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2018年6月

ドラマ「ブラックペアン」

201806     TBS日曜劇場「ブラックペアン」は今日最終回でした。ニノのドラマはほとんどハズレがないし、なんたって猿之助がレギュラーで出る、久々に内野聖陽も、ってことで初回からきっちり毎週見ましたよ。

外科医渡海(二宮和也)は露悪的な天才外科医。さすが雰囲気つかむのうまいのと、芝居にメリハリがきいてて、よかったです。

初回、第2回と手術シーンに驚かされて、しかしその後は失敗手術にニノが出てきて鮮やかにフォローして患者を助けるという、ワンパターン(患者や家族のキャスティングがバラエティに富んでいて面白かったですが)。ブラックペアンの秘密解明はなかなか進まないし、佐伯教授(内野聖陽)もさほど出番ないし、むしろ一生懸命な研修医世良くん(竹内涼真)と、意外といい人で、教授たちからあれこれ無理言われて眉間にシワを寄せる高階先生(小泉孝太郎)の方が主役みたい。

しかし、やや強引ながら、最終回、全ての謎を解明してくれて、すっきりしました。「ブラックペアン」ってそういう意味だったのかあ。原作読んでいた人は全てわかっていたんですか?読んでなくてよかったです、面白かった。

それにニノが、最終回にいろいろな表情を見せてくれて、ちゃんと主役としてドラマを引っ張っていたのがよかったです。比べては申し訳ないですが、部屋でうろうろするばかりで、最後は浅野忠信に持っていかれた「A LIFE」よりはずっとよかったですね。

いや、2回見たら、さすが内野聖陽は迫力ありましたね。セリフの重みがちがうし、ちらっとでしたがアフリカのワイルドな佐伯教授もかっこよかったです。こう持ってきたくて、これまで抑えめだったのか。

最後までいいところのなかった黒崎教授の橋本さとし。ほんとにミュージカルで主役やってる人?そしてあのステージアラウンド第2弾のメタルマクベスに出る橋本さとしだよね?(いや、間違えるとしたら橋本じゅんだからちがうし)。変貌ぶりが楽しみです。

ところで、わが西崎教授(猿之助)、わかりやすく傲慢で、「実は」的なところのない敵役。自らカエサルを操作する回では、秀才のプライドとか、頭のいい人が失敗しておろおろする感じがリアルで、客観的にはみっともなくてなかなか見ものでした。しかしなあ、私が歌舞伎をみたことのない「ワンピース」ファンだったら、こんなイヤミなおじさんがやるルフィなんて誰が見るもんか、って思いますね。

六月大歌舞伎「夏祭浪花鑑」「巷談宵宮雨」

2018062        六月大歌舞伎夜の部です。1つ目は「夏祭浪花鑑」、鳥居前、三婦内、長町裏)。わりとよくかかる演目のようですが、「夏姿女団七」は見ているんですが初めてでした。

団七九郎兵衛(吉右衛門)は、牢屋から解放され、女房お梶(菊之助)、息子市松(寺嶋和史)と会って喜びあいます。牢人の扮装が、「石切梶原」とかに出てくるあのユーモラスなあれで、吉右衛門さんがここれをやるのがまず見もの。そして、かわいい婿と孫に好々爺の顔を見せるのも、じゅふたんが、はりまやの着物を着ている(播磨屋の揚羽蝶の紋が首抜きに描かれた浴衣、裾にははの字も見えます)。音羽屋の御曹司じゅふたんがこれを着ているのはとっても貴重、というのを、歌舞伎通の友人に教えてもらってうれしい私。

団七の古い友人釣船三婦(さぶ、歌六)は、団七の主筋の礒之丞(種之助)と琴浦(米吉)を助け、一寸徳兵衛(錦之助)と団七は義兄弟の契りを交わします。

磯之丞と琴浦をかくまった三婦の家。三婦の女房おつぎ(東蔵)は、磯之丞を徳兵衛の妻お辰(雀右衛門)に預け、備中に逃がそうとしますが、三婦は「こんな美人と」と反対します。鉄火なお辰は、そんなことで一度頼まれたことをなしにするとは、と、自分の顔に焼き印を付けます(きゃあ)。

