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2017年7月

関容子「舞台の神に愛される男たち」

Photo_2   関容子さんの本を検索していたら、舞台人にインタビューした面白そうな本があったので読んでみました。2012年8月出版です(2代目猿翁といっています)。

取り上げているのは13人、柄本明、笹野高史、すまけい、平幹二朗、山崎努、加藤武、笈田ヨシ、加藤健一、坂東三津五郎、白井晃、奥田瑛二、山田太一、横内謙介という濃い人選です。この方たちの、役者になったきっかけ、演出家や影響を受けた人々、役作りや芝居との向き合い方などをじっくり聞いています。

誰を取り上げているのかはよく知らずに読み始めましたが、強烈な個性のある役者さんや脚本家、好きな方や気になってた方ばかりで、たいへん面白く読みました。

少しマイナーかなと思うところではすまけいさん、ずっと前のなんてことはないドラマのお医者さん役で見ていいなあと思ってましたし、海外に拠点を移してオペラの演出などをしているという笈川ヨシさんは、コクーン歌舞伎「三人吉三」でチェックしていた方でした。白井晃さんは、演出の舞台で気になっているところに大河ドラマ「新選組!」で認識し、直後に「マハゴニー市の興亡」に感心した人。横内謙介さんは、高橋一生や六角精児のいた扉座にもいましたが、スーパー歌舞伎の台本を何本も書き、今またヒット作のワンピース歌舞伎の脚本を書いた方です。

奥田瑛二のトレンディドラマ時代は大好きで、今でも渋い役で活躍していますが、監督した映画の話はどれも興味深く、とくに緒方拳さんのような俳優は細かい芝居をしなくともスクリーンにその魅力を見せつければよい、という信念で撮った遺作「長い散歩」はぜひ見なくては、と思いました。

勘三郎さんと仲の良かった関さん、三津五郎さんからもいい話を引き出しています。父や母の願いをかなえた形で主役を張るようになった三津五郎さん。「おていちゃん」に翫雀さんとともに出演していたのは知りませんでした。

そして、さすが、長年舞台を見ていらっしゃるだけあって、合間にちらちら見える観劇経験の豊かなこと。生の舞台は、見なければそれ限り。見ることの価値を教えてくれる本でもありました。

歌舞伎座ギャラリー特別映像「『宙乗りができるまで~新臺猿初翔(しんぶたいごえんのかけぞめ)~』

Photo     歌舞伎座タワー5階には、前月の舞台写真も売っている歌舞伎関係のお店と、歌舞伎の扮装をして写真を撮ってもらえるスタジオアリスと、歌舞伎座ギャラリーというミニ博物館があります(入場料600円、この有料エリア、よくわかってなかったんですが、その月のチケットで100円割引。こんなに松竹さんにつぎ込んでるのに、今月はチケットとれなかったので割引なしです)。8月末まで「宙乗りができるまで」という特別映像が見られるというので行ってみました。

まず、歌舞伎の馬が置いてあって、乗ってみることができます。思っていたより大きくて、またがった感じはとても本物に近い!馬自体も重いと思いますが、役者を乗せて、しかも「矢の根」のように衣装も重いものもあって、それを2人で軽快に運ぶのは、かなりの重労働だろうなと思いました。

歌舞伎の効果音の道具や、お女中の持つ明かり、センスなども触ることができます。魯の音、雨音、波の効果音はよくできていて、面白かったです。

短い花道と、小さいながら舞台のあるスペースも。はだしだったので、ひのき舞台を踏んで、バンバンと踏み鳴らすのも楽しかった!

さてお目当ての24分の映像。昨年6月、猿之助が新歌舞伎座開場4年目にして初めて「四の切」の宙乗りをするまでの、設営、テスト、宙乗り目線のカメラ、そして翌月7月の猿之助の「流星」、8月の「やじきた」の猿之助・染五郎との2人宙乗りのリハーサル、本番、猿之助の狐忠信の扮装でのコメントもあります。

今でこそ歌舞伎以外でも宙乗りのような演出はよくありますし、猿之助と宙乗りってちょっと慣れっこになっていますが、ドキュメントをみると、やっぱりすごいなと思います(勧玄くんよくやりました)。

少しですが、猿之助が浴衣姿でスタッフに指示を出すシーンがかっこいい。やじきたのリハでは、実は高所恐怖症だという染五郎と仲良さげに二人の演技を相談します。染ちゃん、怖いのにまるで空中ブランコみたいな動きをしてたんですね。

