2019年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

« 2019年2月 | トップページ | 2019年4月 »

2019年3月

はじめての歌舞伎観劇ガイド

201212kabukiza  ミュージカルやストレートプレイはたまに行くけど、歌舞伎は全く見たことがない、という方のための観劇ガイドです。舞台を見る方なら、歌舞伎の敷居はずっと低い、ということで、数年前の自分に向けてという感じで書いてみました。

以下は、毎月歌舞伎を上演している歌舞伎座を基本として書いています。

【歌舞伎の公演のしくみ】

歌舞伎の公演は基本的には25日間興行で、月初に開幕し、例外を除き休演日はなく、25日間やると終わります。大阪松竹座や京都南座、博多座の公演や地方を回る巡業もありますので、役者や囃子方、裏方さんが交代するのに、このシステムはよくできているんですね。上演期間がバラバラだと、このローテーションがうまくいきませんから。休演日がないので、いつでも行けるつもりでいると、ときどき貸し切りがあって「しまった」となります。

昼の部は11時から、夜の部は16:30から、3時間半~4時間半くらい、幕間休憩2、3回です。多くは演目が2本立て、3本立てですが、ときに1つの演目で3幕(通し狂言)といった形もあります。8月の納涼歌舞伎、ほかたまに3部制の場合があり、開演時刻が11時、14:30、18:30などとなります。少しだけチケット代が安くなります。

チケットweb松竹 というサイトで無料会員登録して取ります。発売日は松竹歌舞伎会会員(年会費3000円)よりは後になりますが、座席指定して取れるのでお勧めです。発売日は、公演月前月の12日頃、普通のお芝居よりは直前です。発売日カレンダーをサイトで確認しましょう。チケットは、劇場のチケット発券機で受け取ると手数料0です。

最初は、3階A(6000円)またはB(4000円)で、好きな席をとるのがお勧めです。良い席はお早めに。上記のとおり、一般会員よりも、有料会員や、さらにその中から購入実績ポイントで決まるゴールド会員(=熱心な歌舞伎ファン)の発売日の方が先なので、3階は早く売り切れます。サイドは見切れるので、なるべく正面席。正面なら、端の方でも大丈夫です。ただし、オペラグラスは必須です。

歌舞伎は高いというイメージがありますが、4時間くらいやっていますので、3階の価格ならコスパ抜群だと思います。好きになれば、次からよい席を検討すればいいのです。1等席は、一般の発売日より先に押さえている役者の後援会やファンクラブからの「戻り」が公演直前に出てくることがありますので、意外と直前に良い席がとれることがあります。

クレジットカードや、生協、OZmall、その他観劇会等の優待で、1等席(18000円)や2等席(14000円)の割引チケットが取れる場合もあります。座席指定ができないので、本当にお得かどうかは行ってみないとわかりませんが、それも選択肢ではあります。

【事前の予習】

松竹の歌舞伎美人(かぶきびと)というサイトに、その月の「演目」、「みどころ」、「出演者と配役」が掲載されています。ロビーにおいてあるチラシにも同じ情報があります。初日前日には、細かい上演時刻も出ます。

古典の演目ならば、解説サイトがいろいろあるので、検索して読んでいくとよいでしょう。私がよく見るのは「歌舞伎見物のお供」。詳しい解説ですが読みやすいです。

僭越ながら、このブログの「歌舞伎」カテゴリも、最近の歌舞伎座ほかの歌舞伎公演の雰囲気を軽く知るにはよいでしょう。

「筋書」(関西では番付)というパンフレットには、詳しい場毎の解説や、チラシに載っていない、脇役や義太夫、囃子方のお名前、役者のその月のお役への意気込みインタビューもあります。そのほか記事もたくさんで読みごたえもあるのですが、なんと、月の後半には、小さいスナップですが、カラーの舞台写真が入って、同じ値段なのです!また、翌月まで、木挽町広場のチケット売り場で買うこともできます。1か月で複数回行く方は、いつ買うか悩ましいところです。

【劇場での過ごし方・舞台写真】

前述のとおり、4時間もありますので、30分休憩の時に食事をします。歌舞伎座内のレストラン(要予約)、三越または木挽町広場、向かいの弁松等で購入したお弁当(もちろんコンビニのおにぎりやサンドイッチでも)を、2階・3階のソファまたは自席で食べます。近所のレストランや、木挽町広場のおそばやさんで食べることもできます。

3階のめでたい焼きや、葛切りほか和菓子、1階の売店の小豆アイスもなかなど、おやつもいろいろです。

売店では、その月の上演演目にちなんだお菓子やてぬぐい、スヌーピーと歌舞伎コラボグッズ等、いろいろお土産がありますが、月後半には、2Lサイズ(はがきサイズより一回り大きい)の舞台写真が発売されます。これがまた、はまると買ってしまうんですよね。和柄の舞台写真用アルバムも売っています。翌月のみ、歌舞伎座の5階の土産処「楽座」でも販売しています。

ロビーの絵画は、上村松園、鏑木清方、川端龍子等、日本画の巨匠の大きな絵を鑑賞できますし、3階ロビーには、故人の名優の写真があります。3階のハイテーブルの周りもびっくりするような小さな名品が飾ってありますので、1階から3階までくまなく歩きまわってください。

お手洗いは、地下がすいています。

【イヤホンガイド】

歌舞伎は難しいと思っている方は、イヤホンガイド(利用料700円、保証金1000円)があった方がよいと思われるかもしれません。実際、使われる方は初心者に限らず多いです。私は、勉強のためではなく、舞台を楽しむために歌舞伎を見るので、イヤホンガイド不要派です。特に義太夫ものは、集中しないと言葉が聞き取れないので、解説を聞く余裕はないですし、無音の間は、芝居として必要な間であるので、何も聞きたくない。

何より、歌舞伎のせっかくの生の音楽が、片耳ふさいでいてはもったいない。ただ、舞踊は解説があった方が、今何をしているかわかっていいかな、と思うことはあります。

使ったことはありませんが、台詞を表示する字幕ガイドもあります。こちらは英語版もあります。

【演目の選び方】

歌舞伎座をお勧めするのは、重厚な義太夫、舞踊、世話物等、演目のバラエティに富んでいて、平均的に満足感が高いからなのですが、せっかく見るのですから、知っている役者さん(愛之助とか勘九郎等テレビドラマにも出ている役者でいい)が出ているとか、有名な勧進帳や助六や仮名手本忠臣蔵を見てみたいとか、きっかけは何でもいいと思います。まず行ってみれば、いろんなことがわかります。

【幕見

歌舞伎座の幕見は、600円~2000円まで(上演時間に応じて値段が変わる)というお手頃価格で1幕を見られる当日券です。4階席ですが、まともなオペラグラスがあれば、ちゃんと見られます。歌舞伎ファンも、リピートしたいときは通います。歌舞伎というものが見てみたい外国人旅行者と、コアな歌舞伎ファンが一緒に並ぶのが幕見。どんなものか見てみよう、という方にはいいと思います。4階席までマイクなしでちゃんと聞こえるのが歌舞伎役者の声。イヤホンガイドは500円と割安です。

【観劇のマナー・服装】

残念ながら、歌舞伎座のご見物のマナーは、他のジャンルと比べてヒドイです。上演中のおしゃべり、アメを出す袋のカシャカシャ、1階からの大向こう、身を乗り出す、変な手拍子、など。せっかくの1等席のときに、下手のお隣がバッグを背中において、花道見えないよ、ってこともありました。あまりひどければ、幕間に席番とともに係員に伝えると、注意してくれたりします。

服装について。着物をお召しの方も多いですが、全体としては少数派。多少おしゃれな服装という程度で十分です。逆に、どんな盛装をしても浮かないのが、歌舞伎座のいいところだと思います。幕見はもちろん普段着で大丈夫。

【まとめ】

歌舞伎は、2000人キャパで昼夜25日間興行と、よほど話題の新作や海老蔵がお子さんと出る等でない限り、チケットはほかの舞台と比較して取りやすいと思います。ぜひ、歌舞伎の世界に足を踏み入れてくださいませ。

