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長谷部浩「天才と名人 中村勘三郎と坂東三津五郎」

Photo  勘三郎、三津五郎という、これから円熟期に、というときに亡くなった名優二人と同世代の演劇評論家、長谷部浩さんの著書です。

  血筋と才能、努力と人柄、愛嬌、プロデュース力とすべてに優れた天才勘三郎と、知的で器用で踊りの名手、年とともに役柄を広げてきた名人で勘三郎のよき相方だった三津五郎。二人を比較したら、歌舞伎ファンには面白い本になるというものですが、読んでみると、比較というよりも、幼い頃からの二人の舞台の実績を年代記風に追いながら、役者としての軌跡を明らかにしていく、二人の評伝になっています。

  私、最近歌舞伎を見始めたにわかなもので、かろうじてシネマ歌舞伎でお二人の名演を見たり、歌舞伎の本の写真で、彼らの演じた役を見て、想像するしかなかったわけですが、このように克明に時系列で見せていただくと、あれやこれやがつながって、たいへん面白かったです(三津五郎さんはちょっとだけ見ています。「寺子屋」の武部源蔵とか、勘九郎との「棒しばり」とか最後の歌舞伎座出演となった「たぬき」とか)。

  勘三郎さんがどのように活躍の場を広げ、新しい歌舞伎の場をつくっていったか、コクーン歌舞伎がどういう意味を持っていたか、野田歌舞伎「研辰の討たれ」の成功、三津五郎さんの著書「歌舞伎の愉しみ」(著者が聞き書きしています)の印象的な記述の裏側など、興味深かったです。

  演目の記載などみていると、本当にハード。昼夜25日間、休みなしで、その合間に新しい演目のけいこ、プロデュース、三津五郎さんは舞踊の家元の仕事、そして若手の指導。役に着けなかった時期があるからこそ、貪欲に何もかもをこなしていたんだなあと思います。

  勘三郎さんが亡くなった時の三津五郎さんの本当に悲しい弔辞、そして「彼の業績はマスコミが持ち上げるコクーン歌舞伎や平成中村座のような初心者向けのものではなくて、歌舞伎の芸の神髄を伝えるべき本当の意味での歌舞伎役者の凄みを持っていた人」という述懐が、ちょっと歌舞伎を知ればその通りだと思うことをおっしゃっていたのを読んで、改めて残念な気持ちになりました。

  著者の長谷川さん、記述からうかがわれるのは、人気役者との個人的な関係に甘えない、上品なシャイなお人柄で、それもこの本の魅力になっています。

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