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2017年4月

映画「美女と野獣」実写版

Photo   ディズニーの「美女と野獣」、1991年のアニメ版は、カッツェンバーグ時代のディズニー黄金期のヒット作、その中でも一番繰り返し見て大好きな作品です。ミュージカルもブロードウェイと四季で何度か見ていますが、ミュージカルが好きになった原点かなと思います。

    自分が変わっていることを自覚しながらも少し寂しい主人公ベル(エマ・ワトソン)、ベルを愛する父モーリス、不器用だけど目のきれいなビースト、陽気なルミエール、人のいいコグスワース、悪役だけど憎めないガストン、と愛すべきキャラクターたち。美しいメロディのバラードと、Be Our Guestやガストンなど、ミュージカルの楽しさいっぱいのショーストッピングナンバーなど、名曲ぞろいのアラン・メンケンの曲。

この実写版は、キャラクターも含め、ほんとに忠実にアニメを実写化してくれていて、さらにベルとモーリスの間柄をきめ細かく描くエピソードを追加したり、ギャルドローブやカデンツァのキャラクターを膨らませるなど、この作品を愛するファンを裏切らない出来で、うれしかったです。最初の村のシーンの歌が流れたら、泣きそうになっちゃいました。野獣の目が優しくて、王子に戻った時にベルがそれでわかるところもよかったー。

キャストは発表されたときから、英国の好きな俳優さんばかりで期待だったんですよね。エマ・ワトソンは聡明でがんこなベルにぴったりだし、ガストンのルーク・エヴァンス、「ホビットの冒険」のバルド役、ハンサムで下品だけどきらいになれないギリギリの好演。歌も素敵でした。

ダンスシーンの「Beauty and the Beast」、うまいというより味のある歌だなと思ったら、ポット夫人はエマ・トンプソン。ルミエールのイアン・マクレガー、コグスワースのイアン・マッケランと、重厚な画面に合った演技は見事。

主要キャストがイギリスの俳優ばかりの中で、アニメより存在感のあったモーリスのケヴィン・クラインはさすが、アナ雪のオラフ、ブック・オブ・モルモンのジョシュ・ギャッドも人間味あふれるル・フウでした。

残念だったのは、アニメではカットされたけど、ミュージカルでは2幕の初めで盛り上がる「Human Again」がなかったこと、エンディングで使ってくれてもよかったのになあ。ベルとモーリスの優しい愛情が伺える「No Matter What」もちょっとでいいから使ってほしかったです。

それから、エンディングの「Beauty and the Beast」のデュエット、ねっとりしてて私はあまり好きじゃありません。「アラジン」の「A Whole New World」とか、アナ雪の「Let It Go」とか、エンディングでポップ歌手の歌い上げる感じ、作品の世界と違和感あってやなんですよね。

「髑髏城の七人Season 花」@IHIステージアラウンド東京

Photo_2   話題の劇団新感線「髑髏城の七人Season花」です。お台場に作られた、客席が回るというステージアラウンドの杮落しとして、1年間続く髑髏城公演の最初の3カ月です。

劇場は、円の中に座席を配置し、その周りがステージで、120度分くらいが使われ、次の場面になると回転するという仕組み。間はCGが映しだされるスクリーンが開閉し、その前を役者が走ってたりするので、切れ目は感じられません。

Saround豊洲の市場前(ゆりかもめの駅すぐ)って、市場移転後、にぎわう街を想定していたんでしょうかね。この日は、劇場の前は原っぱでした。

新感線の舞台は「ZIPANG PUNK 五右衛門ロックⅢ」を見たことがあるだSaround2け(歌舞伎セカンド版の「阿弖流為」もか)ですが、この劇場の特徴ををフルにつかったスピード感あふれる名作髑髏城、うまくはまったキャストの熱演で、これぞエンタテインメントと、3時間半の長丁場を、たいへん楽しく見ることができました。