まだまだ書きたいことがありますが、もし聞きたいことがあれば、どうぞコメント欄にご質問くださいませ。

大河ドラマ「いだてん」と「まんぷく」

201903_2   今年の大河ドラマ「いだてん」。クドカンがいよいよ大河の脚本を書くのはうれしいけど、まさかの明治以後、東京オリンピック前年にオリンピックモノとはあざとい、なんて思っていましたが、いやいや、最高です。無駄のない台詞に加え、構成力にますます磨きがかかったクドカンの脚本を、NHKが惚れきって映像化しているだけあって、とにかく映像もキャスティングもそれにこたえる役者さんの演技もすばらしい。

オープニングも凝っていて、絵はあの山口晃の、当時と現代が同居する洛中洛外図風の生き生きとした絵、映像は、ワンピース歌舞伎やケラ舞台の上田大樹、音楽は「あまちゃん」の大友良英。何度見ても飽きないオープニングです。

ドラマの始まりは明治の末、日本が初めてオリンピックに参加を決めるところから。日露戦争の勝利後、第一次世界大戦の前です。初のオリンピック代表の一人三島弥彦(生田斗真)はスポーツを楽しむ東大生で、その父は池田屋事件に関与した薩摩藩士ながら、維新後は県令や警視総監を歴任し、三島家は名家として洋風のお屋敷に暮らす、という、スポーツ界ではなく(というよりスポーツ界自体がまだ存在せず、一部の知識人の道楽という時代)、近代日本そのものが描かれています。

日本のオリンピック史に重要な役割を果たす東京高等師範学校校長の嘉納治五郎(役所広司)は、柔道の父として有名ですが、リベラルで国際感覚を持った紳士で(辛亥革命が起きたとき、清国からの留学生の学費を借金して肩代わりして、勉強を続けさせたりしてます)、こういう人が日本のスポーツの歴史の初期にいたとは。さすが役所広司、場面に重厚さを与えながらも、「乗れなかったよ」で笑わせてくれました。

主人公の金栗四三、全く知らなかったですが、熊本出身で素朴な外見ながら、勉学優秀で東京高等師範に進学しただけあって、冷静な自己分析の日記を残しているんですね。この四三を、われらが勘九郎丈が熱演。歌舞伎をやりながら、走り、体を絞り、顔つきまで変わって完璧な(たぶん)熊本弁。前から好きだけどもっと好きになりましたよ。

ドラマ全体がいいので、役者さんを挙げるときりがないですが、生田斗真、白石加代子の三島家、優しい兄がはまっている獅童、語り手でもある心地よいしゃべりの森山未来、こういう綾瀬はるかが一番好き、な綾瀬はるか。日本のドラマに慣れていて生き生きとしているシャーロット・ケイト・フォックス竹ノ内豊

視聴率は悪いそうですが、機会があれば人に勧めずにはいられない(←うざくてすいません)、いいドラマで、これからも楽しみです。視聴率なんかいくら悪くたって、そこそこ大河ドラマ見ている私には、もっともっとクォリティの低いドラマはいくらでもあったし。三谷幸喜の大河ドラマは、「新選組!」も「真田丸」も、本当に楽しませてもらっただけに、それに並ぶおもしろい「いだてん」、このままの調子で、最後まで行ってほしいです。

 

201903manpuku

  そしてもうすぐ終わる朝ドラ「まんぷく」。朝ドラは、主人公の職場の描き方が雑、そんなに甘いはずがない、という意見をよく見ますが(選んでみているのであまり比較はできない)。このドラマはそこを気にしたのか、発明するのがマッド・サイエンテストな長谷川博己だったせいか、とても丁寧に商品が生まれるまでを描いていて、面白かったです。チキンラーメンとオリジナルカップヌードル、けっこう食べちゃいました。

ただ夫が好きという普通の主婦を演じる安藤サクラのうまさ、だんだん仕草や発声が、大阪のおばちゃんに見えてきたのはさすが。主人公があまり強烈でないだけに、周りが個性的で楽しく、とくにコメディエンヌに徹して、古い価値観を主張しながらも愛すべき存在となったブシムス鈴さんの松坂慶子が秀逸で、「真田丸」の長澤まさみのきりちゃんと双璧なうざかわいいキャラでした。桐谷健太、牧瀬里穂、加藤雅也(こういう人だったんだ!若いころはワイルドだったのに)、要潤もよかった。いつも裏がありそうなイケメンのように見えた大谷亮介が、誠実な真一さんを演じきったのも、新機軸でしょう。

私が好きだったシーンは、まだホテルに勤めていたころ、ハナちゃんたちに「私ってべっぴん?」ときいて、「福ちゃん、そんなこと気にするの?」「私たちの学校、お嬢さん学校だったけど、福ちゃん貧乏だったでしょ?」「うん、びんぼうやった」「でも気にしてなかったでしょ」「うん、気にしてなかった」(回想「福ちゃんいつもお弁当おじゃこね」「うん、おかげで骨は丈夫やの」)「私たちはそんな福ちゃんが大好きだったのよ」というやりとり。福ちゃんの境遇に関係のない、持って生まれた明るさや善きものが表れていて、毎日、気持ちよくみられた半年でした。

 

三月大歌舞伎「盛綱陣屋」「雷船頭」「弁天娘女男白浪」(偶数日)<偶数日楽幕見追記あり>

201903benten 歌舞伎座夜の部、偶数日のフル観劇です。待ちきれなくて、猿之助弁天小僧だけ幕見2回してました。奇数日の感想はこちら。

 最初は「盛綱陣屋」。秀太郎さんの微妙がやはりとてもよく、日を追って、小四郎への愛情が高まっているのか、祖母が孫に死を迫るのがどんなにつらいか、秀太郎さんに共感して泣かされました。

義太夫も素晴らしかったんですが、錦之助さんの信楽太郎のところだけ、あまりに目が忙しくて何言ってるか完全に抜けてました。錦之助さん、美しかった!

勘太郎くん、お芝居の間が進歩していて、毎日いろいろ考えながら工夫しているんだなと思いました。真秀くんの小三郎も、長い首実検の場面、武士としての気の入った表情をしていて、感心。

道太夫、葵太夫、谷太夫とちからのこもった義太夫も含め、最高の盛綱陣屋。

2つ目は初見の「雷船頭」幸四郎・鷹之資版です。幸四郎さんのシュッとしてかっこいいことといったら、もう最高。金剛像のようなたくましい足(膝には大きな座りタコ!)。若い鷹之資のつやつやのお面をかぶっているのかと見まがう肌と、軽やかで楽し気な舞踊。こういう楽しい舞踊を華のある役者さんで見るのはいいですね。

そしていよいよ「弁天娘女男白浪」。初めて1階で猿之助弁天小僧を見ます。

すでに1週間前に見たときには、だいぶこなれてきた感じがしましたが、もう猿之助弁天小僧としては、現時点のほぼ完成形です。娘のときのさすがの女方のかわいらしさ、正体を現したときの凄み、南郷への甘え、わがままさ加減、やりたい放題感が最高。

弁天小僧としては、菊五郎おやじさまの域にはまだまだだということは置いといてですよ、弁天・南郷の、この勢いのある花形同士の関係というのは、もう菊五郎・左團次コンビにはないわくわく感。猿之助と幸四郎の関係を思うと、今これ以上の弁天小僧・南郷力丸はないのではないかと思います。これからは、あるとすれば、勘九郎・七之助とか、猿之助・愛之助とかですかね。幸四郎丈が今後猿之助につきあってくれなければ、見られないものとして、とても得難い演目となりました。

そして、浜松屋の手代たちのチームワークもきびきびと、橘三郎さんもテンポよく、とにかく楽しかった!

そして稲瀬川の場。この配役での1階は初めてなので、幸四郎南郷が花道に元気よく突っ込んでくるのを初めて見ました。元気がよくて無頼な感じで、手ぬぐいもラフに巻いててかっこいい!花道から舞台に出るところでは、5人が、ひとりひとり目くばせするんですね。衣装も地が同じで柄が個人に合っていて最高なんです。

ということで、夜の部、充実していました。難をいうと、弁天小僧を奇数日・偶数日両方見すぎて、盛綱陣屋はパス!する方が出てきちゃったことですかね。お隣のおばさまも、「もう3回見たからいいの」と雷船頭からいらしてました。うう、1階なのにもったいない!