お梶の父義平次(橘三郎)は琴浦を売り飛ばそうと騙して連れ出します。団七は追いついて義平次ともみあった挙句、殺してしまうのでした。

昼の「野晒悟助」同様、夏らしい風俗がすっきりと描かれていて、団七縞(オレンジのギンガムチェック!)の着物もかわいいです。

しかし今、充実の吉右衛門さんでやる必要あったのかな、と思ってしまいました。団七は侠客にまで至らない、市井のちょっと頼りにされるくらいのお兄ちゃんということで、勘三郎の団七縞の写真を見たことがありますが合ってたし、今なら勘九郎で見たいと思いました(海老蔵も何度もやっているようです)。雀右衛門もうまいんですが、きっぷのよさとかキレのよさが足りないし。

何より、殺し場でいきなりでてくる義平次が、貧相で小汚い着物で、とてもあの立派な奥方お梶の父に見えないし、ちょっと金もうけしようとしただけなのに、堂々たる体躯の婿に惨殺されるのがなんだかかわいそう。義平次だけが泥まみれだし。殺しの場面もやや間延びしていて、迫力に欠けるように思いました。

前述の女団七では、殺し場の前に、姑おとら(竹三郎)と嫁お梶(猿之助)の絡みがたっぷりあり、おとらの悪人ぶりとユーモアが際立っていてかわいそうと見えなかったんですよね。お梶は鉄火でお辰のいいところも併せ持ってたし。(ああ、もう一度見たいですが今の竹三郎さんには無理そうで残念)。

2つめは、「巷談宵宮雨(こうだんよいみやのあめ)」。宇野信夫作で、24年ぶりの上演だそうです。

女癖が悪く寺から追放された龍達(芝翫)は、甥の太十(松緑)、おいち(雀右衛門)夫婦のところに転がり込みます。龍達は、寺に埋めてきた百両を太十に取りに行かせますが、分け前については…。

芝翫のクソ坊主ぶりが、扮装も演技も吹っ切れていて最高です。この方、勘三郎との共演作品を思わせるこういう役が一番面白い気がします。そして実質主役の松緑、刹那的な性格、垣間見せる人の良さ、この演目を見る前の幕間で舞台写真を見て、松緑いい表情してるなと思ったんですが、実際大きな目で豊かな表情を見せていて、私史上最もよい松緑でございました。

隣家の女房梅花さんがまた、世話の味の濃いうまさ。そして、太十の昔の遊び仲間で今は鼠取り薬売り勝蔵(橘太郎)。病で体が不自由になり、ようよう薬売りで暮らしをたてているんですが、そのつらい身の上、束の間の太十との邂逅、彼がストーリー上、毒薬を太十に渡すという役回りで出てるということは十分にわかっているのに、ちょっとしたセリフに泣きそうになっちゃって驚きました。型がくっとはまると短い場面で感動を盛り上げてくれるのが、歌舞伎ならではという気がします。

(ところで、太十が決意するいい場面、部屋で立ってたので、3階から顔が丸々見えなくて歯がゆかったです。この芝居は演出がいるんだから(普通はいない)、チェックしてほしかったですよ。花道見えないのは仕方ないにしても!)

まったく知らないお話で、場面転換も軽快で、登場人物の好演もあって、とても楽しく見ていたんですが、最後は怪談!いや、けっこう怖くて面白くてびっくりさせられました。夏に定番になってもおかしくない演目です。ほかの役者はともかく芝翫さんは再演すべきですよ!

