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2017年10月

「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」@新橋演舞場

2    ワンピース歌舞伎再演、2カ月間のちょうど真ん中くらいでと思ってとったチケットでしたが、猿之助の事故で右近ルフィを見ることになりました。2年前の初演時は、見る前は大丈夫かと案じていたものの、予想外のハマり具合に大興奮でした。

まず再演の感想。ストーリーは同じなんですが、いい場面はそのまま残しつつも、お話やセットはすっきりさせてメリハリをきかせ、ダンスや戦闘シーンの迫力が増した、という感じ。印象的だったルフィの早変わり、ボンちゃん・イナズマの本水立ち回り、青雉との氷の戦い、白ひげの最後等はそのまま、アマゾンリリーやニューカマーのダンスはよりレベルアップ、赤犬とエースの戦いの迫力は倍増です。

右近ルフィは、さすがに若くはつらつとしていて、無邪気に思ったままをまっすぐぶつけるセリフが、猿之助より合っているんじゃないか、と思えました。踊りのうまい人でそこも見どころですし、動き全体にキレがあります。ハンコックもきれい。

新悟のナミは春猿よりもサバサバしていてこうみると合ってますし、サディちゃんも長身のスタイルがステキで熱演でした。チョッパーは右近ちゃん。長いセリフをしっかりと。

平岳大エースは文句なしにかっこいいですし、シャンクスも歌舞伎役者の早変わりとちがって長くエースを演じた後だけに難しいと思うんですが、しっかり演じていました。

巳之助のゾロとボン・クレー、スクアード、隼人のサンジ・イナズマそしてマルコは、もはや安定。初演時は、こんなにがんばって大丈夫かと心配になったものですが、今回はむしろ舞台をしっかり支えていて頼もしい感じさえしました。アンコール、この二人と右近、新悟が四人並ぶ場面はジーンとしました。

全体がすっきりしているせいか、ルフィが仲間を信じる気持ちや、イワンコフ(浅野和之)、白ひげ(右團次)、ジンベエ(猿弥)のいいセリフがぐっと迫ってきて感動的でした。出てくるキャラは自由過ぎていても、こういういいセリフがあるから、ワンピースに普遍的な魅力があるんですよね。

そして今回は、猿三郎さんのブログを知り、出演者のエピソードをいろいろ読んでいたので、大病から復活してフランキーやダズを熱演していた石橋直也さんや、ダンスシーンで一際鮮やかに踊っていた穴井豪さんのことがわかったのも楽しめました。ディスコやクロコダイルをやっていた猿三郎さんもしっかり認識できました(ほんとこの方、いい人なんですよね)。

Photo     もちろん、2幕最後のファーファ―タイムは、タンバリン振って楽しみましたが、ここのルフィの宙乗り、初日に猿之助は、客席を見回しながら、一瞬ルフィじゃなくて四代目猿之助の顔になったと、複数のファンがTwitterでつぶやいていました。その、客席の私たちが盛り上がっている様子を見て、満足げにドヤ顔している猿之助がみたかった!

ああ、猿之助さん、再演できたこと、初演そのままじゃなくて納得のいくまでブラッシュアップできて満足のいく作品になったこと、若手バージョンさえ実現したこと、あらゆるメディアでときに右近込みで宣伝しまくったこと――とにかく、彼は満を持して10月6日の初日を迎えたと思うんですよ。そしてたった4日後、あの、10月9日は、NHKの「LIFE」で歌舞伎コントをウッチャンとやるということも宣伝されていました。その日の夕方、事故のニュースを知り、しかも「開放骨折」という、聞いたことのない症状が伝えられたんです。

あんなにせっかちで、常に動いていないと落ち着かないような人が(ワンピース直前に新国劇の劇団若獅子でヒロインを演じたり、ワンピース直後に地方を回る舞踊公演を予定していたり)、病室でやきもきしていると思うだけでもつらいです。

しかもその後まもなく、大好きな染五郎の幸四郎襲名をはじめ高麗屋3代同時襲名の来年1,2月歌舞伎座の演目が発表となり、1月は1作で主演、寺子屋の涎くりまで3役ついているじゃありませんか。でも、ほんとに無理をしないで、ゆっくり直して、リハビリも十分時間をとって、完全に治してほしいです。

その「LIFE」、短いコントに歌舞伎の型をふんだんに入れ、しかも面白いという傑作でした。どうか後遺症なく、順調に完治されますように。

(追 記)

と、余韻に浸っていたら、なんと今日、10月公演の千穐楽ということで、夜の部のアンコールに、猿之助がサプライズ登場というニュースが!それもあのすっぽんからですよ!私なんか役者が出入りするたびに怖いなと思ってみていたのに、そんなこと吹き飛ばすようなさわやかな笑顔。やっぱり舞台にいてこそ輝く人なんですね。このスタイルも、シャンクスを思わせるところがにくい!