(偶数日楽日幕見追記)

いい席で見たし、もういいかなと思っていたんですが、気づいたら朝オペラグラスをバッグに入れ、気づいたら幕見に急いでいました。さすが猿之助弁天小僧楽日、発売20分前に到着した時にはすでにお立ち見。雷船頭からの通しの方が多かったようでした。

花道での弁天、南郷の出からして、拍手が止まらず、弁天の台詞が聞こえません。この熱気にこたえるように、すべてがタップリの猿之助弁天。当初の上演時間は奇数日より8分長かったのを数日後揃えていましたが、楽日は少し戻したんですね。

このタップリさが、音羽屋とちがう、ってことなんでしょうが、緋鹿子を落とすときのワルイ表情(鬼揃い紅葉狩みたい!)、正体を現してから、信頼する相棒の南郷がついていてくれることで、安心しているかのように好き勝手悪態つく弁天小僧のかわいらしさ。番屋に突き出せ、切りやがれ、とミーアキャットのように同じ角度で下手を向く弁天・南郷!

そして花道の引っ込み、分け前を多くとられた後、南郷が「この埋め合わせはするから」というのに、「いつもそうなんだから」という言葉が、さらに色っぽくなってました。ここは、わかりやすく変えたのでしょうが、私は、初日の、さらっという「そうなんだから」の方が、「ちょっと待って、もしかしてそうなの?やだー💛」って感じで好きでした。まあ、メリハリ聞かせてわかりやすく、というのが澤瀉屋なんでしょう。猿之助の台詞は、黙阿弥の台本を今の観客にしっかり聞かせるというようでした。

稲瀬川の勢ぞろいでの生意気そうな表情。ああ、楽しい3月でした。最近妙に悟ったような言動が多かったような気もしていたけど、こういうお役を力いっぱい楽しそうに演じる猿之助丈、ほんとにありがとう。

 

 

 

 

「愛のレキシアター ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」@赤坂ACTシアター

201903_2山本耕史の主演ミュージカル「愛のレキシアター ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」です。よくわからないタイトル、日本の歴史をテーマにしたバンド「レキシ」の曲を愛するたいらのまさピコ(河原雅彦)さんが脚本・演出ということですが、最近の音楽方面は疎くてレキシも知らなかったので、だいぶ異色のミュージカルだろうとだけ思っていました。いざ公演が始まると、山本耕史への絶賛の嵐で高まる期待。

 お話は、ニートで引きこもっている織田こきん(山本耕史)は、歴史アイドルのカオリコ(松岡茉優)が大好きで、ヨシツネのハンドルで、自分を美化した画像(佐藤流司)を送ってしまいます。こきん、カオリコ、こきんの母胡蝶(高田聖子)、引きこもりサポートセンターの明智(藤井隆)は、ウォルト・レキシー(八嶋智人)歴史のテーマパーク、レキシランドに招待され、さまざまな時代を体験していきます←すいません、ちょっとネタバレしすぎかも 。

冒頭にレキシさんの紹介の映像もあったり、八嶋智人が盛り上げてくれたりして、この楽しい世界観に無理なくなじませてくれます。というか、すでにリピーターも多いのか、客席がみっしり熱い感じ。 

河原さんは、レキシが大好きすぎて、使いたい曲が多く、場面もキャストの早替わりも多く、台本自体とても厚かったそうです。結果、休憩20分込みで3時間10分の大作に。長いですが、歴史というテーマでの統一感もあり、衣装(高田阿友子)の、重すぎず安っぽくない絶妙さもあって、楽しんでいたらあっという間でした。 

こう感じたのも、レキシの曲がよくて、キャストも皆さん歌がうまく、それぞれ個性的半分素のようなやりとりも間がよかったというのもあると思います。美術松井るみ、映像上田大樹、ヘアメイク宮内宏明と、売れっ子のスタッフ、梅棒の躍動感ある振付、レキシの曲のクォリティを維持しつつミュージカルに仕上げた音楽監督の山口寛雄と、きっと皆さん、河原さんの熱意に引っ張られて、いいチームワークだったのかなと思います。 

2019032事前に左の写真が公開されていたのですが、これはレキシさんのアフロを真似してるだけで、山本耕史のこきんは、もっとぼさぼさの長髪で、スーパーで売っていそうな冴えないジャージ姿でへんな走り方してます。しかしいったん歌となったら、レキシの曲とまっすぐ伸びる彼の声がとても相性がよく、歌詞もよく届いて、どの曲もとても素敵。ダンスもただうまいのではなくて、キャラクターがしっかり立っていて魅力的。身体能力の高い役者はどんな動き方をしてもかっこいいんですね。パーカッションやギターも本気でうまい。

 高田聖子、藤井隆、浦井りんこが歌もうまくて面白いのはわかってたんですが(それにしても高田さん歌うまっ)、松岡茉優もすごいですよ。かわいい女の子なんだけどちょっとめんどくさい、という役を自然体で演じながら、昔のアイドルの歌を、私たちはこんな風に楽しんでいたな、という姿を見せてくれたのがとてもよかったです。松岡茉優は「江戸は燃えているか」でも好演してましたし、どんな変わった芝居でも魅力を発揮するすごい子です。

ほかに美形の佐藤流司、乃木坂の井上小百合、前田悟、出るたびに雰囲気の変わる山本亨。アンサンブルの皆さんも、曲と場面が多いだけ、たいへんな大活躍。舞台装置も直すし!

 最後は客席の前の筒に差されてあった稲穂(繰り返し使用)を振って大フィナーレ。山本耕史の舞台は、必ずカーテンコールで一言あるのがうれしいです。やーこれは楽しいエンタテインメントで、しかもファンは知っている山本耕史の魅力爆発の、必見の舞台でございました。

 そうだ、珍しくパンフレット買ったんですよ。写真も記事も充実してて、レキシや梅棒さんのこともよくわかったんですが、折り返しには、レキシランドのイラスト地図!買ってよかったー、でした。

神田松之丞ひとり語り 講談と歌舞伎 「芝居の喧嘩」「対談・講談と歌舞伎<松之丞・児玉竜一>」「中村仲蔵」

201903_1  松之丞独演会、テーマが講談と歌舞伎、歌舞伎評論家の児玉竜一教授との対談、そして「中村仲蔵」と、私のために企画?(←ちがう)と、楽しみにしておりました。朝日カルチャーセンターの企画で、会場は神楽坂の牛込箪笥区民ホールという、素朴な雰囲気のキャパ392席のホールです。ほぼ満席の盛況。舞台は広く、座席の傾斜もあるので天井が高く、先日の三越カルチャーセンターの会議室の天井に頭をぶつけそうな高座とはえらい違い(笑)

最初はたっぷりめのマクラ。南座での独演会が決まったそうで、なんと木ノ下裕一さんの補綴。木ノ下さん、この間も木ノ下歌舞伎を上演していたKAATのロビーでお見かけしましたが、パワフルな雰囲気だったなあ。

来年の真打昇進の話題で、講談の名跡について。歌舞伎と違って、講談や浪曲では遺族(=素人)が名跡を持っていて、誰にも継がせず、止め名にするという場合があってけしからん、そうな。ほんとならヒドイ話です。

1席目から歌舞伎関係ということで、幡随院長兵衛もので「芝居の喧嘩」。歌舞伎で見た、暴れる旗本奴を抑えに客席から長兵衛(←かっこいい吉右衛門さんだった)が登場する話かな、と思ったら、子分同士の山村座での喧嘩の話。長兵衛子分の闘犬権兵衛と夢の市郎兵衛が主役なんですが、喧嘩のきっかけは長兵衛の別の弟子が伝法で、客に迷惑をかけたからなんですよ。長兵衛の子分がそんなことしちゃいかん。とはいえ、最後は水野十郎左衛門の一味と幡随院一味の名前の言い立てになって威勢よく終わります。

続けて、松之丞と児玉先生の対談。児玉先生の歌舞伎を見始めたきっかけ、研究者になろうと思った経緯、講談と歌舞伎の親和性(私も両者はすごく近い世界で、ネタも近いものが多いと思ってました)、講談の凋落の原因、昔の歌舞伎との違い、歌舞伎界のこれから、などなど、予定を超えて50分くらいあったのではないでしょうか。

