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六月大歌舞伎「鎌倉三代記」「曽我綉俠御所染 御所五郎蔵」「一本刀土俵入り」 市川亀治郎著「カメ流」

62017r   六月大歌舞伎、夜の部です。

1つめは「鎌倉三代記 絹川村閑居の場。 源頼家の家臣三浦之助(松也)が負傷して病気の母長門(秀太郎)の閑居を訪ねると、許嫁の時姫(雀右衛門)が看病してくれていました。しかし時姫は頼家と敵対する北条時政の娘。時姫を父の元に取り戻そうとする局(吉弥、宗之助)や軽輩の藤三郎(幸四郎)。しかし藤三郎は実はあの佐々木高綱、ほんとの姿に立ち返り、時姫に時政を討つよう説得するのでした。

三浦之助の松也が、橙の鎧姿で華々しく美しく、登場してすぐ門の前で倒れて眠るその寝顔がほんとにきれい(3階席からよく見えました)、これに対する雀右衛門が、歌舞伎の三大赤姫といわれる時姫を熱演。けなげな嫁、戦場に立つ三浦之助にせめて一夜とすがる情熱。幸四郎、秀太郎、藤三郎の妻おくる(門之助)、局の二人までぴったりとしていて、さらに義太夫の幹太夫、東大夫さんも素晴らしく、立派な義太夫狂言でした。「決闘!高田馬場」に出ていた宗之助、10年たったのに変わらぬかわいさです。

 

2つめは「御所五郎蔵」。

元武士の侠客五郎蔵(仁左衛門)、妻の遊女皐月(雀右衛門)、皐月を狙う土右衛門(左團次)。両花道での登場といい(3階さみしい)、廓が舞台で最初の場面が桜どーんという華やかさといい、助六とか籠鶴瓶みたいな、粋なお芝居です。

五郎蔵のため、土右衛門から200両を引き出そうと、五郎蔵に愛想尽かしをして土右衛門のものになるとウソをつきますが、怒った五郎蔵は、皐月の友である元主君の寵愛する逢州(米吉)を皐月とまちがえて殺してしまい…(お話はかわいそうですね)。

ニザさま、驚くべき若さ、すっきりした粋な立ち姿。巳之助男女蔵歌昇・種之助兄弟らを従えて左團次に相対するところ、眼福。この芝居でも、雀右衛門さん盛装で大活躍。こういう盛装で、生真面目な薄幸の女性が似合う方ですね。米吉は大抜擢ですが、かわいい。そして花魁の衣装に負けない体力ですっすっと動くのが気持ちいいです(雀右衛門さんだとどうしてもよいこらしょみたいになっちゃう)。

 

愛想尽かしの場面は、借金の取りたてに五郎蔵についてきた花形屋吾助(松之助)が絶妙で、五郎蔵とのお芝居の息がぴったりで楽しかったです。

3本目、いよいよ「一本刀土俵入り」。2015年お正月に見たときは魁春さんのお蔦 で、人情が身に染みてほんとに感動したんですが、猿之助のお蔦やいかに。

最初の船宿の前のけんかの場面から、酌婦お松(笑三郎)、弥八(猿弥)を中心に、お芝居が生き生きとはじまります。取的茂兵衛の幸四郎は、前回よりは体型もふっくらと取的っぽいですが、出所不明の方言が、やっぱり何だかフランケンシュタインみたいです(失礼)。

宿の2階で飲んだくれているお蔦と下にいる茂兵衛。一文無しで再度横綱を目指して江戸に帰るという身の上を聞き出しながら、酔うにつれ、茂兵衛に金をやる気持ちになるお蔦。とくに親切な、慈善の心からではなく、投げやりななかでの気まぐれという方が強い感じ。ここの、茂兵衛とのやりとりが、台本通りなのかわからないくらい、生の自然なセリフの応酬で、現代劇でも経験を積んだ二人の真剣勝負ともいえます。

ほんとに、何気ないやりとりなんですが、お蔦をみつめるうちに、ふうーっと気持ちが盛り上がってぐっときました。その感動をまた外して笑わせたり、幸四郎さんの胸を借りて、観客の呼吸をつかんで引き寄せる猿之助の真骨頂を見た思い。歌も渋いですが、三味線がいかにも手すさびという感じでよかったです。

 

そして10年後。茂兵衛は夢破れ、渡世人姿でお蔦を探しています。お蔦は、娘お君(市川右近ちゃん)とつましく暮らしていましたが、10年ぶりに帰ってきた夫辰三郎(松緑)はイカサマばくちをやって追われています。茂兵衛はお蔦一家に金を渡し、辰三郎を追う儀十親分(歌六)たちをやっつけて、一家を逃がしてやるのでした。

子供もいるのに10年もほっつき歩いて帰ってきた男をそんなに暖かく迎えられるか、という気もしますが、一応、理由らしいものもあり、何より昼の部「名月八幡祭」で生真面目一方の新助だった松緑の謝り方が誠実で、納得しちゃいました。

茂兵衛を忘れていたお蔦。思い出した時の膝を打つ勢いに、また持っていかれてしまいました。

このお芝居、昔船宿で遊んだ老船頭(錦吾)、船大工(由次郎)とのやりとりも味があるし、あれ以来取的が苦手の弥八、儀十親分の子分のすっきりした根吉(松也)と、出演者がそれぞれの場面で味を出していて、本当に満足な1本でした。終盤にかけて、流れる歌も美声でよかったなあ。

(これで、6月は、歌舞伎座昼夜、シネマ歌舞伎「やじきた」、蜷川シアター「ヴェニスの商人」、「花戦さ」と、猿之助コンプリート!舞台写真も買ったし、大満足でございます。)

Photo  こんな本市川亀治郎「カメ流」)まで読んじゃいました。2008年の書下ろしエッセイ&写真の本です。幼い頃の思い出、初舞台で観客の反応が心地よかった話、既に知っているエピソード(「NINAGAWA十二夜」や「決闘!高田馬場」のもあります)の亀ちゃんから見た文章とか、30歳そこそこの気概がつまっていて、ファンには楽しい本。海外での素顔の写真は、ちょっと男性アイドル風なのもうれしいです。

そういう自分と自分のやることが好きなアナタがファンは好き。

そうそう、この時点では、香川照之の歌舞伎界入りは決まっていなかったと思いますが、有名な祖母のお墓での彼との邂逅、その後「武田信玄」に出演する際に、香川照之が亀ちゃんのためにあいさつ回りをしてくれたことなどが書かれていて、お互いに尊敬しあう立派ないとこ同士だな、と思いました。猿之助は團子ちゃんをほんとにかわいがっているようですし。

 

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麻央さんのブログを読んでいたので、やっぱりこの日が来てしまったかと残念です。何より、あのかわいいお子さんたちを残してどんなに心残りだったか、看板役者として毎月舞台に立つ海老蔵のことが心配だったかと思うと。

こんなつらい日にも、座頭として舞台を務めた海老蔵。今月は2時間の自主公演でしたが、この6月のABIKAIが終わっても、7月は降板した獅童の分も、昼夜大奮闘の予定のようで、とくに夜の部は新作でお稽古もたいへんでしょう。がんばれ海老蔵。

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