2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

« 2018年9月 | トップページ | 2018年11月 »

2018年10月

「修道女たち」@本多劇場

201810     KERAMAP #08 「修道女たち」です。例によって題名とか素材にはさほど惹かれるものはなく、女性ばかりの芝居ってどうなんだろうと思ってたのですが、ケラさんのツィートで、、脚本に苦労したり、稽古に入って手ごたえを感じたりというのを見て、期待が高まっておりました。チラシも文字だけのしか持ってなかったですし(劇場で初めて左のビジュアル見ました)。

最初の舞台は修道院。院長になりたてらしきシスター・マーロウ(伊勢志摩)に、テキパキしたシスター・ノイ(犬山イヌコ)、シスター・アニドーラ(松永玲子)、シスター・ニンニ(緒川たまき)に、新入りらしきシスター・ダル(高橋ひとみ)その娘シスター・ソラーニ(伊藤梨沙子)が、巡礼に出かける支度をしています。

毎年巡礼で滞在するのは聖女の祠を改造した山荘。修道女たちの訪れを楽しみにしている娘オーネジー(鈴木杏)、その友人のテオ(鈴木浩介)、複数の役でスパイスをきかせるみのすけ

最初、シスターたちが同じ格好の目を囲んだメイクで、犬山イヌコ(声でわかる!)と高橋ひとみ以外識別できなかったんですが、物語が進むにつれて個性豊かなシスターたちの秘密がくっきりとしてきます。ちょっとしたセリフの間がいいので、脚本の狙い通りに笑えます。シスターの衣装での動きが、ちょっとかわいくて面白い。個人と集団としての動きのバランスが絶妙で、舞台の実力派キャストが一体となって作る作品世界。休憩15分含め3時間15分の長丁場が少しも長く感じませんでした。

中でも鈴木杏。この役、いろんな意味でギリギリなところで成立しています。またある場面(ネタバレなので書きませんが)がすごい。この人、やっぱり天才だな。もちろん彼女だけでなく、すべてのキャストがよかったです。

終盤には、ちょっと鳥肌が立つようなシーンもあり、満員の(男性も多い)客席がぐわーっと集中していく感じ。理屈っぽくいうと、宗教を素材に人間の怖さをえぐるような感じを受けました。

素朴な味のあるセット(美術BOKETA)に、効果的な映像(新保瑛加、上田大樹)。ケラさんの芝居の映像は、洗練されながら芝居の一部になっていて、いつもうなります。

「寧々~おんな太閤記(2009)」再放送

201810_2     2009年のテレビ東京の新春ワイド時代劇「寧々~おんな太閤記」です。1981年のNHK大河ドラマのリメイクで、本放送時はのべ12時間の放送だったそうですが、今回は2週間にわたり、BSテレビ東京で毎日1時間放送。

大河では佐久間良子の寧々に「おかかー!」と叫ぶ西田敏行の秀吉が人気でしたが、この秀吉が亀治郎時代の猿之助。寧々体当たりの求婚、信長の下での出世、天下取り、晩年の老耄と、教科書通りの秀吉の生涯を演じます。

こんなドラマ、今頃再放送してくれるなんて、私のためですか(笑)。ほんとに、見逃さなくて全て録画できてよかったです。

猿之助、若い頃は、華奢な体つきもあって、体重を感じさせない予測できない動きで、猿っぽい。愛嬌がありながらも戦略を口にするときには頭のよさを感じさせます。譜代の家臣がいない秀吉は親族に愛情を注ぎますが、ときにそれを犠牲にする冷徹な計算。関白になってから、家康(高橋英樹)に「形だけ臣下の形をとってくれ」と頼み込みながら、実際の対面では半端ない圧をかけるところは見ものでした。川や温泉シーン、裸足の指のアップとか、演出は亀治郎ファンなの?という見せ場も多数。

「風林火山」では、由布姫とのラブシーンなど、ぎこちなさすぎてみる方が恥ずかしかったんですが、さすが寧々の仲間由紀恵がよいせいか、寧々との愛情も細やかに描かれていましたし(ジンと泣ける場面も多数)、淀(吹石一恵)ほか側室との関係も無理なかったです。

来月歌舞伎座の法界坊、勘三郎さんの法界坊(シネマ歌舞伎で見ただけですが)があまりに自在で面白かったので、クソ坊主とか女好きとか、どうなんだろうと思っていたのですが、このドラマ見たら何だか安心しました(どこから目線ですいません)。

ドラマとしても、どうしてもエピソードをただつなぐだけになりがちなところ、それぞれを丁寧に描いているのと、寧々目線で一本筋が通っていて、面白かったです。最終回は淀と寧々の冗長な会話シーンなど、少し息切れな感がありましたが。衣装や合戦シーン、ロケも贅沢でした。今の大河もこんなに合戦シーンしっかり描いていないかも。

キャストでは、秀吉の母おなか(十朱幸代)がさすがドラマを盛り上ていました。家康の高橋英樹だけは、安定感ありすぎなんですが、このドラマだったらもう少し若くて一癖ありそうなキャスティングもあっただろうと思いました。

他のキャストも、10年前とあって、こんなところに、という方も多数。秀長(福士誠治)を始め、井之上チャル、市瀬秀和といったワンピース歌舞伎の出演者や、秀次(濱田岳)、竹中半兵衛(山崎銀之丞)、和田正人

歌舞伎関係では、小早川秀秋に松也、秀頼に壱太郎。松也は声はいいですが細くて華がなくて、今メタルマクベスの美丈夫となるとは想像しがたい感じ。壱太郎秀頼は家康が対面した後「手を握ったら女のように柔らかい手であれでは大阪城を束ねられまい」と言われちゃうんですが、だって女方だもん、とくすり。

「男の純情」@紀伊国屋ホール

201810      おじさん3人のみのお芝居、猿弥丈が出る現代劇「男の純情」です。

舞台はサキちゃんという若い女性の部屋。散らかっています。そこにやってきた男1(山崎銀之丞)。ウキウキしながらサキちゃんの帰りを待ちますが、次に来たのはライダースに革パンツの男2(宇梶剛士)、そして最後には男3(猿弥)が、サキちゃんに呼ばれたといってやってきます。男たちがお互いを探りあう中でサキとの関係も明らかになっていき…。