本能寺後、秀吉が攻めようとしている関東の荒野が舞台。信長ゆかりの流れ者捨之助(小栗旬)、捨之助に助けられる沙霧(清野菜名)、色里無界屋の極楽太夫(りょう)、無界屋の主人蘭兵衛(山本耕史)、髑髏党を率いて髑髏城で秀吉を迎え討とうという天魔王(成河)、仲間を率いて出没する兵庫(青木崇高)、鉄砲の達人狸穴次郎衛門(近藤芳正)、刀鍛冶贋鉄斎(古田新太)。髑髏城の七人は、これらの登場人物がキャストや設定を変えて何度も上演されているんですね。

この時代設定、なかなか秀逸です。あんまりセリフで説明しなくても、歴史的・地理的状況とか、人間関係がわかりますもんね。信長や秀吉って、まったく登場しなくても、強烈な存在感があるんですよ。

最初はベタな展開に、アニメみたいと思わないでもなかったんですが、だんだん引き込まれて、多数のキャストも脇役含めキャラも認識できてきました。長時間ならではでもあるでしょう。

小栗旬、映画「銀魂」もあるし、今主演の連ドラもやってるし大活躍ですが、長身でひょうひょうとしていてとにかくかっこいい。青木崇高、キャラ的には「ちかえもん」に近くて、純真なかわいい男、この方も大きな体が舞台映えします。

蘭兵衛の山本耕史、小栗旬に比べると胸板が厚い。ある設定がなるほどという美しさ(彼に限らず、この舞台、メイクがとにかく秀逸です)。そして、時代劇のドラマでも評判の殺陣、重さを感じさせる刀をくるくる振り回す姿、超ステキで、いいもの見せてもらいました。

この3人は長身なんですが、対照的な小柄なキャストもそれぞれ個性的で好演。なんといっても天魔王の成河、これだけの大舞台の敵役、ラスボスを熱演でした。近藤芳正、兵庫の兄磯助(磯野慎吾)、三五(河野まさと)、も面白かったです。

古田新太は、もう出てくるだけでおかしい。スタイルのいいキャスト揃いの中で、頭が大きいバランスもおかしいし、何やってもしゃべっても爆笑でした。

清野菜名、「サンバイザー兄弟」でもアクションのキレに感心しましたが、今回はその比ではない大活躍。身体能力とよく通る声、かわいい雰囲気でとってもよかったです。サンバイザーにも出ていたりょうもきれいで腹が座ってる太夫でした。

チケットは30列目というかなりの後方(Sなんですけど)。座席表が円形なので、もしかして途中で舞台が近くなるのでは、なんて思ったりしたんですが、座席の前後関係は不変なので、ずーっと後方です。ステージが左右に広く、あまり前すぎると全体が見にくいので、10列目から15列目くらいのセンターがベストって感じですね。

あ、これだけの大規模公演なので、パンフレット2000円なりを買いました。髑髏城の七人の歴史とか、いろいろあるのかな、と思ったんですが、(見本はなかった)けっこう写真中心で、メインキャストの超かっこいい写真が載っています。値段だけのことはあるけど、私的には中満足。あ、稽古写真はなかなかいいです。

(追記)

5月15日、ライブビューイングがありました。ちょっとお高めで時間も早いので行かなかったけど、Twitterに、オグシュンと並んで、山本耕史蘭兵衛を称賛する声が多数でうれしいな。結婚騒動の時は、堀北真希より格下とか、なんかプロフィールも過小評価でやや悔しかったんですが、スリルにしても、この髑髏城にしても、求められた役割への期待以上の仕事をきっちりする彼、やっぱ好きだなー。

「ザ・ニュースペーパーライブ2017」@さくらプラザホール

Newspaper   久しぶりのザ・ニュースペーパーライブです(前回は2013年、その前は2011年)。

最初に登場したのは、あの不倫で辞職した政務官。昨日の今日ですが、これに限らず、ネタの新鮮さは驚異的。籠池さん、羽生くん、稲田防衛相、トランプ、小池都知事、金正男…

福本ヒデさんの安倍首相も長くなりましたが、今、若干スター不足というか、政治家で一番面白いのはトランプだし、籠池さんも本物の方が強烈ですし、稲田さんもねえ、彼らのコントよりも、現実の方がとんでもないことになってるなあと。笑いながらも、いろんなニュースを思い出すとため息になっちゃうというか。

