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NODA MAP「エッグ」@芸術劇場プレイハウス

Egg2015

野田秀樹がますます完成度を高めているのをひさしぶりの「MIWA」で確認し、勢いがついて今回の「エッグ」のチケットを何とかとりました。2012年上演作の再演、深津絵里、妻夫木聡、仲村トオル、橋爪功、藤井隆など主要キャストはそのままだそうです。

野田作品なのであらすじというのも難しいのですが、劇場で寺山修司の未完の脚本エッグの原稿を案内人(野田秀樹)が発見します。その内容は…、エッグという架空のスポーツをやっている阿部(妻夫木)とエース粒来(つぶらい、仲村)と、阿部と結婚する歌手苺イチエ(深津)。東京オリンピック出場をめざしている彼ら、マラソンのアベベと円谷を連想させるセリフが出てきます。

セットは、番号のついたロッカーと、時々出てくる展望台のようなもの、カーテンだけ。その使い方がものすごくうまく、人の目の錯覚も使っているのでしょうが、マジックのように人が入っては消えたり出てきたり衣装がぱっと変わったり。その自在さ加減がすばらしく、演出もですがアンサンブルも含めた演者の動きのスムーズさとセットつくりの技術に唸りました。なんだか、今まで見てきたストレートプレイのセットや表現が、みんな陳腐で時代遅れのものだったような感覚さえ一瞬おぼえたくらいです。

音楽は野田さん指名による椎名林檎。歌謡曲風なんですが(深津絵里がアイドル風に歌うところもあって)、ただ歌謡曲風に作っているだけではない深さというか曲のよさがあって、この芝居に合っているというか、かなり存在感を放っていました。

それを歌う深津絵里さん、うまい女優だとは思っていましたが、歌も驚くほど上手だし、スタイルとダンスも含めた動きのキレがすごいです。何よりテレビで見るちょっと影のある深津絵里っぽさがなく、この芝居にすっかりはまり込んでいるように見えました。

妻夫木くんは初めて見ましたが、やっぱりこの人きれいな顔立ちにオーラがあるなあ、仲村トオルはひときわ鍛え上げたたくましい体で、感心しました。

藤井隆(振付師)はいつもながらひょうひょうとした器用な動き、また主要キャストのうち私にとって未知の秋山奈津子(オーナー)、大倉孝二もいい俳優さんでした。

(以下ネタバレありです)

さて、前半は俳優野田秀樹に笑わされ、スポーツとアイドルに大衆が夢中になっている現代の表現ね、と思いつつ、前述のように巧みなロッカーを使った動きに感心しながらも、登場人物に感情移入できるわけではないので、やや目の前の展開をどうとらえていいのか、ちょっと眠気も襲ってきて、「ああ野田秀樹はもう私には無理なのか」とまで思っていたんですが…

藤井隆がオーナーの命でエッグの宣伝映画を作って上映する辺りから、この東京オリンピックは、1964年の熱狂のそれではなく、戦争のために1940年に開催予定が中止された東京オリンピックだったという話に展開していきます。そして、エッグは、あの731石井部隊の人体実験のカモフラージュだったことが明らかにされていきます。

表現は抽象的ですが、セリフはかなり直接的で、部隊が逃げる際の証拠隠滅、実験対象となった者の虐殺、逃げる人々、成果の売却と、意外なくらいわかりやすく語られていきます。

MIWAで野田さんなりの原爆の表現を追求していたことを思い出しますが、昔はこういう問題を取り上げてはいなかったのに、今彼がやりたいことはこういうことなのかなあと思いました。

歴史的な罪は世界中の、どの時代にもいくらでもありますが、やはりこれは日本のことだけに、見ていて正直けっこう苦しかったです。これが海外でも上演されるのかと、演劇としての完成度とはまた別の思いが浮かんでいました。「スポーツと音楽の光と影を描く」なんてキャッチフレーズはこの芝居の半分も語ってはいません。

野田秀樹、才能ある人が努力もして経験を積んで、さらに他人の優れた才能を自由に使えて、それでいったいどういうところに行こうとしているのか、やっぱり目が離せません。

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