まず出てきた銀之丞さんのかっこよさ。ドラマだと、彫の深いお顔が悪役にもはまる方ですが、舞台から男の色気がほとばしってましたですよ。宇梶さんも迫力あること!すんごい大きいんですよ(身長190㎝)。声も大きくて威圧感。

そして猿弥さん!生真面目な、とっちゃん坊やで、とくに宇梶さんからはいじられる役。猿弥さんといえば、最近は任侠親分的な役をやらせれば最高、ワンピースのジンベエや名月八幡祭の魚惣とか、出ているだけで盛り上げてくれる方ですが、意外なキャラがはまっていました。しかし歌舞伎でもふっくらしているのは感じていましたが、カーディガン姿の上半身の厚みがあって、コロコロしている感じ。宇梶さんにヒドイ呼び名で呼ばれちゃいます。ちょびっとだけ私の猿弥さんに(?)と思っちゃいました。

この3人の軽妙なやりとりが面白くって、あっという間の1時間半でした。カーテンコールでの、猿弥さんの晴れ晴れしたお顔がさわやかでした。

脚本の水谷龍二さんによると、このお芝居は若い頃に書かれたもので、2002年、2014年には女3人で上演されたことがあるとか。その都度設定や時代背景を変えているそうですが(当然スマホも出てきます)、このシチュエーションが秀逸で、時代を経ても変わらない魅力がある作品だと思います。

この日はバックステージツアー付き。舞台に上がって、客席から見えなかったキッチンのカウンターの裏とか、バスルームとかベランダを歩かせていただいて、とっても楽しかったです。舞台に張った床は少しふかふかしていました。

芸術祭十月大歌舞伎「宮島のだんまり」「義経千本桜 吉野山」「助六曲輪初花桜」

201810      十八世勘三郎七回忌追善の歌舞伎座夜の部です。

1つめは「宮島のだんまり」。だんまりの代表的な演目で、(だんまりの名のつく演目は「音羽嶽だんまり」以来です)。平家の赤旗をめぐって厳島で繰り広げられる派手なだんまり。華やかな皆さんで見るのに忙しいです。

主役は傾城後の袈裟太郎で、傾城の引っ込みを見せる扇雀さん。実はこの時点では筋書を買っておらず、1階後方席だったので、扇雀さんの引っ込みの足元まで見得なかったので、「傾城の引っ込み」というのを知らなくて、(やっぱりめったにやらないからへんな六方なのかな)って思ってほんとにごめんなさい。

好きだったのが、水色の衣装の派手な奴団平の隼人、白拍子の種之助、相模五郎の歌昇錦之助、巳之助、高麗蔵ほか大勢出ていて楽しかったです。

2つめは、勘九郎の狐忠信と玉三郎さま静御前の「義経千本桜 吉野山」。勘九郎が美しい、ときいていて、ほうと思っていたらば、たしかに本当に美しい二人でした。玉様は絵から抜け出たような美しさ、勘九郎の踊りは気持ちよく、前にも見たはずなのに、何を見ていたんだか…。巳之助の早見藤太も生き生きとしていてとてもよかったです。

さて、いよいよ「助六曲輪初花桜」。まず、筋書で(←最近買ってないのでうれしい)、傾城のチェック。宗之助、鶴松、芝のぶ、千壽、玉朗。やっぱり芝のぶさんが、台詞も、座っているときの表情もいい。この傾城が並んでいるの、長時間なので、気を抜いたりするとわかるんですよね。

客に飲まされて酔った揚巻(七之助)が花道から登場。。七之助の美しさ、全身のバランスの良さ。豪華な衣装にもうっとりします。

そして妹分白玉(児太郎)と、男伊達を連れた意休(歌六)が出てきます白玉付きの振袖新造に猿くんを発見(大阪には行かなかったのね)。歌六さん、左團次さんと比べて若干憎たらしさに欠ける感じはしますが、素敵。揚巻の意休への悪態も気持ちいいです。

ようやく助六(仁左衛門)登場。かっこよくないはずはありません。スラリとした立ち姿。ああ助六の衣装、すっきりといいのです。

くわんぺら門兵衛(又五郎)、福山のかつぎ(千之助)、朝顔仙平(巳之助)。又五郎さんもほぼ初役とのことですが、この人がこういう風に出てくるの、ほんとに楽しい。千之助は初日以来だいぶよくなったというウワサの大役。巳之助も吉野山に続きよかったです。

白酒売新兵衛(勘九郎)。兄には見えないという声もありましたが、)よく見れば素っ頓狂な助六に対する常識人の兄、何となくここまででお疲れの見える助六に比べ、力のみなぎる勘九郎が、舞台の上では押しているかにみえました。股くぐりはとても楽しく艶之丞(坂東亀蔵)は出落ちだし、通人(彌十郎)はニンではないんでしょうが、勘三郎さん追悼のセリフが観客サービス。

彌十郎さんに泣いたという話も聞いていましたが、私がジンときたのは、この後揚巻と玉三郎さまの母満江の出。私が歌舞伎を見始めたごく最初の頃、勘三郎、玉三郎、仁左衛門の「籠釣瓶花街酔醒」をシネマ歌舞伎で見なかったら、こんなに歌舞伎を見るようになってはいなかったと思うその玉三郎、仁左衛門と、勘三郎の息子たちが4人で舞台にいます。玉ニザと堂々と、対峙する二人。ああ、なんとよい兄弟と(この台詞のよい若い人はだれ、と思ったのも籠釣瓶の当時勘太郎との出会いでした)。

助六、今見る歌舞伎の中では古いものだけに、のんびりした台詞回しや間合いだなあとは思いますが、とにかく登場人物が多くて華やか。歌舞伎らしさというか、歌舞伎でなければ成り立たない演目だと思います。出演者は多くとも、華やかな舞台の主役はごく限られた役者。若い頃のニザ様を知るファンには、ちょっと老けた助六だったかもしれませんが、本当にこの座組みで見られてよかったです。

いつか勘九郎の助六が見られんことを(「矢の根」とか「暫」とか「鳴神」とか「勧進帳」だって見たい!)

