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コクーン歌舞伎「切られの与三」

201805    七之助が立ち役というので話題のコクーン歌舞伎「切られの与三」です。いや、七之助、二枚目はけっこうやってますよ。義経とか「土蜘」の頼光とか「沓手鳥孤城落月」の秀頼とか。

さて、切られの与三(与話情浮名横櫛)、お富と再会した与三郎が「いやさお富!」と名セリフをきかせる、仁左衛門さんの当たり役として有名ですが、見たことがなかったので、楽しみにしていました。

与三郎(七之助)は、大店のボンボンで、色里でも人気者ですが、放蕩が過ぎて木更津の親戚のところに行きます。そこで出会った任侠の妾で元深川芸者のお富(梅枝)、二人は一目で恋に落ちますが、密会がばれて与三郎は体中切られ、蝋を垂らされ、お富は海に身を投げます。一命をとりとめた与三郎は、蝙蝠安(笹野高史)と傷だらけの顔を使ってゆすりをします。お富は海で助けてくれた多左衛門(扇雀)に養われており、その家にゆすりのために押し入った与三郎はお富にタンカを切ります…。

七之助、最初は女方の声に聞こえるというTwitterの感想はその通りだなと思ったんですが、見るうちに、かわいい、頼りない、運命に翻弄される若者そのもの。せっかく多左衛門(実はお富の兄)に金をもらってお富と夫婦になっても、二人で浪費して行き詰るのが情けない。しかし、実家のじいや(笹野)の愛情もうなずける愛すべき男です。見得の形もきれいだし、客席を走り回るところは、ああ、なんてかっこいい、とうっとりしてしまいました。しかも声の力強いこと。一方で、笹野爺やのところに戻ってほっとしてしがみつく与三郎の形がきれいで、さすが女方としてのキャリアを感じました。

お富の梅枝、最近、どんな大役もきちっと演じている彼らしく、見染めに始まり、いろんな男を渡り歩きながらも与三郎を愛するいい女。「とどめを刺しな」の悪女ぶりもいいです。いや、ほんとに七之助とがっぷり組んで、舞台を盛り上げたのには、うまいなと改めて思いました。

扇雀さんも、おっとりとした商人がはまっています。女方はなかったんですが、いずれの役もよかったです。

音楽はジャズ系のピアノ、ウッドベースを中心とした生演奏、登場人物が裃を付けて語りを兼ねる、ストップモーション、白木の動く簡易なセット、と、演出上はいろいろな工夫はあるんですが、芯のところは、与三郎お富の、運命的な、繰り返し出会う恋人たちの物語です。歌舞伎というより、洋画にありそうな物語(ぴったりの作品が思い浮かばないですが、「フォレスト・ガンプ」のフォレストとジェニーのような)。歌舞伎では、見染めと源氏店(いやさお富)の場しか出ないそうなので、これだけ長い物語を演じる意味はあったと思いました。

歌舞伎として見に行った人には、いろいろ違和感があると思いますが、よくできたストレートプレイを、歌舞伎役者は歌舞伎の型でその魅力を殺さずに演じたって感じでしょうか。

「演劇界」6月号に、七之助と梅枝の対談が載っています。、「型としては完成された切られ与三郎(これまでお富を演じる時に、そんなに深く考えてやっていなかった)をコクーン歌舞伎でやるときに、いかにお互いの気持ちをリアルに込めるか」、といった話をしているんですが、その意図はぴったりで感心しました。こういうこと語らせたら七之助、なかなか腑に落ちる説明をしてくれます。この対談の、黒縁眼鏡がまたかっこいい!

二人とも、「マハーバーラタ戦記」「桜の森の満開の下」に出ているので、そのときの話もちょっとありました。「マハーバーラタ」は、2週間の稽古で仕上げたそうですが、さすがの七之助も「この分厚い台本で!」と、菊五郎劇団のパワーにびっくりしたそうです。

(余談ですが、演劇界には夢枕獏のエッセイ・萩尾望都挿絵という連載があるんですが、今月の話題は「宝塚ポーの一族」ですよ!)

出演はほかに、亀蔵、歌女之丞、萬太郎、鶴松。亀蔵はもちろん、萬太郎も大活躍でした。

おまけ。ロビーには所せましと、グッズや歌舞伎関連本を売ってたんですが、隅に「茂助だんご」。幕間にいただいた上新粉の柏餅、たいへん美味でした。築地の有名なお団子屋さんだったんですね。幕間でこういうの、すっごくうれしいです。

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