今年も八月納涼歌舞伎でやじきたをやるのがとっても楽しみです。

「ビューティフル」@帝国劇場

Beautiful     「キャロル・キング・ミュージカル」という副題のとおり、キャロル・キングの若き日を描いたジュークボックス・ミュージカルの日本初演です。ブロードウェイでは2014年の初演以来、現在も上演されているビッグヒット作。

  作曲は好きだけど詞がうまくできないキャロル(平原綾香)は、大学の先輩ジェフリー・ゴフィン(伊礼彼方)と組んで、プロデューサーのドニー(武田真治)に売り込み、ヒット曲を作ります。妊娠を機に結婚した二人は、同じくコンビのシンシア(ソニン)とバリ―(中川晃教)と競っていきますが、早すぎた結婚とヒット曲を作り続けるプレッシャーに疲れたゴフィンとキャロルの仲はぎくしゃくしていき、ついに破綻に至ります。心機一転、自分で自作を歌うこととしたキャロルのアルバム「つづれおり(Tapestry)」は大ヒットします…。

キャロルのデビューは1958年、ヒット曲を量産したのは1960年代、彼女自身が歌った「Tapestry」も1971年ですから、私が洋楽を聞き始める前で、名前は知っているものの、顔も歌声もぴんとこなかったんですが、"The Locomotion" や"It's Too Late"、"You've Got a Friend"は知っていて、彼女の作だったのかと驚きました。キャロル・キングって何となくソングライターというより大御所シンガーの名前のような感じがしていたのですよ。

前半は、キャロルたちの歌もありますが、当時の人気歌手がヒット曲を歌うシーンがたくさんあって、アンサンブル大活躍。これはキャロルの見せ場は2幕かな、と思っていたら、やっぱりラストにかけて、名曲をこれでもか、と歌ってくれました。

平原綾香って、どちらかというと洋楽っぽい歌い方で、低音に魅力がある人なので、キングの歌が合っていると思いますし、それでなくても平原綾香ですから、鳥肌が立つような瞬間が何度もありました。演技も、前半の素朴で必死なキャロルが、最後開放されたように輝くコンサートシーンの対比が見事でした。まさにミュージカルの醍醐味を味合わせてくれる見事な主演女優。

失礼ながら伊礼ジェリーはいかにも浮気しそうな雰囲気。対照的なシンシア・バリーのカップル。アッキーの歌はさすがで、デュエット曲もとても素敵でしたし、ラスト近くでキャロル、シンシア、バリーが歌う"You've Got a Friend"もほんとによかったです。

シーンの構成など、演出面もよくできてるなあと感心しましたが、後から調べて驚いたのは、キャロルの家のベビーシッターが早変わりしてロコモーションを歌う演出、比喩的なものかと思っていたら、ほんとにキングの家のベビーシッターがこの歌をヒットさせたLittle Eva という歌手になったんだそうです。事実は意外にドラマチック。

「子供の事情」@新国立中劇場

Photo    三谷幸喜の新作舞台、「子供の事情」です。昭和46年の小学校4年生のあるクラスの放課後にいつも残っている9人と転校生のお芝居。舞台はドリフのコントのような教室とお馴染みの机椅子だけ。

大人、しかも年齢もバラバラな役者が小4を演じるというだけで教室コントに見えそうですが、それがどうして、巧みな脚本と、個性と実力を備えたキャストの力で、ちゃんとお芝居になっています。起こる事件は子供の世界なんですが、登場人物たちの気持ちは、大人である私たちにほろ苦さや温かさを訴えるものがあり、昭和46年という時代の懐かしさもあって、上質の人間喜劇を味わう、至福の舞台でした。ああ、面白かった。

キャストは三谷作品お馴染みの手練ればかり。クラスの相談相手アニキ(天海祐希)はCMのイメージどおりですが、意外なおとなしいホリさん(吉田羊――いちばん小学生っぽい)、悪さばかりしているゴータマ(小池栄子――つくづくうまい。この人がいなければこの芝居成り立たないと思えるほど)、学級委員の優等生ソーリ(青木さやか)、「エノケソ一代記」でとぼけた味を出していた春海四方がおっさんくさい少年ジゾウ、恐竜博士のドテは真田丸で衝撃を与えた小手伸也、三谷さん自身である語り手ホジョリン(林遣都)。

