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2019年1月

「姫路城音菊礎石」@国立劇場

201901_2       国立劇場の新春恒例、菊五郎劇団の通し狂言「姫路城音菊礎石(ひめじじょうおとにきくそのいしずえ)」。です。

原作は1779年に初演された並木五瓶の「袖薄播州廻」。姫路城を舞台に播州藩のお家騒動と恩義のある武家に忠義を尽くす夫婦狐を描いた作品。平成3年に国立劇場で220年ぶりに上演され、今回はその脚本を補綴しての上演です。

姫路城主桃井修理太夫(楽善)の嫡子陸次郎(梅枝)は頭痛眩暈の持病で将軍家に御目見えもせず、傾城尾上(右近)に入れあげています。幕府の使い(時蔵、片岡亀蔵)が来た日に、家老内膳(菊五郎)の謀略により陸次郎は殺され、家宝の香炉の紛失が判明し、またその夜、仇を打とうとした中心主水(松緑)の手により、修理太夫も誤って殺されてしまいます。

この序幕、迫力ある菊五郎さんの内膳が敵か味方か二転三転、時蔵さんの錦之助さんの面差しに似た格の高い長裃姿、梅枝の軟弱な若殿、りりしい家臣萬太郎、彦三郎・亀蔵の憎々しい敵役、ほんとにきれいな右近、と楽しい一幕。

2幕以降は、お家再興のために、後室碪の前(時蔵)や弓矢太郎(菊之助)、陸次郎の双子の弟八重菊丸(梅枝)、主水・お辰(菊之助)夫婦、そして与九郎狐夫婦(松緑・菊之助)が活躍します。菊之助二役の女房が、若干混乱しかけましたが、大丈夫。菊之助・梅枝の舞踊もあるし、陸次郎の一子国松の和史くん、与九郎狐の息子眞秀くんもかわいらしく、それぞれ見せ場があって楽しいです。二人とも、まだ幼稚園児なのに、台詞も多く、度胸もたいしたもの(ロビーのしのぶさん、きれいだった!)。

しかし一番の見どころは、狐姿の菊之助・松緑。四の切は澤瀉屋しか見ていないので、音羽屋のは知りませんが、狐の姿、動き、あの歌舞伎では認定されているのかのかわいい狐語。二人の滑らかな動きや愛嬌が魅力的で、ほんとに楽しかったです。

最後は大敵の内膳の正体が現されてみんな並んでの手ぬぐい撒き。もう日常ではすっかり抜けたお正月気分の名残を楽しみました。

ここ数年、国立の初春歌舞伎を大体見ていますが、若手が成長して見せ場を受け持つようになり、相対的にベテラン勢の出番が軽くなっているのはちょっぴり残念。脇からお弟子さんたちまで、きっちりよい芝居をする菊五郎劇団、ちょっとほかに分けてあげたらとまで思ってしまいますね。

ぎんざ木挽亭神田京子「番町皿屋敷」神田松之丞「南部坂雪の別れ」

201901      木挽亭の松之丞の会、今回のゲストは姉弟子神田京子さん。

冒頭のトークでは、京子さんが大学時代に当時89歳の神田山陽に弟子入りした話とか、松之丞が前座時代に使えなかった話などで盛り上がりました。山陽さんは、歌舞伎でいえば猿翁さんのように革新的な講談師だったそうです。

さて京子さんの講談は、「番町皿屋敷」、冬の怪談です。歌舞伎の番町皿屋敷は、岡本綺堂作の、青山播磨と菊の恋愛ものですが(京子さん真山青果って言ってたけど、浅草歌舞伎で見たばかりなのであれ、と思った)、こちらは旗本青山主膳、そして用人十太夫の誘いを断った腰元お菊が、二人に陥れられて、家宝の皿を割ったかどで手討ちに合う話。

全編、舞台は冬の夜。雪が効果的です。幽霊の怖さよりも、可憐なお菊が、男たちに迫られて「お許しを」というところ、そして凄惨な殺しの場面が印象的。京子さん、明るい、気の強そうな(失礼)美人なんですが、主膳や十太夫のときは、傲慢な男に見えるところがすごい。笑いも取り混ぜて、充実した一席でした。

松之丞、松竹が新調した釈台に絡めて真打昇進の話をしたりして、やっぱり発表になってから初の生まっちゃんなのでうれしいです。こんなに毎月木挽亭やっているんだから、歌舞伎座で真打披露、といった話が出なかったのは、もう夢じゃなくて真面目に準備する段階に来たからでしょうかね。

「南部坂雪の別れ」。大石内蔵助が今夜いよいよ討ち入りをするというときに、浅野内匠頭の未亡人瑤泉院にあいさつに行きます。討ち入りの意思を問う瑤泉院に、間者の存在を恐れてしらを切りとおす内蔵助。別れ際、四十七士の兄妹である戸田の局に連判状を、それを知らせずこっそり託して内蔵助は去ります。それを盗もうとした間者の腰元に気づき、連判状を見た戸田の局と瑤泉院は涙にくれたのでした。