といいながら、松下アキラさん、福本ヒデさん、山本天心さん(パク元大統領や小池さんきれいだった)、竹内さんらお馴染みの皆さんの熱演、楽しかったです。

そして、ライブならではの最後のご一家のネタ、好きなんですよね。渡部又兵衛さんの奥様、似てないんだけど品があるんですよね。闘病しながらの又兵衛さん、どうぞお体お大事に。

ロビーでのメンバーのお見送りもうれしいんですが、ヒデさんとちょっと話しちゃった。やっぱりまた行きたいです。

「きみはいい人、チャーリー・ブラウン」@シアタークリエ

Charlybrown_4   名前だけは聞いたことのあった、PEANUTSのミュージカル、中川晃教がスヌーピー役だというので見てまいりました。

学生時代、サンリオのスヌーピーグッズが大好きで、新しいハンカチが出るたびに買ってましたし、今でもLINEでスヌーピーのスタンプ愛用してます(1個入るとすごく画面がかわいくなる)。NHKでやっていたアニメも、大好きでした。谷啓のチャーリー・ブラウン、うつみ宮土理のルーシー。訴訟社会やメンタル疾患といったアメリカ社会を垣間見るのも面白かったっけ。

ミュージカル版は、1967年オフ・ブロードウェイ初演で、1971年にクローズしていますが、1999年にマイケル・メイヤーによりリバイバルされ、あのアンソニー・ラップがチャーリーブラウン、クリスティン・チェノウスがサリ―を演じています。このリバイバル版は、2月から6月までしか上演されていないんですが、チェノウスと、スヌーピーのロジャー・バート(Disaster!やProdusersにも出てる)はトニー賞をとってるんですね(これはCD買うしかない)。日本版は、かつて坂本九がチャーリーブラウンを演じたり、市村さんがスヌーピーを演じたりしているそうです。

さて、今回の上演。出演者は6人だけ。スヌーピーが前述のとおりアッキー、チャーリーブラウン(村井良大)、ルーシー(高垣彩陽)、サリー(田野優花)、ライナス(古田一紀)、シュローダー(東山光明)。

見たことある、と思ったのは、高垣彩陽、東山光明は2013年のザナ(ZANNA )に出てたんですね。演出もZANNAと同じ小林香さんです。

このかわいい6人のアンサンブルがとってもいいです。あのスヌーピーアニメの理屈っぽい感じとか、チャーリー・ブラウンの情けない感じとか、ルーシーのうるさい感じとか、スヌーピーがしゃべるのはびっくりだけど、斜に構えた雰囲気とかが、ミュージカルの世界のPEANUTS。

とくにルーシーとサリーは、アニメの世界でも特徴的なセリフ回しも動きもとってもよかった。田野優花、20歳のAKBさんですよ。成績に文句つける演技など完璧でした。高垣彩陽も今回も演技も歌もよかった。

この中でも、アッキーが、歌もいいんですがむしろダンスで魅せてくれて、犬の声も間もよかったです。見るたびにアッキーが好きになる私。

で、お約束のように、ラスト近く、星を見るパジャマのみんなが、何をやってもうまくいかないチャーリーを「いい人」と言うのにほろっときちゃいましたよ。派手なセットも、アンサンブルもないシンプルなミュージカル。キャストさんたちが作り出す世界に感動でした。

普通のチラシのほかに、このミュージカルを紹介するリーフレットが備え付けてありましたが、それも心憎く、どうもありがとう!

