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七月大歌舞伎「通し狂言 星合世十三團 成田千本桜」

20190709 7月の歌舞伎座海老蔵奮闘公演、幕見の通しです。夜の部は、「通し狂言 星合世十三團 成田千本桜」、「義経千本桜」の通しを、海老蔵早替わり13役を務めます、というもの。初日直前に「終演10時…」と海老さんがブログに書いてザワザワしましたが、結局休憩を削って(!)9:43終演、5時間超という、往年の3代目猿之助奮闘公演か、というものになりました。

開始前にお人形が、主な配役を教えてくれます(かわいい)。以下どうしてもネタバレ。

発端・序幕は、平知盛、維盛、教経は生きていた、という簡単な解説の後、「義経千本桜」(この解説がわかりやすいです)でもめったに出ないという1段目にあたる場で、公家悪の藤原朝方(海老蔵)が義経(梅玉)に頼朝を討て、と初音の鼓を与えます。義経の館にやってきた頼朝の使者川越太郎(海老蔵)は、義経の正室卿の方(海老蔵)は平時忠の娘であり義経に謀反の意思がないことを示すため殺せと迫ります。自害した卿の方は実は川越の娘。鎌倉方の追手がやってきますが、弁慶(海老蔵)は、義経の意に反して彼らを討ってしまいます…。

この一段目はみたことがないので、こんな話だったんだ、と珍しく見ました。義経の梅玉さんと静御前の雀右衛門さんは、そこだけ本物の歌舞伎の空気で、とくに梅玉さんがずっと義経でいるのが、義経千本桜って義経が主役なんだなと思わせます。しかし海老蔵の女方は相変わらず…。

2幕は伏見稲荷鳥居前、引き続いて碇知盛。渡海屋の場はあっさりで、お柳(魁春)ののろけ気味に銀平ほめるところとか、安徳天皇の前でのこってりとした嘆きはカットだし(魁春さんもったいない)、銀平(海老蔵)の粋で男らしい魅力とかが発揮されてなくて面白くないです。知盛も化粧があまりきれいでなくて、残念でした。今まで見た知盛って、菊之助、現幸四郎、仁左衛門という美丈夫ばかりなんですよ。地は勝るとも劣らない海老蔵なんだけどなあ。

しかし(ネタバレですが)、知盛が海に消えた後が弁慶への早替わりで一工夫。そして長袴での歩き宙乗りって、「伊達の十役」で猿翁さんが仁木でやっている写真を見たことがありますが、ものすごくかっこいいので、見てみたかったんです。知盛の亡霊の美しい衣装でゆっくりと宙に消える姿は見ものでした。

3幕は「すし屋」。若葉内侍の旅立ち(北嵯峨庵室の場)、「木の実」、「小金吾討死」、「すし屋」まで、親切に出してくれました。このいがみの権太の海老蔵が、13役で一番合っているように思いました。ちょい悪で軽くて、せつない男が似合います。小金吾も合ってる弥左衛門も悪くない。残念なのは維盛。こんなにひどい維盛初めて見たってもんです。お米の齊入さんはもっと見たいくらいだし、梅丸のお里もだいぶダイジェスト版ですが(女房ども、の場面はカット)、歌舞伎座で大役!。児太郎の若葉内侍とおせんの二役も頑張ってましたが、ちょっと台詞が強すぎるところが目立つんですよね。

せっかく権太が真人間に戻って死んで感動なのに、弥左衛門まで海老蔵なので、そのあとの早替わりが慌ただしくて、落ち着かない感じがしました。

人気演目2つ見て、もう十分な感じになったところで大詰は「四の切」。実は猿之助で1度しか見たことがないので、段取りの順番はきちんと覚えていないのですが、階段からの狐忠信登場とか欄干渡りとか回転とかぶらさがりとか、パーツではしっかり認識しているので、力の抜けたようなセリフと相まって、どうしても雑なコピーに見えてしまってつらかったです。ケガから復帰して黒塚はやりましたが、四の切はまだできていないのに(力の入らない部分もあるって)、なんでこんな雑にやっちゃうのという気がするのは、四代目ファン故でしょうか。

四の切、最後は法師が軽快な音楽に乗って楽しい動きの立ち回り、狐忠信の宙乗りと、楽しい雰囲気で終わります(すし屋で終わるよりいい)。この後、さらに「吉野の花矢倉」で、横川覚範(教経)、弁慶ら(全部海老蔵)のすごい早替わりの立ち回り。アンコール替わりの映像もあって、5時間超のお芝居が終わりを迎えます。

大きな3つの芝居が、どれもよく上演されるもので感動してきただけに、こんなバタバタで見せなくても、とくに海老蔵としては知盛も権太も本役なんだからもっときっちり演じてほしいとは思うのですが、それにしてもよくやりました。義経千本桜をほんとの通しでやってみたかったのもわかりました。お疲れ様でした。

(追記)

たいへんな公演だとは思っていましたが、海老蔵が疲労と感染による急性咽頭炎となり、15日から夜の部は休演となってしまいました。元の古典で義経千本桜をやるならともかく、あの早変わりはなかなかできないし、海老蔵だから成り立っている演目ですからどうしようもなかったとは思いますが、全席完売で楽しみにしていた人たちも多かったでしょうに、残念です。

2017年のワンピース歌舞伎はあの大事故にも拘わらず、1公演も休演することがなかったのですが、その経験から、四代目は「新作はアンダースタディが必要」と言い、オグリも主演ダブルキャストとして隼人を抜擢しています。いやしかし、海老蔵のこれは、代役がいたとしてもお客は納得しなさそうだからな(碇知盛はニザ様といわずとも幸四郎で、四の切はもちろん四代目の方がいいに決まってますが)。とにかく早い回復を祈ります。

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