Twitterでも驚きでにぎわっていますが、即座に歌舞伎美人できちんとレポートされています。http://www.kabuki-bito.jp/news/4371 でもやっぱりちゃんと養生してくださいませ。

ドラマ「トットちゃん」と「わろてんか」

Photo  10月から始まったテレ朝昼ドラの「トットちゃん」、山本耕史が出るので見てますが、ドラマとしてもとっても面白いです。原作の「窓際のトットちゃん」も読んだし、最近の「トットてれび」も見たし、題材としては目新しさはないと思ってましたが、そんなことありませんでした。

山本耕史はトットちゃんのパパのバイオリン演奏家。演奏時の立ち姿が美しく、コンサートマスターとしてあいさつするシーンがかっこいい!いきなりの結婚と、妻を閉じ込めるという展開にはびっくりでしたが、すぐに生活も安定して、浮世離れした雰囲気はそのままに、家族を愛する素敵な人です。わずかな登場場面でも、画面の中でぱあっと光ってます。出征の兵隊姿の丸刈りも新鮮でした(カツラでしたけどね)。

トットちゃん(豊嶋花)がうまい!子どもらしさの中に、後の黒柳徹子を思わせる仕草が出ていて、またかなりダンスのセンスがあるような動きも魅力的。マイペースなのに、育ちのよさを感じさせるセリフもすてき。ちょっとこれまでの日本の子役になかったうまさです。そのトットちゃんを押さえつける普通の学校からトモエ学園に転校してのびのびしているのがほほえましく、また、そんな学校あるかしら、というのを竹中尚人の校長先生がちょっとおとぎ話みたいで浮世離れしているのがまたいいんですよね。

乃木坂上倶楽部の小澤征悦、高岡早紀、凰稀かなめ、新納慎也とクセのある人たち。高岡早紀いい女優になったなー。凰稀かなめもかわいすぎる。

そして、舞台は疎開先の青森へ。何と中村メイコのおばあちゃん、いしのようこのお嫁さん、青森弁がきっつくてそれもまた。

脚本は大石静、さすがです。もうひとつ、彼女の代表作になるんじゃないでしょうか。

( 前作の「やすらぎの郷」も面白く見てたんですよね。途中失速する回もありましたが、八千草薫、朝丘ルリ子、加賀まりこが素敵だったし、富士真奈美もいいところを見せてくれました。野際陽子の遺作になりましたが、、彼女はちょっと現役感のある演技でした。)

Photo_2  一方朝ドラ「わろてんか」。吉本興業の創始者吉本せいがモデルとあって、お笑い好きの私、たいへん期待して見てたんですが、今のところぱっとしません。

松阪桃李、高橋一生、濱田岳、遠藤憲一、鈴木保奈美鈴木京香と、脇はすごいんですが、主人公がただかわいらしいだけ。子役時代もあったのに、笑いが好きってだけで、デキル子っぽい描写がなかったので、米問屋での行動が唐突感があるんですよねえ。とにかくどこかで見たような描写の連続。

脚本の吉田智子さん、恋愛ものが得意な東京出身の人。大阪のお笑い、というより笑いのセンスが皆無だなあと思います。せっかくの素材と出演者なのになあ。

映画「ドリーム」

Photo    騒がれた大作というわけではないですが、感動したという人が多いので、「ドリーム」見てきました。1960年代、まだ黒人差別や女性蔑視のはびこるNASAで宇宙ロケット開発に活躍した黒人女性3人を描いたものです。

当初、「ドリーム わたしたちのアポロ計画」という邦題でしたが、アポロじゃなくてマーキュリー計画だったので、炎上したんですね。そりゃそうだ、宇宙開発だからって、それをごっちゃにしちゃダメでしょ。マーキュリー計画は、コロリョフという一人の天才率いるソ連に先んじられていたアメリカがなんとか追いつき追い越したいと焦っていた時期、アポロはその後、ソ連より先に月に先に人類を送ることに成功したプロジェクトですからね。所得倍増計画と日本列島改造計画を一緒くたにするようなもんですかね(古い)。

原題は「Hidden Figures」。長らく日の当たらなかった陰の功労者たちといった意味なんでしょうが、主人公が数学の天才なので、数字(Figures)にかけてるんですね、うまい。

数学の天才キャサリン(タラジ・P・ヘンソン)、技術者の才能のあるメアリー(ジャネール・モネイ-この方歌手だそうで、かわいい!ミュージカルで見たい)、計算室で黒人女性を束ねているドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は、NASAで働いていますが、まだ州はSegrigationをしていて、露骨な黒人差別をしています。キャサリンは、アル・ハリソン(ケヴィン・コスナー)率いる開発の中枢に抜擢されますが、そこは白人男性ばかり、献身的に働きながら、colord専用のトイレを使うために離れた建物にいかなければなりません。メアリーは、学位がありながら、技術者育成コースに志願するために白人の学校でしかとれない資格を要求されます。ドロシーは実質的に管理者なのに、昇進させてもらえません。

前半はけっこううるうる、トイレ!はもう完全に泣けましたですよ。

実際には、この時期よりも数年早く物理的な差別施設は撤廃されていたという話もあるのですが、いずれにしても、彼女たちがやりたいことをやるには、組織の中でうまく才能をアピールすることが必要で、めげずに壁に立ち向かっていくところは本当に痛快でした。全員結婚していて子どもがいるのもいい感じ(またいいお母さんで、子どもたちもいい子たち過ぎる)。キャサリンとメアリーの衣装が鮮やかで、二人に似合ってて素敵です(ドロシーは…すいません)。ピンヒールも歩きにくそうだけどかっこいい。

