2019年8月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

« 「キューティ・ブロンド」@シアタークリエ | トップページ | 「フェードル」@シアターコクーン »

四月大歌舞伎「傾城反魂香」「桂川連理柵 帯屋」「奴道成寺」2回目追記あり

2017   四月歌舞伎座、夜の部です。

(このときもじゅうぶん堪能したのですが、その後「奴道成寺」の幕見を見ようとして結局通しで見てしまいましたので適宜追記してます)

一本目は「傾城反魂香」。2012年11月に2度目の歌舞伎として澤瀉屋さん(おとく笑也、又平右近)で見ています。今回は又平 吉右衛門、おとく菊之助、土佐将監歌六、修理之助錦之助

  修理之助は、絵から抜け出た虎を見事筆の力で消したことで、師匠土佐将監から土佐の苗字を許されますが、兄弟子のどもりの又平は願っても許されません(そりゃそうだ、何もしてないし)。妻おとくと嘆く又平。又平何か言ってますが、ドモリすぎてて聞き取れません(すいません)。

さらにいろいろあって、又平とおとくは絶望的になり、死のうとしますが(それもね、何も死なないでも。師匠だってそれなりに見てくれているわけだし)、最後にと手水鉢に描いた又平の自画像がその裏に移るという不思議なことがあり、又平は見事、と土佐の苗字を許されます。節があればどもらないという又平の舞。

又平の吉右衛門、修理之助の苗字の話を聞いてがっかりするところ、師匠に嘆願する必死さ、そして死ぬしかないと決めた時のうつろな目、と、実直な男の哀しさを表現して余りある名演でした。

将監の歌六も立派で、威厳と情愛があいまって目を引きます。 錦之助、才気走った、又平目線でみるとちょっとイヤなやつ(言い過ぎかも)、でもこういう役で錦之助さんが出てくると、私、ちょっと得した気持ちになります。又五郎の御注進 雅樂之助も、かくあるべしという御注進でした。

おとくの菊之助、しっとりと美しく気品がありすぎて、世話女房というのは、この人の役ではないかもと思いました。将監の妻東蔵さんも、これまでに見た心優しい庶民の老妻役が印象深すぎて、将監の奥方としては若干バランスが悪いように見えました。

(2回目) とにかく吉右衛門さんを見よう、と集中してみてみました。又平の絶望と悲しみ、死を覚悟して筆をとったときの渾身の表情、土佐の姓を許された歓喜、豊かな声の口上と、男の感情というものをこんなにもさまざまに見せてくれるのか、と感動しました(ちょっと泣けちゃいました)。そして、毎日の舞台の積み重ねの賜物か、菊之助のおとくと握り合う手にほんとうに通い合う情愛がじんときました。

2本目は「桂川連理柵 帯屋」。帯屋の養子の主人長右衛門(藤十郎)を、金のことで苛める義母おとせ(吉弥)と長右衛門の弟儀兵衛(染五郎)。このおとせは、後妻なので長右衛門を育てたわけではなく、だから連れ子の儀兵衛と店を乗っ取ろうとして長右衛門をいじめているというのは後から知り、納得がいきました。

長右衛門が旅先でつい過ちを犯したお半からの手紙をネタに責める儀兵衛、「長さま」とあるのを信濃屋の丁稚長吉だとごまかす長右衛門の女房お絹(扇雀―キレイ!)、長吉(壱太郎)が呼ばれて、その手紙は自分宛だと言います。夜半、一人寝る長右衛門のところに忍んで来るお半(壱太郎)。お半は身ごもっており、実は死ぬ覚悟。察した長右衛門はお半を追いかけます。

前半はお登勢と儀兵衛のワルっぷりが痛快。吉弥さん、いつもキレイなのに。染ちゃんは昼は伊勢音頭のはずですが、夜はこの成駒屋興行の客演で、鴈治郎さん襲名の「河庄」同様、楽し気に毒づいていました。二人が父寿治郎さんに怒られて、かしわのすきやきで一杯やろうと出ていくところなどおかしくて。

