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2017年5月

「グレート・ギャツビー」@日生劇場

Photo     井上芳雄主演の「グレート・ギャツビー」です。昨年サンシャイン劇場で上演されていたときも興味あったのですが行きそびれて、今度はヨッシーでやるんだー、と思ったら、こちらはまったく別のプロダクションだったんですね。

原作はフィッツジェラルドの名作です。いつ読んだかも忘れてしまいましたが、貧しいがゆえに恋人と結ばれなかったギャツビーが成り上がっていくのは、「嵐が丘」のアメリカ版みたいだと思った記憶があります。

この名作を宝塚でミュージカル化した小池修一郎さんが、脚本演出、作曲は、4月26日に初のブロードウェイ作品「バンドスタンド」が開幕したというリチャード・オベラッカーです。

舞台はは1920年代、第一次世界大戦後、禁酒時代のアメリカNY州ロングアイランド。従軍後NYで働くニック(田代万里生)は、隣人のギャツビー(井上芳雄)と親しくなります。ギャツビーは豪邸で毎晩パーティを開いていますが、ニックの大学の同級生トム(広瀬友佑)の妻がニックのまたいとこデイジー(夢咲ねね)と知ったギャツビーは、デイジーに会おうとします。貧しい青年だったギャツビーは従軍前に上流階級のデイジーと恋に落ち、別れさせられたものの忘れられずにデイジーの家の川を隔てた向かいに家を建てたのでした…。

ヨッシー、すっきりとした、スーツの似合ういい男。美しいメロディのソロが多く、心情豊かに歌い上げてくれて、素晴らしかったです。彼の歴史に残る役になるでしょう。

久しぶりのマリオ、どこで何してたの?語り手で出番も多かったですが(その割には歌は少なめ)、やっぱり好青年で、この物語にさわやかな雰囲気を与えていました。

ほかのキャストも、歌がうまい俳優さんばかりで、役の雰囲気にも合っていて、アンサンブルもとってもよかったです。ジョージの畠中洋さんなど、あまり見る機会はなかった気がしますが、white trash な感じがよく出ていました。デイジーの友人ジョーダン役のAKANE LIVも歌はもちろんですが、自立した女性としてとても素敵でした。

時代に合った衣装がすごくよかったです。ストンとした、帽子と合わせたドレス、結婚してからのデイジーの色の綺麗なドレス、ジョーダンの個性的なドレスも似合っていました。

さて、作品としてどうかというとですね、小説の記憶が薄れているせいか、ちょっとあっさりしているというか、ギャツビーがもうちょっとドロドロしてミステリアスでもいいんじゃないかなという気はしました。原作がそうなんでしょうが、ギャツビーとデイジーが別れてからたった5年後、というのがしっくりこないんですよね。5年というのはあっという間で、ギャツビーの、デイジーに対するある種執念深さみたいなのがあまり感じられないというか。もっと長い間一途に思い詰めておかしくなっちゃってるようなイメージがあったからなんですが。

このお芝居では、ギャツビーは純愛に生きる青年で、デイジーの夫トムが(金持ちだけど)粗野でやなやつという単純な構造にもみえます。デイジー自身も、ただのかわいい女の子で深みがないんですよ。乱暴な言い方をすると、不倫を美しく描きました、というお話で。

ところで、ギャツビーの少年時代がちょっと出てくるんですが、アンサンブルの写真で一際若い石川新太くんかな、と思ったら、そうでした。この子、6年前の「ニューヨークに行きたい!」 で私、とても注目していた子役くんでしたよ。高3になったんですね。がんばって。

宝塚星組「スカーレット・ピンパーネル」

Photo_2   久しぶりの宝塚は、フランク・ワイルドホーン作曲、小池修一郎作曲の名作「スカーレット・ピンパーネル」です。星組の新トップ紅ゆずる、綺咲愛里のお披露目公演。昨年の石丸幹二・安蘭けいのミュージカルを見損ねて、楽しみにしていました。

