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「ファン・ホーム」@シアタークリエ

201802funhome      ミュージカル「ファン・ホーム」です。原作は、アメリカの漫画家アリソン・べクダルによる自伝的コミック。ブロードウェイ版は2015年4月に開幕、2016年9月にクローズ。出演者は大人6人、子ども3人のみのオフ・ブロードウエイ的な小品ですが、2015年のトニー賞では、作品賞、主演男優賞(ブルース役)、助演女優賞(ヘレン役)を受賞しています。日本初演の今回は気鋭の演出家小川絵梨子による演出。

アリソン(瀬奈じゅん)は43才のレズビアンの漫画家、父ブルース(吉原光夫)は、熱心な国語の高校教師で、家業の葬儀屋(Funeral Home これがFun Homeというタイトルの由来。もちろん「楽しい家庭」をかけているんでしょう)、自宅の改造に熱心です。しかしよき父に見えたブルースはゲイで、常に恋人(上口耕平)がいました。そして大学生になって家を離れたアリスン(大原櫻子)がカミングアウトした直後、ブルースはトラックの前に身を投げて亡くなります。

大人アリソンは、舞台に出ずっぱり。その前で子どもアリソン(龍杏美)と弟たち(かわいい)、母ヘレン(紺野まひる―ブルースの恋人のことを知っていて苦悩しています)、若いアリソンの場面が交互に現れ、徐々にアリソンと父との関係が明らかになっていきます。

LGBTを扱ったミュージカルとしても話題でしたが、それだけではないというか、普通とちょっとちがう自分を認識することはどんな人にもあることですし、親とか夫婦の関係にはいろいろな問題があるものだし。たまたまLGBTが重要なテーマではありますが、何か特殊なものを扱った異色作、というふうにとらえるべきものではないなと思いました。

それにしても、ブロードウェイのミュージカルでは、ずっと以前からゲイやレズビアンが大活躍、単にその役の属性としてゲイというだけの場合も多いし(「RENT」や「プロデューサーズ」など)、そうであることと葛藤したり、折り合いに悩む作品もあります(「ラ・カージュ・オ・フォール」とか「ZANNA」とか)。1947年初演の「欲望という名の電車」でも、ブランチの夫は男性の恋人と心中しています。それなのに今さら、LGBTがテーマなんて、とちらっと思ったのは事実です。

ただ、この作品では、カミングアウトが大きなテーマになっていて、自分の本来の嗜好(といっていいのか)を向き合うこと、それを家族に打ち明けることが、現代でもアメリカでは重い問題なんだな、と思いました。そこはあいまいではっきり言わないことを是とする日本文化とは違うのかも。偏見を持つ人も多いけれど、意識的にというよりも感性的に許容(許容というのはたいへん失礼な言い方だと思いますが、偏見の対義語という意味で使っています)している人が多いのではという気がします。

ジニーン・デソーリ(映画音楽でも活躍している方のようです)の曲はドラマチックで、主要キャストに長い聞かせる曲を用意しています。吉原光夫は、甘く豊かな歌声、長身にセクシーさもあって、ブルース役を本当に的確に演じていました。アリソンとしては、若きアリソンの大原櫻子、小柄で本当に普通の女の子なんですが、のびやかな力強い歌声、とても心に届くセリフと、素晴らしくって感動でした。クレジットは瀬奈じゅんが先ですけど、トニー賞も主演女優賞はこの若いアリソンが受賞してまして、彼女が舞台を引っ張っている感じがしました。アリソンをレズビアンに目覚めさせるのがジョーン(横田美紀)、彼女もとってもよかったです。

ただ、本当はもうちょっと大人アリソンと若アリソン、子どもアリソンに似たところがあれば、と思いました。制作者の意図かもしれませんが、20才と40才ってもっと近いと思うんですよね。子どもアリソン、歌と演技はすばらしかったですが、あんな子ども向けミュージカルみたいな笑顔で歌わせない方がよかったな。

この日はアフタートークショー付き。上口くん、大原さん、紺野さんの3人の予定が、最後のトークショーだからと、大人キャストが全員登場。吉原さんの、「わかりやすいことが求められる今だが、わからないけど感動した、という舞台を味わってほしい」とか、アメリカだとウケるポイント(鍵の束はレズの象徴だとか)とか、子役ちゃんのちがいとか、好きなセリフとか、瀬奈さんのキャストの進歩を目の前で見続けている、とか、もう、皆さんのこの芝居への取り組む姿勢が見えて、とっても充実していました。アフタートークショーって初めてだけど、ほんとにこんなにいろんなお話が聞けるものなんでしょうかね。でも、皆さん着替えてリラックスした私服で(上口くんだけ派手なジャケット)、それも楽しかったです。

こういうお話聞くと、俳優さんたちの真摯な気持ちをうかがって、もう、つまんないケチつけたりする自分が恥ずかしくなったりするんですが、でも、まあ、やっぱり感想書いていきたいです。

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