児玉先生の役者評を聞き出そうと(とくに海老蔵評)、執拗にきく松之丞、松竹に差しさわりのありそうな危ういところには近づかない賢明な先生(笑)。今の大幹部は仁左衛門、吉右衛門、菊五郎らで70代半ば、いくらなんでも10年後はどうなるってことですが、(だから今一生懸命見てるわけです)、もっと若い世代にもそれなりに期待はされているのかな、と思えました。松之丞、そうかなとは思ってたんですが、けっこう歌舞伎を見ていて(最近は忙しいはずなのに)、役者さんのこともよく知っているようでした。

平成中村座をはじめ、必死に歌舞伎を盛り上げて、そして歌舞伎座にお客を連れて戻って古典をやるはずだった勘三郎丈、猿之助王国で奮闘し、スーパー歌舞伎をやり続けて、そして宙乗りも早変わりもない古典をやるはずだった猿翁、ともに病に倒れた二人を惜しむ児玉先生、観客が役者をダメにすることもあると言っていました。うむ。その三代目を見ていて、もっと開けた役者となるために考えてやっているのが当代猿之助であると。

木ノ下さんの話も出ましたが、松之丞の口から「あの人天才」ということばが出て、やっぱそうだよね、と思ったところで、そもそも松之丞の「pen+」で木ノ下さんを知ったんだった。木ノ下さんと児玉先生の座談会、面白かったんですが、これで3人がつながってちょっとうれしいです。

さて、最後はお待ちかねの「中村仲蔵」、落語でも志の輔が得意のネタにしていますが、初めてです。落語は仲蔵の女房や師匠が出てくるそうですが、松之丞の講談では、一人思い悩む仲蔵です。下積みから名題になったものの、仮名手本忠臣蔵の通しなのに五段目の斧定九郎一役で失望していた仲蔵が、砥の粉でどてらを着た冴えない悪役の定九郎を、白塗りの凄みのある実悪の役に作って喝采を浴びる話。

多少はしょったのもあって、あらすじをなぞったような感はあったのですが、客が「昔の役者の方がよかったなんて言っちゃいけねえな。芝居は今なんだな。今一生懸命やっている役者を見なきゃいけねえ。仲蔵よくやった」(かなり意訳)という言葉が、直前の対談の内容とリンクしていて、まさに今、懸命に講談界を盛り上げようと奮闘する松之丞と重なって、じんとしました。

しかし、この話、「仮名手本忠臣蔵」を全段見たことのないお客さんにどこまで伝わるのかと思います。そもそも「砥の粉」(赤ら顔の化粧のことで、悪役や奴の顔)ってけっこうな専門用語だし、五段目が弁当幕というのも、忠臣蔵の長さと前後の幕の面白さを知らないとぴんとこないでしょう。数年前に国立劇場で3か月連続通し上演があったとき、「これから歌舞伎見るつもりなら見るべき」と言われて見ておいてよかったー。

そして何より、今の定九郎のかっこよさ。私は松緑と幸四郎で見てますが、二人ともそりゃかっこよかった。実は初めて松緑で見たとき、え、松緑がこの役ひとつ、って思いましたし、松緑さんが父辰之助が演じて評判だったと語っているのもそういうものなのかと思ったくらいでした。

逆に、歌舞伎知ってると不自然な部分もあります。1日目はともかく、2日目以降は役者の先輩から誉め言葉いわれそうですし、3日目には大向こうかかるでしょ。そして舞台に出てれば客席の雰囲気わかりますよ。語っているのを聞いた一人のお客だけでなく、本当に成功したと仲蔵が気づくまで、5日もかかるのははおかしいな。

まあそれは劇的効果ということで。予定より30分超過だったようですが、行ってよかったひとり松之丞でした。

上村以和於「新世紀の歌舞伎俳優たち」

201903

       上村以和於さんの「新世紀の俳優たち」(2001年発刊)、「21世紀の歌舞伎俳優たち」の続編で、この本に掲載されなかった歌舞伎俳優を、上村さんがセレクトして取り上げたという本です。前作が、雑誌「演劇界」の連載で、その月の出演作を軸に書かれているのと比較して、もう少し自由に著者の思いを書いた感があります。

「21世紀の歌舞伎俳優たち」に倣って、登場する歌舞伎俳優の生年と、2001年時点での年令を挙げます。だいたい20足すと、今の年齢になります。お名前は、当時ではなく、現時点のもの。亡くなった方は赤字アンダーライン。

 

1932 田之助(68)
1933 宗十郎(67)
1935 我當(65)
1940 左團次(60)
1941 秀太郎(59)
1943 澤村藤十郎(57)
1946 段四郎(54)
1955 雀右衛門(45)
1959 鴈治郎 笑也(41)
1960 扇雀(40)
1963 右團次(37)
1968 孝太郎(32)
1973 幸四郎(27)
1975 松緑 猿之助(25)
1977 菊之助 海老蔵(23)

冒頭の海老蔵(当時新之助。紛らわしいので、以下全て現在の名にします)評が熱い。助六と源氏物語でのオーラ、スター性への感動、期待が伝わってきます。このとき、まだ20代前半の海老蔵は最初の全盛期といってもいいほどのブレイクだったんですね。歌舞伎はまったく見ていない頃ですが、雑誌記事やTVのドキュメンタリーで見ていた記憶があります。

さらに、現幸四郎、猿之助、菊之助、松緑と、今の花形。

わが猿之助は、大学時代歌舞伎の興行にはほとんど出ていないので、この時点では、彼らの中でも、本興行で演じた役が少なく、ようやく三代目の興行や右團次の自主公演、浅草歌舞伎等に出始めたばかり。著者は、猿之助が浅草歌舞伎で演じた弁天小僧について、才気を示した骨っぽい弁天ををほめています。

また、8才で出た「牡丹景清」の人丸を、うまい子役ではなく、子どもの姿をした大人の役者と評し、それだけ立派に踊ったこどもは三津五郎以来と絶賛。しかし、三代目猿之助王国のプリンスという当時の立場に対し、もっと開かれた役者にと結んでいます。彼が三代目の元を去るのはこの2年後ですが、出るべくして出たということでしょう。

そして、孝太郎、右近、笑也、雁治郎、扇雀、雀右衛門。彼らについては、今は地味だが実力を蓄えているのでこれからが楽しみという感じ。

雁治郎・扇雀兄弟も、大学までは歌舞伎に出ていなかったんですね。とくに扇雀さんは、子役にも出ておらず、大学も法学部で、むしろ母である扇千景さんの後を継いで政治家になるのではと思われていたとか。中車の例を見るまでもなく、幼いころから歌舞伎役者になるつもりでいたかどうかは、今リアルタイムで各家のお子たちの奮闘をみていると、大人になってから差があるのは当たり前のように思います。扇雀さんが、大学を出てから本格的に歌舞伎の修行をし、だからこそ、勘三郎さんの一座で福助さんとともに女方として活躍したことは、彼の中ではとても大きい意味をもっていたのだなと改めて思いました。

後半には、ベテランも登場していて、左團次、段四郎、我當、秀太郎、澤村藤十郎、田之助。

注目するのは段四郎さん。三代目猿之助の兄を支えてきましたが、本来の持ち味は骨太な立ち役、これまでの歩みを「驥足」とまで評する上村さん。2003年に、息子とともに兄の元を去っているわけですが、その後はさまざまな座組で舞台を締めるお役を務めるんですね。

藤十郎さんは、「かぶき手帖」できれいで華やかな女方(素顔も素敵)だなあと思っていますが、舞台復帰はなかなか果たせないようです。

この本では前進座等の瀬川菊之丞、嵐圭史、中村梅雀(←ドラマではいつもうまくて好き)、を取り上げていますが、歌舞伎役者は亡くなった方でも興味深く読むのに、全く興味がもてず。不思議なものです。

木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」@KAAT

201903         木ノ下裕一さん歌舞伎演目の再構成による演劇、木ノ下歌舞伎「摂州合邦辻」です。木ノ下さんと児玉竜一先生の座談会 ですっかり天才木ノ下さんのファンになって、直後にチケットをとっていたのでした。

木ノ下歌舞伎は、私の理解では、歌舞伎台本の原典に立ち返り、物語として再構成したうえで、現代劇として上演することで、歌舞伎の演劇としての骨格を再認識するというもの。木ノ下さんの細かい読み込みと分析によりよりくっきりと演劇的構成が浮かび上がるということだと思います。

この「摂州合邦辻」は、高安通俊の後妻玉手御前(内田慈―ダンスも歌もよい女優)が、継子である俊徳丸(田川隼嗣)に毒酒を飲ませ、盲目・らい病にしますが、それは彼の腹違いの兄次郎丸からから守るためのもので、彼を元に戻すため、命を犠牲にするという壮絶な物語。歌舞伎では残念ながらまだ見たことはありません。

KAATの大スタジオ、11列目までしかなくてほんとに小さい、しかし舞台は十分な大きさのよい空間。無機質なインテリアは、実験的な作品にもぴったりです。

しかし、開始直後、全員での歌に驚き!黒い背景に大きな四角い木材が何本かあるだけの舞台に、キャスト全員が登場してイージーリスニング的なメロディの、現代の生活はたいへんだとかいう感じの歌詞の歌を延々と歌うんですよ。ミュージカルだったんだ!しかしいつ終わる?