   原作は1905年出版のイギリスの小説「紅はこべ」、ブロードウェイでは、1997年に初演され、断続的に上演されたり、ツアーに出たりしています。

  フランス革命直後のパリ。ロベスピエール(七海ひろき)の恐怖政治の中、罪のない人を救うスカーレット・ピンパーネルとその一派。正体は不明ですが、実はイギリス貴族のパーシー・ブレイクニー(紅ゆずる)。元コメディ・フランセーズの女優マルグリット(綺咲愛里)と結婚しますが、スカーレット・ピンパーネルであることを妻に秘密にしていることなどから、二人の仲はぎくしゃくします。マルグリットの過去の恋人、ロベスピエールの片腕ショーブラン(礼 真琴)はピンパーネルを追いますが…。

   1幕は、すれ違うマルグリットとパーシーにはらはらしていたんですが、最後になって、うまくできたハッピーエンドにすっきり。群衆シーンの(数も多いし)迫力、ピンパーネル軍団の青年たちの団結と素晴らしいコーラス、と非常によくできた演目で、楽しめました。

その間の、ショーブラン礼真琴の苦悩、男くささ、歌のうまさに感心。レ・ミゼラブルならばジャベールの役どころ。この方、もうちょっとだけ、身長があれば無敵なのに、と思いましたですよ。

ショーブランとパーシーのラストの殺陣は、女性だということを忘れるほど迫力があり、見事でした。

紅ゆずる、長身、腰の高さ(足の長さ)は驚異的。ただ、コメディエンヌぶりがキツイのと、肝心のセリフがいっぱいいっぱいな感じがして、なかなか大変だと思いました。綺咲愛里は、すっきりとした美貌で、悩めるマルグリットを好演。

ちょっと目を引いたのが、ルイ・シャルル(アントワネットの息子)の星蘭ひとみ。おかっぱでも美貌は明らかで、スターになるのでは、ともっぱらの評判でしたよ。

たっぷりのお芝居のあと、短いレビュー。衣装もダンスも素敵で、力のこもったお芝居の後に涼しい顔してスマートに踊る皆さん。本当に背筋にエネルギー注入されました!

(ところで普通のミュージカル版も再演予定のようです。パーシー石丸幹二、マルグリット安蘭けい、ショーブラン石井一孝と実力派でどんな舞台になるのか、見なくちゃですね!)

 

 

「パレード」@プレイハウス

Photo   今のっている感のある石丸幹二主演のミュージカル「パレード」です。ブロードウェイでは1998年12月初演、1999年2月クローズと、本公演はわずか84で終わっていますが、トニー賞の脚本賞、作曲賞を受賞しています(ノミネートも多数)。実話をもとにしたという脚本は、「ドライビング・ミス・デイジー」のアルフレッド・ウーリー、作曲は、ジェイソン・ロバート・ブラウン。演出は、「クレシダ」の森新太郎です。

  舞台は1913年、アトランタ、南北戦争の戦没者パレードの日。北部から来た生真面目なユダヤ人の鉛筆工場管理人のフランク(石丸幹二)のオフィスに、給料をもらいにメリー・フェイガン(莉奈)がやってきます。しかし翌日、工場でメリーの遺体が発見され、フランクは容疑者として逮捕されます。スレイトン知事(岡本健一)の意を汲んで動いたドーシー検事(石川禅)により、工場の従業員や家のメイドにも不利な証言をされたフランクは、裁判官(藤木孝)により有罪を宣告されます。逮捕前はしっくりいっていなかった南部ユダヤ人の妻ルシール(堀内敬子)は、フランクの無罪を信じ、二人の絆はかえって深まりますが…

ウーリー氏はアトランタ出身、しかも親戚がこの鉛筆工場のオーナーだったそうで、戦没者パレードに象徴される南部の北部への感情をうまく描いています。この雰囲気は、「風と共に去りぬ」の小説を読んでいるとちょっと理解しやすいです。その状況下、冤罪が出来上がっていくまでをキビキビとした展開で語っていきます。裁判シーンはみもの。森新太郎の演出も緻密にみえました。

実は、最初にチケットとったときには、タイトルと石丸幹二の写真だけのチラシで、往年の「イースター・パレード」の舞台だと思い込んでいたんですよね(!)。あの有名な主題歌で、春のパレードを舞台の恋愛ものだから見ておかなくちゃって。前日にあらすじを読んで驚いたんですが、いや、誤解はともかく、見ておくべき佳作でした。

