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十二月大歌舞伎第三部「瞼の母」「楊貴妃」

201712_2   第三部1つめは長谷川伸作の新歌舞伎「瞼の母」

渡世人番場の忠太郎(中車)は、幼い頃別れた母に会いたいと願っています。敵に追われて実家に逃げてきた半次郎(彦三郎)を助けた忠太郎は、半次郎の母(萬次郎)に母恋しさを訴えます。

実母を探して江戸に来た忠太郎は、老いた夜鷹おとら(歌女之丞)を助けたことで、大店の料理茶屋の女主人おはま(玉三郎)が母の可能性があることを知り、と押しかけます。忠太郎を部屋に通したおはまは、娘お登勢(梅枝)との幸せな暮らしを壊されまいと、忠太郎の母であることを否定するのでした…。

中車は、八月納涼歌舞伎の「刺青奇偶」の半太郎で見せた、優しい気持ちのまっすぐな博徒。着物の着方や襟の直し方も様になっています。母を知らないからこその母への思慕で、冒頭からしんみりさせます。

おとらとの場面も、歌女之丞さんのうまさもあって、庶民の切なさを描く長谷川伸らしいいい場面でした。歌女之丞さんいいなあ。

そしておはまとの邂逅。息子であることを否定されて、長年の母恋しさを語る忠太郎。どうしたって、幼い頃生き別れた父猿之助に、25歳で会いに行って、すげなく帰された香川照之の逸話を思い出します。博徒ではあるけれど、お金はしっかりためて、母が貧しかったら助けようと思っていた、と切々と言う中車。俳優として名を成し、歌舞伎役者としても着実に成長している今とはいえ、その時を思い出さずにいられましょうか。どんな気持ちで、と思うと、体が熱くなるような気がしました。しかし、このような、そのまんまの芝居を彼にさせて、それをメインの出し物にする興業の世界。それでもそれを売りにするとかしないとかを超えた演技を堂々と見せる中車。凄い、と思いました。

さて、対する玉三郎、世話物での彼は器用な役者とはいえないと思うんですが、その不器用なセリフが、かえって技巧を凝らすよりも感動を呼ぶというか、とにかくすすり泣きの声以外は聞こえない、歌舞伎座全体が舞台に集中する素晴らしい一瞬でした。

おはまの愛娘お登勢が忠太郎とすれ違って、「ねえ、あの母さんとそっくりな人は?」と言うんですが、もちろん、玉様と中車は似てません。でも、先代猿之助と中車は誰が見ても親子とわかるくらい似ているので、それも思い出されました。

おはまは忠太郎が出て行って後悔します。お登勢にも言われて(お登勢がまた優しいいい子なんです)、忠太郎を探すおはまとお登勢。しかし忠太郎は、もうおはまに会いたいとは思うまい、瞼を閉じれば優しい母の姿が目に浮かぶから、と言って去ります。

切ないけれど、おはまが忠太郎を追うところでほっとしました。単なるハッピーエンドにはしないのが、長谷川伸なんでしょうね。

2つめは、夢枕獏作の舞踊劇「楊貴妃」。黄泉の国に楊貴妃を訪ねる方士(中車)と、楊貴妃(玉三郎)の物語です。舞台があくと、上手に囃方がいます。お琴の調べがそれはそれは美しく、夢のよう。

まず登場する方士の中車、9月に「藤娘」を舞踊の会で踊ったとのことですが(技術はともかく、娘のかわいらしさが出ていて感動的だったとか)、その勇気や努力が、ここに生きていたというか、いくらいい俳優でも、ゆったりした舞踊の舞台で、おかしくなく歩くだけでもたいへんなことだと思います。彼の努力をして、玉様が相手役として十分と判断なさったんでしょう。ほんとに、堂々とした方士で、作品世界を作り上げていました。

その玉三郎さま、能でいう引廻しから出てきますが、まあ、この世のものとは思われぬ美しさ、この拵えが一番お似合いな気がします。ほんとにほんとに素敵な玉様と、玉様の美意識が横溢した舞台でございました。

おまけ。

12月6日に、1月、2月の高麗屋三代襲名披露の配役変更が発表になり、猿之助が演じるはずだった「箱根霊験誓仇討」の主役勝五郎、「角力場」の与五郎、「一條大蔵譚」のお京をそれぞれ勘九郎、愛之助、孝太郎が代役することとなり、出演は「寺子屋」の涎くり与太郎だけどなりました。1月の歌舞伎座で復帰することはワンピース千穐楽のときに報道されていたので、復帰はするんだろうなと思っていましたが、千穐楽の様子を見てまだ回復からは程遠い感じでしたので、無理しないこととなってかえってほっとしました。そもそも開放骨折といえば、普通全治6カ月ということですので、ゆっくり養生してほしいというのが、ファンの願いだったわけで。松竹ゴールド会員の発売日を前に、はっきりさせてくれてよかったです。ワンピースの降板もあって、猿之助ファンは手ぐすね引いてましたから、後から代役が発表されたりしたら、せっかくの襲名公演のチケットがおかしなことになりそうですもんね。

染さんの襲名披露の口上には澤瀉屋を代表して連なるのは、うれしいにちがいありません。舞台で見るのを楽しみにしています。

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