この話の大石内蔵助もほんとにいいなあ。本当は話して安心させたいが、万一を考えて言わないと決めてこらえるつらさが伝わってきます。そして、その大石の判断は正しかったこと、真実がちゃんと瑤泉院や戸田の局に伝わるところがスッキリします。講談、モヤモヤが残らないところがいかにも庶民の娯楽。泣けます。

この演目、見せ場としての、連判状に書かれた四十七士の名前の読み立てがあるのとないのとあるそうですが、松之丞、「覚えていないわけではないが1年かけて仕上げるので」と言って今回はなし。もしかして初おろし?と思ったんですが、帰って「講談入門」みたら、「読み立てをやってよく覚えた、という拍手はちがう」という思いがあるそうで、静かに読み立てをするバージョンもあるらしいです。

この日も、いくつも仕事をしたうえでの高座だと思いますが、あとは体に気を付けて、健康なダイエットをして、汗をかかないようになーんて、よけいなことを思っちゃいますね。がんばれ松之丞。

宝塚雪組「ファントム」

201901fantom_2        久しぶりの宝塚は、人気の雪組「ファントム」です。ガストン・ルルー原作のファントムもので未見のプロダクション、アーサー・コビット脚本、モーリー・ウェストン詞・曲という作品。イェストンって、とみてみたら、ナイン、タイタニック、グランド・ホテルと、ヒット作がたくさんある方じゃないですか。

しかし、このファントムは、資金集めをしている間に、あのロイド・ウェバーの「オペラ座の怪人」が1986年にウエスト・エンドで大ヒット(そしてブロードウェイでロングラン)してしまったために、1991年のヒューストンでの初演以来、ブロードウェイでは上演されていないという若干気の毒な作品です。

宝塚では、2004年初演で4度目の上演。今回は、歌のうまい望海風斗のファントムということで期待していきました。ほかの出演者もみーんな歌がうまくて、イェストンの美しいメロディ(難易度高め)を歌い上げていました。芝居のテンポもよく、オペラ座の地下の雰囲気も良く出ていて、堪能しました。

(ネタバレしてしまいます)

オペラ座の地下に住むファントム(エリック、望海風斗)は、支配人キャリエールとうまくやっていましたが、新しい支配人アラン(彩風翔)と妻でプリマドンナのカルロッタ(舞咲りん)は、ファントムをないがしろにします。広場で歌を歌っていたクリスティーヌ(真彩希穂)はオペラ座のパトロンシャンドン伯爵(朝美絢)の目にとまり、オペラ座で働くことになります。衣装係からエリックの歌のレッスンを受け、主役に抜擢されたクリスティーヌ。一方、キャリエールとエリックの間には秘密が…。

主役のファントムが、ほかの作品より表舞台に目立って出てきますが、クリスティーヌに切ない思いを抱くところは一緒。とにかく望海風斗の歌がうまいので、不幸な境遇もより迫ってきます。カルロッタがまた歌もコメディセンスも素晴らしく、前半は舞台を回していきます。クリスティーヌも、見事。

また、シャンドン伯爵(ロイド・ウェバー版だとラウル)が、朝美絢と彩風翔のダブルなんですが、私が見た日はあーさでした。またこの子が明るくてかわいくって。この舞台の明るい部分を一身に集めたような存在で、立ち回りもかっこよかった!

後半は、キャリエールが際立ってきます(2番手としてはやや地味なお役)。キャリエールとエリックの二重唱はこのうえなく美しく、感動しました。

しかし、ファントムもの全般にいえますが、ファントムかわいそうすぎるんですよ。とくにこの脚本、おいキャリエール、これまでになんとかならなかったのか、って感じ。あとね、最後、歌舞伎だとキャリエールは死にますよね。ピストル渡したとき、それ渡しちゃうんだと思ったもん。

最後はすべて忘れて短いフィナーレ。男役さんたちはおおむね渋めでしたが、それもまたかっこよかったです。

新春浅草歌舞伎第2部「寿曽我対面」「番町皿屋敷」「乗合船恵方萬歳」

2019012       新春浅草歌舞伎通しの第2部です。1部が2時半に終演した後、30分の入れ替えの間に、たいへんな人出の中、さくっと浅草寺にお参りしできました。しかしいくらなんでも1部と2部入れ替えに30分は短すぎ、役者さんだってたいへんですよね。

さてこの第2部のお年玉口上は鶴松くん。私ですいません、みたいなことも言っていましたが、とんでもない!まじめに演目の見どころも要領よくお話してくれました。

1つめは、「寿曽我対面」。新春の歌舞伎では定番だそうで、今月の歌舞伎座でも上演されていますが、浅草歌舞伎では、教科書通りの上演で、登場人物が歌舞伎に出てくる典型的なキャラクターで、舞台が華やかですちょっと寝ちゃいましたが)。