オープニングでビッグナンバーを歌うミュージカルはけっこうありますが、最初から心を奪われる曲ですよね、RENTとかミス・サイゴンのような。中途半端な歌唱で歌われる歌に多少イライラしました。

そして、芝居が始まっても、ずっと音楽が鳴っているのに閉口。芝居としては、ヴァイルとか、ソンドハイムみたいな曲に合いそうなのに、フォークロックみたいなやや古い曲が、けっこうなボリュームで流れているのは本当にストレスでした。だっていい芝居ってBGMはいらないでしょう?後半、しばらく消えたと思ったら、最後にはまた鳴ったりして、BGMを流すかどうかの基準は見えず。

また、途中でもしばしば歌があります。最後も玉手の母おとくの歌。ミュージカルをこよなく愛する者として、こんなぬるい歌ばかりのミュージカルはそれ自体残念。歌を入れるなら、より感動を盛り上げるものでなければ意味がないんです。

男性はスーツ、女性は玉手は黒いレースのドレスですが他の女性は普段着。しかし前述のような意図のある芝居なので、脳内変換していきます。なるほど、この悲劇の背景にはそういう父娘関係があるのかということもわかっていきます。

木ノ下歌舞伎は、歌舞伎の映像を見て、台詞をすっかりなぞる稽古をびっちりやるそうで、元の台本通りの台詞の言い回しは、現代風となっていても、違和感は感じません。そういうところも含めて、お稽古は十分やれている感じ。俊徳丸以外は、活舌もはっきりしていて聞きやすく、その点からもお芝居が理解しやすいです。中でも羽曳野の伊藤沙保がクールでメリハリのきいたセリフがかっこいい。

201903_2

しかし、プロダクションの意図はともかく、エンタテインメントとしては、やっぱり歌舞伎役者の歌舞伎で見たい!ということでした。ついでに第1回亀治郎の会の玉手御前のチラシ。この役、とても猿之助に合ってると思うので。歌舞伎座でやってくれないかしら。

三月大歌舞伎「盛綱陣屋」「雷船頭」「弁天娘女男白浪」(奇数日)

201903morituna      三月大歌舞伎、夜の部奇数日です。

ひとつめは、仁左衛門さんの決定版と評判の「盛綱陣屋」。和田兵衛(左團次)、微妙(秀太郎)、時政(歌六)、篝火(雀右衛門)、早瀬(孝太郎)と、ニザ様の盛綱にふさわしい素晴らしい配役。さらに、小四郎(勘太郎)、小三郎(寺嶋真秀)に、信楽太郎(錦之助)、伊吹藤太(猿弥)とご注進も華やか。見事な一幕でした。

2016年11月に芝翫さん襲名披露で見た時と秀太郎さんの微妙は同じなんですが、やはり仁左衛門さんとの芝居が濃いような感じがして、盛綱が小四郎の死を微妙に託す場面が印象的。秀太郎さんの微妙、盛綱、小四郎、高綱への愛情があふれた老母がすてき。雀右衛門さんがこの役にはまっているのは当然として、最近、孝太郎さんが美しく、貫禄もあっていいです。

しかし、役者それぞれに見せ場がありつつも、やはり一番の見どころは盛綱の首実検。たしか歌舞伎座新開場のときに、ニザ様が手順を解説したTV番組を見て、そういうものかと感心したのですが、確認するのが怖い、高綱でなくてよかった、ではなぜ小四郎は切腹、小四郎、そうだったのか、という過程がとてもわかりやすく、そして美しく感動的です。
葵太夫さんの義太夫がまた、良い席だとよけい響いて感動でした。

そして中村屋の役者がまったくいない座組で健気に務める勘太郎君。義太夫にも乗って、きっかけを自分でつかむ場面も多くて熱演。上記の首実検での盛綱とのことばのないやりとりがじんとしました。しかし話には聞いていましたが、子役独特の台詞や誇張した演技にけっこうな笑いが起きているんですよね。我慢してよ。真秀くんは、立派な鎧姿、うれしそうにきれいな見得を切っていました。この子はほんとに歌舞伎が好きそう。

四天王に廣太郎、種之助、米吉、千之助。歌昇くんは国立で助右衛門やってるのに、種ちゃんこの一役とはややさみしい。米吉はチラシに名前があるのにいなーいといわれるくらい、珍しい武者姿でした。しかし並んでいるときの目力大事。最近の隼人なんかほんと力入ってて、そのためかブレイクしてますもんね。

2つ目は、20分ほどの舞踊「雷船頭」。日替わりで、幸四郎、猿之助が船頭役ですが、奇数日の猿之助は女船頭。かわいい雷(弘太郎)が落ちてきて、お酒を飲んだり楽しく踊ります。昼の「傀儡師」とちがって、予備知識もまったく不要な、楽しい舞踊。初めて見ても楽しいという点では、「浮世風呂」や「団子売」と同じです。

そして猿之助丈のほんとうに滑らかな腕、手の動きを見るたび、完全に治ってくれて、神様ありがとうとやはり思います。

最後は「弁天娘女男白浪」。奇数日で、幸四郎弁天、猿弥力丸、猿之助清次の配役です。幸四郎の弁天小僧、クールビューティできれい!軽やかで、幸さんの独特のユーモアと相まって魅力ある弁天です。猿弥南郷は骨っぽく、悪事を働くにはいいコンビ。

しかし、ようく見ていましたが、やっぱりこの二人はいい仕事仲間で、友情はあるけどそれ以上のものはない!「埋め合わせはするから」が、完全に損得勘定の話に見えました。

猿之助の清次はすっきりとかっこよく、めりはりもきいていていい感じ。ちょっと着物のえり気にしすぎ。

偶数日初日に見た時より、浜松屋のメンバーもきびきびと芝居のテンポがよくなっていて、お芝居全体が心地よいリズムで楽しかったです。鷹之資は若いんだからもっと出て行ってもいいのに。

さあまた偶数日に見ますよ!

ミュージカルレビュー歌会 KAKAI」@三越劇場

201902kakai      原田優一 構成・演出のミュージカルレビュー「歌会 KAKAI」、原田さんのTwitterが流れてきて知って行ってみました。前方中央が取れて最高。

原田さん、「グーテンバーグ」以来注目してますが、歌も踊りもいいうえに、頭の回転が速くて話が面白い、すごく才能のある方。まだ若いんだから二枚目やるにはもうちょっと絞ってくれたら、と思っていたら、ダイエット成功されたそうで、美少年な雰囲気が戻っていてうれしかったです(「MA」は佐藤隆則とWでルイ16世だったですもんね。まだおじさん役早いよ)。

出演者は原田さんのほか、今井清隆、泉見洋平、畠中洋、愛加あゆ、原田薫(グレコメに出てた)とミュージカルでよく見る方のほか、初見ですが田村良太、宮島朋宏、出雲綾と、9人の実力者。

1幕はプロローグのあと、桃太郎パロディのミュージカルコント。ミュージカルファンだけどリピート少ないので、曲名まではスパッと出ない曲も多いですが、日本で人気のミュージカルの曲やコンサートでもよく歌われる曲も多く、短いフレーズでたくさん歌ってくれます。皆さん台詞や存在感もしっかりしてるので、ゆるいコントなのに楽しい。