さらに、飄々としていて常に人の話を繰り返すリピート(浅野和之)、細身の前身を自在に動かして側転までやってのけるばかりか、メリハリのきいた演技が出番よりも大きな印象を与えます。人気子役という設定の伊藤蘭!年相応なのに、なぜかオーラのある子役がハマっていて、説得力があるのと、そういえば大昔の野田秀樹の舞台(私が見たのはたぶん「ゼンダ城の虜」)で声を張り上げて舞台を走り回っていた姿を彷彿させるエネルギーで、とってもよかったです。

この癖のある面々のクラスに転校してきたジョー(大泉洋)。このキャストの中では大きくて存在感たっぷり。ファンが多いのもうなずける魅力的な大泉洋です。こんなにいい素材、かえって使い方が難しい気もするんですが、そこはさすが三谷さん、心得てます。

今回、休憩があって、ほっとしながら面白さを反芻しつつ、後半を見ることができてよけい幸せでした(休憩がないと、全編聞き逃すまい、見逃すまいと疲れちゃうと思ってたんです)。このお芝居、まったくチラシの説明の通りで、想像していた通りではあるんですが、見た印象は、なんともいえない、人に説明するのは難しいよね、と、同行者と話したことでした。
そうそう、音楽もとてもよかったです。作曲の(三谷映画常連の)荻野清子さんが、自らキーボードを弾いて、時に歌やコーラスが。まあ、歌のうまさはいろいろですが、コーラスがうまくて、心地よかった。

團十郎・海老蔵 パリ・オペラ座公演 「勧進帳・紅葉狩」(DVDブック)

Photo    2007年3月、團十郎、海老蔵のパリ。オペラ座公演、「勧進帳」「紅葉狩」のDVDです。「勧進帳」のDVDは、同じ團十郎さんでも富樫・富十郎、義経・菊五郎とか、弁慶・7世幸四郎、富樫・15世羽左衛門、義経・6世菊五郎といった、明らかに名演とおぼしきものも入手可能なんですが、本作は、小学館DVD-BOOKシリーズということで、演目の台本がついていて勉強にいいな、と思ったのと、何といっても猿之助(当時は亀治郎)が出演しているということで、買ってみました。

「勧進帳」私の初めての歌舞伎、團十郎さんの最後の勧進帳 となったわけですが、じっくり見ると、なるほど、台詞は漢語が多く、文字で見て初めて意味がとれるものが多いんですが、 弁慶の必死の勧進帳読み・問答と、その後の義経との主従の絆、酔態、富樫との無言の心の通い合い、と、見どころが多く、やはり名作だなあと思います。字幕を見たり、音声解説を聞いたりして、この作品への理解が深まったのは、よかったです。イヤホンガイドは最初に借りて以来、鑑賞の妨げになる気がして使っていないんですが、何度も見ることのできるDVDではほんとにいいですね。

オペラ座なので花道を作れず、それがかなり演劇的効果を減殺しているのは否定できないのですが、團十郎さんの堂々とした弁慶、美しい海老蔵の富樫、手堅い四天王(権十郎、右之助、市蔵、段四郎)と、やはりこの演目のすばらしさは味わうことができます。

そして義経の亀治郎!2012年の勧進帳では、藤十郎さんが染五郎の代役で務めたんですが、歌舞伎初心者としては、丸っこい体形の藤十郎さんがあの義経?イメージじゃないと思ってしまいました。亀治郎の義経は、さすが義経という若き武将の品があって、弁慶にそこまでさせてしまった哀しみが伝わってきて、この人が器用なだけの役者でないことを思い知らされます。

もう一つの演目は「紅葉狩」。更科姫・扇雀、惟茂・錦之助と、更科姫・染五郎、惟茂・松緑という配役で見たことがありますが、この公演では更科姫を海老蔵、惟茂を團十郎さん。團十郎さんの惟茂はさすが気品があって素敵。吉弥、市蔵、右之助、權十郎、京妙も適役でよかったです。梅枝が野菊の大役を立派に務めています。海老蔵は、黙っていれば美しい姫で、扇さばきも危なげないんですが、女方のセリフはちょっとひどすぎる、いくら何でもこの役やるならもうちょっと(俳優祭の媼もひどかったですもんね)。鬼神はさすがの迫力でした。

Photo そして見たかった亀治郎の山神。写真集でも、山神の装束がとても少年ぽくて、 みたいなあと思っていましたが、やっぱり若々しい、かわいい山神で、この演目の舞踊の中でも白眉でした。

