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高麗屋襲名披露二月大歌舞伎「熊谷陣屋」「壽三代歌舞伎賑」「仮名手本忠臣蔵七段目」

201802_4     高麗屋三代襲名歌舞伎座興行の二か月目、夜の部です。まずは幸四郎「熊谷陣屋」。昨年4月に先代幸四郎の熊谷、先代染五郎の義経で見てますね。

相模が魁春、藤の方は雀右衛門と、立派な奥方二人。今回は二人が子の生死にどう反応するか、きめ細かい演技をじっくり見られて堪能しました。義経は菊五郎、さすがの貫禄、弥陀六は当たり役左團次、さらに堤軍次(鴈治郎)、梶原平次(芝翫)、義経の家来たちに隼人、巳之助、萬太郎、歌昇という豪華さ。

さて、肝心の幸四郎熊谷ですが、所作は美しく、悪くはないんですが、なんとなく声が小さくて迫力に欠ける感じがしました。もともと私、この演目好きじゃないんだと思います。高麗屋の当たり役かもしれないけど、そんなにやらなくてもいいんじゃないですかねっ。弥陀六の長台詞で少しうとうとしちゃいました。

201802_5 二月の祝幕は、幸四郎が直接手紙で頼んだという草間彌生のデザイン(頼めばやってくれるもなのか、と驚きました)。大きな幕いっぱいの3つのデザインの鮮やかさ、草間彌生という人は本当に天才だと思いましたし、彼女の代表作のひとつともいえるのではと思いました。この大襲名にふさわしい、一見の価値ある祝幕だと思います。

次は「壽三代歌舞伎賑 木挽町芝居前」。両花道を使っての、大幹部花形総出演でございます。一人だけわからないーと思ったのは東蔵さんでした。立ち役に比べ、女方は友右衛門さんとか梅枝ちゃんまで出ていて、不足気味なんだなと思います。

猿之助は高麗屋番頭役。こういう演目なのでせりふは一言ですが、いかにも高麗屋の身内のように腰低くしています。風呂敷包みを左手で自然に持っていて、ちょっとほっとしました。持っていても不自然ではないですが、持つ必要もないもので、もし、これで目立たないように「左手大丈夫だよ」とファンに知らせてくれるつもりだったとしたら、ちょっと恐ろしいです。そう思った瞬間になんか鳥肌たっちゃいました。

201802_6    最後は「仮名手本忠臣蔵七段目 祇園一力茶屋の場」です。由良之助(白鸚)の茶屋での放蕩の場面、あんなに人が多かったでしたっけ。時事ネタも入って面白かったです。

力弥の染五郎。前回の三代襲名で父幸四郎が8才で演じた役で、その映像を見るとかわいい中にもきりっとうまかったですが、当代染五郎も、先月の義経を演じた余裕か、立派な力弥でした。ここで由良之助は、少しだけ本来の立派な姿を見せます。

斧九太夫(錦吾)、鷺坂伴内(高麗五郎)は、真面目すぎだと思うんですが、しかし、この高麗屋襲名の歌舞伎座興行で、先月の幸右衛門さんといい、お弟子さんたちに大きな役をつけるというのは(錦吾さんはそういうことではないかもしれませんが)、長年の貢献への感謝が感じられてじんとしました。

そしていよいよお軽(玉三郎)登場。ほんとに美しい。手紙を読まれたことに気づいた由良之助が二階から降りてこいと手伝う場面、もちろん本意はほかにあるわけですが、それでも目の前のお軽の愛らしさに、まんざらでもない気持ちが溢れていていいです。あの「かわいい」は台本になかったのではという自然な呼吸でした。
平右衛門(仁左衛門)の若々しさ、一途さ。足軽とはいえ、奴なので、2016年国立劇場の又五郎さんのイメージが強かったんですが、どうして、このかっこいい平右衛門。

何より、長年の名コンビである玉三郎とのもう、なんとも言えない関係。「久しぶりだな」という甘やかなセリフ、二人に通い合う情愛、素直でかわいいお軽。平右衛門の刀を怖がるお軽の、これでもかという繰り返しが、自在なアドリブを見るようで、本当に面白かったです。思えば玉三郎さんって、「孤城落月」とか「天守物語」とか「瞼の母」とか「楊貴妃」とか、エキセントリックだったり人間超越したりという役を拝見することが多く、こんなに共演者との呼吸で見せる芝居は初めてだったかもしれません。七段目って、こんなに面白い段だったんだ。

最後に由良之助。国立劇場の通しでは、切腹する判官(梅玉)にやっと間に合って、絶対に仇討ちをすると誓う由良之助が現白鸚さんでした。本来の姿に立ち返った由良之助にあの涙の誓がよみがえり、もう感動。大満足の打ち出しでした。

(追 記)

この七段目があまりに面白かったので、偶数日の海老蔵菊之助はどうだろうと、幕見で行ってまいりました。

いやー、菊之助、美しかった。やっぱり女方としての美しさでいったら、今一番ではないでしょうか。どの場面も絵になります。そして、菊之助自身のもつ真面目な人柄が、お軽に合ってるなあと思いました(2016年の国立劇場でも、五、六段目のお軽は菊之助、七段目は雀右衛門だったんですが、七段目も菊之助で見たかったと思っていたんです)。

そして久しぶりの海老蔵、どんな扮装でも整った見栄えのするお顔立ち、とても足軽には見えませんが、どこまでも気のいいお兄ちゃんで、こういうのもなんですが、なかなかがんばっていると見えました。

それにしても、二人の間の特別な親しみというか、ニザ玉の濃密な関係のようなものがなく、(ほんとは同い年のこの二人には、特別感があってほしいんですが)、何だか通り一遍のような。刀のくだりも何でニザ玉では、あんなに笑えたんだろうと思ってしまいました。

同じ演目なのに、2016年の国立では平右衛門がやっと仇討ちに加えられたことへの拍手、今回のニザ玉さまは、お軽のけなげさ、そして海老菊は最後の由良之助の貫禄と、主役が変わって見えるのも面白いと思いました。

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コメント

星に願いをさん、コメントありがとうございます。

ほんとに、玉さまかわいさ全開で、観客の気持ちをわしづかみでしたね。華奢な肩を包む藤色の着物の上から抱きしめたい、って気持ちになっちゃいました。

面白いだけではなくて、勘平の死を知る場面の切なさ、ニザさま平右衛門の喜び、おっしゃる通り白鸚さんの覚悟、と見どころがいっぱいで堪能しました。

初めまして。
私も同じ演目見てました。
玉三郎のお軽が梯子を降りて来るところ、エツこれアドリブ?きゃ、玉さん可愛い過ぎ💕てニコニコしながら見てました。私の周囲のお客さんも良い雰囲氣であー歌舞伎って楽しいなぁと思いました。
そして何と言っても白鸚さん、観客の気持ちギュッと掴んでしまうあの凄さ、
私はまだまだ歌舞伎初心者ですが、この不思議さがある限り、ずっと見つずけたいです。

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