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神田松之丞ひとり語り 講談と歌舞伎 「芝居の喧嘩」「対談・講談と歌舞伎<松之丞・児玉竜一>」「中村仲蔵」

201903_1  松之丞独演会、テーマが講談と歌舞伎、歌舞伎評論家の児玉竜一教授との対談、そして「中村仲蔵」と、私のために企画?(←ちがう)と、楽しみにしておりました。朝日カルチャーセンターの企画で、会場は神楽坂の牛込箪笥区民ホールという、素朴な雰囲気のキャパ392席のホールです。ほぼ満席の盛況。舞台は広く、座席の傾斜もあるので天井が高く、先日の三越カルチャーセンターの会議室の天井に頭をぶつけそうな高座とはえらい違い(笑)

最初はたっぷりめのマクラ。南座での独演会が決まったそうで、なんと木ノ下裕一さんの補綴。木ノ下さん、この間も木ノ下歌舞伎を上演していたKAATのロビーでお見かけしましたが、パワフルな雰囲気だったなあ。

来年の真打昇進の話題で、講談の名跡について。歌舞伎と違って、講談や浪曲では遺族(=素人)が名跡を持っていて、誰にも継がせず、止め名にするという場合があってけしからん、そうな。ほんとならヒドイ話です。

1席目から歌舞伎関係ということで、幡随院長兵衛もので「芝居の喧嘩」。歌舞伎で見た、暴れる旗本奴を抑えに客席から長兵衛(←かっこいい吉右衛門さんだった)が登場する話かな、と思ったら、子分同士の山村座での喧嘩の話。長兵衛子分の闘犬権兵衛と夢の市郎兵衛が主役なんですが、喧嘩のきっかけは長兵衛の別の弟子が伝法で、客に迷惑をかけたからなんですよ。長兵衛の子分がそんなことしちゃいかん。とはいえ、最後は水野十郎左衛門の一味と幡随院一味の名前の言い立てになって威勢よく終わります。

続けて、松之丞と児玉先生の対談。児玉先生の歌舞伎を見始めたきっかけ、研究者になろうと思った経緯、講談と歌舞伎の親和性(私も両者はすごく近い世界で、ネタも近いものが多いと思ってました)、講談の凋落の原因、昔の歌舞伎との違い、歌舞伎界のこれから、などなど、予定を超えて50分くらいあったのではないでしょうか。

児玉先生の役者評を聞き出そうと(とくに海老蔵評)、執拗にきく松之丞、松竹に差しさわりのありそうな危ういところには近づかない賢明な先生(笑)。今の大幹部は仁左衛門、吉右衛門、菊五郎らで70代半ば、いくらなんでも10年後はどうなるってことですが、(だから今一生懸命見てるわけです)、もっと若い世代にもそれなりに期待はされているのかな、と思えました。松之丞、そうかなとは思ってたんですが、けっこう歌舞伎を見ていて(最近は忙しいはずなのに)、役者さんのこともよく知っているようでした。

平成中村座をはじめ、必死に歌舞伎を盛り上げて、そして歌舞伎座にお客を連れて戻って古典をやるはずだった勘三郎丈、猿之助王国で奮闘し、スーパー歌舞伎をやり続けて、そして宙乗りも早変わりもない古典をやるはずだった猿翁、ともに病に倒れた二人を惜しむ児玉先生、観客が役者をダメにすることもあると言っていました。うむ。その三代目を見ていて、もっと開けた役者となるために考えてやっているのが当代猿之助であると。

木ノ下さんの話も出ましたが、松之丞の口から「あの人天才」ということばが出て、やっぱそうだよね、と思ったところで、そもそも松之丞の「pen+」で木ノ下さんを知ったんだった。木ノ下さんと児玉先生の座談会、面白かったんですが、これで3人がつながってちょっとうれしいです。

さて、最後はお待ちかねの「中村仲蔵」、落語でも志の輔が得意のネタにしていますが、初めてです。落語は仲蔵の女房や師匠が出てくるそうですが、松之丞の講談では、一人思い悩む仲蔵です。下積みから名題になったものの、仮名手本忠臣蔵の通しなのに五段目の斧定九郎一役で失望していた仲蔵が、砥の粉でどてらを着た冴えない悪役の定九郎を、白塗りの凄みのある実悪の役に作って喝采を浴びる話。

多少はしょったのもあって、あらすじをなぞったような感はあったのですが、客が「昔の役者の方がよかったなんて言っちゃいけねえな。芝居は今なんだな。今一生懸命やっている役者を見なきゃいけねえ。仲蔵よくやった」(かなり意訳)という言葉が、直前の対談の内容とリンクしていて、まさに今、懸命に講談界を盛り上げようと奮闘する松之丞と重なって、じんとしました。

しかし、この話、「仮名手本忠臣蔵」を全段見たことのないお客さんにどこまで伝わるのかと思います。そもそも「砥の粉」(赤ら顔の化粧のことで、悪役や奴の顔)ってけっこうな専門用語だし、五段目が弁当幕というのも、忠臣蔵の長さと前後の幕の面白さを知らないとぴんとこないでしょう。数年前に国立劇場で3か月連続通し上演があったとき、「これから歌舞伎見るつもりなら見るべき」と言われて見ておいてよかったー。

そして何より、今の定九郎のかっこよさ。私は松緑と幸四郎で見てますが、二人ともそりゃかっこよかった。実は初めて松緑で見たとき、え、松緑がこの役ひとつ、って思いましたし、松緑さんが父辰之助が演じて評判だったと語っているのもそういうものなのかと思ったくらいでした。

逆に、歌舞伎知ってると不自然な部分もあります。1日目はともかく、2日目以降は役者の先輩から誉め言葉いわれそうですし、3日目には大向こうかかるでしょ。そして舞台に出てれば客席の雰囲気わかりますよ。語っているのを聞いた一人のお客だけでなく、本当に成功したと仲蔵が気づくまで、5日もかかるのははおかしいな。

まあそれは劇的効果ということで。予定より30分超過だったようですが、行ってよかったひとり松之丞でした。

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