「おもろい女」@シアタークリエ

201810      とにかく一度舞台で見たいと思っていた藤山直美「おもろい女」です。 シアタークリエでまあまあいい席で見られて感激。

この作品、最初は1965年のNHKテレビドラマ、1978年にドラマと同じ森光子の初演で舞台化、以来2006年まで400回以上上演された当たり役となりましたが、2015年に藤山直美が復活上演したものの再演、主なキャストはその時とほぼ同じです。

昭和の始めから活躍したミス・ワカナ(藤山直美)と玉松一郎(渡辺いっけい)の漫才コンビが主人公。映画の楽士だった一郎と、芸人志望で大阪に出てきたワカナは十代で恋仲となり、駆け落ちして不器用な一郎と漫才コンビを組みます。上海、博多、大阪での人気、わらわし隊という慰問団で出会った飯塚部隊長との心のふれあい、別会社への移籍、一郎との離婚、戦後の西宮球場での演芸大会での渾身の漫才の後、ワカナは36才という若さで(マリリン・モンローと同じ)、あっけなく亡くなってしまいます…。

脚本はドラマと森版が小野田勇、復活版は「ええから加減」の田村孝裕が潤色・演出とのことですので、現代に合うようにメリハリをつけたのかなと思いました。このため、各場面のバランスがよくて、古めかしい感じはせず、古い実際の映像の使い方も適度でうまく、この希代の天才漫才師の生涯を、時代背景とともに鮮やかに描きだしていました。何度も泣いたり笑ったり、面白かった!悲しい場面でも笑いが織り交ぜられているのが、ほっとします。

直美さん、さすがですよ。彼女のドラマは、朝ドラ「おんなは度胸」を時々と、寺島しのぶと共演した「最強のオンナ」を見たくらいでしたが、昔子どもの目から見ても異様な迫力のあった藤山寛美の娘なのにちがう種類の天才で、一ミリも二世七光の匂いがしない人だと思ったものでした。

この舞台でも、動きのキレ、緩急自在、お年も含めコテコテのおばちゃんなのにかわいい、そして品があるんですよね。直美さんが台詞を言っている時間は目が吸い付けられる感じです。

相方一郎の渡辺いっけい、この役はさぞプレッシャーだったと思うんですが、ワカナへの愛情とコンプレックスを精いっぱい表現していてとってもよかったです。森光子さんの相手役は長年芦屋雁之助さん(「裸の大将」の人)だったんですね。

そして、二人を見守るインテリの漫才作家秋田実の田山涼成が、温かみがあってとってもよかったです。森さん版は米倉斉加年さんだったのか。

ほかに博多の興行師の女社長に山本陽子(相変わらずおきれいで迫力、森さん版は山岡久乃、赤木春江)、吉本せいをモデルにした菱本せいを正司花江、慰問先の人間味ある飯塚部隊長(石山雄大)、昔のワカナの相方(小宮孝泰)、後輩コンビに黒川芽以、篠田光亮

休憩入れて3時間半があっという間でしたが、大阪だったら松竹座の芝居なんだろうな、と思ったりして、このクリエという空間で見られてよかったです。

(ところで、来月のクリエの演目は大竹しのぶの「ピアフ」。雰囲気は違うんですが、いずれも天才女性アーティストが薬で身を亡ぼす話ですよ。何で。)

十月大歌舞伎「通し狂言 雙生隅田川」@大阪松竹座

201810_3      松竹座の齋入・右團次襲名披露十月大歌舞伎、夜の部は、三代目猿之助四十八選「通し狂言 雙生隅田川(ふたごすみだがわ)」です。2017年1月の新橋演舞場での襲名披露演目として上演されましたが、その時は見ておらず、楽しみにしておりました。簡易な形ではありましたが、今年3月の鷹之資・玉太郎のSUGATA公演 でも十分面白さを感じていましたし。

勅命工事のため霊山の杉を切ったため次郎坊天狗(廣松)の怒りを買った吉田行房(門之助)は、天狗に殺され、息子の松若丸(右近)もさらわれてしまいます。次郎坊天狗は、お家乗っ取りを企む景逸(九團次)と通じていました。景逸は、部下の伴(弘太郎)と計って、松若丸と双子の梅若丸(右近)に、吉田家の重宝「鯉魚の一軸」の鯉の目を描かせ、鯉を逃がしてしまった罪を着せて、家を離れさせ、人買い惣太(右團次)に売り飛ばします。遠くに売られるのはイヤだという梅若丸を、藤太は折檻して死なせてしまいます。梅若丸を探しに来た県権正武国(海老蔵)によって梅若丸の素性を知った惣太は、実は使い込んだ主家の金を返して戻ろうとしてお金を貯めていたのだと打ち明け、天狗となると念じて壮絶な自害を遂げます。

夫ばかりか双子も失って正気を失った行房の妻班女御前(猿之助)は、隅田川までやってきて、渡し守をしている惣太の妻唐糸(笑也)に梅若丸の最期を知らされます。そこへ惣太の天狗、松若丸がやってきて、正気を取り戻した班女御前は二人と宙乗りで去ります。

そして一軸の鯉をつかまえるため、唐糸の兄軍介が川の中で奮闘し、鯉をつかまえて目をぐりっとやって一軸に戻したうえ、伴、景逸をやっつけます。

歌舞伎のいろいろな要素を詰め込みながら、見せ場が多くて、本当によくできた狂言です(すごいよ猿翁さん)。ところどころくどいのも(惣太の貯めた金とか自害とか)、猿翁さんの芸風を髣髴として、ニワカとしてはちょっとうれしい気持ち。

