2019年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

« 映画「リメンバー・ミー(COCO)」「アナと雪の女王 家族の思い出」 | トップページ | 「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」@大阪松竹座 »

近藤史恵 歌舞伎シリーズ「ねむりねずみ」「散りしかたみに」「桜姫」「二人道成寺」「胡蝶殺し」

201804kondou2    近藤史恵さんの、歌舞伎役者が登場するミステリー「二人道成寺」が面白い、ときいて、この本を始め作者の歌舞伎シリーズ5冊を続けて読みました。

4冊目までは、30代の名題下女方役者瀬川小菊と、彼の大学時代の同級生で探偵の今泉、助手の山本君が歌舞伎界で起こった事件を解決するミステリー。小菊の師匠は、もうすぐ人間国宝の名女方瀬川菊花。

(以下、ネタバレなしです。最後の謎解きが面白いので)

最初は1994年のねむりねずみ。作者の第二作です。憑依型の女方銀弥が言葉をわすれていくのに戸惑う妻一子、相手役の二枚目岩井半四郎の婚約者の死の謎を追う今泉とワトソン役の小菊。登場人物の独白と小菊の場面が交互に展開して、思わぬ方向に進んでいき、どうなるのかと思えば意外な真実が今泉によって語られる、という、その後も続く展開です。

歌舞伎界というのがうまい設定だと思うのが、全体が大きな一族のようなものなので、今泉が解き明かした謎は、そのまま守られるんですよね。殺人犯が逃げおおせるといった倫理観に反する展開ではないですが、世間の好奇心を煽るよりは、そっとしておいてあげようというのがよくわかります。

201804kondou1次は1998年の「散りしかたみに」。本朝廿十四孝の八重垣姫を演じる菊花丈は、毎日同じところで降る花びらが気になって、探偵今泉に謎解きを頼みます。濡衣の紫之助、勝頼はその息子伊織。伊織は何者かに襲われ、顔に深い傷を負ってから、ふてぶてしさと艶めかしさを得た立ち役になったと評判。滝夜叉姫のような着物の美女虹子の謎は…。

手法に自信を持った作者が、前作よりもより自在に個性的な登場人物を操ります。紫之助の弟子紫のや、小菊の養成所の後輩織二等の雰囲気もよく書けていて、面白いです。

201804kondou3

3冊目は2002年の「桜姫」。父である歌舞伎役者朔二郎と疎遠の娘笙子は、亡くなった兄音也の友達だったという名題下の役者銀京と、兄の死の謎を追います。銀京は華と野心のある男で、笙子の従兄弟音也は彼に近づくなといいます。小菊は、大部屋役者の勉強会で「桜姫東文章」(見たことないんですが見たい!)の長浦で出ますが、その桜姫が銀京でした…。

これも真相は意外な展開です。

 

201804kondou44冊目は2004年の「二人道成寺」。御曹司の芙蓉と、脇役の家から出て人気の国蔵は、仲が悪いと言われていますが、二人とも「摂州合邦辻」の玉手御前を、菊花に習いに来ます。芙蓉のおっとりとしたお嬢さんの妻美咲、芙蓉の女性番頭実(みのり)は、美咲の危うさを懸念していましたがある日…。

この本を最初に読んで、面白いと思いました。大物役者に習いにくる二人の対照的な姿。「僕らの歌舞伎」や猿之助の本から、大先輩に習いにいく若い役者の様子がうかがわれますが、短い時間に必死に習うんだろうな、と思います(猿之助は、玉手御前を藤十郎さんに、金閣寺の雪姫を先代雀右衛門に習ったそうです)。

作者は登場する歌舞伎役者に、モデルはいないと言っていますが、誰を思い浮かべたら近いのか、ずっと考え続けて、読み終えた今、やっと、菊花と小菊は、秀太郎さんとりき彌さんかな、と思い当たりました。政岡や八重垣姫など立女形の大役をやる方というのはちょっと違うかもですが、お年に合わぬかわいらしさと好奇心、弟子への優しさがぴったり。小菊も、「かぶき手帖」で白黒写真で載っている感じで、愛嬌のあるりき彌さんではと。筋書のことを番付という、関西人の作者らしいチョイスではないかしら。

ほかの登場人物も、七之助や、松也、菊之助、松緑等、見目麗しい系の役者さんを思い浮かべながら読みました。このシリーズは前に出てきた役者が脇役で出てきたりしてスターシステムなんですが、このパラレルワールド、なかなか役者がそろっていて、ぜひ見に行きたい世界です。

201804kondou5_2   そして今日読んだのが、2014年の「胡蝶殺し」。 

ミステリーではなく、殺人は起きません!

急逝した役者の7歳の息子秋司を後見人として預かることになった萩太郎には、同学年の俊介がいます。秋司は幼いながら踊りの才能は明らか、それに比べ俊介は興味のあることにしか集中できず、歌舞伎は好きそうではありません。二人は「重の井子別れ」(これも見てないんです。見たい!)で三吉と調姫を演じることになりますが…。

秋司を歌舞伎役者として育てることに悲痛なまでの母由香里と、秋司と俊介を比較してさまざまに悩む萩太郎。

この萩太郎の心理や役者の子どもの様子、踊りのお稽古や台詞覚えなど、さまざまな場面が以前の作品より、格段に細やかにリアルに描かれています。、作者の成長と細かい取材の成果を感じられて一番面白かったです。俊介君のような子ども好きだし。

ということで、歌舞伎役者、歌舞伎の演目が出てくるだけでうれしいうえ、作者の歌舞伎愛がいかんなく発揮されている5冊でした。とはいえ、出てくる主要な作品でちゃんと見ているのは「伽羅先代萩」と「伊勢音頭」くらい。まだまだニワカで初心者でどうしようもないですな。

« 映画「リメンバー・ミー(COCO)」「アナと雪の女王 家族の思い出」 | トップページ | 「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」@大阪松竹座 »

歌舞伎」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

歌舞伎の本」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 映画「リメンバー・ミー(COCO)」「アナと雪の女王 家族の思い出」 | トップページ | 「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」@大阪松竹座 »