曽我兄弟に歌昇、松也、朝比奈が巳之助、大磯の虎が新悟、少将梅丸、鬼王隼人、そして工藤祐経が錦之助。女方組は傾城ですからね、舞台写真売り切れてました。

2つめは、「番町皿屋敷」。岡本綺堂作の、怪談ではない新作歌舞伎です。

旗本青山播磨(隼人)は、幡随院長兵衛と敵対している水野十郎左衛門の一味です(そうなんだ!隼人は幸四郎の一味で、吉右衛門長兵衛と敵対しているんだ!と思う私)。何かにつけては、長兵衛の手下と喧嘩しています。この日は言いがかりをつけられて今にも喧嘩しそうというときに、叔母さまの真弓(錦之助―女方は珍しい!)に止められます。

さて、播磨は腰元お菊(種之助)と深い仲ですが、叔母さまから縁談を勧められています。その話を聞いて不安なお菊は、青山家の家宝の皿をわざと割り、自分とお家の家宝のどちらをとるか、播磨を試そうとします。それを知った播磨は激怒し…。

隼人がこの役を梅玉さんに習ったというのはきいていましたが、実際、いつもの声でない低音での凄みのある台詞回しは、梅玉さんそっくりで、梅玉さんの播磨は見たことないのに、梅玉さんの声が聞こえてくるようでした。お菊を真剣に愛していたからこその怒りがふつふつと湧いていて、客席も引き込まれ、聞こえるのは泣き声だけでした。

用人十太夫(桂三)、手討ちを止めようとする奴(蝶十郎)もうまくて、後半はとくに舞台の空気が濃くて、素晴らしかったです。

最後は主要出演者全員で、役の持ち味を生かして踊る「乗合舩恵方萬歳」。出演者が皆役に応じて踊るのが楽しく、華やかでいい演目でした。30分もたたないうちに、皿屋敷から切り替えての舞踊。種ちゃんなんか、さっきの悲しいお菊は消えてしまったかのような、ひょうきんな萬歳(巳之助)の相方。二人の舞踊は身軽で決まっていて、ほんとに気持ちよく、長い一日を終えました。

新春浅草歌舞伎第1部「戻駕色相肩」「義賢最期」「芋掘長者」

201901_2       初めての新春浅草歌舞伎、いきなり通しで行ってきました。メンバーに関しては、(知ってるけど)別冊カドカワでも予習済み!

浅草公会堂自体も初めてです。チケットもぎりの手前にお弁当と浅草土産売り場があり、中にもお店がいろいろ。ほぼ全部の階にソファーがたくさんあって、休んだりお弁当食べたりするのに便利。飲料自販機も多数あります。

立派な花道のある劇場、ここで亀治郎は育ったのか、と感慨。

まずはお年玉の挨拶で巳之助。噂通り、時間がないからと超手短。もう!って感じですが、まあそれが芸風なんで。

1つめの演目は「戻駕色相肩(もどりかごいろあいかた)」。見ているときには、次郎作(歌昇)が上方、与四郎(種之助)が江戸の駕籠かきとはわかってなかったのですが、とにかくこの二人の台詞がよくて、所作も決まっているのに驚き。歌舞伎座ではどうしても脇で台詞も少しですが、いつの間にこんなに立派な役者に(踊りがうまいのは知ってたけど)。種ちゃんは女方もやるけど、小柄ながら、二枚目がニンなんだなと思ったりして。駕籠に乗っていたのは可憐な禿たより(梅丸)。3人で踊ります。かわいいことこのうえありません。

そして、最後は治郎作は石川五右衛門、与四郎は真柴久吉であったことがわかり、衣装も返して立派な見得。

ところで、この演目、どこかで聞いたことがと思ったら、猿之助が7歳で2代目亀治郎を襲名した時の演目、禿たよりだったんですよ。舞踊の一部だったんでしょうが、7才の子どもにこんな演目をやらせるとは、そして一応踊れるとは。御曹司おそるべし。

2つめは、いよいよ松也「源平布引滝 義賢最期」。まず義賢の後妻葵御前(鶴松)と娘待宵姫(梅丸ーかわいい姫)が話しています。この鶴松が鶴松はどこ、というくらい立派な葵御前。最近鶴松の女方いまいちとか思っててごめんなさい、この若さで。2017年1月に海老蔵で見たときは、葵御前は齋入さんだったんですよ。両方あるのが歌舞伎らしい。

その後、九郎助(桂三)、小万(新悟)、息子太郎吉が夫折助(隼人)を尋ねてやってきます。義賢と折助実は行綱が源氏への思いを語る場があって、義賢と平家の戦い。松也、大きい、強い、覚悟が伝わってきます。戸板倒し、仏倒し、と見せ場もたっぷり。昨年秋から、メタルマクベス、あらしのよるに、幸助餅、と大役が続いていて大丈夫かと心配していたくらいなんですが、その間に思わぬところまで達してしまったんじゃないかというこの浅草歌舞伎の松也。

また、この演目では、なぜか小万はたまたま折助を尋ねてきただけなのに、敵と戦い、義賢の最期を見届けます。この後白旗握ったまま死んじゃうのになあ(←実盛物語)と悲しい気持ち。新悟ちゃんもがんばっていましたし、桂三さんもいい味を出していました。