そして、演舞場の再演の方も多くて皆さんそれぞれの持ち場を熱演。安定の門之助さんのお殿様、意外と力強かった廣松、まるで宝塚男役のようなりりしい主税(米吉― 芝居中の口上も立派)、鯉魚を逃がした罪を追って自害する兼成(男女蔵)、憎々しげな大敵が見事な九團次、品のある大江匡房(鴈治郎)。乳母長尾の齋入さんも、もともとうまい方なんでしょうが、襲名後堂々としたところが備わって、立派でした。ちょっと目を引いたのが、三幕目で齋入さんとやりとりしていた新十郎さん。成田屋さんをあまり見てないので知らなかったのですが、うまいなあと感心。それなのに、惣太を見る海老蔵の他人事みたいな顔ときたら。

そして、昼夜奮闘の右團次、惣太の一念、見事な天狗姿、最後の本水の鯉つかみと大熱演で、しかし疲れも見せず、お見事(本水も始めチョロチョロ、後からどっかんと来て、ああ、ワンピースでは濡れなかった右團次さんと弘太郎さん、思い切り濡れてと思った私)。

右近ちゃん、8才での双子の二役、台詞や段取りも多く、ほんとにがんばってました(右團次さんもさぞかわいいんでしょう)。宙乗り昼夜2回も、大人でも珍しいでしょう。今、YouTubeで、三代目猿之助の惣太・天狗、菊五郎班女御前、亀治郎松若丸の映像が見られますが、宙乗りでバランスを崩したように見せるのがお約束で、それも受け継いでいてかわいかったです。

この宙乗りの間、小天狗たちがいい感じで踊っているんですが、宙乗りの三人を見るのに忙しくてちらちらとしか見られなくてすみません。隈取の顔ってなかなか誰とはわからないのですが、猿四郎、喜猿、猿紫、蔦之助の四人。

猿之助班女御前、1幕での堂々とした奥方、しかし嘆くさまは、ああ政岡。そして班女御前の道行、花道の足元が見えない席だったので、あまりにもなめらかな移動に、動く歩道に乗ってきているかのような錯覚を覚えました。そして、葵太夫さんをはじめとする浄瑠璃に乗りながら、正気と狂気を行き来しながらの見事な踊り。こういう猿之助さんを見たかったと、感動でした。指の動きもなめらかで、100%完全ではないといいながら、この完全復活ぶり。上記の菊五郎班女さんも、いったいこの迫力ある女方は誰、と思ったくらいなんですが、やはり菊五郎丈ともちがう魅力。誠実な優しい唐糸とのやりとりもすてきでした。

というわけで、大阪での襲名披露を盛り上げようという、澤瀉屋、成田屋始め出演者の熱が感じられ、猿翁さんの功績にも思いいたった、充実の松竹座でした。

十月大歌舞伎「華果西遊記」「口上」「め組の喧嘩」「玉屋清吉」@大阪松竹座

201810       大阪松竹座での、齋入、右團次、右近の襲名披露です。東京では2017年1月に襲名公演をやっていますが、1年半後、「右近さんはこの度右團次を襲名」とか言われても、もうすっかり右團次さんで、右近と言えば右近ちゃんなんですが、大阪の大名跡の襲名披露を大阪で、ということで、黒田征太郎氏デザインの立派な祝幕もかかっていました。

昼の部1つめは、三代目猿之助四十八選の「華果西遊記」。三蔵法師(米吉)一行を迎えた女人国の女王(笑三郎)と妹(廣松)、実は蜘蛛の精との戦い。孫悟空(右團次)、分身(右近)、猪八戒(弘太郎)、沙悟浄(猿四郎)という配役です。

まず、西遊記そのものが面白いんですよね。孫悟空、かわいい隈取と衣装、猿らしい機敏な動き、フサフサの髪を抜いていろいろなものを出す、如意棒に筋斗雲の宙乗り。三蔵一行のキャラも立っているし、踊り、蜘蛛への変化、蜘蛛の糸投げ(貴重な品を惜しげなく!)など、歌舞伎の技との親和性も高くて、とっても楽しかったです。よく考えたら、私、舞踊以外の猿之助四十八選は初めて見るのですが、猿翁さんの構成力の一端を見た気がしました。

右團次、弘太郎、猿四郎の棒を使った見事な踊り(ちょいちょい落とす人もいましたが)、笑三郎さんが女人国の女王だったり、笑野、右若、蔦之助らの侍女たち大活躍なのは、ワンピースのアマゾン・リリーみたいで楽しかったです。

そして何より右近ちゃんがかわいいのって。立ち回りや台詞も多いんですが、お父さんと同じ格好の小さい達者な分身、ニコニコしちゃいます。これ見てください。右團次さんのブログ<孫悟空二人>

2つめは襲名披露の口上藤十郎さん、海老蔵、友右衛門、雀右衛門、鴈治郎、猿之助、とお三方。猿之助の口上は、ケレンを得意とした右團次の名を右近さんが継ぐことは、伯父猿翁も喜んでいる、といった、この襲名をきちんと説明する過不足のない内容で、貫禄がありました。まだ口上の裃の舞台写真持ってなかったので買っちゃった。

3つめは「神明恵和合取組(め組の喧嘩)」。 火消しのめ組と相撲取りたちとの喧嘩。め組のかしら辰五郎(海老蔵)対 相撲取りの四ツ車(右團次)。さすがすっきり海老蔵かっこいい!最初のもめ事が怒る品川島崎楼の場では、寿猿さんがあまりにもはっきりカンペを読んでいて、これがあの噂の、と思いましたが、87才にもおなりになるのにしっかり舞台をお勤めなのはすごい。

芝居前の場面は若干記憶がとんでいますが、辰五郎が家に帰ってきて、決着をつけないのかと迫る女房お仲(雀右衛門)と、水杯を交わし、別れると出ていくお仲に離縁状をつきつける辰五郎。このお芝居、辰五郎は三十代という設定なので、海老蔵は合ってるはずですが、前に見たのが2015年の團菊祭の菊五郎劇団なので…。雀右衛門さんは悪くないんですけどバランスもあるし。