ただ、舞台でひっかかったのが、最初の方で大量の色とりどりの紙吹雪が降ってきて、パレードの雰囲気を盛り上げ、衣装との対比もきれいなんですが、積もった紙吹雪、2幕の最後まで片づけないんですよ。照明で照らされて床を彩る効果はありますけど、上記のように、シリアスな舞台展開の中で、キャストが紙吹雪を蹴り上げたりすると気になって気になって。見ている方としてはかなりなノイズとなりました。

Parade_playhouse           さてキャスト。石丸幹二は、キャバレーのMCはやや残念でしたが、この生真面目な役はずっと合っていて、よかったです。ヨッシーやカッキーやアッキーなど、今活躍している男性の主役級は雰囲気が若いので、大人の男性の主役って、まずこの人なんだなと思いました。

       対する野心あふれるドーシー検事の石川禅、ジキル&ハイドでは石丸さんのよき友だったのに、この悪役を好演。この人がいると、お芝居の質がぐっと高まる感じがします。

堀内敬子、明るい歌声はよかったんですが、どうも私としては、このお芝居になじんでいない気がして、最後までしっくりきませんでした。何となく、セリフや表情が硬くて、歌のおねえさんとか、合唱部の優等生がそのまま大人になって演じているような。実力派揃いのキャストがストレートプレイの緊張感で演じている中だったので、ちょっと目立ちました。

岡本健一は演技というより、見た目が若くて、石川禅と逆の配役でも面白かったかなと思いました。「真田丸」の秀次だった新納慎也、舞台では初めてですが、長身で素敵。ただ、彼の役どころは今一つつかみにくかったです。

メリーの友人フランキー役の小野田龍之介も初見でしたが、歌もダンスも達者で、いい役者さん。ただ、この役かわいい坊やちゃん風の人の方が合ってたとは思いますけどね。このほか、安崎求、坂崎健児は的確にこの南部の舞台の香りを伝えていましたし、判事の藤木孝は歌も雰囲気もさすがでした。

團菊祭五月大歌舞伎「弥生の花浅草祭」幕見

20174   今月の歌舞伎座夜の部の最後、新亀蔵松緑二人の「浅草祭」の評判がよいので、幕見に行ってきました。一度盛り上がると、早くから売り切れるようになっちゃいますからね。幸い座れましたが、空席はあるかなくらいの盛況でした。外国人のお客さんがとても多かったです。

  浅草三社祭の人形のゆっくりした動きに始まり、活きのいい漁師、善と悪の面(もちろん松緑が悪((笑))、通人と侍、そして最後は獅子の精の毛振り。

  松緑は、その身体能力の高さ、藤間勘右衛門という舞踊の家元でもありますから、踊りが上手なのはいわば当然なんでしょうが、どうして亀蔵も、襲名公演として気合が入っていて、見劣りしないどころか、むしろ動きは派手。背格好も好一対の二人が、加減して合わせるというよりは力いっぱい競い合うように合わせるのが見もので、素晴らしかったです。善と悪の仮面、装束も面白いんですが、視界も狭いでしょうに、それを感じさせない見事な踊り。

  超絶技巧の巳太郎さんの三味線と唄でつないだあと、化粧も直していよいよ毛振り。盛り上がりますね。亀蔵さん、獅子の隈取が似合う端正なお顔。朝1番の俣野五郎から、ここまで45分踊ってきての、この激しい毛振り。もう拍手するしかありません。密かにいいなあと思っていた亀蔵さん(あっちの片岡亀蔵さんも好きですけどね)、ここへきてこの派手なお役、これからに期待です。

(2回目追記)

1週間もたたずに、再び幕見に行っちゃいました。ますます二人のコンビネーションがよく、どのパートもとてもよかったです。そして毛振り!歌舞伎座も揺れる拍手の中、松緑のジャズのアドリブのような高速毛振り、しかし要所はきちっと揃う二人。本当にいろいろな国籍の方が集う幕見席、価値ある1000円でございました。

團菊祭五月大歌舞伎「梶原平蔵誉石切」「吉野山」「魚屋宗五郎」

2017  五月恒例の歌舞伎座團菊祭、今年は彦三郎の初代楽善、亀三郎の9代目彦三郎、亀寿の3代目亀蔵襲名披露(さらに6代目亀三郎ちゃんも)ということで賑やかでございます。