原田薫さんはアイーダでかっこよく踊るし(もともと振付の方)、出雲さんもユーモラス。優一さんのアンジョルラス@レミゼの民衆の歌冒頭も声に合ってて最高。田村良太のカジモド@ノートルダムの鐘の「Out There」もすごい!その前は今井さん見て笑っちゃってたのに一瞬で本役みたいに見えました。

2幕は、童歌モチーフのレビューで開幕。男性は全員フレンチカンカンからのドラァグクィーン姿。「ラ・カージュ・オ・フォール」にメインキャストで出てたりする人たちなので、突き抜けてて最高。優一さんのダンスが曲に乗っていてひときわうまい!愛加あゆはそのまま娘役トップの華やかさ。

そして、ドレスアップした出演者が、「ジキル&ハイド」、「ミス・サイゴン」、「エリザベート」、「レ・ミゼラブル」の名曲をたっぷり歌い上げます(それも間近で)。もう全員ドラマチックでよかった!愛加あゆの「私だけに」@エリザベート、宮島朋宏の「闇が広がる」、田村良太「カフェ・ソング」、原田優一「星よ」、そして今井清隆の「彼を帰して」――このキャストでレミゼやって!でした。田村良太、絶対チェックだわ。

やっぱり告知が足りないのか、空席けっこうありましたが、ミュージカル好きな人は楽しめること請け合いですので、ぜひお運びを。

「積恋雪関扉」@国立小劇場アフター7

201903 今月の国立劇場小劇場の歌舞伎、「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」を、アフター7で見てきました。これは、夜の部の公演について、2つめの演目を1等席9800円→5000円で見られるというもの。夜の部といっても17:00開演ですから、なかなか間に合わず、この「関の扉」(19:10開演)のみをお安くみられるのはありがたいです。

<p>18:30過ぎに到着して、頂いたお席(選べません)は、けっこう後方のセンターブロック。といっても小劇場は18列目までしかなく、17列、18列が2等席です。10列目から13列目くらいまでは固まりで空いていたので、アフター7として売り出す席は決まっているのかもしれません。  <p>さて、見られると思っていなかったので直前にチラシの裏をざっと読んだだけ。小町姫と小町桜の精をやや混同したり、そのために宗貞と安貞のどっちの恋人か混乱したりという問題はありましたが、出演者の熱演で、この舞踊の大局をたっぷり楽しみました。 <p>舞台は逢坂の関、関守の関兵衛(菊之助)のところに、小野小町姫(梅枝)がやってきます。いろいろあって、そこに隠遁している宗貞(萬太郎)は小町姫の恋人でした。鷹のもたらした片袖で弟安貞の死を知っぴた宗貞。関兵衛実は天下を狙う大伴黒主は、小町桜の大木を切ろうとしますが、そこに墨染という傾城が登場、実は墨染は小町桜の精で、安貞の恋人だったのでした…。</p>

 関兵衛は奴風のユーモラスな造りで、常磐津に乗った人形振りのようなところもあり、菊之助のさまざまな踊りを堪能できます。黒主には線が細いといわれていましたが、確かにほんとうにはニンじゃないのかもしれませんが、やはり立派に踊りきってくれました。萬太郎も声がよくてステキ。

しかし、驚くべきは梅枝くんですよ。花道に登場した時から、小劇場の空間に、ものすごい存在感、重みのある赤姫姿。そして、別の役者が演じることもある墨染の薄いピンクの衣装での儚さ、美しさ。頭のてっぺんから指先まで神経が行き届き、相手方と近づいたときは背を盗み、どの一瞬をとっても美しい!生きているひな人形のよう。後半になるにつれ梅枝くんにどんどん心を奪われていきました。見顕わした後もかっこよかったです。

後方席は、どうしてもお話しちゃう方がいますけど、最後は劇場中が熱い拍手で盛り上がりました。

ところで、関の扉、どんな役者がやっているのかな、と思ったら、松緑・七之助(小町姫)・玉三郎(墨染)(2015年12月歌舞伎座)とか、幸四郎・菊之助(小町姫・墨染)(2015年2月歌舞伎座)とか、團十郎・藤十郎(小町姫・墨染)(2012年1月松竹座)とかでした。長いので意外とかからないのでしょうが、いろんな人で見てみたいと思いました。

 

(おまけ)

この関の扉上演期間中、常磐津でご出演の兼太夫さんが、この舞台は素晴らしいと熱くTwitterで語っていらしたんですよ。最近、咲寿太夫さんとか、いろいろな方が、Twitterされていますが、率直で真摯で、いろいろ教えてくださるのは、とてもありがたい気持ちがします。兼太夫さん、本当に力を込めて1か月お務めだったようで、感動しました。

 

三月大歌舞伎「女鳴神」「傀儡師」「傾城反魂香」<2回目追記あり>

201903_2
 三月大歌舞伎昼の部です。

 1つめは、「女鳴神」。鳴神の男女を入れ替えたものです。織田信長に滅ぼされた松阪弾正の娘鳴神尼(孝太郎)が、昔の恋人雲野絶間之助(雁治郎)にほだされて、龍神を封じ込めた秘密を話してしまいます。 

鳴神を誘惑するのが雁治郎はんかあ、と思っていたら、見ているうちに雁治郎さんがかっこよく見えてきて(さすが、そしてごめんなさい)、姫とのなれそめを話す場面なども所作が美しく、素敵。しかし強いはずなのに、岩を登るときはヨロヨロ。ここ、姫姿の絶間姫は蔦をつかんでこけつまろびつ登るのもしかたないですが、立派な武者の絶間之助は一気に登るのかと思ってましたよ。

前述のとおり、絶間姫の色香に迷う鳴神に対し、昔の恋人との愛が再燃する女鳴神はなんか気の毒。ぶっ返った後も、しなやかであくまで女性の女鳴神、かわいらしい。鳴神尼に仕える白雲尼(猿三郎)、黒雲尼(猿四郎)の二人が達者で楽しかったです。

2つめは幸四郎の舞踊「傀儡師」。傀儡師が、お七吉三、牛若丸と浄瑠璃姫、船弁慶などを踊り分けるという趣向で、柔らかな表情の幸さんが、軽やかに踊ります。物語まではきっちりわからないながら、演じ分けはなんとなくわかる感じ。

3つめは「傾城反魂香」。三代猿之助四十八選の「高島館」「竹藪」がついています。この場は、私の人生2回目の歌舞伎で、2012年に明治座で見た場です。笑野さんの銀杏の前がかわいくてよかったなあ。

さて、今回は四郎二郎が幸四郎、銀杏の前が米吉で、美形の四郎二郎と無理やり一緒になりたい銀杏の前の面白い場になりました。道犬(猿弥)、雲谷(松之助)も憎々し気。四郎二郎は縛られて、自らの血で描いた虎が助けてくれます。ああ、こういう幸四郎大好き。花道の引っ込みも美しく、かっこよかったです。明治座でも虎の動きの面白さを楽しみましたが。やはりこの虎、強くてユーモラスで楽しませてくれました。

またもや雁治郎さんが雅楽之助で立ち回りに大活躍。これがけっこう長くて、傷ついた雁治郎さんが本当にヘロヘロのように見えました。

 いよいよ土佐将監閑居場。通常出る吃又です。猿之助のおとくは、かつて浅草歌舞伎で演じた時、勘三郎さんが、自分が又平のときおとくをやってねと言ったという、数少ない勘三郎・猿之助のエピソードとなっている役。今月のおとく、SNSでは、又平への愛情にあふれた女房おとくに泣いた、という声が多く、さすが女房得意だし、と思いつつ見に行ったわけですが。

おとく・又平登場直後から、ちゃきちゃきしゃべり、場を制圧する猿之助に、これ、こんな芝居だっけ、と目を見張ります。といっても、出しゃばりというより、又平のことが好きすぎて、なんとか引き上げてもらいたいという熱意のあまりという行動。対する白鸚丈の又平、さぞこれまで真面目に修行してきたであろうという健気な雰囲気。

そして、懇願しても土佐の苗字はもらえないと知って、あの「手は2本、指は10本ありながら…」があり、二人が涙ながらに手を握り合う。ここがもうたっぷりで、静まり返って劇場全体がみつめます。そこから、おとく又平の描いた手水の絵姿を確認するところ、くるぞ、くるぞと待ち構えるこちらの気持ちをひきつけます。