最後は、め組集結しての水杯(っていうんですかね。ひしゃくで水を口に含んでぶわってやるの)、立ち回り。役者さんたちの一体感、緊張感があって、盛り上がります。國矢・猿四郎の一騎打ちかっこよかった!ひときわ若い少年、あのかわいかった福太郎か!そして左團次さん?と見まがったのが男女蔵の九竜山。最近似てるな、と思うことが増えました。

そして留め男として喜三郎(鴈治郎)登場。鴈次郎さんのキャラクターと芝居がこの場を収めるのにぴったりで、すっきりとした終わりでした。

昼の部最後は新作歌舞伎舞踊「玉屋清吉 團十郎花火」。花火屋の清吉(海老蔵)が一人夜の江戸の町にいると、キレイどころがやってきて踊ります(ここでも笑野、右若活躍)。下駄の海老蔵のタップのような踊りもあり。さすが海老蔵、ああ、きれい。

花火の映像はややしょぼかったですが、その間に拵えた海老蔵の團十郎花火の精(でいいですか?)。背景に火も吹くし、キラキラテープは飛ぶし、盛り上がりました。

(知らなかったんですが、この夏の東京花火大会で、歌舞伎&花火というイベントがあったんですね)。

「生きる」@赤坂ACTシアター

201810ikiru_3     黒澤明監督の名作「生きる」を原作とするオリジナルミュージカル、ということで、ずいぶん前から宣伝していた「生きる」です。Wキャストの市村さん、鹿賀さんがブランコに乗っているチラシ、いやー、いくら1952年の映画だからって、地味すぎで、どうかなと思っていたんですが、その後チラチラ出てくる情報にそそられて、行ってみました。

客席が、普段と違います。かなり高齢のご夫婦、男性が多い!「ジャージーボーイズ」の来日公演、「ヘドウィグ&アグリーインチ」に続く、普通のミュージカルと客層がちょっと違う客席って感じです。

以下、有名映画の話なのでネタバレ気味です。

さてお話は、昭和27年、定年間近の市役所市民課課長である渡辺勘治(市村正親)は、胃がんで余命わずかと判明し、初めて人生の意味を自問し、居酒屋で知り合った小説家(小西遼生)と遊びまわってみますが空しいばかり。しかし市役所をやめておもちゃ工場で生き生きと働くトヨ(May’n)の生き方に惹かれ、自分も生きた証を残したくなり、主婦たちから要望のあった公園を作ろうと奮闘します…。

1幕は冴えない市村勘治。歌もほんのさわりだけ。しかしラストで生まれ変わろうと力強く歌い上げます。2幕での必死の奮闘は感動的。立ちはだかる助役(山西惇)、そして妻が亡くなってから愛情を注いできた息子(市原隼人)とのすれ違い。山西さん、市原さんとも存在感十分で芝居がいいので、この舞台が引き締まったというか、ほんとに好演でした。

市村さん自身は、長年舞台でまさに感動を生み出すクリエイティブな人生を送ってきた方。それが猫背で地味な市役所職員で、最後に生きた証を残したいと願う役というのはちょっと面白いなと思いましたが、いつもの茶目っ気は封印しつつも、動きの軽快さが心地よく、メリハリのきいた演技でよかったです。役としては鹿賀さんも合ってたはずで、そちらも見たかったかも。

泣く要素たっぷりではあるんですが、癌告知、前代未聞の割烹着のおばちゃんたちのアンサンブル(リーダーは重田千穂子さんだったのか!歌もうまかったです)、やる気のない市民課の面々等、軽いユーモアで綴られていてあざとくないし、地味な舞台ですが、さすが今どきで机の移動などが軽やかで無駄のないセット、テンポよく進んでいきます。曲も「ビューティフル」等を手掛けているジェイソン・ハウランド、美しいメロディで特にテーマ曲がよく、音楽も聴かせてくれました。

ラストへの持っていきかた、説明しすぎないシーンが、小西、市原の緊張感ある演技もあって、さわやかな感動が生まれました。

休憩込で2時間20分ほどなのは、ブロードウェイ仕様。舞台は戦後の日本ですが、テーマは普遍的で、これから再演もできるし、海外でも評価されると思います。日本のミュージカルの一つの形だと思いました。

「通し狂言 平家女護島」@国立劇場

201810s      23年ぶりという、「平家女護島」の通し狂言です。鬼界ヶ島の俊寛の段はたびたび上演されていますが(先月歌舞伎座の秀山祭で吉右衛門さんのを見たばかり)、その前後に平清盛が出る段があります。俊寛と平清盛を芝翫が演じる成駒屋興行。

序幕は六波羅清盛館の場。流罪にした俊寛の妻東屋(あずまや、孝太郎)に我が物になれと迫る清盛(芝翫)。二人の会話に常盤御前が出てきて、東屋が自分は常盤と違う、というのが、一條大蔵卿の常盤を思い出してちょっと切ないです。

清盛の甥教経(橋之助)は、俊寛への操と清盛への恭順ともにたてよ言い(そんなこと言ってたんだ)、東屋は自害します。俊寛の郎党有王丸(福之助)がやってきて、教経に東屋の首をもらって帰ります。

今見られる中で、吉右衛門さんの俊寛以上のものがあろうはずがないので、通し狂言としてどうなんだろうと思っていたのですが、1幕目はまあ手堅くといった感じ。孝太郎さんはさすがうまいな、ここでいなくなっちゃうのがもったいないと思ってみてました。腰元の梅花さん、京妙さんも、短い場面ながら盛り上げてくれます。橋福兄弟はいい役もらってるな。

二幕はお馴染みの鬼界ヶ島の場、俊寛(芝翫)、成経(松江)、康頼(橋吾)、千鳥(新悟)、瀬尾(亀鶴)、丹左衛門(橋之助)。

秀山祭のときには、あの俊寛の悲劇と思ってみたら、とくに前半は、意外な軽さを感じたんですが、こちらはさして軽さは感じませんでした。亀鶴の瀬尾は、いい声のきっちりした瀬尾。千鳥は、雀右衛門さんもうまかったんですけど、やっぱり私は可憐な若い娘の方がいいなあと、新悟熱演でした。橋吾さんとってもよくて目を引かれました。