  昼の部はじめは「梶原平蔵誉石切」。2年前に幸四郎さんの平蔵で見ていますが、今回はもちろん新彦三郎が平蔵です。対する大庭三郎が楽善、赤面の俣野五郎に亀蔵

    襲名効果というのか、彦三郎の平蔵はいかにも正義の、まっすぐな武士。白地の衣装がよく似合い、もともと声のよく通る人なので、終始清々しく々し20172く見えました。わけあって名刀を売りに来る六郎太夫(團蔵)、娘梢(右近)。團蔵さん、こういう役に味があってうまいなあ。魚屋宗五郎の父もよかったです。

    こういう時なので、ちらっと出る奴菊平に菊之助、試し切りされる罪人に松緑。この罪人、初めて見たときは(桂三でした)化粧と言い、酒尽くしの面白いセリフと言い、驚いたんですが、松緑の拵えにも大笑い。襲名にちなんだセリフになっていました。義太夫は葵太夫さん。

2つ目は「義経千本桜 吉野山」。あの「四の切」の前に、静御前(菊之助)と狐忠信(海老蔵)の道行の舞踊劇です。まあ、とにかくお二人、最高にきれいでそれだけでおめでたい。赤い姫の盛装が似合う菊之助。狐なのでかっこいいけど挙動がちょっとへんな忠信。

後半は逸見藤太(男女蔵)と花四天との立ち回り。男女蔵、こういう役がはまっていて、いつも面白いです。

20173     そしていよいよ「魚屋宗五郎」。宗五郎(菊五郎)の家では、磯部家に妾にやった妹お蔦の急死の知らせに皆が悲しんでいます。そこへ酒を持ってきた丁稚(寺嶋真秀くん)。4歳なのに、満場の拍手に照れることもなく、堂々としているのは立派。ニコニコとうれしそうでした。

     このお酒は磯部家に仕えるおなぎ(梅枝)が遣わしたもの。やってきたおなぎは、本当は、お蔦は悪者の秘密を知り、不義密通の濡れ衣を着せられてなぶり殺されたと話します。金毘羅様に禁酒を誓っていたはずの酒乱宗五郎、憤りのあまり酒に手を出し、さらに飲み…。  

菊五郎の当たり役の見せ場、女房おはまに注がせて何度か飲む演技が、宗五郎の気持ちの高まりをうまく見せていきます。とうとう全部飲み、目の座った宗五郎の怒り、無念が見事でした。菊五郎さんって、着物の扱いがうまくて、乱れたり、直したりするかたちが、その場の状況をよく表現しているといつも思います。

いつもながら女房おはま(時蔵)との息の合った夫婦の味、三吉(権十郎)、父(團蔵)と、この一家の味わいは、さすがでした。

磯部家に乗り込んだ宗五郎、始めは無礼者と止められますが、結局家老(左團次)に助けられ、磯部の殿様(松緑)にも謝られて、目的は達します。この松緑さんのセリフがちょっとアレだったんですが、これがハッピーエンドとなるとは、よかったです。

「ノートルダムの鐘」劇団四季劇場秋

Photo_2  1996年公開のカッツェンバーグ氏のディズニーアニメ最後の作品、ビクトル・ユーゴー原作、アラン・メンケン作曲のミュージカルです。アメリカでは、2014年から2015年にかけて地方で上演されていますが、ブロードウェイでの上演に至らなかった作品を、2016年12月から、劇団四季が上演してくれました。

四季の新作の例にもれず、チケットがなかなかとれなくて、昨年11月の予約でやっと今回見ることができたわけです。

アニメの方は、子供向けじゃないなあと思いながら、メンケンの歌がよくて大好きだったんですが、ミュージカルは、アニメより原作に忠実で、悲劇的。四季だから、とお子さんを連れていくにはお勧めしません。

出奔した弟のせむしの子を引き取った大司教フロローは、ノートルダムの鐘つき部屋に幽閉しカジモドと名付けて育てます。道化の祭りに誘われて初めて外に出たカジモドは、ジプシーの女エスメラルダに惹かれますが、謹厳なフロロー、戦場から帰った士官フューバスも彼女にひかれています。エスメラルダを手に入れるためには手段を問わないフロローは…。