途中からうまく行き過ぎるし、黒板に書く手計算でそんなに複雑な計算ができるのか、とは思いましたが、まあそれも映画ってことで。

久しぶりに見るケビン・コスナー(ご本人はずっと映画に出続けていますが)が、いい役でかっこよく、うれしかったです。意地悪役のキルスティン・ダンストがハマりすぎていてちょっときらいになっちゃいました(笑)。

そして、いいところで出てくる宇宙飛行士ジョン・グレン(グレン・パウエル)が、ほんとにいい人なんですよ。ジョン・グレンって、どんな宇宙開発映画でも一番華があって、いい人で、アメリカのヒーローなんだな、この人を宇宙に送って死なせたら、国民からどんなに非難されるか、と思わせるような雰囲気があったんだろうなと思わせます。

  • 映画「ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ」

    Hedwig   先日のジョン・キャメロン・ミッチェルの特別公演の後、映画のDVDを見てみました。というか、名作なんだし、せっかく生ジョン様見るんだから、見とけよってことですよね。

    ああ、ほんとに、映画見ておくべきでした。さまざまなメイクとカツラとファッションのジョン様が名曲の数々を歌うだけでもすばらしいんですが、ドキュメンタリーっぽい映像に、架空ながらリアルなヘドウィグの人生が描かれていて感動的。オーブに集まったファンたちは、1曲1曲にこの映像を重ねながら、ジョン様の歌を聞いたんでしょうね。それは熱狂するわー。

    「ロッキー・ホラー・ショー」と似てるなんて言われているようですが、似てるのはフランクフルター博士とヘドウィグのビジュアルの雰囲気くらいで、ずっとリアルで深い。そして、メイクなどはかなり強烈なんですが、ジョン様の小さな顔やスリムな体があまり肉感的でなくて、ある種さわやかさがあるのがいいです。

    ヘドウィグ(ジョン・キャメロン・ミッチェル)は東ベルリンに生まれ、ルーサー軍曹と結婚して出国するために、切断手術をうけますが、その失敗で1インチ残っちゃいます(Angry Inchi!)。アメリカでルーサーと別れ、ベビーシッターをしているときに知り合った少年トミーTommy(マイケル・ピット)とたくさん曲を作りますが、トミーはヘドウィグの曲をパクッって大スターに。ヘドウィグと恋人のイツハク(ミリアム・ショア)のバンドはトミーのやる会場の隣のカフェでライブをやりながら、権利を取り戻そうとしますが…。

    このイツハク、小柄で声が高いとはいえ髭も濃く、まさか女優がやっているとはおもえませんでした。中村中って、ミュージカル版でこのイツハクを演じていたんですね!イツハクは、RENTのTシャツを着ていて、RENTのグアム・ツアーのオーディションを受け、エンジェルに決まるんですが、そこが、この映画がつくられた頃のRENTの地位を思うと、ああ、って思います。RENTのゲイはいくつもある愛の形という感じで、とても自然な描かれ方ですからね。

    トミーと再会してからのヘドウィグについては、いろいろな解釈がありうるようです。イツハクとも別れちゃったのかどうかよくわからなかったし。ヘドウィグはこれからどうするんでしょうか。このバンドはやめてしまっても、いつか音楽に帰ってくると信じたいです。

    「レディ・ベス」@帝国劇場

    Ladybess2  2014年初演のときは、人気でチケットを取りそびれた「レディ・ベス」の再演です。「エリザベート」、「ダンスオブヴァンパイア」と同じドイツの作家ミヒャエル・クンツェ作、シルヴェスター・リーヴァイ作曲、小池修一郎演出、キャストもミュージカル界の人気者揃いですよ。レディ・ベスはエリザベス1世のことで、異母姉のメアリー女王時代の迫害から王位につくまでをドラマチックに描く大河ロマン。

    ヘンリー8世は、メアリー(吉沢梨絵)を生んだ妻と離婚し(ローマ教会と決別してイギリス国教会を創設した国王だって世界史で習ったいましたよね)、アン・ブーリン(和音美桜)との間にエリザベス(花總まり)をもうけますが、アンは不義密通の罪で斬首となります。エリザベスも疎まれて田舎の屋敷に、侍女キャット(涼風真世)、家庭教師替わりの学者アスカム(山口祐一郎)と寂しく暮らしています。ある日吟遊詩人のロビン(山崎育三郎)と知り合い、外の世界を知り、二人は愛し合います。そして、メアリーはスペインのフェリペ(古川雄大)と結婚することになり…。

    キャストはこのほか、メアリー女王の腹心でベスに敵対するガーディナー(石川禅)、スペイン王家の家臣シモン(吉野圭吾)、ロビンの仲間に石川新太くん、と、本当にミュージカル界で好きな俳優さんばっかりだなあ、とニコニコしながら見てました。

    舞台装置は廻り舞台を立体的につくったもので、シンプルな背景の映像で、ベスの屋敷の庭、女王の居間、街等を自在に表現しながら、舞台転換も早くてて効果的でした。オケでクラシックギター?マンドリン?の音が目立っていたのも新鮮でした。