俊寛見せ場の去る船を追いかける場面、叫びに熱がこもり、いったん諦めたかと思ったらまた叫ぶ。自分で決めたことながら、どうにもならない悲しみが伝わってきました。

さて三幕は、厳島に赴くな船の清盛、後白河法皇(東蔵)。法皇を亡き者にしようと海に突き落とす清盛、そこを千鳥が救います(←海女だから泳ぎは得意)。有王丸に法皇を託した千鳥は、清盛の船で殺されてしまいます。清盛の前に、東屋と千鳥の亡霊が出て清盛は苦しめられますが…。

海を背景に船というのはうまい場面設定。この東蔵さんの法皇に気品と可愛げがあって最高でした。今回花外だったので、福之助の派手な立ち回りもよく見えました。千鳥の意外な大活躍で見事な海老ぞり。最後は清盛の派手な見得で終わって、何だかわかりませんがすかっとしました。

【伝統演芸館・黙阿弥の明治】

201810      終演後,、伝統演劇館で、明治150年記念として、幕末から明治にかけて活躍した歌舞伎作者河竹黙阿弥に関する展示を見ました。ちょうど戸田康二さんの本で黙阿弥に関する一説を読んだところだったので興味深く。

展示品は錦絵(まだ時代が浅いので色鮮やか)や舞台写真が中心なんですが、白浪ものだけでなく、明治以降歌舞伎が政府の要人や上流階級の趣味になりうるよう奮闘した九代目團十郎とのかかわり、活歴、松羽目もの等、要領よい解説で、彼の功績がよくわかりました。

というか、河内山、髪結新三や魚屋宗五郎、幡随院長兵衛、紅葉狩、船弁慶等、今でもよく上演される面白い作品ばっかりじゃありませんか。こういう人がときどき現れてその世界を大きくするんですね。

「タイタニック」@青年館ホール

201810        ミュージカル「タイタニック」です。トム・サザーランドの新演出版としては2015年に続く再演。これ、2009年に見た「タイタニック」 とちがうプロダクションなのかどうか気にしていたんですが、ピーター・ストーン脚本、モーリーウェストン詞・曲は同じでした。初演は1997年、その年のトニー賞脚本賞、作品賞、作曲賞、編曲賞等を受賞しています。しかし主演、助演は誰もノミネートもされていません。それだけ最初から群像劇としてよくできた作品だったということでしょう。

今回の舞台と、2009年版とを比較すると(といっても例によってよく覚えていないんですが)、タイタニックのデッキを模した大きな高い台のセットが舞台を占めて、時に前後するという舞台装置、これと動く階段で船内をうまく見せ、乗客と船員たちが軽快に動く点や、美しいメロディと力強いハーモニーの名曲揃いなのは同じですが、キャスト・演出が違うとだいぶ舞台の印象が違いました。

タイタニックの処女航海、設計士アンドリュー(加藤和樹)、船主イスメイ(石川禅)、船長(鈴木壮麻)。1等から3等まで、イギリスから新天地アメリカを目指す乗客たちが乗ってきます。

この3人が、2009年は松岡充、大澄賢也、宝田明だったんですよ。松岡くんが設計士というにはかわいい感じなのはともかく、石川禅のアクの強さと歌のうまさ(←贔屓ですしね)。この役、歌えない大澄賢也でどうやってたんでしょう。鈴木壮麻も何やってもうまい人ですが、低音ボイスが船長に合ってて、イスメイとの緊張関係がよかったです。加藤和樹は一応主演なんでしょうが、このカンパニー、歌のうまい人が多いので、目立たなかったしお芝居としても物足りなかったです。今年加藤和樹バブルが来てますけど今後どうかなあ。

男性キャスト、皆よかったんですが、藤岡正明の機関士、衣装も汗も豪華客船の一番下を支える、愛すべき青年で、のびやかな高音の歌も好きでした。ほかに戸井勝海、相葉裕樹、上口耕平、栗原英雄、津田英佑、小野田龍之介、佐山陽規と男性陣はみんなよくて、全員が前を向いて並んで歌う声が劇場に響き渡って最高でした。

(ところで栗原英雄さんは2015年の上演でも同じ役を演じていて、「真田丸」の叔父上のキャストを探していた三谷幸喜がシルビア・グラブを見に来ていて惚れこみ、ドラマ初出演となったんだそうです。この重厚かつ軽快で演技は老練な栗原さんを見出したとき、三谷さん嬉しかっただろうな)

女性キャストは少なめ。二等客ながら一等客を観察してのし上がろうとするアリス(霧矢大夢)。演技はエネルギッシュでよかったんですが、歌はアップテンポの難曲が多く、ちょっとつらそうでした。ほかに菊地美香、安寿ミラ

豪華客船の夢の夜が沈没という悪夢に変わるまで、さまざまな人間ドラマが描かれるこの作品。曲のよさもあって、見応えがありました。トム版の演出は、群像の動きが軽快で無駄がなく、またキャストの魅力も引き出していてよかったんですが、最後の情緒的な呼びかけみたいなシーンはあまり好みじゃなかったです。観客はだいたい映画の「タイタニック」でもっとリアルな悲劇を見てますしね。

2回目の青年館ホール、前回よりいい席でしたが、やっぱり真っ暗な感じでロビーも味気なくて残念な印象はぬぐい切れず。

テレビ東京開局記念ドラマ「Aではない君と」「あまんじゃく」「琥珀の夢」

201809a      テレビ東京開局記念55周年記念ドラマ3部作、いずれも力作で、楽しませてもらいました。

1作目は、「Aではない君と」。原作は薬丸岳の同名小説です。中学生の殺人事件の加害者として逮捕されたのが、離婚した妻(戸田菜穂)と暮らす息子(杉田雷麟)と知った佐藤浩市が、息子の心を開き、殺人の動機を解明しようと必死になるという話。 佐藤浩市を助ける弁護士に、WMの天海祐希。 山本耕史が出ているというので見たんですが、彼はこの事件をスキャンダラスに報じる記者のチョイ役で、こういうドラマと予めわかっていたら見なかった重い題材でした。