「レ・ミゼラブル」の文豪ユーゴーの作品らしく、宗教上の権威と欲望、外見の醜さと心の純粋さといった人間の根源的なテーマを問いかけるもので、よくぞこれをディズニーがアニメ化したものだと思います。

ミュージカルになっても、その暗さ、重苦しさは変わらない(むしろ強くなっている)ので、ブロードウェイまでいかなかったのはわかる気がします。でも、わが日本では、死と破滅のラストは慣れっこですからね、問題ありません。

私が見たキャストは、カジモド田中彰孝、フロロー野中万寿夫、エスメラルダ宮田愛、フィーバス清水大星、クロパン阿部よしつぐ、といった皆さん。

アンサンブルの変身をわざと見せる演出が効果的。カジモドも、アンサンブルかな、と思ていたら、メイクを変え、せむしになります。身体能力も高いのでしょうが、田中さん、切り替わりがあざやか、それにかわいい、と思う瞬間が何回もありました。

フロローの野中さん、キャストの中ではセリフも自然ですが、ちょっと枯れちゃってて、エスメラルダを求めるギラギラした感じが薄かったかも。しかし四季の芝居でこの世代の方が活躍するのは舞台上の変化があってよかったです。

私が好きだったのは、クロパン阿部よしつぐさん。通る声、軽快な動き、強い目力、と、舞台でとーっても魅力的。彼を見るためだけにリピートしてもいいかも。

セットの切り替わり、歌のバリエーション、シーンごとの心の揺さぶり。ああ、やっぱりミュージカルはこうでなくちゃ。一部の主要キャストの迫力不足さえ、致命的ではありません。

どうしようもなく救いはないんですが、観客に、醜さとか偏見とか寛容とか自由とか信念とか、問わずにはいられない、作品の力を感じて、感動しました。

残念だったのは、伴奏が録音なこと。S席で1万円を越えたら、生演奏を義務付けてください。誰か。

「王家の紋章」@帝国劇場

Photo   久しぶりの帝国劇場、「王家の紋章」です。

原作は細川智栄子あんど芙~みん(この芙~みんさんって、謎なお名前)の名作漫画。断片的には読んでいます。細川さんらしく、大スペクタクルなストーリー、説明的な内容もセリフに!つけて語ってしまう登場人物。主役が金髪の「キャロル・リード」って、最近の漫画にはないですよねえ。

しかし、これをミュージカルにって、いい目のつけどころです。派手なビジュアル、ドラマチックなストーリー。作曲は「エリザベート」のシルヴェスター・リーヴァイ、脚本・演出は荻田浩一。

お話は、考古学好きな少女キャロル(新妻聖子)が、エジプト発掘調査をしていて古代エジプトにタイムスリップし、最初は奴隷扱いされながらも、現代の知恵を発揮したりして、王メンフィス(浦井健治)に愛されるようになります。王を愛する姉アイシス(濱田めぐみ)、敵対するヒッタイト国の王子イズミル(平方元基)、キャロルを心配する兄ライアン(伊礼彼方)、エジプトの重臣イムホテップ(山口佑一郎)。余談ですが、私もヒッタイトって鉄の武器を発明した国だって覚えてましたよ。世界史の知識をここにきて使うとは。

新妻聖子、濱田めぐみはとにかく安定して歌がうまい!とくに濱めぐはメイク・衣装も似合っていて、冷酷で哀しいアイシスの演技もとてもよかったです。新妻聖子は実質主役で、可憐、熱演でした。

浦井くんも長身で堂々たる王、もうちょっと絞って顔のラインがシャープなほうがいいかなと思いますが、美しかったですよ(ちょっとChessのアービターを思い出した)。平方元基は漫画から抜け出てきたようなビジュアル。侍女ナフテラの出雲綾の歌もすごくよかったし、ルカ(矢田悠祐)やウナス(小暮真一郎)も生き生きしていて魅力的でした。そうそう、山口さんもうさん臭くてよかったです。