DVDには、口上も収められています。さすが團十郎さんは、気迫のこもった口調、内容ですが、最後の亀治郎、暁星のフランス語教育、最も長く、ジョークも入れて観客から笑いも起こっていました。

(長塚さんの写真集より)

2007年は、亀治郎は大河ドラマ「風林火山」で信玄を演じていた年。とてもパリ公演には行けないと最初は断ったそうですが。海老蔵から是非にと言われて行ったそうです。配役も口上も一座の三番手として重きをなしていて、パリでもダンスのワークショップを行ったりして、きっと彼にとっていい経験になったんだろうな、と思ったりしたことでした。

 

関容子「海老蔵そして團十郎」

Photo    「勘三郎伝説」に続く、2004年出版の、関容子さんの歌舞伎役者もの、主として12代團十郎さんや成田屋の古いお弟子さんたちの話をもとに、團十郎・当代海老蔵親子のみならず、11代團十郎の役者ぶり、人となりを克明に描き出しています。

  11代目といえば、その美男ぶりから「海老様」と言われた人気役者で、7代目松本幸四郎の長男ながら市川家の養子となった人。純粋なるが故の、その激しい、時に人を傷つける性格は、宮尾登美子の「きのね」に描かれた通りだったようです。11代目は、見合い結婚した妻と離婚した後、ずっと支えてくれた千代さんと二人の子との家庭を隠していたのですが、長男の小学校入学を機に結婚を公表し、初お目見得をさせます。

このことは、千代夫人を主人公とする宮尾登美子の「きのね」でも書かれていますが、この本では、下町の歌舞伎好きの家に育った著者が、その舞台を見た話が出てきます。演目は「大徳寺」、信長の敵を討った秀吉が信長の孫三法師を抱いて家中をひれふさせる、その三法師役で、著者の母上は、「海老様もじーっと考えたんだわね、弟たちの子(=辰之助等)が次々初舞台で、うちの子にはとびきり目立つ役をさせようって」とおっしゃったそうです。その、後の12代團十郎さんは、大きな目の、日陰生活がみじんも感じられない明るいかわいい子で、人気を博したんだそうです。

当時は歌舞伎役者の結婚が人々の間で話題になり、「びっくりしたねえ」だけで、海老様のことだとわかったと書かれていますが、つい先日も、真央さんの訃報が大ニュースとなったのは、やはり成田屋ということでしょうか。

11代目は、團十郎襲名直後、胃がんで12代目がまだ若い頃に亡くなってしまいますが、素顔は優しく、魅力的なエピソードがたくさん出てきます。三津五郎さんは、当時子役に出ると親に反物などのお礼を渡す習慣だったのを、11代目が最新のおもちゃを買ってくれたことに、一人前の役者扱いをしてくれたようで、いたく感激したそうです。まじめで大らかで優しい團十郎さんの語り口、個性的なお弟子さんたちの歌舞伎愛に満ちたインタビューも楽しく、全編楽しく読みました。

何かにつけて祖父に似ているといわれる当代海老蔵さんへの愛情も随所に感じられます。祖父同様、役についてとてもこだわって調べ上げるところ、家族への愛情(妹ぼたんさんの舞台で「成田屋!」を感極まって叫んでしまうなど)、勘三郎さんにも愛された、独特の華やぎ。

私が面白かったのは、1991年、中学生くらいのとき、海老蔵は舞台「スタンド・バイ・ミー」の主人公クリス役で、山本耕史とWキャストで出演していたんですね。演出の永山耕三氏曰く、海老蔵は長台詞の滑舌に難があったものの、存在感やたたずまいの美しさは素晴らしかったそうで、「もう一人の山本耕史という子はレミゼラブルのガブローシュもやった子で、動きも台詞も断然うまい。彼(海老蔵)はそれにびっくりするんですが、耕史の方は、どうしてあんなに台詞がモヤモヤしてるのに僕より心が届くんだろう、て感嘆する。両方いい勝負だったんですけどね」。山本耕史が器用なだけの役者とは思いませんが、二人のちがいを示すいい話です。

ほかに、11代目と片岡我童さんの話など、中山右介「家と血と藝」の元ネタになったと思われるところも随所にありました。

 

「ウエスト・サイド・ストーリー」@シアターオーブ

Westsidestory   シアターオーブ5周年記念として、レナード・バーンスタイン生誕100周年のワールドツアー公演「ウエスト・サイド・ストーリー」です。初演は1957年、大ヒットした映画は1961年ですが、今回のツアー版も、大きな変更はないようでした。