最後は「芋掘長者」。やっと巳之助登場です。お家の大事な演目。美しい姫の緑御前は、舞の上手を婿にすると舞比べをすることになり、左内(歌昇)や兵庫(松也)しますが、芋掘長者の藤五郎(巳之助)は実は舞が苦手。ついてきてくれた友人治六郎(橋之助)に面をつけて踊ってもらったり、こっけいに真似をします。というところまでの筋は知っていたので、はたして巳之助の踊りを見られるのかと思っていたら、最後は芋掘の踊りが見事と、婿になる願いがかない、そして全員が踊ります。

30分前まで、義賢と小万をやっていた松也、新悟が涼しい顔をして柔らかな表情とはすごい。巳之助の身体表情の滑稽味が楽しく、格子の衣装もかわいくて、楽しい演目でした。

終演は2時半。出ると、2部のお客さんが大勢開場を待っていましたが、とりあえず外の空気を吸いに出て、浅草寺に駆け足でお参り!

別冊カドカワ「総力特集 新世代歌舞伎~新春浅草歌舞伎~」

201901_2       別冊カドカワの、「新世代歌舞伎~新春浅草歌舞伎」。カドカワが歌舞伎を取り上げるのはうれしいけど、えー、今30代から40代前半くらいの油の乗った中堅どころ(愛之助、獅童、幸四郎、愛之助、松緑、猿之助、菊之助、海老蔵、勘九郎、七之助)をすっ飛ばして、浅草歌舞伎メンバーを取り上げるなんて、と思ってたんですよ。

でも、書店で手に取ってみたら、写真はきれいだし浅草メンバー以外の記事も盛りだくさんで、即買ってしまいました。

200ページ弱のうち、床山、鬘、衣装、大道具・小道具、の職人さんたちの特集が30ページ超、いとうせいこうや、TBS日曜ドラマのプロデューサー、少年ジャンプ編集長、バレエ・カブキの関係者、いのうえ歌舞伎のいのうえひでのり等の興味深いインタビューが30ページ、それに獅童・松也、猿之助・巳之助の対談、浅草歌舞伎の全ポスター!

歌舞伎の解説本は多々ありますが、雑誌的な裏方さんへのアプローチが面白く、膨大な衣装や道具の管理とか、鬘の合わせ方とか、とても興味深かったです。

もちろん、今年の浅草歌舞伎メンバーのインタビューとかっこいい写真も満載です。今や本公演でもしょっちゅう見るメンバーの熱い思いがあふれていてよかったです。隼人が意外に貪欲だとか、みっくんがなぜ芝居を語るのが嫌いなのかとか、歌昇の妻と吉右衛門への深すぎる愛とか。よすぎて、常連なのに今年は出ていない壱太郎、米吉、児太郎(みんな女方!)は取り上げられなくて残念。

今年初めて浅草歌舞伎を見る予定なので、とっても楽しみなのでした。

「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」@プレイハウス

201901greatcommet      「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」 という長いタイトルのミュージカルです。ブロードウェイ版は2016年の11月から2017年の9月まで上演され、2017年のトニー賞12部門ノミネート、美術と照明で受賞しています。

(ネタバレ気味です)

プレイハウスに入って驚きました。舞台は縦に長く、花道で田の字の下に口をつけたような形を作っています。それぞれの穴には観客、1つにはオケ。観客の前にはテーブルがあってドリンクサービスとスタンド。舞台天井からは星のような美しい照明が下がっています。

とにかくこの舞台装置と、場面によってさまざまに変わる照明が見事。これまで見た舞台の中でも、ベスト3に入る美しい舞台といえましょう。田の字の中のお客さん、(高いけど)いいな!幕間は花道歩けるし。

さて、お話。トニー賞中継で、もっさりしたジョシュ・グローバンが毛糸の帽子をかぶって歌っていたのが印象に残っていたので、なんとなくヨーロッパの村に隕石(←Cometじゃない)が落ちてきて大騒ぎ、みたいな話かなと思っていたんですよ。チラシはこの通りきれいだったのに。実際は、トルストイ「戦争と平和」の第2巻を原案にした、19世紀初頭のロシアが舞台のお話。その頃彗星が見られたのもほんとだそうです。

ナターシャ(生田絵梨花)は、戦場に旅立つ婚約者アンドレイ(武田真治)と別れを惜しんでいます。ピエール(井上芳雄)は陰気で社交家の妻エレン(霧矢大夢)とは愛がありません。エレンの兄アナトール(小西遼生)と会ったナターシャは惹かれてしまい…。

ピエールは莫大な財産を相続していて、アナトールにもしばしばお金をせびられたりしているんですね。そういえば地味だけどきちんとした格好をしています。ヨッシーのフワフワヘアと丸眼鏡は初めて見ますが、とってもかわいい!しかしあまりに内容をわかっていないのと、Sung-Through Musical なので聞き取れないところがあったりして、幕間まで今一つぴんと来なかったのですが、人物相関図を見て、やっとマーリャとナターシャの関係とか、ボルコンスキー老公爵(武田真治二役。ハジケててよかった!)とマリアの関係などつかめしました。