時実象一「コピペと捏造」

201806    情報学が専門の時実象一氏による「コピペと捏造」、2016年11月出版と比較的最近の本です。ネット社会における著作権侵害の問題を扱った気楽なペーパーバックかな、と思って手に取ったんですが、そういう本でした。

著者は東大理学部化学科卒、メーカー勤務を経て情報学を専門にするに至ったそうですが、科学の分野での論文捏造などについて調べているうちに(きっかけはSTAP細胞ですかね)、コピペ、剽窃、パクリ、改竄、捏造の実例がたくさん集まったので、まとめてみたとのこと。

小説やノンフィクションの剽窃、ライオン・キングとジャングル大帝レオ、マッド・アマノのパロディ裁判、佐野さんのロゴ登用、佐村河内氏のゴーストライター、村木事件での検察の証拠でっちあげ…と記憶にある事件も多数出てきます。

200ページほどの本で、実例を集めただけ、といった見方もできますが、個々のケースの記述は簡潔とはいえ、これだけ集めてもらうとなかなか面白いです。写真も豊富です。

人間の知的活動は他人のそれの上に乗って発展してきたという面もあり、きちんとした引用がなされていれば、もうちょっと許容されてもよいのでは、といった本音もちょっとすけて見える気がします。とはいっても、著者がウソや盗用を肯定しているわけではありませんが。

ところで印象的だったフレーズは、2chでみつけたというterryさんののツィート。なるほどです。

・バレて困るのがパクリ
・バレると嬉しいのがオマージュ
・バレないと困るのがパロディー

上村以和於「21世紀の歌舞伎俳優たち」

20180621         1998年から99年にかけて、雑誌「演劇界」に連載された、上村以和於さんの歌舞伎役者評を、2000年に1冊の本にまとめた「21世紀の歌舞伎俳優たち」です。

当時歌舞伎公演の中心役者たちを取り上げているので、最年長の冨十郎、藤十郎(当時鴈治郎――混乱するので以下現在の名で書きます)を除けば、50代の、人気・実力を兼ね備えた役者たち。

登場する方々の生年を並べてみましょう。(  )内は、1998年時点の年齢です。今年は20才足せばいいわけです。惜しくも亡くなった方は、アンダーラインを付しました。

1929 冨十郎(69)
1931 藤十郎(67)
1939 猿翁(59)
1942 菊五郎   白鸚(56)
1944 仁左衛門  吉右衛門(54)
1946 團十郎  梅玉(52)
1948 魁春*(50)
1950 玉三郎(48)
1955 勘三郎   時蔵*(43)
1956 三津五郎(42)
1960 福助*(38)
1965 芝翫*(33)

亡くなった方、病を得た方を除き、今でも毎月の興業の中心となっている役者さんばかりで、最近見始めた私にも、たいへん面白く読めました。とくに菊五郎さんから玉三郎さんのあたり、やっぱりこの方たちを見とかなくちゃって正しかったんですね。連載時のその月の舞台評を絡めて書かれているんですが、その芸評は、今でも的確に本質を表現されていると思います。

それと同時に、上村さん自身は1940年生まれと、この方たちを同時代的に見てますから、やはり若い頃の悩みやきらめく才能、歌舞伎以外の活躍と歌舞伎役者としての生き方、等の話は興味深いですし、猿翁さんはスーパー歌舞伎以外の部分に記述が割かれていて、面白かったです。白鸚さんと年齢も近く、仲がよかったんですね。

あれ、この人も書いてるんだ、と思った方は、書籍化に当たって追加した4人(上記*の人)。この中では若い芝翫の項はやや書き振りが違っています。

それにしてもですよ、若くして亡くなったアンダーラインの方々の惜しいこと。團十郎さんのあれ、三津五郎さんのこれ、と、見られなかったことが残念です。とくに三津五郎さんの時代物を絶賛。ご本人も著書で、恋愛ものよりも男のドラマが性に合っているという意味のことを書いていたのを思い出しました。

あまりに誉めすぎる、と苦言もあったようですが、上村さん、誉めちゃいけないところは誉めていない、とキッパリ。今の幸四郎世代についても書いて下さらないかしら。

シネマ歌舞伎「東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖」

201806     去年の納涼歌舞伎第2部の「東海道中膝栗毛 歌舞伎座捕物帖(こびきちょうなぞときばなし)」のシネマ歌舞伎版です。

去年は歌舞伎座で見た1作目はシネマ歌舞伎のみ)ので、感想もまったく同じですが、マイクできっちりセリフを拾っているせいか、各人の見せ場がよりくっきりしています。寿猿さん、竹三郎さんから、金太郎・團子、そしてお弟子さんたちまで、みんな持ち味を生かしてもらってます。

作・演出の猿之助は、その立場と狂言回し的な役割りからか、ショットが多くて満足。本当に気を抜くことなく、盛り上げるのにがんばってます。ふと見せる所作がきれいで、染さんともども華があって楽しいです。二人で無邪気にぴょんぴょんするのはかわいかった!