「マリア」や「トゥナイト」等の名曲を知っているので、映画は見たことがあるような気がしていましたが、特に後半は記憶になく、見てなかったようでした。ロビーで映画のDVDを1200円で売ってたので買ってしまいました。

お話は、「ロミオとジュリエット」を下敷きに、ニューヨークのウエストエンドでのポーランド系の若者の集団ジェッツと、プエルトリコ系のシャークスの対立、ダンスパーティで恋に落ちたトニー(ジェッツのリーダーリフの友人)と、マリア(シャークスのリーダーベルナルドの妹)の悲劇を描いています。

ジェッツとシャークスのダンスで始まるんですが、明らかにグループの見た目が違いますからね、とてもリアリティがあります。バレエダンサーだったジェローム・ロビンスの振付は、バレエ的なところも多く、今見ると新鮮。

対立はしているんですが、どっちにしてもアメリカで、自分の居場所がみつけられない、エネルギーを持て余しているやりきれなさが、決闘をただの暴力にしていない深さがあります。彼らの描き方が、初演から70年を経ても少しも古びない、今日本で見ていてもリアリティを感じる作品だなあと思いました。

いったんチームを離れていたトニー(ケヴィン・ハック)は誠実そうで、マリア(ジェナ・バーンズ)は生き生きとかわいらしく、二人の声域の広さはほんとにすばらしくて、鳥肌がたつときもありました。マリアの友人アニタ(キーリー・バーン)も生き生きとしていてとっても合ってました。

恋人二人と、チームや、マリアの友人たちのシーンがテンポよく挟まれて、一気にラストまで突っ走っていきます。「ロミオとジュリエット」のモチーフを効果的に使いながらも、マリアとトニーの運命は、下手に同じ展開にしないところも優れていると思いました。

もちろん、歌だけでなく、ダンスシーンも含めての音楽の素晴らしさはいうまでもありません。いいミュージカルの要素がたくさんつまった舞台だと思いました。

「デストラップ」@芸術劇場プレイハウス

Photo      愛之助主演、福田雄一演出のブロードウェイのヒットサスペンスコメディ(マイケル・ケイン主演の映画もあるらしい)ということで面白そうなので見てきました。

愛之助は最近ヒット作が出ていないスリラー脚本家シドニーは、去年講師をした脚本家養成講座の教え子アンダーソン(橋本良亮)から、シナリオを受け取ります。傑作だと思ったシドニーは、アンダーソンを家に呼んで彼を殺し、脚本をわがものにしようとしますが、」妻のマイラ(高岡早紀)は反対し、事件を透視できる霊能力があるという隣のヘルガ(佐藤仁美)も気になって…。

どんでん返しのストーリーが面白いので、ネタバレは避けますが、2幕になると、福田雄一らしい自由さが出てきます。とくに2幕から出てくるポーター弁護士坂田聡(ジョビジョバ)。この方知らなかったですが、初日からまだ日が経ってないので、これからもっと面白くなる予感。佐藤仁美も、まだキャラが試行錯誤っぽいんですが、ちょっと上沼恵美子を思わせるたくましさ。愛之助のウケもまだ固いかも。

さてほぼ出ずっぱりの愛之助。ちょっと顔のラインがシャープになって、明瞭なセリフ、ほんのちょっとだけここぞという時の睨み芸、やっぱり舞台のこの人好き~。高岡早紀も変わらぬ美しさ、というか華奢で素敵でした。

初めて見る橋本くん。年齢相応の利発な青年を演じていて、その意味では彼なりにがんばっていはいるんですけど、やっぱり愛之助の相手役としては力不足。ある設定にも全然説得力がありません。そこは私的には残念。映画版だとクリストファー・リーブなんですよね。

ロビーのお花がとっても豪華でキレイ、いい香りの華やかなプレイハウスでした。

歌舞伎鑑賞教室「鬼一法眼三略巻 一條大蔵譚」

Photo   恒例の国立劇場歌舞伎鑑賞教室、社会人向けの夜の回です。演目は「一條大蔵譚」、2015年10月に仁左衛門さんの一條大蔵卿を見ていますが、このカラフルなチラシの菊之助があまりに魅力的なので、楽しみにしていました。吉右衛門さんも当たり役としているのだそうで、監修に名を連ねています。

