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中川右介「海老蔵を見る、歌舞伎を見る」 小玉祥子「二代目―聞き書き中村吉右衛門」

201801   中川右介さんの新刊(1月26日発売)売「海老蔵を見る、歌舞伎を見る」です。

中川氏、歌舞伎ファンからはどうも評判が悪く、2013年出版の「歌舞伎 家と血と藝」も何と下世話ななどと言われていましたが、歌舞伎を見始めたばかりの私には、歌舞伎役者の家系が一気にわかってたいへんありがたい本でした。この新刊も気になっていたところへ、猿之助が重要人物として取り上げられてるなんていうのを見たものですから、つい買ってしまいました。

本文の前半は、最近5年ほどの海老蔵の舞台と私生活、後半は猿之助、歌右衛門家、高麗屋、音羽屋…のそれぞれの動向です。12月の舞台の話まで載っているのは、出版界もスピード化されているんですね。私が歌舞伎を見始めた頃からの話なので、登場人物は知っているし、でも地方公演はもちろん東京でも見たことがないものの方が多いので興味深くはあったんですけれども。

まあ、海老蔵が好きなのは自由ですけど、(私が歌舞伎を見始めて一番驚いたのは、海老蔵のオーラや容姿はともかく、なんか違う方に努力している、という声が多いことと、それでも歌舞伎座に長年通うマダムに海老蔵ファンが多数いて、チケットがとりにくいことでした)、海老蔵が好きというと「スターウォーズやカラヤンを好きというのと同じように『分かってない』と言われてしまう」というのは、それこそちょっと違いますよねえ。

それはいいとして、歌舞伎座出演の役者や、誰が座頭かとか演目の選び方とか、松竹の内部事情はプロとしてご存知なんでしょうか。取材された内容だったら、知りたいんですが、海老蔵や中村兄弟は別に売った方が儲かるなんて、ちょっと見てれば誰でもわかるし(役者さん自身もトークで言ってたりします)。

芸については語らないと言いつつ、「華がない」「客が呼べない」といちばんキツイことを、今の役者さんについて書くのもどうかと思います。ってことで、何しに読んだんだ、という話でした。

201801    直後に読んだのが、毎日新聞のベテラン演劇記者小玉祥子さんの「二代目― 聞き書き中村吉右衛門」です。2009年出版の単行本に最近の動きを加筆して2016年12月に出版された文庫版。

吉右衛門さんは最近毎月のように見ていますが、恵まれた容姿に豊かな声、どの役も渾身の覚悟が伝わってくるようで、それは見事です。この人間国宝がどんな風に形成されてきたか、誕生からこれまでの歩みを、吉右衛門さんのインタビューはもちろん、家族や師匠、亡くなった大名跡の本等から、くっきりと描き出す本になっています。

吉右衛門さんといえば、父は八代目幸四郎、母は名優初代吉右衛門の一人娘。兄が幸四郎家を継ぎ、弟が祖父の養子になり、吉右衛門を継ぐのが、生まれた時からの宿命でした。自分だけ養子に出されて屈折し、実家を継いだ兄にわだかまりがあった、という風なことを目にすることもあるのですが、この克明な聞き書きを読むと、養子に出されたと言っても実家で暮らしており、親の愛情を奪われたというわけではありません。吉右衛門さんがストイックなまでに芸にまい進するのは、もともとの寡黙でまじめな性格と、たった10歳で偉大な先代を失い、その名優の後を継げるかと思い悩んだためだと理解しました。

ミュージカルやストレートプレイ、ドラマで多彩な活躍をした兄白鸚と対照的のように言われますが、吉右衛門さんも少年時代からさまざまな舞台や、多少は映画にも出ており、兄や山田五十鈴、岩下志麻など大女優たちと共演しています。それは、この一家が父初代白鸚とともに一時期松竹を離れて東宝に移籍し帝劇をホームにしていたためで、兄(当時染五郎)は、東宝ミュージカルのスターになりますが、吉右衛門はミュージカルはオーディションに落ち、もっと歌舞伎がやりたいという気持ちもあって松竹に戻ります。

アメリカの地方で歌舞伎巡業をやったこともあり、歌舞伎の普及に対する思いや、役への掘り下げ方、美しい奥様のこと、そして若手では唯一菊之助のことを語ったりしています(じゅふたんへの愛情も)。

吉右衛門さん、声変わり期は苦労し、その後も声が出なくて、竹本で修行するなどしてあの豊かな声を獲得したそうです。今の染五郎くんもそうなのかしら。

小玉さんの工夫もあって、たいへん面白く読みました。

 

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