    さて、舞台としては、前述のとおり、対立する身分のちがうキャラが際立っていて、ストーリーも最終的にはベスが即位するということ以外は先が見えず、どうなるんだろうと面白かったです。フェリペは1幕のサービスシーン(もっと長くてもよかったんですよ!)も楽しかったし、彼が敵か味方か謎めいていたのもよかったかな。アンサンブルシーンもどれもよくて、特に2幕の群衆がベスを案じるシーン、曲も雰囲気もとってもよくて、私的には一番盛り上がりました。

    キャストでは、花總まりは、たぶん私初めてだと思うんですが、エリザベートの好演が評判だったので歌についても期待しすぎてたかも。まあ、強すぎず弱すぎず、そんなに個性のない役なんですよ。このお芝居だったらもっと強烈な方が好みですが、平野綾よりは、レディに合ってたかもしれません。和音美桜、いきなり処刑されるのであれ、と思ってたら、亡霊として何度も出てきます。歌はエコーかけまくってますが、そんなことしなくてももちろんとってもうまいです。ただ、いくつかの場面で、生きてるベスが退場した後舞台に残ってその後はけるんですが、普通亡霊が先に消えますよね。また、不義密通の汚名をきて処刑された母を嫌っていたベスの心境の変化は最後まで描かれなくて、なんだか回収すべき伏線がそのままという感じで残念でした。

    山育はとっても魅力的なんだけど、この人はもっとちゃんと内面を描いた役をやるべき人なんだけどなあ、と、帰りに「メンフィス」のポスターみながら、この役やっても面白いのに、と思いました。いつも大好きな石川禅、悪役をこってりと演じていて、歌はあまりなかったんですが、お芝居部分は引き受けていた感じ。涼風真世ももうちょっと見せ場があるとよかったなと思いました。子役から活躍している石川新太くん、片手バク転するくらい動きが軽快で、群衆場面でも細かく演技していてかわいくてよかったー。

    そしてまたも山口祐一郎、それもありかな、というギリギリのところなんですけど、ちょっと出番多すぎるんじゃ、と思いましたですよ。そもそもこの役、ほんとに必要?初演は石丸幹二とのダブルキャストですが、近年ほんとにがんばってる石丸さん、今回は外れて正解です。ジキル&ハイド、がんばってくださいね。

    「ソフィア・コッポラの椿姫」

    Photo_3     映画監督ソフィア・コッポラがオペラを初演出したヴェルディ作「椿姫(La Traviata)」(2016年5月、ローマ歌劇場)の映画化です。オペラは数回しか見たことのない私、この有名な作品も見ていないので、よい機会とみてきました。特別料金3000円なりです(ついもう1000円出せば歌舞伎座3階Bだとか思ってしまう)。

    コッポラにオファーしたのはヴァレンティノ・ガラヴァーニだそうで、衣装はもちろんヴァレンティノのメゾン、イタリア人キャストをフィーチャーしてローマで上演というもの。このチラシの真っ赤なドレスがとても素敵でした。演出については、初めて見るので、普通とどうちがうのか、はよくわかりません。 公演情報http://www.operaroma.it/en/shows/opera-traviata-2016/

    舞台はパリの社交界。高級娼婦のヴィオレッタ(フランチェスカ・トッド)は、パーティでアルフレード(アントニオ・ポーリ)と出会い、恋に落ちます(ちょっと意識が飛びました)。二人で住む田舎の別荘に、アルフレードの父ジェルマン(ロベルト・フロンターリ)がやってきて、ヴィオレッタに息子を返せと迫ります。ヴィオレッタはパトロンの男爵の元に戻ったふりをして別れますが、パリのパーティで再会します。ヴィオレッタは結核が悪化し、死の床にアルフレード親子が駆け付け、ヴィオレッタは生きたいと願いながら息を引き取るのでした…。

    オペラというと、長くて大掛かりで登場人物もたくさん、というイメージなんですが、このオペラ、大勢が出てくるところとそうでないところがとても極端で対照的。最初のパーティでは、舞台にぎっしりキャストがひしめきあい、聞き覚えのある「乾杯の歌」に感動。ヒロインのフランチェスカ、まだ27歳ということですが、まあ貫禄があってすごい迫力。彼女の歌がとても多くて、こんなに歌って大丈夫かというくらい、驚異的な音域で歌いまくります。

    対するアルフレード。ああ、小太りであまりに庶民的な風貌。数多の恋で社交界を生き抜いてきたヴィオレッタが真実の愛に目覚める純粋な青年というには…最後まで、残念な気持ちがぬぐえませんでした。

    一方父ジェルマン。もちろんお年でおぐしもないんですが、フランチェスカとのやりとりに味があって、この方、非情なだけではない慈愛が感じられてよかったです。ただ、純愛物語なのに二人のシーンが長すぎて、劇自体の面白みは削いでますね。

    パリで再会するヴィオレッタとアルフレード。バレエが素敵で、特に女性、男性の中心ダンサーはとても個性的で好きでした。アルフレードはヴィオレッタに、金を返す、とお札を投げつけるのですが、ここでもぎっしり舞台にいる人々から、一斉に、「女性を侮辱するなんて!」とアルフレードにツッコミが入ります。ヴィオレッタは娼婦でアルフレードはお坊ちゃんなのに、この一斉の非難が気持ちよかったです。ここでヴィオレッタが着ているのが、チラシの、たっぷりした真っ赤なドレス!