そしてやっぱり「四の切」絡みの場面は楽しい。巳之助、隼人、そして新悟がそれぞれ四の切の見せ場を持たせてもらって売り出しているのもさすが猿之助、ワンピース歌舞伎の前宣伝だったかも。

高麗屋襲名で一気に美少年ぶりが評判になった金太郎(現染五郎)ですが、若様の衣装がよく似合ってます。しかし、美少年というか美少女ぶりが気になるのは千之助ですよ。どこから見ても、玉さまをかわいくしたような美しさ。

結末は盛り上がると評判だったB。結局Bしか見られませんでしたが、児太郎の快演が再び見られて満足。

ま、歌舞伎を見たことのない人にとって、面白いかどうかはわかりませんが、主な役者がわかって、御曹司が誰かも知っていて、四の切を見たことがあって、さらに猿之助ファンだったらとっても楽しめるご褒美みたいな作品ですね。

今年のの納涼も楽しみです。千穐楽で「名前が変わっても一緒に飛ぶ」と言っていた二人ですからね。

六月大歌舞伎「妹背山婦女庭訓 三笠山御殿」「文屋」「野晒悟助」

2018062    歌舞伎座昼の部です。1つ目は、「妹背山婦女庭訓 三笠山御殿」。2015年の十二月大歌舞伎の通しで見てます。

三笠山御殿の最初の場面は、入鹿(楽善)のところに、鎌足の手紙をを持った鱶七(松緑)がやってくるところ。前回あまり記憶にないのですが、楽善さんが最近見た中ではとてもお元気で、立派でよかったです。鱶七は愛嬌があっていいんですが、とくに、皆が退場した後、くつろぐところがちょっと「矢の根」のような稚気があって面白かったです。

次に入鹿の妹橘姫(新悟)が求女(松也)を追ってやってきます。愛の証を求める求女。新悟が、赤姫の衣装が似合って、きれいでした。

いよいよ時蔵お三輪の登場。時蔵さんが若い町娘って珍しいですが、さすが、「あらすじで読む歌舞伎50選」でも選抜されていた当たり役、おどおどする前半から最後の必死の形相まで、立派なお三輪でした。お三輪をいたぶる女官たちが、息が合ってて、かつ一人一人ちがう意地悪さで面白かった!豆腐屋おむら(芝翫)も、手の所作がきれいなここの大きな人は誰だろう、と思ってたら芝翫。前に見たときは中車で、とうとう女方もと思ったんですが、立ち役からでる役なんですね。

求女実は鎌足の息子淡海のため、鱶七によって命を捨てるお三輪。鱶七も実の姿を現しますが、この装束の松緑がきれいで立派でした。

次は「六歌仙容彩 文屋」公家姿の文屋康秀(菊之助)が、小野小町を求めて女官たちとやりとりします。軽妙で品のある菊之助の軽やかで楽し気な踊り、直前の三笠御殿と同じ装束の女官の面白さ、と見どころたっぷりでした。

そして最後は「酔菩提悟道野晒 野晒悟助」。住吉大社の花見のいざこざを収めた侠客野晒悟助(菊五郎)、同じく侠客の浮世戸平(菊之助)ともめそうになりますが、こちらもうまく収まります。翌日、助けられた扇屋の娘小田井(米吉)が、結婚したいとやってきます。そして直後に、もう一人助けられたお賤(児太郎)もやってきます。しかし悟助は、仁三郎(左團次)と対決することに…。

先月の弁天小僧のためにダイエットしたという菊五郎さん、顔の輪郭がすっきりして、ほんとに往年の美貌をとりもどした感。赤い襦袢に、白で野晒の髑髏を描いた着物をすっきり着こなしたいい男。菊之助も白ではないですが、すっきりした夏向きの着物で、二人並んだところはわくわくしました。