まずは「歌舞伎のみかた」。隼人とか萬太郎とかの若手がやるものだと思っていたんですが、今回は坂東亀蔵。ソツなくきっちり説明なさいます。黒御簾のBGM部隊は初めて見ました。見始めてしばらく、高い声の歌は、「歌舞伎でも歌だけは女性が入ってるんだ」と思ってたんですが、男性だけなんですね。

いよいよ本編。清盛から一條大蔵卿に下された常盤御前に会いに、鬼次郎(彦三郎)とお京(右近)夫婦がやってきます。右近が、若いのに眉なしが似合っててとってもきれい。大蔵卿の求めでの踊りも、短いながらさすがでした。彦三郎も声も所作も決まっていてとってもよかったです。何より、この夫婦、同じ目的に向かって働く同志という感じがして、描かれ方がとても素敵。江戸時代の作品とは思えないくらい女性をリスペクトしています。悪役勘解由(菊市郎)の妻鳴瀬(菊三呂)もきれいでピシッとした腰元。

さて菊之助大蔵卿。バカ殿というより、甘えん坊の幼児のようなかわいい阿呆ぶり。白い衣装と相まって、舞台で光り輝くような明るさです。もとより身体がきれいにコントロールされていて、動きが気持ちいいし、女方もやる菊之助さんの声の自在さが生きています。ニザさまはもちろん素敵でしたが、菊ちゃんの今の年齢ならではの勢いというか、華やかさがよかったです。

2幕で常盤御前(梅枝)登場。梅枝は安定のうまさなんですが、美女のオーラがやや不足してて素顔が思い出される作り。化粧とかでもうちょっと何とかならなかったかと思いました。

そして清盛を討とうとする本来の姿に戻る大蔵卿。知的で勇猛な姿とのギャップがすごい。しかも時々阿呆に戻るんですが、1幕で垂れていた眉毛はりりしくなったはずなのに、あんなにすぐ変わるものでしたっけ。とにかくかわいくてかっこいい大蔵卿を見るので大忙しで満足でした。

義太夫に乗った人形振りや踊り、立ち回りと、いろいろな歌舞伎の要素がつまっていて、とってもいい演目。それでも学生は寝ちゃうとか。邦楽の生の音楽は心地いいからなあ。実は、私も前回の大蔵卿では、前後の演目も力が入っていて(「矢の根」と「文七元結」)、このときふっと集中力が途切れていたみたいなので、さもありなんとは思います。でももったいなかったよ、寝ちゃった君たち。

 

映画「超高速!参勤交代」

Photo    評判がよくて、そのうち見ようと思っていた本木克英監督の2014年の映画「超高速!参勤交代」、猿之助が将軍吉宗役で出ているのを知って、見てみました。

福島いわきの小藩湯長谷藩の藩主内藤政醇(佐々木蔵之介)は、参勤交代で江戸から戻りほっとしていると、藩の金山についての報告について疑義があり申し開きのため、通常8日の道のりを5日以内で江戸に戻れという命を受けます。行列の人数をごまかしたり、忍びの団蔵(伊原剛志)を雇って山道を行ったりと苦労しますが、金山についての疑いは、悪徳老中(陣内孝則)の陰謀で、道中彼の使う隠密によって、数々の危難が待っているのでした…。

道のりを急ぐだけで、もっとほのぼのとしたストーリーかと思っていたら、意外と派手に戦ったり追手から逃れたりと、じゅうぶん時代劇としてエンタテインメント。金目当ての団蔵が、土にまみれた謝金を見て、藩の実情を悟って戻ってくるなど、見る者のツボを押さえた作りになってて、さすがヒット作です

なんといっても蔵之介以外考えられない、誠実で優しくて強い殿様がはまっていて秀逸。家臣たちも、西村雅彦の家老をはじめ、寺脇康文、上地雄輔(この人、映画の画面で輝くいい俳優さんになりましたね)、知念侑李、六角精児、柄本時生と個性的。殿様を助ける女郎おさき(深田恭子)が、清潔感のあるかわいさです。伊原剛志もかっこよかった!忍成修吾、どこに出てたっけと思ったら、あの美形の忍びだったとは、「山田太郎ものがたり」以来チェックしてる俳優さんです。

そして猿之助。将軍というキャスティングは、「武田信玄」のイメージからなんでしょうね。出番は短いですが、大好きな蔵之介をねぎらって酒を酌み交わすところで、楽しかったんだろうな。二人は同じ事務所なので、バーターなのか、猿之助バーターって贅沢な、と想像するのもちょっと面白いです。

 

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