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八月納涼歌舞伎第三部「贋作 桜の森の満開の下」

2017082     納涼歌舞伎第3部は、野田秀樹の「贋作 桜の森の満開の下」です。野田秀樹の歌舞伎は、「研辰の討たれ」や「鼠小僧」と、元の歌舞伎を彼の演出でというものしか見たことがなく、初演が夢の遊眠社であった野田オリジナル脚本を歌舞伎で上演するのは初ということで、楽しみにしておりました。

行く前に、この脚本のモチーフとなった坂口安吾の「桜の森の満開の下」と、「夜長姫と耳男」を読みました。坂口安吾なんて、文学史でしか知らず、初めてです。うわあ、もう日本版青髭というか山姥とか鬼とかのおどろおどろしさ満開。

しかしさすが野田秀樹、2つの小説をうまく融合して、「鬼の女」を中心に据えつつも、国造りと戦いの視点を織り交ぜてスケールを大きくして、言葉遊びもたっぷり。原作の強烈さは若干薄まっていますが、芝居としてのエンタテインメント性はずっと上がったという感じです。

筋書きでは、律義にこの作品の過去の配役を掲載してくれています。主役の耳男(勘九郎)は野田秀樹、堤真一、マナコ(猿弥)は上杉祥三、羽場裕一、古田新太、赤名人(片岡亀蔵)は浅野和之、荒川良々、ヒダの王(扇雀)は松澤一之、野田秀樹と、主要キャストの濃いこと。

しかし、今回の歌舞伎版、改めて歌舞伎役者はすごいと思いました。野田作品って、たいてい野田秀樹が一番面白くて、いい役者が熱演していても、いい役者だとは思うものの、どうしても野田秀樹の芝居を表現するためのパーツという感じがするんですよ。しかし歌舞伎版は、役者が芝居のパーツでありながらやっぱり歌舞伎役者としての光が強烈で魅力的。そこは役者を見る歌舞伎、という気がしました。野田秀樹の分身のような動きをする勘九郎、猿弥、扇雀、染五郎

一方で、野田作品をみたことがない歌舞伎の観客にとっては、なぜこんな早口でさほど意味のない(ように見える)言葉遊びをじっと聞いていなければいけないのか、と拒否反応があったと思います。この作品を歌舞伎でやるのは勘三郎さんとの約束だったそうですが、コクーンならまだしも、歌舞伎座でとは、すごい二人。

ということで、野田ファン、歌舞伎ファンの私には、至福のときでした。

野田歌舞伎常連の扇雀さんはもちろん、勘九郎(なんて舞台で魅力的な身体なのかと改めて思いました)、七之助(終始軽やかな夜長姫、ラストの声は必聴)、染五郎(私の好きなかっこいいメイクの染ちゃん、弥次さんと同じ人間とは思えない)、彌十郎、新悟、亀蔵の阿弖流為チームは、こういう作品にフィットしているし、巳之助、吉之丞、梅枝、も大活躍。とくに猿弥の活躍も特筆もので、舞台でゴムマリのように弾む姿は、野田さんが連れていきたいと思うのでは、と思いましたですよ。そうそう、芝のぶも2役を強烈に演じていました。

衣装も鬼の面も歌舞伎ならではの豪華さで、素晴らしかったですし、アンサンブルの人数が多かったのも贅沢。ああ、楽しかった。

ややケチをつけるとすれば、古い作品らしく、ラストが少しだけ冗長感があるのと、やはり録音の歌曲に違和感。せっかくなら、過去の上演とちがっても、今回はここまでやるなら、生の笛か清元がよかったかな、と思いました。

(追記)

その後、12月22日、フジテレビ恒例の中村屋密着ドキュメンタリーの中で、納涼歌舞伎のことがかなり詳しく取り上げられていました(勘太郎くんの「玉兎」がありましたからね)。その中で、野田秀樹のダメ出しのすごいこと。初日、よかったよ、と声をかけて帰ったと思ったら、2日目から勘九郎の化粧する楽屋に現れて、「けっこうダメ出しあるんだよ」とノートのメモを見ながら細かく。あの場面では正面向けとか、このセリフは息継ぎすると笑えなくなっちゃうとか。これが千穐楽まで続いたそうです。

(野田秀樹の演出スタイルが垣間見られたと思うと、それも興味深いですね。だからどんな役者も野田演劇のパーツに見えるのか)

うわあ、しかも、このとき勘九郎、膝が痛くてサポータや冷却でつらそう。それで1部は玉兎の勘太郎の踊りを毎日見てダメ出し、すぐ猿之助との完璧な団子売、2部は「修善寺物語」で端正な頼家、弥次喜多にも顔出して、3部は桜森で大活躍、楽屋に大先生。超人か。

再来年の大河の主役で、少し歌舞伎が減って休めるのでは、と思ってしまいました。

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