私、どちらかというと Sung-Through Musicalは、登場人物に感情移入しにくいのと笑いが少ないのでやや苦手、しかも、このミュージカル、曲が独特で、少しロシアの雰囲気が入っているものの、メロディが覚えにくいんですよ。田の字の舞台の行き来といい、覚えにくい多量の歌といい、これは出演者には相当に難易度の高いミュージカルだと思いますよ。

井上ヨッシーはさすがですし、ほかのキャストもみな実力者。小西くんも、ドロホフ(水田航生)もかっこいー!水田君、2幕冒頭では近くから登場してほれぼれしましたよ。生田絵梨花も、この役には若すぎる(浮気するようには見えない)と思いますが、いや、がんばった。ほかに原田薫(振付の人!踊ってなかったけど)、松原凛子、はいだしょうこ、メイリー・ムー。

しかしアンサンブルシーンは本当に楽しくきれいですし、とにかく最後のピエールの歌と舞台!それまで若干不完全燃焼めいた気分がふっとぶようなカタルシスでした。

舞台装置に戻ると、客席がテーブルなのは同じですが、田の字は日本版オリジナルのようです。美術松井るみ、照明高見和義、振付原田薫、演出はZANNAやチャーリーブラウンの小林香、オケもバイオリンやアコーディオンの音が心地よくて素敵でした。

壽初春大歌舞伎「舌出三番叟」「吉例寿曽我」「廓文章吉田屋」「一条大蔵卿」

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           歌舞伎座昼の部です。いいお天気で、外にはまだ門松がありました。館内の飾りつけもまだお正月。昼の部に先に来ればよかったか。

1つめは、「舌出三番叟」。三番叟(芝翫)と千載(魁春)のおめでたい踊りです。芝翫さんの踊りは大きな体を使って表情たっぷりですし、魁春さんは3階から見ると若い娘のよう。

しかし三番叟ってどういうものかいまだにわかっていない私。とにかく「舌出し」をぺろっとやるのを待っていたのですが、見落としたのか、そもそもやっていないのか、見ることができなくて残念。

2つ目は、「吉例寿曽我 鴫立澤対面の場(雪の対面)」 です。曽我兄弟(七之助、芝翫)と、工藤祐経の奥方梛の方(福助)が対面するという趣向です。これも新春に演じられる曽我物。

小林朝比奈の妹舞鶴(児太郎)が女暫の巴の装束で花道から「しーばーらーく」と登場し、父、叔父、従兄とそろってうれしいと言います。児太郎、堂々としていて、ちょっと声は割れていましたが、「女暫」は楽しみだなと思いました。福助さんも張りのある声。

逸る箱王(五郎)の芝翫さんがここでも元気いっぱいで盛り上げてくれました。

3つ目はお目当ての「廓文章 吉田屋」歌舞伎見始めの歌舞伎座杮落しのときに仁左衛門・玉三郎で見て、歌舞伎って楽しいなと思ったきっかけの一つですよ。

今回は、幸四郎の伊左衛門、七之助の夕霧です。勘当された大店の若旦那伊左衛門は、夕霧に会いに吉田屋にやってきますが、店の者に追い出されそうになったのを主人喜左衛門(東蔵)に、店に入れてもらいます。

座敷で夕霧を一人待つ伊左衛門。呑気で阿呆でかわいらしい若旦那をやらせたらもう、幸四郎ぴったり。そして夕霧がやってきます。傾城の貫禄はありながら、かわいい夕霧。よく覚えていないんですが、杮落しの時は、上方の型というのか、もっと二人が話していたような気がしますけど、こちらは清元が続いて二人は動きのみ。でも、お互いが好きですねているのが十分伝わってきて、お似合いの二人に、こちらも笑顔になります。

最後は、おきさ(秀太郎)が、伊左衛門の感動が解けて、身請けの金まで届いたと嬉しい知らせに、観客も含めて大阪締めで締めます。ああ、楽しかった。

そして最後は、「一条大蔵譚」。しょっちゅうかかる演目で、私でさえ、菊之助、仁左衛門、当代幸四郎と人気者で見ているので、またかという気持ちで見ていたんですが、白鸚さんの大蔵卿はまたちがった味わいでした。

これまで見たものは、作り阿呆の場面が印象的だったのですが、白鸚さんはなんとなく最小限、あまり笑いも取りません。その分か、後段の本来の姿に戻ってからが、とても迫力があって見事。由良之助を思い出すような造形、多彩な声。まだまだお元気なこの姿を見て、もう一度「ラ・マンチャの男」を見なくちゃと思いましたよ(!)。

ほかに鬼次郎(梅玉)、お京(雀右衛門)、常盤御前(魁春)、鳴瀬(高麗蔵)、勘解由(錦吾)ともう隙のない配役。中でも常盤御前が際立っているように感じました。錦吾さんも大きな声で見得。

お正月らしい、盛りだくさんの歌舞伎座でした。

「大江山鬼伝説」@TACCS1179

201901oheyama_3            女性ばかりのミュージカル・カンパニーOZmateの「大江山 鬼伝説」です。2016年のNYのFringe International Art Festival で上演されたものとのこと。