しかし、少年が犯人の事件を知る度、被害者やその家族の無念はいうまでもないながら、犯人もこの先長い人生、どう生きていくのかと思わずにはいられないでいたので、このドラマで丁寧に描かれた、拘留とか家裁とか逆送等の手続きと、父から見てのそのもどかしさには引き込まれました。キャストも皆好演。できることはすべてやろうとする佐藤浩市の父でさえこうなんですから、現実はもっと厳しいものにちがいありません。なかなか事実に向き合えないでいる母戸田菜穂の姿も彼女を責める気持ちにはなれませんでした。

201809

        2作目は「あまんじゃく」原作は藤村いずみのミステリ。優秀な外科医だった唐沢寿明は、弁護士の橋爪功と組んで、極秘に依頼を受ける殺し屋です。弟を殺した義父、妊婦を放置して死なせた産婦人科医、禁止された治験薬を使った医者等、法では裁けない者を、自然死に見せかけて殺す唐沢寿明の動きがキレキレ。

別れた恋人木村多江、児童福祉施設を営む伊藤蘭等が絡んで、娯楽アクションドラマとして楽しめました。

201810_3        3作目は伊集院静の、サントリー創業者鳥居信治郎の生涯を描いた同名小説を原作とする「琥珀の夢」。薬問屋の丁稚奉公から、あのサントリーを作り、ワインや缶詰の商いを経て、ついに国産ウィスキーを完成させます。

信治郎を内田聖陽、妻壇れい、父中村梅雀、母原田美枝子、奉公先主人西田敏行、英国でウィスキー造りを学んできた竹鶴政孝(山本耕史)、と豪華キャスト。この竹鶴は、朝ドラの「マッサン」の方ですね。

夜中にワインのブレンドを工夫する店の雰囲気や、洋食や西洋の酒について知る1等での船旅等、丁寧な造りでなかなか映像は見ごたえがありました。信治郎と政孝は、「真田丸」の家康と三成なのになーなどと思ったりして。

ただ、モデルが立派なだけに、勤勉な努力家の成功までのエピソードをつなげただけになってしまって、2時間半の単発ドラマではもったいない感じ。原作を知るだけに、部分的な映像化みたいな感じがしてしまいまいした。

しかし、3作とも雰囲気がちがって、いいキャストをそろえた佳作。山本耕史とか、温水洋などは、別のドラマのチョイ役でちょっと出たりして、そういうのもテレ東ぽくて、よかったです。

芸術祭十月大歌舞伎「三人吉三巴白浪」「大江山酒呑童子」「佐倉義民伝」

201810_2

       十月の歌舞伎座は勘三郎さんの七回忌追善興行です。昼の部の1つめは、「三人吉三巴白浪」。お嬢吉三が七之助、お坊吉三が巳之助、和尚吉三が獅童

おとせは鶴松。コクーン歌舞伎の「切られの与三」といい、これといい、最近鶴松の女方が不安定に思えて残念。納涼の弥次喜多の時はそう思わなかったんですが、中村屋の芝居の大事な人だけに、がんばってほしいです。

七之助のお嬢はいうことありません。美しさ、タンカのキレ、男との入れ替わり。一人で舞台にいるときに、役者が大きくて舞台が小さく感じるようでした。

巳之助の古典は久しぶりですが、主役をやった後だけに、華があって役者ぶりが大きくなった気がしました。台詞も心地よくて、ああ、みっくんファンは待望の古典、そして勘三郎さんの盟友だった三津五郎さんにもいい供養になったとも思いました。

兄貴分の獅童は二人とのバランスもよく、大川端庚申塚の場だけの短い芝居でしたが楽しかったです。

2つめはお目当ての「大江山酒呑童子」。去年12月に京都で演じて評判だった勘九郎の酒呑童子です。松羽目の舞台に囃子方が黄色の裃で華やか。酒呑童子に相対する源頼光(扇雀)、平井保昌(錦之助)、四天王は歌昇、隼人、いてう、鶴松。みなさん、ビシッと決まっております。隼人が珍しい赤い顔。先月も思いましたが、とにかく舞台でずっと気が入っていて、大きな体がより大きく見えます。

そして童子姿の勘九郎がすっぽんから。なめらかな所作にうっとり。童子のくせに酒が好き、頼光に勧められて、飲む表情が豊か。そして笑った顔が、面もないのに般若のお顔。童子が酔って作り物の家に入った後、酒呑童子にとらえられていた姫(高麗蔵)、濯ぎ女(児太郎、種之助)が舞います。

いよいよ酒呑童子と頼光らの戦い。童子と打って変わった酒呑童子、四天王との立ち回りと、皆々美しく、楽しい一幕でした。

最後は「佐倉義民伝」。江戸初期に、将軍に直訴して息子もろとも処刑された千葉の佐倉の豪農をモデルにした佐倉義民伝ものというのが講談等にあったのを、幕末に中村座で歌舞伎として初演された、中村屋ゆかりの演目だそうです。

主人公の宗吾(白鸚)が、不作と重税に苦しむ農民を救おうと、江戸の領主の屋敷に訴えた帰り、旧知の渡し守甚兵衛(歌六)に、夜間の渡しの禁止を破って船を出してもらいます。旧主の覚悟に命懸けで助力する歌六さん、いい場面。ここも、次の宗吾の家の場面も、地面に積もった雪の表現がリアルで、冷たさを感じさせて感心しました。

宗吾の留守宅では、四人の子どもをかかえて、妻おさん(七之助)がしっかり家を守り、村民のおかみたちを助けて、寒そうな者には惜しげもなく着物を与えます。帰宅した宗吾に喜ぶ家族、しかし宗吾は死を覚悟して将軍に直訴するために再び旅だつのでした…。

場面は変わって寛永寺で紅葉を愛でる将軍(勘九郎)。並びの家臣が豪華。無謀にも直訴に及ぶ宗吾はむなしく捉えられ…。

そう、お縄にかかったんですよ。それでどうなるか、と観客が固唾を飲んだところで提灯が付き、終幕。初見のお客はポカンとこれで帰るの?って顔してましたですね、私も含めて。