    ここからいきなり瀕死のヴィオレッタの場面となります。そう、アルフレードとヴィオレッタの愛憎の描写が薄いんですよね。ヴィオレッタをやる一流のソプラノはどう見ても結核なんかになりそうもない体格だし。この3幕のヴィオレッタとアルフレードの二重唱「パリを離れて」も有名で美しい曲なんですが。

    ってことで、やっぱりオペラはオペラ歌手を聞くもの、お芝居に歌がつくミュージカルとはちがうんですよねえ。時々こうやって触れるぐらいでいいかな、と思った次第でした。

    「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」@シアターオーブ

    2910hedwig  「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の生みの親ジョン・キャメロン・ミッチェルが来日して特別公演をすると知ったときは、そんなことが本当にあるんだろうかと信じられないくらいでした。実は映画も日本での上演(山本耕史も主演していますが)見ていなかったんですが、映画が公開されたとき話題になったのも覚えていますし、ゲイ・カルチャーの中でもカルト的な人気があることなどは知っていましたから。

    この作品は、1997年、ジョンの作・主演でオフブロードウェイで人気を博し、2001年にはジョンの監督・脚本・主演で映画化されています。今、Wikipediaを見ると、制作費600万ドル、興行収入360万ドルとありますから赤字ですが、DVDの売上はすごいんじゃないでしょうか。舞台の方はその後も各国で上演され、ブロードウェイでも2014年4月から2015年9月まで、クロージング・キャストはRENTキャストのテイ・ディグズでした。このときは、トニー賞のリバイバル賞や、ニール・パトリック・ハリスの主演男優賞をとっていますね。

    さて、そういう公演なので、お客さんはヘドウィグのコスプレをした人を含め、普段のオーブのミュージカルの観客とはちがうヘドウィグファン多数。1曲目から1階は総立ちで、どうなっちゃうのかと思いましたが、ジョンに座れーって言われてほっとしました。

    さて、ほかのキャストはどうなるのかな、と思ったら、中村中一人だけがクレジットされてまして、たしかに彼女がヘドウィグの一人称で物語を語り、他の役をやり、ジョンは歌うかたち。いわばHedwig in Concert という感じなんですが、中村中の熱演もあって、これはこれで十分作品世界を伝えてくれていました。

    ジョンは、年齢を感じさせない、美しさと歌の迫力。ほんもののヘドウィグとしか言いようがない。ちょっとした茶目っ気、どことなく品があってさわやかささえ感じさせるところが、この作品を広く受け入れさせた要因の一つでもあったでしょう。評判通り楽曲がよく、バラードなどでは鳥肌が立ちそうな瞬間が何度もありました。観客のノリがよくて盛り上がったのもよかったです。

    ジョン自身の言葉は多くはなかったけど、観客に対する愛情や、ユーモアのセンスがあっ2910hedwig02_2て。2度目のアンコールの後、ジョンが中村中に「最後に何か言って」と言ったのが通じなかったみたいで、そしたらジョンが「二人の間で通じる言葉は音楽だけね」(これは中村中が通訳してくれた)というのもさすが。

    中村中、初めて見たのですが、シンガーの人なんですね(日本版ヘドウィグにも出ていますが)。何で一人だけのキャストに美人の女性?と思ったら、公表されているようですが、戸籍上は男性なんだそうです。そう思って振り返ると、この作品にキャスティングされるにふさわしいというところかもしれません。

    (追記)

    その後、映画のDVDを見てみました。あー、絶対にこれを5回は見てから行くべきでしたね。映画のヘドウィグファンがこの公演で熱狂するのがよくわかりました。曲もほんとにいし。

    で、舞台版は見ていませんが、この公演の演出に不満を持つ方がいるのもなるほど。たしかにあの風船人形、何なんだってことですよ。でも、あのシンプルで味のあるアニメーションやベルリンの壁の映像など、オリジナルの味を伝えようと誠実な演出ともいえるように思います。何よりジョンが輝いていましたからね。

    ところで、ジョンが来日したのは、監督した新作映画「パーティで女の子に話しかけるには(How to Talk to Girls at Parties)]のジャパンプレミアのためでもあったようで、19日のプレミアには、かつてヘドウィグを演じた山本耕史が登場したそうです。https://www.kyodo.co.jp/entame/showbiz/2017-10-20_1703300/

    ジョンとはジョイントライブもやっていて旧知なので、即興で二人で「Origin of Love」を歌ったとか。どんな感じだったんでしょうか。すごすぎますよね。

    芸術祭十月大歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」

    2910     歌舞伎座で「マハーバーラタ戦記」をやると聞いたときは本当に驚きました。世界史でその名前だけ「ラーマーヤナ」と一緒に覚えたインドの長大な叙事詩。「NINAGAWA十二夜」という傑作を生んだ菊之助・菊五郎の音羽屋さんとはいえ、大丈夫か、と思いましたが評判がよいので楽しみにしていました。