菊五郎さん、仁三郎の手下にいたぶられてじっと耐えるところも見ものです。

そして最後の立ち回り。さすが音羽屋、「音羽屋」と書いた傘を使った見事な立ち回りで。見ごたえがありました。

昼の部は開演から約5時間、野晒悟助の爽快ですっきりした味が、梅雨空を一蹴するような痛快さ、涼しさで、ほんとに楽しかったです。

花形新派公演「黒蜥蜴」@三越劇場

201806      歌舞伎から新派にうつった喜多村禄郎河合雪之丞中心の「黒蜥蜴」、昨年見損ねて残念に思っていたら、今年早くも再演ということで、唯一の夜公演を見てまいりました。2度目の三越劇場です。御大の水谷八重子と波乃久里子が出ないので花形っていうんですかね。

黒蜥蜴というコンテンツが好きなんですよね。子どもの頃読んだ明智小五郎シリーズでもいちばんいい出来だと思っていましたし、記憶はさだかではないですが、ドラマで見た気もするし。で、数年前に伝説の美輪明宏さんの「黒蜥蜴」をようやくみて、三島由紀夫の脚本と美輪さんはいいけど芝居としてはなんだかな、と感じていたものですから、雪之丞の黒蜥蜴、楽しみにしていました。

レトロな三越劇場に、戦前のレトロモダンな世界が広がります。幕開けから今井清隆の警部の美声の歌。あれ、三島由紀夫脚本のじゃないんだ、とちょっと驚きました(新派の齋藤雅文さんの脚本)。しかし、宝石と美を求める黒蜥蜴と明智小五郎の関係、若く美しい早苗の誘拐、黒蜥蜴のコレクション、といったあらすじは、原作に沿っているので同じです。

とにかく雪之丞がゴージャス。着物でも洋装でも、堂々としたたたずまい、目の配り、ちょっとした動きと、全身黒蜥蜴そのもの。女方のからっとした色気がまたよくて、これまで数少ないがながら見てきた雪之丞最高の当たり役に見えました。これをやれただけで、新派に行ってよかったですよ。この方、もともと自分の美しさに酔ってる風があって、歌舞伎の女方にしてはちょっと濃すぎる感じがしてたんですよね。

喜多村禄郎の明智小五郎、長身、軽い身のこなしと台詞回し、派手なアクション、と大活躍。見得もあったりして、「緑屋!という謎の大向こうまでかかっていました。

今井警部は外見も声もよく、コミカルな味もあって、とてもよかったし、劇団EXILEの秋山真太郎も、顔の小ささが今風の青年でよかったです。令嬢早苗役は松也の妹春本由香。古風なルックスや台詞回しが、華やかな着物に似合ってて、。声もいいし、この道でがんばってほしいな、と思いました。

その他の脇の方、手堅くうまいし、立ち回りシーンもたっぷりあって飽きさせないように工夫しています。しかし徐々に明智と黒蜥蜴の恋が深まるところもうまく描いていて、最後まで面白く見ました。意外なラストシーンの背景、おお、こうきたか、と、見事にはまっていた演者の方々に拍手。この場は、独特の三越劇場の壁をうまく舞台に取り入れていて、秀逸でした。

アンコール後は、通路を役者さんがはけていって、全員が出口でお客様をお見送り。三越の6階特選売り場の美術品を背景にした黒蜥蜴、似合ってました。

「モーツァルト!」@帝国劇場

201806      「エリザベート」の作者、クンツェ&リーヴァイの人気ミュージカル「モーツァルト!」です。ウィーンの初演は1999年、日本では2002年の初演以来、何度も上演されている作品ですが、私は今回が初見でした。

才能には恵まれているものの享楽的なウォルフガング・モーツァルト(古川雄大)は、彼を支配しようとする父レオポルド(市村正親)と常にぶつかっています。父と、ウォルフガングの才能を独占したがるコロレド大司教(山口祐一郎)から逃れて、男爵夫人(涼風真世)とウィーンに出たウォルフガング、コンスタンツェ(木下晴香)と結婚し、シカネーダー(遠山裕介)と作ったオペラが成功したウォルフガング、しかし…。