四月大歌舞伎「醍醐の花見」「伊勢音頭恋寝刃」「熊谷陣屋」

2017_2  四月の歌舞伎座、昼の部です。1つめは、「醍醐の花見」。

秀吉(鴈治郎)の妻たちが花見をしつつ、次々と舞います。おね(扇雀)、淀(壱太郎)、三条(右近)、松の丸(笑也)、利家妻まつ(笑三郎)。おねを敬いながらも、小競り合いする女たち。みなさんキレイで華やかで眼福。歌昇、種之助、萬太郎の若手もしなやかに舞います。歌昇君表情がいいわ。

秀吉が登場し、皆が去った後、現れたのは死んだ秀次の霊。この大柄な、キレイな顔の役者は誰(青隈だったので)、と思ったら、松也でした。そこへ三成(右團次)と僧義演(門之助)がかけつけて、秀次を追いやります。右團次さん、今月これだけってもったいない(笑也さんら澤瀉屋の方々も)。

2つめは、楽しみにしていた初見の「伊勢音頭恋寝刃」。

盗まれた名刀青江下坂とその証書折紙を奪い返そうとする家老の子息万次郎(秀太郎)を助ける福岡貢(染五郎)が、遊女屋油屋でその名刀で仲居万野(猿之助)たちを斬りまくるという話。

通常は油屋の場面だけが出るそうですが、今回は追っかけから。丈四郎(橘太郎)と大蔵(橘三郎)を、奴林平(隼人)が追いかける楽しい場面ですが、隼人が奴って、こんなにスラリとした、足の長い二枚目の奴っていましたっけ。

秀太郎さん、初めて見る立ち役。声が高くてかわいくて、みんなに大事にされている様子。恋仲のお岸(米吉―かわいい!)ともいい感じでした。

染五郎の貢はもちろんすっきりしたいい男、意地の悪い万野、いかにも道化役のお鹿(萬次郎)とのやりとり、観客が引き込まれてふーっと静かになる瞬間があって、面白かったです。貢と恋仲のお紺(梅枝)の縁切り場も熱が入っていて、ぐっときました。

主要な役どころが面白く、この演目すごい好みです。またほかの配役でも見てみたい。とても満足したので、もう帰ってもいいやと思ったくらいでした。

その3つめは「熊谷陣屋」。忠義のために子供を犠牲にする話ですね。寺子屋盛綱陣屋ときて、これでコンプリート(!)。

幸四郎さんの熊谷直実、スケール感、セリフ回し、さすがです。僧形になってからもしみじみとしたいい味。ほんとに、幸四郎さん、吉右衛門さん、仁左衛門さんが一線をひいたら、こういう役はどうなっちゃんでしょうね。

直実の妻相模が猿之助、あの万野を楽し気に演じた20分後に、子を亡くす義太夫狂言の悲劇の妻役なんて。藤の方高麗蔵、義経染五郎(今月は、昼も夜も一番大活躍)、弥陀六左團次。左團次さんのこういう化粧の役は珍しく、人間味があふれていてよかったです。

ところで舞台写真、奴道成寺の猿之助のドヤ顔のドヤ度がイマイチで、やめときました。もっとドヤ―ってやってるはず。松也の秀次と、右團次がやっぱりきれいでした。

「紳士のための愛と殺人の手引き」@日生劇場

Gentlemansguide  「市村正親8回殺される!?」というキャッチコピーが面白そうなミュージカル・コメディです。ブロードウェイの原作は「A Gentleman's Guide To Love & Murder」、2013年11月から2016年1月まで上演され、2014年のトニー賞を作品賞、脚本賞等4部門受賞している、最近のヒット作の日本版ですね。

  母を亡くした貧しいモンティ(ウェンツ瑛士)は、母の友人ミス・シングル(春風ひとみ)から、母がダイスクイス伯爵家の出であり、駆け落ちして縁を切られたものの、モンティは8番目の爵位承継権があると聞かされます。貧しいために恋人シベラ(シルビア・グラブ)も金持ちに奪われたモンティは、上位の承継者たちを次々と亡き者に、そして、一族のフィービ(宮澤エマ)と結婚し、いよいよ現ダイスクイス伯爵の城に招待されますが…。

殺人がユーモラスに、巧妙にしかけられていて、面白いです。だいたい3パターンも見れば繰り返しに飽きがきそうですが、うまくお話の進行と合わせていて、あっという間に7人の殺人が終わります。ああ、もう1回見たい。

