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関容子「海老蔵そして團十郎」

Photo    「勘三郎伝説」に続く、2004年出版の、関容子さんの歌舞伎役者もの、主として12代團十郎さんや成田屋の古いお弟子さんたちの話をもとに、團十郎・当代海老蔵親子のみならず、11代團十郎の役者ぶり、人となりを克明に描き出しています。

  11代目といえば、その美男ぶりから「海老様」と言われた人気役者で、7代目松本幸四郎の長男ながら市川家の養子となった人。純粋なるが故の、その激しい、時に人を傷つける性格は、宮尾登美子の「きのね」に描かれた通りだったようです。11代目は、見合い結婚した妻と離婚した後、ずっと支えてくれた千代さんと二人の子との家庭を隠していたのですが、長男の小学校入学を機に結婚を公表し、初お目見得をさせます。

このことは、千代夫人を主人公とする宮尾登美子の「きのね」でも書かれていますが、この本では、下町の歌舞伎好きの家に育った著者が、その舞台を見た話が出てきます。演目は「大徳寺」、信長の敵を討った秀吉が信長の孫三法師を抱いて家中をひれふさせる、その三法師役で、著者の母上は、「海老様もじーっと考えたんだわね、弟たちの子(=辰之助等)が次々初舞台で、うちの子にはとびきり目立つ役をさせようって」とおっしゃったそうです。その、後の12代團十郎さんは、大きな目の、日陰生活がみじんも感じられない明るいかわいい子で、人気を博したんだそうです。

当時は歌舞伎役者の結婚が人々の間で話題になり、「びっくりしたねえ」だけで、海老様のことだとわかったと書かれていますが、つい先日も、真央さんの訃報が大ニュースとなったのは、やはり成田屋ということでしょうか。

11代目は、團十郎襲名直後、胃がんで12代目がまだ若い頃に亡くなってしまいますが、素顔は優しく、魅力的なエピソードがたくさん出てきます。三津五郎さんは、当時子役に出ると親に反物などのお礼を渡す習慣だったのを、11代目が最新のおもちゃを買ってくれたことに、一人前の役者扱いをしてくれたようで、いたく感激したそうです。まじめで大らかで優しい團十郎さんの語り口、個性的なお弟子さんたちの歌舞伎愛に満ちたインタビューも楽しく、全編楽しく読みました。

何かにつけて祖父に似ているといわれる当代海老蔵さんへの愛情も随所に感じられます。祖父同様、役についてとてもこだわって調べ上げるところ、家族への愛情(妹ぼたんさんの舞台で「成田屋!」を感極まって叫んでしまうなど)、勘三郎さんにも愛された、独特の華やぎ。

私が面白かったのは、1991年、中学生くらいのとき、海老蔵は舞台「スタンド・バイ・ミー」の主人公クリス役で、山本耕史とWキャストで出演していたんですね。演出の永山耕三氏曰く、海老蔵は長台詞の滑舌に難があったものの、存在感やたたずまいの美しさは素晴らしかったそうで、「もう一人の山本耕史という子はレミゼラブルのガブローシュもやった子で、動きも台詞も断然うまい。彼(海老蔵)はそれにびっくりするんですが、耕史の方は、どうしてあんなに台詞がモヤモヤしてるのに僕より心が届くんだろう、て感嘆する。両方いい勝負だったんですけどね」。山本耕史が器用なだけの役者とは思いませんが、二人のちがいを示すいい話です。

ほかに、11代目と片岡我童さんの話など、中山右介「家と血と藝」の元ネタになったと思われるところも随所にありました。

 

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