 猿之助丈、歌舞伎とはと聞かれれば、無限に正解を持つ型で伝える演劇だといつも言っているのに、この間合いは、歌舞伎の型から出てくるものではないのではと思います。あの吉右衛門・菊之助の吃又はすばらしかったけれど、これとはちがう。

 猿之助にこれをやらせてくれるのは白鸚さんならでは、と、「一本刀土俵入り」も思い出します。あの、アドリブのような素のようなやりとり。現代劇との共通項を持っている二人だからなのか。

無事姓とお役目をもらい、喜んで舞う又平。おとくは鼓を打ちます。吹き替え(というのか?)ではなく、実際に打っていて、皮の感想が気になったのか、息を吹きかけたりしていました。かなりきれいな音で、さすが器用な人。

というわけで、こういう猿之助が見られて大満足の昼の部でした。

(2回目追記)

この2週間後、今度は3階ですが、昼の部を再見しました。

「女鳴神」、雁治郎・孝太郎のお二人、ますます意気が合ってます。絶間之介は、はっきり騙りだったと言ってたんですね(なぜ前回聞き逃していたのか)。絶間之介もやむを得ずやっていたという立場が明確になって、今度はすっきり見られました。

気になっていた、ヨロヨロ登りも、険しくてというより、結界のように、登りづらくなっていてがんばったように見えました。

「傀儡師」、写真が入った筋書を買ったので、前回よりは細かく場面もわかって、常磐津も聞き取れて楽しかったです。後見の京純さんイケメン。坂東流の踊りで、三津五郎さんが何度か踊っているようです。幸四郎が踊ることでまたつながっていくんですね。

そして「傾城反魂香」。前回予想を超えたよさだったので、もう1回見たかったんです。

お百姓の寿猿さんがとてもいい芝居をしていて、ちょっと好きな高麗五郎さんもいい味でした。そして高麗蔵さんの龍の字がきっちり書かれているのも、ちゃんと認識しました。

今回は、最初のおしゃべりのおとくが、すでに修理之助が苗字を許されたことを知って必死の思いで来ているということがわかっているだけに、切ない気持ちになります。そして、白鸚さんの又平の必死さが胸に迫ります。こんなに、思うようにならない言葉にいらだち、必死な又平がいたでしょうか。この又平と、猿之助のおとくの組み合わせが、やはり独特のリアルさをもって、歌舞伎座を支配するあの空気!

猿之助とおとく、いいといわれていても普段の才気煥発な雰囲気からはぴんとこなかったのですが、確かに当たり役といえましょう。

最後の喜びの又平の舞、おとくの鼓の音もよく、気持ちの良い昼の部の打ち出しでした。

 

「世界は一人」@プレイハウス

201903       Twitterで追加販売を知って、キャストがいいので取った「世界は一人」、作・演出の岩井秀人さんは最近注目の方だそうで、ミュージシャン前野健太さんが演奏する音楽劇、劇場はプレイハウス、とばっちり。しかもお席はサイドながら通路より前ですよ!

前野健太のバンドが舞台上手にいます。この方、CM等にも出ているそうですが知らなくて、迫力ある、ソウルフルな歌声に感動。すっごくかっこよかったです。

お話は、松尾スズキ、松たか子、瑛太の同級生(!)の、小学生の高学年から中年くらいまでのいろいろを歌とともに描いていくというもの。スズキくんはやや冴えない子ども時代からからやり手のビジネスマンになり、金持ちの娘松たか子は5階から飛び降り、君臨していた瑛太は引きこもり…その先もいろいろあります。

主役の3人がやはりとても魅力的。スズキさん、俳優としても独特の軽みがあって、おじさんなのに少年みたいで大好き。「マンハッタン・ラブ・ストーリー」「ちかえもん」や「いだてん」もいいですもんね。不思議な動きの場面は笑えました。

松たか子、「カルテット」ではちょっと老けたかな、という気もしたんですが、生で見ると、かわいくて、女性としての艶やかさがありながら、女性というより人として魅力的だなという感じがして、歌もうまく身体能力も素晴らしいんですよ。野田秀樹とかこういう作品を好んでいる松さん、どういう方向にいくのか、気になります。

そして瑛太、野田秀樹作品などでおなじみですが、相変わらずバランスの取れた身体、ナイーブな感性、超かっこいいですよ。歌もうまくてですね、若さと成熟のバランスがいちばんいいときというか。若干出番が少なかったのが残念なくらい。

ほかに迫力とユーモアの達者な平田敦子(よしもと所属ですよ)、菅原永二、平原テツ、古川琴音と的確な演技で複数の役を演じる役者さんのキャスティング。

しかしこの作品、3人の人生を描くという割には、ありふれたセリフだけで描こうとする場面が多く、残念な感じがしました。寓話的な描写であっても、部分的なリアリティの積み重ねとか、鋭い表現等が、芝居の実となって観客に訴えかけると思うんですけど、表層的でなんか高校演劇みたい。

音楽、セット(美術秋山光洋)、役者はいいのに、新鮮ないい材料で、料理の仕方を間違えた感。怒鳴るシーンもありましたが、怒鳴ればいいってもんでもないし。

特設サイトをみると、岩井さんは「レ・ミゼラブルやミス・サイゴンのようでない、会話からすっと歌に入るミュージカル」を目指したとのことですが、それって普通にオフ・ブロードウェイ作品でやってるやつじゃないですか。新しくもないし、表現としてはさほど洗練されていない(曲はいいけど)。布団の使い方は生活臭があって好きじゃない。

しかも、「深刻なテーマを内包しながらも、“おばちゃんにもわかる”平易な言葉で」って何です?実は朝この特設サイトのこのフレーズを見て、「おばちゃん」って何だよ!と不愉快だった私。劇場の主要顧客である中高年女性全般を指すなら天に唾する行為ですし、特定の人々を想定するなら差別的だし。言葉知らないのは今どきの若いもんなのに何言っちゃってんの(ガチ切れ)。

瑛太のあまりのかっこよさに、見ている間には、何でこんなに素敵な人がいるのに、あの黒光りしたシニカルなおじさん(←ひどい)のファンなんだろうっていう考えが浮かびましたが、結局、今日は偶数日だったのに歌舞伎座行けばよかったな、なんて思っちゃいました。すいません。

映画「グリーン・ブック」

201903greenbook      今年のアカデミー賞で作品賞、脚本賞、助演男優賞を受賞しを受賞し、主演男優賞にもノミネートされた「グリーン・ブック」です。面白そうだな、と思っていたら、主演はヴィゴ・モーテンセンじゃありませんか。行かなくちゃ。

血の気が多いNYのナイトクラブの用心棒トニー・バレロンガ(ヴィゴ)は、口が軽くてトニー・リップと呼ばれています。クラブの工事で職がなくなり、黒人ピアニスト ドク・シャーリー(マハーシャラ・アリ)のトリオの南部コンサート・ツアーの運転手兼用心棒となります。

時は1962年、ドクは天才ピアニストで教養があり間違ったことがきらいな人物なのに、南部では黒人差別が激しく、黒人が使えるレストランなどのガイドブック、「Green Book」がないと旅行できません。イタリア系アメリカ人のトニー自身も差別意識があったのですが、トニーが何度もドクの危機を救ったり、ドクがトニーのラブレターを手伝ったりするうちに、二人には熱い友情が…。

そう、「メンフィス」、「ヘア・スプレー」、「ドリーム」といった作品を思い出しますが、よくできたバディ・ムービーでもあり、途中ハラハラしながら、最後はすっきりと幸せな気持ちになる終わり方でした。これがほぼ実話(脚本の一人はトニーの息子ニック)とは。

逆にいうと、あまりにウエルメイドな作りで、アカデミー賞も、今のアメリカの政治状況だからこそとれたのかな、と思いました。

それくらい一つ一つのエピソードがよくできていますが、それもトニーとドクのキャラクターがほんとに対照的で二人とも魅力的。マハーシャラは、「ベンジャミン・バトン」や「ドリーム」に出ていた時は、さほど印象には残っていなかったんですが、いや、うまいですよ。NYではまだしも、貧しい黒人とも、演奏には拍手を送ってもそれで自分の寛大さを誇る手段と考えている白人とも、なじめない孤独さ。