舞台装置が、グランドピアノを模してあったりして、すっきりしかも立体的でいい感じ。衣装は全体的にクラシックですが、ウォルフガングだけデニムはいてたり、現代の雰囲気をちょっと入れていてなるほど、と思います。古川くんすらっとしてるので似合ってました。彼、松田翔太に似てる。ダンスもうまいそうですが、これという見せ場はなくて残念でした。

モーツァルトは山崎育三郎と古川雄大のWキャスト。長身ながら少年ぽい古川くん、このモーツァルトには合ってたような気がします。木下晴香は初めて見ますが、19才とは思えない落ち着いた演技と歌唱力で、これから楽しみだなと思いました。涼風真世はいつもながらの安定感。コンスタンツェの母阿知波悟美もテナルディエ夫人風の欲深ママを熱演。好みだったのはシカネーダーの遠山裕介。さほど見せ場はないながら、野心がきらめく目がステキ。必要ないのに魔笛やったりして、この人がいてよかった。

若くして亡くなった天才モーツァルトって、ほんとにキラーコンテンツ、設定に説明が不要なのは強みですが、他のモーツァルトものと比較しちゃうのが難点ですね。基準がもう「アマデウス」になっちゃうんですよね。

初見のせいか、ドラマの味は薄めな気がしました。ひとつは、ウォルフガングの敵が(敵じゃないけど)父とコロレド大司教の二人だってことですよね。市村さん、ふだんあんなに濃いプリンシパルなのに、大司教が強烈すぎて(出番も多く)、やや印象が薄いです。その大司教、長身で堂々としたたたずまい、似合ったヘアメイクでこれまで見た中でもかっこいいととしか言いようがないのはいいんですが、歌はやはり独特すぎる。あれ、市村さんも似たような歌い方してるよ。アンサンブルはあんなにメロディアスでとってもよかったのに。

それから、あの加藤清史郎君の弟、憲史郎くんが、ウォルフガングの才能を体現する神童「アマデ」で、ウォルフガングの出演場面ほぼすべてに出ずっぱりで、細かい作曲等の演技をしています(さすが兄譲りというかうまい)。冒頭以外セリフなし、なんですが、何だか見ていてかわいそうな感じがしました。子役とはいえ、プロとして舞台に立っているんですから、そう思うのは失礼だとは思いますが、ほんとにこの役 必要ですかね?こういうのを演技と歌で見せてこそミュージカルなのでは?ああ、そういえば「エリザベート」でも死のダンサーとかいたっけ。すいません、好みの問題です。

歌舞伎鑑賞教室「連獅子」@国立劇場

201806       6月の歌舞伎鑑賞教室「連獅子」です。

前段の「歌舞伎のみかた」巳之助。ワンピース歌舞伎や、NARUTO歌舞伎の金髪ばかり見ていたので、黒髪の2ブロック、グリーン系の着物、袴をきりっと着てすっと立つ姿が新鮮。主役としてのオーラがあって、役者ぶりが上がったなあと感心しました。

毎回いろいろ工夫してくれてるのですが、今回は、お客さんの希望者2名に、舞台上で歌舞伎の所作、すり足や見得、扇子遣いを教えるという趣向。男性お二人が一生懸命でほほえましく、みっくんの見得も見られてよかったです。これが通常回は、引率された中高生ばかりですから、仲間が舞台で何やらやらされていると、寝る子も少なかったことでしょう。

お客さんがすり足で花道を帰った後は、みっくんの「連獅子」についての詳しい解説を聞いて、休憩となりました。

さて、又五郎、歌昇親子の「連獅子」。実はこの有名な「連獅子」そのものは舞台で見たことがなく、シネマ歌舞伎「連獅子」 で、勘三郎親子のを見ただけです。やっぱりその時は、前半の狂言師のくだりがところどころ飛んでいたようで、今回、あらすじをしっかり聞いたうえで長唄の字幕が左右に出るので、ほんとによくわかりました(義太夫はだいぶわかるけど、長唄の歌詞ってあんまりちゃんと聞けてないんです)。子獅子が崖から突き落とされて駆け上るところなど、おもしろいんですね。