お話は、藤原長道(陽田山ロコ)は権力をつかむため、貴子(樋口葉子)とその息子兼周と対立していますが、息子伊吹丸(松本飛路)、その妹時姫(葵ひなた)は反発しています。陰陽師晴明(歌帆)を使って貴子らを陥れようとする長道、伊吹丸は大江山で酒呑童子(YAN)たちに会って…

劇場のTACCS1179は、下落合の俳協ビルの地下の小さな劇場。舞台を見下ろす傾斜のある座席は45ほど。ものすごく舞台が近くて、友達がやっているような感覚になります。

女性がすべてのキャスト、時代は平安、鬼も出てくるということで、なかなか虚構としてのハードルは高いのですが(演者の中には親しみやすすぎる雰囲気の方も)、さすが何度も再演されているとあって、役者のみなさんが、かなりの熱量でこちらをひっぱっていきます。

長道の陽田山さん、舞台化粧が映え、性格造形がしっかりしていて舞台の芯。酒呑童子のYANさんは華があってかわいかったです

衣装や鬼の装束も工夫していましたし、太鼓や笛を使ったり、スムーズに動く御簾様の衝立をうまく使っていました。感心したのは照明で、簡素なスタジオながら、的確にスポットが動きます。個々のライトの動きを見たことがなかったので(商業劇場はそうなんでしょうが、こうしたスタジオでも、今やこれなんだ!昔はつけたり消したりだけだった)。

このOZmate、拠点である兵庫県に、専用劇場を予定だそうで、すごいですね。「MUSICALを娯楽ではなくARTとして捉え」という主張には異論がありますが、(ミュージカルは総合芸術ですから!かつ楽しいすばらしいもの) これだけのものを作るということはたいへんなんだなと思いました。

壽初春大歌舞伎「絵本太功記」「勢獅子」「松竹梅湯島掛額」

201901kabukiza     今年初歌舞伎は、歌舞伎座夜の部です。お席がよかったこともあって、大大満足でした。

1つめは、「絵本太功記 尼ヶ崎閑居の場」。深い月代にくるくるヘアの他にない光秀の写真はよく見るのですが(團十郎さんのことが多い)、初見です。前半は討死を覚悟した光秀の息子十次郎(幸四郎)と許嫁初菊(米吉)のやりとり。前髪の幸四郎さんがお人形のように美しく、米吉も可憐で惹きつけられます。

この演目では、光秀の母皐月(東蔵)と妻操(雀右衛門)は、主君春長を光秀が討ったことを批判しており、皐月は久吉(歌六)に代わって光秀に斬られます。それでも信念を揺るがせない光秀(吉右衛門)。吉右衛門さん、台詞も力強く、舞台を支配するオーラがやはり素晴らしかったです。今月この一役の正清の又五郎さんもよくて、浅草の歌種兄弟を除き播磨屋総出の充実した演目。もちろん義太夫は葵太夫さん。

十次郎の出番は、予想外に多く、出陣して一人重傷で帰ってくる幸さん。私、とにかく幸さんが苦しんだり嘆いたり悩んだりするのが、なぜかとても好きなので、ああ~苦しんでる、と堪能してしまいました。

東蔵さんがインフルエンザで休演の間秀太郎さんが代役だったんですよね。皐月はしどころの多いお役で(三婆には入っていないけど)、いきなりの代役はたいへんだったでしょうね。東蔵さんも秀太郎さんも好きなので、秀太郎さんも見たかったような。

2つめは「勢獅子(きおいじし)」。いなせな鳶と芸者が曽我兄弟の物語や獅子舞を演じます。梅玉さんの手締めを観客もやったりして、お正月らしい、賑やかな演目。梅玉、芝翫、魁春、雀右衛門と、鷹之資、玉太郎、福之助、歌之助芝翫さんが振りにちょっと茶目っ気を足すのも楽しいし、鷹之資・福之助の獅子舞は見事で、終始楽しく拝見しました。鷹之資、先月南座で見られませんでしたが、とにかく見ていて楽しい、ずっと見ていたいと思わせます。玉ちゃんもSUGATA以来、応援してますからね!

手古舞も、よく見る皆さんの達者な舞踊。京妙さんと幸右衛門さんがペアなのがうれしかったり、11月の国立で大活躍だった梅蔵さんや京蔵さん、千壽さんもチェックしてました。

さて、いよいよ「松竹梅湯島掛額」。八百屋お七を題材とした、前半はコメディ、後半はお七の人形振りという演目です。

家が火事となって吉祥院に滞在している八百屋お七(七之助)一家。お七は武士の家から小姓となっている吉三郎(幸四郎)に恋をしており、お七をかわいがっている紅屋の長兵衛、通称紅長(猿之助)は、応援しています。お七を側室にしようとする範頼の家来六郎(松江)。あれこれあって、人にかけるとグニャグニャになるというお土砂を使って紅長は好き勝手。

猿之助がすっきりとした風情の愛嬌のある町人。お七(おひちと言ってます)をかわいがってはいるものの、恋を応援したりして、その紅長を応援する私たち。出ている間、細かい反応をしているので目が離せません。お七、吉三、紅長の3人の場は、3人の仲の良さ、役者としてのバランスの良さが出て、紅長が吉三をからかうのもほほえましくみられます。

