと、流れを覚えていてじっくり見られます。大詰の花道では、鬼女の荒い息やうなり声が聞こえて、苦しみが4階まで伝わってきました。あの両手をブンブンするのは煽っているようにも見えます。大胆な隈取の向こうに、猿之助のキラキラした目が見えて何だか感動でした。

やっぱりキリの演目だなあ。

(幕見3回目)

2景では、筝が加わるのですが、何日かは、正派の家元(今月家元を譲られて宗家となられるそうですが)、93歳の中島靖子さんが出演されるときき、その日に行ってきました。筝は、靖子さんのソロ(特別ですか?いつもよく見ていないので気づかなかった)の部分が結構長くあり、丸く美しい音色が聞けました。昭和20年から出演されているそうで、74年ですよ!わずかな出番のために、それだけ高名な方が出てくださるのは、それだけこの澤瀉屋の演目を大事に思ってくださり、四代目のこの演目への思い入れやその成果を認めてくださっているからでは、と思います。

(しかし藤十郎さん、竹三郎さん、寿猿さん、紅長のときの玉之助さんと、80代後半以上の方々と仲良しな四代目)。

毎回どこがちがうかとはっきり言えないのですが、2景の踊りがより楽し気で、メリハリが際立っているように思いました。さあ、もうすぐ真近で見られます。

(1階席での感想+前楽幕見)

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