間狂言は、隼人福之助。声も小さく(1部のみっくんと比較すると)、舞台がスカスカして見えるのは、こういうものなのでやむをえないですが、がんばってほしいですね。

最後は獅子の毛振り!歌昇の隈取美しい!親子の揃った毛振りに大拍手で、やっぱり盛り上がります。最後の子獅子の見得が若々しいエネルギーに溢れていて、よかった!国立劇場、3階からも花道がよく見えて、テンション上がりました!

「ミュージカル・ミーツ・シンフォニー2018」@オーチャードホール

201806mms     久しぶりのミュージカルコンサート、「ミュージカル・ミーツ・シンフォニー2018」です。出演は、ノーム・ルイス、ジョン・オーウェン・ジョーンズ(JOJ)、柿澤勇人、春野寿美礼、宮澤エマ、オーケストラは読売日本交響楽団です。

「ミス・サイゴン」、「ジキル&ハイド」のほか、カッキーが出演予定の「シティ・オブ・エンジェルス」の曲をノームと歌ったり、「紳士のための愛と殺人の手引き」や「メリリー・ウィ・アー・オールアロング」、「フランケンシュタイン」等。

しかし圧巻は、JOJの「オペラ座の怪人」のナンバー、ノームの「ラブ・ネバー・ダイ」、最後の「レ・ミゼラブル」。JOJの声はファントム、ジャン・バルジャンにぴったりの迫力ですし、ノームのジャベール「星よ」はもう、持ち歌認定していいくらい、ステージに星空が見えました(!) これだけで、チケット代の元はとった!

日本勢もがんばってまして、カッキーは、シティ・オブ・エンジェルスのナンバーはちょっと英語に必死でリズムが悪かったですが、明るい高音がきれい、宮澤エマも後半は落ち着いてとくに中低音がきれいでした。春野寿美礼は、私たぶん初見なんですが、堂々とファントムのクリスティーヌ、「エリザベート」の「私だけに」を歌ってくれました。

ミュージカルナンバーを実力あるスターで、しかもオーケストラの伴奏で、というのはほんとに素敵で聞きごたえあるんですが、ちょっとね、希望言ってもいいですか。

ファントムとレミゼは、聞きなれているし、名曲も多いし、もう盛り上がって大好きなんですよ。とくにファントムは日本では四季でしか見られないし、レミゼはオーディション主義はいいんだけどなんかキャストに華がないし。これらは、歌舞伎でいったら仮名手本忠臣蔵みたいに、ミュージカル俳優はいつでもできなきゃいけない演目なんだなって思いました(たとえとしてわかりにくいか)。

でも、ほかの選曲がいつも謎。殆ど上演されていないとか、キャストの出演作だけど地味な作品の曲はどうなのって思いますし、あまり知られていない作品なら、ショーストッピングナンバーを聞きたいものです。もっとMCも工夫して、曲の背景とかもさらっと紹介してくれたらいいのに。

せっかくうまい人が出るんだから、デュエットが聞きたいんですが、ショーの回数が少ないせいか、あんまり融合していなくて、キャストがバラバラな感じがしました。「アイ・ラブ・ミュージカルズ」はそのあたりがうまくできていたと思います。

日本人だから謙虚なのもわかるんですが、でも、もっともっと堂々と観客にアピールしてください。いつも見てる大好きな人たちだから。

オーチャードホール、幅が広過ぎなくて、後方でもみやすいいい劇場でした。国際フォーラムよりいいかも。

せっかくなので、会場で表示されてたセットリスト記録しておきます。上記の言いたいことがわかると思います。

Overture-Bui-Doi (ミス・サイゴン)
Take Me As I am (ジキル&ハイド)
パレードに雨を降らさないで (ファニー・ガール)
You’re Nothing Without Me (シティ・オブ・エンジェルス)
私が生きてこなかった人生 (シスター・アクト)
This is the Moment (ジキル&ハイド)
ゲームの始まり (デス・ノート)
Journey to the Past (アナスタシア)
All I Ask of the Night, Music of the Night (オペラ座の怪人)
Till I Hear You Sing (ラブ・ネバー・ダイ)