この、ダイスクイス家の殺される人物がみんな市村正親さんなんです。このミュージカルをブロードウェイで見た人何人もから、「日本でやるとしたら市村さんだ」と言われていたそうですが、私もハマり役だと思いました。重厚な紳士から能天気な青年、慈善に忙しいマダムなど、女性役二人を含むへんな役の演じ分けがおかしくて。市村さんて、「ラ・カージュ・オ・フォール」のゲイ役も超ハマっていましたから、この女性役もよかったです。

この芝居を回す、ほとんど主役のモンティは、ウェンツくんとカッキーのWキャストですが、ウェンツ君は彼の性格のよさとか、明るさが、舞台の中でうまく活きていて、好演でした。わりとメロディが難しいナンバーが多かったですが、がんばってました(カッキーでも見たいです)。

シルビア・グラブは、ちょっとウェンツ君の恋人としてはお姉さんなんでしょうが、派手なピンクの衣装で華やかに、宮澤エマもお嬢さんとしてはちょっと頑固な役をうまく演じていました。二人とも歌が安定していて、重唱もきれいでした。

春風ひとみさん!「シスター・アクト」でもシニア役だったそうですが、強烈なキャラクターで秀逸。こんな面白い人がいたのね。

と、キャストも実力派揃い、アンサンブルも大活躍で、テンポある場面転換、笑いどころも多くて、ブロードウェイでも人気だったこの作品を、うまく日本版にしていたいい作品でした。うーん、もう1回みたい気もするんですが、GW前に終わっちゃいますね。

「フェードル」@シアターコクーン

Photo  せっかく「演出家の仕事」を読んだので、著者の栗山民也演出作品を見たいなと思っていたら、大竹しのぶ主演で「フェードル」をやるというのでコクーンに行ってまいりました。

タイトルだけは聞いたことがあり、フランス古典主義の劇作家ラシーヌの作品と知っていましたが、エウリピデスのギリシア悲劇「ヒッポリュトス」を基にしているということで、だから名前がフランス語読みなんですね(パイドラ⇒フェードル、テーセウス⇒テゼなど)。1677年初演といいますから、歌舞伎の名作よりちょっとだけ古いくらいですね。

アテネ王テゼ(今井清隆)は行方不明、病気の王妃フェードル(大竹しのぶ)は、侍女エノーヌ(キムラ緑子)に、先妻の息子であるイッポリト(平岳大)への愛を打ち明けます。女嫌いを通してきたイッポリトは、テゼに対抗した一族の生き残りアリッシー(門脇麦)を愛していました。テゼの死の報せに、イッポリトに愛を打ち明けて拒絶されるフェードルは、生還したテゼに、イッポリトに迫られたとエノーヌを使って嘘をつき、激怒したテゼはイッポリトの釈明も聞かず彼を追放します…。

ギリシャ悲劇がもとではありますが、女神アフロディテの怒りが重要な要素となっているエウリピデス版に比べると、愛に翻弄される登場人物の性格や位置づけがしっかり描かれていて、すなわちもっと近代的で、歌舞伎の人物造形に近いものを感じます。主要人物が死んでしまうところも歌舞伎に似ていて、その点では、この劇の世界にすんなり入れました。今見ても、十分ドラマとしておもしろかったです。

質感のある、段差と壁の装飾が効果的な舞台装置と照明、登場人物2人のシーンが多いのですが、その衣装の色合いの対比が美しく、どの場面もびしっと絵になっているのが素晴らしいと思いました(美術二村周作、衣装前田文子)。

そういうお芝居なので、いかにもギリシア悲劇的な、重厚で多彩なセリフで話が進んでいきます。役者の言葉だけで描く世界は、ちょっと残酷なまでに、生の役者を見せつけるようです。つまり、スペクタクルなものは何もない舞台から、観客に言葉が届くかどうか。

大竹しのぶは、強いメイク、豊かな表情とセリフで、お腹の底から言葉と感情を届けます。この方の天才の歴史にまた1ページという気がしました。献身的なエノーヌのキムラ緑子とのやりとりが、この芝居のベースです。緑子さん、奔放な方というイメージが強いんですが、母性を感じさせるエノーヌ、見事でした。