そしてヴィゴ。役作りにのめり込むタイプなだけあって、20キロ増量という見事なお腹。ぺったりとしたオールバックに、品のない話し方は、あの「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンではあんなにかっこよかったのに、普通のおじさんになっちゃったと思わざるを得ませんでしたが、留置場のシーンはなぜか往年のいい男の目になっててはああ、でした。

ヴィゴといえば、「インディアン・ランナー」(ヴィゴのDVが怖くて録画したのに1度しか見てません)、「ダイヤルM]、「オーバー・ザ・ムーン」、を経て、やっと指輪でブレイクしたのに、「オーシャン・オブ・ファイヤー」とか「ヒストリー・オブ・バイオレンス」、そして「アラトリステ」等、なぜこの作品を、と思うような選び方をしていたと思ったら、今やすっかり演技派としてアカデミー賞常連。デンマーク系で語学に堪能、けっこう強烈なリベラル。ヴィゴに浸った2時間でした。

松之丞「万両婿」「違袖の音吉」「扇の的」@三越カルチャーセンター

201903

         松之丞、「講談とトークたっぷり90分」と題する、三越のカルチャーセンターでの講座です。オンラインで申し込んだんですが、チケットは来ないし、三越劇場の公演予定にもないし…と不安になっていたら、日本橋三越新館9階の会議室、来場順に着席のしくみ。開演30分前に行ったら、もう8割方埋まっていました。

この会議室が、ほんとに会議室。200ほどのパイプ椅子が横に長く並んでいて、座った頭の位置に、高座ができています。高座から立ち上がると、低くなっている天井に松之丞さんの頭がぶつかる位置ですよ!今をときめく松之丞を、リニューアルして全館きれいな三越にお呼びしてこれですか、な感がすごい。私自身はサイドながら、斜めから松之丞さんの上半身がしっかり見えたのはありがたかったです。

さて案の定、松之丞自身も、この状況をネタに突っ込みまくります。三越でコレ、絶対ラジオで言うって。しかし、そう思っている私たちと気持ちが一体になって、とても温かな雰囲気になりまして、そういうところもうまいんですよね。

1席目は「万両婿」。宝井琴調さんに習っていたもので、今日のTwitterでもネタおろしできる、というのを読んでいたので、おお、と思いました。落語でも先代円楽さんや歌丸さんが得意としていたネタだそうです。ネタおろしの出来についてもひとくさりあって、私たちのハードルを下げます。

旅先で死んだと思われていた小四郎が、そうとは知らずに帰宅すると…という、大家も活躍する落語的なお話で、笑えるところがたくさん、ネタおろしながらかなりの完成度です。帰宅してから松之丞の「講談入門」を見たら載っていたのであれ、と思ったら、「琴調先生に習って強力なレパートリーになる予定」と書いてありました。琴調先生の、女性の受けを考えての、ちょっとした変更もネタにしたりして。

続けて2つめは、侠客ものの、「違袖の音吉」。浪花の三大侠客の一人、音吉の少年時代、町で出会った源兵衛親分とけんかとなり、子分となるまで。「講談入門」によると、松之丞の二つ目時代の代表作、DVDにも入っているそうです。浪花なのに江戸弁、と本にありましたが、それでこちらも聞いている最中、江戸なのか大阪なのか、やや混乱したのか。それはともかく音吉少年の生意気さが面白くて、これもたいへん楽しく笑えました。

ここまで1時間ちょっとで休憩を挟み、また少しトーク。昨日から話題の、松之丞のワンピース講談(Youtubeに動画が上がっています)のお話。実際に動画を見て、講談とワンピースの相性のよさに驚いたんですが、松之丞もそのこと、そして松竹さんからきいたというとワンピース歌舞伎の大ヒットの話。「普通歌舞伎は役者を見に来るが、猿之助でなく右近でもチケットが売れた、ものすごく客層を広げた」――人から聞くとうれしい話!

そして最後は、予定の時間も過ぎており、客も疲れ気味なのを見ながら、「扇の的」。松之丞の代表作といってもいいくらい、よく読んでいるようです。伸縮自在ということで、短めの15分ほど、与一がどんどん的に近づき、弓を振り絞るところでいったん切ったりして、盛り上がりました。

3席、登場人物が多彩で、老若男女が活躍、何でも自在な松之丞。健全な毒っ気がたまりません。まだまだ人気は安泰な気がします。次回のラジオ「問わず語り」が楽しみです。

三月大歌舞伎「弁天娘女男白浪」幕見<2回目追記あり>

201903benten_2

 歌舞伎座夜の部は「弁天娘女男白浪」幸四郎猿之助のダブルキャストです。その前の「雷船頭」もダブルなので、2回見に行くしかないのですが、観劇日が待ちきれず、偶数日初日を幕見です。

18:50分発売開始、19:23開演と、仕事帰りに行ける時間。雨のせいか、意外に少ないかなと思いきや、最終的には立ち見の方もいました。

2018年5月に菊五郎・左團次12月に愛之助・右團次で見ていますが、待望の猿之助・幸四郎コンビ。若い気の合った相棒感は二人ならでは。

娘の猿之助は、さすが女方のキャリア、男と開き直った後は、力が入っていて、この役への思い入れを感じます。

正直言うと、「しらざあ言って聞かせやしょう」の後半がちょっとはずれたり、着物の整え方がちょっともたついたり(菊五郎さんの着物の扱いはほんとうに滑らかですからね)、ハラハラしたりしていたんですが、こういう力いっぱいの役を見るのがうれしく、昼も大役ですから、本当に回復したんだな、と思いました。

そして、花道での菊之助・力丸のじゃらじゃら、幕見席からは見えにくいんですが、「埋め合わせはするから」「いつもそうじゃねえか」の色っぽさにあれ、こうだっけとドキッとしました。

幸さんも、やっぱり役者ぶりが上がっている感があって、とてもかっこよかったですし、白鸚丈もさすが。亀鶴、笑也が加わっての五人の稲瀬川勢揃いは幸せな気持ちになりました。

(おまけ)

この日は「帰れマンデー 見っけ隊」。飲食店を探しながら、途中下車で伊東から河津桜祭りを目指す旅です。猿之助メインに、隼人、トリンドル玲奈、ロッチ中岡、タカ&トシ。

こういうバラエティで全く素っぽくみえる猿之助さん、判断早い、江戸城の石の切り出し場や唐人お吉の身投げの淵に興味深そうに近づいていくなど歴史好きで博学、歩くの超早い、食べるの好きって噂通り。予想外の続きがあって、電池切れになっちゃうのも大笑い。

テロップのアイコンが、チラシの弁天小僧なのも、ギャップで楽しかったです。

(2回目追記)

中日を過ぎて、再び幕見に行ってみました。幸四郎弁天を見て、すっきりとユーモアをたたえた魅力を再認識した後です。浜松屋の皆さんのお芝居のテンポがよくなって、橘三郎さんもそうそうこれ、という感じになってます、というところでの猿之助弁天。

まず、幸四郎南郷と、距離が近い、手を握っている時間が長い。男になってからの台詞にメリハリがきいて聞きやすい。居座るのか金をもらうのかの南郷とのやりとり、そして引き上げる前の駄右衛門との目くばせがわかりやすい。

着物のさばきもスムーズで、全体に猿之助弁天の完成形に近づいている感じがしました。

そして、実は澤瀉屋の設定だという、弁天と南郷の関係!初見のとき、あれ、と思ったのはやっぱりそうだったんですよ。そんなに露骨ではないんですが、花道での南郷「埋め合わせはするから」に対して、猿之助弁天は「いつもそうなんだから」と色っぽく返します。

この設定が、これまでもそうだと思ってみていた人、初めてそうだと知ってうれしくなる人、そして受け入れられない人、に分かれるようです。

ガッチャマンとか、サイボーグ009とか(←古いか)、集団ヒーローの中に恋人がいるのはけっこう楽しい設定。若くてきれいな二人でこその甘やかな関係を見せられて、この配役ならではだなと思いました。逆はありえないので、幸四郎・猿弥の損得勘定でのバディなのか。

稲瀬川の場は、柄違いの着物が、各人の個性に合ってて、見ていてニコニコしてしまいます。ああ、楽しかった!

(さらにおまけ)

この後、夜の部を1階で見ました!そして、立ち見でしたが偶数日千穐楽も。3月楽しかった!

 

« 2019年2月 | トップページ | 2019年4月 »