休憩 

I am the Starlight (スターライト・エクスプレス)
Chine Doll (マルグリッド)
馬鹿げた夢、裏を表に (紳士のための愛と殺人の手引き)
Wishing You were Somehow Here Again (オペラ座の怪人)
Not A Day Goes By (メリリー・ウィ・オール・アロング)
私だけに (エリザベート)
後悔 (フランケンシュタイン)
Stars 星よ、Bring Him Home (レ・ミゼラブル)

アンコール

The Confrontation 、Do You Here the People Sing? (レ・ミゼラブル)

「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」@赤坂ACTシアター

201806woy    去年宝塚を退団した早霧せいなの初主演ミュージカル、「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」です。久しぶりのACTシアター。

ブロードウェイ版は、1942年のキャサリン・ヘップバーン主演の同名映画を基に、1981年にローレン・バコール主演で初演され、トニー賞も脚本賞、主演女優賞ほか4部門受賞のヒット作です。ローレン・バコールって、往年の映画女優じゃなかったっけ、と思ったら、やっぱり1924年生まれの、マリリン・モンローと同世代の人ですよ。当時57才ですから、映画のキャサリン31才とはだいぶイメージが違う大ベテランのキャリア・ウーマンだったんですね。

お話は、人気TVキャスターのテス・ハーディング(早霧せいな)の、ウーマン・オブ・ザ・イヤーの表彰式から始まります。彼女は8カ月前に、風刺漫画家のサム・グレッグ(相葉裕樹)と結婚したのですが、もう結婚生活は行き詰っています。出会いの頃を振り返ると…と、1幕は、TVで漫画を批判したテスが、自分を皮肉ったキャラを漫画に登場させたサムに抗議にきて、恋に落ちるまで。しかし結婚後も仕事に忙しいテスとサムの間は次第にぎくしゃくしてきて…。

仕事に生きるバリキャリ女性の、仕事と恋の両立という、よくある話ではあるのですが、丁寧にシーンを重ねているのと、脇役キャラやアンサンブルがよく描けているので、とっても面白かったです。1981年の作品らしく、テスの取材相手が昔の大物で、若い人にはピンとこないかもですが、私はいちいちウケてました。展開も違和感なく、この頃から向こうはちゃんとわかってるじゃん、という感じ。

早霧せいな、宝塚時代はアニメ原作の再現力が評判でしたが、宝塚時代には、「ベルサイユのばら」のオスカルで見てるようですね。退団直後とあって、まだセリフに男役が残っていますが、キレのいい動き、コメディシーンの吹っ切れ方、細身のスタイルにメリハリのきいた衣装がよく似合ってすてきでした。

相葉裕樹、初めてですが、長身のイケメン、明るい歌声もステキ。しかし私の好みはテスの秘書ジェラルドの今井朋彦。彼が出てるの知らなかったんですが、袖から出てくる横顔を見てすぐわかってびっくり。さすが、ちょっとしたセリフや動きが細かくて、テスのキャラクターを浮かび上がらせるいい芝居していました。

ゲイの司会者仲間チップ(原田優一)もおもしろかったですし、メイドのヘルガ(春風ひとみ)、テスの元夫の妻樹里咲穂もかわいく、テスとのデュエットもよかった。サムの漫画家仲間のシーンもよくできていました。

そして、テスがとくに気にかけているロシアのバレエダンサーアレクセイ(宮尾俊太郎ーバシリニコフをほうふつとします)のバレエシーンはサービスタイムという感じで、盛り上がりでした。

セットのオブジェが、抽象画みたいなんですが、そこにサムの漫画のキャラクターがうまく投影されたりして、その技術はオリジナルにはなかったんだろうな、と思いました。

ということで、いい作品なんですが、週末マチネなのに2階はけっこう空席がありました。早霧ファンを除けば、集客力があるキャストが少ないのかな。すごくよかったですよ!

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