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三月大歌舞伎「女鳴神」「傀儡師」「傾城反魂香」<2回目追記あり>

201903_2
 三月大歌舞伎昼の部です。

 1つめは、「女鳴神」。鳴神の男女を入れ替えたものです。織田信長に滅ぼされた松阪弾正の娘鳴神尼(孝太郎)が、昔の恋人雲野絶間之助(雁治郎)にほだされて、龍神を封じ込めた秘密を話してしまいます。 

鳴神を誘惑するのが雁治郎はんかあ、と思っていたら、見ているうちに雁治郎さんがかっこよく見えてきて(さすが、そしてごめんなさい)、姫とのなれそめを話す場面なども所作が美しく、素敵。しかし強いはずなのに、岩を登るときはヨロヨロ。ここ、姫姿の絶間姫は蔦をつかんでこけつまろびつ登るのもしかたないですが、立派な武者の絶間之助は一気に登るのかと思ってましたよ。

前述のとおり、絶間姫の色香に迷う鳴神に対し、昔の恋人との愛が再燃する女鳴神はなんか気の毒。ぶっ返った後も、しなやかであくまで女性の女鳴神、かわいらしい。鳴神尼に仕える白雲尼(猿三郎)、黒雲尼(猿四郎)の二人が達者で楽しかったです。

2つめは幸四郎の舞踊「傀儡師」。傀儡師が、お七吉三、牛若丸と浄瑠璃姫、船弁慶などを踊り分けるという趣向で、柔らかな表情の幸さんが、軽やかに踊ります。物語まではきっちりわからないながら、演じ分けはなんとなくわかる感じ。

3つめは「傾城反魂香」。三代猿之助四十八選の「高島館」「竹藪」がついています。この場は、私の人生2回目の歌舞伎で、2012年に明治座で見た場です。笑野さんの銀杏の前がかわいくてよかったなあ。

さて、今回は四郎二郎が幸四郎、銀杏の前が米吉で、美形の四郎二郎と無理やり一緒になりたい銀杏の前の面白い場になりました。道犬(猿弥)、雲谷(松之助)も憎々し気。四郎二郎は縛られて、自らの血で描いた虎が助けてくれます。ああ、こういう幸四郎大好き。花道の引っ込みも美しく、かっこよかったです。明治座でも虎の動きの面白さを楽しみましたが。やはりこの虎、強くてユーモラスで楽しませてくれました。

またもや雁治郎さんが雅楽之助で立ち回りに大活躍。これがけっこう長くて、傷ついた雁治郎さんが本当にヘロヘロのように見えました。

 いよいよ土佐将監閑居場。通常出る吃又です。猿之助のおとくは、かつて浅草歌舞伎で演じた時、勘三郎さんが、自分が又平のときおとくをやってねと言ったという、数少ない勘三郎・猿之助のエピソードとなっている役。今月のおとく、SNSでは、又平への愛情にあふれた女房おとくに泣いた、という声が多く、さすが女房得意だし、と思いつつ見に行ったわけですが。

おとく・又平登場直後から、ちゃきちゃきしゃべり、場を制圧する猿之助に、これ、こんな芝居だっけ、と目を見張ります。といっても、出しゃばりというより、又平のことが好きすぎて、なんとか引き上げてもらいたいという熱意のあまりという行動。対する白鸚丈の又平、さぞこれまで真面目に修行してきたであろうという健気な雰囲気。

そして、懇願しても土佐の苗字はもらえないと知って、あの「手は2本、指は10本ありながら…」があり、二人が涙ながらに手を握り合う。ここがもうたっぷりで、静まり返って劇場全体がみつめます。そこから、おとく又平の描いた手水の絵姿を確認するところ、くるぞ、くるぞと待ち構えるこちらの気持ちをひきつけます。

 猿之助丈、歌舞伎とはと聞かれれば、無限に正解を持つ型で伝える演劇だといつも言っているのに、この間合いは、歌舞伎の型から出てくるものではないのではと思います。あの吉右衛門・菊之助の吃又はすばらしかったけれど、これとはちがう。

 猿之助にこれをやらせてくれるのは白鸚さんならでは、と、「一本刀土俵入り」も思い出します。あの、アドリブのような素のようなやりとり。現代劇との共通項を持っている二人だからなのか。

無事姓とお役目をもらい、喜んで舞う又平。おとくは鼓を打ちます。吹き替え(というのか?)ではなく、実際に打っていて、皮の感想が気になったのか、息を吹きかけたりしていました。かなりきれいな音で、さすが器用な人。

というわけで、こういう猿之助が見られて大満足の昼の部でした。

(2回目追記)

この2週間後、今度は3階ですが、昼の部を再見しました。

「女鳴神」、雁治郎・孝太郎のお二人、ますます意気が合ってます。絶間之介は、はっきり騙りだったと言ってたんですね(なぜ前回聞き逃していたのか)。絶間之介もやむを得ずやっていたという立場が明確になって、今度はすっきり見られました。

気になっていた、ヨロヨロ登りも、険しくてというより、結界のように、登りづらくなっていてがんばったように見えました。

「傀儡師」、写真が入った筋書を買ったので、前回よりは細かく場面もわかって、常磐津も聞き取れて楽しかったです。後見の京純さんイケメン。坂東流の踊りで、三津五郎さんが何度か踊っているようです。幸四郎が踊ることでまたつながっていくんですね。

そして「傾城反魂香」。前回予想を超えたよさだったので、もう1回見たかったんです。

お百姓の寿猿さんがとてもいい芝居をしていて、ちょっと好きな高麗五郎さんもいい味でした。そして高麗蔵さんの龍の字がきっちり書かれているのも、ちゃんと認識しました。

今回は、最初のおしゃべりのおとくが、すでに修理之助が苗字を許されたことを知って必死の思いで来ているということがわかっているだけに、切ない気持ちになります。そして、白鸚さんの又平の必死さが胸に迫ります。こんなに、思うようにならない言葉にいらだち、必死な又平がいたでしょうか。この又平と、猿之助のおとくの組み合わせが、やはり独特のリアルさをもって、歌舞伎座を支配するあの空気!

猿之助とおとく、いいといわれていても普段の才気煥発な雰囲気からはぴんとこなかったのですが、確かに当たり役といえましょう。

最後の喜びの又平の舞、おとくの鼓の音もよく、気持ちの良い昼の部の打ち出しでした。

 

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コメント

星に願いをさん、コメントありがとうございます。

「女鳴神」、鳴神を知っていると、面白いと思います。鳴神尼がちょっと気の毒ですけど。

「傾城反魂香」、普段出ない前段も楽しいんですが、吃又は盛り上がりますよー。お楽しみくださいませ。

昼の部は今週木曜日に行く予定なので、なるほどなるほどと予習出来ました。

孝太郎さんは女房役が多いというイメージなのであのポスター見てどんな雰囲気になるのか興味あります。鴈治郎さんは本当に久しぶり。よく上演される鳴神との違いも楽しんできたいです。

反魂香は以前に巳之助さんの又平で見ました。確か浅草だったかな?
おとくさん、そんなにチャキチャキ奥さんなんですか?(笑)浅草では壱太郎さんが演じていたはず。喋りまくる猿之助さん、容易に想像出来ます!(笑)

夜の部は来週行きます。偶数日なので猿之助さんの弁天小僧、イタズラっ子みたいなはっちゃけたタンカが聞けるんじゃないかと今から楽しみです!

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