松江さんが時事ネタぶっこみ満載で、もともとこの方、武張ったお顔もよく通る声も面白い方なので、楽しめました。猿之助も松江さんがこういうのやったら面白いだろうとけしかけたんでしょうね。

次の四ツ木戸火の見櫓の場では、どうしても吉三郎に会いたいお七は、木戸を開けるため、火の見櫓の太鼓をたたきます。その前が義太夫に乗っての人形振り。お七以外は下女のお杉(竹三郎)だけで、見どころはEテレでも放送された、七之助の人形振りです。

七之助の硬質な美貌は、人形のようで人の生の感情が込められていて、見得の美しさも秀逸。人形振りって、完全に人形になるだけではただのものまねで、人形にはできないその先を見せるからいいのだなと、(先月の玉三郎岩永を思いだしながら)思いました。

女中お杉の竹三郎さん、先月南座を休演されたので心配でしたが、出番やセリフも多い重要なお役、元気に勤めていらしてよかったです。一度、立ち上がる時に自然に紅長がサポートしているのが二人を思うとほっこり。しかし86歳とは思えないかわいらしさ。

猿之助丈の中では、11月の法界坊とセットで、このジャンルを試してみた演目なのかな、と思いました。いずれも、回数は少ないですが、吉右衛門さん(初代も当代も)演じている役で、共演はないものの吉右衛門さんが出演している月です。お二人に会話があったのか、知りたいなあ。芸質は違いますが、没交渉ではないのではと。

今年も猿之助丈から目が離せません。

(2回目幕見追記)

竹三郎さん、私が見たすぐ後に休演されてしまい、梅花さんが代役となりました。梅花さんといえば、先代芝翫のお弟子さんで、平成中村座のドキュメンタリーでは、長三郎ちゃんを辛抱強く教える姿が印象的でしたので、梅花さんのお杉も見たいと、幕見に行ってきましたよ。予想通り、テキパキした梅花さんのお杉。七之助のお七とはいいコンビでした。

そしてお七の人形振り。はるか幕見席からあえてオペラグラスを使わずに見ると、整った七之助の顔も含めてまあ、お人形!黒衣も背景に溶け込んで、お人形ですよ!

そして花道で人間に返るお七。櫓に上る一つ一つの動作に緊迫感があり、そして花道の見得の美しいこと!席が違えばまた違った魅力があるのが歌舞伎ですね。

「ヴォイス・オブ・ウエストエンド」@オーチャードホール

201901vowe     ウエストエンドのスターによる、「ヴォイス・オブ・ウエストエンド(The Voices of West End)」です。出演者を見てチケットをとったはずですが、しばらく忘れていたので、行ってみてその豪華さにびっくり!

私的に最も感動したのは、ケリー・エリス! こよなく愛する2008年の「Chess in Concert」の主要出演者であるケリー・エリス、CDを聞きすぎて声が染みついていますが、それを上回る堂々たるステージでした。とにかく、Chessから、「Anthem:」と「I Know Him So Well」が聞けたのは大感激でしたし、ウエストエンドでエルファバを演じている彼女、「Defying Gravity」の豊かな表現力と迫力といったら、しばらく拍手がなりやまず、観客が立ちかけました。ファンテーヌもやっているので、レミゼのメドレーも。

それからハドリー・フレイザー! 大好きな「オペラ座の怪人」25周年記念公演のラウル、「レ・ミゼラブル」25周年コンサートのグランテールで清潔感のある青年を好演していた彼!その後マリウスを経てジャベールもやっているそうで、すっかりおじさんにはなっていましたが、あのグレーの瞳はそのまま。確かにラウルだわ!(ファントムの1幕の最後のデュエット歌ってほしかった)

ベン・フォスターも、あの、「ジーザス・クライスト・スーパースター・アリーナツアー」のジーザスですよ。彼はもっと面影が薄かったですが、激しい「Gethsemane」(←たぶん、ジーザスの曲を歌ってくれたのは歌詞で分かったんですが)はかっこよかったです。

ソフィー・エヴァンズは、現役のWEのグリンダで、明るい歌声。ケリーとの「I Know Him So Well」や、あまり歌われないけど大好きなWikedの「For Good」はとってもよかったです。Popularも聞きたかったな。「Let It Go」も合っていました。

そしておなじみジョン・オーウェン・ジョーンズです。もうリーダー格。

曲は、「グレイテスト・ショーマン」の3曲メドレーに始まり、わかったのは上記のほか、「ウェストサイド物語」、やっぱりファントム、レミゼ。何度も聞いているもの以外は、これ聞いたことある、と思っても出てこないのが多いです。

ああ、せめて演目と曲名を歌の前後で教えてくれないですかね。通訳の方がときどき入ったんですが、皆さんそんなに難しいことは言わないので、あまり必要なく、司会者の方が必要じゃないですかね。別にタレントさんじゃなくてもいいし、何なら歌い手の方自身でもいいんですよね。そのほうが盛り上がるじゃないですかー最後、JOJが、こんな顔合わせはWEでもないと強調してましたが。

