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別役実「月・こうこう,風・そうそう」@新国立劇場

Tukikoukou別役実さん、日本の不条理劇の巨人、独特のエッセイで有名な脚本家です。

高校で演劇部だった私、初舞台は、この別役さんの「マッチ売りの少女」の老夫婦の妻役でした(4人しかいないキャストの一人、セリフも多かった!)。平凡な日常生活に突然飛び込んでくるstrangerにより暴かれていく欺瞞、平易で無駄のないセリフから生まれるその世界観に魅了されました。その後、ラジオの朗読番組(常田富士夫さんの「虫づくし」だったらしいです)を聞いた記憶がありますし、エッセイも何冊か読みました。

しかし、これまで、プロによる公演を見たことはありませんでした!新国立でシリーズで上演されていたのを、念願かなってやっと見ることができたのが、この、「月・こうこう,風・そうそう」という新作(79歳にして瑞々しい新作!)です。新国立小劇場、いい感じに傾斜のある、見やすい劇場です。

ストーリーは、別役らしく、竹取物語をモチーフに、死ぬつもりで家を出てきた翁、媼と、何者かに追われて現れたかぐや姫、娘は兄とまぐわい地獄に落ちると予言する盲目の女、娘をさらって殺すという噂の風魔の三郎、かぐやの兄、謎の領主ミカドにより話が進みます。

まずいいのが竹林のセット。上から下がっている竹に照明があたって、周りは暗いので、全体が明るすぎるわけでもなく、ちょうどいい幻想的な雰囲気です。舞台上も、土の雰囲気がうまく出ていて、単調でない光がいい感じ。照明の中川隆一さんを覚えておきましょう。

音響も、適度な効果音のみ。月読みの女の月琴と短い歌はありますが、ことさら感動を盛り上げるような音楽が流れたりしないのもよかったです(生演奏しかダメっていうのも贅沢なんでしょうが)。

老夫婦は、松金よね子さんはわかったんですが、翁はずっと石橋蓮さんかなと思ってたら花王おさむさん。「ジキル&ハイド」、「父よ!」でも好演されてましたが、この夫婦は、まさにどの場面も別役世界の住人で、ああ、やっぱりこうなんだ、と、感動しました。

姫は、声のきれいな人だなあ、誰だっけ、と思ってたら、「パッション」抜群の歌唱力だった和音美桜。兄の山崎一は、KERAの「グッドバイ」で目についた方ですね。月読みの竹下恵子さんは、美しかったですが、程よい華やかさと(でもこの世界にしっくりはまっていて)、計算されたしっかりした演技でさすがと思いました。

しかし、皆の噂で、若い娘をさらっては喉を掻っ切って北の谷に捨てていたという風魔の三郎の橋本淳、ただの今風の長身のイケメンで、とても長年の恐ろしい噂の主には見えません。殺陣もキビキビしていて(しかし別役なのに殺陣!)いい俳優さんだとは思いますが、この方が出てくることによって、中途半端に青春な、普通のお芝居になってしまい、ちょっとがっかりでした。

脚本としても、老夫婦のやりとりがいちばんよくて、後は、「わかりません」とか「知りません」とかが多くてそれもどうかなと思いました。

別役さんの世界はやっぱり何十年たっても好き、でも、それを作り上げるのはやっぱり簡単なことじゃないんだということでしょうか。今の世界を切り取るストレートプレイの難しさという気がしました。

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