もう一人、目を引いたのがイポリットの養育係テラメーヌの谷田歩。鋭い目、見事な滑舌、終盤で王に語るイポリットの最期は、まるで目の前にその光景が広がるような描写力で、感動しました。

ミュージカルでお馴染みの今井清隆は大柄でバタ臭い容姿が王にふさわしく、イポリットの平岳大もビジュアルは素敵。ただ、平さん、かろうじて合格点としか言いようがなくて、せっかくの容姿にふさわしい豊かな表現とまでは達していないような気がしました。もっと魅力的で、もっと苦悩してくれなくちゃ、このお芝居の魅力が減殺されてしまいます。うーん、ある種の若さも必要だし、やれるとしたら誰かな。瑛太とか、満島慎之介とか?染五郎とか歌舞伎役者でもよかったかも。

もっと違和感があったのは、アリッシーの門脇麦。ポニーテールがかわいらしく、現代日本の若い女性にしか見えなくて、一生懸命それっぽく話しているだけという感じがしました。後からインタビュー記事など読むと、ほんとに自分の実力不足を感じていたようで。それがわかっているならいいんですけど。満島ひかりとか、蒼井優とかだったらどうでしょうか。

ラスト、さっと変わった舞台装置と照明が効果的で、悲劇ながら希望を感じさせるいい幕切れでした。

(こういうお芝居、観客席の静かなことと言ったら、ちょっと離れた席のポリ袋のカサカサや、誰かのお腹のなる音まで響くくらいでした。)

四月大歌舞伎「傾城反魂香」「桂川連理柵 帯屋」「奴道成寺」2回目追記あり

2017   四月歌舞伎座、夜の部です。

(このときもじゅうぶん堪能したのですが、その後「奴道成寺」の幕見を見ようとして結局通しで見てしまいましたので適宜追記してます)

一本目は「傾城反魂香」。2012年11月に2度目の歌舞伎として澤瀉屋さん(おとく笑也、又平右近)で見ています。今回は又平 吉右衛門、おとく菊之助、土佐将監歌六、修理之助錦之助

  修理之助は、絵から抜け出た虎を見事筆の力で消したことで、師匠土佐将監から土佐の苗字を許されますが、兄弟子のどもりの又平は願っても許されません(そりゃそうだ、何もしてないし)。妻おとくと嘆く又平。又平何か言ってますが、ドモリすぎてて聞き取れません(すいません)。

さらにいろいろあって、又平とおとくは絶望的になり、死のうとしますが(それもね、何も死なないでも。師匠だってそれなりに見てくれているわけだし)、最後にと手水鉢に描いた又平の自画像がその裏に移るという不思議なことがあり、又平は見事、と土佐の苗字を許されます。節があればどもらないという又平の舞。

又平の吉右衛門、修理之助の苗字の話を聞いてがっかりするところ、師匠に嘆願する必死さ、そして死ぬしかないと決めた時のうつろな目、と、実直な男の哀しさを表現して余りある名演でした。

将監の歌六も立派で、威厳と情愛があいまって目を引きます。 錦之助、才気走った、又平目線でみるとちょっとイヤなやつ(言い過ぎかも)、でもこういう役で錦之助さんが出てくると、私、ちょっと得した気持ちになります。又五郎の御注進 雅樂之助も、かくあるべしという御注進でした。

おとくの菊之助、しっとりと美しく気品がありすぎて、世話女房というのは、この人の役ではないかもと思いました。将監の妻東蔵さんも、これまでに見た心優しい庶民の老妻役が印象深すぎて、将監の奥方としては若干バランスが悪いように見えました。

(2回目) とにかく吉右衛門さんを見よう、と集中してみてみました。又平の絶望と悲しみ、死を覚悟して筆をとったときの渾身の表情、土佐の姓を許された歓喜、豊かな声の口上と、男の感情というものをこんなにもさまざまに見せてくれるのか、と感動しました(ちょっと泣けちゃいました)。そして、毎日の舞台の積み重ねの賜物か、菊之助のおとくと握り合う手にほんとうに通い合う情愛がじんときました。