    松竹さんも力が入っていて、特設サイトを開設してますよ。

    序幕は黄金の衣装をまとった神々の場面から。神々は、人間界の争いを鎮めるため、神の子を遣わすことになり、太陽神(左團次)は、汲手姫(くんてひめ、梅枝)にカルナを産ませます(マリアみたい)。恋を知らないのに、と汲手姫はカルナを川に流してしまいます。汲手姫は国王の妃となり、5人の王子を産みますが(息子たちが成長してからはくんて姫は時蔵)、3番目のアルジュナ(松也)は、戦いの神帝釈天(鴈治郎)の子でした。国王亡き後、王子たちのいとこヅルヨーダ姫(七之助)と弟(片岡亀蔵)がやってきて、王位争いが始まるのでした…。

    チラシに細かく人間関係が書いてあったので少々不安でしたが、お話は明快で、人物の性格もしっかり造形されているので、まったくわかりにくいところはなく、神々と背景以外は普通の歌舞伎。よくあるお家騒動の物語としても見られます。一方で人々の争いとか欲を正面から描いている面もあって、長い物語に一本筋が通っているのがよかったです。

    神々の衣装が超豪華。今の宝塚の豪華な衣装(とっくに紅白は超えてます)のさらにナナメ上をいっているのではというレベルです。そしてインド音楽が効果的。ドラマチックでもあるし、音そのものが気持ちよくもあるし。三味線や大太鼓との意外な相性のよさもあって、新作によくある録音の音楽よりずっといいと思いました。

    役者さんたちもあて書きのようで皆さんはまっていて熱演。菊之助が、争いを避けるまっすぐな美青年。対立する松也もまた美しく、2人の戦いは両花道を使い大迫力でした。ヅルヨーダは原作では男だそうですが、七之助が貫禄ある美しさ、業の深さ、が最後は切なく、また戦闘シーンが見事。夜の部も大活躍なのにすごかったです。

    アルジュナの兄弟たちが、彦三郎、亀蔵、と、双子の萬太郎、種之助。彦三亀蔵兄弟がよく似たよい兄弟なのは言うまでもないですが、双子の設定に大拍手、前からこの二人、小柄で元気がよくて愛嬌のあるところがよく似ているなあと思っていたんですよ。4人にもそれぞれたっぷり見せ場があって、楽しかったです。

    スーパー歌舞伎や歌舞伎セカンドじゃなくて、インドが舞台の歌舞伎、って感じでした。うん、見逃さなくてよかったー。

    (追記)

    「演劇界」(←という名前だけど歌舞伎界、な雑誌)11月号に、菊之助、演出の宮城聰さん、脚本の青木豪さんのインタビューがたっぷり載っていました。菊之助が長谷部浩さんに勧められて宮城さんの演劇「マハーバーラタ」を見てから、今回の上演までに、設定からストーリー、上演台本までの苦労というか努力が窺われてより感動しました。

    菊之助のポスター写真は、ほんとにインドで撮ったんですね(きれいすぎて合成に見える)。いや、このように何年もかかるプロジェクトが、適役を得て大成功してほんとによかったです。アルジュナの5兄弟は、皆さんここ数年で華が出てきた方たちですもんね。来月号は、キンキラキンの写真が見られるでしょうか。

    「通し狂言 霊験亀山鉾」@国立劇場

    2910    仁左衛門さんの鶴屋南北作「霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)です。伊勢国亀山城下(あの亀山ローソクがあるところらしいです)で起きた実在の仇討事件を題材にしたものだそうです。

    藤田水右衛門(仁左衛門)は、闇討ちにした石井右内の弟兵介(又五郎)に公式の仇討の戦いをすることになりますが、卑怯な手で返り討ちにします。兵介は、若党金六(歌昇)や右内の養子源之丞(錦之助)に後を託します。源之丞は隠し妻お松(孝太郎)や子を置いて、仇討ちの旅に出ますが、駿州の廓に出入りしているうちに、芸者おつま(雀右衛門)ねんごろになってしまいます。そこにやってきた水右衛門そっくりの古手屋の八郎兵衛(仁左衛門)、おつまを気に入りますが…。

    主人公は水右衛門なんですが、仇討しようとする者を次々と、卑怯な手も使って返り討ちにしてはガハガハ。彼はひたすら悪で、何考えているか全く語られません。歌舞伎の特異な悪の華の権化というか、とにかく仁左衛門さんがこんなにも美しくなかったら、成り立たないお芝居といえましょう。人物は違うんですが、「女殺油地獄」の与兵衛のような、刹那的な殺しの快楽も感じられて、長年美しい主役を演じてきた仁左衛門さんが73歳にしていまだこういう花を見せてくださるなんて、もう眼福。早変わりも、本水の立ち回りも、澤瀉屋からみればマイルドですが、ニザさまがなさるならありがたい。

    お芝居自体は、仇討しようとする人々の目線で語られていきます。仇討の中心になるのかと思った錦之助は、おつまには手を出すわ、あえなく返り討ちにあうわ。しかしこういう役、ほんとに錦之助さんしかできないですね。どうなっても憎めないというか。雀右衛門おつまはいつもながら健気で純粋で強い、いい女。そして孝太郎お松も、源之丞の留守宅を足の立たない息子(←この子役ちゃんが達者でかわいい!)と守る、しっかりした女で、ちょっとおかしみもあって好演でした。好きな秀太郎さんが、源之丞の実母貞林尼、出番は長くはないんですが、相変わらずお顔はかわいく、やさしい姑で、その行動には驚きました。ほかに、廓の女将おりき(上村吉弥)、源之丞の乳母おなみ(梅花)もそれぞれいい味でした。