実力派揃いなので、ソロだけでなく、キャロルとアイシスとか、キャロルとメンフィスとか、キャロルとメンフィスとイズミルとかの重唱がとても聞きごたえがありました。

ただ、作品としては、こういう素材で、今日本で新しく作るミュージカルとして、受ける要素を詰め込み過ぎだなあと思いました。主要キャストが歌い上げる曲が多すぎて、結果単調となってしまう。もうちょっと、キャストの関係性を描きながら進めてくれないと。アイシスとメンフィスの関係なんか、もっときめ細かく描いていたら、ちゃんとメンフィスが主役に見えたでしょう。

セットもありふれていて驚きがないし(美術は「フェードル」で感心した二村周作さんなんですけどね)、アンサンブルの振り付けも古臭い。キャストが歌っている間、アンサンブルが踊るって、紅白じゃないんだから多用するとダサいと思うんですよね。それから、歌詞がみんな説明調。全体が長いんだから曲単体でもキャッチーなのが入っていればよかったのに(2幕の町の場面、もっと1幕の最初の方にあるべきでしょう)。笑うシーンも全然ない。お笑いが入るとふざけてると思うんでしょうかね。3時間で笑いがないなんて。

荻田氏が長らく宝塚を演出してきたということもあると思うんですが、この作品、宝塚で1時間半くらいでキビキビとやった方がずっといいと思いました。アンサンブルも宝塚の方が人数もいて、この演目に合っているような気がします。

すごいへんないい方でいうと、「ミュージカルって大げさでいきなり歌いだすからいやだ」、と思っているミュージカルを見たことない人を、いいから一度見ようよ、と言って連れて行ったら、やっぱりそうだった、って言われるような作品です。

(長年好きで曲もよく知っている「美女と野獣」を見たばかりだからの感想かもしれません。一定のクォリティはあるので、好きな方もいっぱいいると思います。)

DVD「PARCO歌舞伎 決闘!高田馬場」 4代目猿之助「僕は、亀治郎でした。」

Photo   三谷幸喜作・演出の2006年上演PARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」を見ました。三谷さんは「新選組!」の2年後、ノリのいい長唄と義太夫を使った世話物というべきか、歌舞伎なんですけど歌舞伎だと知らなくても泣いたり笑ったり、本当に面白い1幕2時間のお芝居。

   後の堀部安兵衛である中山安兵衛(染五郎)は飲んだくれの浪人ですが、長屋の面々(大工の勘太郎、高麗蔵・宗之助夫婦、医者の橘太郎、老婆萬次郎)は皆安兵衛に助けられたことがあり、彼を慕っています。そこへ安兵衛のかつての道場仲間右近(亀治郎)がやってきて、無為な安兵衛をなじります。安兵衛の留守に、仲の良い伯父(錦吾)がやってきて、「これから高田馬場で果し合いする」という別れの手紙を置いていきます。さて安兵衛は…。

私、恥ずかしながら、安兵衛や決闘高田馬場の話の中身をきちんと知らなくて、何で決闘の助太刀した話がそんなに有名で、忠臣蔵と関係があるんだろうと思っていたのですが、やっとわかりました(安兵衛がこの助太刀で名を上げて赤穂藩士の堀部家に婿養子に行き、7年後に忠臣蔵の仇討ちに加わったんだそうです)。

三谷さんが脚本を半分くらいしか完成させていない状態で稽古に入り、役者を見ながら仕上げていったそうで、さらに役者さん自身がアドリブや振りを自由にやっているために、役のはまり具合が尋常ではありません。

気が優しくて、自分に納得していなくてうじうじ迷っている安兵衛。伯父との場面で刀を抜くところとか、右京に仇討ちを迫られるシーンはゾクゾクするようないい男(染ちゃんってどうして舞台だと飛び切りいい男なんでしょう。幸四郎さんや海老菊と比べると素顔はそんなに色っぽくないのに<失礼>)。生真面目さや絶妙なタイミングが可笑しくて、義太夫に乗った所作がまあ、うなるほど決まっている亀治郎。釘踏みも見ものです。そしてほんとにまっすぐな、元気な庶民の男をやらせたら天下一品の勘太郎。堀部のじいさんも秀逸でした。