2本目は「桂川連理柵 帯屋」。帯屋の養子の主人長右衛門(藤十郎)を、金のことで苛める義母おとせ(吉弥)と長右衛門の弟儀兵衛(染五郎)。このおとせは、後妻なので長右衛門を育てたわけではなく、だから連れ子の儀兵衛と店を乗っ取ろうとして長右衛門をいじめているというのは後から知り、納得がいきました。

長右衛門が旅先でつい過ちを犯したお半からの手紙をネタに責める儀兵衛、「長さま」とあるのを信濃屋の丁稚長吉だとごまかす長右衛門の女房お絹(扇雀―キレイ!)、長吉(壱太郎)が呼ばれて、その手紙は自分宛だと言います。夜半、一人寝る長右衛門のところに忍んで来るお半(壱太郎)。お半は身ごもっており、実は死ぬ覚悟。察した長右衛門はお半を追いかけます。

前半はお登勢と儀兵衛のワルっぷりが痛快。吉弥さん、いつもキレイなのに。染ちゃんは昼は伊勢音頭のはずですが、夜はこの成駒屋興行の客演で、鴈治郎さん襲名の「河庄」同様、楽し気に毒づいていました。二人が父寿治郎さんに怒られて、かしわのすきやきで一杯やろうと出ていくところなどおかしくて。

長吉はちょっと足りない坊やなんですが、セリフが面白く、楽しめました。この長吉から後半のかわいいお半への切り替わりが見もの。壱太郎くん、見るたびに生き生きと、輝きが感じられて、今、何をやっても楽しいんだろうなあと思います。女形のときに、頭カクカク振りすぎなのはやめた方がいいと思うんですけど。

長右衛門の藤十郎さん、前半はいじめに耐えるだけなんですが、お半とのシーンはしっとりと、実際の年齢の差もあって、せつないです。お絹はいい女房だけれど、何もかも捨てて、お半とのことにけりをつける、その気持ちが伝わってきました。立ち上がる足許はおぼつかないながら、お半を追う足はしっかり。

(2回目) 2回目はお絹と長右衛門に注目。お絹のやさしさ、事情を知りつつ添い遂げたいという思いがせつなかったです。藤十郎さん、舞台写真で見たらすごく生々しい男の表情だったので、そういう目で見ていると、お半から身を引こうとしながらも、つい抱きしめるところは濃厚なラブシーンで、祖父と孫息子だってわかっていながらもドキドキしてしまいました。

最後は「奴道成寺」。猿之助の舞踊です。猿之助の体を自在に操る動き、「どうだ俺を見ろ!」という声が聞こえるようなキメ顔、立ち上る色気、所化(右近、種之助、米吉、隼人、男寅)たちとの楽し気な絡み、3つの面を早替えしながらの(後見さんもたいへんですがお見事!)超絶技巧、45分ほどなんですが、舞台いっぱいの桜と合わせて堪能しました。

大谷桂三さんの息子 龍生くんの初舞台でもあって、一人だけ小さい所化が元気にセリフをいう場面は盛り上がりましたよ。

(2回目) 展開がわかっているので落ち着いてみることができ、構成の妙にも感心。緩急とりまぜた変化が絶妙です。3つの面の場面の後見さんの動きもチェック。そして何より、評判をきいてリピートしたり幕見に駆け付けた観客たちの喜びが歌舞伎座を揺らす最高のクライマックスで、再見して本当によかったと思いました。黒塚と違って、少々のおしゃべりは許せますしね(笑)

売られている舞台写真は、ドヤ顔が足りないと思いましたが(昼の部参照)、舞台写真入りの筋書きはけっこうドヤっていましたので買いましたよ。編集の方、とってもたくさん奴道成寺入れてくださってありがとうございます。あ、「醍醐の花見」の松也のアップもほしかったです。

(おまけ)