長吉はちょっと足りない坊やなんですが、セリフが面白く、楽しめました。この長吉から後半のかわいいお半への切り替わりが見もの。壱太郎くん、見るたびに生き生きと、輝きが感じられて、今、何をやっても楽しいんだろうなあと思います。女形のときに、頭カクカク振りすぎなのはやめた方がいいと思うんですけど。

長右衛門の藤十郎さん、前半はいじめに耐えるだけなんですが、お半とのシーンはしっとりと、実際の年齢の差もあって、せつないです。お絹はいい女房だけれど、何もかも捨てて、お半とのことにけりをつける、その気持ちが伝わってきました。立ち上がる足許はおぼつかないながら、お半を追う足はしっかり。

(2回目) 2回目はお絹と長右衛門に注目。お絹のやさしさ、事情を知りつつ添い遂げたいという思いがせつなかったです。藤十郎さん、舞台写真で見たらすごく生々しい男の表情だったので、そういう目で見ていると、お半から身を引こうとしながらも、つい抱きしめるところは濃厚なラブシーンで、祖父と孫息子だってわかっていながらもドキドキしてしまいました。

最後は「奴道成寺」。猿之助の舞踊です。猿之助の体を自在に操る動き、「どうだ俺を見ろ!」という声が聞こえるようなキメ顔、立ち上る色気、所化(右近、種之助、米吉、隼人、男寅)たちとの楽し気な絡み、3つの面を早替えしながらの(後見さんもたいへんですがお見事!)超絶技巧、45分ほどなんですが、舞台いっぱいの桜と合わせて堪能しました。

大谷桂三さんの息子 龍生くんの初舞台でもあって、一人だけ小さい所化が元気にセリフをいう場面は盛り上がりましたよ。

(2回目) 展開がわかっているので落ち着いてみることができ、構成の妙にも感心。緩急とりまぜた変化が絶妙です。3つの面の場面の後見さんの動きもチェック。そして何より、評判をきいてリピートしたり幕見に駆け付けた観客たちの喜びが歌舞伎座を揺らす最高のクライマックスで、再見して本当によかったと思いました。黒塚と違って、少々のおしゃべりは許せますしね(笑)

売られている舞台写真は、ドヤ顔が足りないと思いましたが(昼の部参照)、舞台写真入りの筋書きはけっこうドヤっていましたので買いましたよ。編集の方、とってもたくさん奴道成寺入れてくださってありがとうございます。あ、「醍醐の花見」の松也のアップもほしかったです。

(おまけ)

帰宅してから、録画してあった、「美の巨人たち ―― 平櫛田中『鏡獅子』彫刻家の信念と覚悟~5代目尾上菊之助の思い」を見ました。あの、国立劇場の鏡獅子です。リアルな彩色がほどこされているので、木彫りとして傑作だとかあまり認識しないで普段横を通っていました(ちょっと場所が奥すぎて、席に着く直前に通る場所ですよね)。

田中(でんちゅう)さんは、1871年生まれ、108歳まで生きた彫刻家で、丁稚から高村光雲に師事した後、大成した方だったんですね。この大作ができるまで、6代目菊五郎とのエピソードが、映像や試作品で綴られて、感動でした。6代目、お腹はふっくらしているんですが、それ以外は美しい筋肉(ふんどし1丁で1時間もポーズをとったとか)。

まじめな菊ちゃんがゆかりの場所を辿るんですが、最後、鏡獅子のポーズをするんです。スーツなのに(スーツ姿だと、かえって一般の方と比較しての筋肉が感じられます)、くっと、歌舞伎役者のキメの姿勢がかっこよくて、惚れ惚れしました。こんなにキレイなお顔で、肉体にも恵まれて、まじめで、しじゅう人間国宝に教えられて、存在そのものが歌舞伎の財産ですよ、菊之助さん。

« 「キューティ・ブロンド」@シアタークリエ | トップページ | 「フェードル」@シアターコクーン »

歌舞伎」カテゴリの記事

テレビドラマ・バラエティ」カテゴリの記事

四代目市川猿之助」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 「キューティ・ブロンド」@シアタークリエ | トップページ | 「フェードル」@シアターコクーン »