    最後は貫禄ある歌六が見届け役となっての目の前で見事な仇討。終了してすぐ、主要5人のあいさつもあって、達成感のある4時間でした。

    「オーランドー」@KAAT

    Photo    KAATの芸術監督、白井晃さん演出の「オーランドー」です。
    イギリスの作家バージニア・ウルフの小説をアメリカの気鋭の脚本家サラ・ルールが2003年舞台化したものですが、この方、当時30歳前、なんと才能のある人なのか、その後トニー賞にもノミネートされています。という作品の背景は全く知らなかったんですが、このチラシと白井さん演出ということで、期待していました。白井さん、先日歌舞伎座の「桜の森の満開の下」の幕間で至近距離でお見掛けしたんですが、すらりとした目の鋭いお洒落な方で素敵でした!

    オーランドー(多部未華子)は、16世紀、エリザベス1世(小日向文世)に寵愛された青年貴族、ロシアから来た美女(小芝風花)と恋仲になり、そしてコンスタンチノーブルに公使として赴任します。ある日、目覚めたオーランドーは女性になっていることに気づき…。

    シンプルで映像をうまく使った舞台装置(松井るみ)、オーランドー以外のキャストは、語り手であり、次々に役割を変えて、長い年月を越えて生きるオーランドーの生涯を描いていきます。小日向さんの持ち味もあって、舞台は寓話的で面白いんですが、妙に深いというか、男と女の境目って何だろうと、ぐぐっと考えさせられる芝居です。手練れの演出家が、いい俳優を使って挑戦的な素材を扱うとこうなるんだなあと思いました。

    多部未華子って、テレビドラマでも好きな女優さん。こういう舞台だと、若い女優はドラマより叫んでしまうのはしょうがないと思いますが、それはそれとして、彼女のバランスの取れた美しさが魅力的で、光っていました。とくに女性になるシーンは見もの。

    小日向さんは前述のとおり、どこにいても面白くてすごすぎます。年齢も不詳な若さ。「神奈川芸術プレス」の小日向さんのインタビューによれば、前から一緒に仕事をしたいと言っていた白井さんと、偶然新幹線で会い、その場で白井さんがパソコンを開いて温めている企画を見せ、小日向さんがその中から「オーランド―」を選んだそうです。ああ、想像するとわくわくするような光景ですね。

    語り手たちは戸次重幸、池田鉄洋、野間口徹と、いずれも活舌よくて心地よい3人。ロシアの美女と語り手で活躍の小芝風花(「あさが来た」であさの娘でした)も新鮮で、よかったです。

    そして、ピアノ、管楽器、パーカッションの3人の生演奏が効果的でした。白井さん、次回作も楽しみにしています。

    「パジャマゲーム」@日本青年館ホール

    Pajama   宝塚星組トップだった北翔海莉の女優デビュー作、ミュージカル「パジャマ・ゲーム」です。今年8月に新装成った日本青年館ホール、初めて行きました。ここだっけ、と思いながら行ったら場所も変わっていたんですね。

    さて、作品は、1954年初演、トニー賞作品賞を受賞したあと、2006年、二度目のリバイバル上演で、トニー賞ベストリバイバル賞、主演のケリー・オハラ(渡辺謙との「王様と私」の人)が主演女優賞にノミネートされています。こういう作品なので、キラキラの美人ではないケリーは適役だったんだろうなと思います。

    お話は、1954年のアメリカ、パジャマ工場が舞台。まじめな雇われ工場長シド(新納慎也)は、労働組合で紛争処理委員(正確には名称忘れました)のベイブ(北翔海莉)に工員への暴力の疑いで調査されたことから、二人は惹かれあいます。会社のピクニックですっかり恋人同士となった二人ですが、組合は、時給7セント半の賃上げを主張し、強硬手段にでます。シドとベイブの関係にも影響が…。

    お話としてはまあ、古いオーソドックスなミュージカルですが、アンサンブルシーンの振付が凝っていて楽しいのと、ハインジーを始めとする脇のキャラクターが生き生きしているのが魅力でしょうか。同じ工場ものの「パレード」「キンキーブーツ」と比較すると単純で、ぐっとくるところが足りない感じです。

    北翔海莉は歌がうまいとは知ってたのですが(このブログ内で検索しても出てこないので宝塚では見てない?)、やっぱり声が力強く、気持ちがいいくらい、ミュージカルに向いたうまさです。ダンスも素敵で、2幕冒頭はほんとにうっとりするいいダンスシーンでした。ただ、退団直後とあって、セリフは男役調のところが目立ちます。髪をアップにしたときはいいんだけど、おろしたときがなんか洋物の時代物剣士みたいで、メイクもつけまつげが不自然な感じがしました。