主役の3人は染五郎33歳、亀治郎31歳、勘太郎25歳。さすが3人とも動きにキレがあって気持ちがいいです。染ちゃんなんて、すっとトンボ切ったりします。

超おもしろい萬次郎さんをはじめほかのキャストも息が合ってて隙がありません。染亀、高麗蔵の3人はそろって先月歌舞伎座の「熊谷陣屋」で立派なお役やってたのに、と思うと感慨深かったりして。毎回こういうDVD見ると思いますが、PARCO劇場のように小さな劇場で生で見たお客さん、果報者ですよ。

鳴り物や早変わり、ツケといった歌舞伎要素と現代劇のバランスの良さ、劇的展開、役者の技量と魅力のバランスがよく取れた、三谷作品の中でも屈指の名作と言えましょう。

DVDには特典映像版もついていて、千秋楽舞台裏の早変わりやら、WOWOW放送時の三谷さんと亀治郎の解説やら、テーマ曲の録音シーンがあります。これも面白かった!染五郎さん、朝5時から6時間かけて、渋谷でポスター撮りをしたそうです。

Photo_2    ところで、ちょうどここ数日、猿之助襲名記念として出版された「祝!四代目襲名記念 僕は、亀治郎でした。」を読んでいたんです。少し大きめの単行本サイズですが、インタビューやたくさんの舞台写真(神童と言われたという子ども時代がかわいい)、三代目の天竺徳兵衛の再構築ドキュメントとか、私の知らない時代の猿之助さんのいろいろがつまってて面白かったです。

   そこに、三谷さんの「決闘!高田馬場」についての寄稿があって、天才ぶりが描写されています。どうやって堀部ホリができたのかとか、釘のシーンの始まりとか。さすが。

それから、蜷川幸雄さんの「NINAGAWA十二夜」、「じゃじゃ馬ならし」のエッセイもありました。「NINAGAWA十二夜」、ジョン・ケアード版よりも亀治郎のマライア役の印象が強烈だったんですが、蜷川さんの役者亀治郎への賛辞がすごい。ロンドンで上演したときも、終演後イギリスの演出家が3人寄ってきて、亀治郎を紹介しろ、自分の芝居に出てほしいと絶賛だったそうです。さもありなん。

ちなみに、蜷川さんは、役者が自分たちで芝居を作ってしまう歌舞伎は自分には壁があってもうやらない、と書いているんですが(別のところで、菊五郎さんとの共作のようだったというのも読みました)、もったいなかったなあ。せめて十二夜、DVDにならないかなあと思うのでした。

(おまけ)

2017年3月の俳優祭の模様をEテレでやっていました。かぐや姫歌舞伎版、豪華キャストで面白かった!猿之助のドSキャラかぐや姫は最高ですし、菊之助のおじいさん、海老蔵のおばあさんも面白かったし(菊之助は年取ったら世話物なんでもできそう)、獅童、松也、染五郎、勘九郎、七之助、弥十郎に猿之助がそろったところは華やかで、歌舞伎は安泰だという気分になりました。弥十郎さんを除けば、みな30代、40代前半ですもんね。

(おまけその2)

ちょっと前ですが、鶴瓶の番組に猿之助が出てて、「『澤瀉屋は丈夫で何やっても平気』と思われているのがつらい、伯父の作品に出るとほんとにしんどくて、よくこんなの作ったと思う。昼夜23役やって1時間しか休みがないとかある。点滴しながらご飯食べてたこともある。本水かぶってぐったりしたところに、10役の踊りがあったりして、まるで罰ゲーム」と話していました。

ちょっと心配になってしまいますが、実際企画するところでは、自らこれやるあれやると決めていそうな気がしますね。

(おまけその3)

「高田馬場」のDVD、コメンタリーがついているんですが、そこで三谷さんが「最初にコクーン歌舞伎をやったほどの話題にはならなかった、なんでも最初がいい。水中歌舞伎なんてどうだろう。」染五郎「水中はちょっと…氷上ならいいかもしれない。やってみたい」と言ってるんですよ。結局行きませんでしたが、フィギュアとのコラボ「氷艶」、やりましたね。当初チケットが高くて余りまくってるという話でしたが、始まってみるとすごい評判。ちょっと悔しいです。

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