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「仮名手本忠臣蔵第三部八段目~十一段目」@国立劇場

Photo  国立劇場50周年記念、仮名手本忠臣蔵完全上演の第3部完結編です。いよいよ討ち入りですよ。

  第1部(大序~四段目)
  第2部(道行旅路の花婿~七段目)

 段目「道行旅路嫁入」。二段目に出てきた加古川本蔵の妻戸無瀬(魁春)と娘小浪(児太郎)が、許婚の大星力弥(錦之助)に嫁入りのためにはるばる鎌倉から京まで下っていく道行で、セリフはなく、舞踊のみ。お二人は先代芝翫、歌右衛門に踊りの基礎はみっちりしこまれたのかしらなどと思いながら、踊りはわからない私ですが、義太夫に聞きほれながら見ました。

そして九段目「山科閑居の場」。相変わらず祇園で遊んでいる大星由良之助(梅玉)が、一力茶屋の女房や幇間たちと、雪玉を転がしながら帰ってきました。この雪こかしの場面はめったにでないんだそうですが、雪玉に込めた討ち入りへの思いを力弥と話したりして、いい場面です。全体に雪の雰囲気がよく出た舞台装置。

そこへ戸無瀬と小浪がやってきて、由良之助の女房お石(笑也)に嫁入りの話をしますが、お石は断ります。本蔵が主人桃井若狭之助のために高師直に賄賂を贈ったことや、塩谷判官が高師直に切りかかったときに止めたことを恨みに思っているのです。この座組みで澤瀉屋の笑也というのはあれ、と思うんですが、いつも笑也さんのきりっとした女丈夫ぶりは好きなんですけど、なんとなく魁春さん(初役とのことですがとても合ってました)の演技と合わないというか、けんもほろろ過ぎて、お石という役自体がさほど、という感じがしました。

お石はそういうけどやっぱり力弥と祝言を上げたいと泣く小浪、いじらしく思う戸無瀬。2段目の力弥小浪のお似合いなさまを見ているので、小浪の嘆きに説得力を感じます(ここちょっと長く感じてしましましたが)。こうなれば死ぬしかないと嘆く母子、そこへ加古川本蔵(幸四郎)。主への忠義のためとはいえ、塩谷家に申し訳ないと思う本蔵は、わざと力弥に討たれ、その真意を知った由良之助は決意を明かし、本蔵は高家の見取り図を渡し…と皆の気持ちが明らかになり、短いながらも小浪は力弥と結ばれることに。

本蔵の幸四郎、立派なんですけど、ちょっとセリフ回しも濃すぎて、やや淡白な由良之助と対峙する感じが出にくかったような気がします。いい場面にもなりそうな段なんですが、何となく自分的には盛り上がりに欠けてました。

そしてめったに上演されないという十段目「天川屋義平内の場」。由良之助たちのために武器を運ぶ算段をつけている天川屋義平(歌六)は、秘密を守るため、高家側に縁のある医者了竹(錦吾)の娘である妻お園(高麗蔵)を里に帰しています。突然荷改めに来た武士たちに、幼い息子を犠牲にしても秘密を守る決意を見せた義平。実はこの武士たちは由良之助の配下で、義平を試しに来たのでした。

歌六の義平が立派で、肚の座った感じが出ていて、でもちゃんと町人の味があり、惚れ惚れしました。ちょっと渡海屋を思わせるというか。ああ、歌六さんの由良之助も見たいと思いましたよ。ちょっと足りない丁稚(宗之助)も面白いし、荷改めから義平を信用するまでの義士たちの雰囲気もキビキビして、女方がクドクドしている前段との対比が鮮やかです(ほめすぎですかね)。

さて、短い休憩の後は、いよいよ十一段目「高家表門討入りの場」「高家広間の場」「高家奥庭泉水の場」「高家柴部屋本懐焼香の場」「花水橋引揚げの場」。

幕が開くと、揃いの羽織を着た義士たちがぶわーっと並んでいて、ものすごく盛り上がります(新選組の隊服は、赤穂浪士に憧れてだんだらにしたんですよね。今年新選組にはまっていたのでよけい感動)。由良之助の隣に團蔵さんが心強い感じでいます。

その後の室内、庭での立ち回りも大迫力。米吉の力弥は、「あれ、女性が出てたっけ」と一瞬宝塚かと思ったのが、もう発声が女の子なんですね。隼人もワンピースがんばってたのを思い出す動き。男女蔵の敵役もしゅっとしててよかったです。そして、松緑が高家側の小林平八郎で盛り上げます。亀寿との立ち回り、激しくてかっこよかったー。こういうとき松緑はほんとに絵になりますね。

柴部屋に隠れていた高師直を打ち取って、焼香をする義士たち。2番目に平右衛門(錦之助)が呼ばれて勘平の財布を出すところなど、長編ならではの味があります。錦之助さん、八段目の力弥とは打って変わって又五郎の熱演を思い起こさせる愛すべき平右衛門でした。

最後が花水橋(「伽羅先代萩」を通しでやるとき出る橋の名と同じですね)で出頭する義士たちが桃井若狭之助(左團次)に出会い、由良之助と若狭之助はお互いに思いを話す場面。雪景色の橋の情景が、夜明けの冷たい空気を感じさせます。

義士の名乗りが、この長い物語について、語られなかった一人一人の背負った事情を思い起こさせる、うなるような演出になっていて、これが原本のままなら、脚本家の感覚はずいぶん今と近いなあと思いました。

最後の幕が引かれ、忠臣蔵を見終わった満足感でいっぱいでした。国立劇場の50周年記念にふさわしい力作でしたし、この作品が長く愛されてきた理由がよくわかりました。今月小劇場で上演されていた文楽の仮名手本忠臣蔵もとてもよかったそうで、両方コンプリートした方、うらやましいです。

まあ、欲を言えば、段毎に役の重さがちがうので仕方ないのかもしれませんが、なるべく通しで同じ配役にしたのを見たいですね。由良之助、力弥、若狭之助ははぜひ通しで。1部と2部のおかる勘平が同じだったら、二人にもっと感情移入できるし、加古川本蔵一家も1部と3部で同じにしてほしいし、2部で義士に加えてもらえた平右衛門が3部で戦ってほしい。せめて、同じ年恰好、雰囲気の役者さんにやってもらいたいんですけどねえ。

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