    新納慎也、キマジメさとスラリとした容姿はこの役に合ってて、どこといって不満はないんですけど、このミュージカル、けっこう二人のラブシーンが多いんですよ。昔のミュージカルらしく、とてもストレートなので、正直、ちょっとこの二人だとキツイと思う部分もありました。

    同じく「真田丸」ブレイクの栗原英雄は、最初わからなかったくらい軽快で、歌もコメディセンスも素敵でした。美人秘書グラディスの大塚千弘が、健康的なセクシーさで面白く、セリフもうまくてとてもよかったです(比較で北翔海莉が強く見えちゃう)。スマスマでおなじみだった阿知波悟美もいい味出していました。

    ほかに組合委員長だけど女好きなプレッツに上口耕平(「ダンスオブバンパイヤ」)、シドとベイブの良き友人チャーリーに広瀬友祐(「エリザベート」のアンサンブル、「グレート・ギャツビー」)と、二人ともいつもながら魅力的で舞台を盛り上げていました。

    新しい日本青年館ホール、1200強とちょうどいい広さですが、2階が高くて、ちょっと遠い感じ。座席はともかく、通路が黒が基調で、あまりにシンプルすぎて観劇のわくわく感がありません。次は1階で見たいですね。

    芸術祭十月大歌舞伎「沓手鳥孤城落月」「漢人韓文手管始」「秋の色種」

    2910   十月の歌舞伎座、夜の部です。

    1つめは「沓手鳥孤城落月―大阪場内奥殿、場内二の丸、城内山里糒庫階上」。坪内逍遥作と、大阪城落城の史実に沿った作品で、描写が写実的です。

    大阪城にもぐりこんだ家康方の常盤木(児太郎)は、千姫(米吉)を城から連れ出そうとしますが発覚します。薙刀を手に怒り狂う淀君(玉三郎)、侍女たちにたるんでいると怒鳴り散らし、千姫をさいなみます。しかし千姫は与左衛門(坂東亀蔵)の放った火のどさくさで逃れ、さらに怒った淀君は錯乱します。秀頼(七之助)は母を殺して自害しようとしますが、修理亮(松也)の説得で、開城を決意するのでした。

    ひたすら玉様が美しい!(このポスターはちょっと険があるように見えますが、実際にはほんとにかわいらしい、懸命な女性が希望を絶たれて怒りの炎に包まれる感がありました)ここまで女形が怒る芝居があったでしょうか。どんなに強烈に怒っても、あくまで美しい、毅然とした女形。ああ、こんな玉様を見られてよかった。途中から、ありがたやと拝むような気持で見ておりました。

    歌舞伎美人をみると、この演目の「奥殿」はあまりかからないそうですが、大阪城の状況がよくわかるし、城内で敵味方にわかれている女たち、というのが面白いし、淀君の薙刀振り回しがかっこよくていい場面だと思います。

    また、玉様が目をかける次代の若手女形たち、梅枝、児太郎、米吉、七之助たちがきっちりお役を務めていること。児太郎は力が入りすぎと思いましたが、皆ほんとに頼もしいです。七之助、女役ではありませんが、母を思いながらも芯のある若武者で、最近一段上がった感があり、何をやっても評判の七之助らしいと思いました。

    そうそう、この演目では、一切大向の声がかからず、やはり玉様は禁止なさっているのかと思いました。うーん、新作なので、見得があまりなくてかけるタイミングも難しいのかもしれませんが、ちょっと寂しい気持ちになりました。

    2つめは、「漢人韓文手管始 唐人話」。舞台がぱあっと明るくなります。長崎の唐使の饗応役の相良家の家老伝七(鴈治郎)は、丸山の傾城高尾(七之助)といい仲。唐使に献上する家宝菊一文字の行方を捜しています。伝七の借金を立て替えたり、菊一文字の件をごまかしてやるという親切な通辞典蔵(芝翫)は、その代わり高尾との仲を取り持つよう、伝七に頼みます。ところが高尾から伝七との仲を打ち明けられた典蔵、怒りのあまり菊一文字は偽物だと言い、相良家を窮地に追いやります。困った伝七は…。

    鴈治郎さん、舞台の端から端まで軽やかな動きで、人のいい頼りになる家老を熱演。典蔵とのやりとりが軽妙で、このお二人は「御浜御殿綱豊卿」で見ているんですが、ずっとニンに合っているというか、面白く見ました。芝翫さんって、「狐狸狐狸話」のような、こういう役が一番似合う気がします。唐人ぽいへんなアクセントの話し方が面白い唐使片岡亀蔵もさすが。

    あまりかからない演目のようですが(23年振りとか)、七之助、米吉もきれいだし、高麗蔵がまた頼りない相良和泉之介をコミカルに演じて観客を沸かせていました。松也もこちらでもなんてことはない役をきっちり。やっぱり華があるので、出てくると舞台が輝く気がします。

    最後は玉様、梅枝、児太郎の舞踊「秋の色種」。こういう女形の舞踊は初めてで、三人ながらあでやかで素敵でした。途中、梅枝、児太郎が琴を奏でるのが、児太郎は「阿古屋」の修行をしているそうだけど、梅枝もかしらと、最近見ていて気持ちの良い伸び盛りの二人を頼もしく見て、満足して歌舞伎座を後にしました。

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