帰宅してから、録画してあった、「美の巨人たち ―― 平櫛田中『鏡獅子』彫刻家の信念と覚悟~5代目尾上菊之助の思い」を見ました。あの、国立劇場の鏡獅子です。リアルな彩色がほどこされているので、木彫りとして傑作だとかあまり認識しないで普段横を通っていました(ちょっと場所が奥すぎて、席に着く直前に通る場所ですよね)。

田中(でんちゅう)さんは、1871年生まれ、108歳まで生きた彫刻家で、丁稚から高村光雲に師事した後、大成した方だったんですね。この大作ができるまで、6代目菊五郎とのエピソードが、映像や試作品で綴られて、感動でした。6代目、お腹はふっくらしているんですが、それ以外は美しい筋肉(ふんどし1丁で1時間もポーズをとったとか)。

まじめな菊ちゃんがゆかりの場所を辿るんですが、最後、鏡獅子のポーズをするんです。スーツなのに(スーツ姿だと、かえって一般の方と比較しての筋肉が感じられます)、くっと、歌舞伎役者のキメの姿勢がかっこよくて、惚れ惚れしました。こんなにキレイなお顔で、肉体にも恵まれて、まじめで、しじゅう人間国宝に教えられて、存在そのものが歌舞伎の財産ですよ、菊之助さん。

「キューティ・ブロンド」@シアタークリエ

Photo_2  神田沙也加の初主演ミュージカルです。リーズ・ウィザースプーン主演のヒット映画のミュージカル化で、ブロードウェイでは2007年4月初演、1年半上演され、トニー賞にもノミネートされたヒット作です。

  ストーリーは映画と同じ。ハーバードロースクールに行って上院議員になるからと、恋人のワーナー(植原卓也)にふられたブロンド美人のエル(沙也加)は、一念発起して猛勉強し、ロースクールに入りますが、ワーナーにはすでにデキルヴィヴィアン(新田恵海)という恋人が。周りからも浮いている傷心のエルは、まじめな先輩のエメット(佐藤隆紀)やヘア&ネイリストのポーレット(樹里咲穂)に励まされて勉強し、やり手の弁護士でもあるキャラハン教授(長谷川初範)のインターンとして、殺人の疑いをかけられたワークアウトのカリスマ、ブルック(木村花代)の裁判にかかわることに…。原題の「Legally Blonde」って、「法曹界のブロンド」って意味だったんですね。

おバカにみられるブロンド美人が、周りを見返していくサクセスストーリーは痛快です。沙也加、どんな舞台でも的確に役を果たしているのを見てきましたが、テレビのバラエティでみる彼女はとても頭の回転が速そうで、おしゃれにしか興味がないように見えて、実は記憶力も判断力も優れているというエルにぴったり。ピンクの衣装も似合ってて、ダンスもキレキレですし、みんなの間に座っているようなシーンでも、エルそのものでした。コメディシーンも得意ですし、もともと華やかで強い地声の歌声はミュージカル向きで、私、ますます好きになりましたですよ。カーテンコールもとっても楽しかったです。

他のキャストも好演。ポーレットの温かな雰囲気を醸してこの舞台の癒し的な存在だった樹里さん、教授は妙に一癖ある雰囲気の人だなと思っていたら長谷川さん、1幕後の休憩中に、あれ、木村花代どこに出てたっけと思ったら、後半の裁判で活躍でした(ダンスも!)。エルと先輩後輩だったという設定が絶妙。新田恵海って初めてみると思ったら、声優で有名な方なんですね(スーツ姿がちょっと就活生みたいだった)。アンサンブルも、演技も含めとてもよかったです。

エメットの佐藤隆紀、歌はもちろんうまいですし、話す声もソフトで背も高くて素敵なんですが、なーんかね、お腹のあたりがもっそりしていて、ネクタイ締める前がちょっとねえ。いくらなんでも相手役なんだから、もうちょっと絞ってくれないと。佐藤さん、頼みましたよ!

ともあれ、私的には、ストーリーも見せ方もとっても好みの、大満足の舞台でした。これから各地回るようですが、お見逃しなくって感じですよ。

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