前述の処刑された、というのも後から調べた話で、そうならそうと言ってくださいよ(←いや、予習しろ私)。道理で家族との別れでぐすぐす泣いている声が聞こえたんですね。

(まあ、でも、役者さんはみんなよかったんですが、ちょっと暗すぎるのと動きがなくてあまり好きな芝居ではなかったです)。

 

「6週間のダンスレッスン」@よみうり大手町ホール

2018106       大好きな草笛光子さんがライフワークとおっしゃる「6週間のダンスレッスン」です。今年1月の日経「私の履歴書」 でも、映画全盛期の人気女優ながら、舞台を大事にされている生き方に感銘を受けていましたが、「グレイ・ガーデンズ」以来のお芝居を拝見できるとは。

この作品は、2001年初演のリチャード・アルフィエリの二人芝居「Six Dance Lessons In Six Weeks」。草笛さんは、2006年以来、7回演じています。マイケル役は今村ねずみ、太川陽介、齋藤直樹、星智也、と変わって、今回は松岡昌宏。演出は鈴木勝秀。タイトルに「新」がついています。

アメリカ南部の高層マンションに住む68才のリリー・ハリソン(草笛光子)は、6週間の個人ダンスレッスンを申し込み、マイケルがやってきます。ウソつきでちょっとひねくれたマイケルに最初は拒否反応を示すリリーですが、毎週6回のレッスンを受けるうちにお互いを理解していき…。

草笛さん、実年齢は84才!しかしピンと伸びた背筋、明瞭な台詞、軽やかなステップ。そして艶のあるお肌とぱっちりした目がお美しい。本当に女王のような気品と美しさ。それも、役と関係なくただきれいにしているというのではなくて、ちょっと弱った場面ではそういう演技。

そして松岡昌宏、過去のマイケルと比べることはできませんが、ちょっとめんどくさい、ナイーブな、でも心優しい、素敵なマイケル。しかも、ドラマーなのにダンスのキレもあるし、(ネタバレですみませんが)、ドラマーだから(と思い出させる)見事なパーカッションソロを見せてくれたりして。

よくある展開なんですけどね、脚本がよくて、引き込まれていきます。古い作品なのかと思っていたので、見ていくうちに新しいなと思ったんですが、前述のとおり2001年初演だったということで、ゲイやAIDSといったセリフも出てきます。と書くと、またかという感じがしますが、このお芝居ではやはりキーになる部分です。

二人は場面毎に衣装を変え、(リリーのドレスがまたすごくお似合いで素敵)、その間を歌とギター・ピアノの生演奏(大嶋吾郎、栗山梢)でつなぎ、で、笑ったり泣いたり(もうスープの時点でかなりきちゃっていました)、2幕2時間15分があっという間でした。

今日はたまたま本作品の200回公演記念ということで、大きな百合の花束が、リリーである草笛さんに贈られました。素敵な時間をありがとう。

「華氏451度」@KAAT

201810451_2     チケットが手に入る限り行く、の白井晃演出のKAATの舞台「華氏451度」です。まったく予備知識なく、行きの電車で(そうはいっても平日のKAATはきつい)チラシを見て、レイ・ブラッドベリ原作、長塚圭史上演脚本、主演吉沢悠というのを知りました。SFは読まないので、萩尾望都センセの漫画になってなければ知らないお話。

未来社会では、本を読んで隣人が得ていない知識を得ることは悪とされ、ファイヤマンがとんできて、華氏451度(232℃)で本を焼きます。主人公ガイ・モンターグ(吉沢悠)はファイヤマンでしたが、ある日隣に住む少女クラリス(美波)に会い、現場から拾った本を読み始めます。バーチャル映像にのめりこんでいる妻ミリー(美波)は夫を止めます。彼の行動は上司ビーティ(吹越満)の知るところとなり、現状に疑問を持ちながら行動に起こせなかった大学教授フェイバー(堀部圭亮)はガイに協力し…。

前4列をつぶしたグレーの舞台の周りを巨大な本棚が取り巻き(「美女と野獣」のお城の図書室みたいな)、照明と映像、さらに音響が効果的に使われたスタイリッシュな空間で、寓話的な未来社会が描かれます。膨大な台詞は言葉としては明瞭ですが浅薄ではなく、観客は意味を追いながら、ガイの運命を見つめることになります。

吉沢悠といえば、ドラマ「動物のお医者さん」の公輝、「仁」の歌舞伎役者も印象的でしたが、舞台では初見。精悍な顔が小さくて、特殊部隊風の衣装が似合って超かっこいいんですよ。美波も不思議な雰囲気。吹越満、堀部圭亮のお二人はさすが。本を愛する品のある老女草村礼子を含め、キャストが皆さん明瞭な台詞と隙のない動きで、見事でした。妥協のないキャスティングっていいなあ。

さらに、終演後、長塚さんと白井さんのトークショーがあったんですよ。白井さんが本作の企画を話していた場にいあわせて、やらせてほしいと言ったという長塚さんは、以前この作品の上演を検討していたことがあったんだそうです。白井さんが演出ということで、あえてト書きをあまり書き込まず、彼に委ねたという長塚さん。白井さんも悩みながら、意地でも長塚さんにあまり細かく聞かなかったそうです。

俳優としても活躍するお二人、たたずまいもかっこいいし、言葉も明瞭で、お互いをリスペクトしていて素敵。しかも話題が見たばかりの意欲作ってもう至福でした。

とにかく舞台が見やすくて、どうだKAATだ、という感じ。舞台美術 木津潤平、照明 大石真一郎、音響 徳久礼子、映像 宮永亮、栗山聡之、とメモしておこうっと。

(追記)

Twitterで知ったんですが、この作品では、客席の勾配をきつくして2階につなげるということをしていたみたいです。確かに3階なかったもん。

花道作ったり、舞台スペース広げたり(「マハゴニー市の興亡」はそのパターンですね)、すごい劇場。そしてよくぞ白井晃を芸術監督に連れてきた。えらい。

« 2018年9月 | トップページ | 2018年11月 »