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「通し狂言 伊賀越道中双六」@国立劇場

Photo  26年12月に44年振りに復活させた「岡崎」が評価され、歌舞伎として初めて読売演劇大賞をとった「通し狂言 伊賀越道中双六」の再演というので行ってきました。

  有名な荒木又右衛門の仇討ち(といっても詳しくは知らない)を基にした全十段の大作(西への仇討ちの旅を双六に見立てている)ですが、この通しは、発端から仇討ちまでを、5幕4時間25分で見せます。現代での通しの再構成とあって、話もわかりやすく、間延びしたところがなくて見やすいながら、義太夫狂言の魅力もしっかり伝えてくれる作品になっていました。

この感覚、どこかでと思ったら、忠臣蔵に近いです。もっとコンパクトな、1日で楽しめる感じ。

以下、詳しめのあらすじ。

序幕の舞台は相州鎌倉。武術師範の和田行家(橘三郎)の名刀正宗を狙う沢井股五郎(錦之助)は、行家を殺して逃げます。行家の妻京妙さんが立派でした。二幕、円覚寺にかくまわれている股五郎を追って、丹右衛門(又五郎――「マタゴロー」というセリフが多いので紛らわしい)がやってきますが、正宗と交換のはずが、沢井城五郎(吉之丞)や野守之助(歌昇)にだまし討ちに会い、正宗は奪われ、股五郎には逃げられます。瀕死の丹右衛門は、行家の息子志津馬(菊之助)、娘お谷(雀右衛門)に仇討ちを託し、お谷の夫政右衛門(吉右衛門)に助けてもらうように言い残して自らとどめをさします。

三幕、政右衛門と待ち合わせるため三州藤川の関の茶屋にやってきた志津馬を一目見て、関所の下役人山田幸兵衛の娘お袖(米吉)は一目ぼれ、幸兵衛宛ての手紙を運ぶ奴助平(又五郎)をごまかして、お袖は志津馬の関所越えの手助けをします。又五郎さん、先ほどの義に厚い見事な武士から、軽妙な奴、だんまりも楽しく、前半の舞台を引き締めました。

四幕がいよいよ岡崎、幸兵衛(歌六)の家。お袖に連れられて志津馬がやってきます。幸兵衛宛ての手紙は、股五郎への助力を頼むものでしたが、志津馬は股五郎は自分だと名乗ります。そこへやってきた政右衛門、追手を柔術で撃退する姿を見て幸兵衛は感心し、幼い頃武術を教えたが出奔してしまった庄太郎と知って邂逅を喜び合います。股五郎の味方となると言う政右衛門。幸兵衛が出かけた後、幸兵衛の妻おつや(東蔵)と旧交を温める政右衛門、干してある煙草葉を刻みます(「莨切り」という場面)。

そこに、お谷(雀右衛門)が、政右衛門に生まれたばかりの巳之助を見せようとやってきます。雪の中難儀するお谷、正体を知られまいとする政右衛門はお谷を追い出し、赤子だけはおつやに温められます。しかし帰ってきた幸兵衛が身に着けているもので巳之助の素性を知ると、「政右衛門との戦いに有利となるために人質にする」というと、政右衛門は、仇討ちの邪魔、と赤子を刺し殺すのでした。

そこまでの覚悟を知り、幸兵衛は股五郎の行方を政右衛門、志津馬に告げます。このあたり、何故嘘がばれるのか、わかりにくいと思われるでしょうが、芝居のうえでは納得してしまいます。覚悟したお袖は出家し、戻ってきたお谷は悲嘆にくれます。

この1時間40分にわたる一幕、役者を得て、よくできています。いい男に惚れるかわいいお袖(米ちゃんがほんとにかわいくて)、幸兵衛を前に虚実のかけひき、「競伊勢物語」を思い出す、政右衛門とおつやの情愛、そして、美女を苛める場面がうまいという(!)作者近松半二らしい(妹背山女庭訓の三笠山御殿を書いた人ですからね)、お谷の苦難。本当に寒そうで、私、寒さの中の空腹っていう、マッチ売りの少女のシチュエーションに弱いのでせつなかったです。

そして、仇討ちのためにわが子さえ手にかける政右衛門、それに感じて義理を曲げる幸兵衛。吉右衛門さんと歌六さんの名場面です。「歌舞伎見物のお供」に、岡崎が出ないのは、赤子を殺す陰惨な物語と、それを見せる役者が今はいないから、と書かれていましたが、どうして、この見事な復活を見ると、このお二人はそれをやり遂げたってことですね。

終幕は、15分弱で仇討ちが遂げられてスカッとして終わります。ああ、面白かった。

(ところでお谷の雀右衛門さん、この後歌舞伎座行って助六の揚巻ですよ。拵えだけでもたいへんでしょうし、吉右衛門さんの妻の後、海老蔵助六の情人なんて、歌舞伎役者ってすごすぎますね。)

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