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三谷幸喜「エノケソ一代記」@世田谷パブリックシアター

2    今年1年間本当におもしろかった「真田丸」で、三谷さんの実力を改めて思い知ったわけですが(今頃すみません)、早くもお芝居の上演、しかも猿之助主演で三谷さんご本人も24年ぶりに舞台に立つということで、見てきました(といってもあまりの人気に自力ではチケットとれなかったんですけどねTheater Goerに持つべきものは観劇友達。)。

  田所(猿之助)はエノケンに憧れるあまり、「エノケソ一座」としてエノケンを騙り地方を回っています。一座は妻の季代子(吉田羊)、座付き作家蟇田一夫(浅野和之)、運転手兼相手役の熊吉(春海四方)。簡素なセットもノスタルジックで、全編古い空気が流れています。

  猿之助、CMやトーク番組では素の姿を見ますが、歌舞伎でない舞台では初めて。衣装のせいなのか、歌舞伎のときより小柄に見えます(171cmだそうですが、もっと小さく見えた)。ダンスも歌も達者、ちょっとうさん臭さもあって、何より舞台に立つ人のオーラがあります。声の深さや豊かさ、今まで数は多くないですが、その場の空気を支配する歌舞伎の猿之助を思い起こしながら、やっぱりこの人好き、来てよかったと何度も思いました。あとね、現代劇で見ると、香川照之に似てるんですよ。そりゃいとこだから当たり前ですけど、これまではさほど似てないと思ってましたし、あまり中車の猿之助化粧(先代もそうですが、目の際を赤くするやつね)を見たことがないので、歌舞伎でも似てると思ったことがありませんでした。

苦労を共にする妻の吉田羊。やっぱり「真田丸」の稲に見えます。着物やヘアスタイルがよく似合って、素敵な奥様ですが、ちょっと情愛には薄い感じがしました。エノケソとの夫婦愛が見せ所なんでしょうが、季代子気丈だな、と。これは猿之助がちょっと女性にクールに見えるからかもしれません。

大好きな浅野さんは安定。春海四方も達者ですし、エノケソ一座を呼ぶ座元を何役もこなした山中崇、とっても面白くて、この役がうまくなかったら、この芝居は成り立たないくらいの重要な役でした。

エノケソ一座に入りたいと願う女の子紅ちゃんの水上京香、いかにも手馴れたベテラン舞台女優さんの雰囲気だったんですが、まだ20歳そこそこのアイドル女優だそうで、達者さと泥臭さに感心しました。実際にはかなりかわいくて、これから活躍しそうです。

そして三谷さん!古川ロッパ役(あえてそれ以上は言いませんが)なんですが、そっくりなうえになんか太ってる!ほんとに?コスチュームだとしたらよくできていました。で、演技がまさに的確。役に求められているものを、ほんとにきっちり演じていて、なんだ、俳優としてはイマイチなのではと、勝手に思い込んでいてすみません、という感じでした。三谷さんが舞台にいる間が、私的には一番盛り上がりましたよ。

さて、なぜか連続してまったく違うタイプのお芝居で、圧倒的な主演俳優の力を見せつけられた3本でしたが、井上芳雄、轟悠、猿之助と、さほど一般的な知名度はないんでしょうが(猿之助には失礼ですかね。でも大河に出たときは亀治郎だったし歌舞伎見ない人はさほど知らないよね)、見た人は知っているんだ、と思ったことでした。

(追記)

映画「花戦さ」で秀吉を演じた猿之助、知名度低いなんてすみません。クイズやバラエティにもけっこう出てたんですね。ソルマックCMとクイズ番組でしか猿之助を知らなかった方が、「猿之助ってちゃんとした役者さんだったんだね」と言ったそうです。「このうえなく楽しそうに踊りを踊る、頭のいい人」という印象だったとか。答えは正しい(笑)。

(追記その2)

その後WOWWOWで放送された映像の録画をずっと後になって見ました。

ストーリーがわかっているだけに、役の心情がよく伝わってきて、より感動しました。何より、猿之助の表情が、ハッタリ、調子のよさ、希代子に対するきまりわるさ、エノケンへの思い、本当に足を切ることになったときの後悔と、何と的確に、過不足なく表現していることか。映像の要所のアップでさらに強調され、凄みすら感じました。

三谷ファンでエノケンは知らない(無理もない)観客にとっては、何故エノケソが足を切るまで思い入れるのかわからない、といった感想がけっこうあったようですが、エノケソが、エノケンの舞台の思い出を語る場面の、遠くを見る目で十分語られていたと思いました。歌舞伎に全身全霊を捧げる猿之助を思うと、舞台への思いが重なって、ムネアツってやつですよ。

そして、舞台を見たときは、強いトーンの声にちょっと惑わされて見えていなかった希代子の、エノケソへの深い愛情に感動しました。エノケンバカな夫をどこまでも支える希代子、2回の涙のシーンは、ほんとにジーンときました。

最後に、ロッパ姿のままの三谷さんのインタビュー。ロッパで出たのは、ビジュアルと役者としての力量で、猿之助に匹敵する人が思い当たらず、変化球で自分にしたそうです。24年振りの舞台で、台本通りに繰り返すことを越えたセリフが、ときどき出てきて、演じる気持ちがわかった(←演出はいつもやっているけれど)、猿之助とのシーンでは、そのすばらしさに毎回感動しているだけだった(「外見はロッパだけど中身はただの猿之助ファン」)、「ダンスを振り付けたら、5分で覚えてすぐに自分のアレンジを加えて、さすがだった」と、興味深いお話が聞けて(猿之助ファンとしてはさらにですよ)面白かったです。

踊り稽古の時も、初日に細かい振付をものの5分で覚えてすぐ自分の解釈を入れて仕上げてくるのには、踊りを極めた人は和洋関係ないのだなと感動したとか。

そして、吉田羊と浅野和之が、稽古していくうちに、エノケソを追い込んだのは彼らだったということが、脚本を書いたのは自分だけどわかってきて、役が膨らんだとか。浅野さんのあの瞬間のマッドドクターぶりは、二人の作品だったのだな、と興味深かったです。

(追記その3)

さらにその後、「A-Studio」で吉田羊がこの芝居のことを語っています。猿之助はとにかく稽古がきらいで、遅れてきて予定より早く終わろうとする。稽古のつもりで本番を迎えたら、いきなり本気を出してきて、「それなら稽古からやってよ!」と。猿之助には、普通の芝居の稽古期間は長すぎるんだろうな。さらに千穐楽はすごかったそうですが、それは千穐楽に行く人だけしか見られないと思うとやや残念。

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