それにしても、よく、ミュージカル初挑戦!なんていいますが、ミュージカルって、挑戦したり、やってみるものじゃなくて、ああ、この人はミュージカルスターになる人だ、って見てわかる人がなるものではないかと思いましたよ。ケリー・エリスが2時間半舞台で歌ったり笑ったり泣いたりしているミュージカル、見たいなあ。

詩楽劇「すめらみことの物語~宙舞飾夢幻」@国際フォーラム

201901            あけましておめでとうございます。今年もたくさんの舞台を楽しんでいけたらな、と思っています。よろしくお願いいたします。

さっそく新年最初の芝居は、詩楽劇「すめらみことの物語~宙舞飾夢幻(そらにまうかざりのゆめ)」です。1月2日・3日の3回公演のみ、猿之助のほか、尾上菊之丞、愛加あゆ、バイオリニスト川井郁子、和楽器奏者吉井盛悟の5人がメインで、音楽と舞踊を入れた物語。J・CULTURE FESTと題したイベントの一部です。脚本は横内謙介、演出・振り付けは菊之丞。

といっても事前にはすめらみこと、というのみで内容はよくわからず、左のチラシのビジュアルでは、背後で一番大きく映っている猿之助丈がラスボスのような、などと思っておりました。

入場の前に、国際フォーラムのガラス棟に行ってみたら、「即位・儀式の美/平安王朝文化絵巻」という展示をやっていました。源氏物語を題材に、平安の衣装や牛車の再現や、人形による明石の姫君の裳着の儀式や布を砧で打つといった家事の様子など。「源氏物語」は好きで現代語訳はいろいろ読んでいるので、そうそう、秋好中宮が腰紐を結ぶ役だったなどと思い出しました。が、この展示の眼目は即位の礼の再現場面のようでした(そういえばこの施設東京都が過半の大株主で…)。

さて、「すめらみことの物語」。四角い舞台の外側三方に客席。両側がパイプ椅子、正面が傾斜のついた座席になっています。殆ど埋まっているように見えました。

最初は、三方のスクリーンで、仁徳、持統、霊元、東山天皇が紹介されます。そのうちの一人、江戸時代に220年振りに大嘗祭を復活させ、子に譲位した零元天皇が猿之助。愛加あゆは故事を調べる女官という設定ですが、その間に川井さんのバイオリン、愛加あゆさんの歌、吉井盛悟さんは大太鼓、太鼓、笛、胡弓?とさまざまな楽器をかき鳴らします。演者が少ないので一部が録音らしいのがやや残念ですが、曲も川井さんのオリジナルが多く、バラエティに富んでいて面白かったです。

それぞれの道でキャリアを積んでいる自信にあふれた皆さん、それぞれに美しいというかかっこいいというか、普通の劇場よりずっと近く見られて、お正月から眼福でした。菊之丞さんの、女性お二人との舞も素敵でした。

お芝居部分に戻ると、最初の大嘗祭復活を目指すという設定の説明があって、姉小路さすがという女官に扮した猿之助が「金がかかるから無理」といじわるを言います。これがなかなか、ちょっと秀太郎さんの言い回しが入ってて、次は何だろうと食い入るように見ていた観客をほぐすような場面。アドリブらしく愛加さんに今日何食べた、と尋ねた後、「これで6食冷たい弁当」というのは何とも気の毒。

若い女官姿で、愛加さんといっしょの舞もあって、猿之助としては一番の見せ場。しかし歌舞伎に女性が立たないのは、女方という虚構が壊されるから、というのを読んだことがありますが、なるほど、ほんとうにきれいな愛加さんと一緒ではとても、と思いつつも、同じように立っていながら、回りに空間が広がるような、堂々とした舞姿に、そういうことは超越した感がありました。

最後は大嘗祭が実現し、東山天皇(愛加あゆ-この装束もかわいい)に譲位が実現します。最後の霊山帝の息子に対する言葉、「伝統を受け継ぐのは宿命だがそこに何ができるかが大事だ」と、まあご自分のことをと思うような台詞を力強く放って終演。この方、仏教に造詣は深いけれど、バランス感覚のある方なので、この芝居のメッセージ性を中和したように思いました。

お稽古日は数日だったようですし、いろいろな意味で謎は残りましたが、それでも各人の魅力は十分引き出されていた舞台だったといえましょう。集客的にも、愛加さんももちろんですが、猿之助さんが出るときけばよくわからなくても行くファンがいる分成功したのではと。

しかし猿之助丈、この舞台初日は歌舞伎座の初日でもあり、夜は松竹梅湯島掛額。初役で舞台を回す役どころなのに、そして、先月手術をしたばかりのようなのに、新年初めから全開で、今年は忙しくなりそうです。

(追記)

歌舞伎座夜の部「松竹梅湯島掛額」を見ました。前半小一時間、全体に絡む役どころで、遊び心たっぷりに楽しい芝居をしています。昼夜ちがう演目に出るのは当たり前な歌舞伎役者ですが、お正月休みを挟んでいきなり、やっぱりすごいです。

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